本発明の光学透明粘着シートは、熱硬化ポリウレタンを含む光学透明粘着シートであって、厚み1.5mmで測定された85℃環境下における面接着力が11N/Φ12mm以上であることを特徴とする。本明細書中、「光学透明粘着シート」とは、「光学透明粘着フィルム」と同義である。
本発明の光学透明粘着シートは、厚み1.5mmで測定された85℃環境下における面接着力が11N/Φ12mm以上であることにより、高温環境での保管により生じる遅れ泡の発生を抑制することができる。
本発明者は、遅れ泡を抑えるためには、光学透明粘着シートの高温における接着力を向上することが必要であると考えた。従来、光学透明粘着シートの接着力の評価方法としては、180°剥離による接着力が一般的に用いられていた。図1は、180°剥離による光学透明粘着シートの接着力の測定方法を説明する図である。図1に示すように、光学透明粘着シート12の一方の面にスライドガラス31を貼り付け、他方の面にPETシート32を貼り付けたサンプルを作製した後、図1中の矢印の方向(180°方向)にPETシート32を引っ張り、光学透明粘着シート12をスライドガラス31との界面で剥離させることで、スライドガラス31に対する光学透明粘着シート12の接着力(N/25mm)を測定することができる。しかしながら、85℃での180°剥離による接着力を高くした光学透明粘着シートによっても遅れ泡を抑えることができないことが分かった。
図2は、配合の異なる複数種の光学透明粘着シートと、180°剥離による接着力及び損失正接(tanδ)との関係を示すグラフである。図2に示す180°剥離による接着力及びtanδは、いずれも85℃で測定された値である。図2中の配合1〜4、6は、光学透明粘着シートの材料の一つであるポリイソシアネート成分の種類及び配合量が異なっており、配合5は、配合1〜4、6では添加されていない可塑剤が添加されている。配合1は、後述する比較例1に対応し、アルキレンオキシドユニットを含む変性ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート4022」)を用いており、α比(ポリオール成分由来のOH基のモル数/ポリイソシアネート成分由来のNCO基のモル数)が1.90に調整されている。配合2〜4は、後述する比較例2〜4に対応し、いずれもアルキレンオキシドユニットを含む変性ポリイソシアネート(コロネート4022)とHDI系ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート2760」)とを1:1の比率で用いている。配合2ではα比が1.70に、配合3ではα比が1.80に、配合4ではα比が1.85に調整されている。配合5は、後述する比較例5に対応し、アルキレンオキシドユニットを含む変性ポリイソシアネート(コロネート4022)を用いており、α比が1.00に調整されており、更に可塑剤が添加されている。配合6は、後述する実施例1に対応し、イソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製の「デスモジュールI」)とアルキレンオキシドユニットを含む変性ポリイソシアネート(コロネート4022)とを2:1の比率で用いている。配合1〜5では遅れ泡が発生し、配合6では遅れ泡が発生しない。
図2に示すように、180°剥離による接着力の点では、遅れ泡が発生しない配合6と遅れ泡が発生する配合1〜5との明確な差はない。すなわち、180°剥離による接着力と遅れ泡の発生の有無との間には相関がなく、180°剥離による接着力を制御しても、遅れ泡の抑制を確実に行うことができないことが分かる。
本発明者が遅れ泡の発生機構を詳細に検討したところ、遅れ泡は、被着体に貼り合わされた光学透明粘着シートの端部で発生しやすいものの、光学透明粘着シートの側方から気泡が入り込んで発生するのではなく、光学透明粘着シート又は被着体の内部から発生するものであることを見出した。このことから、180°剥離のように端から引き剥がす方式で測定される接着力は、遅れ泡の発生機構との関係性が低いと考え、図3に示す方法で測定される面接着力に着目した。
図3は、光学透明粘着シートの面接着力の測定方法を説明する図である。図3に示すように、ステージに貼り付ける等の方法で固定した厚み1.5mmの光学透明粘着シート12に対して、直径12mmの円柱状の接触子41の下端を押し当てた後、接触子41を垂直に引き上げる。引き上げ時に接触子41に加わる力(光学透明粘着シート12と接触子41の接着力)のピーク強度を、面接着力(N/Φ12mm)とする。なお、高温で発生しやすい遅れ泡を防止する性能の指標として面接着力を用いるため、面接着力の測定は、85℃環境下で行われる。また、測定時の光学透明粘着シート12の厚みは1.5mmとするが、本発明の光学透明粘着シートの厚みは1.5mmに限定されるものではなく、測定時に複数枚を積層して1.5mmに調整してもよい。
図4は、図2のグラフに示した複数種の光学透明粘着シートと、面接着力及び損失正接(tanδ)との関係を示すグラフである。図4に示す面接着力及びtanδは、いずれも85℃で測定された値である。図4に示すように、面接着力の点では、遅れ泡が発生しない配合6と遅れ泡が発生する配合1〜5とに明確な差がある。すなわち、面接着力と遅れ泡の発生の有無との間には相関があり、面接着力を制御することにより、遅れ泡の抑制を確実に行うことができることが分かる。これは、面接着力が、粘着性だけでなく、引っ張り強度も含んだ複合的な指標に相当するためであると考えられる。85℃での面接着力は、光学透明粘着シートの形成に用いる熱硬化ポリウレタンの原料である熱硬化性ポリウレタン組成物の組成及び/又は熱硬化条件を変更することによって適宜調整することができ、例えば、配合1〜6の比較から分かるように、光学透明粘着シートの材料の一つであるポリイソシアネート成分の種類及び配合量によって調整してもよい。
図2及び4のグラフの横軸として示したtanδは、光学透明粘着シートの硬さ(凝集力)の設計指標である。図2及び4に示した配合6の光学透明粘着シートのtanδは、0.5近傍であるが、tanδを変更することも可能である。85℃でのtanδについても、光学透明粘着シートの形成に用いる熱硬化ポリウレタンの原料である熱硬化性ポリウレタン組成物の組成及び/又は熱硬化条件を変更することによって適宜調整することができ、例えば、光学透明粘着シートの材料の一つであるポリイソシアネート成分の配合量(α比)、ポリイソシアネート成分中の親水性ユニットの含有量、親水性ユニットの種類(分子量)、親水性ユニットを有する第一のポリイソシアネートと親水性ユニットを有さない第二のポリイソシアネートとの混合比(例えば、モル比)、可塑剤の添加の有無、可塑剤の配合量、架橋温度等によって調整してもよい。
図5は、配合6の光学透明粘着シートの損失正接(tanδ)を変更したときの面接着力の変化を示すグラフである。図5に示す面接着力及びtanδは、いずれも85℃で測定された値である。図5では、参考までに、配合1〜4の光学透明粘着シートについても示している。図5に示すように、配合6の光学透明粘着シートの場合、面接着力(グラフのy軸)とtanδ(グラフのx軸)との関係は、y=77x2−119x+55という近似式によって表される。
以上のように、85℃環境下における面接着力を基に、遅れ泡の発生防止に有効な条件を検討したところ、厚み1.5mmで測定された85℃環境下における面接着力を11N/Φ12mm以上とすれば、遅れ泡の発生を防止できることが分かった。また、85℃環境下における損失正接が0.65を超えると、凝集力が小さすぎるため、降伏点が低くなる。そのため、面接着力測定時に光学透明粘着シートが伸び、面接着力を11N/Φ12mm以上とすることが困難になる。よって、85℃環境下における損失正接は、0.65以下であることが好ましい。
また、厚み1.5mmで測定された85℃環境下における面接着力の好ましい下限は、13N/Φ12mmであり、好ましい上限は、30N/Φ12mmである。
また、85℃環境下における損失正接の好ましい下限は、0.2であり、より好ましい上限は、0.60であり、更に好ましい上限は、0.58である。
本発明の光学透明粘着シートは、熱硬化ポリウレタンを含むものである。熱硬化ポリウレタンは、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含有する熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物である。熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られ、下記式(A)に示すような構造を有する。
上記式(A)中、Rは、ポリイソシアネート成分のNCO基を除いた部位を表す。R’は、ポリオール成分のOH基を除いた部位を表す。nは、繰り返し単位数を表す。
熱硬化ポリウレタンは、アクリル変性されていないことが好ましく、主鎖中にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等に由来する部位が含まれないことが好ましい。熱硬化ポリウレタンがアクリル変性されると、疎水化されるため、高温・高湿環境下において水分の凝集が生じやすくなる。この水分の凝集は、白化、発泡等を引き起こし、光学特性(例えば、透明性)を損なうことがある。したがって、熱硬化ポリウレタンをアクリル変性されていないものとすることで、高温・高湿環境下において白化、発泡等による光学特性の低下を防止することができる。上記熱硬化ポリウレタンは、ポリオール成分に由来する単量体単位と、ポリイソシアネート成分に由来する単量体単位との合計量が、熱硬化ポリウレタン全体を構成する単量体単位の80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは、ポリオール成分に由来する単量体単位及びポリイソシアネート成分に由来する単量体単位のみからなる。
ポリオール成分及びポリイソシアネート成分としては、いずれも常温(23℃)で液体のものを用いることができ、溶剤を用いずに熱硬化ポリウレタンを得ることができる。タッキファイヤー等の他の成分は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分のいずれかに添加することができ、好ましくは、ポリオール成分に添加される。このように、熱硬化ポリウレタンを用いて光学透明粘着シートを製造する場合、溶剤の除去が必要ないため、均一なシートを厚く形成することができる。このため、本発明の光学透明粘着シートを、表示パネルと透明導電膜を表層に有する透明部材(タッチパネル)との貼り合わせに用いる場合、ベゼルの段差を被覆することができる。また、本発明の光学透明粘着シートは、厚く形成しても光学特性を維持することができるものであり、透明性の低下、色付き、発泡(被着体との界面での気泡の発生)を充分に抑制することができる。
本発明の光学透明粘着シートは、熱硬化ポリウレタンを含むものであることから、柔軟であり、引っ張り応力が加わったときに、よく伸び、非常に千切れにくい。このため、糊残りすることなく、引き剥がすことが可能である。また、本発明の光学透明粘着シートは、柔軟であるとともに厚膜化できることから、耐衝撃性に優れ、透明導電膜を表層に有する透明部材とカバーパネルとの貼り合わせに用いることができ、更に他の部材を用いる場合には、表示パネル、又は、透明導電膜を表層に有する透明部材と、他の部材との貼り合わせにも用いることができる。更に、本発明の光学透明粘着シートは、熱硬化ポリウレタンを含むものであるため、誘電率が高く、従来のアクリル系樹脂組成物からなる光学透明粘着シートよりも高い静電容量が得られる。このため、本発明の光学透明粘着シートは、静電容量方式のタッチパネルの貼り合わせに好ましく用いられる。
[ポリオール成分]
ポリオール成分としては特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレントリオール、これらの共重合体等のポリアルキレングリコール、これらに側鎖を導入したり分岐構造を導入したりした誘導体、変性体、更にはこれらの混合物等が挙げられる。
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ポリカプロテクトングリコール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオール、これらに側鎖を導入したり分岐構造を導入したりした誘導体、変性体、更にはこれらの混合物等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジアルキルカーボネートとジオールとの反応物が挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート;エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートが挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
ジオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。ジオールとしては、炭素数が4〜9の脂肪族又は脂環族ジオールが好ましく、例えば、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオ−ル、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等を、1種類のみ用いる又は2種類以上を併用することが好ましい。また、ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールとからなるコポリカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールとからなるコポリカーボネートジオール等も好ましい。
また、ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートグリコール、ポリカーボネートトリオール、ポリカーボネートテトラオール、これらに側鎖を導入したり分岐構造を導入したりした誘導体、変性体、更にはこれらの混合物等を用いることもできる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とグリコール成分とを脱水縮合させたものが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸;マロン酸;コハク酸;グルタル酸;アジピン酸;アゼライン酸;セバシン酸等が挙げられる。
グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;p−キシレンジオール等の芳香族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、以上で例示したジカルボン酸及びグリコール成分によって形成される場合には、線状の分子構造を有するが、3価以上のエステル形成成分を用いた分枝状の分子構造を有するポリエステルであってもよい。ジカルボン酸とグリコール成分とは、モル比1.1〜1.3にて150〜300℃で反応させればよい。
ポリオール成分の数平均分子量は、300〜5000であることが好ましい。ポリオール成分の数平均分子量が300未満である場合、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応が速過ぎて熱硬化ポリウレタンを均一なシートに成形することが困難になったり、熱硬化ポリウレタンの柔軟性が低下して脆くなったりすることがある。ポリオール成分の数平均分子量が5000を超える場合、ポリオール成分の粘度が高くなり過ぎて熱硬化ポリウレタンを均一なシートに成形することが困難になったり、熱硬化ポリウレタンが結晶化して白濁したりする等の不具合が生じることがある。ポリオール成分の数平均分子量は、500〜2000であることがより好ましい。
ポリオール成分は、好ましくは、オレフィン骨格を有するものであり、すなわち、主鎖がポリオレフィン又はその誘導体によって構成されるものである。オレフィン骨格を有するポリオール成分としては、例えば、1,2−ポリブタジエンポリオール、1,4−ポリブタジエンポリオール、1,2−ポリクロロプレンポリオール、1,4−ポリクロロプレンポリオール等のポリブタジエン系ポリオール;ポリイソプレン系ポリオール;それらの二重結合を水素又はハロゲン等で飽和化したものが挙げられる。また、ポリオール成分は、ポリブタジエン系ポリオール等に、スチレン、エチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等のオレフィン化合物を共重合させたポリオールであってもよく、その水添物であってもよい。ポリオール成分は、直鎖構造を有するものであってもよく、分岐構造を有するものであってもよい。オレフィン骨格を有するポリオール成分は、1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。上記ポリオール成分は、オレフィン骨格を有するポリオール成分を80モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは、オレフィン骨格を有するポリオール成分のみからなる。
オレフィン骨格を有するポリオール成分の公知例としては、出光興産社製の水酸基末端ポリイソプレンを水添して得られるポリオレフィンポリオール「EPOL(登録商標)」(数平均分子量:2500)、日本曹達社製の両末端水酸基水素化ポリブタジエン「GI−1000」(数平均分子量:1500)、三菱化学社製のポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマー「ポリテール(登録商標)」等が挙げられる。
[ポリイソシアネート成分]
上記ポリイソシアネート成分としては特に限定されず、従来公知のポリイソシアネートを用いることができる。上記ポリイソシアネート成分は、親水性ユニット(親水基)を有する第一のポリイソシアネートと、親水性ユニットを有さない第二のポリイソシアネートとを含むことが好ましい。このようなポリイソシアネート成分によれば、第一のポリイソシアネートの作用(吸湿作用)によって白化を抑制することができ、第二のポリイソシアネートの作用によってポリオール成分、第一のポリイソシアネート、タッキファイヤー、可塑剤等との高い相溶性を発揮することができる。
親水性ユニットは、溶解性パラメータ(SP値)が8.5MPa1/2以上の構成単位を意味し、好ましくは溶解性パラメータが9.0MPa1/2以上の構成単位である。溶解性パラメータは、Fedors法(R.F.Fedors:Polym.Eng.Sci.,14[2],147−154(1974)参照)により算出することができる。また、Fedors法による溶解性パラメータの算出方法については、例えば、関西ペイント社発行の「塗料の研究152号」(2010年10月発行)中の論文「添加剤の溶解性パラメータに関する考察」にも記載されている。また、親水性ユニットとは、イソシアヌレート構造やビウレット構造のようにイソシアネート基由来の構造とは異なるものであり、親水性の官能基をポリイソシアネートに付加して組み込んだ部分を意味する。
親水性ユニットとしては、アルキレンオキシドユニットが好ましい。アルキレンオキシドユニットとしては、例えば、エチレンオキシドユニット、プロピレンオキシドユニットが好適に用いられる。アルキレンオキシドユニットの含有量は、熱硬化性ポリウレタン組成物の全量に対して、0.1〜20重量%であることが好ましい。アルキレンオキシドユニットの含有量が0.1重量%未満である場合、白化が充分に抑制されないことがある。アルキレンオキシドユニットの含有量が20重量%を超える場合、低極性のオレフィン系ポリオール成分(オレフィン骨格を有するポリオール成分)、タッキファイヤー、可塑剤等との相溶性が低下することによって、透明性等の光学特性が低下することがある。また、光学透明粘着シートの吸湿量が多くなるため、高温環境下における粘着性能が悪影響を受ける可能性がある。アルキレンオキシドユニットの含有量は、0.1〜5重量%であることがより好ましい。アルキレンオキシドユニットの含有量が5重量%を超える場合、高温・高湿環境下における吸湿量が多くなり過ぎることがある。
親水性ユニットとしては、アルキレンオキシドユニットの他に、例えば、カルボン酸基、カルボン酸のアルカリ金属塩基、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基等を含むユニットが挙げられる。より詳しくは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、スルホン酸基含有共重合体、スルホン酸基含有共重合体のアルカリ金属塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
(第一のポリイソシアネート)
親水性ユニットを有する第一のポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系ポリイソシアネート又は脂環族系ポリイソシアネートと、アルキレンオキシドユニットを有するエーテル化合物とを反応させて得られる変性ポリイソシアネートが好ましく用いられる。脂肪族系ポリイソシアネート又は脂環族系ポリイソシアネートを用いることにより、光学透明粘着シートの着色、変色等がより発生しにくく、光学透明粘着シートの透明性を長期間に渡って維持することができる。
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、これらの変性体等が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート変性、アロファネート変性、及び/又は、ウレタン変性したもの等が挙げられる。
脂環族系ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI、下記化学式(B)参照)、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、これらの変性体等が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
アルキレンオキシドユニットを有するエーテル化合物としては、例えば、アルコール類、フェノール類、及び/又は、アミン類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。アルキレンオキシドユニットを有するエーテル化合物としては、親水性を高める観点から、アルキレンオキシドユニットを1分子当たり3個以上有するエーテル化合物が好ましく用いられる。
アルコール類としては、例えば、1価アルコール類、2価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブチレンジオール、ペオペンチルグリコール等)、3価アルコール類(グリセリン、トリメチロールプロパン等)が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF等)、フェノール化合物のホルマリン低縮合物(ノボラック樹脂、レゾールの中間体等)が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
変性ポリイソシアネートの1分子当たりのイソシアネート基の数は、平均で2.0以上であることが好ましい。イソシアネート基の数が平均で2.0未満である場合、架橋密度の低下により、熱硬化性ポリウレタン組成物が充分に硬化しないことがある。
(第二のポリイソシアネート)
親水性ユニットを有さない第二のポリイソシアネートとしては、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート等が好ましく用いられる。
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、これらの変性体等が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。なお、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート変性、アロファネート変性、及び/又は、ウレタン変性したもの等が挙げられる。
脂環族系ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、これらの変性体等が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
熱硬化性ポリウレタン組成物において、下記式(M)で定義される、第一のポリイソシアネートと第二のポリイソシアネートとの混合比(モル比)は、白化の抑制と相溶性の確保とを両立させる観点から、好ましくは0.5〜9.0、より好ましくは0.5〜3.0である。上記混合比が9.0を超える場合、白化が充分に抑制されないことがある。
「混合比」=「第二のポリイソシアネートのモル数」/「第一のポリイソシアネートのモル数」 (M)
熱硬化性ポリウレタン組成物は、α比(ポリオール成分由来のOH基のモル数/ポリイソシアネート成分由来のNCO基のモル数)が1以上であることが好ましい。α比が1未満である場合、ポリイソシアネート成分の配合量が、ポリオール成分の配合量に対して過剰であるため、熱硬化ポリウレタンが硬くなり、光学透明粘着シートに要求される柔軟性が確保されにくくなることがある。光学透明粘着シートの柔軟性が低いと、特に、タッチパネル等の光学部材に貼り付ける場合に、光学部材の貼り付け面に存在する凹凸及び段差を被覆しにくくなることがある。また、光学透明粘着シートに要求される接着力が確保されにくくなることがある。α比は、1.3<α<2.0を満たすことがより好ましい。α比が2.0以上である場合、熱硬化性ポリウレタン組成物が充分に硬化しないことがある。
[タッキファイヤー]
熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、タッキファイヤー(粘着付与剤)を含有していてもよい。タッキファイヤーは、接着力を高めるために添加される添加剤であり、通常、分子量が数百〜数千の無定型オリゴマーで、常温で液状又は固形の熱可塑性樹脂である。タッキファイヤーによれば、光学透明粘着シートの接着力を高めることができる。
タッキファイヤーとしては特に限定されず、例えば、石油樹脂系タッキファイヤー、炭化水素樹脂系タッキファイヤー、ロジン系タッキファイヤー、テルペン系タッキファイヤー等を含むものが挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
タッキファイヤーとしては、上述したオレフィン骨格を有するポリオール成分等との相溶性に優れる観点から、石油樹脂系タッキファイヤーが好ましく用いられる。石油樹脂系タッキファイヤーの中でも、ジシクロペンタジエンと芳香族化合物との共重合体を水素添加して得られる水添石油樹脂が好ましく用いられる。ジシクロペンタジエンは、C5留分から得られる。芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。ジシクロペンタジエンとビニル芳香族化合物との割合(ジシクロペンタジエン:ビニル芳香族化合物)は特に限定されないが、重量基準で、70:30〜20:80であることが好ましく、60:40〜40:60であることがより好ましい。水添石油樹脂について、好ましい軟化温度は90〜160℃であり、好ましいビニル芳香族化合物単位含有量は35質量%以下であり、好ましい臭素価は0〜30g/100gであり、好ましい数平均分子量は500〜1100である。水添石油樹脂系タッキファイヤーの公知例としては、出光興産社製の「アイマーブ(登録商標)P−100」等が挙げられる。
タッキファイヤーとしては、上述したオレフィン骨格を有するポリオール成分等との相溶性に優れる観点から、炭化水素樹脂系タッキファイヤーも好ましく用いられる。炭化水素樹脂系タッキファイヤーの中でも、脂環族飽和炭化水素樹脂が好ましく用いられる。脂環族飽和炭化水素樹脂の公知例としては、荒川化学工業社製の「アルコンP−100」等が挙げられる。
タッキファイヤーの酸価は、1mgKOH/g以下であることが好ましい。タッキファイヤーの酸価が1mgKOH/g以下である場合、タッキファイヤーがポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応を阻害するのを充分に防止することができる。
タッキファイヤーの含有量は、熱硬化性ポリウレタン組成物の全量に対して、1〜20重量%であることが好ましい。タッキファイヤーの含有量が1重量%未満である場合、光学透明粘着シートの接着力が充分に高まらないことがあり、特に、高温環境下における接着力が不充分になることがある。但し、本発明の光学透明粘着シートでは、タッキファイヤーが熱硬化性ポリウレタン組成物に配合されていなくても、85℃環境下における面接着力を11N/Φ12mm以上に制御することによって、高温環境下における接着力が充分に確保される。タッキファイヤーの含有量が20重量%を超える場合、タッキファイヤーがポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応を阻害し、熱硬化ポリウレタン中にウレタン架橋が充分に形成されなくなることがある。その結果、高温・高湿環境下において、光学透明粘着シートが溶解して形状が変化したり、タッキファイヤーが析出(ブリード)したりすることがある。これに対して、ウレタン架橋を充分に形成するためにポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応時間を長くすると、生産性が低下してしまう。
[可塑剤]
熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤によれば、熱硬化ポリウレタンの硬度が低くなるため、光学透明粘着シートの取り扱い性及び柔軟性(段差追従性)を高めることができる。
可塑剤としては、熱硬化ポリウレタンに柔軟性を付与するために用いられる化合物であれば特に限定されないが、相溶性及び耐候性の観点から、カルボン酸系可塑剤が好ましく用いられる。カルボン酸系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル(フタル酸系可塑剤);1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル;アジピン酸エステル;トリメリット酸エステル;マレイン酸エステル;安息香酸エステル;ポリ−α−オレフィンが挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。
カルボン酸系可塑剤の公知例としては、BASF社製の「DINCH(登録商標)」、新日本理化社製の「サンソサイザー(登録商標)DUP」、イオネスオリゴマーズ社製の「DURASYN(登録商標)148」等が挙げられる。
[触媒]
熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、触媒を含有していてもよい。触媒としては、ウレタン化反応に用いられる化合物であれば特に限定されず、例えば、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫、ジラウリル酸ジメチル錫、ジブチル錫オキシド、オクタン酸錫等の有機錫化合物;有機チタン化合物;有機ジルコニウム化合物;カルボン酸錫塩;カルボン酸ビスマス塩;トリエチレンジアミン等のアミン系触媒が挙げられる。
触媒としては、非アミン系触媒が好ましい。アミン系触媒を用いる場合、光学透明粘着シートが変色しやすくなることがある。非アミン系触媒の中でも、ジラウリル酸ジメチル錫が好ましい。
触媒の含有量は、例えば、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分の合計量に対して、0.01〜0.1重量%である。
熱硬化性ポリウレタン組成物は、更に、モノイソシアネート成分を含有していてもよい。モノイソシアネート成分は、イソシアネート基を1分子当たり1個有する化合物である。モノイソシアネート成分としては、例えば、オクタデシルジイソシアネート(ODI)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)、イソシアン酸オクチル、イソシアン酸ヘプチル、3−イソシアナートプロピオン酸エチル、イソシアン酸シクロペンチル、イソシアン酸シクロヘキシル、2−メトキシエタンイソシアネート、イソシアナート酢酸エチル、イソシアナート酢酸ブチル、p−トルエンスルフォニルイソシアネート等が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。なお、熱硬化性ポリウレタン組成物は、モノイソシアネート成分を含有しないことが好ましい。
熱硬化性ポリウレタン組成物には、光学透明粘着シートの要求特性を阻害しない範囲で、必要に応じて、着色剤、安定剤、酸化防止剤、防徽剤、難燃剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
本発明の光学透明粘着シートは、85℃での180°剥離による接着力が1.5〜30N/25mmであることが好ましい。180°剥離試験での接着力が1.5N/25mm未満である場合、光学透明粘着シートの高温環境下における接着力が著しく低下するため、高温環境下において、光学透明粘着シート及び被着体の界面での剥離が発生しやすくなる。180°剥離試験での接着力が30N/25mmを超える場合、光学透明粘着シートの硬度が低過ぎてしまうため、クリープ試験の際に被着体の表面からずれやすくなる。また、光学透明粘着シートを被着体から剥がす際に、糊残りが発生しやすくなる。更に、光学透明粘着シートと被着体との間に入った気泡を抜くことが困難となり、取り扱い性が低下してしまう。180°剥離試験での接着力は、好ましくは3〜15N/25mm、より好ましくは5〜15N/25mmである。
本発明の光学透明粘着シートの厚みは特に限定されず、例えば、50〜2500μmであってもよいが、300μm以上であることが好ましく、1000μm以上であることがより好ましい。光学透明粘着シートの厚みが300μm以上であれば、光学透明粘着シートの一方の面を被着体に貼り付ける際に、被着体の表面に存在する凹凸及び段差を被覆しやすくなるため、光学透明粘着シートの他方の面と他の被着体とを充分な接着力で貼り合わせることができる。一方、光学透明粘着シートが厚いほど、光学特性(透明性)の低下、及び、吸湿量の増加による粘着性の低下が発生しやすくなる。なお、光学透明粘着シートは、被着体の貼り付け面に存在する凹凸及び段差の高さに対して3倍以上の厚みを有することが好ましい。
本発明の光学透明粘着シートは、光学透明粘着シートとしての性能(透明性)を確保するために、ヘイズが0.5%以下であることが好ましく、また、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。ヘイズ及び全光線透過率は、例えば、日本電色工業社製の濁度計「HazeMeter NDH2000」を用いて測定される。ヘイズは、「JIS K 7136」に準拠した方法で測定される。全光線透過率は、「JIS K 7361−1」に準拠した方法で測定される。
本発明の光学透明粘着シートの両面には、離型フィルムが貼り付けられていてもよい。本発明の光学透明粘着シートと、上記光学透明粘着シートの一方の面を覆う第一の離型フィルムと、上記光学透明粘着シートの他方の面を覆う第二の離型フィルムとが積層されたものである積層体(以下、「本発明の積層体」とも言う)もまた、本発明の一態様である。本発明の積層体によれば、第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムによって、本発明の光学透明粘着シートの両面を、被着体に貼り付ける直前まで保護することができる。これにより、本発明の光学透明粘着シートに対する、粘着性の低下、及び、異物の付着が防止される。また、本発明の光学透明粘着シートが被着体以外に貼り付いてしまうことも防止されるため、取り扱い性が高まる。
第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムの材質及び厚みは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明の光学透明粘着シート及び第一の離型フィルムの貼り合わせ強度(剥離強度)と、本発明の光学透明粘着シート及び第二の離型フィルムの貼り合わせ強度(剥離強度)とは、互いに異なることが好ましい。このように貼り合わせ強度が互いに異なることにより、第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムのうちの一方(貼り合わせ強度が低い方の離型フィルム)のみを本発明の積層体から剥離し、露出させた光学透明粘着シートの第一の面と第一の被着体とを貼り合わせ、その後、第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムのうちの他方(貼り合わせ強度が高い方の離型フィルム)を剥離し、露出させた光学透明粘着シートの第二の面と第二の被着体とを貼り合わせることが容易になる。
第一の離型フィルムの本発明の光学透明粘着シートと接する側の表面、及び、第二の離型フィルムの本発明の光学透明粘着シートと接する側の表面のうちの少なくとも一方には、易剥離処理(離型処理)が施されていてもよい。易剥離処理としては、例えば、シリコン処理等が挙げられる。
本発明の光学透明粘着シートの用途は特に限定されず、第一の被着体と、第二の被着体と、上記第一の被着体及び上記第二の被着体を接合する本発明の光学透明粘着シートとを備える貼り合わせ構造物(以下、「本発明の貼り合わせ構造物」とも言う)もまた、本発明の一態様である。
第一及び第二の被着体としては、例えば、ガラス基材や樹脂基材が好適に用いられる。第一及び第二の被着体の材質は、同じであってもよいし、異なっていてもよく、例えば、第一の被着体がガラス基材であり、かつ第二の被着体が樹脂基材であってもよい。吸湿等によって樹脂基材の内部に含まれた水分は、高温環境下で気化し、樹脂基材から放出されることで、気泡(遅れ泡)の原因となるが、本発明の光学透明粘着シートを用いることで遅れ泡を防止することができる。
上記ガラス基材は、光学透明粘着シートと接する表面がガラスにより構成されたものであれば特に限定されず、例えば、表示パネル、タッチパネル(ITO透明導電膜付きガラス基板)、カバーガラス等の表示装置を構成するガラス製の各種部材が挙げられる。表示パネルの種類は特に限定されず、例えば、液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル(有機ELパネル)等が挙げられる。光学透明粘着シートを用いて表示装置内の各種部材を貼り合わせれば、表示装置内の空気層(エアギャップ)を無くすことができ、表示画面の視認性を向上することができる。また、ガラス基材に光学透明粘着シートを貼り付ければ、ガラスの飛散を防止する効果が得られる。
上記樹脂基材は、光学透明粘着シートと接する表面が樹脂(プラスチック)により構成されたものであれば特に限定されず、例えば、カバーパネル、タッチセンサーフィルム、偏光板、位相差フィルム等の表示装置を構成する樹脂製の各種部材が挙げられる。樹脂基材は、樹脂以外の材料で構成された部分を含んでいてもよいが、遅れ泡の発生を抑制する本発明の効果を得る観点からは、樹脂で構成された部分の厚さが1mm以上であることが好ましい。樹脂で構成された部分の厚さが1mm未満であれば、樹脂基材の内部に含まれる水分量が少ないので、遅れ泡の発生を抑制する必要性が小さい可能性がある。
上記樹脂基材を構成する樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。なかでも、遅れ泡の発生を抑制する本発明の効果を得る観点からは、ポリカーボネートが好適である。樹脂基材がポリカーボネートを含有する場合には、遅れ泡が顕著に発生しやすく、本発明によって効果的に遅れ泡の発生を抑制することができる。また、樹脂基材が偏光板である場合には、光学透明粘着シートと接する表面は、トリアセチルセルロースで構成されることがある。
本発明の貼り合わせ構造物としては、例えば、本発明の光学透明粘着シートと、表示パネルと、タッチパネルとを備えるタッチパネル付き表示装置等が挙げられる。図6は、本発明の光学透明粘着シートを用いたタッチパネル付き表示装置の一例を模式的に示す断面図である。図6に示すように、表示装置10では、表示パネル11、光学透明粘着シート12、タッチパネル(透明導電膜付きガラス基板)13、光学透明粘着シート12、及び、透明カバーパネル14が順に積層されている。表示パネル11、タッチパネル13、及び、透明カバーパネル14の3つの光学部材は、2枚の光学透明粘着シート12により一体化されている。
表示パネル11は、表示面側に開口が設けられたベゼル(表示パネル11の筐体)11A内に収容されている。ベゼル11Aの開口の外縁には、ベゼル11Aの厚みに対応した段差が存在する。光学透明粘着シート12は、表示パネル11及びベゼル11Aの表示面側を覆って貼り付けられており、ベゼル11Aの厚みに対応した段差を被覆している。光学透明粘着シート12には、ベゼル11Aの厚みに対応した段差を被覆するために、段差部に追従することができる柔軟性(段差追従性)と、ベゼル11Aの厚みよりも厚いこととが求められる。このように、ベゼル11Aに収容された表示パネル11との貼り合わせに用いられる光学透明粘着シート12の厚みは、例えば、700μm以上であることが好ましい。本発明の光学透明粘着シートは、700μm以上の厚みであっても、充分な柔軟性及び光学特性(例えば、透明性)を有するものであり、ベゼル11Aに収容された表示パネル11とタッチパネル13とを貼り合わせる際に好ましく用いられる。
タッチパネル13としては、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式等の検出方式のものが挙げられる。
このような表示装置では、本発明の光学透明粘着シートが用いられているため、種々の環境下であっても、光学透明粘着シートの接着力が低下しにくく、長期間に渡って各光学部材を互いに密着させることができる。その結果、各光学部材と光学透明粘着シートとの間に空隙が発生せず、界面反射の増加等による視認性の低下を防止することができる。本発明の光学透明粘着シートは、例えば、カーナビゲーション装置に組み込まれる表示装置等の車載用の表示装置、スマートフォン等の携帯機器用の表示装置において好ましく用いられる。
本発明の光学透明粘着シートの製造方法は特に限定されず、例えば、熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した後、この熱硬化性ポリウレタン組成物を従来公知の方法で熱硬化させつつ成形する方法が挙げられ、好ましくは、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を攪拌混合して熱硬化性ポリウレタン組成物を調製する工程と、熱硬化性ポリウレタン組成物を硬化する工程とを含む。
本発明の光学透明粘着シートの製造方法の一例としては、まず、所定量のタッキファイヤーを、ポリオール成分に添加し、加温及び攪拌して溶解させることによって、タッキファイヤーマスターバッチを調製する。続いて、得られたタッキファイヤーマスターバッチ、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び、必要に応じて触媒等の他の成分(添加剤)を混合し、ミキサー等で攪拌することによって、液状又はゲル状の熱硬化性ポリウレタン組成物が得られる。その後、即座に、熱硬化性ポリウレタン組成物を成形装置に投入し、第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムによって挟んだ状態で、熱硬化性ポリウレタン組成物を移動させながら架橋硬化させる。その結果、熱硬化性ポリウレタン組成物が半硬化し、第一の離型フィルム及び第二の離型フィルムと一体化したシートが得られる。続いて、熱硬化性ポリウレタン組成物を炉で一定時間架橋反応させることで、熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物(熱硬化ポリウレタン)を含む光学透明粘着シートが得られ、本発明の積層体が完成する。
図7は、本発明の光学透明粘着シートの製造に用いられる成形装置の一例を模式的に示す断面図である。図7に示すように、成形装置20では、まず、硬化前の液状又はゲル状の熱硬化性ポリウレタン組成物23を、離間して配置された一対の成形ロール22から連続的に送り出される一対の離型フィルム(例えば、PETフィルム)21の間隙に流し込む。そして、一対の離型フィルム21の間隙に熱硬化性ポリウレタン組成物23を保持した状態で硬化反応(架橋反応)を進行させつつ、加熱装置24内に搬入する。その後、加熱装置24内において、熱硬化性ポリウレタン組成物23は、一対の離型フィルム21間に保持された状態で熱硬化し、熱硬化性ポリウレタン組成物23の硬化物(熱硬化ポリウレタン)を含む光学透明粘着シート12の成形が完了する。その結果、光学透明粘着シート12の両面に離型フィルム21が積層された積層体(離型フィルム付き光学透明粘着シート)が完成する。
本発明の光学透明粘着シートの製造方法としては、硬化前の熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した後、各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレード等の汎用の成膜装置及び成膜方法を用いるものであってもよい。また、遠心成形法を用いて本発明の光学透明粘着シートを製造してもよい。
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[配合材料]
実施例及び比較例において、熱硬化性ポリウレタン組成物を調製するために用いた材料は、以下の通りである。
(A)ポリオール成分(主剤)
ポリオレフィンポリオール(出光興産社製の「EPOL(エポール、登録商標)」、数平均分子量:2500)
(B)ポリイソシアネート成分(硬化剤)
C4022:アルキレンオキシドユニットを含む変性ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート4022」)
C2760:HDI系ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート2760」)
IPDI:イソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製の「デスモジュールI」)
(C)タッキファイヤー
水添石油樹脂系タッキファイヤー(出光興産社製の「アイマーブP−100」)
(D)触媒
ジラウリル酸ジメチル錫(Momentive社製の「Fomrez catalyst UL−28」)
(E)可塑剤
脱芳香族化炭化水素(BASFジャパン社製の非フタル酸系可塑剤「OFH55」)
(実施例1)
(A)ポリオール成分、(B)ポリイソシアネート成分、(C)タッキファイヤー及び(D)触媒を、往復回転式撹拌機アジターを用いて攪拌混合し、熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した。なお、(B)ポリイソシアネート成分は、(A)ポリオール成分の配合量に対して、α比が1.6となる量を添加した。(C)タッキファイヤーは、熱硬化性ポリウレタン組成物の全量に対して17重量%となる量を添加した。(D)触媒は、熱硬化性ポリウレタン組成物の全量に対して1重量%以下の少量を添加した。
その後、調製された熱硬化性ポリウレタン組成物を、図7に示した成形装置20に注入した。そして、熱硬化性ポリウレタン組成物23を一対の離型フィルム(表面に離型処理が施されたPETフィルム)21によって挟んだ状態で搬送しつつ、炉内温度70℃、炉内時間10分間の条件下で架橋硬化させ、離型フィルム21付きのシートを作製した。その後、シート中の熱硬化性ポリウレタン組成物を、70℃に調節した加熱装置24にて12時間架橋反応させ、熱硬化性ポリウレタン組成物の硬化物(熱硬化ポリウレタン)からなる光学透明粘着シート12の成形が完了した。その結果、光学透明粘着シート12の両面に離型フィルム21が積層された積層体(離型フィルム付き光学透明粘着シート)が完成した。
図8は、実施例1の積層体を模式的に示す断面図である。図8に示すように、積層体では、離型フィルム21、光学透明粘着シート12、及び、離型フィルム21が順に積層されていた。実施例1の光学透明粘着シート12の厚みは、300μmであった。
(実施例2、3、及び、比較例1〜5)
熱硬化性ポリウレタン組成物の組成を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様にして、各例の光学透明粘着シートを作製した。
[光学透明粘着シートの評価]
下記の方法により、実施例及び比較例で作製した光学透明粘着シートの物性確認や評価試験を行った。下記表1に結果を示した。
(1)面接着力測定
アントンパール・ジャパン社製のレオメーター(型式:MCR302)を用いて光学透明粘着シート12の面接着力を測定した。図3に示すように、固定した厚み1.5mmの光学透明粘着シート12に対して、直径12mmの円柱状の接触子41の下端を押し当てた後、接触子41を垂直に引き上げた。引き上げ時に接触子41に加わる力(光学透明粘着シート12と接触子41の接着力)のピーク強度を、面接着力(N/Φ12mm)とした。
接触子41のシャフトには、「SHAFT FOR DISPOSABLE MEASURING SYSTEM D−CP/PP7」を使用し、接触子41の先端には、アルミ製で直径が12mmである「D−PP12/AL/S07」を使用した。光学透明粘着シート12を配置するプレート(皿)には、「EMS/TEK500/600 DISPOSABLE DISHES」を使用した。また、面接着力測定時の光学透明粘着シート12は、ユラボジャパン社製の高低温サーキュレーター(型式:F32−MA)を用いて、85℃に調整された。
面接着力の測定条件は、以下の通りであった。
測定温度:85℃
接触子41の押し込み力:10N
押し込み時間:0.1秒
引き上げ速度:5mm/秒
光学透明粘着シート12の厚み:1.5mm
(2)180°剥離による接着力測定
まず、積層体(離型フィルム付き光学透明粘着シート)を、長さ75mm×幅25mmに裁断し、試験片とした。そして、この試験片の片面の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シート12側を、長さ75mm×幅25mmのスライドガラス31に貼り付け、圧力0.4MPaで30分間保持し、光学透明粘着シート12とスライドガラス31とを貼り合わせた。その後、スライドガラス31とは反対側の離型フィルムを剥離し、光学透明粘着シート12のスライドガラス31とは反対側の面に、厚み125μmのPETシート32(帝人デュポンフィルム社製の「メリネックス(登録商標)S」)を貼り付けた。次に、常温・常湿(温度23℃、湿度50%)環境下で12時間放置した後、図1に示すように、PETシート32を180°方向に引っ張り、光学透明粘着シート12をスライドガラス31との界面で剥離させ、スライドガラス31に対する光学透明粘着シート12の接着力(N/25mm)を測定した。接着力の測定は、常温(温度23℃)環境下と高温環境下(85℃)でそれぞれ行われた。
(3)損失正接(tanδ)の測定
アントンパール社(Anton Paar Germany GmbH)製の粘弾性測定装置「Physica MCR301」を用いて、光学透明粘着シートのtanδを測定した。測定プレートは、PP12を用い、測定条件は、ひずみ0.1%、周波数1Hz、セル温度25℃〜100℃(昇温速度3℃/分)とした。下記表1には、85℃におけるtanδの測定値を記載した。
(4)遅れ泡試験
粒径0.02μmのガラス粉をガラス板上に適量まぶし、その上に、タカトリ社製の真空貼り合わせ機「TPL−0210MH」を用いて、光学透明粘着シートを貼り合わせた。貼り合わせ条件は、真空度50Pa、貼り合わせ圧力2.1kg/cm2、加圧時間10秒とした。ガラス板上に貼り合わせた光学透明粘着シートについて、85℃で12時間放置後、ガラス粉の近傍で浮き(ガラス板からの光学透明粘着シートの剥がれ)が発生しているか否かを目視で確認した。
〇:浮きの発生なし。
△:浮きが少量発生した。
×:浮きが多数発生した。
(5)クリープ試験
図9は、光学透明粘着シートのクリープ特性の評価方法を説明するための模式図である。まず、積層体(離型フィルム付き光学透明粘着シート)を、長さ25mm×幅25mm(25mm角)に裁断し、試験片とした。そして、この試験片の片面の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シート12側を、長さ75mm×幅25mmのスライドガラス31に貼り付け、圧力0.4MPaで30分間保持し、光学透明粘着シート12とスライドガラス31とを貼り合わせた。その後、スライドガラス31とは反対側の離型フィルムを剥離し、光学透明粘着シート12のスライドガラス31とは反対側の面に、厚み125μmのPETシート32(帝人デュポンフィルム社製の「メリネックス(登録商標)S」)を貼り付けた。次に、図9に示すように、PETシート32側に150gの重り33を固定した状態のものを吊り下げて、高温・常湿(温度85℃、湿度50%)環境下に120分間放置した。そして、光学透明粘着シート12がスライドガラス31又はPETシート32との界面で剥離することで重り33が落下するかどうか、及び、光学透明粘着シート12の吊り下げ開始時の位置(貼り付けた位置:ゼロ点)から下方へのずれ量を確認した。下記表1に、下記基準による評価結果を示した。
〇:重り33が120分間落下せず、ずれ量が0mmであった。
△:重り33が120分間落下せず、ずれ量が2mm以下であった。
×:重り33が120分以内に落下した。
上記表1に示すように、実施例1〜3の光学透明粘着シートは、85℃環境下における面接着力が11N/Φ12mm以上に調整されていたので、遅れ泡を防止することができた。また、実施例1〜3の光学透明粘着シートは、クリープ特性においても良好であった。
一方、比較例1〜5の光学透明粘着シートは、85℃環境下における面接着力が11N/Φ12mm未満であり、遅れ泡を防止することができなかった。