JP5592178B2 - 電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法およびアルミニウム電解コンデンサ - Google Patents

電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法およびアルミニウム電解コンデンサ Download PDF

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Description

この発明は、電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法及びアルミニウム電解コンデンサに関する。
なお、この明細書において「アルミニウム」の語はその合金を含む意味で用い、アルミニウム材には箔と板およびこれらを用いた成形体が含まれる。
アルミニウム電解コンデンサ用電極材料として一般に用いられるアルミニウム材は、静電容量を大きくする目的で、電気化学的あるいは化学的エッチング処理を施して、アルミニウム箔の実効面積を拡大することが行われている。
直流エッチング法でトンネル状ピットを生成させる電解コンデンサ陽極用アルミニウム材の製造において、通常は(100)面の結晶方位を発達させるために500℃前後の温度で不活性ガス中もしくは真空中で最終焼鈍するのが一般的である。最終焼鈍は、仕上冷間圧延より後工程で行われる。
最終焼鈍により生成するアルミニウム材表層の酸化膜の特性はその後のエッチング特性を大きく左右するため、圧延終了後であって最終焼鈍前のアルミニウム材を洗浄して、アルミニウム表層を如何に制御するかが重要である。
圧延終了後のアルミニウム材の表面は、圧延により露出した部分が新たに酸化され、圧延時に油分が固着するため、表層酸化膜が不安定であり、圧延後そのまま焼鈍したアルミニウム材に電解エッチングを施すとエッチング斑を生じる恐れがある。
エッチング斑を防止する方法として、圧延終了後のアルミニウム材を圧延終了後であって最終焼鈍前に有機溶剤やアルカリ水溶液で洗浄することが考えられる。
しかしながら、有機溶剤洗浄液では、圧延時に固着した油分を除去することが困難であるという問題がある。また、アルカリ水溶液で洗浄した場合、固着した油分は除去できるものの、洗浄後のアルミニウム表面はAl−OH基が多く皮膜の安定性に問題がある。このため、安定で経時変化の少ない皮膜を生成させるため最終焼鈍前に硝酸で処理することが検討されている。
例えば、特許文献1には、冷間の箔圧延工程の前および/又は後に、該箔地を硝酸を主成分とする洗浄剤で処理することを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法が開示されている。この公報に記載された方法によれば、硝酸を主成分とする洗浄剤が、アルミニウム箔地表面に付着する圧延油を容易に分解除去するとともに、安定で経時変化の少ない均一な不働態皮膜を形成させるので次の工程で生成する酸化皮膜の厚みは薄く、エッチング処理効果を大ならしめることが記載されている。
特許文献2には、箔圧延終了後のアルミニウム箔の表面を、アルミニウムに対し吸着性の高い酸またはその化合物に接触させる吸着処理を施した後、焼鈍を行うことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法が記載されており、吸着処理として用いる酸として硝酸が記載されている。
しかしながら、前記特許文献1及び特許文献2に記載された、硝酸によりアルミニウム材表層酸化膜を安定なものとした後焼鈍する方法を用いても静電容量の向上には限界があった。
特開昭60−92489号公報 特開昭63−86878号公報
本発明は上記のような、従来の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造における最終焼鈍前の酸による処理の問題点を解決し、エッチング特性に優れた電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法およびアルミニウム電解コンデンサを提供することを目的としている。
上記目的を解決するために、本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法は下記(1)〜(16)に記載の構成を有する。
(1)冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を、硫酸、塩酸、リン元素を含む酸の中から選ばれる1種または2種以上の酸を含む酸水溶液に接触させ、その後焼鈍することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(2)冷間圧延後、酸水溶液との接触前にアルミニウム材を脱脂する前項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(3)脱脂を有機溶剤を用いて行う前項2に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(4)脱脂を、界面活性剤が添加された水を用いて行う前項2または3に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(5)酸水溶液中の硫酸濃度が0.0005質量%以上60質量%以下である前項1ないし前項4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(6)酸水溶液中の硫酸濃度が1.2質量%以上30質量%以下である前項5に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(7)酸水溶液中の硫酸濃度が1.2質量%以上9.5質量%以下である前項6に記載の特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(8)酸水溶液中の塩酸濃度が0.0005質量%以上30質量%以下である前項1ないし前項4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(9)酸水溶液中の塩酸濃度が0.05質量%以上30質量%以下である前項8に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(10)酸水溶液中の塩酸濃度が1.2質量%以上9.5質量%以下である前項9に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(11)リン元素を含む酸はオルトリン酸であり、酸水溶液中のオルトリン酸濃度が1.2質量%以上30質量%以下である前項1ないし前項4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(12)酸水溶液中のオルトリン酸濃度が1.2質量%以上9.5質量%以下である前項11に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(13)酸水溶液の温度が10℃以上95℃以下であるとともに、アルミニウム材と酸水溶液との接触時間が0.2秒以上10分以下である前項1ないし前項12のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(14)焼鈍を450〜600℃にて不活性な雰囲気中で行う前項1ないし前項13のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(15)焼鈍を460〜560℃にて行う前項14に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(16)アルミニウム純度が99.9質量%以上である前項1ないし前項15のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
また、本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材は下記(17)(18)に記載の構成を有する。
(17)前項1ないし前項16のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
(18)中圧用または高圧用陽極材である前項17に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
また、本発明の電解コンデンサ用電極材の製造方法は下記(19)(20)に記載の構成を有する。
(19)前項1ないし前項16のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたアルミニウム材に、エッチングを実施することを特徴とする電解コンデンサ用電極材の製造方法。
(20)エッチングの少なくとも一部が直流エッチングである前項19に記載の電解コンデンサ用電極材の製造方法。
また、本発明の電解コンデンサは下記(21)に記載の構成を有する。
(21)電極材として、前項19または前項20に記載の製造方法によって製造されたアルミニウム電極材が用いられていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法は、冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を酸水溶液に接触させた後に所定条件で焼鈍することにより、その後のエッチングにおいてエッチピットを均一に分散させ得る表層酸化膜を形成するものである。そして、このアルミニウム材にエッチングを施すことにより、エッチピットを均一に分散させて実効面積を拡大し、ひいては静電容量の増大を図るものである。
アルミニウム材の表面に接触させる酸水溶液に含まれる酸としては、硫酸、塩酸、リン元素を含む酸の中から選ばれる1種又は2種以上を用いる。リン元素を含む酸としては、オルトリン酸(以下、オルトリン酸をリン酸と称す)、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸が好ましい。
硫酸およびリン元素を含む酸は、アルミニウム表層酸化膜を安定なものとし、焼鈍後のエッチングにおいてエッチピットを均一に分散させる効果がある。また、塩酸は、焼鈍後のエッチングにおいてエッチピットの生成を促進し、アルミニウム材表面全体から多くのピットを生成させて分散性を向上させる効果がある。
本発明の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法は、冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を酸水溶液に接触させた後に焼鈍することにより、その後のエッチングにおいてエッチピットを均一に分散させ得る表層酸化膜を形成するものである。そして、このアルミニウム材にエッチングを施すことにより、エッチピットを均一に分散させて実効面積を拡大し、ひいては静電容量の増大を図るものである。
以下に、電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造工程に沿って、本発明について詳述する。
アルミニウム材の純度は電解コンデンサ用に使用される範囲であれば特に限定されないが、純度99.9質量%以上のものが好ましく、特に99.95質量%以上が好ましい。なお、本発明においてアルミニウム材の純度は100質量%からFe,Si,Cu,Mn,Cr,Zn,TiおよびGaの合計濃度(質量%)を差し引いた値とする。
一般的なアルミニウム材の製造は、アルミニウム材料の溶解成分調整・スラブ鋳造、均熱処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、仕上冷間圧延(低圧下圧延)、最終焼鈍の順に実施される。本発明で規定する酸水溶液への接触は、冷間圧延(仕上冷間圧延を含む)を施したアルミニウム材に対して行い、その後に焼鈍を行うものである。前記接触は冷間圧延終了後に行うことが推奨され、従ってその後に行う焼鈍は最終焼鈍であることが推奨されるが、本発明は最終焼鈍以外の焼鈍の前に酸水溶液への接触を行うことを排除するものではない。
なお、本発明で規定した以外の工程および工程条件は限定されず、常法に従って行う。また、アルミニウム材のエッチング条件との関係で、アルミニウム材の製造工程条件は適宜変更される。ここで、中間焼鈍は冷間圧延工程の途中において、最終焼鈍後の(100)面の結晶方位をさらに発達させる目的で実施する工程である。また、中間焼鈍以前の工程でアルミニウム表面の不純物や油分を除去する目的で洗浄を行ってもよい。中間焼鈍以前の工程で用いる洗浄液は特に限定されないが、アルカリ水溶液、酸水溶液、有機溶剤等が用いられる。
〔酸水溶液への接触〕
アルミニウム材の表面に接触させる酸水溶液に含まれる酸として、硫酸、塩酸、リン元素を含む酸の中から選ばれる1種または2種以上を用いる。リン元素を含む酸としては、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸を使用できる。
硫酸およびリン元素を含む酸は、アルミニウム表層酸化膜をより安定なものとし、焼鈍後のエッチングにおいてエッチピットを均一に分散させる効果がある。また、塩酸は、焼鈍後のエッチングにおいてエッチピットの生成を促進し、アルミニウム材表面全体から多くのピットを生成させて分散性を向上させる効果がある。
本発明は、酸水溶液中のこれらの酸濃度を限定するものではないが、以下の濃度が推奨される。
硫酸またはリン酸は、濃度が低すぎるとアルミニウム表層酸化膜の安定性が不十分であって静電容量向上効果が小さく、濃度が高すぎると、酸水溶液へと接触後に水洗を行っても、アルミニウム表面に硫酸イオンまたはリン酸イオンが多く残留する恐れがあるためその後焼鈍することにより得られる表層酸化膜が不均質なものとなりやすい。これらの理由により、硫酸濃度の好ましい範囲は0.0005質量%以上60質量%以下、さらに好ましい範囲は1.2質量%以上30質量%以下、特に好ましい範囲は1.2質量%以上9.5質量%以下である。また、リン酸濃度の好ましい範囲は1.2質量%以上30質量%以下、さらに好ましい範囲は1.2質量%以上9.5質量%以下である。
塩酸は、濃度が低すぎるとその後の焼鈍により得られるアルミニウム材の電解エッチングにおけるピット生成促進効果が小さく、濃度が高すぎるとアルミニウム材が不均質に溶解し、その後焼鈍により得られるアルミニウム材の電解エッチングにおけるピット分散性が低下する。塩酸濃度の好ましい範囲は0.0005質量%以上30質量%以下、さらに好ましい範囲は0.05質量%以上30質量%以下、特に好ましい範囲は1.2質量%以上9.5質量%以下である。
前記酸水溶液の液温は、特に限定されるものではないが、10℃以上95℃以下であることが好ましい。液温が10℃未満の場合にはピット分散性による静電容量向上効果が不十分であり、95℃より高い温度の液を用いても10℃以上95℃以下に比べて静電容量がさらに向上することはなくエネルギー消費によるコスト高を招く。さらに好ましい液温は10〜85℃であり特に20〜70℃が好ましい。また、酸水溶液へのアルミニウム材の接触時間も特に限定されるものではないが、0.2秒以上10分以下であることが好ましく、さらに0.5秒以上5分以下が好ましい。接触時間が0.2秒未満では静電容量向上効果が小さく、10分より長く接触させても0.2秒以上10分以下の接触に比べ静電容量向上効果が向上することはなく長時間処理のため生産性が低下する。
また、アルミニウム材の表面に接触させる酸水溶液に含まれる酸として、有機カルボン酸や有機スルホン酸を用いることもできる。
なお、酸水溶液とアルミニウム材の接触方法としては特に限定されないが、浸漬、水溶液面へのアルミニウム材の接触、スプレー等があげられる。
〔脱脂〕
冷間圧延工程を経たアルミニウム材は、酸水溶液への接触前に脱脂を行って表面状態を整えることが好ましい。脱脂することによってアルミニウム材表面に付着している油分が除去され、その後に行う酸水溶液への接触および焼鈍によって安定して均質な表層酸化膜が確実に形成され、ひいてはエッチピットの分散性を向上させることができる。
脱脂の方法としては、有機溶剤または界面活性剤が添加された水を用いてアルミニウム材を洗浄するか、もしくは圧延終了後のアルミニウム材を熱ロール等の加熱体に接触させる方法を例示できる。
前記有機溶剤は特に限定されるものではないが、一例として、アルコール、ジオール、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素、アルカン系炭化水素、シクロヘキサン、ケトン、エーテル、エステル、石油製品等が挙げられる。
さらに具体的なアルコールの例としては、メタノール(CH3OH)、エタノール(C25OH)、1−プロパノール(CH3CH2CH2OH)、2−プロパノール(CH3CH2(OH)CH3)、1−ブタノール(CH3CH2CH2CH2OH)、2−ブタノール(CH3CH2CH2(OH)CH3)、1−ペンタノール(CH3CH2CH2CH2CH2OH)、2−ペンタノール(CH3CH2CH2CH2(OH)CH3)等が挙げられ、Cn2n+1OH(n=1〜10の自然数)で表されるものが好ましい。また、シクロヘキサノール等の脂環式炭化水素類も用いることができる。
また、ジオールの例としては1,2−エタンジオール(HOCH2CH2OH)、1,2−プロパンジオール(CH3CH(OH)CH2OH)、1,3−プロパンジオール(HOCH2CH2CH2OH)等を例示できる。
上記アルカン系炭化水素の例としては、ペンタン(C512)、ヘキサン(C614)、ヘプタン(C716)、オクタン(C818)、ノナン(C920)、デカン(C1022)等が挙げられ、Cn2n+2(n=5〜15の自然数)で表されるものが好ましい。またシクロヘキサン等の脂環式炭化水素の適用も可能である。
また、ケトンの例としてはアセトン(CH3COCH3)、2−ブタノン(CH3COC25)、3−ペンタノン(CH3CH2COCH2CH3)、3−メチル−2−ブタノン(CH3COCH(CH32)等を例示でき、R1COR2(R1およびR2:脂肪族炭化水素基であり、R1とR2の炭素数の合計が8以下)で表されるものが好ましい。また、シクロヘシサノン(C610O)等環状ケトンを用いても良い。
また、エーテルの例としては、R1−O−R2(R1およびR2:脂肪族炭化水素基であり、R1とR2の炭素数の合計が8以下)で表される物質、2−メトキシエタノール(CH3OCH2CH2OH)、2−エトキシエタノール(CH3CH2OCH2CH2OH)、2−ブトキシエタノール(CH3CH2CH2CH2OCH2CH2OH)、2−(2−エトキシ)エトキシエタノール(CH3CH2OCH2CH2OCH2CH2OH)等のグリコールエーテルも含まれる。
また、エステルの例としては、CH3COOR(R:炭素数1〜5である脂肪族炭化水素基)で表される酢酸エステルが例示できる。
また、石油製品の例としては、工業ガソリン(JIS K 2201)、自動車ガソリン(JIS K 2202)、航空ガソリン(JIS K 2206)、灯油(JIS K 2203)、軽油(JIS K 2204)、航空ガソリン(JIS K 2206)、石油エーテル(JIS K 8593)、石油ベンジン(JIS K 8594)、リグロイン(JIS K 8937)、ケロシン等が挙げられる。
前記界面活性剤も特に限定されるものではないが、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤を用いることができ、これらの界面活性剤は水に添加して洗浄液として用いられる。
前記アニオン界面活性剤として硫酸エステル塩、スルホン酸塩を用いることができる。
さらに具体的な硫酸エステル塩としては、R−OSO3Na(R=炭素数8〜18の飽和炭化水素基もしくは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素基)が利用でき、具体的にはドデシル硫酸ナトリウム(C1225OSO3Na)、ヘキサデシル硫酸ナトリウム(C1633OSO3Na)、ステアリル硫酸ナトリウム(C1837OSO3Na)、オレイル硫酸ナトリウム(C1835OSO3Na)等を例示できる。
また、スルホン酸塩としては、R−SO3Na(R=炭素数8〜18の飽和炭化水素基もしくは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素基)もしくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C1225−C64−SO3Na)等のR−SO3Na(R:アルキル基が炭素数8〜14の飽和炭化水素基もしくは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素基であるアルキルベンジル基)で表されるものを用いることができる。
前記カチオン界面活性剤としてR−N+(CH33・Cl-(R=炭素数8〜16の飽和炭化水素基)で表される第4級アンモニウム塩を用いることができる。
非イオン性界面活性剤として、R−O−(CH2CH2O−)nH(R=炭素数8〜16の飽和炭化水素基もしくは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素基、n=6〜14)またはR−O−(CH2CH2O−)nH(R=アルキル基が炭素数8〜12の飽和炭化水素基もしくは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素基であるアルキルフェニル基、n=6〜14)で表されるポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を例示できる。なお、nが上記範囲より多いものが非イオン性界面活性剤中に50%以下のモル比で含まれていても良い。
上述した界面活性剤は、少なくとも1種類以上を水に添加し洗浄液として用いることができる。界面活性剤の炭素数が上記範囲より少ない界面活性剤が50%以下のモル比で添加されていても良い。なお、アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤を水中で混合させると沈殿が生成するため、混合は避けることが好ましい。
洗浄液における界面活性剤の濃度は特に規定されないが、脱脂効果を発揮させるために臨界ミセル濃度以上であることが好ましい。
また、有機溶剤による脱脂および界面活性剤による脱脂は、どちらか一方のみを行っても良く、順次両方を行っても良い。
さらに、脱脂を目的として、アルミニウム材に接触させる酸水溶液中に界面活性剤または水と混合できる有機溶剤を添加しても良い。酸水溶液中に添加する界面活性剤の種類は特に限定されないが、酸水溶液との接触前の脱脂に用いるものと同じ界面活性剤、具体的には上述した各種アニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤を用いることができる。これらの界面活性剤は少なくとも1種類以上を酸水溶液中に添加して用いることができ、界面活性剤の炭素数が上記範囲より少ない界面活性剤が50%以下のモル比で添加されていても良い。界面活性剤の濃度は特に規定されないが、洗浄効果を発揮させるために臨界ミセル濃度以上であることが好ましい。酸水溶液に添加する有機溶剤の種類も特に限定されないが、酸水溶液との接触前の脱脂に用いる有機溶剤のうちで水と混合できるもの、具体的には上述したメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、エチレングリコール等のジオール、ジオキサン等を例示できる。
〔焼鈍〕
酸水溶液に接触させた後のアルミニウム材は、水洗、乾燥された後焼鈍される。この焼鈍により、エッチピットを均一に分散させ得る安定した表層酸化膜が形成される。
乾燥の方法は特に限定されないが、空気中加熱、不活性雰囲気加熱、真空加熱あるいは加熱体とアルミニウム材の接触加熱を用いることができる。
焼鈍においては、前工程である酸接触工程でアルミニウム材に形成された酸化膜の厚さを焼鈍工程で増大させ過ぎて、エッチング特性を劣化させないようにすることが好ましい。焼鈍が最終焼鈍である場合、焼鈍後の酸化皮膜の合計厚さがハンターホール法(M.S.Hunter and P.Fowle J.Electrochem.Soc.,101[9],483(1954)参照)による厚さで2.5〜5nmとなるように最終焼鈍を実施するのが好ましい。また、最終焼鈍後のアルミニウム材の(100)面積率は90%以上が好ましい。
この焼鈍における処理雰囲気は特に限定されるものではないが、酸化皮膜の厚さを増大させすぎないように、水分および酸素の少ない不活性な雰囲気中で加熱するのが好ましい。具体的には、アルゴン、窒素などの不活性ガス中あるいは0.1Pa以下の真空中で加熱することが好ましい。特に好ましい焼鈍雰囲気は不活性ガス中である。
焼鈍の方法は特に限定されるものではなく、コイルに巻き取った状態でバッチ焼鈍しても良く、コイルを巻き戻し連続焼鈍した後コイルに巻き取っても良く、バッチ焼鈍と連続焼鈍の少なくともどちらかを複数回行っても良い。
焼鈍時の温度、時間は特に限定されるものではないが、例えばコイルの状態でバッチ焼鈍を行う場合は、450〜600℃にて、10分〜50時間焼鈍するのが好ましい。温度が450℃未満、時間が10分未満では、エッチピットが均一に生成する表面が得られず、(100)面の結晶方位の発達も不十分となる恐れがあるからである。逆に600℃を越えて焼鈍すると、コイルでバッチ焼鈍する場合はアルミニウム材が密着を起こし易くなり、また50時間を超えて焼鈍してもエッチングによる拡面効果は飽和し、却って熱エネルギーコストの増大を招く。特に好ましい焼鈍時の温度は450〜580℃、さらに好ましくは、460〜560℃である。特に好ましい焼鈍時間は20分〜40時間である。
また、昇温速度・パターンは特に限定されず、一定速度で昇温させても良く、昇温、温度保持を繰り返しながらステップ昇温・冷却させても良く、焼鈍工程にて450〜600℃の温度域で合計10分〜50時間焼鈍されれば良い。
最終焼鈍後に得られる電解コンデンサ電極用アルミニウム材の厚さは特に規定されない。箔と称される200μm以下のものも、それ以上の厚いものも本発明に含まれる。
最終焼鈍を終了したアルミニウム材には、拡面積率向上のためエッチング処理を実施し、電解コンデンサ用電極材とする。エッチング処理条件は特に限定されないが、好ましくは少なくとも一部に直流エッチング法を採用するのが良い。直流エッチング法によって、前記焼鈍において生成が促進されたエッチピットの核となる部分において、深く太くエッチングされ、多数のトンネル状ピットが生成され、高静電容量が実現される。
エッチング処理後、望ましくは化成処理を行って陽極材とするのが良く、特に、中圧用および高圧用の電解コンデンサ電極材として使用されるのが良いが、陰極材として用いることを妨げるものではない。また、この電極材を用いた電解コンデンサは大きな静電容量を実現できる。
なお、静電容量の測定は常法に従って行えば良く、化成処理されたエッチド箔について、例えば30℃の80g/Lのホウ酸アンモニウム水溶液中で、ステンレス板を対極として120Hzにて測定する方法を例示できる。
(実施例1)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔をアセトンにて脱脂した後、40℃の3質量%硫酸水溶液に60秒間浸漬し、その後水洗、空気中での乾燥を順次実施した。このアルミニウム箔をアルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(実施例2〜32)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔をアセトンにて脱脂した後、表1または表2に示す条件で酸水溶液へ浸漬し、その後水洗、空気中での乾燥を順次実施した。このアルミニウム箔をアルゴン雰囲気下にて室温から表1または表2に示す保持温度まで50℃/hで昇温させた後、表1または表2に示す保持温度にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。なお、表1および表2において「リン酸」はオルトリン酸である。
(実施例33)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔をドデシル硫酸ナトリウムが0.1質量%含まれる水に浸漬して脱脂した後、40℃の5質量%硫酸水溶液に10秒間浸漬し、その後水洗、空気中での乾燥を順次実施した。乾燥後のアルミニウム箔をアルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却した後炉だしし、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(実施例34)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔を、0.1質量%ドデシル硫酸ナトリウムと9質量%硫酸が含まれる70℃の水溶液に60秒間浸漬した後、水洗、空気中での乾燥を順次実施した。乾燥後のアルミニウム箔をアルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(実施例35)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔を、70℃9質量%硫酸水溶液に60秒間浸漬した後、水洗、空気中での乾燥を順次実施した。乾燥後のアルミニウム箔をアルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(実施例36)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔をn−へキサンにて脱脂した後、60℃の3質量%硫酸水溶液に10秒間浸漬し、その後水洗、空気中での乾燥を順次実施した。乾燥後のアルミニウム箔をアルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(実施例37)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔をアセトンにて脱脂した後、40℃の55質量%硫酸水溶液に60秒間浸漬し、その後水洗、空気中での乾燥を順次実施した。乾燥後のアルミニウム箔をアルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(実施例38)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔をアセトンにて脱脂した後、93℃の7質量%硫酸水溶液に60秒間浸漬し、その後水洗、空気中での乾燥を順次実施した。乾燥後のアルミニウム箔をアルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(比較例1)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔を、アルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(比較例2)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔をアセトンにて脱脂した後、アルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(比較例3)
厚さ110μmに圧延された純度99.99質量%のアルミニウム箔をアセトンにて脱脂した後、40℃の5質量%硝酸水溶液に60秒間浸漬し、その後水洗、空気中での乾燥を順次実施した。乾燥後のアルミニウム箔をアルゴン雰囲気下にて室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持する最終焼鈍を施し、次いで冷却し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
(比較例4)
硝酸濃度が0.2質量%であること以外は比較例3と同様にして電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。
実施例および比較例で得られた電解コンデンサ電極用アルミニウム箔をHCl:1.0mol/lとH2SO4:3.5mol/lを含む液温75℃の水溶液に浸漬した後、電流密度0.2A/cm2で電解エッチング処理を施した。電解エッチング処理後の箔をさらに前記組成の塩酸−硫酸混合水溶液に90℃にて360秒浸漬し、ピット径を太くしエッチド箔を得た。
得られたエッチド箔を化成電圧270VにてEIAJ規格に従い化成処理し静電容量測定用サンプルとし、静電容量を測定した。表1および表2に、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔作製条件、および比較例3の静電容量を100%としたときの相対静電容量を示す。
Figure 0005592178
Figure 0005592178
上記のように、アルミニウム材の表面を硫酸、塩酸、リン元素を含む酸の中から選ばれる1種または2種以上の酸を含む酸水溶液に接触させ、その後最終焼鈍することによりエッチング特性の優れた電解コンデンサ電極用アルミニウム材を得ることができ、酸水溶液への接触を行わなかった比較例1および比較例2、硝酸水溶液への接触を行った後最終焼鈍した比較例3及び比較例4に比べ静電容量が高い。
この発明は、電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法およびアルミニウム電解コンデンサとして利用することができる。

Claims (19)

  1. 冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を、電解エッチングを行うことなく硫酸、塩酸のいずれかまたは両方を含む酸水溶液に接触させ、その後焼鈍することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法であり、前記冷間圧延から前記焼鈍までの工程において加熱体との接触によるアルミニウム材の加熱工程を含まない電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  2. 冷間圧延後、酸水溶液との接触前にアルミニウム材を脱脂する請求項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  3. 脱脂を有機溶剤を用いて行う請求項2に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  4. 脱脂を、界面活性剤が添加された水を用いて行う請求項2に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  5. 酸水溶液中の硫酸濃度が0.0005質量%以上60質量%以下である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  6. 酸水溶液中の硫酸濃度が1.2質量%以上30質量%以下である請求項5に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  7. 酸水溶液中の硫酸濃度が1.2質量%以上9.5質量%以下である請求項6に記載の特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  8. 酸水溶液中の塩酸濃度が0.0005質量%以上30質量%以下である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  9. 酸水溶液中の塩酸濃度が0.05質量%以上30質量%以下である請求項8に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  10. 酸水溶液中の塩酸濃度が1.2質量%以上9.5質量%以下である請求項9に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  11. 酸水溶液の温度が10℃以上95℃以下であるとともに、アルミニウム材と酸水溶液との接触時間が0.2秒以上10分以下である請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  12. 焼鈍を450〜600℃にて不活性な雰囲気中で行う請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  13. 焼鈍を460〜560℃にて行う請求項12に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  14. アルミニウム純度が99.9質量%以上である請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  15. 請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
  16. 中圧用または高圧用陽極材である請求項15に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
  17. 請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたアルミニウム材に、エッチングを実施することを特徴とする電解コンデンサ用電極材の製造方法。
  18. エッチングの少なくとも一部が直流エッチングである請求項17に記載の電解コンデンサ用電極材の製造方法。
  19. 電極材として、請求項17または請求項18に記載の製造方法によって製造されたアルミニウム電極材が用いられていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
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