超音波画像診断装置では、超音波プローブ内の微小振動素子毎に異なる遅延時間で電気パルスが印加され、得られた送信ビームが被検体内に照射される。そして、被検体内からの反射波を、送信ビームを照射した微小振動素子群と同一の微小振動素子群で受信し、増幅遅延加算することで受信ビームが形成される。さらに受信ビームから得られたRF(Radio Frequency)信号が検波・圧縮されて2次元断層画像が得られる。
ところで、アレイ型の超音波振動子群(圧電素子アレイ)を用いた超音波走査によって得られる2次元断層画像には、一般にスペックルと呼ばれる音響的なノイズが含まれる。スペックルは、超音波の干渉に起因して生じる粒状模様のノイズであり、患者等の被検体の生体内部構造を直接表すものではない。スペックルノイズの低減に関する技術は、例えば、特許文献1で提案されている。
また、動いている物体の画像を得る場合や、超音波プローブを速く動かした場合のように撮像対象と超音波プローブとの間における相対速度が比較的速いような場合には、得られる画像に、時相差による縦筋ノイズが含まれる場合がある。
さらに、体内や造影剤で発生する高調波成分を用いて映像を得るコントラストハーモニックイメージングにおいても、スペックルノイズが含まれる。コントラストハーモニックイメージングに関する技術は、例えば、特許文献2で提案されている。
近年、スペックルノイズの影響を低減するために、複数の方向から被検体に超音波を送受信し、各方向からの反射波によりそれぞれ得られた複数の画像を加算する空間コンパウンドという方法が実現されている。また、時相差による縦筋ノイズの影響を低減するために、1回の送信で複数の走査線上における受信信号を得る並列同時受信という方法が実現されている。
図1は、空間コンパウンドの概略を説明する図である。
超音波プローブ100は、フレーム毎に走査方向を変えて超音波ビームを照射する。すなわち、第1フレームでは、図1(a)に示すように、超音波プローブ100の真下に超音波走査が行われ、第2フレームでは、図1(b)に示すように、超音波プローブ100の真下よりやや左側に超音波走査が行われ、第3フレームでは、図1(c)に示すように、超音波プローブ100の真下よりやや右側に超音波走査が行われ、第4フレームでは、図1(d)に示すように、再び、超音波プローブ100の真下に超音波走査が行われる。同様に、フレーム毎に、真下、左側、右側の順で繰り返し超音波走査が行われる。
一般的に空間コンパウンドは、複数方向の走査によって得られた走査線信号の加算平均(時系列データに関して、ある一定の期間の幅で次々と求めた平均)を算出することによって行なわれる。
従って、図1(c)に示した超音波走査によって走査線信号が得られると、図1(a)、図1(b)、および図1(c)に示した超音波走査によって得られた走査線信号の加算平均が算出され、図1(d)に示した超音波走査によって走査線信号が得られると、図1(b)、図1(c)、および図1(d)に示した超音波走査によって得られた走査線信号の加算平均が算出される。
すなわち、出力される超音波画像データは、その時点での最新の3時刻における複数の走査方向の各フレームを加算平均することで得られる。各フレームに含まれるスペックルノイズは、この加算平均の演算過程で相対的に小さくなるため、表示される超音波画像の画質は向上することとなる。
図2は、並列同時受信の概略を説明する図である。図2(a)は、超音波プローブ100からの送信ビームを配置した例を示し、図中に示す数字は、スキャン順を表している。図2(b)は、受信位置を示し、図中に示す数字は、表示の際の読み出し順を表している。
スキャン順1において、所定の幅を有するランダムな波面の送信ビームを形成するように超音波送信信号が送信され、超音波送信信号の波面上となるように4本の受信ビームを配置して同時に4本の走査線信号が得られる。次に、スキャン順2において、隣り合う受信ビームの位置が重なるように、送信ビームの波面を所定走査線分だけ移動させて超音波送信信号が送信され、4本の走査線信号が得られる。同様に、スキャン順3乃至8においても、隣り合う受信ビームの位置が重なるように、所定走査線分だけ移動させて超音波送信信号が送信され、4本の走査線信号が得られる。このように、隣り合う受信ビームの位置が重なるようにして超音波走査が行われる。
以上の走査によって走査線信号が得られると、図2(b)に示すように、第1フレームでは、スキャン順1乃至4において得られた走査線信号が読み出されて表示され、第2フレームでは、スキャン順5乃至8において得られた走査線信号が読み出されて表示される。そして各フレームの相関を取ることにより、時相差の縦筋ノイズを低減させた超音波画像を得ることができる。
図3は、コントラストハーモニックイメージングの概略を説明する図である。
第1フレームでは、図3(a)に示すように、低音圧の超音波ビームで走査され、第2フレームでは、図3(b)に示すように、高音圧の超音波ビームで走査され、第3フレームでは、図3(c)に示すように、低音圧の超音波ビームで走査され、第4フレームでは、図3(d)に示すように、高音圧の超音波ビームで走査される。同様に、フレーム毎に、低音圧、高音圧の順で繰り返し超音波走査が行われる。
このように、造影剤の崩壊が少ないが低輝度の比較的不鮮明な超音波画像が得られる低音圧での走査と、造影剤の崩壊が早いが高輝度の鮮明な超音波画像が得られる高音圧での走査がフレーム毎に交互に行われるため、造影剤による染影部位を容易に同定することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係る超音波画像診断装置の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、超音波画像診断装置は、超音波プローブ1、送信部2、受信部3、システム制御部4、並び替え部5、信号処理部6、合成・相関・補間部7、スキャン変換部8、表示部9、および操作部10を有する。
超音波プローブ1は、複数個の圧電振動子を有しており、それらは先端面に2次元的に配列される。超音波プローブ1は、送信部2からの超音波駆動信号によって、圧電振動子から被検体に超音波を送信し、被検体内部に超音波の送信ビームを形成する。また超音波プローブ1は、被検体内部において生じた反射波を圧電振動子で受信し、受信部3に出力する。
送信部2は、システム制御部4の制御の下、超音波を発生させるための超音波駆動信号を生成して超音波プローブ1に出力する。例えば、フレーム単位よりも小さい送信単位でスキャン位置およびスキャン方向を変更するような超音波駆動信号、フレーム単位よりも小さい送信単位で並列同時受信を行うような超音波駆動信号、またはフレーム単位よりも小さい送信単位で高音圧と低音圧を切り替えるような超音波駆動信号が生成され出力される。
受信部3は、プリアンプ、A/D(Analog to Digital)変換器、受信遅延回路、および加算器を有する。超音波プローブ1の圧電振動子から得られる反射波は、プリアンプによって増幅され、増幅された反射波信号は、A/D変換される。A/D変換された反射波データが受信遅延回路と加算器によって遅延加算されて、反射波の受信ビームが形成されることで、反射波の走査線信号が生成される。受信部3で生成された走査線信号は、並び替え部5に出力される。
システム制御部4は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)からなり、操作部10からの入力信号に基づいて、ROMに記憶されているプログラムなどを読み出して実行することにより各部の制御を行う。
例えば、システム制御部4は、操作部10から指示されたスキャン条件に応じて、スペックルノイズ低減や時相差の縦筋ノイズ低減、またはコントラストハーモニックイメージングのちらつきを低減するような動作パターンを決定し、その動作パターンに基づいて超音波走査を行うように送信部2を制御する。
また例えば、システム制御部4は、所定の動作パターンで超音波走査が行われることによって得られた走査線信号を並び替えるように並び替え部5を制御する。
このような動作パターンの詳細は、図14乃至図18を参照して後述する。
また例えば、システム制御部4は、並び替え部5で並び替えられ、信号処理部6によって所定の信号処理が行われた超音波画像について、適切な演算方式で、加算平均、フレーム相関またはフレーム補間を行うように合成・相関・補間部7を制御する。
並び替え部5は、受信部3からの走査線信号をフレーム単位に並び替え、信号処理部6に出力する。この処理の詳細は、図14乃至図18を参照して後述する。
信号処理部6は、Bモード処理部、ドプラ処理部、およびカラーモード処理部を有する。Bモード処理部は、並び替え部5から供給された走査線信号の振幅情報の映像化を行い、映像化を行うことによって生成されたBモード超音波ラスタデータを合成・相関・補間部7に出力する。ドプラ処理部は、並び替え部5から供給された走査線信号からドプラ偏移周波数成分を取り出し、さらにFFT(Fast Fourier Transform)処理などを施すことによって生成された、血流情報を合成・相関・補間部7に出力する。カラーモード処理部は、並び替え部5から供給された走査線信号に基づいて、血流情報の映像化を行い、映像化を行うことによって生成されたカラー超音波ラスタデータを合成・相関・補間部7に出力する。
合成・相関・補間部7は、信号処理部6から供給されたデータについて、加算平均、フレーム相関、またはフレーム補間の処理を行う。フレーム補間処理とは、各フレームの間に中間(補間)フレームを生成して1秒間に表示させるフレーム数を多くすることにより画質を向上させる技術のことである。
スキャン変換部8は、合成・相関・補間部7から供給されたデータに対してスキャンコンバージョン処理を行うことによって、被検体の組織形状を2次元情報として表す超音波画像データを生成する。生成した超音波画像のデータは、表示部9に供給される。
表示部9は、例えば、液晶ディスプレイで構成されており、スキャン変換部8から供給された超音波画像のデータに基づいて、被検体内部における超音波画像を表示する。
操作部10は、超音波画像診断装置の操作者が各種の操作を入力するキーボードやマウスなどの入力デバイス、およびタッチコマンドスクリーンにより構成されており、操作者の操作に基づいて入力信号を生成し、システム制御部4に出力する。
次に、図5乃至図9を参照して、本実施の形態の基本となる、フレーム単位よりも小さい送信単位でスキャン位置を変更し、並び替える場合のアルゴリズムについて説明する。
図5は、スペックルノイズを低減する場合のアルゴリズムの例を説明する図である。図5の例では、最小1送信単位でスキャン方向およびスキャン位置を変更し、並び替えを行う。
超音波プローブ1は、送信部2からの超音波駆動信号に基づいて、図5(a)に示すように、左端の圧電素子を動作させて、左下の方向A1、真下の方向B1、および右下の方向C1について超音波走査を行う。次に、図5(b)に示すように、1送信分右側にずらして方向A2、方向B2、方向C2について超音波走査を行う。同様に、1送信分右側にずらして超音波走査が順次行われ、最後には、図5(c)に示すように、右端の圧電素子を動作させて、方向An、方向Bn、方向Cnについて超音波走査が行われる。
以上の超音波走査によって走査線信号が得られると、並び替え部5により、第1フレームでは、図5(d)に示すように、スキャン方向Aの走査線信号が出力され、第2フレームでは、図5(e)に示すように、スキャン方向Bの走査線信号が出力され、第3フレームでは、図5(f)に示すように、スキャン方向Cの走査線信号が出力される。
このように、最小1送信単位でスキャン方向およびスキャン位置を変更して超音波走査を行い、スキャン方向毎にフレーム単位に並び替えることにより、スペックルノイズを低減することが可能となる。
図6は、スペックルノイズを低減する場合の他のアルゴリズムの例を説明する図である。図6の例では、4送信単位でスキャン方向およびスキャン位置を変更し、並び替えを行う。
超音波プローブ1は、送信部2からの超音波駆動信号に基づいて、図6(a)に示すように、左端付近の4個の圧電素子を動作させて、左下の方向A1乃至A4、真下の方向B1乃至B4、および右下の方向C1乃至C4について超音波走査を行う。次に、図6(b)に示すように、4送信分右側にずらして方向A5乃至A8、方向B5乃至B8、方向C5乃至C8について超音波走査を行う。同様に、4送信分右側にずらして超音波走査が順次行われる。
以上の超音波走査によって走査線信号が得られると、並び替え部5により、第1フレームでは、図6(c)に示すように、スキャン方向Aの走査線信号が出力され、第2フレームでは、図6(d)に示すように、スキャン方向Bの走査線信号が出力され、第3フレームでは、図6(e)に示すように、スキャン方向Cの走査線信号が出力される。
このように、4送信単位でスキャン方向およびスキャン位置を変更して超音波走査を行い、スキャン方向毎にフレーム単位に並び替えることにより、スペックルノイズを低減することが可能となる。
図7は、時相差の縦筋ノイズを低減する場合のアルゴリズムの例を説明する図である。図7の例では、並列同時受信にて最小1送信単位でスキャン位置を変更し、並び替えを行う。図7(a)は、超音波プローブ1からの送信ビームを配置した例を示し、図中に示す数字は、スキャン順を表している。図7(b)は、図7(a)で示す数字のスキャン順で得られた受信ビームをフレーム単位で並び替えた例を示している。
超音波プローブ1は、送信部2からの超音波駆動信号に基づいて、図7(a)に示すように、左端付近の圧電素子を動作させて、スキャン順1において、所定の幅を有するランダムな波面の送信ビームを形成するように超音波送信信号を送信し、超音波送信信号の波面上となるように4本の受信ビームを配置して同時に4本の走査線信号を得る。次に、超音波プローブ1は、送信部4からの超音波駆動信号に基づいて、スキャン順2において、隣り合う受信ビームの位置が重なるように、送信ビームの波面を所定走査線分だけ移動させて超音波送信信号を送信し、新たな4本の走査線信号を得る。同様に、スキャン順3乃至8においても、隣り合う受信ビームの位置が重なるように超音波走査が行われる。
以上の超音波走査によって走査線信号が得られると、図7(b)に示すように、並び替え部5により、第1フレームでは、1,3,5,7のスキャン順で得られた走査線信号が出力され、第2フレームでは、2,4,6,8のスキャン順で得られた走査線信号が出力される。
このように、並列同時受信にて最小1送信単位でスキャン位置を変更して超音波走査を行い、フレーム単位に並び替えた後、フレーム相関を行うことにより、時相差の縦筋ノイズを低減することが可能となる。
図8は、時相差の縦筋ノイズを低減する場合の他のアルゴリズムの例を説明する図である。図8の例では、並列同時受信にて2送信単位でスキャン位置を変更し、並び替えを行う。図8(a)は、超音波プローブ1からの送信ビームを配置した例を示し、図中に示す数字は、スキャン順を表している。図8(b)は、図8(a)で示す数字のスキャン順で得られた受信ビームをフレーム単位で並び替えた例を示している。
超音波プローブ1は、送信部2からの超音波駆動信号に基づいて、図8(a)に示すように、左端付近の圧電素子を動作させて、スキャン順1において、所定の幅を有するランダムな波面の送信ビームを形成するように超音波送信信号を送信し、超音波送信信号の波面上となるように4本の受信ビームを配置して同時に4本の走査線信号を得る。次に、超音波プローブ1は、送信部2からの超音波駆動信号に基づいて、スキャン順2において、隣り合う受信ビームの位置が重なるように、送信ビームの波面を所定走査線分だけ移動させて超音波送信信号を送信し新たな4本の走査線信号を得る。同様に、スキャン順3乃至8においても、隣り合う受信ビームの位置が重なるように超音波走査が行われる。
以上の超音波走査によって走査線信号が得られると、図8(b)に示すように、並び替え部5により、第1フレームでは、1,2,5,6のスキャン順で得られた走査線信号が出力され、第2フレームでは、3,4,7,8のスキャン順で得られた走査線信号が出力される。
このように、並列同時受信にて4送信単位でスキャン位置を変更して超音波走査を行い、フレーム単位に並び替えた後、フレーム相関を行うことにより、縦筋ノイズを低減することが可能となる。
図9は、コントラストハーモニックイメージングのアルゴリズムの例を説明する図である。図9の例では、最小1送信単位で低音圧と高音圧を切り替えて超音波走査を行い、並び替えを行う。図9(a)は、超音波プローブ1からの送信ビームを配置した例を示し、図9(b)は、受信ビームをフレーム単位で並び替えた例を示している。
超音波プローブ1は、送信部2からの超音波駆動信号に基づいて、図9(a)に示すように、左端付近の圧電素子を動作させて、低音圧の超音波信号BP1を送信した後、高音圧の超音波信号HP1を送信して超音波走査を行う。次に、1送信分右側にずらして超音波信号BP2を送信した後、高音圧の超音波信号HP2を送信して超音波走査を行う。同様に、1送信分右側にずらして低音圧と高音圧の超音波走査が順次行われ、最後には、右端の圧電素子を動作させて、低音圧の超音波送信号BPnと高音圧の超音波送信信号HPnが送信されて超音波走査が行われる。
以上の超音波走査によって走査線信号が得られると、図9(b)に示すように、並び替え部5により、第1フレームでは、低音圧の超音波走査によって得られた走査線信号が出力され、第2フレームでは、高音圧の超音波走査によって得られた走査線信号が出力される。
このように、最小1送信単位でスキャン位置を変更して低音圧と高音圧の超音波走査を行い、音圧毎にフレーム単位に並び替えることにより、造影剤の輝度増強を図ることができるとともに、フレーム間のちらつきを低減することが可能となる。
本実施の形態では、図5乃至図9で示したようにして、フレーム単位よりも小さい送信単位でスキャン方向やスキャン位置を変更して超音波走査を行い、それらを並び替えることによって、スペックルノイズの低減、時相差の縦筋ノイズの低減、またはコントラストハーモニックイメージングにおけるフレーム間のちらつきを低減することができる。
また、リニアスキャン、セクタスキャン、およびコンベックススキャンのスキャン条件に応じて、対応モード、並び替え方式、および並び替え回数を操作者が任意に選択することができ、操作者によって選択されたスキャン条件に応じて動作パターンを決定することができる。
次に、図10のフローチャートを参照して、スキャン条件毎の動作パターン決定処理について説明する。
ステップS1において、システム制御部4は、操作部10で操作者によりスキャン条件が選択されたか否かを判定し、操作部10でスキャン条件が選択されるまで待機する。例えば、操作者は、リニアスキャンを行う超音波プローブ1を選択した場合、図11に示すような、リニアスキャンにおける動作パターン選択画面を表示部9に表示させ、セクタスキャンを行う超音波プローブ1を選択した場合、図12に示すような、セクタスキャンにおける動作パターン選択画面を表示部9に表示させ、コンベックススキャンを行う超音波プローブ1を選択した場合、図13に示すような、コンベックススキャンにおける動作パターン選択画面を表示部9に表示させる。
図11の動作パターン選択画面で示すように、リニアスキャンにおいては、「スペックルノイズ低減」または「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードが選択可能になされている。また「スペックルノイズ低減」の対応モードには、「1フレーム」または「3フレーム」の並び替え方式が選択可能になされ、「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードには、「1フレーム」のみの並び替え方式が適用される。さらに各並び替え方式には、「0(回)」、「1」、「3」、「7」の並び替え回数が選択可能になされている。例えば、「1フレーム」の並び替え方式で、「0(回)」、「1」、「3」、「7」の並び替え回数が選択された場合、「A0」、「A1」、「A2」、「A3」の動作パターンにそれぞれ決定され、「3フレーム」の並び替え方式で、「0」、「1」、「3」、「7」の並び替え回数が選択された場合、「B0」、「B1」、「B2」、「B3」の動作パターンにそれぞれ決定される。
図12の動作パターン選択画面で示すように、セクタスキャンにおいては、「時相差縦筋ノイズ低減」または「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードが選択可能になされている。また「時相差縦筋ノイズ低減」の対応モードには、「1フレーム」または「2フレーム」の並び替え方式が選択可能になされ、「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードには、「1フレーム」のみの並び替え方式が適用される。さらに各並び替え方式には、「0(回)」、「1」、「3」、「7」の並び替え回数が選択可能になされている。例えば、「1フレーム」の並び替え方式で、「0(回)」、「1」、「3」、「7」の並び替え回数が選択された場合、「A0」、「A1」、「A2」、「A3」の動作パターンにそれぞれ決定され、「2フレーム」の並び替え方式で、「0」、「1」、「3」、「7」の並び替え回数が選択された場合、「C0」、「C1」、「C2」、「C3」の動作パターンにそれぞれ決定される。
図13の動作パターン選択画面に示すように、コンベックススキャンにおいては、「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードのみが適用される。「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードには、「1フレーム」のみの並び替え方式が適用され、「0(回)」、「1」、「3」、「7」の並び替え回数が選択可能になされている。例えば、「1フレーム」の並び替え方式で、「0(回)」、「1」、「3」、「7」の並び替え回数が選択された場合、「A0」、「A1」、「A2」、「A3」の動作パターンにそれぞれ決定される。
なお、システム制御部4は、図11乃至図13で示した動作パターン選択画面における対応モード、並び替え方式、並び替え回数、および動作パターンを対応付けて管理する管理手段としての機能を有し、操作者によって選択された動作パターンに基づいて、後述する図14乃至図18のアルゴリズムを実行するように各部を制御する。
図10のフローチャートに戻る。ステップS1において、スキャン条件が選択されたと判定された場合、ステップS2に進み、システム制御部4は、スキャン条件に応じた動作パターンを選択する。ステップS3において、システム制御部4は、ステップS2の処理で選択した動作パターンに基づいて、所定のアルゴリズムを決定し、スキャン制御部4、並び替え部5、および合成・相関・補間部7を制御する。
ここで、各動作パターンにおけるスキャン方式および並び替え方式のアルゴリズムについて順に説明する。
図14は、1フレームでスキャン順の変更および並び替えを行う場合のアルゴリズムを説明する図である。図14(a)は、超音波プローブ1から送信される超音波ビームの送信位置を示し、図14(b)は、並び替え回数が0回の場合のスキャン順を示し、図13(c)は、並び替え回数が1回の場合のスキャン順を示し、図14(d)は、並び替え回数が3回の場合のスキャン順を示し、図14(e)は、並び替え回数が7回の場合のスキャン順を示している。
「スペックルノイズ低減」、「時相差の縦筋ノイズ低減」、または「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードにおいて、並び替え方式に「1フレーム」が選択され、並び替え回数に「0回」が選択された場合、図14(b)に示すように、送信位置Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pf、Pg、Phの順で超音波走査が行われ、並び替え部5から、1,2,3,4,5,6,7,8のスキャン順で得られた走査線信号の順のまま出力される。これは、動作パターンA0に対応する。
「スペックルノイズ低減」、「時相差の縦筋ノイズ低減」、または「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードにおいて、並び替え方式に「1フレーム」が選択され、並び替え回数に「1回」が選択された場合、図14(c)に示すように、送信位置Pe、Pf、Pg、Ph、Pa、Pb、Pc、Pdの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、5,6,7,8,1,2,3,4のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンA1に対応する。
「スペックルノイズ低減」、「時相差の縦筋ノイズ低減」、または「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードにおいて、並び替え方式に「1フレーム」が選択され、並び替え回数に「3回」が選択された場合、図14(d)に示すように、送信位置Pa、Pb、Pe、Pf、Pc、Pd、Pg、Phの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、1,2、5,6,3,4,7,8のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンA2に対応する。
「スペックルノイズ低減」、「時相差の縦筋ノイズ低減」、または「コントラストハーモニックイメージング」の対応モードにおいて、並び替え方式に「1フレーム」が選択され、並び替え回数に「7回」が選択された場合、図14(e)に示すように、送信位置Pa、Pe、Pb、Pf、Pc、Pg、Pd、Phの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、1,3、5,7,2,4,6,8のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンA3に対応する。
図15は、3フレームでスキャン順の変更および並び替えを行う場合のアルゴリズムを説明する図である。
図15(a)のPa乃至Plは、超音波プローブ1から送信される超音波ビームの送信位置を示すとともに、その送信位置の下側に、並び替え回数が0回の場合のスキャン順を示している。図15(b)は、図15(a)のスキャン順で超音波走査が行われた場合の並び替え例を示している。図15(c)は、並び替え回数が1回の場合のスキャン順を示し、図15(d)は、図15(c)のスキャン順で超音波走査が行われた場合の並び替え例を示している。
「スペックルノイズ低減」の対応モードにおいて、並び替え方式に「3フレーム」が選択され、並び替え回数に「0回」が選択された場合、図15(a)に示すように、送信位置Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pf、Pg、Ph、Pi、Pj、Pk、Plの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、図15(b)に示すように、フレームF1では、1,4,7,10のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF2では、2,5,8,11のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF3では、3,6,9,12のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンB0に対応する。
「スペックルノイズ低減」の対応モードにおいて、並び替え方式に「3フレーム」が選択され、並び替え回数に「1回」が選択された場合、図15(c)に示すように、送信位置Pg、Ph、Pi、Pj、Pk、Pl、Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pfの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、図15(d)に示すように、フレームF1では、7、10、1、4のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF2では、8、11、2、5のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF3では、9、12、3、6のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンB1に対応する。
図16は、3フレームでスキャン順の変更および並び替えを行う場合の他のアルゴリズムを説明する図である。
図16(a)のPa乃至Plは、超音波プローブ1から送信される超音波ビームの送信位置を示すとともに、その送信位置の下側に、並び替え回数が3回の場合のスキャン順を示している。図16(b)は、図16(a)のスキャン順で超音波走査が行われた場合の並び替え例を示している。図16(c)は、並び替え回数が7回の場合のスキャン順を示し、図16(d)は、図16(c)のスキャン順で超音波走査が行われた場合の並び替え例を示している。
「スペックルノイズ低減」の対応モードにおいて、並び替え方式に「3フレーム」が選択され、並び替え回数に「3回」が選択された場合、図16(a)に示すように、送信位置Pa、Pb、Pc、Pg、Ph、Pi、Pd、Pe、Pf、Pj、Pk、Plの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、図16(b)に示すように、フレームF1では、1,7,4,10のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF2では、2,8,5,11のスキャン順で得られた走査線信号の順に並びかえられて出力され、フレームF3では、3,9,6,12のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンB2に対応する。
「スペックルノイズ低減」の対応モードにおいて、並び替え方式に「3フレーム」が選択され、並び替え回数に「7回」が選択された場合、図16(c)に示すように、送信位置Pa、Pb、Pg、Ph、Pc、Pd、Pi、Pj、Pe、Pf、Pk、Plの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、図16(d)に示すように、フレームF1では、1、6、3、8のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF2では、2、9、4、11のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF3では、5、10、7、12のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは動作パターンB3に対応する。
図17は、2フレームでスキャン順の変更および並び替えを行う場合のアルゴリズムを説明する図である。
図17(a)のPa乃至Phは、超音波プローブ1から送信される超音波ビームの送信位置を示すとともに、その送信位置の下側に、並び替え回数が0回の場合のスキャン順を示している。図17(b)は、図17(a)のスキャン順で超音波走査が行われた場合の並び替え例を示している。図17(c)は、並び替え回数が1回の場合のスキャン順を示し、図17(d)は、図17(c)のスキャン順で超音波走査が行われた場合の並び替え例を示している。
「時相差の縦筋ノイズ低減」の対応モードにおいて、並び替え方式に「2フレーム」が選択され、並び替え回数に「0回」が選択された場合、図17(a)に示すように、送信位置Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pf、Pg、Phの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、図17(b)に示すように、フレームF1では、1,3,5,7のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF2では、2,4,6,8のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンC0に対応する。
「時相差の縦筋ノイズ低減」の対応モードにおいて、並び替え方式に「2フレーム」が選択され、並び替え回数に「1回」が選択された場合、図17(c)に示すように、送信位置Pe、Pf、Pg、Ph、Pa、Pb、Pc、Pdの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、図17(d)に示すように、フレームF1では、5、7、1、3のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF2では、6、8、2、4のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンC1に対応する。
図18は、2フレームでスキャン順の変更および並び替えを行う場合の他のアルゴリズムを説明する図である。
図18(a)のPa乃至Phは、超音波プローブ1から送信される超音波ビームの送信位置を示すとともに、その送信位置の下側に、並び替え回数が3回の場合のスキャン順を示している。図18(b)は、図18(a)のスキャン順で超音波走査が行われた場合の並び替え例を示している。図18(c)は、並び替え回数が7回の場合のスキャン順を示し、図18(d)は、図18(c)のスキャン順で超音波走査が行われた場合の並び替え例を示している。
「時相差の縦筋ノイズ低減」の対応モードにおいて、並び替え方式に「2フレーム」が選択され、並び替え回数に「3回」が選択された場合、図18(a)に示すように、送信位置Pa、Pb、Pe、Pf、Pc、Pd、Pg、Phの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、図18(b)に示すように、フレームF1では、1,5,3,7のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF2では、2,6,4,8のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンC2に対応する。
「時相差の縦筋ノイズ低減」の対応モードにおいて、並び替え方式に「2フレーム」が選択され、並び替え回数に「7回」が選択された場合、図18(c)に示すように、送信位置Pa、Pe、Pb、Pf、Pc、Pg、Pd、Phの順で超音波走査が行われ、並び替え部5により、図18(d)に示すように、フレームF1では、1,5,2,6のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力され、フレームF2では、3,7,4,8のスキャン順で得られた走査線信号の順に並び替えられて出力される。これは、動作パターンC3に対応する。
なお、「スペックルノイズ低減」の対応モードが選択されている場合には、図14乃至図16で示したスキャン順に加え、図5(a)で示したようにして、左下の方向A1、真下の方向B1、および右下の方向C1について超音波走査が行われる。また、「時相差の縦筋ノイズ低減」の対応モードが選択されている場合には、図17および図18で示したスキャン順に加え、図7(a)で示したようにして、並列同時受信にて超音波走査が行われる。
そして、図14乃至図18で示したようにして並び替え部5から出力された走査線信号は、信号処理部6により、Bモード処理、ドプラ処理、およびカラーモード処理などが施され、合成・相関・補間部7に出力される。
合成・相関・補間部7は、システム制御部4の制御の下、「2フレーム」や「3フレーム」の並び替え方式が選択されている場合には、信号処理部6から出力されたデータのフレーム補間処理を行う。合成・相関・補間部7は、システム制御部4の制御の下、「スペックルノイズ低減」の対応モードが選択されている場合には、フレーム補間処理が行われたデータを加算平均し、「時相差の縦筋ノイズ低減」の対応モードが選択されている場合には、フレーム補間処理が行われたデータのフレーム相関の処理を行う。なお、フレーム補間処理が行われない「1フレーム」の並び替え方式が選択されている場合には、合成・相関・補間部7は、信号処理部6から出力されたデータを加算平均するか、あるいは、フレーム相関処理を行う。
以上の処理によって、スペックルノイズの低減、時相差の縦筋ノイズの低減、またはコントラストハーモニックイメージンのちらつきの低減が行われたデータが、スキャン変換部8により、スキャンコンバージョン処理されて超音波画像データが生成され、生成された超音波画像データに基づく超音波画像が表示部9に表示される。
これにより、スペックルノイズの低減、時相差の縦筋ノイズの低減、またはコントラストハーモニックイメージンのちらつきの低減が行われた良好な超音波画像を得ることができるため、医師や技師は、精度の良い診断を行うことができるだけでなく、診断時間の短縮を図ることが可能となる。
以上においては、最小1送信単位または4送信単位でスキャン順を変更する場合の例について説明したが、これに限らず、フレーム単位よりも小さい他の送信単位に適用することも勿論可能である。
この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化したり、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせたりすることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。