JP2007190045A - 超音波診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】超音波画像に含まれるスペックルを効果的に低減できるようにする。
【解決手段】第1送信周波数f1と第2送信周波数f2とを有する2つの超音波が同時に送信される。受信信号に含まれる4つの周波数成分が抽出される。その場合においては、第1送信周波数に対応する周波数成分、第2送信周波数に対応する周波数成分、第1送信周波数と第2送信周波数の差の周波数に相当する周波数成分、及び、第1送信周波数と第2送信周波数の和に相当する周波数成分、が抽出される。必要に応じて、第1送信周波数の第2高調波に相当する周波数成分が抽出される。それらの周波数成分を加算合成することにより、簡易な装置構成で効果的にスペックルを低減できる。
【選択図】図1
【解決手段】第1送信周波数f1と第2送信周波数f2とを有する2つの超音波が同時に送信される。受信信号に含まれる4つの周波数成分が抽出される。その場合においては、第1送信周波数に対応する周波数成分、第2送信周波数に対応する周波数成分、第1送信周波数と第2送信周波数の差の周波数に相当する周波数成分、及び、第1送信周波数と第2送信周波数の和に相当する周波数成分、が抽出される。必要に応じて、第1送信周波数の第2高調波に相当する周波数成分が抽出される。それらの周波数成分を加算合成することにより、簡易な装置構成で効果的にスペックルを低減できる。
【選択図】図1
Description
本発明は超音波診断装置に関し、特に超音波画像に含まれるスペックルを低減する技術に関する。
Bモード画像(二次元断層画像)等の超音波画像には、一般に、超音波の干渉等によって生じたノイズとしての多数のスペックルが含まれる。スペックルを低減することは超音波画像の画質を高める上で大切である。従来においては、2つのフレーム間で送受信位置、送信周波数、送信波の位相、等を異ならせ、それによる2つのフレームデータを合成することによって、スペックルを低減している(空間コンパウンド法、周波数コンパウンド法、位相差コンパウンド法、等)。なお、これに関連する技術が特許文献1に記載されている。
超音波画像には上記のように多数のスペックルが含まれ、それを効果的に軽減、除去することが要請される。しかしながら、2つのフレームを形成した上でそれらを合成すると、どうしてもリアルタイム性が低下してしまう。つまり、合成後におけるフレームレートが低下してしまうことになる。また、スペックルを低減するためには、互いに異なる送受信条件を多く適用して多くのデータを取得し、それらを合成するのが望ましいが、例えば多数の送信周波数(送信中心周波数)をもった多数の送信信号を利用すると、どうしても回路規模が大きくなってしまう。
本発明の目的は、超音波画像に含まれるスペックルを効果的に低減できる超音波診断装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、超音波画像に含まれるスペックルをフレームレートを低下させることなくしかも比較的簡易な構成で効果的に低減できる超音波診断装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、生体内における複数の送信波の物理的相互作用を利用した新しいスペックル低減方式を提供することにある。
本発明に係る超音波診断装置は、第1周波数を有する第1送信波と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信波と、を含む送信波群を同時に送信し、反射波を受信して受信信号を出力する送受信手段と、前記第1周波数に対応した第1通過帯域特性を有し前記受信信号から第1周波数成分を抽出する第1フィルタと、前記第2周波数に対応した第2通過帯域特性を有し前記受信信号から第2周波数成分を抽出する第2フィルタと、前記第1周波数及び前記第2周波数の差又は和に相当する第3周波数に対応した第3通過帯域特性を有し前記受信信号から第3周波数成分を抽出する第3フィルタと、を含むフィルタ群を有するフィルタ手段と、前記第1周波数成分、前記第2周波数成分及び前記第3周波数成分を含む周波数成分群を合成し、合成信号を生成する合成手段と、前記合成信号に基づいて超音波画像を形成する画像形成手段と、を含むことを特徴とする。
本発明に係る超音波診断装置は、第1周波数を有する第1送信波と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信波と、を含む送信波群を同時に送信し、反射波を受信して受信信号を出力する送受波手段と、前記第1周波数に対応した第1通過帯域特性を有し前記受信信号から第1周波数成分を抽出する第1フィルタと、前記第2周波数に対応した第2通過帯域特性を有し前記受信信号から第2周波数成分を抽出する第2フィルタと、前記第1周波数及び前記第2周波数の差に相当する第3周波数に対応した第3通過帯域特性を有し前記受信信号から第3周波数成分を抽出する第3フィルタと、前記第1周波数及び前記第2周波数の和に相当する第4周波数に対応した第4通過帯域特性を有し前記受信信号から第4周波数成分を抽出する第4フィルタと、を含むフィルタ群を有するフィルタ手段と、前記第1周波数成分、前記第2周波数成分、前記第3周波数成分及び前記第4周波数成分を含む周波数成分群を合成し、合成信号を生成する合成手段と、前記合成信号に基づいて超音波画像を形成する画像形成手段と、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、送信時に、第1周波数(中心周波数)を有する第1送信波と、第2周波数(第2中心周波数)を有する第2送信波とが同時に生体内へ送信される。その後の受信時に、生体内からの反射波が受信される。ここで、反射波には、生体組織の非線形性による第1周波数の高調波及び第2周波数の高調波の他に、超音波の相互作用による、第1周波数と第2周波数の差に相当する周波数(差周波数)の超音波、及び、第1周波数と第2周波数の和に相当する周波数(和周波数)の超音波が含まれる。受信信号を処理するフィルタ手段には第1フィルタ、第2フィルタ、第3フィルタ、第4フィルタが含まれる。第1フィルタは第1周波数に対応した第1通過帯域特性を有し、第2フィルタは第2周波数に対応した第2通過帯域特性を有する。第3フィルタは上記の差周波数に対応した第3通過帯域特性を有し、第4フィルタは上記の和周波数に対応した第4周波数特性を有する。第3フィルタと第4フィルタの内で一方のみを設けることもできる。それぞれのフィルタを通過した複数の周波数成分は望ましくは検波処理された上で合成され、これにより合成信号が生成される。その合成信号に基づいて超音波画像が形成される。このように、生体内において複数の送信波の相互作用によって生成される差周波数及び/又は和周波数を利用して受信周波数成分を抽出できるので、簡易な構成でより多くの周波数成分に基づいて超音波画像を形成でき、これによりスペックルを低減できる。
送信周波数の組合せとしては、基本となる送信周波数をfとした場合、例えば、fと3f(3fは3×fを意味する。以下同様。)の組合せ、あるいは、fと4fの組合せが考えられる。前者の場合には、受信時に、f,3fの他に2f(=3f−f),4f(=f+3f)が観測される。後者の場合には、受信時に、fと4fの各周波数成分の他に、3f(=4f−f),5f(=f+4f)の周波数成分が観測され、更に、fの第2高調波である2fの周波数成分等も観測可能である。差周波数及び和周波数が第2高調波周波数に一致するように、送信周波数の組合せを決定してもよいし、差周波数及び和周波数の各周波数成分の他に、独立して第2高調波の周波数成分が観測できるように、送信周波数の組合せを決定してもよい。抽出すべき周波数成分の組合せに応じて、フィルタ手段として設けるバンドパスフィルタ(BPF)の個数及び特性を適宜定めればよい。例えば、上記構成に加えて、更に第2高調波用の第5フィルタを設けるようにしてもよい。使用する周波数の組合せを自動的にあるいはマニュアルで選択できるように構成してもよい。
望ましくは、前記第1送信波と前記第2送信波の初期位相をシフトさせる送信制御手段を含む。周波数を異ならせることの他に位相を異ならせればよりスペックルを低減できる。つまり、上記構成に対して、1又は複数のコンパウンド方式を組み合わせるのが望ましい。位相可変は自動的にあるいはマニュアルで行うことができる。
望ましくは、前記周波数成分群の合成に際して各周波数成分に重み付けを行う手段を含む。重み付けを行わせれば画質を調整でき、同時にスペックルの現れ方を調整できる。
望ましくは、前記フィルタ手段と前記合成手段との間で前記各周波数成分に対して検波処理を行う手段を含む。望ましくは、前記送受信手段は、前記第1送信波を送信する第1振動子と、前記第2送信波を送信する第2振動子と、を含む。望ましくは、前記第1振動子は複数の第1振動素子で構成されたアレイ振動子として構成され、前記第2振動子は複数の第2振動素子で構成されたアレイ振動子として構成される。望ましくは、前記第1振動子はリング状の振動子であり、前記第2振動子は前記第1振動子の内部に設けられた円形の振動子である。
以上説明したように、本発明によれば、超音波画像に含まれるスペックルを効果的に低減できる。本発明によれば、超音波画像に含まれるスペックルをフレームレートを低下させることなくしかも比較的簡易な構成で効果的に低減できる。あるいは、本発明によれば、生体内における複数の送信波の物理的相互作用を利用した新しいスペックル低減方式を提供できる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。
プローブ10は生体の表面に当接して用いられあるいは体腔内に挿入して用いられる超音波探触子である。プローブ10には超音波振動子が含まれ、超音波振動子としては例えば複数の振動素子を備えたアレイ振動子等が用いられる。アレイ振動子を用いる場合、1Dアレイ振動子、2Dアレイ振動子などの各種のアレイ振動子を用いることが可能である。その場合における電子走査方式としては、電子セクタ走査、電子リニア走査等が知られている。超音波振動子を機械的に走査してビーム走査面を構成するようにしてもよい。
プローブ10には送信部18が接続されている。送信部18は、本実施形態において第1送信回路20及び第2送信回路22を有している。第1送信回路20及び第2送信回路22が実質的に単一の回路で構成されてもよい。ただし、送信部18としては、互いに異なる中心周波数を有する複数の送信信号を同時に出力する回路構成を有するものが利用される。本実施形態においては、第1送信回路20が第1中心周波数f1を有する送信信号を出力しており、第2送信回路22が第2中心周波数f2を有する送信信号を出力している。第1送信信号の初期位相はφ1であり、第2送信信号の初期位相はφ2である。本実施形態においては、それらの送信信号間における初期位相差Δφ(=φ1−φ2)を可変設定することが可能である。具体的には、第1送信回路20及び第2送信回路22はそれぞれ送信ビームフォーマーとして機能するものであり、所定の遅延関係をもった複数の送信信号を並列出力する回路として構成されている。
制御部26は、図1に示される各構成の動作制御を行っている。本実施形態においては、制御部26から第1送信回路20及び第2送信回路22へ制御信号が出力されており、制御部26によって、第1送信信号についての中心周波数f1及び初期位相φ1と、第2送信信号についての中心周波数f2及び初期位相φ2と、が決定されている。
プローブ10に対して上記のように第1送信信号(第1送信信号セット)及び第2送信信号(第2送信信号セット)が同時に供給されると、プローブ10において2つの送信ビーム12,14が同時に形成されることになる。2つの送信ビーム12,14が同時に形成されると、総合送信ビームとしてそれらが単一の送信ビームを構成する。生体内に超音波が送波されると、生体内における各深さから反射波が生じ、それらの反射波はプローブ10において受波される。その反射波(受信ビーム)が符号16によって表されている。この場合においては、2つの送信周波数に対応する2つの受信周波数成分の他、第1送信信号と第2送信信号の差に相当する差周波数の信号成分と第1送信周波数と第2送信周波数の和に相当する和周波数の信号成分と、が観測されることになる。更に、生体内の非線形効果によって第1送信周波数及び第2送信周波数の第2高調波に相当する周波数成分も観測されることになる。
そのような各種の周波数成分をもった受信信号がプローブ10から受信部24へ出力される。実際には複数の振動素子からの複数の受信信号が受信部24へ出力されることになる。受信部24は受信ビームフォーマーとして構成されており、複数の受信信号に対する整相加算処理によって整相加算後の受信信号を出力している。その受信信号はフィルタ部28に出力されている。
フィルタ部28は、本実施形態において4つのバンドパスフィルタ(BPF)30,32,34,36によって構成されており、それらには受信信号が並列的に入力されている。BPF30は第1送信周波数に対応する通過帯域特性を有しており、その中心周波数は上記のf1と同一のF1である。BPF32は第2送信周波数に対応した通過帯域特性を有しており、その中心周波数は上記のf2と同一のF2である。BPF34は図1に示す例において上記の差周波数に対応する通過帯域特性を有しており、その中心周波数は上記の差周波数に一致するF3である。BPF36は図1に示す例において上記の和周波数に対応する通過帯域特性を有しており、その中心周波数は上記の和周波数と同じF4である。
すなわち、図1に示す例では、第1送信周波数、第2送信周波数、差周波数及び和周波数の4つの周波数に対応した周波数成分が抽出されている。ここで、例えばf1は2MHzであり、f2は6MHzである。この場合において、差周波数は4MHzであり、和周波数は8MHzである。すなわち、第1送信周波数をfとした場合、f、2f、3f、4fの4つの周波数に対応する周波数成分が観測されることになる。ここで、2fは、差周波数に相当すると共に、fの第2高調波の周波数にも相当する。
別の例においては、第1送信周波数として2MHzが選択され、第2送信周波数として8MHzが選択される。このような周波数の組み合わせが採用される場合、第1送信周波数をfとすれば、f、2f、3f、4f、5fが観測されることになる。ここで、5fはかなり高域に存在するため、実際上は4fまでの周波数帯域をそれぞれ個別的に観測するのが望ましい。そのような場合にも図1に示した4つのバンドパスフィルタによる構成を利用することが可能である。ちなみに、そのような構成例では、2fはfの第2高調波に対応し、3fは差周波数に対応することになる。
フィルタ部28の後段に設けられた信号処理部38は、4つのBPF30,32,34,36に対応して設けられた4つの信号処理回路40,42,44,46を有している。各信号処理回路40,42,44,46はそれぞれ検波器、対数圧縮回路、等の各種の信号処理回路を具備している。信号処理部38の後段には加算合成部48が設けられている。加算合成部48は、各バンドパスフィルタを通過した周波数成分をその信号処理後において重み付け加算する回路である。各周波数成分に与える重みとしては適宜設定することが可能である。例えばBモード画像(二次元白黒断層画像)を観察しながら各重みの値を適宜設定するようにしてもよい。
加算合成部48から出力された加算合成処理後の受信信号はデジタルスキャンコンバータ(DSC)50に入力される。このDSC50は周知のように座標変換処理や補間処理などを実行する回路であり、DSC50によって受信信号に基づいてBモード画像が形成される。その画像データは表示部52に送られ、表示部52上にはBモード画像が表示されることになる。本実施形態においては、Bモード画像に含まれるスペックルをより低減するために、上述したように互いに送受信条件が異なる複数の周波数成分が加算合成されている。
図1に示す構成例によれば、送信部において2つの送信信号を生成すれば、受信時において3つ以上の、具体的には4つの信号成分を得ることができ、これによって装置構成を簡略化しつつも、効果的なスペックル低減を行うことが可能である。特に、本実施形態においては、差周波数及び和周波数という体内で生じる超音波の相互作用を積極的に利用して新しいコンパウンド方式を実現できるという利点がある。本実施形態においては4つの周波数成分を利用したが、3つあるいは5以上の周波数成分を利用してもよい。また上記の例においては、差周波数成分(ただし、第2高調波成分にも相当する)及び和周波数成分を利用したが、差周波数成分と第2高調成分をそれぞれ独立して生じさせるように送信周波数の組み合わせを設定するようにしてもよい。更に、上記実施形態においては、制御部によって第1送信信号と第2送信信号の初期位相を独立して設定可能であり、つまり2つの送信信号間における初期位相差Δφを適宜調整することができるので、例えばスペックルパターンを観測しながら、それが最も低減されるように初期位相差を適宜調整できるという利点がある。後述する実験例においては例えば初期位相差が90度の場合において良好な結果が得られている。もちろん、他の初期位相差を利用するようにしてもよい。
図2には、プローブ10に設けられる超音波振動子の一例が示されている。超音波振動子54は、公知の1.5Dアレイ振動子と同様の構造を有している。すなわち、中央に振動素子列56が形成されており、その両側に2つの振動素子列58,60が形成されている。ここで、2つの振動素子列58,60は上記の第1送信信号を送信するアレイ振動子に相当しており、中央の振動素子列56は上記の第2送信信号を超音波として送波するアレイ振動子に相当している。ちなみに、X方向は超音波ビームの電子走査方向を表しており、Y方向はそれに直交する方向である。信号線の接続関係について説明すると、符号62は1チャンネル分のY方向に並んだ3つの振動素子を示している。第1送信信号は信号線70、スイッチ72を経由して信号線74に流され、分岐点75を経由して2つの信号線76,78を経由して2つの振動素子58a,60aに供給されている。一方、第2送信信号は信号線64及びスイッチ66を経由して信号線68に流され、その信号線68から振動素子56aに供給されている。一方、振動素子58a,60aから出力される受信信号は信号線76,78、信号線74及びスイッチ72を経由して信号線80に流され、合流点を経由して信号線84へ流されている。また、振動素子56aからの受信信号は信号線68、スイッチ66及び信号線82を経由してまた合流点を経由して信号線84に流されている。すなわち3つの振動素子56a,58a,60aからの受信信号が合成されて1つの受信信号として出力されている。このような構成が各チャンネルごとに設けられている。ちなみに、スイッチ66,72は送信時及び受信時において信号が流れる方向を決定する回路である。
図3には他の超音波振動子86が示されている。この超音波振動子86はリング状の振動素子90とその内部に設けられた円形の振動素子88とによって構成されている。第1送信信号は、信号線98、スイッチ100及び信号線102を介して振動素子90へ出力されている。また第2送信信号は信号線92、スイッチ94及び信号線96を介して振動素子88へ供給されている。受信時においては、振動素子90から出力された受信信号は信号線102、スイッチ100及び信号線106を介して更に合流点を経由して信号線108へ流されている。同様に、振動素子88から出力された受信信号は信号線96、スイッチ94及び信号線104を経由して、更に合流点を経由して信号線108へ流されている。ちなみに、このような超音波振動子86に対して機械的な走査機構110を連結し、いわゆるメカニカル走査を行うこともできる。すなわち超音波振動子86によって形成される超音波ビームを機械的に走査することにより、メカニカルセクタ走査を実現するものである。
図4には、更に他の超音波振動子112が示されている。超音波振動子112は、二層化されており、下層114は送信用として機能し、上層116は受信用として機能している。下層114においては上述した図3に示す構造と同様の構成が採用されており、すなわちリング状の振動素子120と円形の振動素子118によって構成されている。それらの振動素子118,120は例えばPZT等の材料によって構成される。上層116は例えばPVDF等の材料によって形成されており、受信振動子として機能するものである。上層116に相当する振動素子は下層114に相当する振動素子の全体を覆っており、そこから信号線126を介して受信信号が出力されている。このような二層化構造を採用することにより、受信時における受信帯域をより広げることが可能となる。このような超音波振動子112を利用する場合においても、機械走査機構を組み合わせ適用するようにしてもよい。また二層化の技術は例えば図2に示したアレイ振動子に適用することも可能である。
本実施形態に係る超音波診断装置によれば、簡易な構成でありながら超音波画像の画質を向上できるという利点がある。具体的には、超音波画像に含まれるスペックルを効果的に低減することができるので、組織の構造を明瞭に表す超音波画像を構成して画像診断の精度を高められるという利点がある。上記においてはBモード画像の形成について説明したが、本発明はMモード画像等の他の超音波画像を形成する場合においても同様に適用することが可能である。
次に図5乃至図7を用いてシミュレーション実験結果を説明する。前提とした振動子は、図3又は図4に示した構造を有する振動子であり、外側リング状の送信用振動素子の外形が17mmであり、その内径が9mmである。内側円形の送信用振動素子の直径は7mmである。焦点距離は45mmとしており、周波数依存減数は1dB/cm/MHzを仮定している。各図において、縦軸は音圧を示しており、第1の水平軸は深さ軸方向の距離を示しており、第2の水平軸は振動素子中心から正面方向へ伸びる中心軸からの変位距離を示している。送信波は連続波としているが、パルス波であっても基本的に同様の結果を得られるものと考えられる。
図5には、送信周波数の組合せが2MHzと6MHzの場合の実験結果が示されている。詳しくは、受信時に観測される2,4,6,8MHzの各周波数成分が(a)〜(d)のグラフで示されている。ちなみに、2つの送信周波数の初期位相差は0度としている。ここで、2,6MHzは2つの送信中心周波数に相当しており、4MHzは差周波数(及び2MHzの第2高調波)に相当する。8MHは和周波数に相当する。図示されるように、4MHzの周波数成分についてはビームパターンがかなり複雑となっている。これは差周波数成分と第2高調波成分が干渉しているためであると考えられる。この4MHzの周波数成分に関し、初期位相差Δφを0度、30度、60度、90度と変化させた場合の実験結果が図6の(a)〜(d)に示されている。0度から90度へ変化するのに従って、音圧分布が滑らかに改善している。その他の条件は図5に示したものと同一である。図7には、送信数周波数の他の組合せについての実験結果が示されている。ここでは、2MHzと8MHzが用いられている。ちなみに、初期位相差は0度としている。この場合には、受信時に、2つの送信周波数の他に、第2高調波である4MHz成分が観測され、差周波数6Mzが観測される。更に、和周波数10MHzが観測され得るが、図7にはその音場を示すグラフについては示されていない。
以上の実験結果から、差周波数成分及び和周波数成分を十分に利用できることが理解でき、また必要に応じて初期位相差を適宜設ければより良好な音場を形成できることが理解できる。更に、色々な送信周波数の組合せを必要に応じて選択すればよいことが理解できる。その場合に差周波数と第2高調波の各周波数成分を利用することも可能である。
10 プローブ、18 送信部、20 第1送信回路、22 第2送信回路、24 受信部、26 制御部、28 フィルタ部、38 信号処理部、40 加算合成部。
Claims (8)
- 第1周波数を有する第1送信波と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信波と、を含む送信波群を同時に送信し、反射波を受信して受信信号を出力する送受信手段と、
前記第1周波数に対応した第1通過帯域特性を有し前記受信信号から第1周波数成分を抽出する第1フィルタと、前記第2周波数に対応した第2通過帯域特性を有し前記受信信号から第2周波数成分を抽出する第2フィルタと、前記第1周波数及び前記第2周波数の差又は和に相当する第3周波数に対応した第3通過帯域特性を有し前記受信信号から第3周波数成分を抽出する第3フィルタと、を含むフィルタ群を有するフィルタ手段と、
前記第1周波数成分、前記第2周波数成分及び前記第3周波数成分を含む周波数成分群を合成し、合成信号を生成する合成手段と、
前記合成信号に基づいて超音波画像を形成する画像形成手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。 - 第1周波数を有する第1送信波と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2送信波と、を含む送信波群を同時に送信し、反射波を受信して受信信号を出力する送受波手段と、
前記第1周波数に対応した第1通過帯域特性を有し前記受信信号から第1周波数成分を抽出する第1フィルタと、前記第2周波数に対応した第2通過帯域特性を有し前記受信信号から第2周波数成分を抽出する第2フィルタと、前記第1周波数及び前記第2周波数の差に相当する第3周波数に対応した第3通過帯域特性を有し前記受信信号から第3周波数成分を抽出する第3フィルタと、前記第1周波数及び前記第2周波数の和に相当する第4周波数に対応した第4通過帯域特性を有し前記受信信号から第4周波数成分を抽出する第4フィルタと、を含むフィルタ群を有するフィルタ手段と、
前記第1周波数成分、前記第2周波数成分、前記第3周波数成分及び前記第4周波数成分を含む周波数成分群を合成し、合成信号を生成する合成手段と、
前記合成信号に基づいて超音波画像を形成する画像形成手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1又は2記載の装置において、
前記第1送信波と前記第2送信波の初期位相をシフトさせる送信制御手段を含むことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1又は2記載の装置において、
前記周波数成分群の合成に際して各周波数成分に重み付けを行う手段を含むことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1又は2記載の装置において、
前記フィルタ手段と前記合成手段との間で前記各周波数成分に対して検波処理を行う手段を含むことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1又は2記載の装置において、
前記送受信手段は、前記第1送信波を送信する第1振動子と、前記第2送信波を送信する第2振動子と、を含むことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項6記載の装置において、
前記第1振動子は複数の第1振動素子で構成されたアレイ振動子として構成され、
前記第2振動子は複数の第2振動素子で構成されたアレイ振動子として構成された、
ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項6記載の装置において、
前記第1振動子はリング状の振動子であり、
前記第2振動子は前記第1振動子の内部に設けられた円形の振動子である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
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-
2006
- 2006-01-17 JP JP2006008196A patent/JP2007190045A/ja active Pending
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JP2015084979A (ja) * | 2013-10-31 | 2015-05-07 | フクダ電子株式会社 | 超音波診断装置 |
JP2018103023A (ja) * | 2018-04-05 | 2018-07-05 | コニカミノルタ株式会社 | 超音波診断装置 |
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