JP5586492B2 - 熱cvd装置および蒸着膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱CVD装置および蒸着膜の形成方法に関するものである。
蒸着装置の1つである熱化学気相成長装置(以下、熱CVD装置という)は、不活性ガスを充填または真空(減圧状態)にした反応容器内に基板を配置し、この反応容器内で基板を加熱するとともに、当該反応容器に原料ガスを送り込んで、加熱された基板の表面に膜を成長させるものである。
一般に熱CVD装置では、原料ガスの方が基板よりも低温であるから、膜の形成時に基板が原料ガスにより冷却され、基板の蒸着面での温度が均一ではない。したがって、従来の熱CVD装置では安定して蒸着を行うことができないため、新たな熱CVD装置として、蒸着を行う反応管の外部に、原料ガスを加熱するための加熱手段を設け、加熱された原料ガスを反応管に導入して、ヒータで加熱した基板に蒸着させる構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−322837号公報
ところで、上記特許文献に記載の熱CVD装置のように、ガス(原料ガス)を加熱ヒータやサセプタにより加熱する構成だと、ガスは低密度で熱伝達率が低いので、ガスの温度が上昇しにくいという問題があった。
他に、サセプタを基板に接触させて、基板の温度低下や温度の不均一を防ぐという方法も考えられる。この接触部にグリースを挿入できれば、サセプタの熱を十分且つ均一に基板へ伝えられるが、基板が配置される反応管(加熱室)内はグリースが分解する程の高温であるから、当該接触部にグリースを挿入できない。このため、サセプタで基板の温度低下や温度の不均一を防ぐという方法は現実的ではない。
また、原料ガスをマイクロ波により加熱する方法も考えられるが、この方法だと、加熱できるガスは分子が分極を有するものに限られ、例えばカーボンナノチューブの形成に用いられるメタンガスやアセチレンガスなどを加熱できないという問題がある。
そこで、本発明は、これらの課題を解決し、分子が分極を有しない原料ガスであっても、十分に加熱してから基板に供給することで、安定して基板上に蒸着膜を形成することができる熱CVD装置および蒸着膜の形成方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る熱CVD装置は、ガス加熱手段で加熱された原料ガスを加熱室内に導入し、熱化学気相成長法により加熱室内の基板に蒸着させる熱CVD装置であって、
上記ガス加熱手段が、上記加熱室内に導入する原料ガスに交番磁界を与える交番磁界発生用コイルと、上記交番磁界が与えられた原料ガスに電磁波を照射する電磁波発生用コイルとを備え、上記原料ガスに上記電磁波の電磁エネルギーを吸収させることで当該原料ガスを加熱するものである。
また、本発明の請求項2に係る熱CVD装置は、請求項1に記載の熱CVD装置において、電磁波発生用コイルの軸心に、原料ガスを加熱室内に導入するガス導入手段を設けたものである。
さらに、本発明の請求項3に係る蒸着膜の形成方法は、加熱された原料ガスを加熱室内に導入し、熱化学気相成長法により加熱室内の基板に蒸着させる蒸着膜の形成方法であって、
上記加熱室内に導入する原料ガスに交番磁界発生用コイルで交番磁界を与えるとともに、上記交番磁界が与えられた原料ガスに電磁波発生用コイルで電磁波を照射して、上記原料ガスに上記電磁波の電磁エネルギーを吸収させることで当該原料ガスを加熱する方法である。
上記熱CVD装置および蒸着膜の形成方法によると、原料ガスは核磁気共鳴による電磁エネルギーの吸収を継続し、吸収した電磁エネルギーを熱エネルギーに変換して発熱するので、分子が分極を有しない原料ガスであっても、十分に加熱してから基板に供給することで、安定して基板上に蒸着膜を形成することができる。
本発明の実施例に係る熱CVD装置の概略構成を示す断面図である。 同熱CVD装置における加熱室の斜視図である。
以下、本発明の実施の形態に係る熱CVD装置の一例として、カーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置について説明する。
本実施例における熱CVD装置は、概略的には、カーボンナノチューブを基板の表面に形成するものである。この基板として、ステンレス製の帯状鋼材、すなわちステンレス箔(20〜300μm程度の厚さ)またはステンレス鋼板(300μm〜数mm程度の厚さ)の薄いものが用いられる。このステンレス箔または薄いステンレス鋼板(以下では単に基板という)は、熱CVD装置のロールに巻き付けられており、カーボンナノチューブの形成に際して、このロールから引き出されて連続的にカーボンナノチューブが形成されるとともに、他方のロールに巻き取るようにされている。すなわち、一方の巻出しロールから基板を引き出し、この引き出された基板の表面にカーボンナノチューブを形成した後、このカーボンナノチューブが形成された基板を他方の巻取りロールに巻き取るようにされている。
以下、上記熱CVD装置について、図1および2に基づき説明する。
この熱CVD装置には、図1に示すように、炉本体2内にカーボンナノチューブを形成するための細長い処理用空間部が設けられて成る加熱炉1が具備されており、この炉本体2内に設けられた処理用空間部は、所定間隔おきに配置された区画壁3により、複数の、例えば5つの部屋に区画されて(仕切られて)いる。
すなわち、この炉本体2内には、基板Kが巻き取られた巻出しロール16が配置される基板供給室11と、この巻出しロール16から引き出された基板Kを導きその表面に前処理を施すための前処理室12と、この前処理室12で前処理が施された基板Kを導きその表面にカーボンナノチューブを形成するための加熱室13と、この加熱室13でカーボンナノチューブが形成された基板Kを導き後処理を施すための後処理室14と、この後処理室14で後処理が施された基板Kを巻き取るための巻取りロール17が配置された基板回収室(製品回収室ということもできる)15とが具備されている。なお、上記各ロール16,17の回転軸心は水平方向にされており、したがって加熱室13内に引き込まれる(案内される)基板Kは水平面内を移動するとともに、基板Kの表面にカーボンナノチューブを形成するようにされている。以下では、上記ロール16,17の間の方向、すなわち基板Kが移動する方向を前後方向といい、この前後方向に水平面上で直交する方向を左右方向という。
上記前処理室12では、基板Kの表面、特にカーボンナノチューブを形成する表面(下面である)の洗浄、不動態膜の塗布、カーボンナノチューブ形成用の触媒微粒子、具体的には、鉄の微粒子(金属微粒子)の塗布が行われる。洗浄については、アルカリ洗浄、UVオゾン洗浄が用いられる。また、不動態膜の塗布方法としては、ロールコータ、LPDが用いられる。触媒微粒子の塗布方法としては、スパッタ、真空蒸着、ロールコータなどが用いられる。
また、後処理室14では、基板Kの冷却と、基板Kの表面、すなわち下面に形成されたカーボンナノチューブの検査とが行われる。
そして、基板回収室15では、基板Kの裏面(上面)に保護フィルムが貼り付けられ、この保護フィルムが貼り付けられた基板Kが巻取りロール17に巻き取られる。なお、基板Kの上面に保護フィルムを貼り付けるようにしているのは、基板Kを巻き取った際に、その外側に巻き取られる基板Kに形成されたカーボンナノチューブを保護するためである。
上述したように、炉本体2内には、区画壁3により5つの部屋が形成されており、当然ながら、各区画壁3には、基板Kを通過させ得る連通用開口部(スリットともいう)3aがそれぞれ形成されている。
ところで、上記加熱室13においては、熱CVD法により、カーボンナノチューブが形成されるが、当然に、内部は所定の真空度(負圧状態)に維持されるとともに、カーボンナノチューブの形成用ガスつまり原料ガスGが供給されており、またこの原料ガスGが隣接する部屋に漏れないように考慮されている。例えば、加熱室13においては、窒素ガスなどの不活性ガスNと一緒に原料ガスGが下方から供給されるとともに上方から排出されて(引き抜かれて)いる。一方、この加熱室13以外の部屋、すなわち基板供給室11、前処理室12、後処理室14および製品回収室15についても、窒素ガスなどの不活性ガスNが下方から供給されるとともに上方から排出されて(引き抜かれて)、大気が入り込まないようにされている。
ところで、上記原料ガスGには、磁界が与えられるとともにラーモア周波数と同じ周波数の電磁波が照射されると当該電磁エネルギーを吸収するガス、すなわち、原子番号が奇数の原子(水素原子Hなど)を有するガスが用いられる。原子番号が奇数の原子は、核スピンおよび磁気モーメントを有するため磁界に平行と反平行のエネルギー準位を持ち、核磁気共鳴により当該原子における不対電子の励起エネルギーと等しい電磁エネルギーを吸収するからである。一定の電磁エネルギーを吸収した上記原子は、励起エネルギーを緩和過程を経て熱エネルギーに変換するが、継続して電磁エネルギーを吸収させると、吸収した電磁エネルギーを連続的に熱エネルギーに変換することで、上記原子を含むガスが加熱される。なお、上記原料ガスGの具体例としては、アセチレンガス(C)がある。その他加熱可能なガスとしては、エチレン(C)、シラン(SiH)、四塩化珪素(SiCl)など、スピン量子数が0でない、水素、窒素、珪素などの原子を含むガスであれば良い。
ここで、加熱室13について詳しく説明する。
すなわち、図2に示すように、この加熱室13は、当該加熱室13内の空気を排気して所定の減圧下にするための排気装置(図示しない)と、内壁面に貼り付けられた所定厚さの断熱材4と、底壁部2aの中心位置から下方に接続されて原料ガスGおよび不活性ガスNを加熱室13内に導入するガス導入管(ガス導入手段の一例である)5と、このガス導入管5を通過する原料ガスGを加熱するためのガス加熱装置(ガス加熱手段の一例である)9と、上記ガス導入管5で加熱室13内に導入された原料ガスGを基板Kに供給するガス案内用ダクト23と、このガス案内用ダクト23から基板Kに供給する原料ガスGを整流するための整流板26と、基板Kを加熱するための複数本の円柱形状(または棒状)の発熱体22よりなる基板加熱装置21と、基板Kに供給された後の原料ガスGおよび加熱室13内の不活性ガスNを排出するガス排出口7とを有する。
ここで、上記ガス加熱装置9は、上記ガス導入管5が軸心に位置するように配置されるとともに高周波電源32が接続された電磁波発生用コイル31と、ガス導入管5と軸心を直交させて配置されるとともに直流電源36および正負極切換装置(図示しない)が接続された交番磁界発生用コイル33とを備えている。この、交番磁界発生用コイル33は、図2に示すように、電気的に接続された前コイル34および後コイル35(すなわち2つのコイル)から構成され、前コイル34と後コイル35の間にガス導入管5が位置するように配置される。すなわち、交番磁界発生用コイル33は、直流電源36からの直流電流で磁界を発生させるとともに、正負極切換装置により当該直流電源36の正負極を切り換えることで当該磁界のNS極を周期的に切り換え、ガス導入管5内の原料ガスGに交番磁界を与えるものである。また、電磁波発生用コイル31は、上記高周波電源32からの高周波電流で発生させた電磁波を、ガス導入管5内の原料ガスGに照射するものである。したがって、上記ガス加熱装置9は、交番磁界発生用コイル33による交番磁界を原料ガスGに与えるとともに、電磁波発生用コイル31による電磁波を原料ガスGに照射して、当該電磁波の電磁エネルギーを核磁気共鳴により吸収させ、原料ガスGを加熱するものである。より詳しく説明すると、定常の磁界において核磁気共鳴により一定の電磁エネルギーを吸収した原料ガスGは、励起エネルギーを緩和過程を経て熱エネルギーに変換するが、上記磁界が定常ではなく交番磁界であれば、原料ガスGは継続して電磁エネルギーを吸収するとともに、吸収した電磁エネルギーを連続的に熱エネルギーに変換することで、上記原料ガスGが加熱される。この原理を上記ガス加熱装置9は用いている。
また、上記基板加熱装置21は、加熱室13内の中間部分の上方位置(加熱室13内での基板Kの上方位置)に配置されて基板Kを加熱する複数本の円柱形状(または棒状)の発熱体22から構成される。これら発熱体22は、基板Kの上面(裏面)側に配置されるもので、左右方向と平行(並行)に且つ前後方向にて所定間隔おきで複数本配置されている。なお、基板Kへの加熱の均一化すなわち均熱化を図るため、これら発熱体22を含む平面は、基板Kと平行となるようにされている。また、発熱体22としては非金属の抵抗発熱体が用いられ、具体的には、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、ランタンクロマイト、ジルコニア、黒鉛などが用いられる。特に、炭化ケイ素およびケイ化モリブデンは、窒素ガス、水素ガス雰囲気下で用いられ、ランタンクロマイトは大気下でのみ用いられ、黒鉛は不活性ガス雰囲気(還元雰囲気)下で用いられる。
さらに、上記ガス案内用ダクト体23は、加熱室13の底壁部2aと基板Kとの間、正確には、下部の断熱材4と基板Kとの間であってガス導入管5の上端に接続され、側面視がホッパー形状(逆台形状)で上面に矩形状の開口を有するものである。
また、整流板26は、基板Kの直ぐ下方で且つガス案内用ダクト体23の上方に配置されており、圧力制御が可能な小さい穴(例えば直径が5〜20mm程度)が多数形成され、素材としては石英ガラス、セラミックスなどが用いられる。
一方、加熱室13における基板K以外の構成材料、例えば断熱材4などは、有機ガスの影響を無くすために、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化アルミニウム(Al)などの無機材料で構成されている。
ここで、前処理室12での工程について説明する。
この前処理室12内では、基板Kが洗浄された後、シリカ、アルミナなどの不動態膜が塗布され、さらにこの不動態膜の上から、金属例えば鉄(Fe)の触媒微粒子が塗布される。勿論、図示しないが、この前処理室12内には、基板Kの洗浄手段、不動態膜の塗布手段、および金属例えば鉄(Fe)の触媒微粒子の塗布手段が設けられており、これら塗布手段はマスク等を有しない簡易な構造であるから、不動態膜および触媒微粒子は基板Kの全面に塗布される。
ところで、基板Kとして、厚さが20〜300μm以下に圧延加工されてコイル状に巻き取られたステンレス箔が用いられると、このような基板Kには、コイルの巻き方向に引張りの残留応力が存在するため、触媒の微粒化および熱CVD時に、残留応力の開放により、基板Kに反りが発生する。このような反りの発生を防止するために、コイル巻き方向で張力を付加する機構、具体的には、巻出しロールと巻取りロールとの間で張力を発生させて(例えば、両ロールの回転速度を異ならせることにより張力を発生させる。具体的には、一方のモータで引っ張り、他方のモータにブレーキ機能を発揮させればよい。)基板Kを引っ張るようにしてもよい。また、巻取りロール側に錘を設けて引っ張るようにしてもよい。
ところで、上記加熱炉1にて熱CVD法が行われる際には、加熱室13内が所定圧力に減圧される。
この減圧値としては、数Pa〜1000Paの範囲に維持される。例えば、数十Pa〜数百Paに維持される。なお、減圧範囲の下限である数Paは、カーボンナノチューブの形成レート(成膜レートである)を保つための限界値であり、上限である1000Paは煤、タールの抑制という面での限界値である。また、加熱炉1内の構成部材としては、煤、タールなどの生成が促進しないように、非金属の材料が用いられている。
ところで、加熱室13以外の他の処理室、すなわち基板供給室11、前処理室12、後処理室14および製品回収室15については詳しくは説明しなかったが、これら各室11,12,14,15についても減圧状態にされるとともに、加熱室13に空気などのカーボンナノチューブの形成に悪影響を及ぼすガスが流入するのを防止するために、図1に示すように、それぞれの底壁部2aには窒素ガスなどの不活性ガスを導入するためのガス導入口5′が設けられるとともに、上壁部2bには、ガス放出口(ガス排出口でもある)6′が設けられている。
なお、図では炉本体2の内部が分かるように、手前側の側壁部および断熱材4については省略している。
次に、上記熱CVD装置により、基板Kにカーボンナノチューブを形成する方法について説明する。
まず、巻出しロール16から基板Kを引き出し、前処理室12、加熱室13および後処理室14における各区画壁3の連通用開口部3aを挿通させ、その先端を巻取りロール17に巻き取らせる。このとき、基板Kには張力が付与されて真っ直ぐな水平面となるようにされている。
そして、前処理室12内では基板Kの洗浄が行われた後、不動態膜が下面全体に亘って塗布され、この不動態膜の表面に鉄の微粒子が塗布(付着)される。なお、この触媒微粒子の塗布範囲については、少なくとも、カーボンナノチューブの形成面であれば足りるが、塗布手段が簡易な構造であるから、触媒微粒子の塗布範囲も下面全体となる。
この前処理が済むと、基板Kは所定長さ分だけ、つまりカーボンナノチューブが形成される長さ分だけ、巻取りロール17により巻き取られる。したがって、前処理室12で前処理が行われた部分が、順次、加熱室13内の整流板26上に移動される。
この加熱室13では、排気装置により、所定の減圧下に、例えば数Pa〜1000Paの範囲に、具体的には、上述したように数十Pa〜数百Paに維持される。
そして、基板加熱装置21、すなわち発熱体22により、基板Kの温度を所定温度、例えば700〜800℃に加熱する。
上記温度になると、ガス導入管5より原料ガスGとしてアセチレンガス(C)を加熱室13内に導入する。このとき、高周波電源32で電磁波発生用コイル31に高周波電流を流し、直流電源36で交番磁界発生用コイル33に直流電流を流すとともに正負極切換装置で当該直流電源36の正負極を周期的に切り換える。これにより、アセチレンガスに交番磁界発生用コイル33で交番磁界が与えられるとともに、当該アセチレンガスに電磁波発生用コイル31で発生した電磁波が照射される。したがって、アセチレンガスは、核磁気共鳴による電磁エネルギーの吸収を継続し、励起エネルギーを連続的に熱エネルギーに変換することで、アセチレンガスが加熱される。
このアセチレンガスが吸収する電磁エネルギー(水素原子Hにおける不対電子の励起エネルギーと等しい)E[J]は、下記式で表される。
Figure 0005586492
ここで、μ[H/m]は透磁率、Hは磁界の強さ[T]、hはプランク定数[J・s]、νは電磁波周波数[Hz]である。
また、アセチレンガスがガス加熱装置9で上昇する温度T[℃]は、下記式により求められる。
Figure 0005586492
ここで、nは磁気共鳴核子数、kはボルツマン定数[J/℃]、fは交番磁界周波数[Hz]、tは原料ガスGが磁界内を通過する時間[s]である。
また、このtは、下記式により求められる。
Figure 0005586492
ここで、Lは図2に示す磁界範囲長さ[m]、vはアセチレンガスのガス導入管5内での流速[m/s]である。
したがって、アセチレンガスはnが2なので、Hを4.7[T]、νを200M[Hz]、fを500k[Hz]、Lを0.5[m]、vを5[m/s]にすると、このアセチレンガスがガス加熱装置9で上昇する温度Tは約640[℃]となる。
この加熱されたアセチレンガスを基板Kに供給して、基板Kの下面に、カーボンナノチューブを形成させる。
そして、所定時間が経過して所定高さのカーボンナノチューブが得られると、同じく、所定長さだけ移動されて、このカーボンナノチューブが形成された基板Kが後処理室14内に移動される。
この後処理室14内では、基板Kの冷却と検査とが行われる。
この後処理が済むと、基板Kは製品回収室15内に移動されて、その上面に保護フィルムが貼り付けられるとともに、巻取りロール17に巻き取られる。すなわち、カーボンナノチューブが形成された基板Kが製品として回収されることになる。なお、カーボンナノチューブが形成された基板Kが全て巻取りロール17に巻き取られると、外部に取り出されることになる。
上記熱CVD装置の構成によると、密度や熱伝達率が低く、分子に分極を有しない原料ガスであっても、核磁気共鳴により原料ガスの原子に電磁エネルギーを吸収させることで、原料ガスを十分に加熱して基板に供給し、安定して基板上にカーボンナノチューブを形成することができる。
ところで、上記実施例では、カーボンナノチューブ形成用の熱CVD装置について説明したが、これに限定されるものではなく、他の蒸着膜を形成する熱CVD装置であってもよい。
また、上記実施例では、原料ガスGの一例としてアセチレンガスについて説明したが、原子番号が奇数の原子を有するガスなど、核磁気共鳴により加熱されるガスであればよい。
さらに、上記実施例では、交番磁界発生用コイル33の軸心について説明しなかったが、鉄など磁性体からなる芯部を配置してもよい。
G 原料ガス
N 不活性ガス
K 基板
3a 連通用開口部
4 断熱材
5 ガス導入管
7 ガス排出口
13 加熱室
21 基板加熱装置
23 ガス案内用ダクト
26 整流板
31 電磁波発生用コイル
32 高周波電源
33 交番磁界発生用コイル
36 直流電源

Claims (3)

  1. ガス加熱手段で加熱された原料ガスを加熱室内に導入し、熱化学気相成長法により加熱室内の基板に蒸着させる熱CVD装置であって、
    上記ガス加熱手段が、上記加熱室内に導入する原料ガスに交番磁界を与える交番磁界発生用コイルと、上記交番磁界が与えられた原料ガスに電磁波を照射する電磁波発生用コイルとを備え、上記原料ガスに上記電磁波の電磁エネルギーを吸収させることで当該原料ガスを加熱することを特徴とする熱CVD装置。
  2. 電磁波発生用コイルの軸心に、原料ガスを加熱室内に導入するガス導入手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱CVD装置。
  3. 加熱された原料ガスを加熱室内に導入し、熱化学気相成長法により加熱室内の基板に蒸着させる蒸着膜の形成方法であって、
    上記加熱室内に導入する原料ガスに交番磁界発生用コイルで交番磁界を与えるとともに、上記交番磁界が与えられた原料ガスに電磁波発生用コイルで電磁波を照射して、上記原料ガスに上記電磁波の電磁エネルギーを吸収させることで当該原料ガスを加熱することを特徴とする蒸着膜の形成方法。


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