JP5586222B2 - 生物活性制御方法及びこの方法を適用した各種装置 - Google Patents
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Description
本発明第1発明群は、イオンを用いて微生物(特に菌類)の発育を阻止する抗菌技術に関する。
本発明第2発明群はイオンを用いて細胞の増殖活性を制御する方法に関し、特に動物細胞の増殖活性を制御する方法及びこの方法を適用する細胞活性制御装置に関する。
本発明第3発明群は、第1発明群の抗菌原理を適用した抗菌処理機能付き製氷装置を備えた冷蔵庫に関する。
本発明第4発明群は、第1発明群の抗菌原理を適用した抗菌処理機能付き回転ドラム式洗濯機に関する。
以下、各発明群ごとに区分し、順次その内容を記載する。
第1発明群の背景技術
近年、健康に対する要求の高まりとともに、家電製品、台所用品、トイレタリー用品、文具用品、家具・装飾品などの生活用品の分野、紙・パルプ用スライムコントロール剤、木材防腐分野などの産業分野、白衣、カーテン、建材、医療用器具などの医療分野、等のさまざまな分野において、微生物(原核生物や真核生物等)除去の要求が高まっている。
特許文献1では、光を用いる殺菌技術が提案されている。この技術は、抗菌性金属を用いるのではなく、青色発光ダイオードの閃光パルスを用いて殺菌する技術である。しかし、強力な光を用いるこの技術では、装置が早期に劣化するとともに、光自体が人体に悪影響を及ぼす恐れがある。
第1発明群が解決しようとする課題
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った。その結果、特定の光を微生物に照射することにより微生物体内に吸収されるイオン量が増加することを知った。また、特定の光を微生物に照射することにより、従来の方法では抗菌が難しかった、細胞壁の厚い真核生物をも小さいイオン濃度でもって抗菌できることを見出した。
上記課題を解決するための第1発明群の基本構成は、イオンを用いて微生物の発育を阻止する抗菌方法において、特定の光を微生物に照射した後に、又は照射しつつ、当該微生物にイオンを接触させ、また微生物にイオンを接触させた状態で当該微生物に特定の光を照射する抗菌方法であることを特徴とする。
微生物に特定の光を照射する照射手段と、前記特定の光が照射された微生物に、前記イオン発生手段で発生させたイオンを接触させる接触手段と、を備える抗菌装置である。
更に、前記金属イオンが銀イオンである構成とすることができる。
これらの構成からなる抗菌装置を用いると、簡便な操作で効率よく微生物の抗菌を行うことができ、しかも極めて低濃度のイオンでもって抗菌を行うことができる。よって、本発明によると、実質的に環境汚染を生じさせることなく、抗菌目的を達成することができる。
図1は、第1発明群にかかる抗菌方法を説明する図である。
図2は、Cladosporium cladosporioides (NBRC 6348)を用いた場合における抗菌試験結果を示す。
図3は、Escherichia coli (NBRC-3972)を用いた場合における抗菌試験結果を示す。
図4は、特定光の波長と抗菌効果との関係を説明する抗菌試験結果である。
図5は、第5実験群の抗菌試験結果を示すグラフである。
図6は、光照射強度が同一のグループごとの抗菌力を示すグラフである。
図7は、照射光の波長と抗菌効果との関係を示すグラフである。
図8は、第8実験群における検体A〜Dの抗菌結果を示すグラフである。
図9は、特定光の照射により微生物体内における銀イオンの取込み部位が変動することを表すグラフである。
1 金属プレート(銀プレート)
2 金属イオン収容容器
3 菌溶液
4 光照射部(LED)
5 暗箱
6 寒天培地
7 試験容器
8 試験容器
9 電流源
10 金属イオン溶出用溶液
11 金属イオン生成装置
12 試験液
13 金属イオン適用装置(接触部且つ照射部)
〔初めに〕
微生物に対する抗菌作用を有するイオンとしては、金属イオンが挙げられ、具体的には銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン、水銀イオンを挙げることができる。これらの金属イオンのなかで銀及び/又は銅が人体への安全性の高さから好ましいが、本発明は、特定のイオンに限られることなく、抗菌作用を有する種々のイオンに適用できる。
なお、本発明は、複数種が含まれた対象物に対しても適用できることは勿論である。
第1発明群を実施するための実施の形態を、実験群に基づいて説明する。
図1に、以下の実験群における実験手順の概要を示す。図1において、符号1は金属プレート、符号2は金属イオン収容容器、符号3は菌を分散させた菌溶液、符号4は光照射部、符号5は遮光性材料からなる暗箱、符号6は微生物を培養する寒天培地、符号7は試験容器、符号8は光を照射しない側の試験容器、符号9は電流源、符号10は金属イオン溶出用溶液である。また、説明の都合上、金属プレート1と金属イオン収容容器2と電流源9と金属イオン溶出用溶液10を含む全体を金属イオン生成装置10とし、暗箱5と暗箱5内の光照射部4と試験容器7と試験液12とを含む全体を金属イオン適用装置13と称することとする。
金属プレート1として銀プレートを用意した。銀はイオン化傾向が小さく、電子を放出しにくく、酸化され難いという特徴を持ち、標準単極電位が+0.8Vであり、陽イオンになりにくい。このため、金属状態の銀を水中に入れても容易に溶出しない。よって、銀イオン溶液の調製方法としては、銀に電界をかける図1の金属イオン生成装置11を用いるのがよい。具体的には、図1に示す金属イオン収容容器2に、二枚の純銀プレートを配置し、銀プレートの間に10〜50mAの電流がかかるように電圧(〜50V程度)を制御し、溶液中に銀イオンを溶出させた。この方法によると、例えば12.5mAで30秒間通電することにより、900ppbの銀イオン溶液を得ることができる。
なお、銀プレートの間に印可する電流と印可時間を制御することにより、金属イオン生成装置11を用いて1〜2000ppb濃度の銀イオン溶液を作製することができる。また、これよりも高濃度の銀イオン溶液を調製するには、例えば銀イオンゼオライト(NFG社製)を用い、銀イオンゼオライト(NFG社製)1gを水溶液中10mL中に保持し、陽イオン交換させることにより、106.2ppmの銀イオン水を作製することができる。
なお、図1の符号4が光照射部であり、この光照射部の光源は、紫外LED4(ナイトライドセミコンダクター社製)を14個組み合わせた構造となっている。このLED4に電圧3.8V、総電流21mAを印加することにより上記紫外光を出力させた。
なお、上記各試験液の調製においては、紫外LED4が生体膜のイオンの膜透過を容易とさせる特定の光を出力する光照射部として機能し、金属イオン適用装置が微生物に金属イオンを接触させる接触部と、微生物に光を照射する照射部として機能することになる。
cladosporioidesに銀イオンを接触させた状態で紫外光照射を行った試験液A(図中○)は、紫外光の照射を行わずに銀イオンを接触させた試験液C(図2中●)よりも1桁高い殺菌効果を奏することが認められた。
上記Cladosporium cladosporioides(NBRC 6348)に代えて、Escherichia coli (NBRC-3972、大腸菌)を用いたこと以外は、上記第1実験群と同様にして4種類の試験液を調製し、これらの試験液について抗菌試験を行った。なお、第2実験群で調製した試験液は、上記試験液A〜Dに対応させ、試験液2A〜2Dとする。
ここでは、365nm、525nm、660nmのピーク波長が異なる3種類の特定光を用いて、特定光の種類と抗菌効果との関係を調べた。
具体的には、菌体として上記第1実験群と同じCladosporium cladosporioides(NBRC 6348)を用いた。光源としては、シップス社製LEDユニット(ピーク波長が365nm・照射強度1800μW/cm2,ピーク波長が525nm・照射強度2800μW/cm2,ピーク波長が660nm・照射強度4000μW/cm2)でそれぞれ出力させた。銀イオン濃度は600ppbとし、照射強度が525nmのものについては、菌体を1日間栄養分のないリン酸緩衝液に静置したもの(一日飢餓状態)を用い、その他の事項については上記第1実験群と同様とした。
波長660nmで抗菌力増強効果が認められないのは、この波長光では微生物体内に効率よく銀イオンを取り込ませることができないためと考えられる。
上記第1実験群の試験液A(Cladosporium cladosporioides 特定光照射+銀イオン)、試験液C(光照射なし+銀イオン)、上記第2実験群の試験液2A(Escherichia coli 特定光照射+銀イオン)及び試験液2C(光照射なし+銀イオン)について、光照射後60分後に試験液をそれぞれ採取し、遠心分離法により試験液中の菌体を回収した。これらの菌体を0.1Mカコジル酸緩衝液と2%グルタルアルデヒドとを用いて4℃の環境で前固定した後、4℃の0.1Mカコジル酸緩衝液で3回洗浄し、さらに4℃で2%四酸化オスミウム水溶液に3時間浸透する方法により後固定処理した。
cladosporioidesにかかる試料Aついては、電子顕微鏡観察において銀の結晶を確認できなかったが、エックス線分析において細胞膜付近ではなく、菌体内部の特定箇所に銀が偏在していることが確認された。Escherichia coliにかかる試料2Aついては、銀が細胞膜周囲ではなく、細胞の中央部分に存在することが確認された。また、光照射を行わなかった試料C、2Cについては、顕微鏡観察、エックス線分析ともに、細胞内部に銀は検出できなかった。
第5実験群では、上記第1実験群に記載したものと同様な装置および方法(図1参照)を用いて、抗菌力に及ぼす銀イオン濃度と光照射強度との関係、抗菌力と光波長との関係を調べた。
各々、紫外光照射30分後に試験液を採取した。採取した試験液を検体A〜Nとする。表1に検体A〜Nの試験条件を一覧表示した。
なお、上記第1実験群におけると同様、試験液は調製後、直ちに暗箱5内に収納し、実験室内の蛍光灯や自然光などの光が試験液に影響を及ぼすことがないようにした。
上記検体A〜Nに対して抗菌試験を行った。抗菌試験方法は、採取した試験液100μLを図1に示す寒天培地6(ポテト寒天培地)に塗抹し、25℃で3日間培養した後、培地上のコロニー数を数える方法によった。
(i) 何れの銀イオン濃度においても、光を照射すると抗菌効果が高まる。
(ii) 何れの銀イオン濃度においても、光照射強度が強くなると抗菌効果が更に高まる。
(iii) 光照射による抗菌力増強効果は、銀イオン濃度が1100ppbにおいて特に顕著である。
なお、この実験群では菌体を銀イオン溶液に浸けた状態で光照射を行ったが、銀イオン水を菌体(微生物)に噴霧した後に光照射してもよい。また、菌体(微生物)に銀や銀化合物または銀イオン含有物質(例えば銀イオン含有のゼオライト、セラミックス、シリカゲル、ケイ酸塩、リン酸カルシウムなど)を付着後、水を噴霧する方法によっても菌体に銀イオンを接触させることができる。
第6実験群では、波長の異なる光を用い、照射する光の波長と抗菌効果の関係を調べた。
上記と同様にしてCandida albicans NBRC-1060を菌体とし菌数7×106個/mLで銀イオン濃度1100ppbの試験液を6通り用意した。これらの1つには光照射せず、他にはピーク波長365nm、400、525、600nm、660nmの何れかの光を30分間照射した。この後、上記第5実験群と同様にして抗菌試験を行った。各々光の光源としてはLED(発光ダイオード)を用いた。
なお、図7に示される傾向から、波長が365nm未満の光においても抗菌力増強効果がある。ただし、ピーク波長が300nm未満の光は、生体細胞のDNAに損傷を与えることから、本方法を実施するオペレータに害を与える恐れがあるので、好ましくない。よって、抗菌力を増強するために使用する特定の光としては、好ましくはピーク波長が300以上〜600nm未満の光を用いるのがよい。
第7実験群においては、菌体としてEscherichia coli IFO3972を用い、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンについて抗菌力増強効果の有無を調べた。具体条件は次のとおりである。
菌数は、4.7×107個とした。
照射条件は、ピーク波長365nmの光を用い、光照射強度50mW/cm2で30分間照射とした。金属イオン濃度としては、銀イオンは110ppb、銅イオンは2500ppb、亜鉛イオンは6500ppbとした。
また、リファレンス(対照試験液)としては、金属イオン未添加のリン酸バッファー(濃度50mM)液を用いた。
表2の結果から明らかなように、銀イオン以外の金属イオン(銅イオン、亜鉛イオン)においても、光照射により抗菌効果が高まることが確認された。なお、特定の光の照射により抗菌効果が高まるのは、菌体(微生物)が備えるイオン透過チャネルが特定の光の照射により開放される結果、菌体表面に存在する金属イオンが菌の体内に速やかに取り込まれて、体内で生理作用(アンチ増殖作用)を発揮するためと考えられる。
第1〜第7実験群において、微生物に特定光を照射すると、抗菌力が増強させること、及びこの理由としては、菌体表面に存在する金属イオンが菌の体内に速やかに取り込まれるためであろうことを述べた。第8実験群ではこのことを更に詳細に調べた。すなわち、第8実験群では、銀イオンが菌体内に取り込まれること、及び菌体内へ取り込まれた銀イオンの存在部位及び存在割合を、高周波誘導プラズマ(Inductively coupled plasma)発光分析法を用いて明らかにした。
図8に、表3の各条件における抗菌実験結果を示した。図8の結果から、菌体(微生物)に対し光を照射しつつ、銀イオンを接触させると、光を照射しないで銀イオンを接触させる場合に比較して、格段に抗菌力が高まることが確認された。
次に、上記検体A〜Dの菌体について、下記実験により、菌体に取り込まれた銀の存在部位を明らかにした。
各検体について、それぞれ4℃に冷却した遠心分離装置を用いて15,000回転/分で10分間遠心分離した、沈殿物(菌体)を収集し、PIERCE社製のMitochondria Isolation Kitを用いて、各検体菌のミトコンドリア画分、核画分、サイトゾル画分に分離した。なお、サイトゾルとは細胞質から細胞内小器官を除いた部分をいう。
図9に示されるように、銀イオン/光なし、及び銀イオン/光ありの何れにおいても、サイトゾル中には実質的に銀の存在が認めらなかった。
また、銀イオン/光なしにおいては、核よりもミトコンドリア画分に、より多くの銀の存在が認められた。
すなわち、ミトコンドリア画分の銀イオン/光なしと、銀イオン/光ありの比較において、光ありの条件の方が核への銀イオン取込量が約2.8倍強多いことが認められた。この結果から、ピーク波長365nmの光(特定光)の照射により、核への銀イオン取込み量が顕著に増加することが明らかになった。
本発明にかかる抗菌方法によると、金属イオンが有する抗菌力が増強されるので、より低濃度の金属イオン濃度でもって微生物の生育を阻止できる。よって、このような本発明抗菌方法を用いると、自然環境への汚染が少ない、人に優しい抗菌を実現することができる。したがって、その産業上の意義は大きい。
〔第2発明群〕
悪性腫瘍は、人の生命を脅かす重大な疾患である。このため悪性腫瘍を治療する方法が種々開発されている。悪性腫瘍の治療方法を大別すると外科療法、化学療法、放射線療法、光線力学療法(PDT)などがある。
〔特許文献2-1〕特開2004−223175(請求項1など)
〔特許文献2-2〕特表2002−543164(請求項1など)
特許文献2-1は、腫瘍内またはその表面に存在する気泡を破泡させることにより、前記腫瘍を構成する腫瘍細胞の少なくとも一部を死滅させる腫瘍治療装置に関する。
しかしながら、これらの技術は、未だ十分なものではない。
第2発明群が解決しようとする課題
第2発明群の発明は、上記に鑑みなされたものであって、その主たる目的は腫瘍細胞にのみ選択的に作用させることのできる技術を提供することにある。本発明者らは、この目的の下、独自の着眼に基づいて鋭意研究を行った。そして下記の知見を得た。
(1)細胞に特定の光を照射すると、光照射しない場合に比較し、より多くのイオンを細胞内に取り込ませることができる。
(2)細胞に特定の光を照射しない場合には、細胞外の金属イオンを細胞内に十分に取り込ませることができない。
(3)細胞に特定の光を照射することによる効果は、悪性の腫瘍細胞において一層顕著に認められる。
上記課題を解決するための細胞活性制御方法にかかる第2発明群発明は、イオンを用いて細胞活性を制御する方法であって、特定の光を細胞に照射した後に、又は照射しつつ、当該細胞にイオンを接触させ、また細胞にイオンを接触させた状態で当該細胞に特定の光を照射することを特徴とする。
この構成であると、簡単に細胞にイオンを接触させることができる。例えば、金属イオン含有溶液が上記した白金錯体を含む溶液である場合、この溶液を腫瘍ができている患部に塗布することにより腫瘍細胞と抗腫瘍作用を有する金属イオンとを接触させることができ、この後、患部に特定の光を照射することにより、患部の悪性腫瘍細胞のみを殺滅等することできる。
この構成を採用すると、特定の光の照射により、動物細胞膜のイオン透過チャンネルが開放され、イオンの膜透過が容易になる。よって、この構成であると、動物細胞に接触させたイオンを効率よく細胞内に取り込ませることができるので、効率よく細胞活性を制御することができる。
300nm以上600nm以下の範囲にピーク波長を有する光は、動物細胞におけるイオン透過性を増強する効果に優れるので、特定の光として好ましい。
また、前記特定の光の照射強度を500〜500,000μW/cm2とすることができる。
また、上記各構成において、前記動物細胞が、腫瘍細胞であるとすることができる。
腫瘍細胞は、正常細胞よりも増殖活動が活発であるので、腫瘍細胞に対し、特定の光を照射した後に又は照射しつつイオンを接触させると、当該イオンの腫瘍細胞内への取り込みが顕著に加速され、取り込まれたイオンは増殖活動の活発である細胞内において一層顕著にその作用を発現する。よって、この発明方法は、腫瘍細胞に対する選択性、細胞活性制御性が強い。
正常細胞と腫瘍細胞とでは生理学的ないし生化学的特性が異なるので、同一のイオン種を適用した場合であっても正常細胞と腫瘍細胞とでは増殖を障害または増殖を増強する程度が異なることが多い。それゆえ、腫瘍細胞に対する増殖障害作用の大きいイオンを用い、更に特定の光を照射する上記構成であると、より強力に腫瘍細胞の増殖のみを選択的に制御することができる。
第2発明群発明によると、細胞、例えば人の悪性腫瘍細胞に、イオンを効率よく取り込ませることができるという顕著な効果が得られる。よって、取り込ませるイオン種と特定の光を適正に選択することにより、腫瘍細胞などの細胞活性を任意に制御することができ、例えば癌細胞の増殖のみを選択的に抑制することが可能になる。
図10は、金属イオンを発生させる装置の概念図である。
図11は、第2発明群にかかる細胞活性制御方法を説明する図である。
図12は、第2発明群にかかる細胞活性制御装置の概念図である。
201 金属イオン収容容器
202 金属プレート
203 溶液
222 直流電源
204 細胞
205 シャーレ
206 シャーレ
207 光源
208 細胞に接触されたイオン溶液
209 暗箱
211 金属イオン発生容器
212 金属プレート
213 印加電圧
214 イオン-光搬送管
215 シリンジ部
216 光源部
217 適用対象部(細胞)
218 蛍光検出部
219 コンピュータ
220 第1制御部
221 第2制御部
第2発明群は、生細胞に対し、短時間により多くのイオンを取り込ませる方法を提供すると共に、このような方法を適用する細胞活性制御装置を提供するものである。
第2発明群発明の構成要素である「イオン」は、正または負の電荷をもつ原子または原子の集団をいい、第2発明群発明は、全てのイオン種を対象とする。イオンは反応性に富む粒子であるので、イオンを生物細胞内に入れると、生細胞に何らかの作用を与える。作用の程度や内容は、イオン種の種類に左右される。イオン種の種類とは、プラスイオン、マイナスイオンの別、金属イオン、有機イオン、無機イオンの違い、構成元素の違いなどをいう。また、作用の程度は、イオン種が同一であっても、その適用対象である細胞の種類や細胞内に取り込まれたイオン量によって異なる。したがって、イオン種を選択し、より多くのイオン種を生物細胞内に取り込ませれば、確実に生物細胞の細胞活性を制御することができる。
なお、特定の光は、光ファイバーなどに代表される光伝達装置を用いて適用対象部位(細胞)にまで配送することができる。また、イオンはイオン含有溶液として、例えばカニューレや注射器などを用いることにより容易に適用対象部位(細胞)に接触させることができる。
(第2発明群実施例1)
第2発明群実施例1は、第2発明群発明にかかる細胞活性制御方法に関する。
細胞活性を制御するイオンとして銀イオンを用意した。銀は、イオン化傾向が小さく、電子を放出しにくく、酸化され難く、また標準単極電位が+0.8Vで陽イオンになり難いという特徴を有する。このため、金属状態の銀を水中に入れても容易に溶出しないので、実施例1では、銀イオン含有溶液の調製方法として、銀に電界をかける方法を用いた。具体的には、図10に示すように、溶液203を入れた容器201に、二枚の純銀プレート202を漬け、両プレート間に10〜50mAの直流電流222が流れるように50Vまたはこれ以下の電圧を掛けた。これにより、溶液中に銀イオンを溶出させて銀イオン含有溶液203を作製した。
なお、銀イオン含有溶液は、銀イオンゼオライトを用いて作製することもできる。具体的には、シナネンゼオミック社製又はエヌ・エフ・ジー社製の銀イオンゼオライト(NFG Agイオンゼオライト)1gを純水10mL中に入れ攪拌することにより、100ppmの銀イオン含有溶液を調製することができる。
以上の各試験シャーレから溶液をアスピレーターで吸引し除去し、この後、各試験シャーレのそれぞれをリン酸緩衝液(−)10mLを用いて3回リンスした。リンス後、各試験シャーレにリン酸緩衝液(−)4mLを滴下した。
(1.5mmol / L)を30μLを、リン酸緩衝液(−)10mlに混合して用いた。この混合溶液中のCalcein-AM濃度は2μ mol/L、 PI濃度は4μ mol/Lである。
測定結果を表201に一覧表示した。また、表201には、表202に示すヒト白血球抗原リンパ球細胞障害性試験法の判定基準による評価を合わせて記載した。
表201の結果から、腫瘍細胞に銀イオンと光の双方を適用すると、銀イオンのみ(光照射なし)に比較し、死細胞率が5.5倍と、顕著に増加することが認められた。また、この効果は、光による細胞の死滅でないことが確認された。
以上から、試験シャーレD1における死細胞率の顕著な増加は、特定の光(ここでは紫外光)によって細胞内への金属イオン取り込みが促進されて、より多くの銀イオンが細胞内に取り込まれたため、銀イオンの生体に対する発育ないし増殖阻害作用が顕著に発揮された結果であると考察できる。
上記喉頭癌由来の上皮細胞(悪性腫瘍細胞)に代えて、小腸腸管粘膜細胞(正常細胞)を用い、これ以外の事項については、上記第1実験と同様にして、試験シャーレA2〜D2を作製し、特定の光の影響を調べた。その結果を表203に示す。
1つのシャーレの片側半分に、喉頭癌由来扁平上皮細胞(悪性腫瘍細胞)を入れ、他方の半分に小腸腸管粘膜細胞(正常細胞)を入れ、同一の条件で培養し、その他の事項については上記第1実験と同様にして、試験シャーレA3〜D3を作製した。これらの試験シャーレA3〜D3について上記第1実験と同様にして黄緑色に染まった生細胞と、赤色に染まった死細胞とを観察した。
銀イオン濃度を10ppm及び25ppmとしたこと以外は、上記第1実験と同様にして、試験シャーレE(25ppm)、F(25ppm)、G(10ppm)、H(10ppm)を作製した。これらの試験シャーレを用いて第1実施群と同様にして細胞増殖活性を調べた。その結果を、上記表201の結果と合わせて表204に一覧表示する。
特定の光として、波長が365nm、400nm、525nm、600nm、660nmの光を用い、光強度を照射強度2mW/cm2とする条件で、光の種類と喉頭癌由来扁平上皮細胞の銀イオン取り込み量との関係を、上記第1実験と同様な方法で調べた。その結果を表205に示す。なお、波長365nmについても前記第1実験とは別に再度の試験を行った。
このことから、特定の波長域の光を適用することにより、有効に細胞膜のイオン透過チャネルを開放させることができることが判った。なお、表205で読み取れる傾向からして、365nm未満の波長においても細胞活性を抑制する効果が得られる。ただし、300nm未満の波長光はそれ自体で正常細胞のDNAを損傷するので、生細胞のイオン透過チャネルを開放させる光としては適当でない。よって、特定の光としては、300nm以上、660nmが好ましく、より好ましくは、300nm以上、600nm、または300nm以上、525nm、更に好ましくは、365nm以上、525nmがよい。
第2発明群実施例2は、第2発明群実施例1で説明した細胞活性制御方法を適用するための細胞活性制御装置に関する。図12は、本発明にかかる細胞活性制御装置である。図12を参照しながら第2発明群実施例2にかかる細胞活性制御装置の概要を説明する。
蛍光検出部218は、細胞活性制御方法が適用された適用対象部における細胞の状態を光学的に判読するための装置であり、蛍光を照射しその反射光を検出する光センサーを有する。蛍光検出部218の光センサーが検出した情報はコンピュータ219に出力され、コンピュータ219が予め設定された画像処理プログラムに基づいて、この情報を処理し、適応対象部に存在する細胞の増殖活性レベルを判定し、例えばコンピュータ219のディスプレイ上に表示する。上記蛍光センサーとしては、例えばCCD(Charge Coupled Device)が使用できる。
第2発明群にかかる細胞活性制御方法および装置は、例えば癌患者に適用することができ、本発明の適用により、抗腫瘍作用を発現するイオン種を悪性腫瘍細胞にのみ効率よく取り込ませることができる。これにより、選択的に悪性腫瘍細胞のみの殺滅を図ることができる。よって、その産業上の利用可能性は大きい。
〔第3発明群〕
家庭用冷蔵庫などには、通常、自動製氷装置が取り付けられている。冷蔵庫に備えられた自動製氷装置は、一般に、冷蔵室内に配置された給水用タンクと、冷凍室の一画に設けられた製氷皿と、貯蔵タンクに蓄えられた水を製氷皿にまで導水する導水管と、製氷された氷を蓄えておく貯氷容器とで構成されている。上記導水管は、冷蔵室内に配置された給水用タンク内の水を冷凍室側に導水する役割を担っているが、冷蔵室と冷凍室とは、断熱部材により仕切られているので、上記導水管は、断熱部材を貫通して配管されている。
〔特許文献3-1〕特開平5-306858
〔特許文献3-2〕特開2002-295935
〔特許文献3-3〕特開2007-333325
第3発明群が解決しようとする課題
自動製氷装置を備える冷蔵庫において、給水用タンクは時々取り外して水を補給する必要がある。よって、水補給のついでに洗浄すればよいので、洗浄が実行され易い。しかし、冷蔵庫に取り付けられた導水管は、これを取り外して洗浄し、再び設置し直すといったことは一般ユーザにとって負担が大きい。また、導水管内は外部から視認しくにいので、ついつい清掃を怠り、不衛生になるといった問題がある。
第3発明群の発明は上記知見に基づいて完成された発明である。第3発明群の発明は、自動製氷装置を備えた冷蔵庫の製氷装置内を常に清潔に保つことのできる自動抗菌処理機能を有する製氷装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための第3発明群の発明は、次のように構成されている。
自動製氷装置を備えた冷蔵庫において、前記自動製氷装置は、製氷部と、給水用タンクと、前記給水用タンクに蓄えられた水を前記製氷部にまで導く導水管と、前記給水用タンク内、および/または、前記導水管にイオンを供給するイオン供給部と、を備え、特定の光を前記給水用タンク内、および/または、前記導水管に照射する光源部が設けられている、ことを特徴とする。
また、前記特定の光が、300nm以上600nm以下の範囲にピーク波長を有する光である、構成とすることができる。
また、前記特定の光の照射強度が、500〜500,000μW/cm2である、構成とすることができる。
銀イオンはイオンの中で特に抗菌作用が強いので、上記効果が顕著に発揮される。
導水管は洗浄が容易でないため不衛生になり易いので、特に導水管の抗菌が求められている。また、導水管容量は給水用タンクに比べ格段に小さいので、この構成であると、銀イオンの絶対量を少なくできるので、安全性を確保し易い。
60ppb程度の極低濃度の銀イオンであっても、光照射時間が30分以上であれば、抗菌効果が得られる。
銀イオンが充填されたカートリッジであると、抗菌操時に取り付ければよく、またカートリッジに充填する銀イオン量を規定しておけば、導水管内等に供給する銀イオン量を簡単に制御することができる。
この構成であると、食用氷の安全性を確保しつつ、十分な抗菌効果を得ることができる。
図13は、第3発明群実施例1にかかる自動製氷装置を説明する概念図である。
図14は、導水管への光照射方法を説明する拡大概念図である。
図15は、第3発明群実施例2にかかる自動製氷装置を説明する概念図である。
図16は、導光層で被覆された導水管を説明する図である。
図17は、第3発明群実施例3にかかる自動製氷装置を説明する概念図である。
図18は、抗菌効果確認実験1の結果を示すグラフである。
図19は、抗菌効果確認実験2の結果を示すグラフである。
301 給水用タンク、 302 導水管、 303 製氷皿、 304 貯氷容器、
305 断熱部材、 306 銀イオン供給部、 307 電磁弁、 308 光源A、 309 反射板、 310 反射板、 311 反射板、 312 光源B、 313 反射板、 314 送液ポンプ、 315 電磁弁、 316 電磁弁付き三方分岐路、 317 電磁弁付き三方分岐路、 318 排水路、 319 導光層被覆導水管、 320 導光層、
以下、実施例に基づいて、第3発明群を実施するための形態を説明する。なお、以下に記載される実施例は例示であって制限的なものではない。
第3発明群実施例1の自動製氷装置を備えた冷蔵庫は、1℃〜6℃程度に制御された冷蔵室(図1冷蔵室⇒)と、0℃未満の温度(一般には−18℃以下)に制御された冷凍室(図1冷凍室⇒)とを少なくとも備える冷蔵庫であり、この冷蔵庫には更に自動製氷装置が組み込まれている。この冷蔵庫の自動製氷装置以外の要素は、公知の技術に基づいて構成すればよく、特に制限はない。よって、ここでは、図13を参照しながら、この冷蔵庫の主要部である自動製氷装置について説明する。
導水管302は、透明樹脂や透明ガラスなどの光透過性材料で構成されている。
光源Aは、300nm以上600nm以下の範囲にピーク波長を有する光であって、500〜500,000μW/cm2の照射強度が得られる光源である。この実施例では525nmにピーク波長を有するLEDを使用し、照射強度が50,000μW/cm(50mW/cm2)となるように設定されている。
水を入れた給水用タンク301を冷蔵室内に設置すると、給水用タンク301の取りつけ部に設けられたセンサ(どのようなセンサでもよい)により、給水用タンクの設置が感知される。これにより電磁弁315が開き、送液ポンプ314が駆動して給水用タンク301内の一定量の水が製氷皿303にまで送液される。この際、電磁弁307は閉じられている。
これらの一連の動作は、図示しないマイコンにより統合的に制御されている。
なお、上記では製氷皿の底面にヒートプレートを配置し、製氷皿内の水が凍った段階で製氷皿を180度回転させる方式を採用したが、製氷された氷の貯蔵や取り出し手段については、特に限定はないので公知の方法を用いればよい。
先ず電磁弁315が閉じられ、電磁弁307が開放される。この状態で、冷蔵室内に配置された銀イオン供給部306に貯蔵されている60ppb濃度の銀イオン水溶液の一定量が、送液ポンプ314により導水管302内に注液される。上記一定量としては、導水管302内に銀イオン水溶液が満たされる液量とする。
導水管302内への銀イオン水溶液の注入と光照射による抗菌動作が終了した後、必要な場合には銀イオン除去動作を実施する。
図15に実施例2にかかる製氷装置の概念斜視図を示す。第3発明群実施例2は、導水管302の途中であって給水用タンク301と送液ポンプ314との間に各々の流路を開閉することができる電磁弁つき3方分岐路316を設け、その一つの流路に銀イオン供給部306を接続した点、また導水管302の途中であって冷蔵室側の終端付近にも同様な電磁弁つき3方分岐路317を設け、この分岐路の一つを銀イオンを洗い流す排水路318に接続した点、反射板に代え、導光材(光ファイバー)からなる導光層で導水管302を被覆した導光層被覆導水管319を採用した点、及び銀イオン供給部306に1100ppb濃度の銀イオン水溶液を貯蔵した点に特徴を有する。
これ以外の事項については上記実施例1と同様である。
通常運転時には、給水用タンク301から製氷皿303に水が供給されるように電磁弁や送液ポンプが動作して、製氷が行われる。他方、予め設定されたタイミング、例えば1ヶ月に1回程度の間隔で、抗菌処理動作が行われる。
上記抗菌処理動作に続いて、3方分岐路316・317の流路を切り替えて、給水用タンク301−導水管302−排水路318の流れを形成し、給水用タンク301の水を一定時間(例えば5分間)流す。この銀イオン除去動作により、導水管302内の銀イオンが排水路に押し出され、導水管内の銀イオンが除去される。
なお、排水路318は、洗浄液を冷蔵庫外に取り出すことができる構造とするのが好ましい。
図17に実施例3にかかる製氷装置の概念斜視図を示す。第3発明群実施例3では、給水用タンク301に対しても光照射ができるようにし、銀イオン供給部(電磁弁307を含む)を給水用タンク301に接続した。また銀イオン供給部には60ppbの濃度の銀イオン水溶液を貯蔵した。これ以外の事項について、上記実施例2と同様にした。
上記実施例1〜3の銀イオン供給部として、銀イオンが充填されたカートリッジを採用することができる。例えば所定濃度の銀イオン水溶液が所定量収容された使い捨てタイプのカートリッジを用いると、導水管内等に供給する銀イオン量を簡便に制御することができる。
また、銀イオン供給部を新たに設けるのではなく、給水タンク内や、導水管内に銀イオン含有ゼオライトや銀イオン溶出ガラスなどの銀イオン溶出材を配置して、ゼオライトが水に接触した際に銀イオンが溶出するような仕組みにしてもよい。
上記第3発明群実施例1に記載した抗菌工程において導水管内等が抗菌されることを、下記実験により確認した。実験方法は次のようにした。
製氷装置を給水用タンク301〜導水管302〜製氷皿303の流れに設定し、送付ポンプ314を駆動させて導水管302内に上記微生物汚染水を流し、15分後、30分後、60分後に製氷皿303内の微生物汚染水を採取した(試験液;汚染水)。
抗菌対象となる微生物として、Candida albicans NBRC-1060に代えて、Escherichia
coli (NBRC-3972、大腸菌)を用いたこと以外は、上記実験1と同様にして、大腸菌を用いた試験液を採取した。
実験1における結果を図18に示し、実験2における結果を図19に示す。
図18から、Candida albicansを含む汚染水のみ(図中▲)と、汚染水に光照射した場合(図中△)における比較から光照射のみでは殺菌効果が認められなかった。
他方、銀イオンを含むが光照射しない場合(図中●)と、銀イオンを含み且つ光照射する抗菌方法(図中○)との比較から、光照射によりCandida albicansの残存数が1桁以上低くなる顕著な殺菌力増強効果が認められた。
また、図18,19から、光照射時間が長くなるほど、銀イオンを含むが光照射しない場合(図中●)における抗菌効果との差が拡大する傾向が認められた。
上記実験で用いた紫外光(525nm)の照射強度(50mW/cm2)は、菌類を抗菌することのできる強度よりも十分に低い。よって、銀イオンを含み且つ光照射する抗菌方法(図中○)と、銀イオンを含むが光照射しない場合(図中●)との抗菌力の差は、紫外光自体の殺菌効果に起因するものではなく、紫外光照射によって菌体内への銀イオンの取り込みが促進された結果と考えられる。すなわち、ピーク波長525nm、照射強度50mW/cm2の光の照射により、Candida albicansや大腸菌の菌体内に銀イオンが多く取り込まれた結果、銀イオンの抗菌作用が増加したものと考えられる。
また、給水タンクから水を供給する例を示したが、水道から弁などを通じて供給する形態であってもよい。その場合、タンクが無いのでタンク内で微生物が生育することはないが、導水管では微生物が生育する恐れがある。
冷蔵庫内に設けられた製氷装置の配管内は清掃が容易でないため、永年の使用によってカビやぶどう球菌などの微生物が繁殖することがある一方、その発見は容易でない。第3発明群の発明によると、配管内等の水廻りに繁殖するカビやぶどう球菌などを極微量の銀イオンを用いて自動的に抗菌洗浄することができ、またその発生を事前に予防することができる。よって、その産業上の利用可能性は大である。
〔第4発明群〕
高齢化社会の到来とともに、家庭内で、乳幼児と共に寝たきり老人や認知症老人の面倒を見なければならない機会が増えている。乳幼児や寝たきり老人などは、身体が不衛生になり勝ちである一方、病原菌に対する抵抗力が弱いので、健康成人に比べ高度な清潔さが求められる。
また、洗濯槽内に存在するの微小な隙間空間に細菌が残留し、この細菌が次の洗濯時までに増殖するなどして、洗濯物を汚染することがある。
〔特許文献4-1〕実開平5-74487
〔特許文献4-2〕特開2001-276484
〔特許文献4-3〕特開2004-215817
〔特許文献4-4〕特開2004-321313
第4発明群が解決しようとする課題
しかし、衣類は直接肌に触れるものであるので、強力な殺菌剤は使用しにくい。
また、衣類は洗濯して繰り返して使用されるものであるので、色彩や質感を損傷する加熱殺菌方法は使用しにくい。
上記課題を解決するための第4発明群の基本構成は次のとおりである。
水を収容し且つ収容した水を排出することのできる水槽と、前記水槽内に配置され、水槽内で回転駆動される回転ドラムと、前記回転ドラム内及び/又は水槽内にイオン水を供給するイオン供給手段と、を少なくとも備えた回転ドラム式洗濯機において、前記回転ドラムは、その壁面に回転ドラム内と前記水槽内との間を水が行き来できる複数の孔を有し、前記水槽は、その内側面に前記回転ドラムの外側面に特定の光を照射する第1照射部を備えていることを特徴とする。
この構成では、第1照射部により回転ドラム外側面に照射された光が、回転ドラムの外側面に設けられた反射領域で反射されて水槽の内側面に照射される。それゆえ、この構成であると、回転ドラムの外側面のみならず、水槽の内側面も確実に除菌することができる。
反射領域が回転ドラムの回転方向に直交する方向に帯状に形成されていると、ドラムが回転するため、少ない反射領域面積で回転ドラムに対向する水槽の内側全面に光を行き渡らせることができる。
反射領域が回転ドラムの回転方向に対し螺旋状の反射領域であると、回転ドラムに対向面である水槽の内側全面に効率よく光を行き渡らせることができる。
反射領域が凸状かつ島状であると、反射材料が少なくてすむ。また、ドラムの回転により光が複雑に乱反射して対向面である水槽の内側面の隅々にまで光を行き渡らせる。よって、水槽内全体の抗菌力を増強することができる。
また、前記特定の光の照射強度が、500〜500,000μW/cm2である、とすることができる。
また、前記イオン供給手段が、銀イオン水を供給する銀イオン供給手段である、とすることができる。
また、前記銀イオン供給手段が、30ppb以上、1100ppb以下の濃度の銀イオン水を供給するものである、とすることができる。
黒かびや黄色ブドウ球菌などに対し特定の光を30分以上照射しつつ、銀イオンを接触させると、銀イオンによる抗菌効果が顕著に高まる。
この構成では、回転ドラム内に特定の光が照射されるので、銀イオンと特定光の作用により、回転ドラム内に収容された洗濯物の除菌が効率よく進む。また、洗濯槽(回転ドラム+水槽)自体をクリーニングする場合において、回転ドラム内の抗菌を効率よく行うことができる。
水を収容し且つ収容した水を排出することのできる水槽と、前記水槽内に配置され、水槽内で回転駆動される回転ドラムと、前記回転ドラム内及び/又は水槽内に銀イオン水を供給する銀イオン供給手段と、を少なくとも備え、前記回転ドラムは、回転ドラム内と前記水槽内との間を水が行き来できる複数の孔を有し、前記回転ドラムの内側壁面には、洗濯物を転がすためのバッフルが形成され、当該バッフル内に、回転ドラム内に光を照射する光照射部が組み込まれている、ことを特徴とする回転ドラム式洗濯機。
なお、除菌とは、主としてカビや雑菌などの微生物の数を減らす意味で使用しており、「抗菌」は、除菌を含め、微生物を死滅させずその増殖を阻止する場合や、“滅菌(全ての微生物を殺滅)”、“殺菌(微生物を一部でも殺すこと)”、“消毒”、“除菌”、“制菌(微生物の増殖阻止)”、“防かび”、“防腐”などの全てを含めた最も広義の意味で使用されている。
本発明によると、衣類を損傷することがなくして衣類に除菌処理を施すことができ、かつ洗濯槽内を常に清浄に保つことのでき、しかも自然環境を害することのない自動抗菌処理機能付きの回転ドラム式洗濯機を提供することができる。
図20は、第4発明群実施例1にかかる回転ドラム式洗濯機の断面模式図である。
図21は、第4発明群実施例2にかかる回転ドラム式洗濯機の断面模式図である。
図22は、第4発明群実施例3にかかる回転ドラム式洗濯機の断面模式図である。
図23は、第4発明群実施例3にかかる回転ドラムを外側底面方向から見た斜視図である。
図24は、図22のX-X矢視断面図であり、円筒状水槽の周壁に配置した光源を示す図である。
図25は、回転ドラムの外側面に設けた反射領域の形態を示す模式図である。
図26は、第1照射部および第2照射部の構造を示す模式図である。
図27は、第4発明群実施例4にかかる回転ドラム式洗濯機のバッフル部分の拡大斜視図である。
図28は、バッフルに組み込まれた光照射部の断面模式図である。
図29は、Candida albicans を用いた第4発明群確認試験1における洗濯物に対する除菌効果を示すグラフである。
図30は、Candida albicans を用いた第4発明群確認試験1の洗濯槽各部位における除菌効果を示すグラフである。
図31は、Cladosporium cladosporioidesを用いた第4発明群確認試験2における洗濯物に対する除菌効果を示すグラフである。
図32は、Escherichia coliを用いた第4発明群確認試験3における洗濯物に対する除菌効果を示すグラフである。
400 抗菌処理機能付き回転ドラム式洗濯機、 401 外枠体、 402 水槽、 403 回転ドラム、 404 モータ、 405 洗濯機扉、 406 給水路、 407 排水路、 408 孔、 409 銀イオン供給ユニット、 410 光源(第1照射部)、 411 光源(第2照射部)、 412 バッフル、 415 回転ドラム外側底面、 430 第3照射部、 431 光源、 432 反射板、 440 反射領域、 441 反射領域、 450 第2照射部、 451 反射板、 452 透明カバー、 460 光照射部が組み込まれたバッフル、 461 光源、 462 反射板 、
以下、実施例に基づいて、第4発明群を実施するための形態を説明する。なお、以下に記載される実施例は例示であって制限的なものではない。
図20を参照しながら第4発明群実施例1にかかる抗菌処理機能付き回転ドラム式洗濯機を説明する。図20は洗濯機内部を説明するための断面模式図である。
この洗濯機を用いた一般的な洗浄動作は、下記
(1)⇒(2)⇒(3)⇒(4)。又は(1)⇒(2)⇒(3)⇒(4’)⇒(4”)。及び必要に応じて実施させる(5)⇒(6)である。
(1)洗濯物に対する本洗濯(洗濯工程)。
(2)洗濯物に銀イオン水を注液して行う漱ぎ洗い(漱ぎ工程)。
(3)洗濯物の脱水(脱水工程)。
(4)回転ドラムから洗濯物を取り出す(取り出し工程)。
又は(4’)加熱空気又は除湿空気を用いた送風乾燥(乾燥工程)
(4”)回転ドラムから洗濯物を取り出す(取り出し工程)。
(5)回転ドラム内に銀イオン水を注液して行う洗濯槽内の洗浄(洗濯槽クリーニング工程)。
(6)回転ドラム内に加熱空気又は除湿空気を送風して行う洗濯槽内の乾燥(槽内乾燥工程)。
また、(5)⇒(6)のフローは洗濯槽内のみを十分な時間を掛けて洗浄する場合におけるフローである。洗濯の度にこのフローを行わなくともよい。特に必要な場合にのみ(例えば1ヶ月に1度)、より高濃度(例えば600ppb〜1100ppb)の銀イオン水を用い、かつ30分以上光照射させる洗濯槽クリーニング工程を行うのが好ましい。また、銀イオン水の使用量を回転ドラム外周面が湿る程度の少量とするのがよい。
第4発明群実施例2にかかる回転式洗濯機を図21に示す。図21は、洗濯機全体を説明するための断面模式図である。
また、洗濯機扉405の外周部分が当接する外枠体401及び水槽402の開口部分にはゴムパッキン(不図示)が配置され、洗濯機扉405が閉じられたときに水槽402が密閉されるようになっている。
第4発明群実施例3は、回転ドラ402の外周面及び底面の全面に特定光が照射でき、かつ円筒状の水槽402の内側全面にも特定光が当る構造とした点に特徴を有する。
他方、この実施例では、図24に示すように、円筒状水槽402の内周を3分割した位置に、軸方向に沿って複数の光源409が配置されている。
この構造の回転ドラム式洗濯機では、第3照射部430から出射された光が回転ドラム403内に照射され、また光源410・411から射出された光が回転ドラムの外表面全体を照らす。
回転ドラム外表面に形成する反射領域は、例えばアルミニウム箔、ステンレススチール箔などの反射部材を所定箇所に溶接または耐水性接着剤で張り付けるなどすればよい。
また、図25(c)に示すように、回転ドラム外側周面に反射領域を島状に点在させるのもよい。なお、回転ドラム外表面全体が反射するようにしてもよいことは勿論である。
第4発明群実施例4は、回転ドラム内に設けられたバッフルに、回転ドラム内に光を照射する光照射部が組み込まれた構造とした点に特徴を有しており、この点と、洗濯機扉405に第3照射部430を設けなかった点以外の事項については、上記第4発明群実施例3と同様である。
また、バッフル内に収容された光源461への電源供給は、ドラムを回転駆動するモータ(404)側からドラム外壁に沿って配された電源リード(不図示)を介して行う構造になっている。なお、電池電源を用いることもできる。
更に、この実施例にかかる回転ドラム式洗濯機においては、オペレータが上記駆動制御部に指示を与えることにより、洗濯槽クリーニング工程を行える構造とした。
なお、銀イオン水に代えて、または銀イオンと共に、銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含むイオン水を使用することができる。
バッフルの形状、設置位置、回転方向に対する傾斜角度などについても特段の制限はない。通常、回転ドラム内には、回転軸に平行する方向に長い複数のバッフルが設けられるが、洗濯物に満遍なく光を当てるためには、その全てのバッフルに光照射部を組み込むのがよい。また、バッフル460の全面と側面の双方から光が照射されるようにするのが好ましい。他方、コストの面からはその一部に光照射部を組み込むのがよい。
上記第4発明群実施例4にかかる回転ドラム式洗濯機を用いて、抗菌処理動作における抗菌効果の確認試験を行った。試験方法は次のとおりである。
(1)抗菌処理の対象となる微生物としてCandida albicans NBRC-1060標準株(真核生物)を用意した。初期菌数として1×106〜5×107/mL程度の菌体をリン酸バッファー(濃度50mM)に分散させ、胞子懸濁液を調製した。そして、上記胞子懸濁液1mLを綿製の試験布(36cm2;日本規格協会カナキン3号)に接種した。この試験布を汚染済み試験布と称する。
(2)上記汚染済み試験布を、耐水性接着剤を用いて水槽の内周面(試験部位B1)及び内側底面(試験部位B2)、回転ドラムの外周面(試験部位C1)及び外側底面(試験部位C2)に張り、かつ汚染済み試験布を回転ドラム内に投入(試験部位A)する方法により洗濯槽の各部位における抗菌処理効果を調べた。
試験部位C1は、図20等で示す断面図における回転ドラムの深さ方向と幅方向の両者からする中央点付近とした。
なお、各部位は全て同じとして、抗菌処理条件(下記)で試験を繰り返した。
回転ドラムを50rpmで回転させつつ、回転ドラム内に水道水10Lを入れ、全ての光照射部をOFFとして、所定時間回転させた。所定時間の回転後にそれぞれの試験布を回収した。所定時間は、15分、30分、60分とした。これらを試料G1(試料グループ1)とする。
なお、回転ドラム内に10Lの水を注ぎ、ドラムを50rpmで回転させた場合、遠心力により回転ドラム外にまで水が飛散し、洗濯槽の各部位に貼り付けた汚染済み試験布が水で濡れることが確認されている。
[2-2]〔水+特定光〕
光照射部を全てONとし、ピーク波長525nm、照射強度50mW/cm2の特定光を洗濯槽全体に照射した。これ以外については、上記(2-1)と同様に行った。これらを試料G2とする。
[2-3]〔銀イオン水のみ〕
水道水に代え、60ppb濃度の銀イオン水を使用したこと以外は上記[2-1]と同様に行った。これらを試料G3とする。
[2-4]〔銀イオン水+特定光〕
水道水に代え、60ppb濃度の銀イオン水を使用したこと以外については、上記[2-2]と同様に行った。これらを試料G4とする。
上記Candida albicans NBRC-1060に代えてCladosporium cladosporioides(NBRC 6348)を用いたこと、及び銀イオン濃度を100ppbにしたこと、これ以外については上記確認試験1と同様にして、確認試験2を行った。
上記Candida albicans NBRC-1060に代えて、Escherichia coli (NBRC-3972、大腸菌)を用いたこと以外は、上記確認試験1と同様にして、確認試験3を行った。
(1)試験部位Aにおける確認試験1の結果を図29示す。図29から、Candida albicansに汚染された汚染済み試験布に対し、銀イオン水を接触させた状態で特定光の照射を行った試料G4(図中○)は、特定光の照射を行わずに銀イオ水を接触させた試料G3(図中●)よりも1桁以上高い殺菌効果を奏することが認められた。
図30から、洗濯槽の各部位に配置した汚染済み試験布に対し、ほぼ同等な抗菌効果を示すことが認められた。
図31、図32の結果から、何れの微生物に対しても同様な抗菌効果が得られることが確認できた。
洗濯槽内に銀イオン水を自動的に供給でき、かつ洗濯槽全面に自動的に特定光を照射することのできる光照射部を備える第4発明群にかかる抗菌処理機能付き回転ドラム式洗濯機であると、特定光が菌体内への金属イオンの取り込みを促進するため、より低濃度の銀イオン水でもって自動的に洗濯物及び洗濯槽全体の除菌化ないし抗菌化を図ることができる。このような本発明の産業上の利用可能性は大きい。
Claims (4)
- 金属イオンを用いて微生物の発育を阻止する抗菌方法であって、
微生物の生体膜のイオン透過チャネルを開放する特定の光を微生物に照射した後に、又は照射しつつ、当該微生物に前記金属イオンを接触させて、前記開放させた生体膜のイオン透過チャネルから前記金属イオンを当該微生物の体内に取り込ませる、
ことを特徴とし、
前記特定の光が400nm、525nm、600nmのいずれかにピーク波長を有し、
前記特定の光の照射強度が1,000μW/cm 2 以上であり、前記金属イオンは、銀イオン、または1100ppb濃度以下の銀イオン含有溶液に含まれる銀イオンである抗菌方法。 - 請求項1に記載の抗菌方法において、
微生物に前記金属イオンを接触させた状態で当該微生物に前記特定の光を照射する、
ことを特徴とする抗菌方法。 - 抗菌性を有する金属イオンを発生させるイオン発生手段と、
前記イオン発生手段で発生させた金属イオンを微生物に接触させる接触手段と、
前記接触手段により微生物に金属イオンが接触させられた状態で、当該微生物に400nm、525nm、600nmのいずれかにピーク波長を有し、当該微生物の生体膜のイオン透過チャネルを開放する特定の光を照射する照射手段と、
を備え、
前記特定の光の照射強度が500〜500,000μW/cm 2 であり、前記金属イオンが銀イオンである抗菌装置。 - 抗菌性を有する金属イオンを発生させるイオン発生手段と、
微生物に400nm、525nm、600nmのいずれかにピーク波長を有し、当該微生物の生体膜のイオン透過チャネルを開放する特定の光を照射する照射手段と、
前記特定の光が照射された微生物に、前記イオン発生手段で発生させた金属イオンを接触させる接触手段と、
を備え、
前記特定の光の照射強度が500〜500,000μW/cm 2 であり、前記金属イオンが銀イオンである抗菌装置。
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