JP5584964B2 - ポリアミド樹脂、層状珪酸塩を含む複合材料及び中空成形部品 - Google Patents

ポリアミド樹脂、層状珪酸塩を含む複合材料及び中空成形部品 Download PDF

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Description

本発明は、新規な複合材料に関する。詳しくは、ポリアミド樹脂組成物と当該ポリアミド樹脂組成物中に分散している層状珪酸塩とを含む複合材料であって、高い機械的強度、耐熱性、及び液体又は蒸気に対するバリア性を有し、そして従来のナイロン6系複合材料と比較して低吸水性、耐薬品性及び耐加水分解性等に優れ、そしてジアミン成分として1,9−ノナンジアミン単体を用いたポリアミド樹脂系の複合材料よりも成形可能温度幅が広く溶融成形性に優れ、さらに高分子量化が可能で強靭な成形体を製造することができる複合材料に関する。
ナイロン6、ナイロン66等に代表される結晶性ポリアミドは、その優れた特性と溶融成形の容易さから、衣料用、産業資材用繊維、あるいは汎用のエンジニアリングプラスチックとして広く用いられているが、用途によっては、より高い機械的強度や耐熱性が求められ、また一方では吸水による物性変化、酸、高温のアルコール、熱水中での劣化等の問題点が指摘されており、低吸水性であり、機械強度、耐薬品性等の性能に優れるポリアミドが求められている。
結晶性ポリアミドに層状珪酸塩を分散させ、複合材料化することにより、結晶性ポリアミドの機械強度、耐熱性、及び液体又は蒸気に対するバリア性を向上できることが知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1では、結晶性ポリアミドとしてナイロン6を用いた複合材料の例が開示され、さらに第2表では、これらの複合材料は、元のナイロン6と比較して、引張り強さ及び引張り弾性率等の機械強度、並びに耐熱性が向上することが開示されている。しかし、特許文献1に開示される複合材料は、ナイロン6に起因する吸水性の高さ、さらに耐薬品性や耐加水分解性の低さ等の問題があり、これらを改良することが望まれている。
一方、ジカルボン酸成分として蓚酸を用いるポリアミド樹脂はポリオキサミド樹脂と呼ばれ、同じアミノ基濃度の他のポリアミド樹脂と比較して融点が高いこと、吸水性が低いことが知られ(特許文献2)、吸水性による物性変化が問題となっており従来のポリアミドが使用困難であった分野での活用が期待される。
これまでに、ジアミン成分として種々の脂肪族直鎖ジアミンを用いたポリオキサミド樹脂が提案されている。しかしながら、例えば、ジアミン成分として1,6−ヘキサンジアミンを用いたポリオキサミド樹脂は融点(約320℃)が熱分解温度(窒素中の1%重量減少温度;約310℃)より高い(非特許文献1)ため、溶融重合、溶融成形が困難であり実用に耐えうるものではなかった。
ジアミン成分が1,9−ノナンジアミンであるポリオキサミド樹脂(以後、PA92と略称する)については、L.Francoらが蓚酸源として蓚酸ジエチルを用いた場合の製造法とその結晶構造を開示している(非特許文献2)。ここで得られるPA92は、固有粘度が0.97dL/g、融点が246℃のポリマーであるが、強靭な成形体が成形出来ない程度の低分子量体しか得られていない。また、特許文献3には、ジカルボン酸エステルとして蓚酸ジブチルを用い、固有粘度が0.99dL/g、そして融点が248℃のPA92を製造したことが示されている。この場合も強靭な成形体が成形出来ない程度の低分子量体しか得られていないという問題点がある。
本発明者らは、ジカルボン酸成分として蓚酸を用い、ジアミン成分として1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンを特定の比率で用いたポリアミド樹脂が低吸水性でありながら、溶融成形温度幅が広く、しかも諸特性に優れるポリアミド樹脂(PA92C)であることを開示した(特許文献4)。
しかしながら、このポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分として蓚酸を用い、ジアミン成分として1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン及び1,6−ヘキサンジアミンの3種のジアミンを特定の比率で用いたポリオキサミド樹脂ではない。
S. W. Shalaby., J. Polym. Sci., 11, 1(1973) L. Franco et al., Macromolecules., 31, 3912(1988) 特開昭62−74957 特開2006−57033 特表平5−506466 WO2008/072754
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、本発明は、高い機械的強度、耐熱性、及び液体又は蒸気に対するバリア性を有し、そして従来のナイロン6系複合材料と比較して低吸水性、耐薬品性及び耐加水分解性等に優れ、そしてジアミン成分として1,9−ノナンジアミン単体を用いたポリアミド樹脂系の複合材料よりも成形可能温度幅が広く溶融成形性に優れ、さらに、脂肪族直鎖ポリオキサミド樹脂に見られる低吸水性を損なうことなく、高分子量化が可能で強靭な成形体を製造することができる複合材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ジカルボン酸成分が蓚酸であり、ジアミン成分が1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物(以下において「C9ジアミン混合物」ともいう。)及び1,6−ヘキサンジアミン(以下において「C6ジアミン」ともいう。)からなり、かつC9ジアミン混合物とC6ジアミンのモル比が1:99〜99:1であるポリアミド樹脂(以下において「PA92/62T」ともいう。)を上記複合材料に用いることにより、意外にも、本発明者らが先に特許文献3に開示したポリアミド樹脂(PA92C)と同様に、機械的物性、耐薬品性に優れながら、高分子量で、融点と熱分解温度の差が充分に大きく溶融成形性に優れ、さらに直鎖ポリオキサミド樹脂に見られる低吸水性を損なうことなく、従来のポリアミドに比較して耐加水分解性などにも優れるポリアミド樹脂組成物が得られるのみならず、この新規なポリアミド樹脂(PA92/62T)は、PA92Cと比べて、融点がより高く、曲げ弾性率、荷重たわみ温度などの力学的特性がより優れ、コスト的にも有利でありながら、溶融温度幅の減少は許容範囲内であり、低吸水性は実質的に失われないという特長を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下の態様に関する。
[態様1]
ポリアミド樹脂と、当該ポリアミド樹脂内に分散している層状珪酸塩とを含む複合材料であって、
上記ポリアミド樹脂のジカルボン酸成分が蓚酸から成り、ジアミン成分がC9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)及び1,6−ヘキサンジアミンからから成り、そして
C9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)と1,6−ヘキサンジアミンとのモル比が1:99〜99:1である複合材料。
[態様2]
上記ポリアミド樹脂の、96%硫酸を溶媒とし、濃度1.0g/dlのポリアミド樹脂溶液を用いて25℃で測定した相対粘度(ηr)が、1.8〜6.0である、態様1に記載の複合材料。
[態様3]
上記ポリアミド樹脂の、窒素雰囲気下において10℃/分の昇温速度で測定した熱重量分析における1%重量減少温度と、窒素雰囲気下において10℃/分の昇温速度で測定した示差走査熱量法により測定した融点との温度差が50℃以上である、態様1又は2に記載の複合材料。
[態様4]
1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとのモル比が5:95〜95:5である、態様1〜3のいずれか一つに記載の複合材料。
[態様5]
上記層状珪酸塩の含有量が、上記ポリアミド樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部である、態様1〜4のいずれか一つに記載の複合材料。
[態様6]
上記層状珪酸塩の50質量%以上が、前記ポリアミド樹脂中で単層に分散している、態様1〜5のいずれか一つに記載の複合材料。
[態様7]
上記層状珪酸塩が、珪酸アルミニウム質フィロ珪酸塩又は珪酸マグネシウム質フィロ珪酸塩である、態様1〜6のいずれか一つに記載の複合材料。
本発明のポリアミド樹脂及び層状珪酸塩を含む複合材料は、高い機械的強度、耐熱性、及び液体又は蒸気バリア性を有し、そして従来のナイロン6系複合材料と比較して低吸水性、耐薬品性及び耐加水分解性等に優れ、そしてジアミン成分として1,9−ノナンジアミン単体を用いたポリアミド樹脂系の複合材料よりも成形可能温度幅が広く溶融成形性に優れ、さらに高分子量化が可能で強靭な成形体を製造することができる。
以下、本発明に関して、詳細に説明する。
[ポリアミド樹脂]
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分が蓚酸から成り、ジアミン成分としてC9ジアミン(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)及び1,6−ヘキサンジアミンから成り、そしてC9ジアミン(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)と1,6−ヘキサンジアミンとのモル比が、1:99〜99:1である。
本発明に用いられるポリアミド樹脂のジカルボン酸源としての蓚酸源としては、蓚酸ジエステルが用いられ、これらはアミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、蓚酸ジメチル、蓚酸ジエチル、蓚酸ジn−(又はi−)プロピル、蓚酸ジn−(又はi−、又はt−)ブチル等の脂肪族1価アルコールの蓚酸ジエステル、蓚酸ジシクロヘキシル等の脂環式アルコールの蓚酸ジエステル、蓚酸ジフェニル等の芳香族アルコールの蓚酸ジエステル等が挙げられる。
上記の蓚酸ジエステルの中でも炭素原子数が3を超える脂肪族1価アルコールの蓚酸ジエステル、脂環式アルコールの蓚酸ジエステル、芳香族アルコールの蓚酸ジエステルが好ましく、その中でも蓚酸ジブチル及び蓚酸ジフェニルが特に好ましい。
本発明に用いられるポリアミド樹脂には、ジカルボン酸源として蓚酸を用いるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他のジカルボン酸成分を配合することができる。蓚酸以外の他のジカルボン酸成分としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸、また、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、さらにテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等を単独で、あるいはこれらの任意の混合物を重縮合反応時に添加することもできる。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を溶融成形が可能な範囲内で用いることもできる。
上記他のジカルボン酸の配合量としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、一般的には、ジカルボン酸の総量に対して、5モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いられるポリアミド樹脂には、ジアミン成分として1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン及び1,6−ヘキサンジアミンを用いるが、本発明の効果を損なわない範囲で、他のジアミン成分を配合することができる。1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン及び1,6−ヘキサンジアミン以外の他のジアミン成分としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、さらにシクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、さらにp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン等を単独で、あるいはこれらの任意の混合物を重縮合反応時に添加することもできる。
上記他のジアミン成分の配合量としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、ジアミン成分の総量に対して、5モル%以下であることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂に用いるC9ジアミン混合物における1,9−ノナンジアミン成分と2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分のモル比は、一般的には1:99〜99:1であり、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは5:95〜40:60又は60:40〜95:5、特に5:95〜30:70又は70:30〜90:10である。1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン及び1,6−ヘキサンジアミンを上記の特定量共重合することにより、成形可能温度幅が広く、溶融成形性に優れ、かつ低吸水性、耐薬品性、耐加水分解性、透明性などにも優れたポリアミドが得られる。
本発明のポリアミド樹脂においては、ジアミン成分として、上記C9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)に1,6−ヘキサンジアミンを混合したものを用いる。C9ジアミン混合物と1,6−ヘキサンジアミンのモル比は、1:99〜99:1である。C9ジアミン混合物に対して1,6−ヘキサンジアミンをモル比で1/99以上混合することにより、ジカルボン酸成分として蓚酸、ジアミン成分としてC9ジアミン混合物からなるポリアミド樹脂(PA92C)の上記の優れた効果を実質的に保持しながら(特に溶融成形性、低吸水性を損なうことなく)、ポリアミド樹脂の融点が上昇し特に力学的物性を向上させることができる。C9ジアミン混合物と1,6−ヘキサンジアミンのモル比は、好ましくは5.1:94.9〜99:1、より好ましくは10:90〜99:1、さらに好ましくは20:80〜99:1である。特に30:70〜98:2、さらに30:70〜90:10(さらに30:70〜70:30)であることが好ましい。本ポリアミド樹脂においては、C9ジアミン混合物に対して1,6−ヘキサンジアミンをモル比で1/99以上共重合することによって融点への変化は明瞭に現れ、樹脂の融点は上昇するが、1,6−ヘキサンジアミンがモル比で99/1以内であれば溶融成形性は許容できるものが得られる。また、1,6−ヘキサンジアミンがモル比で80/20以内であればポリアミド樹脂の融点は300℃以下となり、重合及び成形加工(溶融成形性)がより容易であり、70/30以内であれば融点が280℃以下になって、溶融成形性がより容易となるのでより好ましい。
[ポリアミド樹脂の製造方法]
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法により製造することができる。本発明者らの研究によれば、ジアミン及び蓚酸ジエステルをバッチ式又は連続式で重縮合反応させることにより、上記ポリアミド樹脂を合成することが好ましい。具体的には、以下の操作で示されるような、(i)前重縮合工程、(ii)後重縮合工程の順で行うのが好ましい。
(i)前重縮合工程:まず反応器内を窒素置換した後、ジアミン(ジアミン成分)及び蓚酸ジエステル(蓚酸源)を混合する。混合する場合にジアミン及び蓚酸ジエステルが共に可溶な溶媒を用いても良い。ジアミン成分及び蓚酸源が共に可溶な溶媒としては、特に制限されないが、トルエン、キシレン、トリクロロベンゼン、フェノール、トリフルオロエタノール等を用いることができ、特にトルエンを好ましく用いることができる。例えば、ジアミンを溶解したトルエン溶液を50℃に加熱した後、これに対して蓚酸ジエステルを加える。このとき、蓚酸ジエステルと上記ジアミンの仕込み比は、蓚酸ジエステル/上記ジアミンで、0.8〜1.5(モル比)、好ましくは0.91〜1.1(モル比)、更に好ましくは0.99〜1.01(モル比)である。
上述の原料を仕込んだ反応器内を攪拌及び/又は窒素バブリングしながら、常圧下で昇温する。反応温度は、最終到達温度が80〜150℃、好ましくは100〜140℃の範囲になるように制御するのが好ましい。最終到達温度での反応時間は3時間〜6時間である。
(ii)後重縮合工程:更に高分子量化を図るために、前重縮合工程で生成した重合物を常圧下において反応器内で徐々に昇温する。昇温過程において前重縮合工程の最終到達温度、すなわち80〜150℃から、最終的に220℃以上300℃以下、好ましくは230℃以上280℃以下、更に好ましくは240℃以上270℃以下の温度範囲にまで到達させる。昇温時間を含めて1〜8時間、好ましくは2〜6時間保持して反応を行うことが好ましい。さらに後重合工程において、必要に応じて減圧下での重合を行うこともできる。減圧重合を行う場合の好ましい最終到達圧力は0.1MPa未満〜13.3Paである。
次に、本発明に用いられるポリアミド樹脂の製造方法の具体例について説明する。まず原料の蓚酸ジエステルを容器内に仕込む。容器は、後に行う重縮合反応の温度および圧力に耐え得るものであれば、特に制限されない。その後、容器を原料のジアミンと混合する温度まで昇温させ、次いでジアミンを注入し重縮合反応を開始させる。原料を混合する温度は、原料の蓚酸ジエステルおよびジアミンの融点以上、沸点未満の温度であり、かつ蓚酸ジエステルとジアミンの重縮合反応によって生じるポリオキサミドが熱分解しない温度であれば特に制限されない。例えば、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンの混合物からなり、かつC9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)と1,6−ヘキサンジアミンのモル比が1:99〜99:1であるジアミンと蓚酸ジブチルを原料とするポリオキサミド樹脂の場合、上記混合温度は15℃から300℃が好ましい。また、C9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)と1,6−ヘキサンジアミンのモル比は、5:95〜90:10の場合、常温で液状か又は50℃程度に加温するだけで液化するので取り扱いやすいためより好ましい。混合温度が縮合反応によって生成するアルコールの沸点以上の場合、アルコールを留去、凝縮する装置を備えた容器を用いるのが望ましい。また、縮合反応によって生成するアルコール存在下で加圧重合する場合には、耐圧容器を用いる。蓚酸ジエステルとジアミンの仕込み比は、蓚酸ジエステル/上記ジアミンで、0.8〜1.2(モル比)、好ましくは0.91〜1.09(モル比)、更に好ましくは0.98〜1.02(モル比)である。
次に、容器内をポリオキサミド樹脂の融点以上かつ熱分解しない温度以下に昇温する。例えば、C9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)と1,6−ヘキサンジアミンからなり、かつC9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)と1,6−ヘキサンジアミンのモル比が50:50であり、さらに1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が50:50であるジアミンと蓚酸ジブチルを原料とするポリオキサミド樹脂の場合、融点は261℃であることから270℃から300℃に昇温するのが好ましい(圧力は、2MPa〜4MPa)。生成したアルコールを留去しながら、必要に応じて常圧窒素気流下もしくは減圧下において継続して重縮合反応を行う。耐圧容器内で原料を混合し、縮合反応によって生成するアルコール存在下で加圧重合する場合は、まず生成したアルコールを留去しながら放圧する。その後、必要に応じて常圧窒素気流下もしくは減圧下において継続して重縮合反応を行う。減圧重合を行う場合の好ましい最終到達圧力は760〜0.1Torrである。温度は、270〜300℃が好ましい。また、アルコールは水冷コンデンサで冷却して液化し、回収する。
[ポリアミド樹脂の特性]
本発明に用いられるポリアミド樹脂の分子量に特別の制限はないが、1.0g/dlの96%濃硫酸溶液を用い、25℃で測定した相対粘度ηrが1.8〜6.0、より好ましくは2.0〜5.5、特に好ましくは2.5〜4.5の範囲にあるような分子量である。分子量が低くなると成形物が脆くなり物性が低下する傾向がある。一方、分子量が高くなると溶融粘度が高くなり、溶融成形性が悪くなる傾向がある。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、カルボン酸成分として蓚酸を用い、ジアミン成分として1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンを共重合することで、蓚酸と1,9−ノナンジアミンからなるポリアミドと比べて、上記相対粘度を増加させること、すなわち分子量を増加させることが可能である。また、本発明に用いるポリアミド樹脂PA92/62Tは、カルボン酸成分として蓚酸を用い、ジアミン成分として1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンにさらに1,6−ヘキサメチレンジアミンを共重合することで、蓚酸と1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなるポリアミドと比べて、樹脂の融点を上昇させることが可能である。
[層状珪酸塩]
層状珪酸塩は、高分子材料に機械的特性及び耐熱性を付与する成分である。
層状珪酸塩は、一辺の長さが0.002〜1μmで、厚さが6〜20Åである平板状のものを用いることが好ましい。また、上記層状珪酸塩は、ポリアミド樹脂中に分散した際に、各層が約18Å以上の層間距離を保ち、均一に分散されるものであることが好ましい。
ここで、「層間距離」とは、平板状をなす層状珪酸塩の各重心の間の距離をいい、「均一に分散する」とは、各層が主にランダムな状態で存在し、層状珪酸塩の50質量%以上、好ましくは70質量%以上が、複層物を形成することなく単層に分散していることをいうものとする。
上記層状珪酸塩の原料としては、珪酸マグネシウム又は珪酸アルミニウムの層から構成される層状フィロ珪酸鉱物、すなわち、珪酸アルミニウム質フィロ珪酸塩又は珪酸マグネシウム質フィロ珪酸塩を例示することができる。具体的には、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト等を例示することができ、これらは天然のものであっても、合成されたものであってもよい。
また、上記層状珪酸塩をポリアミド樹脂に分散させるために、通常、膨潤化剤が用いられる。当該膨潤化剤は、粘土鉱物の層間を拡げる役割と、粘土鉱物に層間ポリマーを取り込む力を与える役割とを有するものである。上記膨潤化剤としては、本発明の場合には、1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンを用いることが好ましい。
なお、上記層状珪酸塩は、ミキサー、ボールミル、振動ミル、ピンミル、ジェットミル、叩解機等を用いて粉砕し、予め所望の形状及びサイズのものとしておくことが好ましい。
[複合材料]
本発明の複合材料は、上記ポリアミド樹脂と、当該ポリアミド樹脂内に分散している層状珪酸塩とを含む。
本発明の複合材料中の上記層状珪酸塩の量は、本発明の複合材料の機械的特性及び耐熱性が向上する量であれば、特に制限されるものではないが、上記ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.05〜8質量部、特に好ましくは0.05〜5質量部である。層状珪酸塩の割合が低くなると、機械強度及び耐熱性の向上が小さくなる傾向があり、上記割合が高くなると、複合材料の物性、特に流動性や衝撃強度が低下する傾向がある。
本発明の複合材料は、上記ポリアミド及び層状珪酸塩以外に、任意成分として、さらに以下の成分を含むことができる。
(1)他のポリマー
本発明に用いられるジカルボン酸成分が蓚酸から成り、ジアミン成分がC9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)及び1,6−ヘキサンジアミンからなり、これらのモル比が1:99〜99:1であるポリアミド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、その一部を他のポリマー成分で置換されうる。他のポリマー成分としては、例えば、他のポリアミド類、例えば、ポリオキサミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド等、並びにポリアミド以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマー、エラストマーが挙げられる。
上記他のポリマーによる置換割合としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは30質量%以下である。
なお、以下単に、「ポリアミド」、又は「ポリアミド樹脂」と称する場合には、ジカルボン酸成分が蓚酸から成り、ジアミン成分がC9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)及び1,6−ヘキサンジアミンからなり、これらのモル比が1:99〜99:1であるポリアミド樹脂のことを指すものとする。
(2)添加剤
本発明の複合材料には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の添加剤を添加することができる。例えば、顔料、染料、着色剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、銅化合物等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、ガラス繊維、潤滑剤、フィラー、補強繊維等を挙げることができる。
上記他のポリマー及び添加剤の添加方法は、それぞれを上記ポリアミド樹脂に分散させることができる方法であれば、特に制限されるものではなく、その効果を損なわない任意の時点において、上記ポリアミド樹脂に添加することができる。例えば、上記他のポリマー及び添加剤を、上記ポリアミド樹脂の後重縮合工程の直後に添加することができる。
[複合材料の製法]
本発明の複合材料の製造方法は、上述のポリアミド樹脂に上記層状珪酸塩が均一に分散し得る限り、特に制限はない。例えば、層状珪酸塩の原料が多層状粘土鉱物である場合には、特許文献1に開示されるように、層状珪酸塩を塩酸等によりイオン化し、ここに膨潤化剤、例えば、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン及び1,6−ヘキサンジアミンを添加して、あらかじめ層状珪酸塩の各層の間隔を広げる。次いで、当該層の間にポリアミド原料を導入し、さらに当該層の間で上記原料を重合させることができる。
また、膨潤化剤として有機化合物を用いて層間を約100Å以上に予め広げ、これをポリアミド樹脂と溶融混合して、各層をポリアミド樹脂に分散させてもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、例えば、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、射出成形等により成形品にすることができる。
本発明の複合材料から成形させる成形品は、自動車部品、工業材料、産業資材、電気電子部品、機械部品、事務機器用部品、家庭用品、容器、シート、フィルム、繊維、その他の任意の用途及び形状の各種成形品であることができる。より具体的には、自動車燃料配管用チューブ又はホース、自動車ラジエーターホース、ブレーキホース、エアコンホース、電線被覆材、光ファイバー被覆材等のチューブ、ホース類、農業用フィルム、ライニング、建築用内装材(壁紙等)、ラミネート鋼板等のフィルム、シート類、自動車ラジエータータンク、薬液ボトル、薬液タンク、バック、薬液容器、ガソリンタンク等のタンク類、タイヤインナーライナー、タンクバルブ、フューエルデリバリーパイプ、クイックコネクター、EGR部品であることができる。
[エンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物]
本発明のエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂及び無機充填材を含む。
無機充填材の量は、上記特性等を向上させることができる量であれば、特に制限されないが、例えば、ポリアミド樹脂100質量部に対し、5〜150質量部、好ましくは10〜120質量部、より好ましくは、25〜100質量部である。無機充填材の量が少なくなると、ポリアミド樹脂の機械的強度が向上せず、150質量部より多くなると、成形性や表面状態の問題が生ずる傾向がある。
本発明のエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機が用いられる。ポリアミド樹脂組成物の原料であるポリアミド樹脂及び無機充填材の配合順序としては、例えば、(i)2軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、(ii)一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、又は(iii)一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法等、いずれの方法を用いてもよい。
また、本発明のエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物には、ポリアミド樹脂及び無機充填材以外に、任意成分として、以下の成分をさらに含むことができる。
(1)他のポリマー
本発明に用いられるジカルボン酸成分が蓚酸から成り、ジアミン成分がC9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)及び1,6−ヘキサンジアミンからなり、これらのモル比が1:99〜99:1であるポリアミド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、その一部を他のポリマー成分で置換されうる。他のポリマー成分としては、例えば、他のポリアミド類、例えば、ポリオキサミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド等、並びにポリアミド以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマー、エラストマーが挙げられる。
上記熱可塑性ポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂等の汎用樹脂材料、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、その他高耐熱樹脂が挙げられる。特にポリエチレンやポリプロピレンを併用する場合には無水マレイン酸やグリシジル基含有モノマー等で変性したものを使用することが望ましい。
上記他のポリマーによる置換割合としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは30質量%以下である。
なお、以下単に、「ポリアミド」、又は「ポリアミド樹脂」と称する場合には、ジカルボン酸成分が蓚酸から成り、ジアミン成分がC9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)及び1,6−ヘキサンジアミンからなり、これらのモル比が1:99〜99:1であるポリアミド樹脂のことを指すものとする。
(2)添加剤
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の添加剤を添加することができる。例えば、顔料、染料、着色剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、銅化合物等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、ガラス繊維、潤滑剤、フィラー、補強繊維等を挙げることができる。
より具体的には、耐熱剤としては、ヒンダードフェノール類、ホスファイト類、チオエーテル類、ハロケン化銅等が挙げられ、単独またはこれらを組み合わせて使用することができる。
上記耐候剤としては、ヒンダードアミン類やサリシレート類が挙げられ、単独又はこれらを組み合わせて使用することができる。
上記結晶核剤としては、タルク、クレー等の無機フィラー類や脂肪酸金属塩等の有機結晶核剤等が挙げられ、単独又はこれらを組み合わせて使用することができる。
上記結晶化促進剤としては、低分子量ポリアミド、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類や高級脂肪族アルコール類が挙げられ、単独又はこれらを組み合わせて使用することができる。
上記離型剤としては、脂肪酸金属塩類、脂肪酸アミド類や各種ワックス類が挙げられ、単独又はこれらを組み合わせて使用することができる。
上記帯電防止剤としては、脂肪族アルコール類、脂肪族アルコールエステル類や高級脂肪酸エステル類が挙げられ、単独又はこれらを組み合わせて使用することができる。
上記難燃剤としては、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンジシアヌレート、硝酸カリウム、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート化合物、臭素化ポリスチレン化合物、テトラブロモベンジルポリアクリレート、トリブロモフェノール重縮合物、ポリブロモビフェニルエーテル類や塩素系難燃剤が挙げられ、単独又はこれらを組み合わせて使用することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、エンジン冷却水系部品に用いられる。ここでエンジン冷却水系部品とは、ラジエータコア、ラジエータタンクのトップ及びベース等のラジエータタンク部品、冷却液リザーブタンク、ウォーターパイプ、ウォーターポンプハウジング、ウォーターポンプインペラ、ウォータージャケットスペーサー、バルブ、サーモスタットケースなどのエンジンルーム内で冷却水との接触下で使用される部品である。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、エンジン冷却水系部品に好適に用いることができるが、他の同様の機能を要求される部材、例えば、床暖房用温水パイプや道路融雪用散水パイプその他の樹脂部品にも好適に用いることができる。
[エンジン冷却水系部品]
本発明のエンジン冷却水系部品は、当業界で通常行われる成形方法により、例えば、上記エンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物のペレット等を押出成形、ブロー成形、圧縮成形、射出成形等の方法により成形することにより製造することができる。
[中空成形部品]
本発明の中空成形部品は、ポリアミド樹脂及び層状珪酸塩を用いて作製される。
本明細書において、用語「中空成形部品」の用語は、中空成形により製造された部品を意味する。中空成形には、回転成形、スラッシュ成形、シートブロー成形、インジェクションブロー成形等が含まれる。
層状珪酸塩の量は、当該層状珪酸塩の効果が発揮される量であれば、特に制限されるものではないが、ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.05〜8質量部、特に好ましくは0.05〜5質量部である。層状珪酸塩の割合が低くなると、層状珪酸塩の効果が発揮されず、上記割合が高くなると、溶融粘度が極端に高くなり、成形加工性が悪化したり、耐衝撃性が低下する傾向がある。
層状珪酸塩を添加する方法は、層状珪酸塩がポリアミド樹脂に均一に分散し得る方法である限り、特に制限はない。例えば、層状珪酸塩の原料が多層状粘土鉱物である場合には、特開昭62−74957号に開示されるように、層状珪酸塩を塩酸等によりイオン化し、ここに膨潤化剤、例えば、1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンを添加して、あらかじめ層状珪酸塩の各層の間隔を広げる。次いで、当該層の間にポリアミド原料を導入し、さらに当該層の間で上記原料を重合させることができる。
また、膨潤化剤として有機化合物を用いて層間を約100Å以上に予め広げ、これをポリアミド樹脂と溶融混合して、各層をポリアミド樹脂に分散させてもよい。
本発明の中空成形部品は、任意成分として、さらに以下の成分を含むことができる。
(1)他のポリマー
本発明に用いられるジカルボン酸成分が蓚酸から成り、ジアミン成分がC9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)及び1,6−ヘキサンジアミンからなり、これらのモル比が1:99〜99:1であるポリアミド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、その一部を他のポリマー成分で置換されうる。他のポリマー成分としては、例えば、他のポリアミド類、例えば、ポリオキサミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド等、並びにポリアミド以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマー、エラストマーが挙げられる。
上記他のポリマーによる置換割合としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは30質量%以下である。
なお、以下単に、「ポリアミド」、又は「ポリアミド樹脂」と称する場合には、ジカルボン酸成分が蓚酸から成り、ジアミン成分がC9ジアミン混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物)及び1,6−ヘキサンジアミンからなり、これらのモル比が1:99〜99:1であるポリアミド樹脂(A)のことを指すものとする。
(2)添加剤
また、本発明の中空成形部品は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の添加剤を含むことができる。他の添加剤として、例えば、顔料、染料、着色剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、銅化合物等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、ガラス繊維、潤滑剤、フィラー、補強繊維、補強粒子、発泡剤等を挙げることができる。
上記他のポリマー及び添加剤の添加方法は、それぞれをポリアミド樹脂に分散させることができる方法であれば、特に制限されるものではなく、その効果を損なわない任意の時点において、ポリアミド樹脂に添加することができる。例えば、上記他のポリマー及び添加剤を、ポリアミド樹脂の後重縮合工程の直後に添加することができる。
本発明の中空成形部品は、中空成形によって成形される部品又は製品、例えば、燃料タンク、例えば、ガソリンタンク、オイルタンク、その他のタンク、農薬ボトル、飲料水用ボトル等の各種ボトル、エアーダクト、インテークマニホールド等各種機械及び自動車の吸気、排気系部品、エアスポイラー、フェンダー、バンパー等の自動車外板・外装構造部材等の用途に使用することができる。また、中空成形部品としては、フューエルデリバリーパイプ、スロットルボディ、レゾネーター、エアクリーナボックス、サスペンションブーツ、エアインテークマニホールド、エアクリーナー、レゾネーター、フューエルレール、ホースジョイントを挙げることができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[物性測定、成形、評価方法]
特性値を、以下の方法により測定した。
(1)相対粘度(ηr)
ηrは、ポリアミドの96%硫酸溶液(濃度:1.0g/dl)を用いて、オストワルド型粘度計により25℃で測定した。
(2)融点(Tm)及び結晶化温度(Tc)
Tm及びTcは、PerkinELmer社製PYRIS Diamond DSC用いて窒素雰囲気下で測定した。30℃から300℃まで10℃/分の速度で昇温し(昇温ファーストランと呼ぶ)、300℃で3分保持したのち、−100℃まで10℃/分の速度で降温し(降温ファーストランと呼ぶ)、次に300℃まで10℃/分の速度で昇温した(昇温セカンドランと呼ぶ)。可塑剤含有試料では得られたDSCチャートから昇温ファーストランの吸熱ピーク温度を、可塑剤を含まない試料では昇温セカンドランの吸熱ピーク温度をそれぞれ降温ファーストランの発熱ピーク温度を各試料の結晶化温度とした。
(3)1%重量減少温度(Td)
Tdは島津製作所社製THERMOGRAVIMETRIC ANALYZER TGA−50を用い、熱重量分析(TGA)により測定した。20ml/分の窒素気流下室温から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、Tdを測定した。
(4)溶融粘度
溶融粘度はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製溶融粘弾性測定装置ARESに25mmのコーン・プレートを装着して、窒素中、290℃、せん断速度0.1s-1の条件で測定した。
(5)フィルム成形
東邦マシナリー社製真空プレス機TMB−10を用いて、ペレットからフィルムを成形した。500〜700Paの減圧雰囲気下において290℃(ナイロン6を用いた場合は260℃、PA66では樹脂温度290℃、PA12では樹脂温度230℃)で5分間加熱溶融させた後、5MPaで1分間プレスを行いフィルム成形した。次に減圧雰囲気を常圧まで戻したのち室温5MPaで1分間冷却結晶化させてフィルムを得た。
(6)飽和吸水率
上記(5)の条件で成形したフィルム(寸法:20mm×10mm、厚さ0.25mm;質量約0.05g)を23℃のイオン交換水に浸漬し、所定時間ごとにフィルムを取り出し、フィルムの質量を測定した。フィルム質量の増加率が0.2%の範囲内で3回続いた場合にポリアミド樹脂フィルムへの水分の吸収が飽和に達したと判断して、水に浸漬する前のフィルムの質量(Xg)と飽和に達した時のフィルムの質量(Yg)から次の式(1)により飽和吸水率(%)を算出した。
飽和吸水率(%)=100×(Y−X)/X (1)
(7)耐薬品性
本発明によって得られるポリアミドの熱プレスフィルムを以下に列挙する薬品中に7日間、23℃で浸漬した後に、フィルムの質量残存率(%)及び外観の変化を観測した。濃塩酸、64%硫酸、氷酢酸について試験を行った。
(8)耐加水分解性
本発明の複合材料の熱プレスフィルムを、オートクレーブに入れ、水(pH=7)、0.5mol/l硫酸(pH=1)又は1mol/l水酸化ナトリウム水溶液(pH=14)内で、121℃、60分間処理した後の重量残存率(%)及び外観変化を調べた。
(9)機械的物性
以下に示す〔1〕〜〔4〕の測定は、下記の試験片を樹脂温度290℃(ナイロン6を用いた場合は260℃、PA66では樹脂温度290℃、PA12では樹脂温度230℃)、金型温度80℃の射出成形により成形し、これを用いて行った。成形後に未調湿、23℃で測定したデータをdry、成形後に湿度65%RHで調湿し、23℃で測定したデータをwetとして表中に記載した。
〔1〕引張降伏点強度又は引張強度:ASTM D638に記載のTypeIの試験片を用いてASTM D638に準拠して測定した。
〔2〕曲げ弾性率:試験片寸法3.2mm×12.7mm×127mmの試験片を用いてASTM D790に準拠し測定した。
〔3〕アイゾット衝撃強度:試験片寸法3.2mm×12.7mm×127mmmmの試験片を用いてASTM D256に準拠し、23℃で測定した。
〔4〕荷重たわみ温度(熱変形温度):試験片寸法3.2mm×12.7mm×127mmの試験片を用いてASTM D648に準拠し、荷重1.82MPaで測定した。
(10)吸水率
23℃及び湿度65%RHの条件下に置いた以外は、(6)飽和吸水率の測定方法に従って、吸水率(%)を算出した。
(11)耐塩化カルシウム性
(5)の条件で成形したフィルムを、23℃の飽和塩化カルシウム水溶液に浸漬した。一日後、フィルムの外観を目視で観察し、クラックの有無を評価した。
(12)エタノール蒸気透過係数
ステンレス製の容器にエタノールを50ml入れ、(5)の条件で成形したフィルムを用いて、PTFE製のガスケットをかませた容器に蓋をし、ねじ圧力にて締め付けた。カップを60℃恒温槽に入れ、槽内は窒素を50ml/minで流した。重量の経時変化を測定し、時間当たりの重量変化率が安定した時点で、燃料透過係数を次式から計算した。試料の透過面積は78.5cm2である。
エタノール透過係数(g・mm/m2・day)=[透過重量(g)×フィルム厚さ(mm)]/[透過面積(mm2)×日数(day)×圧力(atom)]
[製造例1:PA92/62T−1]
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、ダイアフラムポンプを直結した原料投入口、窒素ガス導入口、放圧口、圧力調節装置及びポリマー抜出し口を備えた内容積が約150リットルの圧力容器に蓚酸ジブチル28.230kg(139.56モル)を仕込み、圧力容器の内部を純度が99.9999%の窒素ガスで0.5MPaに加圧した後、次に常圧まで窒素ガスを放出する操作を5回繰り返し、窒素置換を行った後、封圧下、攪拌しながら系内を昇温した。約30分間かけて蓚酸ジブチルの温度を100℃にした後、1,9−ノナンジアミン1.241kg(7.84モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン19.639kg(124.04モル)と1,6−ヘキサンジアミン0.893kg(7.68モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンと1,6−ヘキサンジアミンのモル比が5.62:88.88:5.50)をダイアフラムフポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。その後、1時間かけて温度を235℃まで昇温した。その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を0.75MPaに調節した。重縮合物の温度が235℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を260℃にし、260℃において4.5時間反応させた。その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.5MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、ηr=3.13であった。
[製造例2:PA92/62T−2]
蓚酸ジブチル28.462kg(140.71モル)を仕込み、1,9−ノナンジアミン16.448kg(103.88モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン2.903kg(18.34モル)と1,6−ヘキサンジアミン2.150kg(18.50モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンと1,6−ヘキサンジアミンのモル比が73.83:13.03:13.14)を仕込んだほかは、製造例1と同様に反応を行ってポリアミドを得た。得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーで、ηr=2.97であった。
[製造例3:PA92/62T−3]
蓚酸ジブチル30.238kg(149.49モル)を仕込み、1,9−ノナンジアミン4.486kg(28.33モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン4.486kg(28.33モル)と1,6−ヘキサンジアミン10.79kg(92.85モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンと1,6−ヘキサンジアミンのモル比が18.95:18.95:62.10)をダイアフラムフポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。その後、1.5時間かけて温度を270℃まで昇温した。その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を1.00MPaに調節した。重縮合物の温度が270℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を285℃にし、285℃において1.5時間反応させた。その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.5MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、ηr=2.88であった。
[製造例4:PA92/62T−4]
蓚酸ジブチル29.864kg(147.64モル)を仕込み、1,9−ノナンジアミン5.598kg(35.36モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン5.598kg(35.36モル)と1,6−ヘキサンジアミン8.941kg(76.92モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンと1,6−ヘキサンジアミンのモル比が23.95:23.95:52.10)をダイアフラムフポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。その後、1時間かけて温度を250℃まで昇温した。その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を1.00MPaに調節した。重縮合物の温度が250℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を270℃にし、270℃において2時間反応させた。その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.5MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、ηr=2.83であった。
[製造例5:PA92/62T−5]
蓚酸ジブチル29.107kg(143.89モル)を仕込み、1,9−ノナンジアミン5.641kg(35.63モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン10.028kg(63.34モル)と1,6−ヘキサンジアミン5.223kg(44.93モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンと1,6−ヘキサンジアミンのモル比が24.76:44.02:31.22)をダイアフラムフポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。その後、1時間かけて温度を250℃まで昇温した。その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を0.75MPaに調節した。重縮合物の温度が240℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を265℃にし、265℃において3時間反応させた。その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.5MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、ηr=3.11であった。
[参考製造例1:PA92C]
蓚酸ジブチル28.40kg(140.4モル)を仕込み、1,9−ノナンジアミン11.11kg(70.2モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン11.11kg(70.2モル)の混合物をダイアフラムフポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。その後、1時間かけて温度を235℃まで昇温した。その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を0.5MPaに調節した。重縮合物の温度が235℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を260℃にし、260℃において4.5時間反応させた。その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.5MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、ηr=3.35であった。
[比較製造例1:PA92の製造]
ジアミン原料として1,9−ノナンジアミン22.25kg(140.4モル)だけを用いて、製造例1と同様に反応を行ってポリアミドを得た。得られた重合物は黄白色のポリマーであり、ηr=2.78であった。
製造例1〜5、参考製造例1及び比較製造例1で製造したポリアミドPA92/62T−1〜PA92/62T−5、PA92C、PA92、並びにナイロン6(宇部興産製、UBEナイロン1015B:PA6)、ナイロン66(宇部興産製、UBEナイロン2020B:PA66)及びナイロン12(宇部興産製、UBESTA3020U:PA12)について、相対粘度、融点、結晶化温度、1%重量減少温度、溶融粘度、飽和吸水率、耐薬品性、耐加水分解性、ドライ及びウェットにおける機械的特性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005584964
表1から、本発明に用いられるポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン66及びナイロン12と比較して低吸水であり、耐薬品性、耐加水分解性に優れ、wet条件下での機械的物性に優れ、そしてジアミン成分として1,9−ノナンジアミン単体を用いたポリアミド樹脂(PA92)よりも成形可能温度幅が広く溶融成形性に優れ、さらに高分子量化が可能で強靭な成形体を製造することができることが分かる。
なお、本発明の複合材料には、ポリアミド樹脂内に分散した層状珪酸塩が含まれるが、当該複合材料は、基本的に、上述のポリアミド樹脂の特性を保持している。
[実施例1]
製造例1で製造したPA92/62T−1を100質量部に対し、有機化モンモリロナイト(Nanocor社製、ナノマー30TC)を0.5質量部添加し、290℃で二軸混練機を用いて溶融混練し、ペレット状の本発明の複合材料を得た。
[実施例2〜7]
表2の配合に従った他は実施例1と同様にして、ペレット状の本発明の複合材料を得た。
[比較例1]
ポリアミド樹脂の代わりにPA6(宇部興産製、UBEナイロン1015B)を用い、実施例1と同様にして複合材料を得た。
実施例1〜7、比較例1の複合材料の特性を表2に示す。また、製造例7で製造したPA92の特性を、参考例1として表2に示す。
Figure 0005584964
本発明のポリアミド樹脂及び層状珪酸塩を含む複合材料は、高い機械的強度、耐熱性及び液体又は蒸気に対するバリア性を有し、そして従来のナイロン6系複合材料と比較して低吸水性、耐薬品性及び耐加水分解性等に優れ、そしてジアミン成分として1,9−ノナンジアミン単体を用いたポリアミド樹脂系の複合材料よりも成形可能温度幅が広く溶融成形性に優れ、さらに高分子量化が可能で強靭な成形体を製造することができ、産業資材、工業材料、家庭用品等の成形材料として広範に使用することができるので、産業上有用である。

Claims (8)

  1. ポリアミド樹脂と、当該ポリアミド樹脂内に分散している層状珪酸塩とを含む複合材料であって、
    上記ポリアミド樹脂のジカルボン酸成分が蓚酸からなり、
    ジアミン成分が1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンの混合物(以下、「C9ジアミン混合物」という。)及び1,6−ヘキサンジアミン(以下、「C6ジアミン」という。)からなり、
    C9ジアミン混合物とC6ジアミンのモル比が1:99〜99:1であるポリアミド樹脂であり、
    前記1,9−ノナンジアミンと前記2−メチル−1,8−オクタンジアミンとのモル比が5:95〜95:5である複合材料。
  2. 上記ポリアミド樹脂の、96%硫酸を溶媒とし、濃度1.0g/dlのポリアミド樹脂溶液を用いて25℃で測定した相対粘度(ηr)が、1.8〜6.0である、請求項1に記載の複合材料。
  3. 上記ポリアミド樹脂の、窒素雰囲気下において10℃/分の昇温速度で測定した熱重量分析における1%重量減少温度と、窒素雰囲気下において10℃/分の昇温速度で測定した示差走査熱量法により測定した融点との温度差が50℃以上である、請求項1又は2に記載の複合材料。
  4. 上記層状珪酸塩の含有量が、上記ポリアミド樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部である、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料。
  5. 上記層状珪酸塩の50質量%以上が、上記ポリアミド樹脂中で単層に分散している、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料。
  6. 上記層状珪酸塩が、珪酸アルミニウム質フィロ珪酸塩又は珪酸マグネシウム質フィロ珪酸塩である、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料。
  7. 上記請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料を使用したエンジン冷却水系部品用ポリアミド樹脂組成物。
  8. 上記請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料を使用した中空成形部品。
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