JP5584161B2 - 溶射材料 - Google Patents

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Description

本発明は、溶射材料に関するものである。
石炭の価格が石油より安価なこと、および埋蔵量が豊富であることから、従来から現在に至るまで、石炭を燃焼するボイラが使用されている。石炭としては、従来は、低硫黄含有量の石炭が比較的安価であったが、現在は、燃料価格の高騰等により、低硫黄含有量の石炭が高価になってきている。そのため、石炭として、より安価な高硫黄含有量の石炭を用いざるを得ない状況になっていく。一方、プラントが大容量化され、熱効率も向上していることから、石炭を燃焼するボイラにおいて、その燃焼温度は、非常に高温になっている。
ボイラの伝熱管は、発生する亜硫酸ガスや硫化水素ガスなど高温腐食性の高いガスに曝されるため、その表面は減肉しやすい。この問題に対処するため、ボイラの伝熱面に金属溶射被膜を形成することが行われている。
従来の金属溶射被膜としては、50質量%〜93質量%のCr32と50質量%〜7質量%のNiCr合金(Crの含有量は20質量%)とから形成される溶射材料から得られた金属溶射被膜が知られている。このような金属溶射被膜は、NiCr合金におけるCr含有量が抑えられているため、耐硫化性(高温腐食性)が劣る。また、炭化物成分が多く、金属成分が少ないため、溶射被膜の熱に対する伸縮性が悪く、基材であるボイラの伝熱管の伸縮に追従できずにクラックを生じて損傷を拡大させている。
そこで、従来の材料に耐硫化性ならびに溶射被膜の伸縮性を与えるために金属成分であるCr量を増加させた金属溶射被膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、金属成分を増加させると金属溶射被膜の硬さが低下し、耐摩耗性が低下する。一方、炭化物を増やすと金属溶射被膜の硬さは硬くなるが伸縮性が悪くなる。すなわち、機械用語でいうところの靭性が低下する。
これらの性質を両立するための金属溶射被膜を製造するための溶射材料の開発が望まれていた。
また、近年、産業界では、燃焼ボイラを保守するための管理費の低減が望まれている。この管理費低減のため、金属溶射被膜の寿命を長くする試みが、種々提案されている。
例えば、プラントの歴史的変遷と溶射技術とが重複する火力発電の分野においては、石油火力プラントにおいて硫化腐食または、バナジウムアタックを抑制するために50Ni50Crが使用されている(例えば、特許文献2および3参照)。また、石炭火力プラントにおいては、摩耗に対する耐性を確保するため、ボイラ伝熱管に耐食かつ耐磨耗性のプロテクタを装着したり(例えば特許文献4参照)、Cr32−NiCrが使用されている。しかしながら、Cr32や50Ni50Crの溶射材料は、溶射材料の中で、材料単価が高いという欠点がある。大容量化された石炭ボイラは、溶射面積も広範囲なため、安価な金属溶射材料を開発する、すなわち、高価なCr32の含有量を低減する必要がある。
特開平9−75832号公報 特開平11−337006号公報 特開平10−110905号公報 特開2001−262312号公報
そこで、本発明は、厳しい高温条件下においても高い伸縮性と耐高温腐食性と耐磨耗性を両立する安価な溶射材料の提供を目的とする。
本発明は、NiCr合金と、Cr32とを含み、造粒焼結法により粒子状に形成され、前記NiCr合金におけるCr含有量が40質量%〜50質量%である溶射材料である。
本発明の溶射材料から得られた溶射被膜は、安価であり、厳しい高温条件下においても伸縮性が高く、皮膜割れの異常が無く、耐高温腐食性かつ耐磨耗性を両立するという利点がある。
図1は、実施例および比較例の耐高温硫化性の結果を示したグラフである。 図2は、実施例および比較例の耐摩耗性の結果を示したグラフである。 図3は、実施例1で得られた溶射被膜付き基材を示した断面図である。 図4は、実施例9で得られた溶射被膜付き実機ボイラ管を示した断面図である。
石炭を燃焼するボイラは、高温燃焼ガスによって発生するサーマルNOx(窒素酸化物)を抑制するため、燃焼用空気(酸素)をできるだけ少なくして燃焼することが求められている。このように燃焼用空気を少なくする結果、石炭を燃焼室へ供給するバーナ近傍では、燃焼用空気が不足する領域が発生する。前記燃焼用空気が不足する領域においては、石炭中に含まれる硫黄成分と合わさって高温硫化腐食雰囲気となる。一方、ボイラは内部温度が高いため、ボイラ面は熱で激しく伸縮される。その結果、ボイラ面にはクラックが生じる。このようにして生じたクラックに、硫黄成分が侵入して浸食が生じる。石炭を燃焼するボイラにおいては、このような高温腐食に起因する伝熱管の減肉が発生する場合がある。
一方、石炭を燃焼するボイラでは、石炭灰が伝熱面に付着および堆積しやすい。このように石炭灰が伝熱面に付着および堆積すると、ボイラ内の燃焼ガスとボイラの伝熱管との熱伝達が阻害される。これを防ぐため、石炭を燃焼するボイラには、水蒸気を噴霧するスートブローおよびデスラッガ(灰落とし装置)が設置されている。しかしながら、噴霧水蒸気に巻き込まれた石炭灰が伝熱管に衝突し、伝熱管の磨耗(減肉)が発生する場合がある。
このような石炭を燃焼するボイラの伝熱管の磨耗発生メカニズムを本発明者らは新たにつきとめ、このメカニズムに基づき、ボイラの伝熱面に形成する最適な金属溶射被膜を開発した。すなわち、厳しい高温条件下においても高い伸縮性と耐高温腐食性と耐磨耗性を両立する溶射材料を見出し、本発明を完成した。
本発明の溶射材料は、NiCr合金と、Cr32とを含み、造粒焼結法により粒子状に形成され、前記NiCr合金におけるCr含有量が40質量%〜50質量%である。本発明の溶射材料は、従来の50質量%〜93質量%のCr32と50質量%〜7質量%のNiCr合金(Crの含有量は20質量%)とから形成される溶射材料と比較して、NiCr合金におけるCr含有量が多くなっている。この場合、従来技術における知識に従えば、NiCr合金においてCr含有量が増加すると、溶射材料全体の溶射性が低下し、耐高温腐食性と耐磨耗性および伸縮性も低下することが予想されていた。しかしながら、本発明者らは、このような従来技術における知識に本発明の溶射材料が、溶射性、耐高温腐食性と耐磨耗性および伸縮性において良好な効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
本発明の溶射材料において、Cr32を100質量%とする場合のNiCr合金の配合比は、25質量%〜35質量%であるのが好ましい。このような溶射材料から得られる溶射被膜は、高い伸縮性かつ耐高温腐食性と耐磨耗性を両立することができるからである。
本発明の溶射材料は、前記のように造粒焼結法により粒子状に形成される。このように造粒焼結法により粒子状に形成されれば、球状かつ多孔質の粒子を得ることができ、そのような溶射材料から均質な溶射被膜を得ることができるためである。本発明の溶射材料は、具体的には、例えば、Cr含有量が40質量%〜50質量%であるNiCr合金の粉末と、Cr32の粉末とを混合し、造粒(例えば有機媒体(例えばアルコール、ポリビニルアルコール等)との混練による造粒)および焼結した(例えば真空溶解炉において焼結)後に機械的に粉砕し、さらに必要に応じて粒度を分級して得ることができる。混合時のNiCr合金の粉末の粒子径は、例えば、5μm〜15μm、好ましくは5μm〜10μmである。NiCr合金の粉末の粒子径が5μm以上であれば、NiCr合金の粉末とCr32の粉末を均質に分散することができるからである。NiCr合金の粉末の粒子径が15μm以下であれば、溶射被膜に加工したときに、耐磨耗性が向上するからである。また、混合時のCr32の粉末の粒子径は、例えば、3μm〜15μm、好ましくは5μm〜10μmである。Cr32の粉末の粒子径が3μm以上であれば、NiCr合金の粉末とCr32の粉末を均質に分散することができるからである。Cr32の粉末の粒子径が15μm以下であれば、溶射被膜に加工したときに、耐磨耗性が向上するからである。なお、本願明細書中の粒子径は、レーザー回折法により測定された粒子径を意味する。
本発明の溶射材料において、溶射材料の粒子径は、10μm〜55μmの範囲であるのが好ましく、15μm〜55μmの範囲であるのがより好ましい。このような溶射材料から得られる溶射被膜は、高い伸縮性かつ耐高温腐食性と耐磨耗性を両立することができるからである。また、本発明の溶射材料の50%平均粒径は、20μm〜50μmの範囲であるのが好ましい。このような溶射材料から得られる溶射被膜は、溶射皮膜の厚みが大きくなった場合にも、高い伸縮性を得ることができるからである。また、溶射材料の粒子径が10μm〜40μmの範囲の場合、50%平均粒径は、20μm〜25μmであるのが好ましい。また、溶射材料の粒子径が15μm〜55μmの範囲の場合、50%平均粒径は、30μm〜40μmであるのが好ましい。これらのような粒子径と50%平均粒径を有する溶射材料は、硬さが硬いからである。なお、粒子径は、レーザー回折法等により測定することができ、50%平均粒径は、レーザー回折法により求めた粒度分布における積算50%での粒子径を意味する。
また、本発明の溶射材料は、石炭燃焼ボイラ伝達面を高速フレーム溶射するための材料であるのが好ましい。石炭燃焼ボイラ伝達面は、厳しい高温条件下に曝されるが、そのような場合にも、高い伸縮性かつ耐高温腐食性と耐磨耗性を両立することができるからである。
また、本発明は、基材の表面に、本発明の溶射材料を高速フレーム(HVOF)溶射することにより、前記基材上に溶射被膜を形成する方法である。このような方法により得られる溶射被膜は、高い伸縮性かつ耐高温腐食性と耐磨耗性を両立することができるからである。また、前記方法により得られる溶射被膜の厚みは、例えば150μm〜700μm、好ましくは200μm〜600μm、より好ましくは200μm〜400μmである。前記溶射被膜の厚みが、600μmを超えると、熱ひずみが生じて被膜に欠陥が生じ、耐磨耗性が低下するからである。また、前記溶射被膜の厚みが150μm未満であると、伸縮性、耐高温腐食性および耐磨耗性が低下するためである。
本発明の方法において、前記基材の表面が、石炭燃焼ボイラ伝熱面であるのが好ましい。このような方法により得られる溶射被膜は、石炭燃焼ボイラ伝熱面においても高い伸縮性かつ耐高温腐食性と耐磨耗性を両立することができるからである。
本発明の方法において、基材の表面には、予めアンダーコートを形成していてもよい。このようなアンダーコートは、電気アーク溶射法、フレーム溶射法、高速フレーム溶射法、大気プラズマ溶射法等を用いて形成することができる。前記アンダーコートの材料としては、Ni−Al系合金、Ni−Cr系合金、M−CrAlY合金等が挙げられる。
実施例1〜8および比較例1〜5における評価方法は、以下のとおりである。
(1)溶射性(成膜性)
「良好」は、高速フレーム溶射機(HVOF)(スルザーメテコ社製、商品名DJ−2700)を用いて膜厚300μmまで溶射できることを意味する。「不良」は、高速フレーム溶射機(HVOF)(スルザーメテコ社製、商品名DJ−2700)を用いて膜厚300μmまで溶射できなかったことを意味する。
(2)耐磨耗性
以下の条件下でJIS H8667 5.8方法に準じて耐磨耗性試験を行った。
(i)試験装置:スガ摺動磨耗試験機(NUS−ISO3)
(ii)試験温度:室温
(iii)試験荷重:3kgf
(iv)試験回数:1600回
(v)使用研磨紙:#320、120mm巾×158mm長さ、エメリー紙
(vi)研磨範囲:12mm巾×33mm巾。
「良好」は、摺動回数1600回において減量45mg以下を意味する。「不良」は、摺動回数1600回において減量45mgより多いものを意味する。
(3)耐熱サイクル性(伸縮性)
以下の条件下でJIS H8667 5.6方法に準じて熱サイクル試験を行った。
(i)加熱炉:電気炉
(ii)試験温度:650℃
(iii)試験雰囲気:大気中
(iv)保持時間:1時間
(v)冷却方法:送風による強制冷却
(vi)繰り返し回数:10回
(vii)評価:溶射被膜の割れ、浮き、剥離等を目視で確認。
(4)耐高温硫化性(耐高温腐食性)
溶射被膜を、500℃1%H2S−H2雰囲気中で5時間保持し、その後、室温へ冷却した。この条件を5回繰り返して溶射被膜の高温硫化腐食を進行させた。その後、溶射被膜を中心とする断面を観察して、溶射被膜の表面に生成した硫化物の厚みを測定した。「良好」は硫化物の厚みが溶射被膜の1/2未満を意味し、「劣る」は硫化物の厚みが溶射被膜の1/2以上を意味する。
(5)粒子径および50%平均粒径
実施例および比較例における粒子径および50%平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−1100)を用いて、圧縮空気をノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させてレーザー回折により測定した。
(実施例1)
Cr32粉末(粒子径5μm〜10μm)と40質量%のCrを含有するNiCr合金粉末(粒子径5μm〜15μm)とを、Cr32粉末100質量%に対してNiCr合金25質量%の割合で混合した。この混合物を有機媒体(アルコール)との混練により造粒し、真空焼成炉にて焼結させた。得られた焼結粉体を篩い分け選別により、粒度を10μm〜40μmの範囲に調整して、溶射材料を得た。
得られた溶射材料を、アルミナブラストを行った炭素鋼板(基材、寸法:50mm×50mm×6mm)へ高速フレーム溶射機(HVOF)(スルザーメテコ社製、商品名DJ−2700)を用いて膜厚300μmまで溶射した。溶射条件は、酸素流量:580scfh(290L/min)、プロピレン流量:180scfh(90L/min)、溶射距離:250mm、溶射用粉末供給量:約40g/minである。この際の溶射性を表1に示す。また、得られた溶射膜付き基材(図3参照)に対し、前記耐磨耗性、耐熱サイクル性、耐高温硫化性を測定した。得られた結果を表1に示す。また、耐磨耗性の結果については表2及び図2に、耐高温硫化性の結果については表3及び図1にも示す。
(実施例2〜8)
NiCr合金中のCr含有量(質量%)、Cr32粉末100質量%に対するNiCr合金の混合割合、粒度分級を表1に示した条件を採用した以外は、実施例1と同様に行った。溶射性、および得られた溶射膜付き基材の前記耐磨耗性、耐熱サイクル性、耐高温硫化性の結果を表1に示す。また、耐磨耗性の結果については表2および図2に、耐高温硫化性の結果については表3および図1にも示す。
(比較例1)
溶射材料を、アルミナブラストを行った炭素鋼板(基材、寸法:50mm×50mm×6mm)へ高速フレーム溶射機(HVOF)(スルザーメテコ社製、商品名DJ−2700)を用いて膜厚300μmまで溶射した。用いた溶射材料は、Cr32粉末(粒子径5μm〜10μm)とNiCr合金粉末(粒子径5μm〜15μm)とを混合して得られた混合物である。用いた溶射材料について、NiCr合金中のCr含有量(質量%)、Cr32粉末100質量%に対するNiCr合金の混合割合、粒度分級を表1に示す。溶射条件は、酸素流量:580scfh(290L/min)、プロピレン流量:180scfh(90L/min)、溶射距離:250mm、溶射用粉末供給量:約40g/minである。この際の溶射性を表1に示す。また、得られた溶射膜付き基材に対し、前記耐磨耗性、耐熱サイクル性、耐高温硫化性を測定した。得られた結果を表1に示す。また、耐磨耗性の結果については表2および図1に、耐高温硫化性の結果については表3および図2にも示す。
(比較例2〜5)
NiCr合金中のCr含有量(質量%)、Cr32粉末100質量%に対するNiCr合金の混合割合、粒度分級を表1に示した条件を採用した以外は、実施例1と同様に行った。溶射性、および得られた溶射膜付き基材の前記耐磨耗性、耐熱サイクル性、耐高温硫化性の結果を表1に示す。また、耐磨耗の結果については表2および図2に、耐高温硫化性の結果については表3および図1にも示す。
Figure 0005584161
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<溶射性の結果>
表1に示すように、実施例1〜8の溶射材料については溶射性が良好であった。一方、比較例4の溶射材料については溶射粒子が飛散し、被膜を形成することができなかった。さらに比較例3の溶射材料では、溶射処理中にCrに起因すると推測されるフュームが多量に発生し、溶射性は不良であった。さらに比較例5の溶射材料については、被膜形成能に乏しく、形成された被膜には空孔が顕著に発生し、膜質が不良であった。
<耐磨耗性の結果>
表1に示すように、実施例1〜8の溶射材料については、耐磨耗性が良好であった。一方、比較例3および5においては耐磨耗性が不良であった。
<耐熱サイクル性の結果>
表1および表2に示すように、実施例1〜8の溶射材料については溶射被膜の割れや剥離等の異常は観察されなかった。一方、比較例1および3の溶射材料においては、溶射被膜の表面に小クラックが発生していた。
<耐高温硫化性の結果>
表1および表3に示すように、実施例および比較例について、目視では外観上、溶射被膜に顕著な腐食は観察されなかった。溶射被膜を中心とする断面観察によると、実施例1〜8の溶射材料については、いずれも比較例1と比較して、浸食深さは1/2程度であった。一方、比較例5の溶射材料については、実施例1〜8の溶射材料と比較して浸食深さが2倍以上に厚くなっていた。
(実施例9)
表1に示した実施例5で得られた溶射材料を用いて、実機ボイラ管へ高速フレーム(HVOF)溶射機(スルザーメテコ社製、商品名DJ−2700)を用いて膜厚300μmまで溶射し、耐熱サイクル試験を実施した(図4参照)。
(耐熱サイクル試験方法)
以下の条件下で耐熱サイクル試験を行った。
(i)加熱炉:電気炉
(ii)試験温度:300℃→500℃
(iii)試験雰囲気:大気中
(iv)保持時間:20分
(v)冷却方法:送風による強制冷却
(vi)繰り返し回数:10回
(vii)評価:溶射被膜の割れ、浮き、剥離等を目視で確認。
具体的には、溶射被膜を電気炉中、300℃で大気中20分間保持し、その後、500℃で20分間保持した。この条件を10回繰り返した。500℃から300℃へ冷却するには、溶射被膜へ風を送って行った。その後、溶射被膜の表面の色、表面に生成した割れ、浮き、剥離等を目視で評価した。その結果を表4および表5に示す。空隙率およびビッカース硬さも測定し、その結果を表4に示す。
(空隙率試験法)
被膜の断面のミクロ写真を撮影し(倍率100倍)、市販の画像ソフト(米国National Institute of Health社製、商品名:「NHI Image 1.62」)を用いて空隙率を求めた。
(ビッカース硬さ試験法)
ビッカース硬さはJIS Z 2244に準じて測定した。この方法に従い、荷重50kgにて10点測定の平均値を求めた。
(実施例10〜12)
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、実施例9と同様にして行った。溶射被膜の表面の色、表面に生成した割れ、浮き、剥離等を目視で評価した。その結果を表5に示す。
(実施例13)
実施例5で得られた溶射材料の代わりに実施例6で得られた溶射材料を用いた以外は実施例9と同様にして行った。溶射被膜の表面の色の結果は表4に、耐熱サイクル性の結果は表5に示す。空隙率およびビッカース硬さを測定し、その結果を表4に示す。
(実施例14〜16)
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、実施例13と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。
(実施例17)
実施例5で得られた溶射材料の代わりに実施例7で得られた溶射材料を用いた以外は実施例9と同様にして行った。溶射被膜の表面の色の結果は表4に、耐熱サイクル性の結果は表5に示す。空隙率およびビッカース硬さを測定し、その結果を表4に示す。
(実施例18、参考例19および参考例20)
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、実施例17と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。
(実施例21)
実施例5で得られた溶射材料の代わりに実施例8で得られた溶射材料を用いた以外は実施例9と同様にして行った。溶射被膜の表面の色の結果は表4に、耐熱サイクル性の結果は表5に示す。空隙率およびビッカース硬さを測定し、その結果を表4に示す。
(実施例22〜24)
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、実施例21と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。
(比較例6)
実施例5で得られた溶射材料の代わりに比較例1で得られた溶射材料を用いた以外は実施例9と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。空隙率およびビッカース硬さを測定し、その結果を表4に示す。
(比較例7〜9)
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、比較例6と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。
Figure 0005584161
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<空隙率およびビッカース硬さの結果>
表4に示すように、実施例9および実施例17の溶射被膜は、空隙率が若干高いものの、硬さに優れていることが確認できた。また、実施例13および実施例21の溶射被膜は、溶射材料の粒子径が実施例9および17と比較してそれぞれ大きいにもかかわらず、予想外に空隙率が低かった。さらに、実施例13および実施例21の溶射被膜は、実施例9および実施例17の溶射被膜と比較して、硬さが硬かった。
<耐熱サイクル性の結果>
表5に示すように、実施例9〜18および21〜24の溶射被膜の割れや剥離等の異常は観察されなかった。また、粒子径が比較的大きな実施例8を用いた実施例21〜24は、比較的小さな実施例7を用いた実施例17および18ならびに参考例19および20に比べて、それぞれ、被膜厚さが大きくなった場合にも、耐熱サイクル性に異常は見られなかった。通常、HVOFを用いて溶射する場合、溶射材料の粒子径は小さいほうが、得られる被膜の空隙率が低くなり、かつ、密着性が向上すると考えられている。従って、このような溶接材料の粒子径が大きいほうが、被膜厚みが大きくなった際に優れた耐熱サイクル性が維持されていることは、予想外の結果であった。
本発明の溶射材料は、石油系ボイラ伝熱面を溶射するにも適用できる。
1 基材
2 溶射被膜
3 ボイラ管
4 ボイラ管連結溶接部

Claims (4)

  1. NiCr合金と、Cr32とを含み、造粒焼結法により粒子状に形成され、前記NiCr合金におけるCr含有量が40質量%〜50質量%であり、溶射材料の粒子径が、10μm〜55μmの範囲であり、Cr 3 2 を100質量%とする場合のNiCr合金の配合比が、25質量%〜35質量%である溶射材料。
  2. 石炭燃焼ボイラ伝熱面を高速フレーム溶射するための請求項1に記載の溶射材料。
  3. 基材の表面に、請求項1または2に記載の溶射材料を高速フレーム溶射することにより、前記基材上に溶射被膜を形成する方法。
  4. 前記基材の表面が、石炭燃焼ボイラ伝熱面である請求項3に記載の方法。
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