JP5584161B2 - 溶射材料 - Google Patents
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「良好」は、高速フレーム溶射機(HVOF)(スルザーメテコ社製、商品名DJ−2700)を用いて膜厚300μmまで溶射できることを意味する。「不良」は、高速フレーム溶射機(HVOF)(スルザーメテコ社製、商品名DJ−2700)を用いて膜厚300μmまで溶射できなかったことを意味する。
以下の条件下でJIS H8667 5.8方法に準じて耐磨耗性試験を行った。
(ii)試験温度:室温
(iii)試験荷重:3kgf
(iv)試験回数:1600回
(v)使用研磨紙:#320、120mm巾×158mm長さ、エメリー紙
(vi)研磨範囲:12mm巾×33mm巾。
「良好」は、摺動回数1600回において減量45mg以下を意味する。「不良」は、摺動回数1600回において減量45mgより多いものを意味する。
以下の条件下でJIS H8667 5.6方法に準じて熱サイクル試験を行った。
(ii)試験温度:650℃
(iii)試験雰囲気:大気中
(iv)保持時間:1時間
(v)冷却方法:送風による強制冷却
(vi)繰り返し回数:10回
(vii)評価:溶射被膜の割れ、浮き、剥離等を目視で確認。
溶射被膜を、500℃1%H2S−H2雰囲気中で5時間保持し、その後、室温へ冷却した。この条件を5回繰り返して溶射被膜の高温硫化腐食を進行させた。その後、溶射被膜を中心とする断面を観察して、溶射被膜の表面に生成した硫化物の厚みを測定した。「良好」は硫化物の厚みが溶射被膜の1/2未満を意味し、「劣る」は硫化物の厚みが溶射被膜の1/2以上を意味する。
実施例および比較例における粒子径および50%平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−1100)を用いて、圧縮空気をノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させてレーザー回折により測定した。
Cr3C2粉末(粒子径5μm〜10μm)と40質量%のCrを含有するNiCr合金粉末(粒子径5μm〜15μm)とを、Cr3C2粉末100質量%に対してNiCr合金25質量%の割合で混合した。この混合物を有機媒体(アルコール)との混練により造粒し、真空焼成炉にて焼結させた。得られた焼結粉体を篩い分け選別により、粒度を10μm〜40μmの範囲に調整して、溶射材料を得た。
NiCr合金中のCr含有量(質量%)、Cr3C2粉末100質量%に対するNiCr合金の混合割合、粒度分級を表1に示した条件を採用した以外は、実施例1と同様に行った。溶射性、および得られた溶射膜付き基材の前記耐磨耗性、耐熱サイクル性、耐高温硫化性の結果を表1に示す。また、耐磨耗性の結果については表2および図2に、耐高温硫化性の結果については表3および図1にも示す。
溶射材料を、アルミナブラストを行った炭素鋼板(基材、寸法:50mm×50mm×6mm)へ高速フレーム溶射機(HVOF)(スルザーメテコ社製、商品名DJ−2700)を用いて膜厚300μmまで溶射した。用いた溶射材料は、Cr3C2粉末(粒子径5μm〜10μm)とNiCr合金粉末(粒子径5μm〜15μm)とを混合して得られた混合物である。用いた溶射材料について、NiCr合金中のCr含有量(質量%)、Cr3C2粉末100質量%に対するNiCr合金の混合割合、粒度分級を表1に示す。溶射条件は、酸素流量:580scfh(290L/min)、プロピレン流量:180scfh(90L/min)、溶射距離:250mm、溶射用粉末供給量:約40g/minである。この際の溶射性を表1に示す。また、得られた溶射膜付き基材に対し、前記耐磨耗性、耐熱サイクル性、耐高温硫化性を測定した。得られた結果を表1に示す。また、耐磨耗性の結果については表2および図1に、耐高温硫化性の結果については表3および図2にも示す。
NiCr合金中のCr含有量(質量%)、Cr3C2粉末100質量%に対するNiCr合金の混合割合、粒度分級を表1に示した条件を採用した以外は、実施例1と同様に行った。溶射性、および得られた溶射膜付き基材の前記耐磨耗性、耐熱サイクル性、耐高温硫化性の結果を表1に示す。また、耐磨耗の結果については表2および図2に、耐高温硫化性の結果については表3および図1にも示す。
表1に示すように、実施例1〜8の溶射材料については溶射性が良好であった。一方、比較例4の溶射材料については溶射粒子が飛散し、被膜を形成することができなかった。さらに比較例3の溶射材料では、溶射処理中にCrに起因すると推測されるフュームが多量に発生し、溶射性は不良であった。さらに比較例5の溶射材料については、被膜形成能に乏しく、形成された被膜には空孔が顕著に発生し、膜質が不良であった。
表1に示すように、実施例1〜8の溶射材料については、耐磨耗性が良好であった。一方、比較例3および5においては耐磨耗性が不良であった。
表1および表2に示すように、実施例1〜8の溶射材料については溶射被膜の割れや剥離等の異常は観察されなかった。一方、比較例1および3の溶射材料においては、溶射被膜の表面に小クラックが発生していた。
表1および表3に示すように、実施例および比較例について、目視では外観上、溶射被膜に顕著な腐食は観察されなかった。溶射被膜を中心とする断面観察によると、実施例1〜8の溶射材料については、いずれも比較例1と比較して、浸食深さは1/2程度であった。一方、比較例5の溶射材料については、実施例1〜8の溶射材料と比較して浸食深さが2倍以上に厚くなっていた。
表1に示した実施例5で得られた溶射材料を用いて、実機ボイラ管へ高速フレーム(HVOF)溶射機(スルザーメテコ社製、商品名DJ−2700)を用いて膜厚300μmまで溶射し、耐熱サイクル試験を実施した(図4参照)。
以下の条件下で耐熱サイクル試験を行った。
(ii)試験温度:300℃→500℃
(iii)試験雰囲気:大気中
(iv)保持時間:20分
(v)冷却方法:送風による強制冷却
(vi)繰り返し回数:10回
(vii)評価:溶射被膜の割れ、浮き、剥離等を目視で確認。
被膜の断面のミクロ写真を撮影し(倍率100倍)、市販の画像ソフト(米国National Institute of Health社製、商品名:「NHI Image 1.62」)を用いて空隙率を求めた。
ビッカース硬さはJIS Z 2244に準じて測定した。この方法に従い、荷重50kgにて10点測定の平均値を求めた。
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、実施例9と同様にして行った。溶射被膜の表面の色、表面に生成した割れ、浮き、剥離等を目視で評価した。その結果を表5に示す。
実施例5で得られた溶射材料の代わりに実施例6で得られた溶射材料を用いた以外は実施例9と同様にして行った。溶射被膜の表面の色の結果は表4に、耐熱サイクル性の結果は表5に示す。空隙率およびビッカース硬さを測定し、その結果を表4に示す。
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、実施例13と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。
実施例5で得られた溶射材料の代わりに実施例7で得られた溶射材料を用いた以外は実施例9と同様にして行った。溶射被膜の表面の色の結果は表4に、耐熱サイクル性の結果は表5に示す。空隙率およびビッカース硬さを測定し、その結果を表4に示す。
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、実施例17と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。
実施例5で得られた溶射材料の代わりに実施例8で得られた溶射材料を用いた以外は実施例9と同様にして行った。溶射被膜の表面の色の結果は表4に、耐熱サイクル性の結果は表5に示す。空隙率およびビッカース硬さを測定し、その結果を表4に示す。
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、実施例21と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。
実施例5で得られた溶射材料の代わりに比較例1で得られた溶射材料を用いた以外は実施例9と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。空隙率およびビッカース硬さを測定し、その結果を表4に示す。
膜厚300μmの代わりに500μm、600μmおよび700μmを用いた以外は、比較例6と同様にして行った。耐熱サイクル性の結果は表5に示す。
表4に示すように、実施例9および実施例17の溶射被膜は、空隙率が若干高いものの、硬さに優れていることが確認できた。また、実施例13および実施例21の溶射被膜は、溶射材料の粒子径が実施例9および17と比較してそれぞれ大きいにもかかわらず、予想外に空隙率が低かった。さらに、実施例13および実施例21の溶射被膜は、実施例9および実施例17の溶射被膜と比較して、硬さが硬かった。
表5に示すように、実施例9〜18および21〜24の溶射被膜の割れや剥離等の異常は観察されなかった。また、粒子径が比較的大きな実施例8を用いた実施例21〜24は、比較的小さな実施例7を用いた実施例17および18ならびに参考例19および20に比べて、それぞれ、被膜厚さが大きくなった場合にも、耐熱サイクル性に異常は見られなかった。通常、HVOFを用いて溶射する場合、溶射材料の粒子径は小さいほうが、得られる被膜の空隙率が低くなり、かつ、密着性が向上すると考えられている。従って、このような溶接材料の粒子径が大きいほうが、被膜厚みが大きくなった際に優れた耐熱サイクル性が維持されていることは、予想外の結果であった。
2 溶射被膜
3 ボイラ管
4 ボイラ管連結溶接部
Claims (4)
- NiCr合金と、Cr3C2とを含み、造粒焼結法により粒子状に形成され、前記NiCr合金におけるCr含有量が40質量%〜50質量%であり、溶射材料の粒子径が、10μm〜55μmの範囲であり、Cr 3 C 2 を100質量%とする場合のNiCr合金の配合比が、25質量%〜35質量%である溶射材料。
- 石炭燃焼ボイラ伝熱面を高速フレーム溶射するための請求項1に記載の溶射材料。
- 基材の表面に、請求項1または2に記載の溶射材料を高速フレーム溶射することにより、前記基材上に溶射被膜を形成する方法。
- 前記基材の表面が、石炭燃焼ボイラ伝熱面である請求項3に記載の方法。
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