しかし、上述した従来のロータリソレノイドに備える回動範囲規制機構は、次のような解決すべき課題が存在した。
第一に、ロータリソレノイドに対して別途の回動範囲規制機構を付設、特に、機械的に位置を規制する規制機構を付設するため、係止アームは回動変位した後にストッパに衝突して停止する。したがって、衝突時には、その衝撃により、シャフトの位置(回動角)は、図11に点線で示す回動角変化特性Prのように、振動による不安定な挙動を経て徐々に静止する。このため、通常、ストッパを緩衝素材により構成するなど、不安定な挙動を抑制する対策を施しているが、ある程度の抑制効果は得られるとしても、その効果は限定的となる。また、緩衝素材により構成する場合、緩衝素材の劣化や変形等が発生し、規制位置精度の大きな低下要因ともなる。
第二に、回動範囲規制機構は、ロータリソレノイドの外部に別途追加して設けるため、結果的に、ロータリソレノイドを取付ける際には、ロータリソレノイドの実質的な大型化を招くことになり、広い取付スペースが強いられる。しかも、回動範囲規制機構の別途の追加により、部品点数の増加及び取付工数の増加を招くとともに、全体のコストアップを招く。
第三に、非通電時には、マグネットの磁極がインナヨーク部に吸引されて位置が保持されるが、可動側となるマグネットと固定側となるインナヨーク部の間には一定のクリアランスが必須となる。結局、このクリアランスの存在により吸引力が必ずしも十分に確保されているとは言えず、停止時(非通電時)における保持力を高める観点からも更なる改善の余地があった。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したロータリソレノイドの回動範囲規制機構の提供を目的とするものである。
本発明は、上述した課題を解決するため、シャフト2sに少なくとも一対の異極を有するマグネット部2mを設けたマグネットロータ部2と、マグネット部2mの外周面に対向する位置に固定して配した少なくとも一対のヨーク3p,3qを有するステータ部3と、コイルボビン4bに巻回したコイル4cによりヨーク3p,3qに磁極を発生させるコイルユニット部4とを備えてなるロータリソレノイドMに付設し、マグネットロータ部2の回動範囲Zrを規制するロータリソレノイドMの回動範囲規制機構1を構成するに際して、シャフト2sが貫通し、一部を径方向Frに突出させて一対のヨーク3pと3q間に位置させ、かつ各ヨーク3p,3qの周方向Ffにおける端辺3psと3qs間を変位可能にするとともに、周方向Ffにおける幅Lsを回動範囲Zrに対応させた係合部5を一体形成した磁極体部11,及びこの磁極体部11における係合部5の反対側に固定したマグネット本体部12を有するマグネット部2mと、各ヨーク3p,3qの端辺3ps,3qsにより又はこの端辺3ps,3qsの近傍で係合部5に当接して当該係合部4の位置を規制する一対の規制部6p,6qとを備えてなることを特徴とする。
また、本発明の他の形態は、上述した課題を解決するため、シャフト2sに少なくとも一対の異極を有するマグネット部2mを設けたマグネットロータ部2と、マグネット部2mの外周面に対向する位置に固定して配した少なくとも一対のヨーク3p,3qを有するステータ部3と、コイルボビン4bに巻回したコイル4cによりヨーク3p,3qに磁極を発生させるコイルユニット部4とを備えてなるロータリソレノイドMに付設し、マグネットロータ部2の回動範囲Zrを規制するロータリソレノイドMの回動範囲規制機構1を構成するに際して、マグネット部2mの一部を径方向Frに突出させて一対のヨーク3p,3q間に位置させ、かつ各ヨーク3p,3qの周方向Ffにおける端辺3ps,3qs間を変位可能にするとともに、周方向Ffにおける幅Lsを回動範囲Zrに対応させて形成した係合部5と、ヨーク3p,3qの周方向ffの端辺3ps,3qsを直接又は間接的に利用し、係合部5に当接して当該係合部5の位置を規制する一対の規制部6p,6qとを備えてなることを特徴とする。
さらに、本発明の他の形態は、上述した課題を解決するため、シャフト2sに少なくとも一対の異極を有するマグネット部2mを設けたマグネットロータ部2と、マグネット部2mの外周面に対向する位置に固定して配した少なくとも一対のヨーク3p,3qを有するステータ部3と、コイルボビン4bに巻回したコイル4cによりヨーク3p,3qに磁極を発生させるコイルユニット部4とを備えてなるロータリソレノイドMに付設し、マグネットロータ部2の回動範囲Zrを規制するロータリソレノイドMの回動範囲規制機構1を構成するに際して、マグネット部2mの一部を径方向Frに突出させて一対のヨーク3p,3q間に位置させ、かつ各ヨーク3p,3qの周方向Ffにおける端辺3ps,3qs間を変位可能にするとともに、周方向Ffにおける幅Lsを回動範囲Zrに対応させて形成した係合部5と、各ヨーク3p,3qの端辺3ps,3qsにより又はこの端辺3ps,3qsの近傍で係合部5に当接して当該係合部5の位置を規制する一対の規制部6p,6qと、ケーシング部13の軸方向両端に有する一方の端面部13sに一方のヨーク3pを当接させ、かつ他方の端面部13tに他方のヨーク3qを当接させてなるステータ部3とを備えてなることを特徴とする。この場合、発明の好適な態様により、コイルボビン4bには、ヨーク3p,3qを軸方向Fsに押圧して端面部13s,13tに当接させる一対の押圧片部14p,14qを設けることができるとともに、ヨーク3p,3qの外側面に当接して当該ヨーク3p,3qの径方向Frにおける位置決めを行う一対の規制条部16p,16qを設けることができる。
このような構成を有する本発明に係るロータリソレノイドMの回動範囲規制機構1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) マグネット部2mの一部を径方向Frに突出させて一対のヨーク3pと3q間に位置させ、かつ各ヨーク3p,3qの周方向Ffにおける端辺3psと3qs間を変位可能にするとともに、周方向Ffにおける幅Lsを回動範囲Zrに対応させて形成した係合部5と、端辺3ps,3qsにより又はこの端辺3ps,3qsの近傍で係合部5に当接して位置を規制する一対の規制部6p,6qとを備えるため、係合部5が回動変位して規制部6p(又は6q)に接近した際には、レンツの法則により、係合部5及び/又はヨーク3p(又は3q)に渦電流が流れ、係合部5とヨーク3p(又は3q)間に発生する反発する力(磁極)により、係合部5を制動する作用が生じる。これにより、係合部5と規制部6p(又は6q)の衝突時の衝撃が緩和されるため、衝突時の振動による不安定な挙動が排除され、係合部5を安定に停止させることができる。しかも、規制部6p,6qを緩衝素材により構成する必要がないため、緩衝素材を用いた場合に発生する劣化や変形等に基づく規制位置の精度低下を防止することができる。
(2) 回動範囲規制機構1は、ロータリソレノイドMの内部に、いわばロータリソレノイドMと一体に設けるため、従来のように、別途の回動範囲規制機構をロータリソレノイドMの外部に付設する必要がない。したがって、ロータリソレノイドMを取付ける際に実質的に大型化してしまう不具合を回避できるとともに、部品点数の削減及び取付工数の削減による全体のコストダウンを図ることができる。
(3) ヨーク3p,3qの端辺3ps,3qsにより又はこの端辺3ps,3qsの近傍で係合部5に当接して位置を規制する一対の規制部6p,6qを設けたため、非通電時には、マグネット部2m(係合部5)が実質的にヨーク3p(又は3q)に当接することになる。したがって、係合部5(マグネット部2m)に対する十分な吸引力が確保され、停止時(非通電時)における保持力を高めることができる。
(4) マグネット部2mは、シャフト2sが貫通し、かつ係合部5を一体形成した磁性体部11と、この磁極体部11における係合部5の反対側に固定したマグネット本体部12とを備えて構成したため、磁極体部11とマグネット本体部12は異なる素材により形成でき、例えば、マグネット本体部12にはマグネットとして機能させるに適した素材を選定できるとともに、係合部5には機械的強度等を含む係合機能に適した素材を選定できる。
(5) 規制部6p,6qは、ヨーク3p,3qの周方向Ffの端辺3ps,3qsを直接又は間接的に利用して構成したため、ヨーク3p,3qの周方向Ffの端辺3ps,3qsをそのまま利用でき、別途の追加部品や追加加工が不要となり、極めて容易に実施できるとともに、停止時(非通電時)における保持力を最大にすることができる。
(6) 好適な態様により、コイルボビン4bに、ヨーク3p,3qを軸方向Fsに押圧して端面部13s,13tに当接させる一対の押圧片部14p,14qを設ければ、各押圧片部14p,14qにより各ヨーク3p,3qを押圧できるため、各ヨーク3p,3qを、対応する各端面部13s,13tに確実に圧接させることができ、もって、接触に伴う無用な損失増加を回避できる。
(7) 好適な態様により、ヨーク3p,3qの外側面に当接して当該ヨーク3p,3qの径方向Frにおける位置決めを行う一対の規制条部16p,16qを設ければ、マグネットロータ部2に対する各ヨーク3p,3qの位置決めを正確かつ容易に行うことができるとともに、各ヨーク3p,3qの固定を確実に行うことができる。
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る回動範囲規制機構1を備えるロータリソレノイドMの構成について、図1〜図9を参照して説明する。
2は、マグネットロータ部であり、シャフト2sと、このシャフト2sの中間位置に設けたマグネット部2mを備える。マグネット部2mは、シャフト2sの径方向Frに突出することにより後述する一対のヨーク3pと3q間に位置する係合部5を一体形成した磁性体部11と、この磁極体部11における係合部5の反対側に固着(固定)した永久磁石を用いたマグネット本体部12を備える。この場合、シャフト2sにマグネット部2mを取付ける際には、まず、図1及び図2に示すように、シャフト2sの中間位置に径方向の貫通孔を設け、この貫通孔に断面C形のスプリングピン21を装着する。次いで、スプリングピン21を装着したシャフト2sを、磁性体部11に設けた挿通孔に挿通させるとともに、図1に示すように、スプリングピン21の両端を当該磁性体部11の一端側に設けたU形係合孔11u…に係合させ、マグネット部2mの回り止めを行う。そして、この状態でインサート成形を行い、マグネット部2mを合成樹脂層22により被覆する。この際、マグネット本体部12の外面(磁極)と係合部5は、図2に示すように、合成樹脂層22から露出させる。
例示のマグネット部2mは、図9に示すように、マグネット本体部12における磁性体部11との固着面がS極、この固着面の反対側(外面)がN極となり、この結果、磁性体部11の先端、即ち、係合部5の先端側にS極が発生する。これにより、シャフト2sに一対の異極(N極とS極)を有するマグネット部2mを設けたマグネットロータ部2が構成されるとともに、マグネット部2mの一部を径方向Frに突出させた係合部5が設けられる。このように、マグネット部2mを、シャフト2sが貫通し、かつ係合部5を一体形成した磁性体部11と、この磁極体部11における係合部5の反対側に固定したマグネット本体部12により構成すれば、磁極体部11とマグネット本体部12は異なる素材により形成できるため、例えば、マグネット本体部12にはマグネットとして機能させるに適した素材を選定できるとともに、係合部5には機械的強度等を含む係合機能に適した素材を選定できる利点がある。
3は、ステータ部であり、マグネット部2mの外周面に対向する位置に固定して配した一対のヨーク3p,3qと、ロータリソレノイドMの外郭となるケーシング部13を備える。各ヨーク3p,3qとケーシング部13は、磁性材により形成する。一方のヨーク3pは、所定の厚さを有する矩形ブロックを、図2に示すように、周方向Ffに沿った円弧状に湾曲形成する。また、図7に示すように、ヨーク3pの軸方向Fsにおける一端を平坦端面3pfに形成するとともに、他端を傾斜端面3psに形成する。他方のヨーク3qもヨーク3pと同一形状を有するため、組付時には、二つのヨーク3p…を用意し、一方をヨーク3pとして使用するとともに、他方をヨーク3qとして使用する。この際、ヨーク3qはヨーク3pに対して軸方向の位置を反転させる。なお、ヨーク3qにおいて、3qfは平坦端面、3qsは傾斜端面をそれぞれ示す。
一方、ケーシング部13は、図7に示すように、一端に端面部13tを一体に有する円筒状のケーシング本体部13mと、このケーシング本体部13mの他端口を閉塞する平盤状のカバー部13cの組合わせにより構成する。これにより、カバー部13cは、ケーシング本体部13mの他端口を閉塞する部位が端面部13sとなり、この端面部13sよりも外側が取付部23,23(図3参照)となる。また、一方の端面部13sの中央にはシャフト2sの前側を回動自在に支持する軸受部15sを固定するとともに、他方の端面部13tの中央にはシャフト2sの後側を回動自在に支持する軸受部15tを固定する。なお、各軸受部15s,15tには、図1及び図3に示すように、外周面から径方向Frに突出する第一位置決め部15sx,15txを設けるとともに、この第一位置決め部15sx,15txに対して180〔゜〕反対側の外周面から径方向Frに突出する第二位置決め部15sy,15tyを設ける。この場合、第一位置決め部15sx,15txは、後述する規制用凹部33にそれぞれ嵌合して位置決めされるとともに、第二位置決め部15sy,15tyは、ヨーク3pと3q間に位置して、各ヨーク3p,3qに対する位置決めを行う。
4は、コイルユニット部であり、合成樹脂素材により一体形成したコイルボビン4bとこのコイルボビン4bにマグネットワイヤWを巻回して構成したコイル4cを備える。これにより、コイル4cへの通電により、ヨーク3p,3qに磁極(S極,N極)を発生させることができる。コイルボビン4bは、図3及び図4に示すように、筒状のボビン本体部25と、このボビン本体部25の両端に一体形成した鍔状(フランジ状)のボビンバリア部26s,26tを備える。また、ボビン本体部25の内面における180〔゜〕対向位置には、各ヨーク3q,3pをそれぞれ保持するヨーク保持部27p,27qを設ける。この場合、ヨーク保持部27p,27qは、ヨーク保持部27pと27qに跨がって設けた規制凸部31と、各ヨーク保持部27p,27q側にそれぞれ設けた規制壁部32p,32qを有する。これにより、各ヨーク3p,3qを各ヨーク保持部27p,27qに装着した際には、規制凸部31と規制壁部32pにより、一方のヨーク3pの周方向Ff位置が規制されるとともに、規制凸部31と規制壁部32qにより、他方のヨーク3qの周方向Ff位置が規制される。
さらに、ヨーク保持部27p,27qには、ヨーク3p,3qを軸方向Fsに押圧して端面部13s,13tに当接(圧接)させる一対の押圧片部14p,14qをそれぞれ設けるとともに、ヨーク3p,3qの外側面に当接して当該ヨーク3p,3qの径方向Frにおける位置決めを行う一対の規制条部16p,16qをそれぞれ設ける。
一方の押圧片部14pは、図4及び図7に示すように、ボビン本体部25の一端側(一方のボビンバリア部26s側)における内周面から直角に突出する突出片部28pとこの突出片部28pの中央からボビンバリア部26sに至る加圧片部29pからなる。これにより、ヨーク保持部27pに対して他方のボビンバリア部26t側からヨーク3pの傾斜端面3ps側を挿入することができ、ヨーク3pをヨーク保持部27p内に挿入すれば、傾斜端面3psの中間位置に沿って突出片部28pの先端縁が線接触する。この際、ヨーク3pの平坦端面3pfは、ボビン本体部25におけるボビンバリア部26sから僅かに突出するように、ヨーク3pの軸方向Fsの長さを選定する。また、他方の押圧片部14qは、ボビン本体部25の他端側(他方のボビンバリア部26t側)における内周面から直角に突出する突出片部28qとこの突出片部28qの中央からボビンバリア部26tに至る加圧片部29qからなり、上述した押圧片部14p側と同様に構成する。
他方、一方の規制条部16pは、ヨーク保持部27pにおけるボビン本体部25の内周面に一体形成し、かつ離間した二つの規制凸条30p,30pにより構成する。これにより、ヨーク保持部27pにヨーク3pを挿入すれば、規制凸条30p,30pがヨーク3pの外側面に当接し、ヨーク3pに対して径方向Frの位置決めを行う。また、他方の規制条部16qは、ヨーク保持部27qにおけるボビン本体部25の内周面に一体形成し、かつ離間した二つの規制凸条30q,30qにより構成する。これにより、ヨーク保持部27qにヨーク3qを挿入すれば、規制凸条30q,30qがヨーク3qの外側面に当接し、ヨーク3qに対して径方向Frの位置決めを行う。
また、コイルボビン4bの内周面であって、規制壁部32pと32q間には、前述した係合部5の変位を許容し、かつ両側壁部がそれぞれ規制部6p,6qとして機能する規制用凹部33を形成する。この場合、図5に示すように、各規制部6p,6qの位置は、係合部5に対向するヨーク3p,3qの端辺3ps,3qsに対して僅かな間隔Lgだけ係合部5側に位置するように選定する。これにより、係合部5は、各ヨーク3p,3qの周方向Ffにおける端辺3psと3qs間を変位可能になるとともに、一対の規制部6p,6qは、各ヨーク3p,3qの端辺3ps,3qsの近傍で係合部5に当接して当該係合部5の位置を規制することができる。したがって、係合部5の周方向Ffにおける幅Ls(寸法及び形状を含む)を選定すれば、マグネットロータ部2の回動範囲Zrを設定することができる。このように、規制部6p,6qを、コイルボビン4bにより構成するようにすれば、両側壁面で係合部5を係止可能な規制用凹部33をコイルボビン4bに一体形成すれば足りるため、別途の追加部品が不要となり、極めて低コストに実施できる利点がある。
なお、規制部6p,6qは、図6に示すように、ヨーク3p,3qの周方向Ffの端辺3ps,3qsを直接又は間接的に利用して構成してもよい。この場合、端辺3ps,3qsを直接利用するとは、係合部5が直に端辺3ps,3qsに接触する場合であり、また、端辺3ps,3qsを間接的に利用するとは、図6に示すように、端辺3ps,3qsに緩衝又は保護を目的として薄いシート41p,41q等を貼着し、係合部5が端辺3ps,3qsに対して直に接触しないようにした場合である。このように、規制部6p,6qを、ヨーク3p,3qの周方向Ffの端辺3ps,3qsを直接又は間接的に利用して構成すれば、ヨーク3p,3qの周方向Ffの端辺3ps,3qsをそのまま利用できるため、別途の追加部品や追加加工が不要となり、極めて容易に実施できるとともに、停止時(非通電時)における保持力を最大にできる利点がある。
このような係合部5と規制部6p,6qの構成、即ち、マグネット部2mの一部を径方向Frに突出させて一対のヨーク3pと3q間に位置させ、かつ各ヨーク3p,3qの周方向Ffにおける端辺3psと3qs間を変位可能にするとともに、周方向Ffにおける幅Lsを回動範囲Zrに対応させて形成した係合部5と、端辺3ps,3qsにより又はこの端辺3ps,3qsの近傍で係合部5に当接して位置を規制する一対の規制部6p,6qとの構成は、本実施形態に係る回動範囲規制機構1を構成する。
他方、本実施形態に係る回動範囲規制機構1を備えるロータリソレノイドMは、次のように組立てることができる。まず、コイルボビン4bにコイル4cを巻回したコイルユニット部4を用意し、コイルボビン4bのヨーク支持部27p,27qにそれぞれヨーク3p,3qを装着する。即ち、一方のヨーク3pは、傾斜端面3ps側を、ヨーク支持部27pに対してボビンバリア部26t側から挿入するとともに、他方のヨーク3qは、傾斜端面3qs側を、ヨーク支持部27qに対してボビンバリア部26s側から挿入する。これにより、図7に示すように、ヨーク3pの傾斜端面3psの中間位置は突出片部28pの先端縁に線接触するとともに、ヨーク3pの外側面は規制凸条30p…に当接する。また、ヨーク3qの傾斜端面3qsの中間位置は突出片部28qの先端縁に線接触するとともに、ヨーク3qの外側面は規制凸条30q…に当接する。
次いで、ヨーク3p,3qを装着したコイルユニット部4を、図1に示すように、ケーシング本体部13mの内部に収容するとともに、さらに、マグネットロータ部2をボビン本体部25の内部に収容し、シャフト2sの後側をケーシング本体部13mに予め固定した軸受部15tに挿通させることにより、マグネット部2mをヨーク3pと3q間に位置させる。次いで、カバー部13cをケーシング本体部13mの他端口の縁部に装着し、当該他端口を閉塞する。この際、シャフト2sの前側をカバー部13cに予め固定した軸受部15sに挿通させる。そして、ケーシング本体部13mの他端口の縁部に一体形成した複数の押止片(不図示)を略直角に折曲してカバー部13cを押さえ、ケーシング本体部13mとカバー部13cを一体化させる。
ところで、ヨーク3pの平坦端面3pfは、ボビン本体部25のボビンバリア部26tから僅かに突出しているため、ケーシング本体部13mにカバー部13cを固定した際には、ヨーク3pは端面部13tにより押圧され、平坦端面3pfは、ボビンバリア部26tの位置まで押し込まれる。即ち、平坦端面3pfは、図8に示すように、矢印Pv方向に押し込まれ、押圧片部14pにおける突出片部28pの先端縁に傾斜端面3psが圧接する。この際、傾斜端面3psの圧接により、ヨーク3pは、矢印Pvh方向(シャフト2s側)にも押圧され、ヨーク3pの内側面が軸受部15sの外周面にも圧接する。また、ヨーク3q側においても同様の作用が生じ、ヨーク3qは端面部13sにより押圧され、平坦端面3qfは、ボビンバリア部26sの位置まで押し込まれ、押圧片部14qにおける突出片部28qの先端縁に傾斜端面3qsが圧接するとともに、ヨーク3qの内側面は軸受部15tの外周面にも圧接する。このように、コイルボビン4bに、ヨーク3p,3qを軸方向Fsに押圧して端面部13s,13tに当接させる一対の押圧片部14p,14qをそれぞれ設ければ、各押圧片部14p,14qにより各ヨーク3p,3qを押圧できるため、各ヨーク3p,3qを、対応する各端面部13s,13tに確実に圧接させることができ、もって、接触に伴う無用な損失増加を回避できる。
さらに、ヨーク3pの外側面は、規制条部16pにおける規制凸条30p,30pに当接(圧接)して位置決めされるとともに、ヨーク3pの内側面は軸受部15s,15tの外周面に当接(圧接)して位置決めされる。また、ヨーク3q側においても同様の作用が生じ、ヨーク3qの外側面は、規制条部16qにおける規制凸条30q,30qに当接(圧接)して位置決めされるとともに、ヨーク3qの内側面は軸受部15s,15tの外周面に当接(圧接)して位置決めされる。このように、ヨーク3p,3qの外側面に当接して当該ヨーク3p,3qの径方向Frにおける位置決めを行う一対の規制条部16p,16qをそれぞれ設ければ、マグネットロータ部2に対する各ヨーク3p,3qの位置決めを正確かつ容易に行うことができるとともに、各ヨーク3p,3qの固定を確実に行うことができる。
次に、本実施形態に係る回動範囲規制機構1の動作を含むロータリソレノイドMの全体動作について、図9〜図11を参照して説明する。
今、係合部5は、図9に仮想線で示すように、ヨーク3q側に回動変位し、規制部6qに当接した状態にあるものとする。この場合、通電は解除されているが、係合部5を含むマグネット部2mの磁極は、それぞれ対面(対向)するヨーク3p,3qに吸引されて位置が保持されている。なお、マグネット部2mの磁極は、図9に示すように、係合部5がS極となり、係合部5の反対側に位置するマグネット本体12の外面がN極となる。
一方、この状態において、コイル4cに通電し、各ヨーク3p,3qに、図9に示す磁極、即ち、一方のヨーク3pにN極、他方のヨーク3qにS極を発生させれば、マグネット部2mとヨーク3p,3q間の異極同士は吸引し、同極同士は反発するため、マグネット部2mは、図9中、矢印Fm方向へ回動変位し、係合部5は、規制部6pに係止した実線で示す位置で停止する。この場合、コイル4cに対する通電時間は、図11で示すように、予め設定した一定時間であり、この一定時間が経過したなら通電は解除される。図11中、Vdは駆動電圧〔V〕、Idは駆動電流〔A〕をそれぞれ示すとともに、t1時点からt2時点までの区間が正方向の通電時間、t3時点からt4時点までの区間が逆方向の通電時間をそれぞれ示す。
ところで、係合部5が回動変位して規制部6pに接近した際には、レンツの法則により、係合部5及びヨーク3pに、図9に示す方向の渦電流iが流れ、係合部5とヨーク3p間に反発する力(磁極)が発生するため、発生した力(磁極)により、係合部5を制動する作用が生じ、この結果、係合部5と規制部6pの衝突時の衝撃が緩和される。即ち、シャフト2sの回動角には、図11に実線で示す回動角変化特性Piのように、衝突時の振動による不安定な挙動は発生せず、係合部5を安定に停止させることができる。この場合、係合部5を制動する作用が生じるため、従来の回動範囲規制機構における回動角変化特性Prに比べ、規制部6pに到達するまでは僅かに時間が長くなるものの、当接時には振動による不安定な挙動が排除される。本実施形態に係る回動範囲規制機構1の場合、わずかに振動が発生するとしても、その振動幅Qiの範囲は、0.1〔゜〕程度である。これに対して、従来の回動範囲規制機構では、振動が大きく、かつ長時間となり、その振動幅Qrの範囲は、3〔゜〕程度となる。このように、本実施形態に係る回動範囲規制機構1によれば、従来の回動範囲規制機構に対して、衝突時に発生する不安定な振動を、1/30程度まで大幅に低減させることができるとともに、僅かに振動が発生するとしても直ぐに収束するため、特に、高速の振分装置等に利用して好適となる。
また、係合部5が規制部6pに当接した状態であって、非通電時には、マグネット部2m(係合部5)が実質的にヨーク3pに当接することになる。即ち、係合部5とヨーク3p間には、図9に示すマグネット本体部12とヨーク3q間のようなクリアランスが生じないため、係合部5(マグネット部2m)に対する十分な吸引力が確保され、停止時(非通電時)における保持力を高めることができる。図10は、マグネットロータ部2の回動角P〔゜〕に対する単位体積あたりのトルクT×1015〔N・m/mm3〕の大きさを示しており、同図中、Toiは本実施形態に係る回動範囲規制機構1の非通電時のトルク変化特性、Torは従来の回動範囲規制機構の非通電時のトルク変化特性、Tmiは本実施形態に係る回動範囲規制機構1の30〔W〕通電時のトルク変化特性、Tmrは従来の回動範囲規制機構の30〔W〕通電時のトルク変化特性をそれぞれ示す。同図において、係合部5が規制部6p,6qに当接する回動角P〔゜〕は、20〔゜〕と−20〔゜〕となる。同図から明らかなように、非通電時における本実施形態に係る回動範囲規制機構1の単位体積あたりのトルクT(Toi)は、1.45×1015〔N・m/mm3〕となり、非通電時における従来の回動範囲規制機構の単位体積あたりのトルクT(Tor)は、0.3×1015〔N・m/mm3〕となる。したがって、本実施形態に係る回動範囲規制機構1では、従来の回動範囲規制機構に対して、単位体積あたりのトルクTの大きさ(保持力)を概ね5倍程度まで高めることができる。
さらに、本実施形態に係る回動範囲規制機構1は、ロータリソレノイドMの内部に、いわばロータリソレノイドMと一体に設けるため、従来のように、別途の回動範囲規制機構をロータリソレノイドMの外部に付設する必要がない。このため、ロータリソレノイドMを取付ける際に実質的に大型化してしまう不具合を回避できるとともに、部品点数の削減及び取付工数の削減による全体のコストダウンを図ることができる。また、規制部6p,6qを緩衝素材により構成する必要がないため、緩衝素材を用いた場合に発生する劣化や変形等に基づく規制位置の精度低下を防止することもできる。
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、ロータリソレノイドMの基本形態は、図1〜図7に示した形態に限定されるものではなく、ステータ部3の形態やコイルユニット部4の形態は、同様の機能を有する各種形態により実施できる。一方、一対の異極は、二極に限定されるものではなく、四極や六極など、その極数は限定されない。また、マグネット部2mは、係合部5を一体形成した磁性体部11とこの反対側に固定したマグネット本体部12により構成した場合を示したが、マグネット部2mの全体を一体化したマグネット(永久磁石)により構成する場合を排除するものではない。さらに、規制部6p,6qは、コイルボビン4b及びヨーク3p,3qを利用することなく別途の部材により構成し、別途追加的に設ける場合を排除するものではない。なお、押圧片部14p,14q及び規制条部16p,16qは、必ずしも設けることを要しない。したがって、無くてもよいし他の手段と置換してもよい。