JP5583586B2 - グリコール酸の生産のための固定化微生物ニトリラーゼの改善 - Google Patents

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Description

本発明は、有機酸合成及び微生物学の分野に関係する。より詳しくは、再水和時の、グリコロニトリルのグリコール酸への加水分解についてのニトリラーゼ活性を有する脱水酵素触媒の比活性を改善するための方法が、提供される。特に、ニトリラーゼ活性を有する酵素触媒をグルタルアルデヒドで前処理し、グルタルアルデヒド前処理細胞を固定化し、そして脱水の前に固定化細胞を化学的に架橋する方法が、提供される。再水和時に、前記酵素触媒は、前記プロセッシングなしで脱水及び再水和されるニトリラーゼ活性を有する酵素触媒と比較して、改善されたニトリラーゼ比活性を示す。
グリコール酸(HOCH2COOH;CAS登録番号は79−14−1である)は、カルボン酸のα−ヒドロキシ酸ファミリーの最も単純なメンバーである。その特性のために、それは、ポリグリコール酸(PGA)の作製におけるモノマーとして、及びパーソナルケア製品における成分として、井戸修復、皮革産業、石油及びガス産業、洗濯及び繊維産業における使用を含む広範囲の消費者及び産業用途について理想的である。グリコール酸はまた、さまざまな産業(乳及び食品加工器具洗浄剤、家庭及び施設用洗浄剤、産業用洗浄剤[輸送器具、石造、プリント回路基板、ステンレス鋼ボイラー及び加工器具、冷却塔/熱交換器用]、及び金属加工[金属酸洗い、銅光沢、エッチング、電気メッキ、電気研磨用]における洗浄剤の主成分である。ポリグリコール酸が、食品及び炭酸飲料を包装するためのガスバリヤ材として有用である(即ち、高い酸素バリヤ特性を示す)ことも報告されている(特許文献1)。しかし、グリコール酸の伝統的な化学合成では、使用前に除去されなければならないかなりの量の不純物が製造される。グリコール酸を商業的に製造する新しい技術、特に高純度かつ低費用でグリコール酸を製造するものは、産業によって熱心に受入れられるであろう。
微生物酵素触媒は、ニトリラーゼ(EC3.5.5.7)を使用して、ニトリル(例えば、グリコロニトリル)を対応のカルボン酸(例えば、グリコール酸)へ直接加水分解し得、ここで、対応のアミドの中間体製造は存在せず(等式1)、又はニトリルヒドラターゼ(EC4.2.1.84)及びアミダーゼ(EC3.5.1.4)酵素の組み合わせによって、ここで、ニトリルヒドラターゼ(NHアーゼ)が最初にニトリルをアミドへ変換し、次いでアミドが続いてアミダーゼによって対応のカルボン酸へ変換される(等式2):
Figure 0005583586
商業目的についてのニトリルのグリコール酸への酵素加水分解は、発酵によって高体積の酵素触媒を製造することを必要とする。体積の多くは、発酵ブロスの水分に起因し得る。前記高体積の発酵ブロスのために、酵素触媒を含む発酵ブロスを保管すること、及び多くの場合においてこれを輸送することは、ロジスティカルな問題及び経済上の問題の両方を有する。酵素触媒の保管及び輸送を容易にするためのある方法は、発酵ブロスから酵素触媒を単離し、酵素触媒を(例えば、カラゲナンゲル中における封入によって)固定し、固定化酵素触媒を脱水することである。固定化酵素触媒は、グリコール酸製造のための使用の前に、再水和され得る。しかし、脱水及び再水和は、しばしば、酵素活性の著しい低下を生じさせる。
固定化細胞触媒の脱水又は乾燥は、以前記載された。特許文献2は、乾燥固定化微生物ニトリラーゼの製造方法を記載しており、ここで、該ニトリラーゼを含有するロドコッカス・ロドクロス(Rhodococcus rhodochrous)NCIMB40757又はNCIMB408333細胞は、架橋ポリアクリルアミドビーズ中への固定化後に、それらの初期活性の少なくとも80%を保持し、ここで、得られた固定化細胞ニトリラーゼは、架橋ポリアクリルアミドビーズが60℃で12%湿度へ乾燥された後に、その初期固定化活性の少なくとも90%を保持する。非特許文献1は、アルギン酸カルシウム中における乳酸菌の固定化、得られた固定化細胞触媒の続いての凍結乾燥を記載しており、ここで、細胞の少なくとも72%が、凍結乾燥後に代謝活性を保持した。特許文献3は、共有結合的に固定されたセロビアーゼを含有するゼラチンビーズの脱水を記載しており、第6欄第9〜11行目において、アルギン酸カルシウム及びκ−カラゲナンビーズは、いったん脱水されると、一般的に再水和され得ないと述べている。
固定化酵素触媒の脱水又は乾燥及び続いての再水和について真上で記載された方法はいずれも、グルタルアルデヒド前処理細胞を用いて作製されなかった相当する再水和固定化酵素触媒と比較した場合の、再水和後の回収された酵素活性の改善、又は、得られた再水和酵素触媒が基質を生成物へ変換するための反応において使用される際の酵素活性の安定性の改善を報告していない。
脱水/再水和の場合などの、酵素触媒プロセッシングの結果としての酵素触媒活性の低下に加えて、グリコロニトリルのグリコール酸への酵素加水分解は、典型的に、実質的に純粋な形態のグリコロニトリルを必要とする。ホルムアルデヒド及びシアン化水素の水溶液を反応させることによってグリコロニトリルを合成する方法が、以前報告された(特許文献4、5及び6;等式3)。
Figure 0005583586
しかし、これらの方法は、かなりの精製(例えば、蒸留精製)を必要とする水性グリコロニトリル反応生成物を典型的に生じさせ、何故ならば、反応の不純物及び/又は副生成物(過剰な反応性ホルムアルデヒドを含む)の多くは、触媒活性の抑制(即ち、減少した比活性)を含んで、グリコロニトリルのグリコール酸への酵素的変換を妨げ得るためである。特に、ホルムアルデヒドは、アルギニン、システイン、ヒスチジン及びリジン残基の側鎖並びにN末端アミノ酸残基由来のアミノ基と反応することによってタンパク質において望ましくない修飾を作り得ることが周知である(非特許文献2)。触媒活性の抑制は、触媒の全体的な生産性(即ち、触媒1グラム当たりの形成されるグリコール酸の総グラム)を減少させ、全体的な方法に著しいコストを付加し、このため、化学合成と比較した場合、酵素による製造が経済的に実行不可能となり得る。従って、触媒の活性を減少させる望ましくない不純物から酵素活性を保護するに役立ち得る反応条件が、必要とされる。
グリコロニトリル合成反応の前にホルムアルデヒドを熱処理へ供することによって高純度グリコロニトリルを製造する方法が、報告された(特許文献7及び8;等式3)。しかし、グリコロニトリルは、ホルムアルデヒド及びシアン化水素へ可逆的に解離し得る。従って、グリコロニトリルの解離によって生成されるホルムアルデヒド及びシアン化水素の両方の望ましくない効果からニトリラーゼ活性を保護する必要性が存在するままである。
特許文献9はまた、ニトリル化合物をα−ヒドロキシ酸へ変換する際の急速な酵素触媒不活性化に関する同様の困難を記載している。具体的には、特許文献9は、α−ヒドロキシニトリル化合物が、解離平衡に従って、対応のアルデヒドへ部分的に解離することを提供している。これらのアルデヒドは、タンパク質への結合によって短時間内に酵素を不活性化し、このため、α−ヒドロキシニトリルから高生産性と共に高濃度でα−ヒドロキシ酸又はα−ヒドロキシアミドを得ることが困難になることが報告された(第2欄、第16〜29行)。アルデヒドの蓄積による酵素不活性化を防止する解決法として、リン酸イオン又は次亜リン酸イオンが反応混合物に添加された。同様に、特許文献10は、アルデヒドを隔離し酵素不活性化を防止するために、亜硫酸イオン、二亜硫酸イオン、又は亜ジチオン酸イオンを使用することを記載しているが、生成され蓄積されるα−ヒドロキシ酸の濃度は、このような添加物を使用することによってさえ、大抵の商業目的について十分ではないと結論付けている。
さらに、特許文献11は、α−ヒドロキシ酸生成物の低い蓄積が、解離アルデヒド蓄積による短時間内の酵素不活性化に関係していることを教示している。これらの発明者は、酵素活性が、対応のアルデヒド又はケトン(非特許文献3)と共に水中でα−ヒドロキシニトリルの部分分離において生成されるシアン化水素(非特許文献4)の存在下で阻害されることを示している。これらの発明者は、その酵素活性が、反応混合物にシアン化物物質を添加することによって改善され得る微生物を使用することによってアルデヒド誘発酵素不活性化の課題を扱っている。シアン化物物質の添加は、アルデヒド及びシアン化水素へのα−ヒドロキシニトリルの解離を制限した。この作戦はシステムへ利益を提供する一方、それは、上述したように、グリコロニトリルはシアン化水素及びホルムアルデヒドへ可逆的に解離することが公知であり、両方とも酵素触媒活性に負に影響することが公知である点において、グリコロニトリルのグリコール酸への変換における酵素不活性化に関連する一局面を扱うのみである。
ホルムアルデヒドの存在下でグリコロニトリルをグリコール酸へ変換する際のニトリラーゼ活性を有する酵素触媒の比活性を保護するための別の方法が開発され(参照により本明細書に組み入れられる同時係属中の米国出願第XX/XXXXXX号(CL3584)を参照のこと)、ここで、触媒活性及び安定性の著しい改善が、反応混合物へアミン保護剤を添加することによって、又は、アミン保護剤、例えば、PEI、ポリアリルアミン、PVOH/ポリビニルアミンなどから構成されているマトリクス中若しくは上にニトリラーゼ触媒を固定することによって、達成された。そのシステムにおいて、ホルムアルデヒドの存在下での触媒の比活性は改善されている。
上記手段の多くがグリコール酸についてのニトリラーゼ触媒生産性を改善したとしても、固定化微生物ニトリラーゼの初期酵素活性の著しい減少が、グリコロニトリルの加水分解についての反応における前記触媒の使用時に、例えば、触媒リサイクルを伴う連続バッチ反応において、又は、連続撹拌タンク反応(CSTR)若しくは固定床カラムリアクターを始動させる初期段階において、依然として一般的に観察された。グリコロニトリルの加水分解の間の初期ニトリラーゼ活性の著しい低下の問題は、カラゲナン中における固定化の前にグルタルアルデヒドで微生物触媒を前処理することによって、一部、扱われ(参照により本明細書に組み入れられる同時係属中の米国出願第XX/XXXXXX号(CL3888)に記載される通り)、ここで、著しくより高いパーセンテージの初期固定化微生物ニトリラーゼ比活性(触媒1グラム当たり1分当たりの加水分解されるグリコロニトリルのμmol)が、グリコロニトリルのグリコール酸(アンモニウム塩として)への加水分解の間、保持された。
特許文献12は、グルタルアルデヒド感受性酵素(例えば、チオール酵素(例えば、ニトリラーゼ)及び酵素分子の活性部位中又は活性部位の非常に近くにSH基を有する他のもの)が、グルタルアルデヒドなどのチオール反応性薬剤によって不活性化されることを開示している(第1欄、第46〜49行、及び第2欄、第50〜55行)。従って、グルタルアルデヒドでのニトリラーゼ活性を有する酵素触媒の前処理は、固定化前の微生物ニトリラーゼ活性の著しい減少を生じさせないことが予想外であっただけでなく、驚くべきことに、特に、固定化酵素触媒が脱水され、続いてグリコロニトリルのグリコール酸への加水分解のための使用前に再水和される場合に、グルタルアルデヒド前処理は、酵素触媒活性の利益になることが分かった。本発明の方法は、脱水/再水和工程の間の活性の著しい低下を防止し、グリコロニトリルのグリコール酸への変換についての再水和固定化酵素活性の続いての使用の間、酵素触媒活性の初期活性及び続いての安定性を有する再水和固定化酵素触媒を生じさせる。この利益は、本明細書に記載される方法中へ組み入られ、これは、再水和時のグリコール酸製造についての改善された比活性を有する酵素触媒を製造するための、脱水工程を含む、商業的方法についての必要性を扱うことを提供する。
従って、解決されるべき課題は、改善された比活性を伴うグリコロニトリルのグリコール酸への加水分解についてのニトリラーゼ活性を有する酵素触媒を製造するための商業的に実行可能な方法についての必要性である。より具体的には、使用前の脱水及び再水和に起因し、反応物の解離又は不純物による不活性化に起因する、酵素活性の低下を最小限にする、グリコロニトリルのグリコール酸への加水分解についてのニトリラーゼ活性を有する酵素触媒を使用するための商業的に許容される方法についての必要性がある。
WO2005/106005 A1 US5,998,180 US5,846,762 US2,175,805 US2,890,238 US5,187,301 US11/3143865 US11/314905 US5,508,181 US5,326,702 US6,037,155 US4,288,552
B.DeGiulio et al., World J.Microbiol.Biotechnol.21:739−746,(2005) Metz et al., J.Biol.Chem.,279(8):6235−6243(2004) Mowry, David T., Chemical Reviews,Vol.42,p189−283(1948) Asano et al., Agricultural Biological Chemistry,Vol.46,p1165−1174(1982)
本課題は、グリコロニトリルのグリコール酸への変換のための酵素触媒の再水和時及び使用時に改善された比活性を有する脱水固定化酵素触媒を生産するための方法を提供することによって解決され、該方法は、以下を含む:
(a)発酵によってニトリラーゼ活性を有する酵素触媒を生産する工程;
(b)該酵素触媒をグルタルアルデヒドで前処理する工程;
(c)場合により、グルタルアルデヒド前処理後に、重亜硫酸塩で未反応グルタルアルデヒドを不活性化する工程;
(d)(b)又は(c)から酵素触媒を回収し、該酵素触媒をカラゲナンに固定する工程;
(e)(d)の得られたカラゲナン固定化酵素触媒をグルタルアルデヒド及びポリエチレンイミンで架橋する工程;並びに
(f)工程(e)において生産された架橋固定化酵素触媒を脱水する工程。
本発明のさらなる局面は、水溶液中において、上記工程(f)の脱水固定化触媒を再水和することである。及びさらに、水溶液中のグリコロニトリルと前記再水和酵素触媒とを接触させ、それによってグリコール酸を生産すること。さらなる局面において、グリコール酸は、前記水溶液から回収される。
上記工程a)〜f)の方法によって製造される固定化酵素触媒は、グリコロニトリルのグリコール酸(アンモニウム塩として)への変換のために使用される際に、固定化、架橋、脱水及び再水和の前に酵素触媒のグルタルアルデヒド前処理なしに作製された固定化酵素触媒と比較して、著しくより高いパーセンテージのその初期非活性(触媒1グラム当たり1分当たりの加水分解されるグリコロニトリルのμmol)を保持している。
本発明の別の局面は、ニトリラーゼ活性を有する改善された酵素触媒としての脱水酵素触媒に関する。前記脱水酵素触媒は、再水和後に、その初期比活性の少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%を保持している。
図面、配列表、及び生物寄託の簡単な説明
本発明は、本出願を一緒に形成する図面、配列表、生物寄託、及び詳細な説明から、より十分に理解され得る。
パネルAは、種々のニトリラーゼ配列のCLUSTALWアライメント(デフォルトパラメータを使用するバージョン1.83)を示す図である。触媒システイン残基を囲む保存された触媒シグネチャー配列が、灰色シェーディングで強調されている。触媒トライアドを示すアミノ酸(Glu48、Lys130、及びCys164;アミノ酸配列 配列番号4に基づく番号付け)に下線が引かれている。 パネルAは、種々のニトリラーゼ配列のCLUSTALWアライメント(デフォルトパラメータを使用するバージョン1.83)を示す図である。触媒システイン残基を囲む保存された触媒シグネチャー配列が、灰色シェーディングで強調されている。触媒トライアドを示すアミノ酸(Glu48、Lys130、及びCys164;アミノ酸配列 配列番号4に基づく番号付け)に下線が引かれている。 パネルCは、種々のニトリラーゼ配列のCLUSTALWアライメント(デフォルトパラメータを使用するバージョン1.83)を示す図である。触媒システイン残基を囲む保存された触媒シグネチャー配列が、灰色シェーディングで強調されている。触媒トライアドを示すアミノ酸(Glu48、Lys130、及びCys164;アミノ酸配列 配列番号4に基づく番号付け)に下線が引かれている。 パネルDは、種々のニトリラーゼ配列のCLUSTALWアライメント(デフォルトパラメータを使用するバージョン1.83)を示す図である。触媒システイン残基を囲む保存された触媒シグネチャー配列が、灰色シェーディングで強調されている。触媒トライアドを示すアミノ酸(Glu48、Lys130、及びCys164;アミノ酸配列 配列番号4に基づく番号付け)に下線が引かれている。 パネルEは、種々のニトリラーゼ配列のCLUSTALWアライメント(デフォルトパラメータを使用するバージョン1.83)を示す図である。触媒システイン残基を囲む保存された触媒シグネチャー配列が、灰色シェーディングで強調されている。触媒トライアドを示すアミノ酸(Glu48、Lys130、及びCys164;アミノ酸配列 配列番号4に基づく番号付け)に下線が引かれている。 パネルFは、種々のニトリラーゼ配列のCLUSTALWアライメント(デフォルトパラメータを使用するバージョン1.83)を示す図である。触媒システイン残基を囲む保存された触媒シグネチャー配列が、灰色シェーディングで強調されている。触媒トライアドを示すアミノ酸(Glu48、Lys130、及びCys164;アミノ酸配列 配列番号4に基づく番号付け)に下線が引かれている。 パネルGは、種々のニトリラーゼ配列のCLUSTALWアライメント(デフォルトパラメータを使用するバージョン1.83)を示す図である。触媒システイン残基を囲む保存された触媒シグネチャー配列が、灰色シェーディングで強調されている。触媒トライアドを示すアミノ酸(Glu48、Lys130、及びCys164;アミノ酸配列 配列番号4に基づく番号付け)に下線が引かれている。
配列表
本明細書に添付された以下の配列の説明及び配列表は、37C.F.R.§1.821〜1.825に記載された特許出願におけるヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列の開示を規定する規則に従うものである。配列の説明は、参照により本明細書に組み入れられる、Nucleic Acids Research 13:3021−3030(1985)及びBiochemical Journal 219(No.2):345−373(1984)に記載されたIUPAC−IYUB標準に従って定義される通りヌクレオチド配列文字についての1文字表記及びアミノ酸についての3文字表記を含む。ヌクレオチド及びアミノ酸配列データについて使用される記号及び書式は、37C.F.R.§1.822に記載された規則に従う。
配列番号1は、ニトリラーゼ酵素の必須システイン残基を包含する触媒シグネチャーモチーフのアミノ酸配列である(式1)。
配列番号2は、ニトリラーゼ酵素の必須システイン残基を包含する好ましい触媒シグネチャーモチーフのアミノ酸配列である(式2)。
配列番号3は、大腸菌中において組換え発現を促進するTTGからATGへの開始コドンの変化を含むアシドボラクス・ファシリス(Acidovorax facilis)72Wニトリラーゼコード配列のヌクレオチド配列である。
配列番号4は、アシドボラクス・ファシリス72Wニトリラーゼの推定アミノ酸配列である(ATCC55746)。
配列番号5は、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)JM3ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)BAA02684.1)。
配列番号6は、ロドコッカス・ロドクロスJ1ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)Q03217)。
配列番号7は、ロドコッカス・ロドクロスK22ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)Q02068)。
配列番号8は、ノカルジア(Nocardia)・エスピーC−14−1ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)AAX18182.1)。
配列番号9は、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)RB50ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)NP_887662.1)。
配列番号10は、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)AAB60275.1及びAAA19627.1)。
配列番号11は、シネココッカス・エロンガタス(Synechococcus elongatus)PCC7942ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)YP_399857.1)。
配列番号12は、シネココッカス・エロンガタスPCC6301ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)YP_171411.1)。
配列番号13は、シネコシスティス(Synechocystis)・エスピーPCC6803ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)NP_442646.1)。
配列番号14は、シュードモナス・エントモフィラ(Pseudomonas entomophila)L48ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)YP_6090481.1)。
配列番号15は、ザイモモナス・モブリス(Zymomonas moblis)ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)YP_162942.1)。
配列番号16は、バシラス(Bacillus)・エスピーOxB−1ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)BAA90460.1)。
配列番号17は、コマモナス・テストステローニ(Comamonas testosteroni)ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)AAA82085.1)。
配列番号18は、シネココッカス(Synechococcus)・エスピーCC9605ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)YP_381420.1)。
配列番号19は、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)Pf
−5ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)YP_260015.1)。
配列番号20は、ノカルジア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)IFM10152ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)YP_119480.1)。
配列番号21は、アルカリゲネス・フェカリス1650ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)AAY06506.1)。
配列番号22は、シュードモナス・シリンガェ・ピーブイ・シリンガェ(Pseudomonas syringae pv. syringae)B728aニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)AAY35081.1)。
配列番号23は、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)・エスピーBTAilニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)ZP_00859948.1)。
配列番号24は、ロドコッカス・ロドクロスNCIMB11216ニトリラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)CAC88237)。
配列番号25は、ロドコッカス・ロドクロスATCC(商標)39484のアミノ酸配列である。
配列番号26は、残基位置201で単一アミノ酸置換を生じさせた(L201Q;Leu→Gln)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号27は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置201で単一アミノ酸置換(Leu201→Gln)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号26)の推定アミノ酸配列である。
配列番号28は、残基位置201で単一アミノ酸置換を生じさせた(L201A;Leu→Ala)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号29は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置201で単一アミノ酸置換(Leu201→Ala)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号28)の推定アミノ酸配列である。
配列番号30は、残基位置201で単一アミノ酸置換を生じさせた(L201C;Leu→Cys)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号31は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置201で単一アミノ酸置換(Leu201→Cys)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号30)の推定アミノ酸配列である。
配列番号32は、残基位置201で単一アミノ酸置換を生じさせた(L201T;Leu→Thr)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号33は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置201で単一アミノ酸置換(Leu201→Thr)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号32)の推定アミノ酸配列である。
配列番号34は、残基位置201で単一アミノ酸置換を生じさせた(L201G;Leu→Gly)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号35は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置201で単一アミノ酸置換(Leu201→Gly)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号34)の推定アミノ酸配列である。
配列番号36は、残基位置201で単一アミノ酸置換を生じさせた(L201H;Leu→His)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号37は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置201で単一アミノ酸置換(Leu201→His)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号36)の推定アミノ酸配列である。
配列番号38は、残基位置201で単一アミノ酸置換を生じさせた(L201K;Leu→Lys)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号39は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置201で単一アミノ酸置換(Leu201→Lys)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号38)の推定アミノ酸配列である。
配列番号40は、残基位置201で単一アミノ酸置換を生じさせた(L201N;Leu→Asn)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号41は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置201で単一アミノ酸置換(Leu201→Asn)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号40)の推定アミノ酸配列である。
配列番号42は、残基位置201で単一アミノ酸置換を生じさせた(L201S;Leu→Ser)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号43は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置201で単一アミノ酸置換(Leu201→Ser)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号42)の推定アミノ酸配列である。
配列番号44は、残基位置168で単一アミノ酸置換を生じさせた(F168K;Phe→Lys)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号45は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置168で単一アミノ酸置換(Phe168→Lys)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号44)の推定アミノ酸配列である。
配列番号46は、残基位置168で単一アミノ酸置換を生じさせた(F168M;Phe→Met)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号47は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置168で単一アミノ酸置換(Phe168→Met)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号46)の推定アミノ酸配列である。
配列番号48は、残基位置168で単一アミノ酸置換を生じさせた(F168T;Phe→Thr)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号49は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置168で単一アミノ酸置換(Phe168→Thr)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号48)の推定アミノ酸配列である。
配列番号50は、残基位置168で単一アミノ酸置換を生じさせた(F168V;Phe→Val)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号51は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置168で単一アミノ酸置換(Phe168→Val)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号50)の推定アミノ酸配列である。
配列番号52は、残基位置168で単一アミノ酸置換を生じさせた(T210A;Thr→Ala)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号53は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置210で単一アミノ酸置換(Thr210→Ala)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号52)の推定アミノ酸配列である。
配列番号54は、残基位置168で単一アミノ酸置換を生じさせた(T210C;Thr→Cys)コドン変化を含むA.ファシリス72Wニトリラーゼ突然変異体のヌクレオチド配列である。
配列番号55は、A.ファシリス72Wニトリラーゼの残基位置210での単一アミノ酸置換(Thr210→Cys)を含む突然変異ニトリラーゼ(配列番号54)の推定アミノ酸配列である。
配列番号56は、大腸菌株SS1001(ATCCPTA−1177)中において発現されたA.ファシリス72Wニトリラーゼのヌクレオチド配列である。
配列番号57は、大腸菌SS1001(ATCCPTA−1177)中において発現された突然変異A.ファシリス72Wニトリラーゼの推定アミノ酸配列である。
生物寄託
以下の生物寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の下に為された:
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本明細書において使用される場合、「ATCC」は、ATCC,10801 University Blvd.,Manassas,VA20110−2209,USAに所在のAmerican Type Culture Collection International Depository Authorityを指す。「国際寄託の名称」はATCCに寄託されている培養物に対するアクセッション番号である。
リストされた寄託物は、表示の国際寄託機関において少なくとも三十(30)年間保管され、それを開示する特許の付与で公衆に利用可能とされる。寄託物の利用可能性には、政府の行為によって付与された特許権の特例(derogation)において主題発明を実施するための許諾が構成要素とされることはない。
発明の詳細な説明
再水和時の、グリコロニトリルのグリコール酸への加水分解についてのニトリラーゼ活性を有する脱水・固定化・架橋酵素触媒の比活性を改善するための方法が、提供される。特に、ニトリラーゼ活性を有する酵素触媒をグルタルアルデヒドで前処理し、グルタルアルデヒド前処理細胞を固定し、並びに脱水の前に固定化細胞を化学的に架橋する方法が、提供される。再水和時に、グルタルアルデヒド前処理の固定化・架橋酵素触媒は、前記プロセッシングなしで脱水及び再水和されるニトリラーゼ活性を有する固定化架橋酵素触媒と比較して、改善されたニトリラーゼ比活性を示す。
定義:
本開示において、多くの用語及び略語が使用される。以下の定義が、別段の規定がない限り適用される。
本明細書において使用される場合、用語「含む」は、請求の範囲において言及されるような記載の特徴、整数、工程、又は構成要素の存在を意味するが、それは、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、工程、構成要素、又はそれらの群の存在又は付加を排除しない。
本明細書において使用される場合、使用される本発明の成分又は反応物の量を変える用語「約」は、例えば現実に濃縮物を作成するため又は溶液使用のために用いた典型的な測定及び液体取り扱い手順を通して;これらの手順におけるふとした誤りを通して;その組成物を作成し、又はその方法を実行するために使用される成分の製造、供給源、又は純度の差;などを通して、生じ得る数量の変化を指す。用語「約」はまた、特定の初期混合から生じる組成についての異なる平衡条件に起因して異なる量を包含する。用語「約」によって変えられているかどうかに関係なく、特許請求の範囲は、量の均等物を含む。一実施形態において、用語「約」は、報告される数値の10%以内、好ましくは、報告される数値の5%以内を意味する。
本明細書において使用される場合、用語「グリコロニトリル」は、「GLN」と略され、ヒドロキシアセトニトリル、2−ヒドロキシアセトニトリル、ヒドロキシメチルニトリル、及びCAS登録番号107−16−4の全ての他の同義語と同義である。
本明細書において使用される場合、用語「グリコール酸」は、「GLA」と略され、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシエタン酸、及びCAS登録番号79−14−1の全ての他の同義語と同義である。本方法によって製造されるグリコール酸は、プロトン化したカルボン酸及び/又は対応のアンモニウム塩の形であり得る。
本明細書において使用される場合、用語「グリコール酸アンモニウム」は、「NH4GLA」と略される。
本明細書において使用される場合、用語「グリコールアミド」は、アンモニアとグリコール酸との反応から誘導されるアミドであり、CAS登録番号598−42−5を有する化合物の全ての他の同義語を指す。
本明細書において使用される場合、用語「グリコリド」は、CAS登録番号502−97−6の化合物を指す。
本明細書において使用される場合、用語「ホルムアルデヒド」は、「FA」と略され、ギ酸アルデヒド、メチルアルデヒド、オキソメタン、及びCAS登録番号50−00−0の全ての他の同義語と同義である。市販のホルムアルデヒドは、いくらかのメタノールを含む(典型的に約1wt%〜約15wt%)、単量体ホルムアルデヒド(「遊離ホルムアルデヒド」)及びホルムアルデヒドの種々のオリゴマーの混合物から典型的に構成される。
本明細書において使用される場合、用語「シアン化水素」は、青酸、シアン化水素酸、及びCAS登録番号200−821−6の全ての他の同義語と同義である。
本明細書において使用される場合、用語「グルタルアルデヒド」は、「GA」と略され、ペンタンジアール、1,5−ペンタンジアール、1,5−ペンタンジオン、ジグルタリックアルデヒド、グルタラール、グルタルジアルデヒド、グルタル酸ジアルデヒド、グルタリックジアルデヒド、及びCAS登録番号111−30−8の全ての他の同義語と同義である。
本明細書において使用される場合、用語「重亜硫酸塩」又は「重亜硫酸ナトリウム」は、亜硫酸ナトリウム塩、亜硫酸一ナトリウム塩、亜硫酸水素ナトリウム(hydrogen sodium sulfite)、亜硫酸水素ナトリウム(hydrogen sulfite sodium)、亜硫酸一ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム(sodium hydrogen sulfite)、亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)、及びCAS登録番号7631−90−5の全ての他の同義語と同義である。
本明細書において使用される場合、用語「回収(すること)」は、本方法によって形成される生成物の単離、精製すること、又は移すことを意味する。反応混合物から生成物を単離し、精製する方法は、当技術分野においてよく知られており、選択的沈殿、結晶化、濾過、反応性溶媒抽出、イオン交換、電気透析、重合、蒸留、熱分解、アルコール分解、カラムクロマトグラフィー、及びそれらの組合せを含み得るが、これらに限定されない。一実施態様において、用語「回収(すること)」はまた、生成混合物(典型的に酵素触媒の濾別後)を別の反応に移し、1つ又はそれ以上の追加の生成物を作出することを含み得る。好ましい実施態様において、イオン交換が、グリコール酸を回収するために使用される。
本明細書において使用される場合、用語「酵素触媒」、「ニトリラーゼ触媒」又は「微生物細胞触媒」は、グリコロニトリルをグリコール酸及びアンモニアに変換するためのニトリラーゼ活性を特徴とする(即ち、ニトリラーゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む)触媒を指す。ニトリラーゼ酵素は、中間体として対応のアミドを形成させることなく、ニトリル(好ましくは、脂肪族ニトリル)を対応のカルボン酸へ直接変換する(等式1を参照のこと)。ニトリラーゼは、「触媒シグネチャー配列」又は「シグネチャー配列」と本明細書において呼ばれるシグネチャードメインを含む、当技術分野において公知のいくつかの保存されたシグネチャードメインを共有する。この領域は、必須システイン残基(例えば、配列番号4のCys164)を含む。従って、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドは、触媒ドメインシグネチャー配列(配列番号1)の存在によって同定され得る。好ましい実施態様において、シグネチャー配列は配列番号2である。酵素触媒は、全微生物細胞又は透過処理微生物細胞の形態であり得る。本明細書において使用される場合、「リサイクルされる酵素触媒」は、バッチ又は連続反応において酵素触媒として再使用される酵素触媒を指す。本明細書に記載される酵素触媒を製造又は使用する方法における工程に応じて、酵素触媒は、グルタルアルデヒド前処理、固定化、架橋、及び脱水又は再水和され得る。
本明細書において使用される場合、「アシドボラクス・ファシリス」及び「A.ファシリス」は交換可能に使用され、アクセッション番号55746(「ATCC55746」)を有するAmerican Type Culture Collection(国際寄託機関)に寄託されたアシドボラクス・ファシリス72Wを指す。グリコロニトリルをグリコール酸へ変換する際の改善されたニトリラーゼ活性を特徴とするA.ファシリス72W由来の突然変異ニトリラーゼが、これまで報告された(共有の米国特許第7,198,927号を参照のこと)。これらのA.ファシリス72W由来の突然変異ニトリラーゼの例は、配列番号27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、及び55によって与えられている。
本明細書において使用される場合、用語「エシェリキア・コリ(Escherichia coli)」及び「大腸菌(E. coli)」は、交換可能に使用される。組換え発現に適した大腸菌のいくつかの株が本明細書に記載され、国際寄託番号ATCC47076を有する大腸菌MG1655、国際寄託番号ATCC53911を有する大腸菌FM5、国際寄託番号ATCC27325を有する大腸菌W3110、国際寄託番号ATCC35695を有する大腸菌MC4100、及び国際寄託番号ATCC12435を有する大腸菌W1485を含むが、これらに限定されない。一実施態様において、適したエシェリキア・コリ株は、大腸菌FM5(ATCC53911)及び大腸菌MG1655(ATCC47076)を含む。
本明細書において使用される場合、用語「大腸菌SS1001」又は「SS1001」は、ATCCアクセッション番号PTA−1177を有するアシドボラクス・ファシリス72Wニトリラーゼを発現する形質転換大腸菌株を指す(米国特許第6,870,038号;参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。組換え発現された大腸菌SS1001ニトリラーゼ(配列番号57)は、野生型72Wニトリラーゼ配列(配列番号4)と比べて2つの小さな配列変化を含有する。開始コドンはGTGからATGへ変えられて組換え発現を促進し、アーチファクトがクローニング中に導入され、結果としてC末端近くに単一アミノ酸変化をもたらした(Pro367[CCA]→Ser[TCA])。
本明細書において使用される場合、用語「適した水性グリコロニトリル反応混合物」及び「適した水性反応混合物」は、その中においてグリコロニトリル及び酵素触媒が接触する、水及び材料(少なくとも1つのアミン保護剤を含む)を指す。適した水性反応混合物の成分は本明細書において与えられ、当業者は、本方法に適した成分変動の範囲を正しく認識する。
本明細書において使用される場合、用語「グリコール酸アンモニウム水溶液」、「グリコール酸アンモニウムを含む水溶液」、及び「グリコール酸アンモニウムの水溶液」は、典型的な酵素反応条件(即ち、約6〜約8のpH範囲)下でのグリコロニトリルの酵素加水分解によって生成されるグリコール酸アンモニウムを含む水溶液を記載するために使用される。グリコール酸アンモニウムの水溶液は、少なくとも約0.1質量パーセント(wt%)〜約99wt%グリコール酸アンモニウムの濃度でグリコール酸アンモニウムを含む。別の実施態様において、グリコール酸アンモニウムの水溶液は、少なくとも約10wt%〜約75wt%グリコール酸アンモニウムから構成される。さらなる実施態様において、グリコール酸アンモニウムの水溶液は、少なくとも約20wt%〜約50wt%グリコール酸アンモニウムから構成される。グリコール酸アンモニウムの水溶液のpHは、約2〜約12、好ましくは5〜約10、より好ましくは6〜約8であり得る。pHは、グリコール酸アンモニウム水溶液からグリコール酸(酸又は塩の形態)を回収することに関連するプロセス工程を開始する前に、必要に応じて調整され得る。
本明細書において使用される場合、用語「触媒生産性」及び「酵素触媒生産性」は、酵素触媒乾燥細胞質量の1グラム当たりの製造される生成物の総量を指す。本発明において、酵素触媒はニトリラーゼ酵素(EC3.5.5.7)を含み、形成される生産物はグリコール酸及び/又はグリコール酸アンモニウムである(反応のpHに依存)。一般的に、グリコール酸を製造することに従がう本方法は、本質的にpH中性条件下で行われて生産されるグリコール酸が主にグリコール酸の対応する塩の形態(即ち、グリコール酸アンモニウム)となる。一般的に、触媒リサイクルを伴うバッチ反応において、触媒活性は各々のリサイクル反応と共に減少する(酵素不活化)。
本明細書において使用される場合、用語「容積生産性」は、単位時間当たり反応混合物の体積当たりの製造されるグリコール酸のグラムとして表現される、反応におけるグリコール酸の容積生産を指す。典型的に、容積生産性は、グリコール酸グラム/L/hとして表現される。
用語「ニトリラーゼ活性」又は「比活性」は、グリコロニトリルをグリコール酸(又は対応のグリコール酸アンモニウム)へ変換する場合のタンパク質の単位質量(例えば、ミリグラム)、乾燥細胞質量、又はビーズ質量(固定化触媒)当りの酵素活性を指す。ニトリラーゼ活性の比較は、乾燥細胞質量又はビーズ質量に比例して測定された。
本明細書において使用される場合、用語「酵素活性の1単位」又は「ニトリラーゼ活性の1単位」又は「U」は、規定温度(例えば、25℃)で1分当たりグリコール酸生成物1μmolの製造に必要とされる酵素活性の量(GLA U/g乾燥細胞質量又はビーズ質量)と定義される。
本明細書において使用される場合、用語「相対的ニトリラーゼ活性」、「改善されたニトリラーゼ活性」、及び「ニトリラーゼ活性の相対的改善」は、基準(対照)ニトリラーゼ活性の倍数(又は分数)として表現されるニトリラーゼ活性を指す。本明細書に記載されるニトリラーゼは、天然アシドボラクス・ファシリス72Wニトリラーゼで観察されるニトリラーゼ活性に比べてニトリラーゼ活性の有意な改善を示す。相対的ニトリラーゼ活性の「有意な改善」は、同一の反応条件下での対照のニトリラーゼ活性と比べて少なくとも1.5倍高いニトリラーゼ活性の改善である。別の実施形態において、改善は、同一の反応条件下での対照のニトリラーゼ活性と比べ少なくとも2倍高いニトリラーゼ活性である。さらなる実施形態において、改善は、同一の反応条件下での対照のニトリラーゼ活性と比べ少なくとも4倍高いニトリラーゼ活性である。
本明細書において使用される場合、用語「初期反応速度」は、指定反応条件下でのグリコロニトリルのグリコール酸への変換の速度の測定であり、ここで反応速度の測定は反応混合物へのグリコロニトリルの初期添加のときに開始し、ここで反応速度はある期間にわたって測定され、ここでグリコロニトリルの濃度は反応の経過の間、約50ミリモル(mM)を上回ったままである。反応速度は単位時間当りに生産されるグリコール酸の濃度の変化として測定される(例えば、モルグリコール酸/L/分、又はmMグルコール酸/時)。
本明細書において使用される場合、用語「初期比活性の改善された保持」は、酵素触媒の1g乾燥細胞質量当たり1分当たりの生産されるグリコール酸のマイクロモルとして、又は固定化架橋酵素触媒1g当たり1分当たりの生産されるグリコール酸のマイクロモルとして測定される、脱水及び再水和に続く記載の反応条件下でのグリコロニトリルのグリコール酸への変換中の、両方ともニトリラーゼ活性を有する、グルタルアルデヒド前処理・固定化・架橋酵素触媒と非グルタルアルデヒド前処理の固定化・架橋酵素触媒との比較を指し、ここで、再水和に続く第1又は「初期」反応において測定される比活性が、1又はそれ以上の続いての反応について、非グルタルアルデヒド前処理の固定化・架橋酵素触媒についてよりもグルタルアルデヒド前処理・固定化・架橋酵素触媒についてより高い程度で保持されている。最も注目に値する改善は、本明細書において記載されるように、触媒リサイクルを伴う1又はそれ以上の続いてのバッチ反応において測定される、初期バッチ反応直後の反応について保持される活性の量についてである。第2の注目に値する改善は、本明細書において記載されるように、脱水及び再水和されたグルタルアルデヒド前処理の固定化・架橋酵素触媒の乾燥細胞質量1g当たりグリコール酸少なくとも40gの製造後に、連続撹拌タンクリアクター(CSTR)中、固定床栓流リアクター中、又は流動床若しくは半流動床中で、反応を実行する過程の間に保持される活性の量についてである。
本明細書において使用される場合、用語「組換え生物」、「形質転換宿主細胞」、「形質転換体」、「トランスジェニック生物」、及び「形質転換微生物宿主」は、異種又は外来DNAで形質転換されている宿主生物を指す。本発明の組換え生物は、活性ニトリラーゼ酵素をコードする外来コード配列又は遺伝子を発現する。「形質転換」は、宿主生物へのDNA断片の導入を指す。導入されたDNA断片は、宿主生物中の染色体に又は染色体外に(即ち、ベクターによって)組込まれ得る。本明細書で使用される場合、用語「形質転換カセット」は、通常はプラスミドの一部として、宿主細胞中に挿入するために便利に配置された一連の遺伝要素を含有するDNAの特異的断片を指す。本明細書で使用される場合、用語「発現カセット」は、宿主における遺伝子発現の増強も可能にする、通常はプラスミドの一部として、宿主細胞中に挿入するために便利に配置された一連の遺伝要素を含有するDNAの特異的断片を指す。
本明細書において使用される場合、用語「核酸断片」及び「核酸分子」語は、全遺伝子、コード配列、及び/又はコード配列に先行する(5’、上流)若しくはこれに続く(3’、下流)調節配列をコードし得る、DNA分子を指す。一局面において、本核酸分子は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」は、特定のタンパク質を発現する核酸分子を指す。本明細書において使用される場合、それは、コード配列に先行する調節配列(5’非コード配列)及びこれに続く調節配列(3’非コード配列)を含む場合及び含まない場合がある。「キメラ遺伝子」は、天然において一緒には見られない調節及びコード配列を含む天然遺伝子ではない任意の遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる起源由来である調節配列及びコード配列、又は同一の起源由来であるが、天然において見られるものと異なる様式で配置された調節配列及びコード配列を含み得る。「内在性遺伝子」は、生物のゲノム中におけるその天然の位置における天然遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、宿主生物には通常見られないが、遺伝子導入によって宿主生物中へ導入される遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然生物中に挿入された天然遺伝子、又はキメラ遺伝子を含み得る。「導入遺伝子」は、形質転換手順によってゲノム中へ導入されている遺伝子である。
本明細書において使用される場合、用語「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。本明細書において使用される場合、「適した調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、内、又は下流(3’非コード配列)に位置し、かつ関連コード配列の転写、RNAプロセッシング若しくは安定性、又は翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセッシング部位、エフェクター結合部位、及びステムループ構造を含み得る。
「プロモーター」は、コード配列又は機能性RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般的に、コード配列はプロモーター配列の3’に位置している。プロモーターは、それらの全体が天然遺伝子から誘導され得、又は、天然において見られる種々のプロモーター由来の種々の要素から構成され得、又は、合成DNAセグメントを含みさえし得る。大抵の細胞型において大抵の時間に又は大抵の環境条件下で遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。特定の化合物又は環境条件の存在下でのみ遺伝子に発現させるプロモーターは、一般的に、「誘導性プロモーター」と呼ばれる。大抵の場合、調節配列の厳密な境界は完全に規定されていないため、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得る。
本明細書において使用される場合、用語「機能可能に連結した」は、一方の配列の機能が他方によって影響されるような、単一核酸分子における核酸配列の結合(association)を指す。例えば、プロモーターは、それがそのコード配列の発現に影響を与えることが可能である(即ち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)場合、コード配列と機能可能に連結されている。コード配列は、センス又はアンチセンス方向で調節配列に機能可能に連結され得る。
本明細書において使用される場合、用語「3’非コード配列」は、コード配列の下流に配置されたDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列(通常、真核生物に限定される)、及びmRNAプロセッシング又は遺伝子発現に影響を及ぼすことが可能な調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナル(通常、真核生物に限定される)は、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加に影響を及ぼすことによって特徴付けられる。
当業者は、所定のアミノ酸を特定するためにヌクレオチドコドンを使用することにおいて特定の宿主細胞によって示される「コドン−バイアス」を十分に知っている。従って、宿主細胞における改善された発現のために遺伝子を合成する場合、そのコドン使用が宿主細胞の好ましいコドンバイアスを反映するように遺伝子を設計することが望ましい。配列情報が入手可能である宿主細胞由来の遺伝子の調査によって、そのコドンバイアスが決定され得る。コドン最適化は当技術分野においてよく知られており、酵母(Outchkourov et al., Protein Expr Purif,24(1):18−24(2002))及び大腸菌(Feng et al., Biochemistry,39(50):15399−15409(2000))を含むがこれらに限定されない種々の系について記載されている。
ニトリラーゼ活性を有する酵素触媒
全てのニトリラーゼ(EC3.5.5.7)は、保存された触媒トライアド(Glu、Lys、及びCys)を共有する(Chauhan et al., Appl.Microbiol.Biotechnol.61:118−122(2003);Pace,H.and Brenner,C., Genome Biol.[online computer file]2(1):reviews0001.1−0001.9(2001))。全ての公知のニトリラーゼは、酵素活性部位に求核性システインを有し(Cowan et al., Extremophiles,2:207−216(1998);Pace,H.及びBrenner,C.,上記;並びにChauhanら,上記)、全てがチオール試薬による不活化に敏感である(1.0mM濃度の塩化銅、硝酸銀、酢酸水銀、又は塩化第二鉄は各々、A.ファシリス72Wニトリラーゼ酵素活性を大幅に減少させた)。システイン残基はまた、スルフィン酸へ不可逆的に酸化され得、酵素活性の低下が生じる。種々の不活化機構へのニトリラーゼ酵素の感受性にもかかわらず、固定化されたA.ファシリス72W細胞は、多数のリサイクル反応後、それらのニトリラーゼ活性の多くを保持することができ、頑健である(US6,870,038;US7,148,051;US7,198,927;及びChauhanら,上記)。A.ファシリス72Wニトリラーゼ由来のニトリラーゼ触媒もまた、α−ヒドロキシニトリル(即ち、グリコロニトリル)のα−ヒドロキシカルボン酸(即ち、グリコール酸)への変換を触媒することが示されている(US6,383,786;US6,416,980;及びUS7,198,927を参照のこと)。
A.ファシリス72Wニトリラーゼと他の細菌ニトリラーゼとの配列比較が報告されている(US6,870,038;Chauhanら,上記)。72Wニトリラーゼは、アミノ末端付近に16アミノ酸領域(配列番号4のアミノ酸残基40〜55)と必須システイン残基を含有する12アミノ酸触媒領域(配列番号4のアミノ酸残基160〜171)とを含むいくつかの保存的シグネチャードメインを有する。この必須システイン残基(配列番号4のCys164)が、保存されたグルタミン酸(配列番号4のGlu48)及びリジン残基(配列番号4のLys130)と共に、全てのニトリラーゼ中に見られる触媒トライアドモチーフを形成する(Pace,H.及びBrenner,C.,上記)。
触媒トライアド残基の各々を囲む領域、特に、触媒システイン残基を囲む領域は、高度に保存されている。必須触媒システイン残基は、「触媒シグネチャーモチーフ」又は「シグネチャーモチーフ」と呼ばれる高度に保存された領域で位置する。従って、本方法は、式1によって定義される触媒シグネチャーモチーフを含む任意のニトリラーゼの酵素活性を保護するために有用である(太字は、厳密に保存されたアミノ酸残基を示し、イタリック体の残基は、最小の変動性[即ち、3又はそれ以下のアミノ酸残基の最小の変動]を示すものであり、触媒システイン残基には下線が引かれている):
式1(配列番号1)
Figure 0005583586
式中、
Xaa1=Ala又はGly;
Xaa2=Leu、Val、又はAla;
Xaa3=Ala、Asn、Ile、Cys、Val、又はGln;
Xaa4=His又はAsn;
Xaa5=Leu、Tyr、Phe、Ala、Met、Lys、Val、Thr、又はArg;
Xaa6=Asn、Gln、Met、Leu、又はSer;
Xaa7=Pro又はThr;及び
Xaa8=Leu又はVal。
好ましい実施態様において、式1のニトリラーゼシグネチャーモチーフは、Xaa1=Ala又はGly;Xaa2=Leu;Xaa3=Ala、Asn、Ile、Cys、Val、又はGln;Xaa4=His;Xaa5=Leu、Tyr、Phe、Ala、Met、Lys、Val、Thr又はArg;Xaa6=Ser、Gln、Asn、又はMet;Xaa7=Pro;及びXaa8=Leuであり;以下によって示される触媒シグネチャーモチーフが生じる:
Figure 0005583586
対応の触媒シグネチャーモチーフ配列の配列及び位置を含む、ニトリラーゼの例を、表1に提供する。
Figure 0005583586
Figure 0005583586
一実施態様において、ニトリラーゼ触媒は、アシドボラクス、ロドコッカス、ノカルジア、バチルス、及びアルカリゲネスからなる群より選択される属より単離された、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む。一実施態様において、ニトリラーゼ触媒は、アシドボラクス及びロドコッカスからなる群より選択される属より単離された、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含む。
別の実施態様において、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドは、アシドボラクス・ファシリス72W(ATCC55746)に由来するか、又は、アシドボラクス・ファシリス72Wニトリラーゼ(配列番号4)若しくは配列番号51によって示されるA.ファシリス72W由来酵素に実質的に類似しているポリペプチド(ニトリラーゼ活性を有する)である。
一実施態様において、ニトリラーゼ触媒は、ニトリラーゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを発現するように形質転換された微生物宿主細胞である。一実施態様において、形質転換宿主細胞は、コマモナス・エスピー、コリネバクテリウム(Corynebacterium)・エスピー、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)・エスピー、ロドコッカス・エスピー、アゾトバクター(Azotobacter)・エスピー、シトロバクター(Citrobacter)・エスピー、エンテロバクター(Enterobacter)・エスピー、クロストリジウム(Clostridium)・エスピー、クレブシエラ(Klebsiella)・エスピー、サルモネラ(Salmonella)・エスピー、ラクトバチルス(Lactobacillus)・エスピー、アスペルギルス(Aspergillus)・エスピー、サッカロミセス(Saccharomyces)・エスピー、ヤロウイア(Yarrowia)・エスピー、ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)・エスピー、ピキア(Pichia)・エスピー、クリベロミセス(Kluyveromyces)・エスピー、カンジダ(Candida)・エスピー、ハンゼヌラ(Hansenula)・エスピー、デュナリエラ(Dunaliella)・エスピー、デバリオミセス(Debaryomyces)・エスピー、ムコール(Mucor)・エスピー、トルロプシス(Torulopsis)・エスピー、メチロバクテリア(Methylobacteria)・エスピー、バシラス・エスピー、エシェリキア・エスピー、シュードモナス・エスピー、リゾビウム(Rhizobium)・エスピー、及びストレプトミセス(Streptomyces)・エスピーからなる群より選択される。好ましい実施態様において、微生物宿主細胞は、バシラルス・エスピー、シュードモナス・エスピー、及びエシェリキア・エスピーからなる群より選択される。好ましい実施態様において、触媒は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドの1つ又はそれ以上を組換え発現するエシェリキア・コリ宿主細胞である。
別の実施態様において、ニトリラーゼ触媒は、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドを含み、ここで、ニトリラーゼ活性を有する該ポリペプチドは、配列番号51に対して少なくとも60%同一性、好ましくは配列番号51に対して少なくとも70%同一性、なおより好ましくは配列番号51に対して少なくとも80%同一性、なおより好ましくは配列番号51に対して少なくとも90%同一性、最も好ましくは配列番号51に対して少なくとも95%同一性を有する。
A.ファシリス72Wニトリラーゼ由来の触媒を含む、種々の供給源由来のニトリラーゼ活性を有するいくつかの触媒の裏付けのある実施例が、本明細書で開示される。アシドボラクス・ファシリス72Wニトリラーゼ酵素由来の種々の突然変異体が、当技術分野において報告された(US特許7,148,051及びUS7,198,927)。
一実施態様において、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、及び57からなる群より選択される。別の実施態様において、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドは、4、24、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、及び57からなる群より選択される。別の実施態様において、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドは、4、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、及び57からなる群より選択される。別の実施態様において、ニトリラーゼ活性を有するポリペプチドは、4、24、25、及び51からなる群より選択される。別の実施態様において、ニトリラーゼ触媒は、配列番号51のポリペプチドを含む。
アシドボラクス・ファシリス72W(ATCC55746)ニトリラーゼ
A.ファシリス72Wニトリラーゼ(EC3.5.5.1)は、脂肪族又は芳香族ニトリルからカルボン酸を生産するための頑健な触媒である(WO01/75077;US6,870,038;及びChauhanら,上記)。それはまた、α−ヒドロキシニトリル(即ち、グリコロニトリル)のα−ヒドロキシカルボン酸(即ち、グリコール酸)への変換を触媒することも示された(US6,383,786及びUS6,416,980を参照のこと)。しかし、グリコロニトリルをグリコール酸へ変換する際に改善されたニトリラーゼ活性及び/又は安定性を有するニトリラーゼ触媒は(A.ファシリス72Wニトリラーゼと比較して)、グリコール酸を生産するコストを削減する。従って、改善されたニトリラーゼ触媒を使用してグリコール酸を生産する方法は、グリコール酸を生産するコストを削減するために有用であり、しかし、A.ファシリス72Wニトリラーゼは、上記に詳述された前記改善されたニトリラーゼと同様に、本明細書における方法の目的のための酵素触媒である。
微生物触媒の産業的生産
本明細書に記載される酵素触媒の商業的生産が望まれる場合、種々の培養方法が使用され得る。発酵操作は、当技術分野においてよく知られた方法である、バッチ、フェドバッチ、又は連続様式で行われ得る(Thomas D.Brock in Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,Second Edition(1989)Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA,(1989);Deshpande,Mukund V., Appl.Biochem.Biotechnol.36(3):227−234(1992))。
古典的なバッチ培養方法は閉鎖システムであり、ここで、培地の組成物は、培養の開始時にセットされ、培養プロセスの間、人為的な変更へ供されない。従って、培養プロセスの開始時に、培地に所望の生物が接種され、増殖及び代謝活性が、システムに何も添加することなく生じることが許される。しかし、一般的に、「バッチ」培養は炭素源の添加に関してバッチであり、しばしばpH及び酸素濃度などの因子を制御する試みが為されている。バッチシステムにおいて、システムの代謝産物及びバイオマス組成物は培養が終了するまで一定に変化する。バッチ培養内で、細胞は、静止遅滞期から高増殖対数期へ、最終的に静止期へ和らぎ、ここで、増殖速度は減少又は停止する。未処置の場合、静止期の細胞は最終的に死滅する。対数期における細胞は、最終生成物又はあるシステムにおいては中間体の製造の大半を担う。静止期又は対数期後製造は、他のシステムで得ることができる。
標準バッチシステムの変形物は、フェドバッチシステムである。フェドバッチ培養方法もまた、本発明において適しており、培養が進行につれて共に基質が除々に添加されることを除き、典型的なバッチシステムを含む。フェドバッチシステムは、異化代謝産物抑制が細胞の代謝を阻害する傾向がある場合、及び培地において限られた量の基質を有することが望ましい場合に、有用である。フェドバッチシステムにおける実際の基質濃度の測定は困難であり、従ってpH、溶存酸素、及びCO2など排ガスの分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチ及びフェドバッチ培養方法は、一般的であり、当技術分野においてよく知られており、例は、Brock(上記)及びDeshpande(上記)において確認され得る。
ニトリラーゼ活性を有する本酵素触媒の商業的製造はまた、連続培養によっても達成され得る。連続的培養は開放システムであり、ここで、規定の培養培地が連続的にバイオリアクターに供給され、等量の馴化培地がプロセッシングのために同時に除去される。連続培養は、一般的に、一定の高液相密度で細胞を維持し、ここで、細胞は主に対数期増殖にある。又は、連続培養は、固定化細胞で行なわれ得、ここで、炭素及び栄養が連続的に添加され、有益な生成物、副産物、又は廃棄物が連続的に細胞マスから取り出される。細胞固定化は、天然及び/又は合成材料から構成される広範囲の固体支持体を使用して達成され得る。
連続又は半連続培養は、細胞増殖又は最終細胞濃度に影響を及ぼす1つの因子又は任意の数の因子の調節を可能にする。例えば、1つの方法は、炭素源また窒素レベルなどの制限栄養を固定速度で維持し、全ての他のパラメータを加減することを可能にする。他のシステムにおいて、培地濁度によって測定される細胞濃度が一定に保持されながら、増殖に影響を及ぼす多数の因子が連続的に変更され得る。連続的システムは、定常増殖条件を維持しようとし、従って培地が除去されることによる細胞消失は、培養における細胞増殖速度に対してバランス化されなければならない。連続的培養方法のために栄養及び増殖因子を調節する方法、及び細胞形成の速度を最大限にするための技術は、工業微生物学の当技術分野においてよく知られており、さまざまな方法がBrock(上記)によって詳述されている。
本発明における発酵培地は、適した炭素基質を含有しなければならない。適した基質は、グルコース及びフルクトースなどの単糖類、ラクトース又はスクロースなどの二糖類、デンプン又はセルロースなどの多糖類、又はそれらの混合物、並びにチーズホエーパーミエート、コーンスティープリカー、テンサイ糖蜜、及び大麦モルトなどの再生可能原料からの非精製混合物を含み得るが、これらに限定されない。従って、本発明において使用される炭素源は、多種多様の炭素含有基質を包含し得、微生物の選択によってのみ限定されることが意図される。
固定化前の酵素触媒のグルタルアルデヒド前処理
グルタルアルデヒドでの酵素触媒発酵培養物の処理は、培養物中の微生物を死滅させる便利な方法であり得、従って生きた組換え培養物に関連する取り扱い、貯蔵及び輸送についての封じ込め及び安全性問題を回避する。グルタルアルデヒドでの前処理、又は重亜硫酸塩処理が続くグルタルアルデヒド前処理が、懸濁液及び固定化形態の細胞中におけるニトリラーゼ活性を保存し得ることが、今回、発見された。
酵素触媒のグルタルアルデヒド前処理でのニトリラーゼ活性の保存は、時間、温度、グルタルアルデヒド濃度、pH、並びに、グルタルアルデヒドと相互作用する培地中のアンモニア及び他のアミン(例えば、アミノ酸及びペプチド)等の阻害生産物の濃度によって影響される。好ましいグルタルアルデヒド前処理方法は、高密度発酵(100〜150 OD550)由来の細胞を水中5〜10wt%グルタルアルデヒドで処理し、これは好ましくは50mg〜500mgグルタルアルデヒド/L−minでの適切な混合と共に送達され、より好ましくは50mg〜200mgグルタルアルデヒド/L−minでの適切な混合と共に送達され、最も好ましくは50mg〜100mgグルタルアルデヒド/L−minでの適切な混合と共に送達され、結果として約3g〜約5gグルタルアルデヒド/L(約0.025g〜約0.042gグルタルアルデヒド/OD550)、より好ましくは約3.6g〜約5gグルタルアルデヒド/L(約0.030g〜約0.042gグルタルアルデヒド/OD550)の最終濃度をもたらす。グルタルアルデヒド前処理培養物は、約1〜5時間、発酵槽中に保持され得る。次いで、重亜硫酸ナトリウムの10wt%水溶液が、残存するグルタルアルデヒドを不活性化するために、1g/Lで、場合により添加される。
発酵ブロス又は細胞懸濁液中の酵素触媒のグルタルアルデヒド前処理について好ましいpHは、pH5.0〜9.0、より好ましくはpH5.0〜8.0、さらにより好ましくはpH5.0〜7.0、なおより好ましくはpH5.0〜6.0、最も好ましくはpH5.0〜5.5である。グルタルアルデヒド前処理後の残存するグルタルアルデヒド濃度は、典型的に低く、10〜200ppmの範囲内であり、約1g/Lの最終濃度への重亜硫酸ナトリウムの添加によって、上述のように不活性化され得る。グルタルアルデヒド及び重亜硫酸塩前処理は、ニトリラーゼ活性に対して有意な有害効果を有さないことがわかった。グルタルアルデヒド又はグルタルアルデヒド/重亜硫酸塩前処理細胞懸濁液は、場合により5〜10℃に冷却され、水又は適した保存緩衝液によって場合により洗浄され(細胞懸濁液又は発酵ブロスの濃縮及び再希釈による)、残存する重亜硫酸塩及び未反応のグルタルアルデヒドが除去される。
グルタルアルデヒド前処理酵素触媒の固定化及び化学的架橋
酵素触媒の固定化のための方法は、広く報告されており、当業者によく知られている(Methods in Biotechnology,Vol.1:Immobilization of Enzymes and Cells;Gordon F.Bickerstaff,Editor;Humana Press,Totowa,NJ,USA;1997)。A.ファシリス72Wニトリラーゼ触媒の固定化も、以前報告された(US6,870,038)。
さらに、カラゲナン中における固定化及び固定化酵素触媒の引き続いてのグルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋のための方法が続き(US6,870,038に開示される通りに、及びUS6,551,804Bに詳細に記載される通りに;これらは、参照により本明細書に組み入れられる)、しかし、当業者は、固定化及び架橋を達成するためのバリエーションを認識し容易に適用する。前記バリエーションは本明細書において考えられており、本方法の範囲内にある。さらに、固定化及び化学的架橋のために使用される成分の量又は濃度は、酵素触媒の量及びタイプ並びに酵素触媒の発酵製造に応じて変化する。当業者は、これらの因子を認識し、固定化及び化学的架橋手順を適宜調節する。グルタルアルデヒド及びポリエチレンイミンでの架橋に関して、US6,551,804(上記)は、アルギネート固定化細胞を化学的に架橋するための方法及び手順を記載している。前記説明は、カラゲナン固定化細胞についても同様に本明細書において適用される。
グルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋カラゲナン固定化微生物酵素触媒の脱水/再水和
上述したように、本出願において扱われる微生物ニトリラーゼ触媒の使用に関する特定の問題は、酵素触媒の保管及び出荷である。ニトリラーゼ活性を有する酵素触媒の保管及び出荷についての懸念の局面は、該物質の体積及び経時での該物質の酵素活性の不活性化に伴う問題を含む。カラゲナン中に固定し、続いてグルタルアルデヒド及びポリエチレンイミンで架橋すると、得られた固定化微生物ニトリラーゼ触媒は、約90質量%水であり、該触媒を、典型的に、等質量の水性緩衝液中に5℃で保存した。固定化微生物ニトリラーゼ触媒中に存在する水の量の減少、及び該触媒を保存するために使用した水性緩衝液の除去は、使用前に出荷及び保存される必要があった触媒及び関連の緩衝液の体積を減らし、さらには、グリコール酸製造の経済を著しく改善する。
グルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋固定化酵素触媒の脱水は、空気中での脱水、不活性ガス流中での脱水、不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン)パージ無し又は有りでの真空オーブン中での脱水、又は凍結乾燥(フリーズドライ)を含むが、これらに限定されない、当業者に公知の任意の方法によって達成され得る。脱水についての温度は、好ましくは約5℃〜約60℃の範囲、より好ましくは約15℃〜約50℃の範囲、最も好ましくは約20℃〜約40℃の範囲であり得る。得られる脱水ビーズは、それらの初期湿質量の約91%までを失い得る(約5%乾燥細胞質量微生物ニトリラーゼ含有細胞から構成されたビーズで始まる場合)。脱水された固定化細胞触媒は、空気中又は不活性雰囲気下において、好ましくは−25℃〜35℃、好ましくは5℃〜25℃の範囲の温度で保存され得る。脱水された固定化細胞触媒は、脱水されたビーズを水中に、又は適した水性緩衝液、例えば、0.10Mグリコール酸アンモニウム溶液(pH7.3)中に置くことによって、再水和され得、再水和温度は、好ましくは約5℃〜約35℃である。得られる再水和されたビーズは、グリコロニトリルからのグリコール酸の製造についての反応において直接使用され得、又は、使用されるまで約5℃〜約35℃で再水和液体中において保存され得る。
ニトリラーゼ触媒を使用してのグリコロニトリルのグリコール酸への加水分解
グリコロニトリルのグリコール酸(酸及び/又は対応のアンモニウム塩の形態)への酵素的変換は、以下に記載される適した反応条件下で(即ち、あるpH範囲、温度、濃度などで、水性反応混合物中において)、ニトリラーゼ活性を有する酵素触媒、固定化酵素触媒、又は架橋固定化酵素触媒を接触させることによって行われ得る。一実施態様において、組換え微生物細胞全体が、グルタルアルデヒド前処理され、カラゲナン中に固定化され、架橋され、脱水され、再水和されると、得られた酵素触媒は、グリコロニトリルのグリコール酸への変換について直接使用され、又は、固定化されていない細胞は、中空繊維膜カートリッジ若しくは限外濾過膜を使用してバルク反応混合物とは別に維持され得る。第2の実施態様において、組換え微生物細胞全体は、ポリアクリルアミドゲル中に固定化され、得られた酵素触媒は、グリコロニトリルのグリコール酸への変換について直接使用される。
水性反応混合物中の酵素触媒の濃度は、酵素触媒の比活性に依存し、所望の反応速度を得るために選択される。加水分解反応において触媒として使用される微生物細胞の湿細胞質量は、典型的に、総反応体積1mL当り湿細胞0.001グラム〜0.250グラム、好ましくは、1mL当り湿細胞0.002グラム〜0.050グラムの範囲である。総反応体積の体積当たり記載のwt%の湿細胞が、以前に記載された(上記)ように作製された固定化酵素触媒の形態で反応混合物中に存在し得、ここで、固定化酵素触媒の総質量のパーセンテージとしての湿細胞の質量は、固定化酵素触媒の作製方法から分かる。
グリコロニトリル加水分解反応の温度は、反応速度及び酵素触媒活性の安定性の両方を制御するために選択される。反応の温度は、反応混合物の凝固点よりわずかに上(およそ0℃)〜約65℃の範囲であり得、好ましい反応温度の範囲は約5℃〜約35℃である。酵素触媒懸濁液は、蒸留水中に、又は約5.0〜約10.0、好ましくは約5.5〜約8.0、より好ましくは約5.5〜約7.7、最も好ましくは約6.0〜約7.7の反応の初期pHを維持する緩衝水溶液中に脱水固定化細胞を懸濁することによって、調製され得る。反応の進行とともに、反応混合物のpHは、対応のニトリル官能性からのカルボン酸のアンモニウム塩の形成に起因して変化し得る。反応は、pH制御なしにグリコロニトリルの変換を完了するように実行され得、又は、適した酸又は塩基が、pHを維持するために反応の経過にわたって添加され得る。
グリコロニトリルは、25℃で、全ての部分において水と完全に混和性であることがわかった。基質(即ち、α−ヒドロキシニトリル)の可溶性がまた水相における溶液の温度及び/又は塩濃度(緩衝液又はグリコール酸アンモニウムとしても公知の生成物グリコール酸アンモニウム塩)に依存するような反応条件が選ばれる場合、反応混合物は、最初は2相から構成され得る:酵素触媒及び溶解α−ヒドロキシニトリルを含有する水相、及び有機相(非溶解α−ヒドロキシニトリル)。反応が進行するとともに、α−ヒドロキシニトリルは水相に溶解し、最終的に単一相の生成混合物が得られる。反応はまた、酵素加水分解反応速度とほぼ等しい速度で反応混合物へα−ヒドロキシニトリルを添加することによって実行され得、それによって単一相の水性反応混合物を維持し、高い出発材料濃度で酵素の基質阻害という潜在的な問題を回避する。
グリコール酸は、プロトン化したカルボン酸及び/又はその対応のアンモニウム塩の混合物として、生成混合物中に存在し得(生成混合物のpHに依存;グリコール酸のpKaは約3.83である)、生成混合物中に追加として存在し得る緩衝液と共にカルボン酸の塩としてさらに存在し得る。典型的に、生成されるグリコール酸は、主に、アンモニウム塩の形態である(グリコロニトリル加水分解反応のpHは、典型的に、約5.5〜約7.7である)。グリコール酸生成物は、プロトン化したカルボン酸として、又は、必要に応じて、カルボン酸の塩として、反応混合物から単離され得る。
グリコロニトリルの完全変換時の生成混合物中におけるグリコール酸の最終濃度は、0.001Mからグリコール酸生成物の溶解度限度までの範囲であり得る。一実施態様において、グリコール酸の濃度は、約0.10M〜約5.0Mの範囲である。別の実施態様において、グリコール酸の濃度は、約0.2M〜約3.0Mの範囲である。
グリコール酸は、イオン交換、電気透析、反応性溶媒抽出、重合、熱分解、アルコール分解、及びそれらの組合せを含むがこれらに限定されない、種々の技術を使用して、酸又は対応の塩の形態で回収され得る。
さらに、量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値のリストとして与えられる場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関係なく、任意の範囲上限又は好ましい値と任意の範囲下限又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲が本明細書に挙げられている場合、別段の記述がない限り、範囲はその終点、並びに範囲内の全ての整数、及び分数を含むものとする。本発明の範囲は、範囲を定義する際に挙げられた特定の値に限定されることを意図するものではない。
一般的な方法
本発明の好ましい実施態様を示すために、以下の実施例を提供する。以下の実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技術を示し、従ってその実施についての好ましいモードを構成するとされ得ることが、当業者によって正しく認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、多くの変更が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、開示される特定の実施態様において為され、同様又は類似の結果を依然として得ることができることを正しく認識すべきである。
細菌培養物の維持及び増殖に適した材料及び方法は、当技術分野においてよく知られている。以下の実施例における使用に適した技術は、Manual of Methods for General Bacteriology(1994)(Phillipp Gerhardt,R.G.E.Murray,Ralph N.Costilow,Eugene W.Nester,Willis A.Wood,Noel R.Krieg and G.Briggs Phillips,eds.), American Society for Microbiology,Washington,DC.)、又はThomas D.Brock, Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,(1989)Second Edition,(Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA)に示されているように見出し得る。酵素触媒を固定化する方法は、Bickerstaff,G.F.(上記)に見出し得る。
ゲノムDNA調製、PCR増幅、DNAのクローニング用の所望の末端を作成させるためのエンド及びエキソヌクレアーゼによるDNA修飾、ライゲーション、並びに細菌形質転換のために必要とされる手順は、当技術分野においてよく知られている。本明細書において使用される標準的な組換えDNA及び分子クローニング技術は、当技術分野においてよく知られており、Maniatis,上記;及びT.J.Silhavy, M.L.Bennan,and L.W.Enquist, Experiments with Gene Fusions,(1984) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring,NY;及びAusubel,F.M.et al., Current Protocols in Molecular Biology,(1994−1998) John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkによって説明されている。
全ての試薬及び材料は、別段の特定がない限り、Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI)、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)、又はSigma/Aldrich Chemical Company(St.Louis,MO)から得た。
明細書における略語は、以下の通り、測定の単位、技術、性質、又は化合物に対応する:「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」又は「hr」は時間を意味し、「d」はg/mLでの密度を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「wt」は質量を意味し、「wt%」は質量パーセントを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを意味し、「O.D.」は指定波長での光学密度を意味し、「dcw」は乾燥細胞質量を意味し、「U」はニトリラーゼ活性の単位を意味し、「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味し、「DTT」はジチオスレイトールを意味する。ニトリラーゼ活性の1Uは、グリコロニトリル1μmol/minの加水分解に相当する。
分析方法
HPLC分析
別段の註記がない限り、以下のHPLC方法を使用した。反応生成混合物を以下のHPLC方法によって分析した。反応混合物のアリコート(0.01mL)を水1.50mLに添加し、HPLC(HPX87Hカラム、30cm×7.8mm;0.01N H2SO4移動相;50℃で1.0mL/分流れ;注入体積10μL;RI検出器、分析時間20分)によって分析した。Aldrichから購入した市販のグリコロニトリルを使用して一連の濃度でのグリコロニトリルについて前記方法を較正した。
定量的13C NMR分析
定量的13C NMRスペクトルを、400MHzで操作するVarian Unity Inova分光計(Varian,Inc.,Palo Alto,CA)を使用して得た。10mm NMRチューブ中に反応生成物3.0mL及びD2O 0.5mLを入れることによって、サンプルを調製した。13C NMRスペクトルは、典型的には、100ppm、128Kポイント、及び90度パルス(56dbのトランスミッタ出力でpw90=10.7マイクロ秒)に配置されたトランスミッタを用いて26KHzのスペクトル幅を使用して取得した。最も長い13C T1(23秒)は、GLNニトリル炭素に関連し、総リサイクル時間を、この値の10倍よりも大きく設定した(リサイクル遅延d1=240秒、取得時間at=2.52秒)。360スキャンのシグナル平均化は、26.3時間の総実験時間を与えた。核オーバーハウザー増強(Nuclear Overhauser Enhancement)(NOE)を、取得時間(at)の間にのみWaltz調節1Hデカップリングをゲートオンすることによって抑制した。
実施例1
大腸菌MG1655/pSW138−168Vの発酵
大腸菌MG1655/pSW138−168Vの種培養物を、発酵槽の接種の前に、振盪(300rpm)しながら30℃で6〜10時間(OD550=1〜2)、1mL当たりアンピシリン0.1mgが補われたLB培地500mL中において増殖させた。大腸菌MG1655/pSW138−168Vニトリラーゼ株の増殖は、グルコース、アンモニア、及び塩を含むミネラル培地を使用する14−L Braun Biostat C発酵槽(B.Braun Biotech International Gmbh,Melsungen,Germany)においてであり、誘導についてはラクトースを使用した。プレ滅菌発酵槽培地(7.5L)を表2に記載する。ポスト滅菌添加物は、濾過滅菌微量元素(表3)、アンピシリン0.1mg/mL、カザミノ酸2g(Difco)/L、グルコース4g/L、及び500mL種培養物を含む。
発酵セットポイントを表4に記載する。NH4OH(40%w/v)及びH3PO4(20%w/v)をpH制御のために使用した。酸素要求の増加に伴って最初は上昇するように設定された撹拌で、続いての通気で、溶存酸素濃度を空気飽和の25%に制御した。ラクトース誘導を用いて使用した発酵供給プロトコルを表5に与える。グルコースが5g/Lを超えて蓄積した場合、グルコース供給速度を減少させた。40〜56時間後、発酵ブロスを5〜10℃に冷却し、細胞を遠心分離によって採取した。細胞ペーストを凍結し、−70℃で保存した。細胞ペーストをNIT60(1910 GLN U/g dcw)と命名した。
Figure 0005583586
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実施例2
GA/PEI架橋カラゲナンビーズの大腸菌MG1655/pNM18−168Vの固定化
迅速に撹拌しながら、カラゲナン12g(FMC GP911)を、50℃で脱イオン化蒸留水228gへ徐々に添加し、得られた混合物を、カラゲナンが完全に溶解するまで80℃へ加熱し、得られた溶液を撹拌しながら52℃に冷却した。撹拌子を備えた別のビーカー中、凍結大腸菌MG1655/pNM18−168V細胞83.2g(25.2% dcw)を、約25℃で0.35M Na2HPO4 84.8g(pH7.3)に添加し、細胞が懸濁されるまで混合し、次いでデオキシリボヌクレアーゼI溶液(12,500U/mL DNase(Sigma) 10μL/細胞懸濁液100mL)を添加した。細胞懸濁液を、連続的に230ミクロン及び140ミクロンNupro TFストレーナーエレメントフィルターを通して濾過し、撹拌しながら50℃に加熱した。撹拌しながら、50℃の大腸菌MG1655/pNM18−168V細胞懸濁液160.0gを、52℃の前記カラゲナン溶液に添加し、得られた細胞/カラゲナン懸濁液を、47℃で、電気的に加熱された20ゲージ針を通してポンピングし、約37〜38℃で撹拌しながら0.25M KHCO3(pH=7.3)中にドリップし;針を通しての流速を5〜8mL/分に設定した。得られたビーズを、撹拌しながら室温で1時間この同一の緩衝液中で硬化させ、0.25M炭酸水素カリウム(pH7.3)中に保存した。
固定化細胞/カラゲナンビーズの化学的架橋を、水中25%グルタルアルデヒド(GA)(Sigma M 752−07)0.5gを0.25M炭酸水素カリウム48mL(pH7.3)中に懸濁されたビーズ20gへ添加し、室温で1時間撹拌することによって行った。次いで、ビーズの懸濁液に、水中12.5wt%ポリエチレンイミン(PEI、BASF LUPASOL PS)2.0gを添加し、ビーズ懸濁液をさらに18時間室温で撹拌した。GA/PEI架橋ビーズを、懸濁液から回収し、0.25M炭酸水素カリウム48mL(pH7.3)中15分間2回撹拌し、次いで5℃で1.0M炭酸水素アンモニウム(pH7.3)中に保存した。グリコロニトリルのグリコール酸(アンモニウム塩として)への変換用の触媒として使用する前に、ビーズを室温で0.1Mグリコール酸アンモニウム180mL(pH7.3)で15分間2回洗浄し、1.0M炭酸水素アンモニウム(pH7.3)保存緩衝液を除去した。得られた固定化細胞触媒をNIT60と同定した。
実施例3
グルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋カラゲナン固定化大腸菌MG1655/pSW138−F168V形質転換体の脱水/再水和
実施例2に記載される通りに調製したグルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋カラゲナン固定化大腸菌MG1655/pSW138−F168V形質転換体ビーズを、24時間、窒素パージしながら、35℃で、真空オーブン(176mmHg)中脱水した。最初の(脱水されていない)ビーズ質量に対する脱水ビーズ質量の比率は、0.0914であった。脱水ビーズを、続いて、18時間、5℃又は25℃のいずれかにおいて、20倍(質量で)の0.10Mグリコール酸アンモニウム溶液(pH7.3)中に脱水ビーズを置くことによって、再水和した。得られた再水和ビーズを、9倍(質量で)の0.10Mグリコール酸アンモニウム溶液(pH7.3)で2回洗浄し、次いで計量し;最初の(脱水されていない)ビーズ質量に対する再水和ビーズ質量の比率は、5℃で再水和されたビーズについては0.210であり、最初のビーズ質量に対する再水和ビーズ質量の比率は、25℃で再水和されたビーズについては0.212であった。
実施例4
脱水/再水和の前及び後のグルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋カラゲナン固定化大腸菌MG1655/pSW138−F168V形質転換体の比活性
グリコロニトリルのグリコール酸への変換についてのバッチ反応を、温度制御水浴中25℃で実行した。磁気撹拌子を備えた第1反応容器に、GA/PEI架橋大腸菌MG1655/pSW138−168V/カラゲナンビーズ8.0g(0.40g乾燥細胞質量;脱水/再水和なしで実施例2に記載した通りに調製)、グリコール酸アンモニウム水溶液6.0mL(4.0M、pH7.0)、及び脱イオン化蒸留水21.7mLを仕込んだ。磁気撹拌子を備えた第2反応容器に、再水和されたGA/PEI架橋大腸菌MG1655/pSW138−168V/カラゲナンビーズ1.71g(0.41g乾燥細胞質量;35℃で脱水し5℃で再水和して実施例3に記載した通りに調製)、グリコール酸アンモニウム水溶液6.0mL(4.0M、pH7.0)、及び脱イオン化蒸留水28.0mLを仕込んだ。磁気撹拌子を備えた第3反応容器に、再水和されたGA/PEI架橋大腸菌MG1655/pSW138−168V/カラゲナンビーズ1.70g(0.40g乾燥細胞質量;35℃で脱水し25℃で再水和して実施例2に記載した通りに調製)、グリコール酸アンモニウム水溶液6.0mL(4.0M、pH7.0)、及び脱イオン化蒸留水28.0mLを仕込んだ。次いで、各反応容器に、撹拌しながら同時に、水中60.8wt%グリコロニトリル(GLN)3.50mL(3.75g)(40.0mmol GLN、0.320mmolホルムアルデヒド;0.7wt%グリコール酸で安定化)を添加し、水酸化アンモニウム水溶液0.80mL(1.875wt%NH3)を添加した(最終pH7.5)。反応サンプル(0.100mL)を、GLN添加後の所定の時点で取り出し、水0.100mL、6.0N HCl 0.010mL、及び水中0.25M n−プロパノール0.200mL(HPLC外部標準)と混合し、混合物を遠心分離し、得られた上清をHPLCによって分析し、初期反応速度及び触媒比活性(U/g dcw)を測定した(表6)。
Figure 0005583586
実施例5
固定化前のグルタルアルデヒドでの大腸菌MG1655/pSW138−168Vの前処理
200L発酵を行い、大腸菌MG1655/pSW138−168V細胞を含有するブロスを生産し、細胞を、続いて、固定化前にインサイチュでグルタルアルデヒドで前処理した。酵母抽出物(Ambrex695、5.0g/L)、K2HPO4(10.0g/L)、KH2PO4(7.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.0g/L)、(NH42SO4(4.0g/L)、MgSO4七水和物(1.0g/L)及びクエン酸第二鉄アンモニウム(0.10g/L)を含有する種培地0.5Lを2L振盪フラスコに仕込むことによって、プレ種培養物を先ず調製した。培地のpHを6.8へ調整し、培地をフラスコ中滅菌した。ポスト滅菌添加物は、グルコース(10mL、50wt%)及びアンピシリン1mL(25mg/mL)を含んだ。プレ種培地に、20%グリセリン中の大腸菌MG1655/pSW138−168Vの凍結ストック培養物1mLを接種し、35℃及び300rpmで培養した。種培養物を、KH2PO4(3.50g/L)、FeSO4七水和物(0.05g/L)、MgSO4七水和物(2.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.90g/L)、酵母抽出物(Ambrex695,5.0g/L)、Biospumex153K消泡剤(0.25mL/L、Cognis Corporation)、NaCl(1.0g/L)、CaCl2二水和物(10g/L)、及びNIT微量元素溶液(10mL/L)を含有する培地8Lを含む14L種発酵槽(Braun)に約2 OD550で移した。微量元素溶液は、クエン酸一水和物(10g/L)、MnSO4水和物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO4七水和物(0.5g/L)、ZnSO4七水和物(0.2g/L)、CuSO4五水和物(0.02g/L)及びNaMoO4二水和物(0.02g/L)を含有した。ポスト滅菌添加物は、グルコース溶液120g(50%w/w)及びアンピシリン16mLストック溶液(25mg/mL)を含んだ。
溶存酸素(dO)濃度を、空気飽和の25%に制御した。dOを、先ずインペラー撹拌速度(400〜1400rpm)によって、後で通気速度(2〜10slpm)によって制御した。pHは6.8に制御した。NH4OH(29%w/w)及びH2SO4(20%w/v)をpH制御のために使用した。温度を35℃で制御し、上部圧力は0.5barであった。培養物を200L Biostat−D Braun発酵槽に約6 OD550で移した。使用した培地は種発酵槽と同一であり、初期ワーキング体積は140Lであり、50%w/wグルコースを8g/Lで仕込んだ。発酵をバッチ運転として始め、グルコースが消耗されると(<0.5g/L)、50%w/wグルコースでのフェドバッチ運転を、所定の速度(表6)で開始し、約25 OD550で、供給を、所定の速度(表7)で25%D−ラクトース溶液に切り替えた。
温度を35.0℃、上部圧力を0.5bar、pHを第1段階(グルコース期)で6.8及び第2段階(ラクトース期)で7.2に制御し、NH4OH(29%w/w)及びH2SO4(20%w/v)をpH制御のために使用し、dOを第1段階で空気飽和の25%及び第2段階で10%に制御し、dOを先ず撹拌(250〜450rpm)によって後で通気(25〜35slpm)によって制御した。グルコース及びラクトースレベルを、供給操作の間、モニタリングし、グルコースのレベルが0.1g/Lを超えるか又はラクトースが1g/Lを超える場合、供給プログラムを一時的に停止したか又は減らした。実行をラクトース供給の開始の40時間後に終わらせ、細胞を、遠心分離若しくは精密濾過によって採取したか、又はグルタルアルデヒドでの処理のために容器中に維持した。発酵によって、2819 BZN U/g dcw(1788 GLN U/g dcw)のニトリラーゼ比活性を有する乾燥細胞質量約8kgが生産された。
Figure 0005583586
発酵の終わりに、撹拌を150rpmに減速し、通気を停止し、温度を35℃で維持した。発酵ブロスの一部を取り出し、約180kgを発酵槽中に残した。この残りのブロスはpH5.2に滴定して、20%H2SO4(20%w/w)及びNaOH(50%w/w)を用いてこのpHで維持し、一方水性グルタルアルデヒド9.0L(GA、10%w/w)を、撹拌しながら、約90mL/分の速度で添加し;この添加速度は、50mgグルタルアルデヒド/L発酵ブロス/分と等価であり、グルタルアルデヒドの最終濃度は、約5gグルタルアルデヒド/L(0.035gグルタルアルデヒド/OD550)であった。ブロスへのグルタルアルデヒド添加の開始から5時間後に、pHを7.0に調整し、水性重亜硫酸ナトリウム1.8L(10%w/w,pH7)を撹拌しながら添加し(約1g重亜硫酸ナトリウム/L 最終濃度)、ブロスをさらに15分間撹拌した。次いで、ブロスの温度を10℃に低下させ、撹拌を100rpmへ低下させた。Diskstack遠心分離機(Alfa Laval)を使用して、ブロスを細胞懸濁液40kgに濃縮し、次いで、50kg DI水(20℃)を懸濁液に添加し、混合物を遠心分離によって濃縮し、洗浄細胞懸濁液40kgを生産した。懸濁液(NIT188A−C2と同定)を5℃で保存し、細胞懸濁液の一部を、固定化細胞触媒の調製(実施例6)のために直接使用した。各プロセス工程中のニトリラーゼ比活性を表8に要約する。
Figure 0005583586
実施例6
GA/PEI架橋カラゲナンビーズのグルタルアルデヒド前処理大腸菌MG1655/pNM18−168Vの固定化
実施例5のグルタルアルデヒド及び重亜硫酸ナトリウム処理発酵ブロスから回収された最終細胞懸濁液濃縮物を、5℃で遠心分離した。得られた細胞ペレットを、質量で5倍の量の0.35Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)に再懸濁し、得られた細胞懸濁液の5℃での遠心分離によって、湿った細胞ペーストが生産され、これを、実施例2に記載したように、固定化し、GA及びPEIで化学的に架橋した。得られた固定化細胞触媒を、固定化NIT188A−C2と同定した。
実施例7
グルタルアルデヒド前処理大腸菌MG1655/pNM18−168V大腸菌MG1655/pSW138−F168V形質転換体を使用して調製したグルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋カラゲナン固定化生体触媒の脱水/再水和
グルタルアルデヒド前処理細胞を使用して実施例6に記載した通りに調製したグルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋カラゲナン固定化大腸菌MG1655/pSW138−F168V形質転換体ビーズを、20の間、窒素パージしながら、35℃で、真空オーブン(176mmHg)で脱水し、計量し、前述のようにさらに4時間(合計で24時間)脱水した。最初の(脱水されていない)ビーズ質量に対する最終脱水ビーズ質量の比率は、0.217であった。脱水ビーズを、72時間5℃で20倍(質量で)の0.10Mグリコール酸アンモニウム溶液(pH7.3)中にビーズを置くことによって、続いて再水和した。得られた再水和ビーズを、9倍(質量で)の0.10Mグリコール酸アンモニウム溶液(pH7.3)で2回洗浄し、次いで計量し;最初の(脱水されていない)ビーズ質量に対する再水和ビーズ質量の比率は、5℃で再水和されたビーズについて0.578であった。得られた生体触媒を、固定化NIT188A−C2−Dと同定した。
実施例8
固定化生体触媒脱水/再水和の前及び後の、グルタルアルデヒド前処理大腸菌MG1655/pNM18−168V大腸菌MG1655/pSW138−F168V形質転換体を使用して調製されたグルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋カラゲナン固定化大腸菌MG1655/pSW138−F168V生体触媒の比活性
典型的な手順において、グリコロニトリルのグリコール酸への変換についてのバッチ反応の二連(duplicate)のセットを、オーバーヘッド撹拌及び25Cでの温度制御を備えた50mLジャケット付き反応容器中で実行した。第1セットの二連の反応において、各反応容器に、GA/PEI架橋大腸菌MG1655/pSW138−168V/カラゲナンビーズ4g(0.20g乾燥細胞質量;実施例6(固定化の前に細胞のGA前処理)に記載される通りに調製した、固定化NIT188A−C2)、グリコール酸アンモニウム水溶液3.0mL(4.0M、pH7.0)、及び脱イオン化蒸留水7.75mLを仕込んだ。第2セットの二連の反応において、各反応容器に、GA/PEI架橋大腸菌MG1655/pSW138−168V/カラゲナンビーズ2.55g(0.20g乾燥細胞質量;実施例7(固定化の前に細胞のGA前処理、続いての脱水/再水和)に記載される通りに調製した、固定化NIT188A−C2−D)、グリコール酸アンモニウム水溶液3.0mL(4.0M、pH7.0)、及び脱イオン化蒸留水9.10mLを入れた。
各反応容器を窒素でフラッシュし、混合物を25℃で撹拌し、一方、プログラム可能なシリンジポンプを使用して、水中62wt%グリコロニトリル(GLN)0.520mL(6.0mmol GLN、0.006mmolホルムアルデヒド;0.7wt%グリコール酸で安定化)及び水酸化アンモニウム水溶液0.150mL(0.9375wt%NH3)を同時に添加し;1等価体積のGLN及び水酸化アンモニウム溶液を2時間毎に同時に添加し(GLN溶液及び水酸化アンモニウム水溶液の合計8同時添加)、GLNの濃度を≦400mMに、pHを7.0〜7.5の範囲内に維持した。反応サンプル(0.050mL)を第1GLN添加後の所定の時点で取り出し、6.0N HCl 0.010mL及び水中0.25M iso−プロパノール0.200mL(HPLC外部標準)へ添加し、得られた混合物を遠心分離し、上清をHPLCによって分析し、初期反応速度及び触媒比活性(μmolグリコール酸/分/g dcw生体触媒)を測定した。反応の完了時に、GLNの100%変換があり、>99%収率でグリコール酸(アンモニウム塩として)が生産された。表9には、生体触媒の初期比活性をリストする。
第1反応の終わりに、水性生成混合物を各反応容器中の触媒からデカンテーションし(窒素下で)、固定化細胞触媒及び残りの生成物溶液の混合物を残した。次いで、反応容器に、十分な蒸留した脱イオン水を添加し、GLN及び水酸化アンモニウム溶液の添加前に第1反応における初期反応体積を再現し(約15.3mL初期反応体積)、直ぐ前に記載したように水性GLN及び水酸化アンモニウムのアリコートを添加することによって、第2反応を25℃で行った。触媒リサイクルを伴う連続バッチ反応で回収された生体触媒の比活性を、表10にリストする。
Figure 0005583586
Figure 0005583586
実施例9
固定化生体触媒脱水/再水和の前及び後の、グルタルアルデヒド前処理大腸菌MG1655/pNM18−168V形質転換体を使用して調製されたグルタルアルデヒド/ポリエチレンイミン架橋カラゲナン固定化生体触媒の貯蔵安定性
新たに調製のGA/PEI架橋大腸菌MG1655/pSW138−168V/カラゲナンビーズ(実施例6(固定化の前に細胞のGA前処理)に記載される通りに調製した、固定化NIT188A−C2)を、5℃で1.0M炭酸水素アンモニウム(pH7.3)中において28日間保存した。脱水したGA/PEI架橋大腸菌MG1655/pSW138−168V/カラゲナンビーズ(実施例7に記載される通りに脱水した、固定化NIT188A−C2)を、28日間5℃で窒素下において乾燥状態で保存し、次いで実施例7に記載される通りに再水和した。使用前に、生体触媒(biocatlayst)を、室温において0.1Mグリコール酸アンモニウム180mL(pH7.0)で、15分間、2回洗浄し、次いで実施例8に記載された手順を使用して生体触媒リサイクルを伴う連続バッチ反応の二連のセットにおいて評価した。グリコロニトリルをグリコール酸アンモニウムに変換する4連続バッチ反応における各生体触媒の比活性を、表11に示す。
Figure 0005583586

Claims (9)

  1. 改善された比活性を備えたニトリラーゼ活性を有する脱水酵素触媒を生産するための方法であって、以下:
    (a)発酵によってニトリラーゼ活性を有する酵素触媒を生産する工程、ここで酵素触媒が、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、及び57からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む;
    (b)該酵素触媒をグルタルアルデヒドで前処理する工程
    (c)(b)から酵素触媒を回収し、該酵素触媒をカラゲナンに固定化する工程;
    )()の得られたカラゲナン固定化酵素触媒をグルタルアルデヒド及びポリエチレンイミンで架橋する工程;並びに
    )工程()において生産された架橋化固定化酵素触媒を脱水する工程
    を含む、方法。
  2. 水溶液中工程()の酵素触媒を再水和する工程()をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 適した反応条件下で水溶液中のグリコロニトリルと請求項2に記載の再水和酵素触媒とを接触させ、それによってグリコール酸を生産する工程()をさらに含む、請求項2に記載の方法。
  4. 工程()において生産されたグリコール酸を回収する工程()をさらに含む、請求項3に記載の方法。
  5. pHが、グルタルアルデヒドでの前処理の間、5.0〜9.0に維持される、請求項1に記載の方法。
  6. 工程(b)におけるグルタルアルデヒドでの前処理が、工程(a)によって生産された発酵ブロスにグルタルアルデヒドを約3g/L(0.025g GA/OD550)〜約5g/L(0.042g GA/OD550)の範囲内の量で添加することを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 工程(b)におけるグルタルアルデヒドでの前処理が、工程(a)によって生産された発酵ブロスにグルタルアルデヒドを50mg/L/h〜500mg/L/hの速度で添加することを含む、請求項1に記載の方法。
  8. 請求項1に記載の方法によって生産された脱水、グルタルアルデヒド前処理、固定化および架橋された酵素触媒であって、再水和後に、グリコロニトリルをグリコール酸へ加水分解することについてのその初期比活性の少なくとも70%を保持している、酵素触媒。
  9. 前処理工程の後かつ回収工程の前に、重亜硫酸塩で未反応グルタルアルデヒドを不活性化する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
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