(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1乃至図15を参照して説明する。図1は、本実施形態の把持処置装置1を示す図である。図1に示すように、把持処置装置1は、長手軸Cを有する。ここで、長手軸Cに平行な2方向の一方を先端方向(図1の矢印A1の方向)とし、先端方向と反対方向を基端方向(図1の矢印A2の方向)とする。
外科手術装置である把持処置装置1は、振動子ユニット2と、プローブユニット3と、ハンドルユニット4と、シースユニット5とを備える。振動子ユニット2は、振動子ケース11を備える。振動子ケース11の基端には、ケーブル6の一端が接続されている。ケーブル6の他端は、電源ユニット7に接続されている。電源ユニット7は、超音波発生電流供給部8と、高周波電流供給部9と、制御部10と、を備える。なお、把持処置装置1と電源ユニット7とにより、外科手術システムが構成されている。
図2は、振動子ユニット2の構成を示す図である。図2に示すように、振動子ケース11の内部には、電流を超音波振動に変換する圧電素子を備える超音波振動子12が設けられている。超音波振動子12には、電気信号線13A,13Bの一端が接続されている。電気信号線13A,13Bは、ケーブル6の内部を通って、他端が電源ユニット7の超音波発生電流供給部8に接続されている。超音波発生電流供給部8から電気信号線13A,13Bを介して超音波振動子12に電流を供給することにより、超音波振動子12で超音波振動が発生する。超音波振動子12の先端方向側には、超音波振動の振幅を拡大する柱状のホーン15が連結されている。
ホーン15は、振動子ケース11によって支持され、振動子ケース11との間は電気的に絶縁されている。また、ホーン15の先端部には、雌ネジ部16が形成されている。また、超音波振動子12には、電気信号線13A,13Bとは別に、電源ユニット7の高周波電流供給部9からケーブル6の内部を通って延設される電気信号線17が接続されている。
図3は、プローブユニット3の構成を示す図である。図3に示すように、プローブユニットは、長手軸Cに沿って延設される柱状のプローブ本体21を備える。把持処置装置1の長手軸Cは、プローブ本体21の軸中心を通る。プローブ本体21の基端方向側の部位には、雄ネジ部22が設けられている。プローブ本体21の雄ネジ部22がホーン15の雌ネジ部16と螺合することにより、ホーン15にプローブ本体21(プローブユニット3)が取付けられる。
ホーン15にプローブ本体21が取付けられることにより、超音波振動子12で発生した超音波振動が、ホーン15を介して、プローブ本体21(プローブユニット3)の先端部まで伝達可能である。すなわち、プローブ本体21では、基端方向から先端方向へ超音波振動を伝達可能である。また、プローブ本体21(プローブユニット3)の先端部には、プローブ導電部23が設けられている。ホーン15にプローブ本体21が取付けられることにより、高周波電流供給部9から、電気信号線17、超音波振動子12、ホーン15、プローブ本体21(プローブユニット3)を通して、プローブ導電部23に高周波電流を伝達可能となる。高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。
図1に示すように、ハンドルユニット4は、長手軸Cに沿って延設される筒状ケース31を備える。筒状ケース31は絶縁材料から形成されている。筒状ケース31からは、長手軸Cに対して傾斜した方向に向かって、固定ハンドル32が延設されている。固定ハンドル32は、筒状ケース31と一体に形成されている。また、筒状ケース31には、可動ハンドル33が回動可能に取付けられている。可動ハンドル33は、固定ハンドル32に対して長手軸Cと略平行に開閉可能である。可動ハンドル33は、固定ハンドル32より先端方向側に位置している。固定ハンドル32の先端方向側の表面には、ストッパ35が設けられている。可動ハンドル33がストッパ35に当接することにより、可動ハンドル33の固定ハンドル32に対する閉方向への移動が規制される。
筒状ケース31には、振動子ユニット2が基端方向側から連結され、シースユニット5が先端方向側から連結されている。また、筒状ケース31の内部には、プローブユニット3が先端方向側から挿入されている。シースユニット5は、プローブユニット3が挿通される筒状のシース本体41を備える。シース本体41の先端部には、ジョー42が回動可能に取付けられている。ジョー42は、プローブ本体21のプローブ導電部23(第1の電極部25)に対して開閉可能である。
また、ハンドルユニット4は、筒状ケース31の先端方向側に連結される回転操作入力部である回転操作ノブ37を備える。回転操作ノブ37は、筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能に連結されている。回転操作ノブ37が筒状ケース31に対して回転することにより、筒状ケース31に対して振動子ユニット2、プローブユニット3、シースユニット5及びジョー42が長手軸回り方向に回転する。
図4は、ハンドルユニット4の内部の構成を示す図である。図4に示すように、プローブ本体21(プローブユニット3)及びシース本体41(シースユニット5)は、回転操作ノブ37の内部を通って、筒状ケース31の内部まで長手軸Cに沿って延設されている。筒状ケース31の内部では、プローブ本体21の基端がホーン15に取付けられている。これにより、振動子ユニット2とプローブユニット3とが連結される。また、筒状ケース31の内部では、シース本体41の基端部が振動子ケース11に連結されている。これにより、振動子ユニット2とシースユニット5とが連結されている。
ハンドルユニット4の筒状ケース31の内部には、プローブ本体21とシース本体41との間を連結する接続筒状部材45が、設けられている。また、シース本体41は、接続筒状部材45の外周方向側に設けられる可動筒状部材46を備える。接続筒状部材45及び可動筒状部材46は、長手軸Cに沿って設けられている。接続筒状部材45は、樹脂等の絶縁材料から形成されている。可動筒状部材46は、金属等の導電材料から形成されている。
図5は、図4のV−V線断面図である。図4及び図5に示すように、回転操作ノブ37には、係合ピン47A,47Bが互いに対して長手軸回り方向に離れた状態で固定されている。係合ピン47A,47Bは、回転操作ノブ37の内周部から内周方向に突出している。可動筒状部材46には、貫通孔48A,48Bが互いに対して長手軸回り方向に離れた状態で設けられている。それぞれの貫通孔48A,48Bは、長手軸Cに沿って長孔状に形成され、可動筒状部材46を径方向に貫通している。また、接続筒状部材45には、内周方向に凹んだ係合凹部49A,49Bが設けられている。係合凹部49A,49Bは、互いに対して長手軸回り方向に離れた状態で設けられている。
係合ピン47Aは、貫通孔48Aに挿通され、係合凹部49Aに係合している。また、係合ピン47Bは、貫通孔48Bに挿通され、係合凹部49Bに係合している。それぞれの係合ピン47A,47Bが対応する係合凹部49A,49Bに係合することにより、接続筒状部材45が回転操作ノブ37に固定される。また、それぞれの係合ピン47A,47Bが対応する貫通孔48A,48Bに挿通されることにより、可動筒状部材46及び回転操作ノブ37が、互いに対して長手軸回り方向に回転不可能な状態に、規制される。ただし、貫通孔48A,48Bは長手軸Cに沿って長孔状に形成されるため、可動筒状部材46は、回転操作ノブ37及び接続筒状部材45に対して長手軸Cに沿って移動可能である。以上のような構成にすることにより、接続筒状部材45及び可動筒状部材46は、回転操作ノブ37と一体に筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能となる。また、可動筒状部材46は、プローブ本体21(プローブユニット3)及びハンドルユニット4に対して、長手軸Cに沿って移動可能となる。
プローブ本体21の基端部の外周部には、絶縁材料から形成される弾性部材51が固定されている(図3参照)。プローブ本体21がホーン15に連結された状態では、弾性部材51は超音波振動の節位置に位置している。弾性部材51は、接続筒状部材45の内周部により内周方向に押圧され、収縮している。弾性部材51が収縮することにより、プローブ本体21(プローブユニット3)が接続筒状部材45に対して固定される。これにより、プローブ本体21(プローブユニット3)とシース本体41(シースユニット5)との間が、接続筒状部材45及び弾性部材51により、連結される。
回転操作ノブ37を長手軸回り方向に回転した際には、回転操作ノブ37からの回転駆動力が、接続筒状部材45及び弾性部材51を介して、プローブ本体21(プローブユニット3)に伝達される。したがって、プローブユニット3が、回転操作ノブ37及び接続筒状部材45と一体に、筒状ケース31に対して回転可能となる。また、接続筒状部材45及び弾性部材51は絶縁材料から形成されるため、プローブ本体21(プローブユニット3)と可動筒状部材46との間は電気的に絶縁されている。
図4に示すように、シース本体41(シースユニット5)と振動子ケース11(振動子ユニット2)との連結部では、可動筒状部材46が振動子ケース11に挿入された状態で、可動筒状部材46と振動子ケース11とが係合している。可動筒状部材46と振動子ケース11との間では、互いに対する長手軸回り方向の回転が規制されている。ただし、可動筒状部材46は、振動子ケース11に対して長手軸Cに沿って移動可能である。
また、シース本体41と振動子ケース11との連結部では、振動子ケース11の外周方向側には、電気接続リング53が設けられている。電気接続リング53は、ハンドルユニット4の筒状ケース31に固定された状態で設けられている。振動子ケース11がシース本体41(可動筒状部材46)に連結された状態では、振動子ケース11の先端部の外周部は電気接続リング53と接触し、振動子ケース11の先端部の内周部は可動筒状部材46と接触している。また、振動子ケース11及びシース本体41は、電気接続リング53に対して、長手軸回り方向に一体に回転可能である。
筒状ケース31と固定ハンドル32との間には、スイッチ配置部55が設けられている。スイッチ配置部55は、筒状ケース31及び固定ハンドル32と一体に形成されている。スイッチ配置部55は、長手軸Cに略垂直な平面部56を備える。平面部56は、長手軸Cを中心として固定ハンドル32及び可動ハンドル33が位置する側に設けられている。また、平面部56は、可動ハンドル33より先端方向側に位置している。
平面部56には、処置モード入力部である処置モード入力ボタン57A,57Bが設けられている。それぞれの処置モード入力ボタン57A,57Bを押圧することにより、術者の選択した処置モードの入力操作が行われる。スイッチ配置部55の内部には、スイッチ部58A,58Bと、電気回路基板59と、が設けられている。スイッチ部58Aは、処置モード入力ボタン57Aでの入力操作により開閉状態が切替えられる。同様に、スイッチ部58Bは、処置モード入力ボタン57Bでの入力操作により開閉状態が切替えられる。
図6は、振動子ケース11での電気接続状態を概略的に示す図である。図4及び図6に示すように、筒状ケース31の内部には、3つの電気信号線61A〜61Cが設けられている。電気信号線61Aは、電気回路基板59上の電気回路を介して、スイッチ部58Aに電気的に接続されている。電気信号線61Bは、電気回路基板59上の電気回路を介して、スイッチ部58Bに電気的に接続されている。電気信号線61Cは、電気回路基板59上の電気回路を介して、スイッチ部58A及びスイッチ部58Bに電気的に接続されている。電気信号線61Cは、スイッチ部58A及びスイッチ部58Bのグランド線として共用されるコモン線である。
電気接続リング53は、第1の電気接続部62A、第2の電気接続部62B及び第3の電気接続部62Cを備える。第1の電気接続部62Aと第2の電気接続部62Bとの間、第2の電気接続部62Bと第3の電気接続部62Cとの間、及び、第1の電気接続部62Aと第3の電気接続部62Cとの間は、電気的に絶縁されている。電気信号線61Aは、第1の電気接続部62Aに接続されている。電気信号線61Bは、第2の電気接続部62Bに接続されている。電気信号線61Cは、第3の電気接続部62Cに接続されている。
また、振動子ケース11は、第1の導電部63A、第2の導電部63B、及び、第3の導電部63Cを備える。第1の導電部63A、第2の導電部63B及び第3の導電部63Cは、長手軸Cに沿って延設されている。第1の導電部63Aと第2の導電部63Bとの間、第2の導電部63Bと第3の導電部63Cとの間、及び、第1の導電部63Aと第3の導電部63Cとの間は、電気的に絶縁されている。振動子ケース11が可動筒状部材46(シース本体41)に連結された状態では、電気接続リング53の第1の電気接続部62Aには、第1の導電部63Aの先端部のみが電気的に接触する。同様に、電気接続リング53の第2の電気接続部62Bには、第2の導電部63Bの先端部のみが電気的に接触する。そして、電気接続リング53の第3の電気接続部62Cには、第3の導電部63Cの先端部のみが電気的に接触する。
第1の導電部63Aの基端部には、電気信号線65の一端が接続されている。第2の導電部63Bの基端部には、電気信号線66の一端が接続されている。第3の導電部63Cの基端部には、電気信号線67の一端が接続されている。電気信号線65〜67は、ケーブル6の内部を通って、他端が電源ユニット7の制御部10に接続されている。
以上のように、スイッチ部58Aから、電気信号線61A、第1の電気接続部62A、第1の導電部63A、電気信号線65を通って、電源ユニット7の制御部10まで第1の電気信号経路が形成されている。また、スイッチ部58Bから、電気信号線61B、第2の電気接続部62B、第2の導電部63B、電気信号線66を通って、電源ユニット7の制御部10まで第2の電気信号経路が形成されている。また、スイッチ部58A及びスイッチ部58Bから、電気信号線61C、第3の電気接続部62C、第3の導電部63C、電気信号線67を通って、制御部10までグランド経路が形成されている。
処置モード入力ボタン57Aを押圧することにより、スイッチ部58Aが閉状態になり、スイッチ部58Aで第1の電気信号経路とグランド経路との間が電気的に接続される。これにより、スイッチ部58Aから電源ユニット7の制御部10に電気信号が伝達される。そして、超音波発生電流供給部8から超音波発生電流が出力されるとともに、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。すなわち、処置モード入力ボタン57Aを押圧することにより、第1の処置モードが選択される。
また、処置モード入力ボタン57Bを押圧することにより、スイッチ部58Bが閉状態になり、スイッチ部58Bで第2の電気信号経路とグランド経路との間が電気的に接続される。これにより、スイッチ部58Bから電源ユニット7の制御部10に電気信号が伝達される。そして、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。この際、超音波発生電流供給部8から超音波発生電流は出力されない。すなわち、処置モード入力ボタン57Bを押圧することにより、第1の処置モードとは異なる第2の処置モードが選択される。
図6に示すように、振動子ケース11は、長手軸Cに沿って延設される第4の導電部63Dを備える。第1の導電部63A、第2の導電部63B、及び、第3の導電部63Cはいずれも、第4の導電部63Dとの間が電気的に絶縁されている。第4の導電部63Dの基端部には、電源ユニット7の高周波電流供給部9からケーブル6の内部を通って延設される電気信号線69が接続されている。振動子ケース11が可動筒状部材46(シース本体41)に連結された状態では、可動筒状部材46には、第4の導電部63Dの先端部のみが電気的に接触する。以上のようにして、高周波電流供給部9とシース本体41の可動筒状部材46との間では、電気信号線69、第4の導電部63Dを介して、高周波電流が伝達される。
図4に示すように、シース本体41は、回転操作ノブ37の内周方向側に位置する固定筒状部材71を備える。固定筒状部材71は、回転操作ノブ37に固定され、樹脂等の絶縁材料から形成されている。固定筒状部材71の先端部には、外側チューブ72の基端部及び外側パイプ73の基端部が固定されている。外側チューブ72は、外側パイプ73より外周方向側に位置し、シース本体41(シースユニット5)の外装を形成している。外側チューブ72は、樹脂等の絶縁材料から形成されている。外側パイプ73より内周方向側には、内側チューブ75が設けられている。内側チューブ75は、樹脂等の絶縁性材料から形成され、固定ピン76A,76Bを介して外側パイプ73に固定されている。以上のような構成にすることにより、回転操作ノブ37は、外側チューブ72、外側パイプ73及び内側チューブ75と一体に、筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能となる。
シース本体41は、径方向について外側パイプ73と内側チューブ75との間に設けられる内側パイプ77を備える。内側パイプ77は、接続部材78及び接続ピン79を介して、可動筒状部材46の先端部に固定されている。内側パイプ77は、可動筒状部材46と一体に外側チューブ72、外側パイプ73及び内側チューブ75に対して長手軸Cに沿って移動可能である。すなわち、内側パイプ77は、可動筒状部材46と一体にハンドルユニット4及びプローブユニット3に対して、長手軸Cに沿って移動可能である。
また、内側パイプ77は可動筒状部材46に固定されているため、回転操作ノブ37での回転操作が、可動筒状部材46を介して伝達される。したがって、内側パイプ77は、回転操作ノブ37と一体に、筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能である。前述のように、回転操作ノブ37は、外側チューブ72、外側パイプ73及び内側チューブ75と一体に、筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能である。したがって、シース本体41は、回転操作ノブ37と一体に、筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能である。また、内側パイプ77は、金属等の導電材料から形成されている。可動筒状部材46と内側パイプ77との間では、接続部材78及び接続ピン79を介して、高周波電流が伝達される。
図4に示すように、シースユニット5は、内側チューブ75の内周方向側に長手軸Cに沿って設けられる可動部である可動プレート81を備える。可動プレート81は、シース本体41(内側チューブ75)の内部に挿通され、金属等の導電材料から形成されている。可動プレート81は、プローブ本体21(プローブユニット3)及びシース本体41に対して長手軸Cに沿って移動可能である。可動プレート81は、導電材料から形成される中継部82を介して、移動操作入力部である移動操作レバー83に固定されている。移動操作レバー83は、絶縁材料から形成されている。移動操作レバー83は、回転操作ノブ37に対して長手軸Cに沿って移動可能に連結されている。移動操作レバー83を回転操作ノブ37に対して移動することにより、可動プレート81はプローブ本体21及びシース本体41に対して長手軸Cに沿って移動する。すなわち、移動操作レバー83により、可動部である可動プレート81を長手軸Cに沿って移動させる操作が入力される。
また、移動操作レバー83及び回転操作ノブ37は、長手軸回り方向について互いに対する回転が不可能な状態で連結されている。このため、移動操作レバー83及び可動プレート81は、回転操作ノブ37と一体に、筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能である。前述のように、シース本体41は、回転操作ノブ37と一体に、筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能である。したがって、シースユニット5(シース本体41及び可動プレート81)は、回転操作ノブ37と一体に、筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能である。
図7及び図8は、プローブユニット3の先端部、シースユニット5の先端部及びジョー42を示す図である。ここで、図7は生体組織Tを把持して第1の処置モードで処置を行なっている状態を示し、図8は生体組織Tを把持して第2の処置モードで処置を行なっている状態を示している。図7及び図8に示すように、外側チューブ72、外側パイプ73、内側チューブ75及び内側パイプ77は、シース本体41(シースユニット5)の先端部まで長手軸Cに沿って延設されている。図3に示すように、プローブ本体21の外周部には、絶縁材料から形成される複数の支持部材85が形成されている。それぞれの支持部材85は、長手軸Cに平行な方向についてその他の支持部材85から離れて配置されている。プローブ本体21がホーン15に連結された状態では、それぞれの支持部材85は超音波振動の節位置に位置している。
支持部材85により、可動プレート81とプローブ本体21(プローブユニット3)との接触が防止される。また、支持部材85により、内側チューブ75(シース本体41)とプローブ本体21(プローブユニット3)との接触が防止される。前述のように、接続筒状部材45及び弾性部材51は絶縁材料から形成されるため、プローブ本体21(プローブユニット3)と可動筒状部材46(シース本体41)との間は電気的に絶縁されている。したがって、接続筒状部材45、弾性部材51及び支持部材85により、シースユニット5(シース本体41及び可動プレート81)とプローブユニット3(プローブ本体21)との間が電気的に絶縁される。
図7及び図8に示すように、シース本体41の先端部(外側チューブ72の先端部及び外側パイプ73の先端部)には、連結ネジ87を介してジョー42が取付けられている。ジョー42は、連結ネジ87を中心としてシース本体41に対して回動可能である。また、内側パイプ77の先端部は、接続ピン89を介してジョー42に連結されている。内側パイプ77とジョー42との間では、接続ピン89を介して高周波電流が伝達される。以上のようにして、高周波電流供給部9から、電気信号線69、第4の導電部63D、可動筒状部材46、内側パイプ77を通って、ジョー42まで、高周波電流が伝達可能である。図9は、ジョー42の構成を示す図であり、図10は、図9のX−X線断面図である。なお、図10においては、プローブ本体21(プローブ導電部23)も併せて示している。
図9及び図10に示すように、ジョー42は、シース本体41に取付けられるジョー本体91を備える。ジョー本体91は、導電材料から形成されている。ジョー本体91には、接続ピン92を介してジョー導電部93が連結されている。シース本体41の内側パイプ77からジョー42に伝達された高周波電流は、ジョー本体91を通してジョー導電部93に伝達される。シース本体41(シースユニット5)を通してジョー導電部93に高周波電流が伝達されることにより、ジョー導電部93は第1の電位E1とは大きさの異なる第2の電位E2を有する。
ジョー導電部93には、絶縁材料から形成される絶縁当接部材であるパッド部材95が取付けられている。パッド部材95は、ジョー42の開閉方向に垂直なジョー垂直対向面(当接部)97を備える。また、長手軸Cに垂直、かつ、ジョー42の開閉方向に垂直な方向である幅方向について、ジョー垂直対向面97の両側には、ジョー導電部93によりジョー傾斜対向面98A,98Bが形成されている。長手軸Cに垂直な断面において、ジョー傾斜対向面98A,98Bは、ジョー垂直対向面97に対して傾斜している。
一方、図10に示すように、プローブ導電部23(第1の電極部25)は、ジョー42の開閉方向に垂直なプローブ垂直対向面102を備える。プローブ垂直対向面102は、ジョー垂直対向面97に略平行であり、ジョー垂直対向面97と対向している。そして、プローブ導電部23(第1の電極部25)とジョー42との間に血管(生体組織)等の把持対象がない状態、かつ、後述するように移動操作レバー83を第1の操作位置にした状態で、ジョー42をプローブ導電部23に対して閉じた場合、ジョー垂直対向面97はプローブ導電部23のプローブ垂直対向面102に当接する。すなわち、ジョー42をプローブ導電部23に対して閉じた状態において、ジョー垂直対向面(当接部)97はプローブ導電部23と当接可能である。
また、プローブ垂直対向面102の両側には、長手軸Cに垂直、かつ、ジョー42の開閉方向に垂直な方向である幅方向について、プローブ導電部23(第1の電極部25)によりプローブ傾斜対向面103A,103Bが形成されている。プローブ傾斜対向面103Aはジョー傾斜対向面98Aに略平行であり、プローブ傾斜対向面103Bはジョー傾斜対向面98Bに略平行である。そして、プローブ導電部23(第1の電極部25)とジョー42との間に血管(生体組織)等の把持対象がない状態、かつ、後述するように移動操作レバー83を第1の操作位置にした状態で、ジョー42をプローブ導電部23に対して閉じた場合、プローブ傾斜対向面103Aとジョー傾斜対向面98Aとの間、及び、プローブ傾斜対向面103Bとジョー傾斜対向面98Bとの間には、常にクリアランスが形成されている。すなわち、血管(生体組織)等の把持対象がない状態でジョー42をプローブ導電部23に対して閉じ、ジョー垂直対向面(当接部)97とプローブ導電部23(プローブ垂直対向面102)とを当接させた場合、ジョー導電部93はプローブ導電部23(第1の電極部25)との間にクリアランスを有する。
図11及び図12は、回転操作ノブ37の内部構成を示す図である。図11は第1の処置モードを示し、図12は第2の処置モードを示している。また、図13は図7の13−13線断面図であり、図14は図8の14−14線断面図である。図11に示すように、第1の処置モードでは、移動操作レバー83は第1の操作位置に位置している。この際、可動プレート81及び中継部82は、内側パイプ77と接触しない。したがって、可動プレート81と内側パイプ77との間は電気的に絶縁され、可動プレート81に高周波電流は伝達されない。
可動プレート81の先端部には、移動導電部101が設けられている。第1の処置モードでは、移動操作レバー83が第1の操作位置に移動する操作により、図7に示すように、移動導電部101はシース本体41の内部に収納されている。すなわち、移動導電部101は、ジョー42より基端方向側に位置している。
そして、第1の処置モードでは、超音波発生電流供給部8から超音波発生電流が出力される。このため、超音波振動子12で超音波振動が発生し、プローブ導電部23(プローブユニット3の先端部)に超音波振動が伝達される。また、第1の処置モードでは、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。このため、プローブ導電部23に高周波電流が伝達され、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する第1の電極部25となる。また、ジョー42のジョー導電部93に高周波電流が伝達され、ジョー導電部93は第2の電位E2を有する。この際、可動プレート81に高周波電流が伝達されないため、移動導電部101は電極として機能しない。
したがって、第1の処置モードでは、ジョー導電部93のみが第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能する。第1の処置モードでは、生体組織Tを把持した状態で、第1の電極部25(プローブ傾斜対向面103A,103B)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面98A,98B)との間の距離が、第1の距離D1となる。すなわち、第1の処置モードにおいて、生体組織Tは、第1の距離D1を有した状態で高周波処置が施される。
図12に示すように、第2の処置モードでは、移動操作レバー83が第1の操作位置から先端方向側に移動され、第2の操作位置に位置している。この際、中継部82が内側パイプ77と当接している。したがって、可動プレート81と内側パイプ77との間が電気的に接続され、可動プレート81に高周波電流が伝達される。可動プレート81に高周波
電流が伝達されることにより、移動導電部101が第2の電位E2を有する。
図8及び図14に示すように、第2の処置モードでは、移動操作レバー83が第2の操作位置に移動する操作により、移動導電部101はジョー42の開閉方向についてジョー垂直対向面97(ジョー42)とプローブ垂直対向面102(第1の電極部25)との間に位置している。移動導電部101は、ジョー42の開閉方向に垂直な可動部対向面106を備える。移動操作レバー83が第2の操作位置に位置する第2の処置モードにおいて、可動部対向面106は、プローブ垂直対向面102に略平行で、かつ、プローブ垂直対向面102に対向している。ここで、生体組織Tを把持した状態における可動部対向面106(移動導電部101)とプローブ垂直対向面102(第1の電極部25)との間の距離は、第1の距離D1より小さい第2の距離D2である。
第2の処置モードでは、超音波発生電流供給部8から超音波発生電流が出力されず、高周波電流供給部9のみから高周波電流が出力される。このため、超音波振動子12で超音波振動は発生しない。また、プローブ導電部23に高周波電流が伝達され、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。また、ジョー42のジョー導電部93に高周波電流が伝達され、ジョー導電部93は第2の電位E2を有する。この際、可動プレート(可動部)81に高周波電流が伝達されるため、移動導電部101も第2の電位E2を有する。
したがって、第2の処置モードでは、ジョー導電部93及び移動導電部101が第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能し、移動導電部101が第2の電極部105の一部となる。このため、第2の処置モードでは、生体組織Tを把持した状態で、第1の電極部25(プローブ垂直対向面102)と第2の電極部105の移動導電部101(可動部対向面106)との間の距離が、第1の距離D1より小さい第2の距離D2となる。すなわち、第2の処置モードにおいて、生体組織Tは、第1の距離D1より小さい第2の距離D2を有した状態で高周波処置を施すことが可能となる。以上のように、移動操作レバー(移動操作入力部)83が、第1の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の第1の距離D1より、第2の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の第2の距離D2を小さくする電極間距離変更ユニットとなっている。すなわち、移動操作レバー83により、2つの電極部(第1の電極部25及び第2の電極部105)の間の距離が変更される。また、第2の処置モードでは、プローブ導電部23(プローブユニット3の先端部)に超音波振動が伝達されず、第1の電極部25及び第2の電極部105に高周波電流のみが伝達される。第2の処置モードにおいて、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離を小さくすることにより、生体組織Tに対して十分な高周波処置(例えば、凝固)を行なうことができる。
図15は、図4の15−15線断面図である。図4及び図15に示すように、可動ハンドル33は、支点ピン111を介して筒状ケース31に取付けられている。可動ハンドル33は、支点ピン111を中心として筒状ケース31に対して回動する。また、可動ハンドル33は、アーム部112A,112Bを備える。アーム部112Aには内周方向に向かって突出する係合突起113Aが、アーム部112Bには内周方向に向かって突出する係合突起113Bが設けられている。
可動筒状部材46の外周方向側には、スライド部材115が配設されている。スライド部材115には、内周方向に向かって凹む係合溝116が長手軸回り方向に沿って形成されている。係合溝116に係合突起113A,113Bが係合することにより、可動ハンドル33がスライド部材115に取付けられる。スライド部材115は、可動筒状部材46(シース本体41)と一体に可動ハンドル33及び筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能である。スライド部材115は、絶縁材料から形成されている。したがって、可動筒状部材46(シース本体41)と可動ハンドル33との間が電気的に絶縁されている。
また、可動筒状部材46の外周方向側には、弾性部材であるコイルバネ117及びストッパ118が設けられている。コイルバネ117は、一端がスライド部材115の先端に接続され、他端が可動筒状部材46に接続されている。コイルバネ117の自然状態での長さは、L0である。ジョー42が把持対象又は移動導電部101に接触しない場合は、自然状態から変位量x0だけ収縮した基準状態で、可動筒状部材46とスライド部材115との間にコイルバネ117が取付けられている。このため、ジョー42が把持対象又は移動導電部101に接触しない場合、コイルバネ117の弾性係数をk0として、コイルバネ117から可動筒状部材46に弾性力k0x0が作用している。また、ストッパ118により、スライド部材115の基端方向への移動が規制されている。
第1の処置モードにおいてプローブ導電部23(第1の電極部25)とジョー42との間で把持対象を把持する際、又は、第2の処置モードにおいてプローブ導電部23(第1の電極部25)と移動導電部101との間で把持対象を把持する際には、固定ハンドル32に対して可動ハンドル33を閉動作させる。これにより支点ピン111を中心として可動ハンドル33が回動し、スライド部材115、可動筒状部材46及び内側パイプ77が一体に、長手軸Cに沿って先端方向に向かって移動する。この際、コイルバネ117は基準状態から収縮せず、コイルバネ117から可動筒状部材46に作用する弾性力はk0x0から変化しない。内側パイプ77が先端方向に移動することにより、プローブ導電部23に対してジョー42が閉動作を行う。
そして、第1の処置モードにおいてジョー42が生体組織T等の把持対象に接触した場合、又は、第2の処置モードにおいてジョー42が移動導電部101に接触した場合には、ジョー42の閉動作が一時的に停止する。このため、可動筒状部材46及び内側パイプ77の先端方向への移動が一時的に停止する。この状態で可動ハンドル33を固定ハンドル32に対してさらに閉動作させた際には、スライド部材115が可動筒状部材46に対して先端方向に移動する。
スライド部材115の可動筒状部材46に対する移動により、コイルバネ117が基準状態からさらに収縮する。基準状態からのコイルバネ117の変位量(収縮量)をxとすると、コイルバネ117が基準状態からさらに収縮した際にコイルバネ117から可動筒状部材46に作用する弾性力は、k0(x0+x)となり、基準状態での弾性力k0x0より大きくなる。基準状態での弾性力k0x0より大きい弾性力k0(x0+x)がコイルバネ117から可動筒状部材46に作用することにより、一時的に停止した可動筒状部材46及び内側パイプ77がさらに先端方向に移動する。これにより、把持対象又は移動導電部101に接触したジョー42が、プローブ導電部23に対してさらに閉じる。したがって、コイルバネ117が基準状態の場合と比較して、ジョー42とプローブ導電部23(第1の電極部25)との間、又は、移動導電部101とプローブ導電部23(第1の電極部25)との間で把持対象を把持する把持力が増加する。
ジョー42とプローブ導電部23との間、又は、移動導電部101とプローブ導電部23との間で把持対象を把持した状態から可動ハンドル33を固定ハンドル32に対して開動作させた際には、スライド部材115が可動筒状部材46に対して基端方向に移動する。これにより、コイルバネ117が伸長し基準状態になる。そして、スライド部材115、可動筒状部材46及び内側パイプ77が一体に、長手軸Cに沿って基端方向に向かって移動する。内側パイプ77が基端方向に移動することにより、プローブ導電部23に対してジョー42が開動作を行う。
次に、本実施形態の把持処置装置1の作用について説明する。把持処置装置1を用いて第1の処置モードで処置を行う際には、術者は移動操作入力部である移動操作レバー83を第1の操作位置に移動する。これにより、移動導電部101はシース本体41の内部に収納され、ジョー42より基端方向側に位置する。この状態で、可動ハンドル33を固定ハンドル32に対して閉動作させる。これにより、前述した原理により、ジョー42がプローブ本体21(プローブユニット3)のプローブ導電部23に対して閉動作を行い、ジョー42とプローブ導電部23(第1の電極部25)との間で血管等の把持対象を把持する。
そして、術者は処置モード入力部である処置モード入力ボタン57Aを押圧し、スイッチ部58Aが閉状態になる。これにより、スイッチ部58Aで第1の電気信号経路とグランド経路との間が電気的に接続され、スイッチ部58Aから電源ユニット7の制御部10に電気信号が伝達される。そして、超音波発生電流供給部8から超音波発生電流が出力されるとともに、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。
超音波発生電流供給部8から電気信号線13A,13Bを介して超音波振動子12に電流が供給されることにより、超音波振動子12で超音波振動が発生する。そして、プローブ導電部23(プローブユニット3の先端部)まで超音波振動が伝達される。プローブユニット3の超音波振動によって発生する摩擦熱により、プローブ導電部23(プローブ本体21の先端部)とジョー42との間で把持された把持対象が凝固切開される。
また、高周波電流供給部9から出力された高周波電流は、電気信号線17、超音波振動子12、ホーン15、プローブ本体21(プローブユニット3)を通して、プローブ導電部23に伝達される。高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23は、第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。
また、高周波電流供給部9から、電気信号線69、第4の導電部63D、可動筒状部材46、内側パイプ77及びジョー42を通して、ジョー導電部93に高周波電流が伝達される。高周波電流が伝達されることにより、ジョー導電部93は第1の電位E1とは大きさの異なる第2の電位E2を有する。移動操作レバー83が第1の操作位置に位置する際には、可動プレート81と可動筒状部材46との間は電気的に絶縁されている。このため、可動プレート81に高周波電流が伝達されず、移動導電部101は電極として機能しない。したがって、第1の処置モードでは、ジョー導電部93のみが第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能する。
プローブ導電部23(第1の電極部25)が第1の電位E1を有し、ジョー導電部93(第2の電極部105)が第2の電位E2を有するため、プローブ導電部23とジョー42との間で把持された把持対象に高周波電流が流れる。これにより、生体組織T等の把持対象が変成され、凝固が促進される。
第1の処置モードでは移動導電部101はジョー42より基端方向側に位置するため、第1の電極部25のプローブ導電部23(プローブ傾斜対向面103A,103B)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面98A,98B)との間の距離が、第1の距離D1となる。なお、第1の距離D1は、プローブ本体21(プローブユニット3)が超音波振動している状態においても、第1の電極部25と第2の電極部105(ジョー導電部93)とが接触しない距離を有している。これにより、短絡(short circuit)による把持処置装置1の故障が有効に防止される。また、第1の処置モードではプローブ本体21が超音波振動している。このため、ジョー42をプローブ導電部23に対して閉じた状態でプローブ導電部23に当接可能なパッド部材95は、第1の処置モードでの処置により磨耗する。そこで、第1の距離D1は、第1の処置モードでの処置によりパッド部材95が多少磨耗した場合でも、把持処置装置1の使用開始からプローブ導電部23(第1の電極部25)とジョー導電部93(第2の電極部105)とが接触しない距離を有している。
把持処置装置1を用いて第2の処置モードで処置を行う際には、術者は移動操作入力部である移動操作レバー83を第2の操作位置に移動する。これにより、移動導電部101は、ジョー42の開閉方向についてジョー垂直対向面97(ジョー42)とプローブ垂直対向面102(第1の電極部25)との間に位置する。
この状態で、可動ハンドル33を固定ハンドル32に対して閉動作させる。これにより、前述した原理により、ジョー42がプローブ本体21(プローブユニット3)のプローブ導電部23に対して閉動作を行い、移動導電部101とプローブ導電部23(第1の電極部25)との間で血管等の把持対象を把持する。この際、ジョー42が移動導電部101に接触することにより、移動導電部101はジョー42によってジョー42の閉方向に押圧される。これにより、把持対象がプローブ導電部23(第1の電極部25)と移動導電部101との間で挟持され、把持対象が把持される。
そして、術者は処置モード入力部である処置モード入力ボタン57Bを押圧し、スイッチ部58Bが閉状態になる。これにより、スイッチ部58Bで第2の電気信号経路とグランド経路との間が電気的に接続され、スイッチ部58Bから電源ユニット7の制御部10に電気信号が伝達される。そして、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。この際、超音波発生電流供給部8から電流は出力されない。
高周波電流供給部9から出力された高周波電流は、電気信号線17、超音波振動子12、ホーン15、プローブ本体21(プローブユニット3)を通して、プローブ導電部23に伝達される。高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。
また、高周波電流供給部9から、電気信号線69、第4の導電部63D、可動筒状部材46、内側パイプ77及びジョー42を通して、ジョー導電部93に高周波電流が伝達される。高周波電流が伝達されることにより、ジョー導電部93は第1の電位E1とは大きさの異なる第2の電位E2を有する。
移動操作レバー83が第2の操作位置に位置する際には、可動プレート81と内側パイプ77(可動筒状部材46)との間は電気的に接続されている。このため、可動プレート81に高周波電流が伝達され、移動導電部101は第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能する。したがって、第2の処置モードでは、ジョー導電部93及び移動導電部101が第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能し、移動導電部101が第2の電極部105の一部となる。また、第2の処置モードでは、プローブ導電部23(プローブユニット3の先端部)に超音波振動が伝達されず、第1の電極部25及び第2の電極部105に高周波電流のみが伝達される。
第1の電極部25(プローブ導電部23)が第1の電位E1を有し、第2の電極部105(ジョー導電部93及び移動導電部101)が第2の電位E2を有するため、プローブ導電部23と移動導電部101との間で把持された把持対象にも高周波電流が流れる。これにより、生体組織T等の把持対象が変成され、凝固が行われる。
第2の処置モードではジョー42の開閉方向についてジョー42と第1の電極部25との間に移動導電部101(ジョー42)が位置するため、第1の電極部25のプローブ導電部23(プローブ垂直対向面102)と第2の電極部105の移動導電部101(可動部対向面106)との間の距離が、第2の距離D2となる。第2の距離D2は、第1の距離D1より小さい。すなわち、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでは、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなる。第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなるため、第2の処置モードでは第1の処置モードに比べ、高周波電流による生体組織T(把持対象)の変成が促進される。したがって、高周波電流による把持対象の凝固性能が向上するため、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、把持対象の凝固性能の低下が防止される。これにより、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、安定して把持対象(生体組織)が封止される。
また、第2の処置モードでは、移動導電部101は、ジョー42の開閉方向についてジョー垂直対向面(当接部)97とプローブ垂直対向面102との間に位置する。そして、移動導電部101とプローブ導電部23(第1の電極部25)との間で、把持対象が把持される。プローブ導電部23のプローブ垂直対向面102は、ジョー42の開閉方向に垂直である。また、移動導電部101の可動部対向面106は、プローブ垂直対向面102に略平行で、かつ、プローブ垂直対向面102に対向している。プローブ垂直対向面102及び可動部対向面106がジョー42の開閉方向に垂直であるため、移動導電部101とプローブ導電部23(第1の電極部25)との間で把持される把持対象の把持力が大きくなる。把持力が大きくなることにより、高周波電流による把持対象の凝固性能がさらに向上する。これにより、さらに安定して把持対象(生体組織)が封止される。
そこで、上記構成の把持処置装置1では、以下の効果を奏する。すなわち、把持処置装置1では、第2の処置モードにおいて、ジョー42の開閉方向についてジョー42とプローブ導電部23(第1の電極部25)との間に移動導電部101が位置する。このため、第1の電極部25のプローブ導電部23(プローブ垂直対向面102)と第2の電極部105の移動導電部101(可動部対向面106)との間の距離が、第2の距離D2となる。第2の距離D2は、第1の距離D1より小さい。すなわち、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでは、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなる。第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなるため、第2の処置モードでは第1の処置モードに比べ、高周波電流による生体組織T(把持対象)の変成が促進される。したがって、高周波電流による把持対象の凝固性能が向上する。これにより、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、安定して把持対象(生体組織)を封止することができる。
(第1の実施形態の変形例)
なお、第1の実施形態では、第2の処置モードにおいてジョー42の開閉方向についてジョー垂直対向面(当接部)97とプローブ垂直対向面102との間に移動導電部101が位置し、移動導電部101の可動部対向面106はジョー42の開閉方向に垂直であるが、これに限るものではない。例えば、第1の変形例として図16に示すように、第2の処置モードにおいて、ジョー42の開閉方向についてジョー傾斜対向面98Aとプローブ傾斜対向面103Aとの間に、移動導電部101が設けられてもよい。なお、図16においては、ジョー42とプローブ本体21(プローブ導電部23)との間に把持している生体組織Tは、省略して図示している。
本変形例では、移動導電部101は、ジョー傾斜対向面98A及びプローブ傾斜対向面103Aに略平行な可動部対向面121を備える。可動部対向面121は、ジョー42の開閉方向に垂直ではなく、第2の処置モードにおいてプローブ傾斜対向面103Aと対向している。
本変形例でも、第1の処置モードにおいて移動導電部101は、ジョー42より基端方向側に位置している。このため、プローブ傾斜対向面103Aとジョー傾斜対向面98Aとの間の距離(プローブ傾斜対向面103Bとジョー傾斜対向面98Bとの間の距離)が、第1の処置モードでの第1の電極部25(プローブ導電部23)と第2の電極部105(ジョー導電部93)との間の第1の距離D1となる。第2の処置モードでは、ジョー42の開閉方向についてジョー傾斜対向面98Aとプローブ傾斜対向面103Aとの間に、移動導電部101が位置する。このため、可動部対向面121とプローブ傾斜対向面103Aとの間の距離が、第2の処置モードでの第1の電極部25(プローブ導電部23)と第2の電極部105(移動導電部101)との間の第2の距離D2となる。
以上のように、本変形例においても、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでは、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなる。第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなるため、第2の処置モードでは第1の処置モードに比べ、高周波電流による生体組織T(把持対象)の変成が促進される。
また、第1の実施形態では、第1の操作位置と第2の操作位置との間で移動操作レバー83を長手軸Cに沿って移動させる操作により、可動プレート81が移動するが、これに限るものではない。例えば、第2の変形例として図17及び図18に示すように、移動操作入力部として移動操作ボタン122が設けられてもよい。移動操作ボタン122は、絶縁材料から形成され、回転操作ノブ37に対する長手軸回り方向の回転が規制された状態で回転操作ノブ37に取付けられている。移動操作ボタン122の内周方向側には、導電材料から形成される中継部123が移動操作ボタン122と一体に設けられている。
内側チューブ75とプローブ本体21(プローブユニット3)との間には、可動プレート(可動部)81が設けられている。可動プレート81は、プローブ本体21及びシース本体41に対して長手軸Cに沿って移動可能に設けられている。可動プレート81とプローブ本体21との間は、支持部材85により電気的に絶縁されている。中継部123には、ボタン側傾斜面125Aが設けられている。また、可動プレート81の基端部には、ボタン側傾斜面125Aに平行なプレート側傾斜面125Bが設けられている。
回転操作ノブ37の内周部には、絶縁材料から形成され、内周方向に突出する突起部127が設けられている。突起部127は、可動プレート81の基端より基端方向側に位置している。突起部127と可動プレート81との間には、付勢部材であるバネ部材128が設けられている。バネ部材128は、一端が可動プレート81の基端に接続され、他端が突起部127に接続されている。可動プレート81は、バネ部材128により基端方向に付勢されている。
図17に示すように、第1の処置モードでは、術者により移動操作ボタン122が押圧されず、移動操作ボタン122が第1の操作位置に位置している。この際、中継部123のボタン側傾斜面125Aと可動プレート81のプレート側傾斜面125Bとは、当接していない状態、又は、一部が接触した状態となっている。このため、中継部123により可動プレート81が押圧されない。また、可動プレート81は、バネ部材128により基端方向に付勢されている。したがって、可動プレート81の先端部に設けられる移動導電部101は、シース本体41の内部に収納され、ジョー42より基端方向側に位置する。
図18に示すように、第2の処置モードでは、移動操作ボタン122を内周方向に術者が押圧することにより、移動操作ボタン122が第1の操作位置から第2の操作位置に移動する。これにより、中継部123のボタン側傾斜面127Aと可動プレート81のプレート側傾斜面127Bが当接する。この際、中継部123により可動プレート81は、先端方向に押圧されている。これにより、可動プレート81は、バネ部材128からの付勢に反して、先端方向に移動する。したがって、可動プレート81の先端部に設けられる移動導電部101は、ジョー42の開閉方向についてジョー42とプローブ導電部23(第1の電極部25)との間に位置する。
以上、第1の変形例及び第2の変形例から、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離を小さくする構成は、第1の実施形態に限るものではない。すなわち、可動部(可動プレート81)がシース本体41の内部に挿入された状態で設けられ、可動部(可動プレート81)がプローブ本体21及びシース本体41に対して長手軸Cに沿って移動可能であればよい。そして、可動部(可動プレート81)の先端部に移動導電部101が設けられ、可動部を移動させる操作が入力される移動操作入力部(移動操作レバー83又は移動操作ボタン122)が設けられていればよい。この場合、移動操作入力部での操作により、第1の処置モードにおいてジョー42より基端方向側に移動導電部101が位置する。また、移動操作入力部での操作により、第2の処置モードにおいて、ジョー42の開閉方向についてジョー42と第1の電極部25との間に移動導電部101が位置する。また、第2の処置モードでは、可動部(可動プレート81)を通して高周波電流を伝達することによって、第2の電極部105の少なくとも一部として移動導電部101が機能する。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図19乃至図22を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図19及び図20は、プローブユニット3の先端部及びジョー42の構成を示す図である。図19は生体組織Tを把持して第1の処置モードで処置している状態を示し、図20は生体組織Tを把持して第2の処置モードで処置している状態を示している。図19及び図20に示すように、第1の実施形態と同様に、プローブユニット3のプローブ本体21の先端部には、プローブ導電部23が設けられている。
図21及び図22は、回転操作ノブ37の内部構成を示す図である。図21は第1の処置モードを示し、図22は第2の処置モードを示している。図21及び図22に示すように、シース本体41に挿通されるプローブユニット3は、内側チューブ75の内周方向側に長手軸Cに沿って設けられる可動部である可動プレート131を備える。可動プレート131は、金属等の導電材料から形成されている。可動プレート131は、プローブ本体21及びシース本体41(シースユニット5)に対して長手軸Cに沿って移動可能である。可動プレート131とシース本体41(内側パイプ77)との間は、内側チューブ75により電気的に絶縁されている。また、プローブ本体21とシース本体41との間は、支持部材85及び内側チューブ75により電気的に絶縁されている。したがって、プローブユニット3とシースユニット5との間は電気的に絶縁されている。
可動プレート131は、導電材料から形成される中継部132を介して、移動操作入力部である移動操作ボタン133に固定されている。移動操作ボタン133は、絶縁材料から形成されている。移動操作ボタン133は、回転操作ノブ37に対する長手軸回り方向の回転が規制された状態で、回転操作ノブ37に連結されている。また、中継部132の表面の一部には絶縁コーティング処理が行われ、絶縁層部135が形成されている。絶縁層部135を設けることにより、内側パイプ77と中継部132との接触が常時防止される。これにより、可動プレート131と内側パイプ77(シースユニット5)との間が常時絶縁される。中継部132には、プレート側傾斜面137Aが設けられている。また、シース本体41の内側チューブ75の基端部には、プレート側傾斜面137Aに平行なシース側傾斜面137Bが設けられている。
回転操作ノブ37の内周部には、絶縁材料から形成され、内周方向に突出する突起部138が設けられている。突起部138は、中継部132より基端方向側に位置している。突起部138と中継部132との間には、付勢部材であるバネ部材139が設けられている。バネ部材139は、一端が絶縁層部135に接続され、他端が突起部138に接続されている。中継部132及び可動プレート131は、バネ部材139により基端方向に付勢されている。
移動操作ボタン133での操作により、可動プレート131はプローブ本体21及びシース本体41に対して長手軸Cに沿って移動する。すなわち、移動操作ボタン133により、可動部である可動プレート131を長手軸Cに沿って移動させる操作が入力される。
図21に示すように、第1の処置モードでは、術者により移動操作ボタン133が押圧されず、移動操作ボタン133が第1の操作位置に位置している。この際、中継部132のプレート側傾斜面137Aと内側チューブ75のシース側傾斜面137Bとが、当接している。また、可動プレート131は、バネ部材129により基端方向に付勢されている。可動プレート131の先端部には、移動導電部141が設けられている。移動操作ボタン133が第1の操作位置に位置する第1の処置モードでは、可動プレート131が基端方向に付勢されているため、移動導電部141はシース本体41の内部に収納されている。すなわち、移動導電部141は、ジョー42より基端方向側に位置している(図19参照)。
また、移動操作ボタン133が第1の操作位置に位置する際は、可動プレート131及び中継部132は、プローブ本体21と接触しない。したがって、可動プレート131とプローブ本体21との間は電気的に絶縁され、プローブ本体21から可動プレート131に高周波電流は伝達されない。
図19に示すように、プローブ導電部23は、第1の実施形態と同様に、プローブ垂直対向面102と、プローブ傾斜対向面103A,103Bと、を備える。第1の実施形態と同様に、高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。
また、ジョー42には、ジョー導電部93によりプローブ垂直対向面102に平行なジョー垂直対向面142が、形成されている。プローブ垂直対向面102は、第1の処置モードではジョー垂直対向面142と対向している。長手軸Cに垂直、かつ、ジョー42の開閉方向に垂直な方向である幅方向について、ジョー垂直対向面142の一方側には、第1のジョー傾斜対向面143Aが、パッド部材95により形成されている。また、幅方向についてジョー垂直対向面142の他方側には、第2のジョー傾斜対向面143Bが、ジョー導電部93により形成されている。第1のジョー傾斜対向面143Aは、プローブ傾斜対向面103Aに略平行であり、プローブ傾斜対向面103Aに対向している。また、第2のジョー傾斜対向面143Bは、プローブ傾斜対向面103Bに略平行であり、プローブ傾斜対向面103Bに対向している。
プローブ導電部23(第1の電極部25)とジョー42との間に血管(生体組織)等の把持対象がない状態で、かつ、移動操作ボタン133が第1の操作位置に位置する状態で、ジョー42をプローブ導電部23に対して閉じた場合、第1のジョー傾斜対向面143Aはプローブ導電部23のプローブ傾斜対向面103Aに当接する。すなわち、ジョー42をプローブ導電部23に対して閉じた状態において、第1のジョー傾斜対向面(当接部)143Aはプローブ導電部23と当接可能である。ジョー42をプローブ導電部23に対して閉じた状態において、プローブ傾斜対向面103Bと第2のジョー傾斜対向面143Bとの間、及び、プローブ垂直対向面102とジョー垂直対向面142との間には、常にクリアランスが形成されている。すなわち、パッド部材(絶縁当接部材)95の第1のジョー傾斜対向面(当接部)143Aがプローブ導電部23(プローブ傾斜対向面103A)と当接した状態において、ジョー導電部93(ジョー垂直対向面142及び第2のジョー傾斜対向面143B)はプローブ導電部23(第1の電極部25)との間にクリアランスを有する。
図19に示すように、第1の処置モードでは、超音波発生電流供給部8から超音波発生電流が出力される。このため、超音波振動子12で超音波振動が発生し、プローブ導電部23(プローブユニット3の先端部)に超音波振動が伝達される。また、第1の処置モードでは、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。このため、プローブ導電部23に高周波電流が伝達され、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する。また、ジョー42のジョー導電部93に高周波電流が伝達され、ジョー導電部93は第2の電位E2を有する第2の電極部105となる。この際、可動プレート131に高周波電流が伝達されないため、移動導電部141は電極として機能しない。
したがって、第1の処置モードでは、プローブ導電部23のみが第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。第1の処置モードでは、第1の電極部25のプローブ導電部23(プローブ垂直対向面102)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー垂直対向面142)との間の距離が、第1の距離D1となる。
図22に示すように、第2の処置モードでは、移動操作ボタン133を内周方向に術者が押圧することにより、移動操作ボタン133が第1の操作位置から第2の操作位置に移動する。これにより、中継部132のプレート側傾斜面137Aが内側チューブ75のシース側傾斜面137Bをスライドする。これにより、可動プレート131は、バネ部材139からの付勢に反して、先端方向に移動する。ここで、移動操作ボタン133が第2の操作位置に位置する際は、可動プレート131はプローブ本体21と接触する。したがって、可動プレート131とプローブ本体21との間は電気的に接続され、プローブ本体21から可動プレート131に高周波電流は伝達される。可動プレート131に高周波
電流が伝達されることにより、移動導電部141が第1の電位E1を有する。
図20に示すように、第2の処置モードでは、移動操作ボタン133が第2の操作位置に移動する操作により、移動導電部141はジョー42の開閉方向についてジョー垂直対向面142(ジョー42)とプローブ垂直対向面102(プローブ導電部23)との間に位置している。移動導電部141は、ジョー42の開閉方向に垂直な可動部対向面145を備える。移動操作ボタン133が第2の操作位置に位置する第2の処置モードにおいて、可動部対向面145は、ジョー垂直対向面142に平行で、かつ、ジョー垂直対向面142に対向している。可動部対向面145(移動導電部141)とジョー垂直対向面142(第2の電極部105)との間の距離は、第1の距離D1より小さい第2の距離D2である。
第2の処置モードでは、超音波発生電流供給部8から超音波発生電流が出力されず、高周波電流供給部9のみから高周波電流が出力される。このため、超音波振動子12で超音波振動は発生しない。また、プローブ導電部23に高周波電流が伝達され、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する。また、ジョー42のジョー導電部93に高周波電流が伝達され、ジョー導電部93は第2の電位E2を有する第2の電極部105となる。この際、可動プレート(可動部)131にプローブ本体21から高周波電流が伝達されるため、移動導電部141も第1の電位E1を有する。
したがって、第2の処置モードでは、プローブ導電部23及び移動導電部141が第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能し、移動導電部141が第1の電極部25の一部となる。このため、第2の処置モードでは、第1の電極部25の移動導電部141(可動部対向面145)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー垂直対向面142)との間の距離が、第1の距離D1より小さい第2の距離D2となる。
以上のように、移動操作ボタン(移動操作入力部)133が、第1の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の第1の距離D1より、第2の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の第2の距離D2を小さくする電極間距離変更ユニットとなっている。また、第2の処置モードでは、プローブ導電部23及び移動導電部141(プローブユニット3の先端部)に超音波振動が伝達されず、第1の電極部25及び第2の電極部105に高周波電流のみが伝達される。
次に、本実施形態の把持処置装置1の作用について説明する。把持処置装置1を用いて第1の処置モードで処置を行う際には、術者は移動操作入力部である移動操作ボタン133を第1の操作位置に移動する。これにより、移動導電部141はシース本体41の内部に収納され、ジョー42より基端方向側に位置する。この状態で、可動ハンドル33を固定ハンドル32に対して閉動作させる。これにより、第1の実施形態で前述したように、ジョー42がプローブ本体21(プローブユニット3)のプローブ導電部23に対して閉動作を行い、ジョー42とプローブ導電部23との間で血管等の把持対象を把持する。
そして、術者は処置モード入力部である処置モード入力ボタン57Aを押圧し、スイッチ部58Aが閉状態になる。これにより、超音波発生電流供給部8から超音波発生電流が出力されるとともに、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。そして、超音波振動子12で超音波振動が発生し、プローブ導電部23(プローブユニット3の先端部)まで超音波振動が伝達される。プローブユニット3の超音波振動によって発生する摩擦熱により、プローブ導電部23(プローブ本体21の先端部)とジョー42との間で把持された把持対象が凝固切開される。
また、高周波電流供給部9から出力された高周波電流は、電気信号線17、超音波振動子12、ホーン15、プローブ本体21(プローブユニット3)を通して、プローブ導電部23に伝達される。高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23は、第1の電位E1を有する。また、高周波電流供給部9から、電気信号線69、第4の導電部63D、可動筒状部材46、内側パイプ77及びジョー42を通して、ジョー導電部93に高周波電流が伝達される。高周波電流が伝達されることにより、ジョー導電部93は第1の電位E1とは大きさの異なる第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能する。
移動操作レバー83が第1の操作位置に位置する際には、可動プレート131とプローブ本体21との間は電気的に絶縁されている。このため、可動プレート131に高周波電流が伝達されず、移動導電部141は電極として機能しない。したがって、第1の処置モードでは、プローブ導電部23のみが第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。プローブ導電部23(第1の電極部25)が第1の電位E1を有し、ジョー導電部93(第2の電極部105)が第2の電位E2を有するため、プローブ導電部23とジョー42との間で把持された把持対象に高周波電流が流れる。これにより、生体組織T等の把持対象が変成され、凝固が促進される。
把持処置装置1を用いて第2の処置モードで処置を行う際には、術者は移動操作入力部である移動操作ボタン133を第2の操作位置に移動する。これにより、移動導電部141は、ジョー42の開閉方向についてジョー垂直対向面142(ジョー42)とプローブ垂直対向面102(プローブ導電部23)との間に位置する。
この状態で、可動ハンドル33を固定ハンドル32に対して閉動作させる。これにより、第1の実施形態で前述したように、ジョー42がプローブ本体21(プローブユニット3)のプローブ導電部23に対して閉動作を行い、移動導電部141とジョー導電部93(第2の電極部105)との間で血管等の把持対象を把持する。この際、移動導電部141とジョー導電部93(第2の電極部105)との間で挟持され、把持対象が把持される。
そして、術者は処置モード入力部である処置モード入力ボタン57Bを押圧し、スイッチ部58Bが閉状態になる。これにより、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。この際、超音波発生電流供給部8から電流は出力されない。高周波電流供給部9から出力された高周波電流は、電気信号線17、超音波振動子12、ホーン15、プローブ本体21(プローブユニット3)を通して、プローブ導電部23に伝達される。高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する。また、高周波電流供給部9から、電気信号線69、第4の導電部63D、可動筒状部材46、内側パイプ77及びジョー42を通して、ジョー導電部93に高周波電流が伝達される。高周波電流が伝達されることにより、ジョー導電部93は第1の電位E1とは大きさの異なる第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能する。
移動操作ボタン133が第2の操作位置に位置する際には、可動プレート131とプローブ本体21との間は電気的に接続されている。このため、可動プレート131に高周波電流が伝達され、移動導電部141は第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。したがって、第2の処置モードでは、プローブ導電部23及び移動導電部141が第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能し、移動導電部141が第1の電極部25の一部となる。また、第2の処置モードでは、プローブ導電部23及び移動導電部141(プローブユニット3の先端部)に超音波振動が伝達されず、第1の電極部25及び第2の電極部105に高周波電流のみが伝達される。
第1の電極部25(プローブ導電部23及び移動導電部141)が第1の電位E1を有し、第2の電極部105(ジョー導電部93)が第2の電位E2を有するため、移動導電部141とジョー42との間で把持された把持対象に高周波電流が流れる。これにより、生体組織T等の把持対象が変成され、凝固が行われる。
第2の処置モードではジョー42の開閉方向についてジョー42とプローブ導電部23との間に移動導電部141が位置するため、第1の電極部25の移動導電部141(可動部対向面145)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー垂直対向面142)との間の距離が、第2の距離D2となる。第2の距離D2は、第1の距離D1より小さい。すなわち、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでは、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなる。第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなるため、第2の処置モードでは第1の処置モードに比べ、高周波電流による生体組織T(把持対象)の変成が促進される。したがって、高周波電流による把持対象の凝固性能が向上するため、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、把持対象の凝固性能の低下が防止される。これにより、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、安定して把持対象(生体組織)が封止される。
また、第2の処置モードでは、移動導電部141は、ジョー42の開閉方向についてジョー垂直対向面142(ジョー導電部93)とプローブ垂直対向面102との間に位置する。そして、移動導電部141とジョー42(第2の電極部105)との間で、把持対象が把持される。ジョー導電部93のジョー垂直対向面142は、ジョー42の開閉方向に垂直である。また、移動導電部141の可動部対向面145は、ジョー垂直対向面142に平行で、かつ、ジョー垂直対向面142に対向している。ジョー垂直対向面142及び可動部対向面145がジョー42の開閉方向に垂直であるため、移動導電部141とジョー導電部93(第2の電極部105)との間で把持される把持対象の把持力が大きくなる。把持力が大きくなることにより、高周波電流による把持対象の凝固性能がさらに向上する。これにより、さらに安定して把持対象(生体組織)が封止される。
そこで、上記構成の把持処置装置1では、以下の効果を奏する。すなわち、把持処置装置1では、第2の処置モードにおいて、ジョー42の開閉方向についてジョー42とプローブ導電部23との間に移動導電部141が位置する。このため、第1の電極部25の移動導電部141(可動部対向面145)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー垂直対向面142)との間の距離が、第2の距離D2となる。第2の距離D2は、第1の距離D1より小さい。すなわち、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでは、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなる。第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなるため、第2の処置モードでは第1の処置モードに比べ、高周波電流による生体組織T(把持対象)の変成が促進される。したがって、高周波電流による把持対象の凝固性能が向上するため、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、把持対象の凝固性能の低下を防止することができる。これにより、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、安定して把持対象(生体組織)を封止することができる。
(第2の実施形態の変形例)
なお、第2の実施形態では、第2の処置モードにおいてジョー42の開閉方向についてジョー垂直対向面142(ジョー導電部93)とプローブ垂直対向面102との間に移動導電部141が位置し、移動導電部141の可動部対向面145はジョー42の開閉方向に垂直であるが、これに限るものではない。例えば、変形例として図23に示す構成を適用してもよい。なお、図23においては、ジョー42とプローブ本体21(プローブ導電部23)との間に把持している生体組織Tは、省略して図示している。
図23に示すように、本変形例では、ジョー42は、第1の実施形態と同様の構成であり、ジョー垂直対向面97と、ジョー傾斜対向面98A,98Bと、を備える。すなわち、ジョー導電部93及びパッド部材(絶縁当接部材)95の位置関係が、第1の実施形態と同様である。
そして、第2の処置モードにおいて、ジョー42の開閉方向についてジョー傾斜対向面98Aとプローブ傾斜対向面103Aとの間に、移動導電部141が設けられている。本変形例では、移動導電部141は、ジョー傾斜対向面98A及びプローブ傾斜対向面103Aに略平行な可動部対向面147を備える。可動部対向面147は、ジョー42の開閉方向に垂直ではなく、第2の処置モードにおいてジョー傾斜対向面98Aと対向している。
本変形例でも、第1の処置モードにおいて移動導電部101は、ジョー42より基端方向側に位置している。このため、プローブ傾斜対向面103Aとジョー傾斜対向面98Aとの間の距離(プローブ傾斜対向面103Bとジョー傾斜対向面98Bとの間の距離)が、第1の処置モードでの第1の電極部25(プローブ導電部23)と第2の電極部105(ジョー導電部93)との間の第1の距離D1となる。第2の処置モードでは、ジョー42の開閉方向についてジョー傾斜対向面98Aとプローブ傾斜対向面103Aとの間に、移動導電部141が位置する。このため、可動部対向面147とジョー傾斜対向面98Aとの間の距離が、第2の処置モードでの第1の電極部25(移動導電部141)と第2の電極部105(ジョー導電部93)との間の第2の距離D2となる。
以上のように、本変形例においても、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでは、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなる。第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなるため、第2の処置モードでは第1の処置モードに比べ、高周波電流による生体組織T(把持対象)の変成が促進される。ただし、本変形例では、第1の実施形態と異なり、移動導電部141にジョー42の開閉方向に垂直な可動部対向面145が設けられていない。このため、第2の実施形態に比べ、第2の処置モードでの把持対象の把持力が低下する。
以上、変形例から、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離を小さくする構成は、第2の実施形態に限るものではない。すなわち、プローブユニット3に設けられる可動部(可動プレート131)が、プローブ本体21及びシース本体41に対して長手軸Cに沿って移動可能であればよい。そして、可動部(可動プレート131)の先端部に移動導電部141が設けられ、可動部を移動させる操作が入力される移動操作入力部(移動操作ボタン133)が設けられていればよい。この場合、移動操作入力部での操作により、第1の処置モードにおいてジョー42より基端方向側に移動導電部141が位置する。また、移動操作入力部での操作により、第2の処置モードにおいて、ジョー42の開閉方向についてジョー42とプローブ導電部23との間に移動導電部141が位置する。また、第2の処置モードでは、可動部(可動プレート131)を通して高周波電流を伝達することによって、第1の電極部25の少なくとも一部として移動導電部141が機能する。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、図24乃至図30を参照して説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図24及び図25は、プローブユニット3の先端部及びジョー42の構成を示す図である。図24は第1の処置モードを示し、図25は第2の処置モードを示す。図24及び図25に示すように、本実施形態では第1の実施形態及び第2の実施形態とは異なり、可動部(可動プレート81,131)は設けられていない。したがって、プローブ本体21(プローブユニット3)を通して高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23のみが第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。また、シース本体41(シースユニット5)を通して高周波電流が伝達されることにより、ジョー導電部93のみが第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能する。ジョー42は、第1の実施形態と同様の構成であり、ジョー垂直対向面97及びジョー傾斜対向面98A,98Bを備える。
図24の示すように、プローブ導電部23は、第1のプローブ垂直対向面151Aと、長手軸回り方向について第1のプローブ垂直対向面151Aから略90°の角度位置だけ離れて設けられる第2のプローブ垂直対向面151Bと、を備える。第1の処置モードでは第1のプローブ垂直対向面151Aは、ジョー42の開閉方向に垂直に、(すなわち、ジョー垂直対向面97に平行に)配置されている。第1の処置モードでは、パッド部材95のジョー垂直対向面(当接部)97が、第1のプローブ垂直対向面151Aに当接可能である。
第1の処置モードでは、長手軸Cに垂直、かつ、ジョー42の開閉方向に垂直な方向である幅方向について、第1のプローブ垂直対向面151Aの一方側には、第1のプローブ傾斜対向面152Aが設けられている。また、幅方向について第1のプローブ垂直対向面151Aの他方側には、第2のプローブ傾斜対向面152Bが設けられている。第2のプローブ傾斜対向面152Bは、第1のプローブ垂直対向面151Aと第2のプローブ垂直対向面151Bとの間に設けられている。第2のプローブ傾斜対向面152Bは、第1のプローブ傾斜対向面152Aから長手軸回り方向に略90°の角度位置だけ離れて設けられている。
第1の処置モードでは、第1のプローブ傾斜対向面152Aは、ジョー傾斜対向面98Aに略平行で、かつ、ジョー傾斜対向面98Aに対向している。また、第2のプローブ傾斜対向面152Bは、ジョー傾斜対向面98Bに略平行で、かつ、ジョー傾斜対向面98Bに対向している。すなわち、第1のプローブ傾斜対向面152A及び第2のプローブ傾斜対向面152Bにより、第1の処置モードにおいてジョー導電部93と対向する第1の電極対向表面153が形成されている。
ジョー垂直対向面(当接部)97が、第1のプローブ垂直対向面151A(プローブ導電部23)に当接した状態において、第1の電極対向表面153(第1の電極部25)とジョー導電部93(第2の電極部105)との間に、クリアランスが形成されている。第1の処置モードでは、第1の電極部25の第1の電極対向表面153(第1のプローブ傾斜対向面152A及び第2のプローブ傾斜対向面152B)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面98A,98B)との間の距離が、第1の距離D1となる。したがって、第1の電極対向表面153は、第1の距離D1だけ離れた状態で、ジョー導電部93に対向している。
図25の示すように、第2の処置モードでは、プローブ導電部23(プローブユニット3)は、ジョー42及びシースユニット5に対して長手軸回り方向に第1の処置モードから略90°の回転角度だけ回転した状態で、配置されている。このため、第2の処置モードでは第2のプローブ垂直対向面151Bは、ジョー42の開閉方向に垂直に、(すなわち、ジョー垂直対向面97に平行に)配置されている。第2の処置モードでは、パッド部材95のジョー垂直対向面(当接部)97が、第2のプローブ垂直対向面151Bに当接可能である。
第2の処置モードでは、長手軸Cに垂直、かつ、ジョー42の開閉方向に垂直な方向である幅方向について、第2のプローブ垂直対向面151Bの一方側には、第2のプローブ傾斜対向面152Bが設けられている。また、幅方向について第2のプローブ垂直対向面151Bの他方側には、第3のプローブ傾斜対向面152Cが設けられている。第3のプローブ傾斜対向面152Cは、第2のプローブ傾斜対向面152Bから長手軸回り方向に略90°の角度位置だけ離れ、かつ、第1のプローブ傾斜対向面152Aから長手軸回り方向に略180°の角度位置だけ離れて設けられている。
第2の処置モードでは、第2のプローブ傾斜対向面152Bは、ジョー傾斜対向面98Aに略平行で、かつ、ジョー傾斜対向面98Aに対向している。また、第3のプローブ傾斜対向面152Cは、ジョー傾斜対向面98Bに略平行で、かつ、ジョー傾斜対向面98Bに対向している。すなわち、第2のプローブ傾斜対向面152B及び第3のプローブ傾斜対向面152Cにより、第2の処置モードにおいてジョー導電部93と対向する第2の電極対向表面155が形成されている。それぞれのプローブ傾斜対向面152A〜152Cは前述したように配置されるため、第2の電極対向表面155は、長手軸回り方向について第1の電極対向表面153から略90°の角度位置だけ離れて配置されている。
ジョー垂直対向面(当接部)97が、第2のプローブ垂直対向面151B(プローブ導電部23)に当接した状態において、第2の電極対向表面155(第1の電極部25)とジョー導電部93(第2の電極部105)との間に、クリアランスが形成されている。第2の処置モードでは、第1の電極部25の第2の電極対向表面155(第2のプローブ傾斜対向面152B及び第3のプローブ傾斜対向面152C)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面98A,98B)との間の距離が、第1の距離D1より小さい第2の距離D2となる。したがって、第2の電極対向表面155は、第1の距離D1より小さい第2の距離D2だけ離れた状態で、ジョー導電部93に対向している。
図26及び図27は、回転操作ノブ37の内部構成を示す図である。図28は図26の28−28線断面図であり、図29は図27の29−29線断面図である。図26及び図28は、第1の処置モードでの処置時で、かつ、プローブユニット3及びシースユニット5が互いに対して長手軸回り方向に回転不可能な相対回転規制状態を示している。
図26及び図28に示すように、本実施形態では第1の実施形態と同様に、係合ピン47A,47Bが設けられている。そして、可動筒状部材46には貫通孔48A,48Bが設けられ、接続筒状部材45には係合凹部49A,49Bが設けられている。接続筒状部材45には、係合凹部49A,49Bに加えて、さらに2つの係合凹部49C,49Dが設けられている。係合凹部49C,49Dは、互いに対して長手軸回り方向に略180°の角度位置だけ離れた状態で設けられている。また、それぞれの係合凹部49C,49Dは、係合凹部49Aから長手軸回り方向に略90°離れた状態で設けられている。
係合ピン47Aは回転状態切替え部である回転状態切替えレバー161Aに固定され、係合ピン47Bは回転状態切替え部である回転状態切替えレバー161Bに固定されている。回転状態切替えレバー161A,161Bは、長手軸回り方向について互いに対して離れて配置されている。それぞれの回転状態切替えレバー161A,161Bは、術者の操作により第1の操作位置と第2の操作位置との間で移動可能な状態で、回転操作ノブ37に取付けられている。
第1の処置モードで、かつ、相対回転規制状態では、それぞれの回転状態切替えレバー161A,161Bは、第1の操作位置に位置している。この際、係合ピン47Aは、貫通孔48Aに挿通され、係合凹部49Aに係合している。また、係合ピン47Bは、貫通孔48Bに挿通され、係合凹部49Bに係合している。それぞれの係合ピン47A,47Bが対応する係合凹部49A,49Bに係合することにより、接続筒状部材45が回転操作ノブ37に固定される。また、それぞれの係合ピン47A,47Bが対応する貫通孔48A,48Bに挿通されることにより、可動筒状部材46及び回転操作ノブ37が、互いに対して長手軸回り方向に回転不可能な状態に、規制される。以上のような構成にすることにより、接続筒状部材45及び可動筒状部材46(シースユニット5及びジョー42)は、回転操作ノブ37と一体に筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能となる。
また、回転操作ノブ37を長手軸回り方向に回転した際には、回転操作ノブ37からの回転駆動力が、接続筒状部材45及び弾性部材51を介して、プローブ本体21(プローブユニット3)に伝達される。したがって、プローブユニット3が、回転操作ノブ37及び接続筒状部材45と一体に、筒状ケース31に対して回転可能となる。以上のように、相対回転規制状態では、プローブユニット3、シースユニット5及びジョー42を長手軸回り方向に一体に回転させる操作が、回転操作入力部である回転操作ノブ37により入力される。すなわち、相対回転規制状態では、シースユニット5及びプローブユニット3が、互いに対して長手軸回り方向に回転不可能となる。
図27及び図29は、シースユニット5及びプローブユニット3が互いに対して長手軸回り方向に回転可能な相対回転可能状態を示している。相対回転可能状態では、術者の操作により、それぞれの回転状態切替えレバー161A,161Bは、第1の操作位置から第2の操作位置に移動している。この際、係合ピン47Aは、貫通孔48Aに挿入されているが、係合凹部49A〜49Dのいずれとも係合していない。また、係合ピン47Bは、貫通孔48Bに挿入されているが、係合凹部49A〜49Dのいずれとも係合していない。それぞれの係合ピン47A,47Bがいずれの係合凹部49A〜49Dとも係合していないため、接続筒状部材45が回転操作ノブ37に固定されない。したがって、接続筒状部材45及び回転操作ノブ37は、互いに対して長手軸回り方向に回転可能となる。
一方、それぞれの係合ピン47A,47Bが対応する貫通孔48A,48Bに挿入されている。このため、可動筒状部材46及び回転操作ノブ37が、互いに対して長手軸回り方向に回転不可能な状態に、規制される。したがって、可動筒状部材46(シースユニット5及びジョー42)は、回転操作ノブ37と一体に筒状ケース31に対して長手軸回り方向に回転可能となる。
相対回転可能状態では、接続筒状部材45が回転操作ノブ37に固定されていない。このため、回転操作ノブ37を長手軸回り方向に回転した際には、回転操作ノブ37からの回転駆動力が接続筒状部材45に伝達されない。したがって、接続筒状部材45に固定されるプローブ本体21(プローブユニット3)に、回転操作ノブ37の回転操作が伝達されない。すなわち、プローブユニット3及び回転操作ノブ37は、互いに対して長手軸回り方向に回転可能となる。
以上のように、相対回転可能状態では、シースユニット5及びジョー42をプローブユニット3に対して長手軸回り方向に回転させる操作が、回転操作入力部である回転操作ノブ37により入力される。すなわち、相対回転可能状態では、シースユニット5及びプローブユニット3が、互いに対して長手軸回り方向に回転可能となる。
図30は、第2の処置モードでの回転操作ノブ37、シースユニット5及び接続筒状部材45の連結状態を示す図である。図30に示すように、第2の処置モードでは、接続筒状部材45が、回転操作ノブ47及び可動筒状部材46(シースユニット5)に対して第1の処置モードから長手軸回り方向に略90°の回転角度だけ回転した状態で、配置されている。この際、プローブユニット3及びシースユニット5は、互いに対して長手軸回り方向に回転不可能な相対回転規制状態となっている。
第2の処置モードで、かつ、相対回転規制状態では、それぞれの回転状態切替えレバー161A,161Bは、第1の操作位置に位置している。この際、第1の処置モードと同様に、係合ピン47Aは貫通孔48Aに挿通され、係合ピン47Bは貫通孔48Bに挿通されている。ただし、第1の処置モードとは異なり、係合ピン47Aは係合凹部49Cと係合し、係合ピン47Bは係合凹部49Dと係合している。このため、接続筒状部材45は、回転操作ノブ37及びシースユニット5に対して第1の処置モードから長手軸回り方向に略90°の回転角度だけ回転した状態で、回転操作ノブ37に固定されている。
プローブ本体21(プローブユニット3)は、相対回転規制状態及び相対回転可能状態の両方において、弾性部材51を介して接続筒状部材45に固定されている。したがって、第2の処置モードでは、プローブユニット3は、回転操作ノブ37及びシースユニット5に対して第1の処置モードから長手軸回り方向に略90°だけ回転した状態となっている。これにより、第2の処置モードでは、プローブ導電部23は、ジョー42及びシースユニット5に対して長手軸回り方向に第1の処置モードから略90°の回転角度だけ回転した状態で、配置される(図24及び図25参照)。
以上のように、回転状態切替えレバー(回転状態切替え部)161A,161B及び回転操作ノブ(回転操作入力部)37が、第1の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の第1の距離D1より、第2の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の第2の距離D2を小さくする電極間距離変更ユニットとなっている。なお、相対回転可能状態でのプローブユニット3及びシースユニット5の互いに対する長手軸回り方向の角度位置の変更は、前述のように回転操作ノブ37での操作により行ってもよく、プローブ本体21(プローブユニット3)を直接的に長手軸回り方向に回転させることにより行ってもよい。
次に、本実施形態の把持処置装置1の作用について説明する。把持処置装置1を用いて第1の処置モードで処置を行う際には、回転状態切替え部である回転状態切り替えレバー161A,161Bは、第1の操作位置に位置している。そして、係合ピン47Aは係合凹部49Aと係合し、係合ピン47Bは係合凹部49Bと係合している。これにより、プローブユニット3及びシースユニット5が、互いに対して長手軸回り方向に回転不可能な相対回転規制状態となる。この状態で、可動ハンドル33を固定ハンドル32に対して閉動作させる。これにより、第1の実施形態で前述したように、ジョー42がプローブ本体21(プローブユニット3)のプローブ導電部23に対して閉動作を行い、ジョー42とプローブ導電部23との間で血管等の把持対象を把持する。
そして、術者は処置モード入力部である処置モード入力ボタン57Aを押圧し、スイッチ部58Aが閉状態になる。これにより、超音波発生電流供給部8から超音波発生電流が出力されるとともに、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。そして、超音波振動子12で超音波振動が発生し、プローブ導電部23(プローブユニット3の先端部)まで超音波振動が伝達される。プローブユニット3の超音波振動によって発生する摩擦熱により、プローブ導電部23(プローブ本体21の先端部)とジョー42との間で把持された把持対象が凝固切開される。
また、高周波電流供給部9から出力された高周波電流は、電気信号線17、超音波振動子12、ホーン15、プローブ本体21(プローブユニット3)を通して、プローブ導電部23に伝達される。高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23は、第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。また、高周波電流供給部9から、電気信号線69、第4の導電部63D、可動筒状部材46、内側パイプ77及びジョー42を通して、ジョー導電部93に高周波電流が伝達される。高周波電流が伝達されることにより、ジョー導電部93は第1の電位E1とは大きさの異なる第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能する。プローブ導電部23(第1の電極部25)が第1の電位E1を有し、ジョー導電部93(第2の電極部105)が第2の電位E2を有するため、プローブ導電部23とジョー42との間で把持された把持対象に高周波電流が流れる。これにより、生体組織T等の把持対象が変成され、凝固が促進される。
第1の処置モードでの処置の後に第2の処置モードで処置を行う際には、術者は回転状態切替え部である回転状態切替えレバー161A,161Bを第2の操作位置に移動する。これにより、係合ピン47Aと係合凹部49Aとの係合が解除され、係合ピン47Bと係合凹部49Bとの係合が解除される。したがって、プローブユニット3及びシースユニット5が、互いに対して長手軸回り方向に回転可能な相対回転可能状態となる。
この状態で、シースユニット5及びジョー42をプローブユニット3に対して長手軸回り方向に回転させる操作を、回転操作入力部である回転操作ノブ37により行う。また、回転操作ノブ37での操作の代わりに、プローブユニット3を直接的にシースユニット5及びジョー42に対して回転させる操作を行ってもよい。そして、プローブユニット3を、回転操作ノブ37及びシースユニット5に対して第1の処置モードから長手軸回り方向に略90°だけ回転した角度位置に、位置させる。
そして、回転状態切替えレバー161A,161Bを第1の操作位置に移動する。この際、接続筒状部材45は、回転操作ノブ37に対して長手軸回り方向に第1の処置モードから略90°の回転角度だけ回転している。このため、係合ピン47Aは係合凹部49Cと係合し、係合ピン47Bは係合凹部49Dと係合する。これにより、プローブユニット3及びシースユニット5が、互いに対して長手軸回り方向に回転不可能な相対回転規制状態となる。
そして、第2の処置モードでの処置を行う。第2の処置モードで処置を行う際は、まず可動ハンドル33を固定ハンドル32に対して閉動作させる。これにより、第1の実施形態で前述したように、ジョー42がプローブ本体21(プローブユニット3)のプローブ導電部23に対して閉動作を行い、プローブ導電部23とジョー導電部93との間で血管等の把持対象を把持する。
そして、術者は処置モード入力部である処置モード入力ボタン57Bを押圧し、スイッチ部58Bが閉状態になる。これにより、高周波電流供給部9から高周波電流が出力される。この際、超音波発生電流供給部8から電流は出力されない。高周波電流供給部9から出力された高周波電流は、電気信号線17、超音波振動子12、ホーン15、プローブ本体21(プローブユニット3)を通して、プローブ導電部23に伝達される。高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。
また、高周波電流供給部9から、電気信号線69、第4の導電部63D、可動筒状部材46、内側パイプ77及びジョー42を通して、ジョー導電部93に高周波電流が伝達される。高周波電流が伝達されることにより、ジョー導電部93は第1の電位E1とは大きさの異なる第2の電位E2を有する第2の電極部105として機能する。第2の処置モードでは、プローブ導電部23(プローブユニット3の先端部)に超音波振動が伝達されず、第1の電極部25及び第2の電極部105に高周波電流のみが伝達される。第1の電極部25(プローブ導電部23)が第1の電位E1を有し、第2の電極部105(ジョー導電部93)が第2の電位E2を有するため、プローブ導電部23とジョー42との間で把持された把持対象に高周波電流が流れる。これにより、生体組織T等の把持対象が変成され、凝固が行われる。
第2の処置モードでは、プローブ導電部23は、ジョー42及びシースユニット5に対して長手軸回り方向に第1の処置モードから略90°の回転角度だけ回転した状態で、配置される。このため、第1の電極部25の第2の電極対向表面155(第2のプローブ傾斜対向面152B及び第3のプローブ傾斜対向面152C)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面98A,98B)との間の距離が、第2の距離D2となる。第2の距離D2は、第1の距離D1より小さい。すなわち、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでは、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなる。第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなるため、第2の処置モードでは第1の処置モードに比べ、高周波電流による生体組織T(把持対象)の変成が促進される。したがって、高周波電流による把持対象の凝固性能が向上するため、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、把持対象の凝固性能の低下が防止される。これにより、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、安定して把持対象(生体組織)が封止される。
そこで、上記構成の把持処置装置1では、以下の効果を奏する。すなわち、把持処置装置1では、第2の処置モードにおいて、プローブ導電部23は、ジョー42及びシースユニット5に対して長手軸回り方向に第1の処置モードから略90°の回転角度だけ回転した状態で、配置される。このため、第1の電極部25の第2の電極対向表面155(第2のプローブ傾斜対向面152B及び第3のプローブ傾斜対向面152C)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面98A,98B)との間の距離が、第2の距離D2となる。第2の距離D2は、第1の距離D1より小さい。すなわち、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでは、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなる。第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなるため、第2の処置モードでは第1の処置モードに比べ、高周波電流による生体組織T(把持対象)の変成が促進される。したがって、高周波電流による把持対象の凝固性能が向上するため、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、把持対象の凝固性能の低下を防止することができる。これにより、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、安定して把持対象(生体組織)を封止することができる。
(第3の実施形態の変形例)
なお、第3の実施形態では、第2の処置モードにおいてプローブ導電部23は、ジョー42及びシースユニット5に対して長手軸回り方向に第1の処置モードから略90°の回転角度だけ回転した状態で、配置されているが、これに限るものではない。例えば、変形例として図31及び図32に示すように、第2の処置モードにおいてプローブ導電部23は、ジョー42及びシースユニット5に対して長手軸回り方向に第1の処置モードから略180°の回転角度だけ回転した状態で、配置されてもよい。
本変形例では、プローブ導電部23は、第1の処置モードにおいてジョー垂直対向面97に平行な第1のプローブ垂直対向面162Aを備える。第1の処置モードでは、ジョー垂直対向面(当接部)97は、第1のプローブ垂直対向面162Aに当接可能である。長手軸Cに垂直、かつ、ジョー42の開閉方向に垂直な幅方向について、第1のプローブ垂直対向面162Aの両側には、第1のプローブ傾斜対向面163A及び第2のプローブ傾斜対向面163Bが設けられている。第1の処置モードでは、第1のプローブ傾斜対向面163Aは、ジョー傾斜対向面98Aに略平行で、かつ、ジョー傾斜対向面98Aに対向している。また、第2のプローブ傾斜対向面163Bは、ジョー傾斜対向面98Bに略平行で、かつ、ジョー傾斜対向面98Bに対向している。すなわち、第1のプローブ傾斜対向面163A及び第2のプローブ傾斜対向面163Bにより、第1の処置モードにおいてジョー導電部93と対向する第1の電極対向表面153が形成されている。
第1の処置モードでは、第1の電極部25の第1の電極対向表面153(第1のプローブ傾斜対向面163A及び第2のプローブ傾斜対向面163B)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面98A,98B)との間の距離が、第1の距離D1となる。したがって、第1の電極対向表面153は、第1の距離D1だけ離れた状態で、ジョー導電部93に対向している。
プローブ導電部23は、第2の処置モードにおいてジョー垂直対向面97に平行な第2のプローブ垂直対向面162Bを備える。第2のプローブ垂直対向面162Bは、長手軸回り方向について第1のプローブ垂直対向面162Aから略180°の角度位置だけ離れて、配置されている。第2の処置モードでは、ジョー垂直対向面(当接部)97は、第2のプローブ垂直対向面162Bに当接可能である。
長手軸Cに垂直、かつ、ジョー42の開閉方向に垂直な幅方向について、第2のプローブ垂直対向面162Bの両側には、第3のプローブ傾斜対向面163C及び第4のプローブ傾斜対向面163Dが設けられている。第2の処置モードでは、第3のプローブ傾斜対向面163Cは、ジョー傾斜対向面98Aに略平行で、かつ、ジョー傾斜対向面98Aに対向している。また、第4のプローブ傾斜対向面163Dは、ジョー傾斜対向面98Bに略平行で、かつ、ジョー傾斜対向面98Bに対向している。すなわち、第3のプローブ傾斜対向面163C及び第4のプローブ傾斜対向面163Dにより、第2の処置モードにおいてジョー導電部93と対向する第2の電極対向表面155が形成されている。第3のプローブ傾斜対向面163Cは、第1のプローブ傾斜対向面163Aから長手軸回り方向に略180°の角度位置だけ離れて、配置されている。また、第4のプローブ傾斜対向面163Dは、第2のプローブ傾斜対向面163Bから長手軸回り方向に略180°の角度位置だけ離れて、配置されている。したがって、第2の電極対向表面155は、長手軸回り方向について第1の電極対向表面153から略180°の角度位置だけ離れて配置されている。
第2の処置モードでは、第1の電極部25の第2の電極対向表面155(第3のプローブ傾斜対向面163C及び第4のプローブ傾斜対向面163D)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面98A,98B)との間の距離が、第1の距離D1より小さい第2の距離D2となる。したがって、第2の電極対向表面155は、第1の距離D1より小さい第2の距離D2だけ離れた状態で、ジョー導電部93に対向している。
以上、変形例から、第1の処置モードと比較して第2の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離を小さくする構成は、第3の実施形態に限るものではない。すなわち、プローブ導電部23は、第1の処置モードにおいてジョー導電部93から第1の距離D1だけ離れた状態でジョー導電部93に対向する第1の電極対向表面153と、長手軸回り方向について第1の電極対向表面153から離れて設けられる第2の電極対向表面155と、を備えればよい。この場合、第2の処置モードにおいてジョー導電部93から第1の距離D1より小さい第2の距離D2だけ離れた状態で、ジョー導電部93に第2の電極対向表面155が対向している。そして、回転状態切替え部(回転状態切替えレバー161A,161B)により、シースユニット5及びプローブユニット3が互いに対して長手軸回り方向に回転不可能な相対回転規制状態と、シースユニット5及びプローブユニット3が互いに対して長手軸回り方向に回転可能な相対回転可能状態との間で、シースユニット5及びプローブユニット3の状態が切替えられる。
(その他の変形例)
なお、第1の実施形態では、可動ハンドル33は固定ハンドル32より先端方向側に位置しているが、これに限るものではない。例えば、前述の実施形態の変形例として図33に示すように、可動ハンドル33が固定ハンドル32より基端方向側に位置してもよい。本変形例においても、前述の実施形態と同様に、可動ハンドル33は固定ハンドル32に対して長手軸Cと略平行に開閉可能である。そして、可動ハンドル33の開閉動作に対応して、ハンドルユニット4及びプローブユニット3に対してシース本体41の可動筒状部材46及び内側パイプ77が長手軸Cに沿って移動する。内側パイプ77が長手軸Cに沿って移動することにより、ジョー42がプローブ導電部23に対して開閉動作を行う。
また、前述の実施形態では、第1の処置モードにおいて、高周波電流供給部9から高周波電流が出力され、第1の電極部25及び第2の電極部105に高周波電流が伝達される。しかし、第1の処置モードにおいて、例えば高周波電流供給部9から高周波電流が出力されず、第1の電極部25及び第2の電極部105に高周波電流が伝達されなくてもよい。すなわち、第1の処置モードでは、少なくとも超音波振動子12で超音波振動が発生し、プローブ導電部23に少なくとも超音波振動が伝達されればよい。これにより、第1の処置モードにおいて、生体組織T等の把持対象の凝固切開が行われる。
以上より、ジョー42の開閉方向についてジョー42とプローブ導電部23との間、及び、プローブ導電部23の少なくともいずれか一方に、第1の電極部25が設けられていればよい。この場合、プローブユニット3を通して高周波電流が伝達された状態では、第1の電極部25は第1の電位E1を有する。そして、ジョー42の開閉方向についてジョー42と第1の電極部25との間、及び、ジョー導電部93の少なくともいずれか一方に、第2の電極部105が設けられていればよい。この場合、シースユニット5を通して高周波電流が伝達された状態で、第2の電極部105は第1の電位E1とは大きさの異なる第2の電位E2を有する。そして、プローブ導電部23に少なくとも超音波振動が伝達される第1の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の第1の距離D1より、第1の電極部25及び第2の電極部105に高周波電流のみが伝達される第2の処置モードでの第1の電極部25と第2の電極部105との間の第2の距離D2を小さくする電極間距離変更ユニットが、設けられていればよい。前述した第1の実施形態では、電極間距離変更ユニットは、移動操作入力部である移動操作レバー83を備える。また、第2の実施形態では、電極間距離変更ユニットは、移動操作入力部である移動操作ボタン133を備える。第3の実施形態では、電極間距離変更ユニットは、回転状態切替え部である回転状態切替えレバー161A,161B及び回転操作入力部である回転操作ノブ37を備える。
(参照例)
次に、本発明の参照例について、図34乃至図36を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
図34は、プローブユニット3の先端部及びジョー42の構成を示す図である。図34に示すように、本参照例では、第1の実施形態と同様に、プローブ本体21(プローブユニット23)の先端部に、プローブ導電部23が設けられている。プローブユニット3を通して高周波電流が伝達されることにより、プローブ導電部23は第1の電位E1を有する第1の電極部25として機能する。
第1の実施形態と同様に、ジョー42は、ジョー本体91、ジョー導電部93、パッド部材(絶縁当接部材)95が設けられている。また、ジョー42は、第1の処置領域X1と、第1の処置領域X1より基端方向側に設けられる第2の処置領域X2と、を備える。すなわち、第2の処置領域X2は、長手軸Cに平行な方向について第1の処置領域から離れて位置している。第1の処置領域X1では、前述した第1の処置モードでの処置が行われ、第2の処置領域X2では、前述した第2の処置モードでの処置が行われる。
図35は、図34の35−35線断面図である。図35に示すように、プローブ導電部23は、第1の実施形態と同様に、プローブ垂直対向面102及びプローブ傾斜対向面103A,103Bとを備える。第1の処置領域X1には、パッド部材95により第1のジョー垂直対向面(当接部)171が形成されている。第1のジョー垂直対向面171は、ジョー42の開閉方向に垂直であり、プローブ垂直対向面102に平行である。ジョー42をプローブ導電部23に対して閉じた状態で、第1のジョー垂直対向面(当接部)171はプローブ垂直対向面102(プローブ導電部23)に当接可能である。
長手軸Cに垂直で、かつ、ジョー42の開閉方向に垂直な方向である幅方向について、第1のジョー垂直対向面171の両側には、ジョー導電部93によりジョー傾斜対向面172A,172Bが形成されている。ジョー傾斜対向面172Aは、プローブ傾斜対向面103Aに略平行で、プローブ傾斜対向面103Aから第1の距離D1だけ離れた状態で設けられている。また、ジョー傾斜対向面172Bは、プローブ傾斜対向面103Bに略平行で、プローブ傾斜対向面103Bから第1の距離D1だけ離れた状態で設けられている。したがって、第1の処置領域X1では、第1の電極部25のプローブ導電部23(プローブ傾斜対向面103A,103B)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面172A,172B)との間に、第1の距離D1を有する。
図36は、図34の36−36線断面図である。図36に示すように、第2の処置領域X2では、パッド部材95が設けられていない。また、第2の処置領域X2でも、ジョー導電部93によりジョー傾斜対向面172A,172Bが形成されている。ジョー傾斜対向面172A,172Bのプローブ導電部23に対する位置関係は、第1の処置領域X1と同様である。
第2の処置領域X2では、第2のジョー垂直対向面173がジョー導電部93により形成されている。長手軸Cに垂直で、かつ、ジョー42の開閉方向に垂直な方向である幅方向について、第2のジョー垂直対向面173の両側に、ジョー傾斜対向面172A,172Bが位置している。第2のジョー垂直対向面173は、ジョー42の開閉方向に垂直で、プローブ垂直対向面102に平行である。第2のジョー垂直対向面173は、プローブ垂直対向面102から第1の距離D1より小さい第2の距離D2だけ離れた状態で、配置されている。したがって、第1の処置領域X1では、第1の電極部25のプローブ導電部23(プローブ垂直対向面102)と第2の電極部105のジョー導電部93(第2のジョー垂直対向面173)との間に、第1の距離D1より小さい第2の距離D2を有する。
前述した第1の処置モードでの処置は、ジョー42の第1の処置領域X1とプローブ導電部23との間で把持対象を把持して行われる。第1の処置領域X1では、パッド部材95により第1のジョー垂直対向面171が形成されている。このため、第1の電極部25のプローブ導電部23(プローブ傾斜対向面103A,103B)と第2の電極部105のジョー導電部93(ジョー傾斜対向面172A,172B)との間の距離が、第1の距離D1となる。第1の距離D1は、十分に大きい。このため、プローブ本体21(プローブユニット3)が超音波振動している状態においても、第1の電極部25(プローブ導電部23)と第2の電極部105(ジョー導電部93)との接触が有効に防止される。これにより、短絡(short circuit)による把持処置装置1の故障が有効に防止される。
また、第1の処置モードではプローブ本体21が超音波振動している。このため、ジョー42をプローブ導電部23に対して閉じた状態でプローブ導電部23に当接可能なパッド部材95は、第1の処置モードでの処置により磨耗する。前述のように、第1の処置領域X1では、第1の電極部25と第2の電極部105との間の第1の距離D1は、大きい。このため、第1の処置モードでの処置によりパッド部材95が磨耗した場合でも、把持処置装置1の使用開始からプローブ導電部23(第1の電極部25)とジョー導電部93(第2の電極部105)とが接触するまでの経過時間が長くなる。したがって、把持処置装置1の寿命が長くなる。
前述した第2の処置モードでの処置は、ジョー42の第2の処置領域X2とプローブ導電部23との間で把持対象を把持して行われる。第2の処置領域X2では、パッド部材95が設けられてなく、ジョー導電部93により第2のジョー垂直対向面173が形成されている。このため、第1の電極部25のプローブ導電部23(プローブ垂直対向面102)と第2の電極部105のジョー導電部93(第2のジョー垂直対向面173)との間の距離が、第2の距離D2となる。第2の距離D2は、第1の距離D1より小さい。すなわち、第1の処置領域X1と比較して第2の処置領域X2では、第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなる。第1の電極部25と第2の電極部105との間の距離が小さくなるため、第2の処置領域X2では第1の処置領域X1に比べ、高周波電流による生体組織T(把持対象)の変成が促進される。したがって、高周波電流による把持対象の凝固性能が向上するため、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、把持対象の凝固性能の低下が防止される。これにより、超音波振動を用いない第2の処置モードにおいても、第2の処置領域X2で処置を行うことにより、安定して把持対象(生体組織)が封止される。
また、第2の処置領域X2では、プローブ導電部23のプローブ垂直対向面102は、ジョー42の開閉方向に垂直である。また、ジョー導電部の第2のジョー垂直対向面173は、プローブ垂直対向面102に平行で、かつ、プローブ垂直対向面102に対向している。プローブ垂直対向面102及び第2のジョー垂直対向面173がジョー42の開閉方向に垂直であるため、ジョー導電部93(第2の電極部105)とプローブ導電部23(第1の電極部25)との間で把持される把持対象の把持力が大きくなる。把持力が大きくなることにより、高周波電流による把持対象の凝固性能がさらに向上する。これにより、さらに安定して把持対象(生体組織)が封止される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。
以下、本発明の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1)
長手軸に沿って延設され、基端方向から先端方向に超音波振動を伝達可能なプローブユニットと、
前記プローブユニットが挿通され、前記プローブユニットとの間が電気的に絶縁されるシースユニットと、
前記プローブユニットの先端部に設けられ、前記プローブユニットを通して高周波電流が伝達された状態で第1の電位を有する第1の電極部として機能するプローブ導電部と、
前記プローブ導電部に対して開閉可能に前記シースユニットの先端部に取付けられるジョーであって、絶縁材料から形成され、前記プローブ導電部に対して前記ジョーが閉じた状態で前記プローブ導電部に当接可能な当接部と、前記シースユニットを通して高周波電流が伝達された状態で前記第1の電位とは大きさが異なる第2の電位を有する第2の電極部として機能するジョー導電部と、を備えるジョーと、
を具備し、
前記ジョーは、
前記当接部が設けられ、前記ジョー導電部が前記プローブ導電部との間に第1の距離を有する第1の処置領域であって、前記プローブ導電部に少なくとも前記超音波振動が伝達される第1の処置モードでの処置が行われる第1の処置領域と、
前記当接部が設けられず、前記ジョー導電部が前記プローブ導電部との間に前記第1の距離より小さい第2の距離を有する第2の処置領域であって、前記長手軸に平行な方向について前記第1の処置領域から離れて位置し、前記プローブ導電部及び前記ジョー導電部に前記高周波電流のみが伝達される第2の処置モードでの処置が行われる第2の処置領域と、
を備える把持処置装置。
(付記項2)
前記プローブ導電部は、前記ジョーの開閉方向に垂直に配置され、前記ジョーに対向するプローブ垂直対向面を備え、
前記当接部は、前記第1の処置領域で前記プローブ垂直対向面に当接可能で、前記プローブ垂直対向面に平行な第1のジョー垂直対向面を備え、
前記ジョー導電部は、前記第2の処置領域において、前記プローブ垂直対向面に平行で、かつ、前記プローブ垂直対向面から前記第2の距離だけ離れて配置される第2のジョー垂直対向面を備える、
付記項1の把持処置装置。