JP5580778B2 - 車両用原動部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、側壁によって車体横断方向を境界付けられ、隔壁によって車体前後方向の一方を境界付けられたエンジンルーム内に配置されるとともに車体フレームに支持されたエンジンと、前記エンジンの上方に配置されたエアクリーナユニットとを備えた車両用原動部構造に関する。このエアクリーナユニットは、エアクリーナエレメントを収納する収納部とこの収納部にエアクリーナエレメントを収納する収納口とを有するエアクリーナ本体と、前記収納口を覆うキャップとを含んでいる。
上記のような車両用原動部構造は、特許文献1に記載されている。この従来の車両用原動部構造では、容器状本体と、この容器状本体の軸芯方向一端に装着されるキャップとからなるエアクリーナは、その容器状本体の軸芯が前後水平を向き、かつ、キャップが前方に配置する前後横向き姿勢でラジエータ支持用ステーの近くで、板バネ材からなる支持具に上方から嵌め込み装着されている。さらに、ラジエータ支持用ステーの長手方向の中間部がクランク状に折り曲げられることで、エアクリーナのキャップの端面に当接するように上下向きに延びた規制部を形成している。この規制部が支持具に支持されたエアクリーナのキャップの端面に前方から当接しているので、エアクリーナの軸芯方向他方(つまり、前方)側への移動が規制されている。このエアクリーナは支持具によって下方から支えられるとともに、その前後方向(車体前後方向)の移動がラジエータ支持用ステーによって規制されるので、確実な取り付けが実現している。しかしながら、キャップがラジエータ支持用ステーによって押さえ込まれているので、容器状本体に収納されているエアクリーナエレメントの点検や交換のときには、まず、容器状本体を取り外すか、ラジエータ支持用ステーを取り外すかしない限り、キャップを外してエアクリーナエレメント取り出すことができない。また、ラジエータ支持用ステーを取り外した状態で、キャップを外してエアクリーナエレメントを取り出す場合、その取り出し方向が車体前後方向となっており、冷却ファンなどの部材が邪魔となって、保守点検作業がし辛いという問題点がある。
エンジン周囲の付属装置や機構に干渉することなくエンジンルーム内に円筒状のエアクリーナを配置するために、機体前後方向に沿ってではなく、機体前後方向に対して傾斜させた車両用原動部構造が特許文献2に記載されている。このエアクリーナでは、その外周面から前方に導出された外気吸入ホース(浄気吸入ホース)が、ラジエータの前後を隔絶する仕切り板(隔壁)を通して前方に延出され、その吸気口がラジエータの前方において下向きに開口されている。また、エアクリーナの底端部から導出された浄気吸入ホースがエンジンの右側面に設けられた吸気マニールドに連通接続されている。さらに、エアクリーナの機体外方側の端部にエアクリーナエレメント出し入れ用のキャップが脱着自在に装着され、このキャップの装着されたエアクリーナ端部が斜め前方外方に向かうようエアクリーナの傾斜方向が設定されている。この車両用原動部構造では、キャップの取り外し方向が開放空間となっているので、取り外し作業の際の空間的な問題は解消されるが、エアクリーナが外気吸入ホースと浄気吸入ホースとによって持ち上げられた浮き構造となっていることから、キャップの取り外しやエアクリーナエレメント出し入れ時にエアクリーナの姿勢が不安定となる問題点がある。
特開平8‐61168号公報(段落番号〔0014−0028〕、図3、図5) 特開2006‐27519号公報(段落番号〔0016−0021〕、図2、図3)
上記実情に鑑み、本発明の目的は、エアクリーナの保守点検、特にエアクリーナエレメントの出し入れが容易な車両用原動部構造を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明による車両用原動部構造は、側壁によって車体横断方向を境界付けられ、隔壁によって車体前後方向の一方を境界付けられ、ボンネットによって上方を境界付けられたエンジンルーム内に配置されるとともに車体フレームに支持されたエンジンと、前記エンジンの上方に配置されたエアクリーナユニットとを備え、前記エアクリーナユニットは、エアクリーナエレメントを収納する収納部と前記収納部に前記エアクリーナエレメントを収納する収納口とを有するエアクリーナ本体と、前記収納口を覆うキャップとを含み、
前記エアクリーナエレメントの前記収納部への収納方向及び前記収納部からの取り出し方向が車体横断方向でかつ前記エアクリーナエレメントの取り出し軌跡が前記側壁と干渉しない姿勢で前記エアクリーナユニットを下方から保持する保持部材を設けるとともに前記車体フレームに支持されたブラケットと、前記エアクリーナユニットの前記収納方向への移動を規制するように前記エンジンの上方を前記車体前後方向に延びるとともに一端を前記隔壁に固定され他端を前記ブラケットに固定されるステーとを備えている。
この構成によると、ボンネットを開放し、エアクリーナユニットのキャップを外すと、エンジンルームを境界付けている側壁に邪魔されずに、エアクリーナユニットの収納部からエアクリーナエレメントをまっすぐ取り出すことができる。また、収納部の収納口からが実質的にエアクリーナエレメントの取り出し方向の空間が側壁と干渉しないことから、この収納口を覆うキャップの取り外し・装着作業をスムーズに行うことが可能である。これによって、エアクリーナユニットの保守点検作業が簡単となる。さらに、このエアクリーナユニットを所定の位置に保持する保持部材が、フレームに支持されているブラケットに設けられているので、エアクリーナユニットの位置は安定する。また、本発明では、このブラケットに一端を隔壁に固定されているステーが固定される構成を採用しているので、ブラケットとステーからなる構造体の剛性が高く、安定したものとなり、結果的に、エアクリーナユニットの位置もさらに安定することになる。さらに、このステーがエアクリーナユニットの収納方向への移動を規制するように車体前後方向に延びているので、収納部にエアクリーナエレメントを挿入する際に力が作用してもステーによってエアクリーナユニットの動きが阻止される。
本発明の好適な実施形態の1つでは、マフラーが前記ステーを挟んで前記エアクリーナユニットの反対側に配置されている。この構成により、エアクリーナユニットがマフラー側に移動したとしても、マフラーとの間にステーが介在するので、マフラーとの直接接触が回避される。このことは、エアクリーナユニットがマフラーからの直接的な熱伝達で温められることを防止する。
本発明の別な好適実施形態の1つでは、前記エアクリーナユニットの浄気吸入ホースの前記マフラー側への移動が前記ステーによって規制されるように、前記浄気吸入ホースが前記ステーの下方に配置されている。この構成では、エアクリーナユニットの浄気吸入ホースの上方への移動がステーによって押さえ込まれる。
本発明のさらに別な好適実施形態の1つでは、前記エンジンを冷却するファンによる冷却風が前記ステーに沿って前記隔壁へ流れる冷却風流通路が形成されている。ステーが車体前後方向に延びているので、そのステーの延び領域では、ステーを横切るように部品を配置することができない。その結果、ステーに沿って隔壁へ流れる冷却風流通路を作り出すことが容易となる。
本発明のさらに別な好適実施形態の1つでは、前記ブラケットはエアコン用コンプレッサの支持部を形成している。エアコン用コンプレッサの支持部は、コンプレッサの振動による共振を避けるために高い剛性を持つことが好ましい。従って、ステーとの連結により高い剛性を持つブラケットにエアコン用コンプレッサの支持部を形成することは利点がある。
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記ステーがエンジンルーム内の車体横断方向の中央を延びており、前記エンジンルームの上方を覆うボンネットの開放姿勢を保持する突っ張り棒の係止部材が前記ステーに設けられている。この構成により、開放姿勢のボンネットを支持する突っ張り棒の係止部材を左右いずれかの側壁の上端に設けるのではなく、側壁よりは車体中心線に近い位置となるステーに設けることができる。これにより、突っ張り棒が受ける斜め方向の曲げ力を小さくすることができ、安定的に開放姿勢のボンネットを支持することができる。また、係止部材に係止した突っ張り棒を係止方向に引っ張る係止バネを採用する場合には、この係止バネをステーに取り付けることができる。
本発明の基本的構成を示す模式図である。 本発明の車両用原動部構造を適用したトラクタの側面図である。 図2のトラクタの原動部構造の平面図である。 図2のトラクタにおけるボンネットの開閉構造を示す側面図である。 図2のトラクタにおけるステーを含むブラケットアッシとエアクリーナユニットの構造を示す斜視図である。
本発明による車両用原動部構造の具体的な実施形態を説明する前に、本発明の基本的構成を図1の模式図を用いて説明する。図1の(a)に示された車両用原動部構造は、左右の側壁72によって車体横断方向を境界付けられ、車体前後方向の一方、この図では運転室側を隔壁71によって境界付けられエンジンルームを前フレーム2などにより構成される車体フレームの上方に形成している。エンジンルームの上方はボンネット74によって覆われている。エンジンルームの下部空間にはエンジンが車体フレームに支持されている。エンジンの上方には、種々のエンジン補機が備えられているが、本発明で第1に重要視されているのはエアクリーナユニット6であり、特にその姿勢である。このエアクリーナユニット6は、エアクリーナエレメントを収納する収納部とこの収納部に前記エアクリーナエレメントを収納する収納口とを有するエアクリーナ本体と、前記収納口を覆うキャップとを含んでいる。エアクリーナエレメントの清掃時には、キャップを外してエアクリーナ本体の収納部からエアクリーナエレメントを取り出す必要がある。つまり、キャップを外すための作業スペースとエアクリーナエレメントを収納部から引き出す作業スペースが必要となる。また、清掃を終えたエアクリーナエレメントを元に戻す時や新しいエアクリーナエレメントを装填する時も同様の作業スペースが必要となる。
この発明では、エアクリーナエレメントの収納部への収納方向及びこの収納部からの取り出し方向が車体横断方向でかつ前記エアクリーナエレメントの取り出し軌跡が側壁72の上端縁と干渉しない姿勢で配置されている。収納部の収納口は側壁72の上端より上方に位置しており、エアクリーナユニット6の収納口とこの収納口を覆うキャップの横側方の外界からの覆いは、閉鎖されたボンネット74のサイドスカートによって実現している。従って、ボンネット74を開放すると、図1(a)に示すように、エアクリーナユニット6の収納口又はこの収納口を覆うキャップは側壁72に遮られることなしに機体横断方向で直接外界に臨んでいる。エアクリーナユニット6を下方から保持する保持部材84が設けられているが、上述したエアクリーナユニット6の姿勢を維持するためには、保持部材84自体も位置ずれしないことが重要である。このため、保持部材84は車体フレーム2に支持されたブラケット81に設けられている。
なお、ここで車体フレームに支持されるという用語は、このブラケットが、エンジンを介して車体フレームに支持された構造、あるいは、エンジンと車体フレームの両方に支持された構造も含むものである。さらに、保持部材84によって下方から保持されているエアクリーナエレメントの収納方向(車体横断方向)へのエアクリーナユニット6の移動や位置ずれを規制するために一端を隔壁71に固定され他端をブラケット81に固定されるステー82が利用されている。エアクリーナユニット6のキャップと対向する側の面、例えばエアクリーナユニット6の底面に面しながら車体前後方向に延びる部分をステー82が有することで、エアクリーナユニット6の収納方向の移動や位置ずれがステー82によって規制される。ステー82と保持部材84とブラケット81は、互いに分割構造であっても、溶接やボルト連結などによって一体的な剛性を作り出すことで強固なものとなる。このため、ステー82が固定している隔壁71も、ステー82を介してブラケット81に構造的に連結することよって車体前後方向の強度が補強される。
さらに上述した車両用原動部構造をさらに発展させた形態を図1の(b)を用いて説明する。
いずれもホースや管に接続する必要のあるエアクリーナユニット6やマフラー40の設置スペースはエンジンルーム内で限定される。このため、エンジン上方の空間をエアクリーナユニット6とマフラー40とに分け与えることはスペースの有効利用として効果的である。しかも、車体前後方向に延びているステー82を挟んで互いに対向配置することで、ステー82とエアクリーナユニット6とマフラー40の収まりが良くなる。その際、ステー82がマフラー40とエアクリーナユニット6との直接的な接触を防止する機能を果たすことができる。また、ステー82が車体前後方向に延びている配置から、エンジンを冷却するファンによる冷却風をステー82に沿って隔壁71へ直線的に流れる冷却風流通路を形成することも容易となる。
エアクリーナユニット6の浄気吸入ホースはエンジンの方に引き回す必要があるが、その引き回し路程で、マフラー40ないしはマフラー40の接続管に浄気吸入ホースが隣接する部分が生じやすい。この対策として、浄気吸入ホースのマフラー40側への移動がステー82によって規制されるように、浄気吸入ホースがステー82の下方に配置することができる。上述したようにブラケット81は隔壁71と固定したステー82と一体となった高い剛性をもつ構造体であるので、このブラケット81にエアコン用コンプレッサの支持部を形成することで、ブラケット81にエアコン用コンプレッサ及びエアクリーナユニット6の兼用支持体としての機能をもたせることができる。
図1(b)では、ブラケット81は、縦支柱80と補助ステー83を備えている。縦支柱80はブラケット81を車体フレーム2に連結する構造要素であり、補助ステー83はブラケット81をエンジンルーム前方の固定部材、例えばラジエータなどの連結する構造要素である。縦支柱80はエンジンルーム内を上下に延びており、補助ステー83は車体前後方向に延びている。
さらに、図1(b)では、ボンネット74が車体横断方向に延びた水平枢支軸回りに揺動するように構成されている。このようなボンネット74には、その開放姿勢を保持する突っ張り棒が必要となるが、ステー82を車体横断方向の中央を延びるように配置し、ボンネット74の開放姿勢を保持する突っ張り棒の係止部材をステー82に設けることで、ボンネット74の支点を機体中心にバランスよく配置することができるだけでなく、突っ張り棒の形状もコストのかかる曲げ部分を必要としないものとなる。さらに、突っ張り棒を係止部材に係止させた状態で、突っ張り棒を突っ張らせる方向にボンネット74を引っ張るバネの一端がステー82に連結できる。
以下、本発明の具体的な実施の形態として、トラクタに適用された車両用原動部構造を図面に基づいて説明する。
図2にトラクタの全体側面が示されている。このトラクタは、前輪9aと後輪9bによって支持された車体を備え、車体は前フレーム2を含む車体フレームやキャビン3から構成されている。車体には、原動部4、静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置91、ミッションケース92、および、デフケース93が連結されている。前輪9aは操向駆動車輪として構成され、前フレーム2の下部にローリング可能に連結されている。後輪9bは駆動車輪として構成され、デフケース93に連結されている。
図3と図4とに示されているように、原動部4は、車両の前側に形成されるエンジンルーム内に配置される。ここでは直方体状に形成されたエンジンルームは、パネルカバー70の前壁であるととものエンジンルームの後壁でもある隔壁71と、エンジンルームの側壁72としての左右一対のサイドカバー72と、エンジンルームの前壁であるフロントグリル73とによって四方を境界付けられている。さらに、エンジンルームの下方は板材からなる左右一対の前フレーム2によって境界付けられ、エンジンルームの上方は、隔壁71の上端領域に設けられ車体横断方向で水平に延びた枢支軸心回りで揺動するボンネット74によって覆われている。ボンネット74は、天井板74aから下方に延びたフロントスカート74bと左右のサイドスカート74cとからなる。ボンネット74が閉鎖された状態において、サイドスカート74cは、サイドカバー72から引き継いでエンジンルームの上部領域の側方を覆う。
原動部4は、エンジン5とエンジン補機とを備えている。エンジン5は水冷式の縦型ディーゼルエンジンであり、ここで取り上げる補機及びエンジン関連部品は、マフラー40、ラジエータ41、冷却ファン42、発電機43、エアコン用コンプレッサ44、オイルクーラ45、エアコン用コンデンサ46、バッテリ47、エアクリーナユニット6などである。
エンジン5はエンジンルームの隔壁71側にエンジン出力軸が車体前後方向に向くように配置されており、エンジン5の前方にはラジエータ41が立設され、エンジン冷却水がエンジン5内の冷却水ジャケットとラジエータ41との間で循環する。ラジエータ41とエンジン5の前壁との間に、冷却ファン42が配置され、冷却ファン42の後方に発電機43とエアコン用コンプレッサ44とが配置されている。冷却ファン42と発電機43とエアコン用コンプレッサ44とは、エンジン5の前面下部から前方に突き出している出力軸51から動力を受ける複数のベルト伝動ユニットによって駆動される。冷却ファン42の回転により、外気がフロントグリル73を通してエンジンルーム内に導入され、ラジエータ41を通過したのち、さらに発電機43やコンプレッサ44を冷却し、エンジン5の上方や側方の空間を流れていく。
また、ラジエータ41前方の冷却風流路に、エヤコン用コンデンサ46と各種油圧装置の作動油を冷却するオイルクーラ45が前後に並んで立設されている。さらに、フロントグリル73の直ぐ後側にバッテリ47が冷却風を受けるように配置されている。図面では示されていないが、出力軸51はフロントPTO軸としてバッテリ47やラジエータ41の下方をさらに延びており、各種の駆動型作業装置を駆動することを可能にしている。
エンジンルーム内の冷却ファン42より後方でエンジン5の上方の補機用上部空間の車体横断方向の一方側(この実施形態では車体右側領域)には、円柱状のエアクリーナユニット6が、その中心線が平面視で機体横断方向に沿うように配置されている。エアクリーナユニット6は、図5に示すように、内部に円柱状の収納部62を有するエアクリーナ本体61と、収納部62の収納口63を通じて出し入れされる円柱状のエアクリーナエレメント60と、収納口63を閉鎖するキャップ64とからなる。エアクリーナユニット6は、収納部62の底が補機用上部空間の内側を向き、キャップ64が外側を向く姿勢となっている。
ここで重要なことは、図3から明らかなように、トラクタ側面視で、エアクリーナユニット6が、実質的にサイドカバー72の上端とほぼ同じ高さか、あるいはサイドカバー72の上端より上側に位置していることである。このエアクリーナユニット6は、キャップ64の外し方向及びエアクリーナエレメント60の収納部62からの取り出し方向が円柱状の収納部62の長手中心線に沿った方向、つまり機体横断方向となっている。従って、このエアクリーナユニット6とサイドカバー72の上端との位置関係により、キャップ64の着脱はもちろん、特に、エアクリーナエレメント60の収納部62からの取り出しと収納にサイドカバー72や他の部材が邪魔にならない。厳密に言えば、少なくとも、機体横断方向に沿って取り出されるエアクリーナエレメント60がサイドカバー72の上端を通過できるように、エアクリーナエレメント60の高さ位置が設定されている。もちろん、エアクリーナユニット6の下端部がサイドカバー72の上端よりも下側に位置するようにエアクリーナユニット6を配置して、エアクリーナエレメント60がサイドカバー72の上端を通過できるように構成してもよい。
エアクリーナ本体61の底側の外周面から出ている外気吸入ホース65が、エアクリーナ本体61の周面に沿ってキャップ64の方へ延び、そこからほぼ90度に屈曲してさらに車体前後方向で前方にラジエータ41の上端まで延びて、開口している。また、エアクリーナ本体61の底部から出ている浄気吸入ホース66は、車体横断方向に僅かに延びた後ほぼ90度に屈曲して車体前後方向で前方に延びながら下方へ延び、エンジン5の吸気マニホールドに接続されている。
エンジンルーム内の冷却ファン42より後方でエンジン5の上方の補機用上部空間の車体横断方向の他方側(この実施形態では車体左側領域)には、円筒状のマフラー40が、その中心線が平面視で機体前後方向に沿うように配置されている。つまり、マフラー40とエアクリーナユニット6とがエンジンルーム内のエンジン5の上方空間に、車体前後中心線に関して左右に分かれて平面視でT字状に配置されている。マフラー40の後端から延びた排気管48はエンジン5の左側面の排気マニホールドに接続され、マフラー40の前端から延びた排気管48はラジエータ41の下を潜って機体前端にまで延出され、エンジン排気が前フレーム2の左外側において前方下向きに排出されるようになっている。
この実施形態では、エアクリーナユニット6やエアコン用コンプレッサ44などを支持する支持部材が、一体化された支持構造体として形成されており、ここではこの支持構造体をブラケットアッシ8と称する。ブラケットアッシ8は、本発明のブラケットとしてのブラケット本体81とステー82と保持部材84とからなる。ブラケット本体81は、縦支柱80と補助ステー83を備えている。縦支柱80は、帯板状に形成され、一端を前フレーム2に固定して、そこから上方に延びており、その他端はブラケット本体81の本体部分に連結している。ステー82は、一端を隔壁71に固定して、マフラー40とエアクリーナユニット6との間を車体前後方向に延び、さらに車体横断方向に屈曲して、その他端はブラケット本体81に連結している。補助ステー83は、一端をラジエータ41に固定して、車体前後方向に延び、その他端はブラケット本体81に連結している。つまり、ブラケットアッシ8は、エンジン5や各種エンジン補機との干渉を避けるため、板材が三次元的に延びた形状を有しているが、その先端部が前フレーム2と隔壁71とラジエータ41とに固定されることにより、高い剛性を作り出している。その結果、隔壁71やラジエータ41の補強部材としての機能も果たしている。保持部材84は、ブラケット本体81からエアクリーナユニット6まで車体前後方向に延びている。さらにその先端部には、エアクリーナ本体61のキャップ64側の下部を下方から保持する半円弧状のわっぱ部材84aが設けられている。このわっぱ部材84aはバネ材で製作されており、バネ力により収納部62を挟み込み保持する。
ステー82は縦平板状で帯板状の板材から構成され、広いほうの表面を立てた姿勢で、エアクリーナユニット6の左方、詳しくはエアクリーナ本体61の底面と接触するかあるいは僅かな隙間をあけて対向する位置に側面視で重複する状態で延びているので、エアクリーナユニット6の左方への移動、つまり収納部62にエアクリーナエレメント60を収納する方向へのエアクリーナ本体61の移動や位置ずれを規制するストッパの役割を果たす。さらに、ステー82は、エアクリーナ本体61の底部から出ている浄気吸入ホース66の上に位置しており、これにより浄気吸入ホース66の上方への移動や位置ずれが規制される。また、浄気吸入ホース66が何かで上から押さえつけられることがステー82によって防止される。
ステー82がマフラー40とエアクリーナユニット6との間を車体前後方向に延びているので、ステー82を横切るような部材は実質的には存在しなくなる。このため、ステー82の側方にステー82に沿って空気が直線的に流れる空間が作り出される。従って、冷却ファン42による冷却風が効果的にマフラー40やエアクリーナユニット6や浄気吸入ホース66を通過するので、これらがエンジン5の熱によって温められることが防止される。
隔壁71は、左右の前フレーム2を跨るように車体横断方向に配置されてプレート状部材であり、その後方に位置するパネルカバー30と接続して、燃料タンク49が配置される空間を作り出している。ボンネット74を揺動開閉するための左右一対のヒンジ部材71aが隔壁71の上部に取り付けられている。ボンネット74を傾斜開放姿勢に保持するため、ボンネット74を突っ張り支持する突っ張り棒75が備えられている。突っ張り棒75の一端はボンネット74の天井板74aの裏面に揺動可能に取り付けられ、突っ張り棒75の他端は係止部材としてフック状に形成されている。突っ張り棒75の天井板74a側の取り付け位置はステー82のほぼ真上に対応している。突っ張り棒75のフック状係止部材を係止することで突っ張り棒75を突っ張らせる係止部材76はステー82の前部に固定されている。係止部材76は、ステー82から立設しており、上端の中央部から下方に延びたスリット76aと、そのスリット76aの下方にさらに係止孔76bが形成されている。突っ張り棒75をスリット76aにはめ込んだ状態で突っ張り棒75のフック状係止部の先端を係止孔76bに挿入することで、突っ張り棒75の左右方向ずれを規制して、確実にボンネット74を傾斜開放姿勢に保持する。また、突っ張り棒75をスリット76aにはめ込まれていることで、ボンネット74の開閉揺動が突っ張り棒75がスリット76aの協働作用でガイドされ、ボンネット74の左右振れが抑制される。さらに、係止部材76に係止した突っ張り棒を係止方向に引っ張る係止バネ75aが備えられている。係止バネ75aの一端はステー82に取り付けられており、係止バネ75aの他端は突っ張り棒75に取り付けられている。なお、突っ張り棒75のフック状係止部と係止孔76bとの係合を解除して突っ張り棒75を係止孔76bに挿入したままでボンネット74を閉めることで、図4(a)に示すように、突っ張り棒75が係止バネ75aにより下方に付勢された前後向き姿勢で保持される。
〔別実施形態〕
(1)上記エアクリーナユニット6の設置は、エアクリーナエレメント60のキャップ64側が外側を向くように車体横断方向に配置されること、エアクリーナエレメント60の収納部62への収納方向及び収納部62からの取り出し方向が車体横断方向でかつエアクリーナエレメント60の取り出し軌跡がサイドカバー72の上端と干渉しないこと、ステー82によってエアクリーナエレメント60の収納方向への移動や位置ずれが規制されることが守られる限り、車体前後方向でどの位置でも可能である。
(2)エアクリーナユニット6以外のエンジン補機の配置に関して、本発明では特に限定していない。マフラー40の姿勢も任意であり、ブラケットアッシ8のブラケット本体81には、エアコン用コンプレッサ44に代えて、発電機などを取り付けてもよいし、エアコン用コンプレッサ44や発電機などのエンジン補機を複数取り付けてもよい。
(3)本発明が適用できる車両としては、トラクタ以外、田植機、コンバイン、芝刈り機、土木・建築作業機、バギーなどのオフロードカーなどが挙げられる。
本発明は、エンジンルーム内でエンジン5の上方にエアクリーナユニットが配置され、エンジンルームの上方空間がボンネットで開閉される車両用原動部構造に適用できる。
2:前フレーム(車体フレーム)
5:エンジン
71:隔壁
72:サイドカバー(側壁)
73:フロントグリル
74:ボンネット
74c:サイドスカート
75:突っ張り棒
76:係止部材
40:マフラー
41:ラジエータ
42:冷却ファン(ファン)
44:エアコン用コンプレッサ
6:エアクリーナユニット
60:エアクリーナエレメント
61:エアクリーナ本体
62:収納部
63:収納口
64:キャップ
65:外気吸入ホース
66:浄気吸入ホース
8:ブラケットアッシ
80:縦支柱
81:ブラケット本体(ブラケット)
82:ステー
83:補助ステー
84:保持部材

Claims (6)

  1. 側壁によって車体横断方向を境界付けられ、隔壁によって車体前後方向の一方を境界付けられ、ボンネットによって上方を境界付けられたエンジンルーム内に配置されるとともに車体フレームに支持されたエンジンと、前記エンジンの上方に配置されたエアクリーナユニットとを備え、前記エアクリーナユニットは、エアクリーナエレメントを収納する収納部と前記収納部に前記エアクリーナエレメントを収納する収納口とを有するエアクリーナ本体と、前記収納口を覆うキャップとを含み、
    前記エアクリーナエレメントの前記収納部への収納方向及び前記収納部からの取り出し方向が車体横断方向でかつ前記エアクリーナエレメントの取り出し軌跡が前記側壁と干渉しない姿勢で前記エアクリーナユニットを下方から保持する保持部材を設けるとともに前記車体フレームに支持されたブラケットと、前記エアクリーナユニットの前記収納方向への移動を規制するように前記エンジンの上方を車体前後方向に延びるとともに一端を前記隔壁に固定され他端を前記ブラケットに固定されるステーとを備えた車両用原動部構造。
  2. マフラーが前記ステーを挟んで前記エアクリーナユニットの反対側に配置されている請求項1に記載の車両用原動部構造。
  3. 前記エアクリーナユニットの浄気吸入ホースの前記マフラー側への移動が前記ステーによって規制されるように、前記浄気吸入ホースが前記ステーの下方に配置されている請求項2に記載の車両用原動部構造。
  4. 前記エンジンを冷却するファンによる冷却風が前記ステーに沿って前記隔壁へ流れる冷却風流通路が形成されている請求項2又は3に記載の車両用原動部構造。
  5. 前記ブラケットはエアコン用コンプレッサの支持部を形成している請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用原動部構造。
  6. 前記ステーがエンジンルーム内の車体横断方向の中央を延びており、前記ボンネットの開放姿勢を保持する突っ張り棒の係止部材が前記ステーに設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用原動部構造。
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