5.実施形態の詳細な説明
5.1 定義
本明細書で用いられる以下の用語は、下に示された意義を有する。
本明細書で用いられる用語「テルペンシンターゼ変異体」は、選択されたテルペンシンターゼよりも、異なるヌクレオチドまたはアミノ酸配列を有するテルペンシンターゼを指す。例えば選択されたテルペンシンターゼの野生型配列よりも、テルペンシンターゼ変異体は、対応するアミノ酸配列への変化を引き起こし得る、または引き起こし得ないヌクレオチドの付加、欠失、および/または置換を含み得る。ヌクレオチドの変化がアミノ酸配列への変化をもたらさない幾つかの実施形態において、該変化は、それでもなお、例えばコドン最適化を通して、シンターゼ活性の改善を実行し得る。別の一実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、アミノ酸付加、欠失、および/または置換を含む。したがって本明細書で用いられる用語「セスキテルペンシンターゼ変異体」は、選択されたセスキテルペンシンターゼよりも、異なるヌクレオチドまたはアミノ酸配列を有するセスキテルペンシンターゼを指す。例えば選択されたセスキテルペンシンターゼよりも、セスキテルペンシンターゼ変異体は、対応するアミノ酸配列への変化を引き起こし得る、または引き起こし得ないヌクレオチドの付加、欠失、および/または置換を含み得る。別の実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、アミノ酸付加、欠失、および/または置換を含む。
本明細書で用いられる用語「遺伝子操作された宿主細胞」は、遺伝子操作技術(即ち、組換え技術)を用いて親細胞を遺伝子修飾することにより生成された宿主細胞を指す。遺伝子操作された宿主細胞は、親細胞のゲノムへのヌクレオチド配列の付加、欠失、および/または修飾を含み得る。
本明細書で用いられる用語「異種」は、本質的には通常見出されないものを指す。用語「異種ヌクレオチド配列」は、所与の細胞において本質的には通常見出されないヌクレオチド配列を指す。そのため異種ヌクレオチド配列は、(a)宿主細胞にとって外来性であってもよい(即ち、該細胞にとって「外因性」である);(b)天然では宿主細胞内に見出される(即ち、「内因性」である)が、細胞内で非天然量で存在してもよい、または(c)天然では宿主細胞内に見出されるが、天然の遺伝子座以外の位置に存在してもよい。
本明細書で用いられる用語「天然由来」は、天然に見出されるものを指す。例えば天然の供給源から単離され得る生物体内に存在し、検査室内でヒトにより故意に修飾されていないテルペンシンターゼは、天然由来のテルペンシンターゼである。逆に、本明細書で用いられる用語「天然由来でない」は、天然には見出されず、ヒトの介入により生成されるものを指す。
本明細書で用いられる用語「生合成された酵素」は、生合成経路内で機能して天然由来分子の生成を誘導する酵素を指す。
本明細書で用いられる用語「インビボ性能」は、宿主細胞内で発現された場合の、ポリプレニル二リン酸基質をテルペンに変換するテルペンシンターゼの能力を指す。したがって用語「インビボ性能が改善された」は、宿主細胞内で発現された場合の、ポリプレニル二リン酸基質をテルペンに変換するテルペンシンターゼの能力の上昇を指す。
本明細書で用いられる用語「親細胞」は、高レベルの細胞内FPPを含まない、または特別な異種ヌクレオチドを含まないこと以外では本明細書に開示された宿主細胞としての同一遺伝子的背景を有し、前記高レベルの細胞内FPPまたは前記異種ヌクレオチド配列を導入して本明細書に開示された宿主細胞を生成させる出発点として作用する細胞を指す。
5.概論
本開示は、遺伝子操作された宿主細胞を通してテルペンシンターゼ変異体を発生させる方法に関する。詳細には本開示は、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体を発生させる方法を提供する。該方法は、これらの酵素のインビボ性能の継続的改善も可能にする。
一態様において、本発明は、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体のスクリーニング方法を提供する。幾つかの実施形態において、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体は、遺伝子操作された宿主細胞の細胞死をレスキューする能力により同定される。遺伝子操作された宿主細胞は、高レベルの細胞内FPPを誘導する遺伝子修飾を含む。FPPは、細胞に対して高度に毒性があり、そのため細胞の生存能力を低減して(Withers et al. (2007) Appl. Environ. Microbiol. 73:6277−6283)、高レベルの細胞内FPPを含まない親細胞に匹敵する生存能力を実現するため、遺伝子操作された宿主細胞は、細胞内FPPレベルを低減するのに十分活性のあるセスキテルペンシンターゼを必要とする。
このため本明細書に提供されるスクリーニング方法は、
a)高レベルのFPPを含まない親細胞よりも宿主細胞の生存能力を低減する高レベルのFPPを含む対照セスキテルペンシンターゼを発現する宿主細胞を遺伝子操作するステップと、
b)対照セスキテルペンシンターゼの変異体である試験セスキテルペンシンターゼを、対照セスキテルペンシンターゼの代わりに細胞内で発現させるステップと、
c)対照セスキテルペンシンターゼを発現する宿主細胞に比較した、試験セスキテルペンシンターゼを発現する宿主細胞の生存能力の上昇により、対照セスキテルペンシンターゼよりも改善されたインビボ性能を有するとして試験セスキテルペンシンターゼを同定するステップと、
を含む。
幾つかの実施形態において、該方法は、改善されたインビボ性能を有する試験セスキテルペンシンターゼを選択および/または単離する方法を更に含む。
それは、宿主細胞中の高レベルのFPPが誘導性である場合に、最も簡便となる。誘導は、誘導剤または例えば温度などの特定の増殖条件に応答して起こり得る。宿主細胞内での高レベルのFFPは、親細胞のFPPレベルよりも高い、約10%〜少なくとも約1,000倍またはそれを超える範囲内であってもよい。
親細胞よりも対照セスキテルペンシンターゼを発現する宿主細胞の生存能力の低減は、低い細胞増殖から致死までの範囲内となり得る。こうして幾つかの実施形態において、対照セスキテルペンシンターゼを発現する宿主細胞は、親細胞よりも、液体培地中または寒天プレート上に少数の子孫細胞を産生する。別の実施形態において、対照セスキテルペンシンターゼを発現する宿主細胞は、親細胞よりも、液体培地中または寒天プレート上に子孫細胞を全く産生しない。したがって対照セスキテルペンシンターゼの代わりに試験セスキテルペンシンターゼを発現する宿主細胞の生存能力の上昇が、対照セスキテルペンシンターゼを発現する宿主細胞により産生される子孫細胞数またはコロニーサイズよりも、液体培地中で子孫細胞がより多数であることにより、または寒天プレート上でコロニーサイズがより大きいことにより、明らかとなり得る。
宿主細胞内の高レベルのFPPは、宿主細胞内のFPPまたはその前駆体の産生に関与する酵素の発現および/または活性を改変することにより果たされ得る。幾つかのそのような実施形態において、MEVまたはDXP経路の酵素の発現および/または活性が改変される。幾つかのそのような実施形態において、HMG−CoAリダクターゼおよび/またはメバロン酸キナーゼの発現および/または活性が改変される。あるいは宿主細胞内の高レベルのFPPは、宿主細胞内のFPPまたはその前駆体の利用に関与する酵素の発現および/または活性を改変することにより果たされ得る。幾つかのそのような実施形態において、スクアレンシンターゼの発現および/または活性が改変される。
対照セスキテルペンシンターゼは、天然由来のセスキテルペンシンターゼまたは天然由来でないセスキテルペンシンターゼであってもよい。試験セスキテルペンシンターゼは、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または付加を含むことにより、対照セスキテルペンシンターゼと異なっていてもよい。加えて、またはあるいは、試験セスキテルペンシンターゼは、対照セスキテルペンシンターゼと同一のアミノ酸を含んでいてもよいが、これらのアミノ酸をコードするコドンは、試験セスキテルペンシンターゼと対照セスキテルペンシンターゼとで異なっていてもよい。幾つかのそのような実施形態において、該コドンは、宿主細胞内での使用のために最適化される。
幾つかの実施形態において、対照セスキテルペンシンターゼは、β−ファルネセンシンターゼ、α−ファルネセンシンターゼ、トリコジエンシンターゼ、パチュロールシンターゼ、アモルファジエンシンターゼ、バレンセンシンターゼ、ファルネソールシンターゼ、ネロリドールシンターゼ、およびノートカトンシンターゼからなる群より選択される。幾つかのそのような実施形態において、対照セスキテルペンシンターゼは、アルテミシア・アンヌアのβ−ファルネセンシンターゼである。幾つかのそのような実施形態において、対照セスキテルペンシンターゼは、配列番号111に示されたアミノ酸配列を有する。
試験セスキテルペンシンターゼの存在下での宿主細胞の生存能力を、対照セスキテルペンシンターゼの存在下での宿主細胞と比較することができるためには、宿主細胞内の対照セスキテルペンシンターゼと試験セスキテルペンシンターゼとを、確実に同様のレベルにする必要がある。これは、同じ調節要素の制御下で、2つの宿主細胞内のセスキテルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列を配置することにより、完遂され得る。
改善されたセスキテルペンシンターゼを変異体よりもむしろ増殖を促進する突然変異を含む急速増殖の偽陽性宿主細胞が宿主細胞培養物を支配するような拮抗増殖の状況を予防するために、スクリーニング方法の一実施形態は、寒天プレートに基づく選択システムを含む。この実施形態において、宿主細胞は、寒天プレート上に播種され、インビボ性能が改善された試験セスキテルペンシンターゼ変異体を含む宿主細胞が、コロニー発育により同定される。
本明細書に開示されたスクリーニング方法の1つの重要な利点は、反復で同定された試験セスキテルペンシンターゼが次の反復の対照セスキテルペンシンターゼとして用いられるような反復方式で、セスキテルペンシンターゼが益々良好になるよう選択する継続的能力である。つまりこの方法は、特別なセスキテルペンシンテターゼが生合成経路において活性となり得るかのみを同定することを目的とし、対照、例えば親シンターゼを超えて改善された活性を有するシンターゼの同定を模索しないことで、当該技術分野で公知の他のアッセイと識別することができる。幾つかの実施形態において、宿主細胞内のFPPレベルは、各反復の際にチェックされ、場合により、宿主細胞が新しい対照セスキテルペンシンターゼ(即ち、過去の反復の試験セスキテルペンシンターゼ)を発現すれば生存能力を低下させるレベルまで上昇される(例えば、酵素の発現レベルを上昇もしくは低下させることにより、酵素の付加もしくは低減により、遺伝子のコピー数の増加もしくは減少により、酵素の発現を制御するプロモータを置換することにより、または遺伝子突然変異により酵素を変化させることにより)。あるいは、または追加として、各反復では対照セスキテルペンシンターゼの発現を低減して(例えば、より弱いプロモータの発現を減少させることにより、もしくはより弱いプロモータを用いることにより、または対照セスキテルペンシンターゼの転写もしくはポリペプチドの安定性を低下させることにより)、活性の低い対照セスキテルペンシンターゼを提供することができる。その後、次の反復の際に、過去の反復の試験セスキテルペンシンターゼよりもインビボ性能が上昇した試験テルペンシンターゼが、同定され得る。
本明細書に開示されたスクリーニング方法の別の重要な利点は、その簡便性および高処理能力で履行する能力である。遺伝子操作された宿主細胞の細胞内FPPレベルを非毒性レベルまで低下させ得るセスキテルペンシンターゼ変異体は、単に細胞の生存能力に基づいて同定されて、高価で時間のかかる他のスクリーニング方法は事実上不要になる。つまり一実施形態において、該方法は、インビボ性能が改善されたセスキテルペンシンターゼ変異体に関して、セスキテルペンシンターゼ変異体の回収物(例えば、突然変異体セスキテルペンシンターゼのライブラリ)をスクリーニングするために用いられる。そのような実施形態において、1つの宿主細胞内で発現される試験セスキテルペンシンターゼは1つでなく、試験セスキテルペンシンターゼの回収物が、宿主細胞の回収物内で発現される。その後、宿主細胞を寒天プレート上で増殖することができ、インビボ性能が改善されたセスキテルペンシンターゼ変異体を発現する宿主細胞を、コロニー発育に基づいて同定することができる。幾つかの実施形態において、セスキテルペンシンターゼ変異体の回収物は、2〜5個、5〜10個、10〜50個、50〜100個、100〜500個、100〜500個、500〜1,000個、1,000〜10,000個、10,000〜100,000個、100,000〜1,000,000個、およびそれを超えるセスキテルペンシンターゼ変異体を含む。
本明細書に開示されたスクリーニング方法の別の重要な利点は、改善されたセスキテルペンシンターゼの選択が、インビトロよりもむしろインビボで行われることである。その結果、セスキテルペンシンターゼ変異体のインビボ性能を上昇させる複数の酵素特性の改善を、得ることができる。
別の態様において、本発明は、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体を同定するための第二のスクリーニング方法を提供する。この第二のスクリーニング方法において、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体は、ポリプレニル二リン酸(例えば、FPP)の宿主細胞を枯渇させる能力により同定される。活性の高いテルペンシンターゼ変異体の存在下で、宿主細胞内のポリプレニル二リン酸基質の細胞内プールが消耗されて、細胞が細胞生存に必要な基本的細胞プロセスを保持することができなくなる。
こうして本明細書に提供された第二のスクリーニング方法は、
a)対照テルペンシンターゼを発現し、1つの増殖速度を有する、宿主細胞を提供するステップと、
b)対照テルペンシンターゼの変異体である試験テルペンシンターゼを、対照テルペンシンターゼの代わりに細胞内で発現させるステップと、
c)対照テルペンシンターゼを発現する宿主細胞に比較した、試験テルペンシンターゼを発現する宿主細胞増殖速度の低下により、対照テルペンシンターゼよりも改善されたインビボ性能を有する試験テルペンシンターゼを同定するステップと、
を含む。
対照テルペンシンターゼは、モノテルペンシンターゼ、セスキテルペンシンターゼ、ジテルペンシンターゼ、セステルペンシンターゼ、トリテルペンシンターゼ、テトラテルペンシンターゼ、またはポリテルペンシンターゼであってもよい。幾つかの実施形態において、対照テルペンシンターゼは、セスキテルペンシンターゼである。幾つかのそのような実施形態において、対照テルペンシンターゼは、β−ファルネセンシンターゼである。幾つかのそのような実施形態において、対照テルペンシンターゼは、アルテミシア・アンヌアのβ−ファルネセンシンターゼである。幾つかのそのような実施形態において、対照テルペンシンターゼは、配列番号111に示されたアミノ酸配列を有する。
試験テルペンシンターゼの存在下、宿主細胞内で消耗されるようになるポリプレニル二リン酸基質は、FPPであってもよい。セスキテルペンシンターゼとは別に、複数の他の化合物が、宿主細胞の生存能力および増殖に肝要なFPPから合成される。そのような化合物としては、限定するものではないが、スクアレン、ラノステロール、エルゴステロール、シクロアルテノール、コレステロール、ステロイドホルモン、およびビタミンDが挙げられる。つまり幾つかの実施形態において、試験セスキテルペンシンターゼを発現する宿主細胞は、細胞膜内に少量のコレステロールまたはエルゴステロールを含み得る。細胞内のコレステロールまたはエルゴステロールの定量方法は、当該技術分野で公知である(例えば、Crockett and Hazel (2005) J. Experimental Zoology, 271(3): 190−195; Arthington−Skaggs et al. (1999) J Clin Microbiol. 37(10): 3332−3337; Seitz et al. (1979) Physiol. Biochem. 69: 1202−1203)。幾つかの実施形態において、試験テルペンシンターゼの存在下で宿主細胞内で保持され得ない細胞の生存に必要となる基本的細胞プロセスは、細胞膜の産生および/または保持である。別の実施形態において、試験テルペンシンターゼの存在下、宿主細胞内で消耗されるようになるポリプレニル二リン酸基質は、GPPまたはGGPPである。
更に別の態様において、本発明は、テルペンシンターゼ変異体のインビボ性能を同定および/または順位付けするための拮抗方法を提供する。該拮抗方法は、公知テルペンシンターゼを、テルペンシンターゼ変異体を比較する比較酵素として用いる。比較テルペンシンターゼおよび各テルペンシンターゼ変異体の両方が、宿主細胞内で同時発現され、その後、同じポリプレニル二リン酸基質(例えば、GPP、FPP、またはGGPP)に関して拮抗して、対応するテルペンを産生する。比較酵素の性能は、宿主細胞内では一定に保持されるため、比較テルペンシンターゼとテルペンシンターゼ変異体により産生されるテルペン生成物の力価の比の任意の変化が、テルペンシンターゼ変異体の活性の直接的結果である。結論として、そのような比を用いて、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体を同定することができ、および/またはポリプレニル二リン酸基質をテルペン産生に転換するインビボ速度論的能力についてテルペンシンターゼ変異体をランク付けもしくは定量的に比較することができる。
本明細書に提供された拮抗方法は、こうして
a)宿主細胞の集団を、対照集団と試験集団とに分けるステップと、
b)ポリプレニル二リン酸を第一のテルペンに変換し得る対照テルペンシンターゼと、ポリプレニル二リン酸を第二のテルペンに変換し得る比較テルペンシンターゼと、を対照集団内で発現させるステップと、
c)試験集団および対照集団において同様のレベルで発現される比較テルペンシンターゼと、対照テルペンシンターゼの変異体である試験テルペンシンターゼと、を試験集団内で発現させるステップと、
d)試験集団および対照集団において、第一のテルペンと第二のテルペンとの比を測定するステップと、
を含む。
特に本明細書に開示された拮抗方法は、広範のテルペンシンターゼに適用することができる。つまり別個の実施形態において、該拮抗方法は、モノテルペンシンターゼ、ジテルペンシンターゼ、セスキテルペンシンターゼ、セステルペンシンターゼ、トリテルペンシンターゼ、テトラテルペンシンターゼ、およびポリテルペンシンターゼからなる群より選択されるテルペンシンターゼを同定および/または順位付けするために適用される。したがって別個の実施形態において、第一のテルペンおよび第二のテルペンは、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セステルペン、トリテルペン、テトラテルペン、またはポリテルペンからなる群より選択される。幾つかのそのような実施形態において、第一のテルペンおよび第二のテルペンは、β−ファルネセン、α−ファルネセン、トリコジエン、パチュロール、アモルファジエン、バレンセン、ファルネソール、ネロリドール、リモネン、ミルセン、およびノートカトンからなる群より選択される。
対照テルペンシンターゼは、天然由来のテルペンシンターゼまたは天然由来でないシンターゼであってもよい。試験テルペンシンターゼは、対照テルペンシンターゼよりもアミノ酸置換、欠失、もしくは付加を含んでいてもよく、または対照テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列と、試験テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列の中に、異なるコドンによりコードされる同一アミノ酸を含んでいてもよい。幾つかの実施形態において、対照テルペンシンターゼは、セスキテルペンシンターゼである。幾つかのそのような実施形態において、セスキテルペンシンターゼは、β−ファルネセンシンターゼ、α−ファルネセンシンターゼ、トリコジエンシンターゼ、パチュロールシンターゼ、アモルファジエンシンターゼ、バレンセンシンターゼ、ファルネソールシンターゼ、ネロリドールシンターゼ、およびノートカトンシンターゼからなる群より選択される。幾つかのそのような実施形態において、対照セスキテルペンシンターゼは、アルテミシア・アンヌアのβ−ファルネセンシンターゼである。幾つかのそのような実施形態において、対照セスキテルペンシンターゼは、配列番号111に示されたアミノ酸配列を有する。
対照集団および試験集団の第一テルペン/第二のテルペンの比を比較することができるためには、類似発現レベルの比較テルペンシンターゼを確保することが必要となる。これは、同じ調節要素の制御下で2つの宿主細胞集団内の比較テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列を配置することにより、完遂され得る。拮抗方法を用いてテルペンシンターゼ変異体を同定する実施形態において、2つの細胞集団内の対照セスキテルペンシンターゼおよび試験テルペンシンターゼの発現レベルも、類似していなければならない。拮抗方法を用いて、例えば所望の発現レベルを提供する調節要素(例えば、プロモータ)を同定する、別の実施形態において、試験テルペンシンターゼは、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列ではなく発現レベルが、対照テルペンシンターゼと異なる。そのような実施形態において、異なる調節要素が、対照テルペンシンターゼおよび試験テルペンシンターゼの発現に用いられる。
本明細書に開示された拮抗方法には、数多くの用途が存在する。幾つかの実施形態において、該方法は、対照テルペンシンターゼと比較して、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体が、より多くのフラックスをポリプレニル二リン酸基質からそのテルペン生成物に転ずることができ、このため該当するテルペン/比較テルペン(即ち、第一のテルペン/第二のテルペン)のより高い比が与えられる、という原理からインビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体を(例えば、突然変異体セスキテルペンシンターゼのライブラリから)スクリーニングするために用いられる。そのような実施形態において、対照テルペンシンターゼは対照集団において発現される時に、試験テルペンシンターゼが試験集団内で同様のレベルで発現されることが、重要である。
類似のアッセイを用いて、一連のプロモータの強度を順位付けすることができる(例えば、そのようなアッセイを利用して、本明細書に開示された第一のスクリーニング方法において対照セスキテルペンシンターゼを発現する際の使用に適したプロモータを同定した、実施例16を参照されたい)。そのような実施形態において、対照テルペンシンターゼと試験テルペンシンターゼは、実際に同一であるが、それらは異なるプロモータの調節的制御下にあるため、対照集団と試験集団は、それらが含む試験テルペンシンターゼのタイプは異ならず、試験テルペンシンターゼの発現レベルが異なる。そのような実施形態において、試験集団および対照集団において第一のテルペンと第二のテルペンとの比を比較すると、試験テルペンシンターゼの活性についてではなく、試験テルペンシンターゼの発現を誘導するプロモータの強度についての情報を提供する。
加えてこのシステムを用いれば、様々な細胞を定義された比で組み合わせた混合物が、商業的に有用な生成物の所望の特性を有するように、様々な細胞により生成された2種以上のテルペン生成物の比を調整することができる。
本明細書に開示された拮抗方法の重要な利点は、それが酵素発現および活性において細胞間変動を排除すること、それがロバストであること、ならびにポリプレニル二リン酸基質への全体的代謝経路フラックスが宿主細胞内で限定的である場合でもそれを用い得ること、である。後者の事柄は、テルペン力価がポリプレニル二リン酸基質への全体的代謝経路フラックスにより規制される場合に、絶対テルペン力価測定に基づくアッセイが酵素活性の改善を遮る場合があるため、重要である。
本明細書に開示されたスクリーニング方法および/または拮抗方法を用いて開発された酵素は、限定するものではないが、蛍光スクリーニングおよび/またはガスクロマトグラフィーによるテルペンの直接的定量をはじめとする選択的スクリーニングという追加の手段を受ける可能性がある。より具体的にはこれには、ファルネセンなどのセスキテルペンの生成を測定する、ナイルレッドに基づく高処理能力の蛍光アッセイ、およびファルネセンなどのセスキテルペンの力価を測定する、ガスクロマトグラフィー(GC)に基づく直接的定量法がある。改善された酵素は、誘発突然変異などの遺伝子操作法により更に改善することもできる。その結果、最終的な酵素性能を向上させる複数の酵素特性の改善が、有効に完遂され、最も効果的な酵素変異体が、同定される。
本開示は、優れたファルネセンシンターゼ変異体、およびそのようなファルネセンシンターゼ変異体を含む宿主細胞にも属する。ファルネセンシンターゼ変異体は、本明細書に開示された方法を用いて開発され、200%を超えるインビボ性能改善を示す。ファルネセンシンターゼ変異体は、改善された触媒効率を有し、即ちそれらは、より急速に反応を触媒することができる。そのためそれらは、高収率の製造が主たる重要事項となる、ファルネセンなどのセスキテルペン生成物の商業的製造にはより適切である。
つまり更に別の態様において、単離されたβ−ファルネセンシンターゼ変異体、およびそのようなβ−ファルネセンシンターゼ変異体をコードし、配列番号111に示されたアミノ酸配列を有するが、位置2、3、4、6、9、11、18、20、24、35、38、50、61、72、80、89、105、115、144、196、211、251、280、288、319、348、357、359、369、371、385、398、423、433、434、442、444、446、460、467、488、495、505、526、531、556、572、および575からなる群より選択される位置に1つ以上のアミノ酸置換を含む、ヌクレオチド配列を含む単離された核酸が、本明細書において提供される。
更に別の態様において、本発明は、
(a)配列番号111によりコードされたβ−ファルネセンシンターゼ変異体である異種β−ファルネセンシンターゼと、
(b)MEV経路またはDXP経路酵素と、
を含む、遺伝子修飾された宿主細胞であって、
MEV経路またはDXP経路酵素および配列番号111によりコードされたβ−ファルネセンシンターゼを含む親細胞よりも、少なくとも15%多くのβ−ファルネセンを生成する、遺伝子修飾された宿主細胞を提供する。
幾つかの実施形態において、異種β−ファルネセンシンターゼは、配列番号111の位置2、3、4、6、9、11、18、20、24、35、38、50、61、72、80、89、105、115、144、196、211、251、280、288、319、348、357、359、369、371、385、398、423、433、434、442、444、446、460、467、488、495、505、526、531、556、572、および575からなる群より選択される位置に1つ以上のアミノ酸置換を含む。
幾つかの実施形態において、MEV経路酵素は、HMG−CoAリダクターゼである。幾つかの実施形態において、MEV経路酵素は、メバロン酸キナーゼである。MEV経路の追加の例示的酵素を、以下の5.4節に示す。
更に別の態様において、
(a)i)配列番号111によりコードされたβ−ファルネセンシンターゼの変異体をコードする第一の異種ヌクレオチド配列と、
ii)MEV経路またはDXP経路酵素をコードする第二の異種ヌクレオチド配列と、
を含む、複数の遺伝子修飾された宿主細胞を得るステップと、
(b)β−ファルネセンを生成するのに適した条件下で、炭素供給源を含む培地中で前記遺伝子修飾された宿主細胞を培養するステップと、
(c)該培地からβ−ファルネセンを回収するステップと、
を含む、β−ファルネセンを産生する方法が、本明細書において提供される。
幾つかの実施形態において、MEV経路酵素は、HMG−CoAリダクターゼである。幾つかの実施形態において、MEV経路酵素は、メバロン酸キナーゼである。MEV経路の追加の例示的酵素を、以下の5.4節に示す。
5.3 宿主細胞の選択
本発明の実践に有用な宿主細胞としては、古細菌細胞、原核細胞、または真核細胞が挙げられる。
適切な原核生物の宿主としては、限定するものではないが、様々なグラム陽性菌、グラム陰性菌、またはグラム不定菌のいずれかが挙げられる。例としては、限定するものではないが、アグロバクテリウム属、アリシクロバチルス属、アナバエナ属、アナシスチス属、アースロバクター属、アゾバクター属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、クロマチウム属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター族、エルウイニア属、エシェリヒア属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、メソリゾビウム属、メチロバクテリウム属、ミクロバクテリウむ属、ホルミジウム属、シュードモナス属、ロドバクター属、ロドシュードモナス属、ロドスピリルム属、ロドコッカス属、サルモネラ属、セネデスムス属、セラチア属、シゲラ属、スタフィロコッカス属、ストレプトマイセス属、シネココッカス属、およびザイモモナス属に属する細胞が挙げられる。原核生物菌株の例としては、限定するものではないが、バチルス・サチリス、バチルス・アミロリクファシエンス、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス、ブレビバクテリウム・イマリオフィルム、クロストリジウム・ベイジェリンキイ、エンテロバクター・サカザキイ、大腸菌、ラクトコッカス・ラクチス、メソリゾビウム・ロティ、シュードモナス・エルジノーサ、シュードモナス・メバロニイ、シュードモナス・プディカ、ロドバクター・カプスラタス、ロドバクター・スフェロイデス、ロドスピリルム・ルブラム、サルモネラ・エンテリカ、サルモネラ・ティフィ、サルモネラ・ティフィムリウム、シゲラ・ディセンテリエ、シゲラ・フレクスネリ、シゲラ・ソンネイ、およびスタフィロコッカス・アウレウスが挙げられる。
適切な古細菌宿主としては、限定するものではないが、アエロピルム属、アルカエグロブス属、ハロバクテリウム属、メタノコッカス属、メタノバクテリウム属、ピロコッカス属、スルフォロブス属、およびテルモプラズマ属に属する細胞が挙げられる。古細菌株の例としては、限定するものではないが、アーケオグロブス・フルギダス、ハロバクテリウム属の一種、メタノコッカス・ジャナスキイ、メタノバクテリウム・テルモアウトトロフィクム、テルモプラズマ・アシドフィルム、テルモプラズマ・ボルカニウム、ピロコッカス・ホリコシイ、ピロコッカス・アビシイ、およびアエロピルム・ペルニックスが挙げられる。
適切な真核生物宿主としては、限定するものではないが、真菌細胞、緑藻細胞、昆虫細胞、および植物細胞が挙げられる。例としては、限定するものではないが、アスペルギルス属、カンジダ属、クリソスポリウム属、クリプトコッカス属、フザリウム属、クルイセロマイセス属、ネオティフォジウム属、ネウロスポラ属、ペニシリン属、ピチア属、サッカロマイセス属、トリコデルマ属、アスコマイコータ(Ascomycota)属、バシディオマイコータ(Bacidiomycota)属、ドシデオマイセテス(Dothideomycetes)属、およびキサントフィロマイセス属(正式にはファフィア属)に属する細胞が挙げられる。ピチア・パストリス、ピチア・フィンランディカ、ピチア・トレハロフィラ、ピチア・コクラメ、ピチア・メンブラナエファシエンス、ピチア・オプンチアエ、ピチア・サーモトレランス、ピチア・サリクタリア、ピチア・グエルキューム、ピチア・ピペリ、ピチア・スティプティス、ピチア・メタノリカ、ピチア属の一種、サッカロマイセス・セレビシアエ、サッカロマイセス属の一種、シゾサッカロマイセス・ポンベ、ハンセヌラ・ポリモルファ、クルイベロマイセス属の一種、クルイベロマイセス・ラクチス、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・ニドゥランス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリザエ、トリコデルマ・リーゼイ、クリソスポリウム・ラクノウェンス、フザリウム属の一種、フザリウム・グラミネウム、フザリウム・ベネナツム、ニューロスポラ・クラッサ、およびクラミドモナス・レインハルドティイが挙げられる。
特別な実施形態において、宿主細胞は、大腸菌細胞である。別の特別な実施形態において、宿主細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ細胞である。幾つかの実施形態において、宿主細胞は、パン酵母、CBS 7959、CBS 7960、CBS 7961、CBS 7962、CBS 7963、CBS 7964、IZ−1904、TA、BG−1、CR−1、SA−1、M−26、Y−904、PE−2、PE−5、VR−1、BR−1、BR−2、ME−2、VR−2、MA−3、MA−4、CAT−1、CB−1、NR−1、BT−1、およびAL−1からなる群より選択されるサッカロマイセス・セレビシエ細胞である。幾つかの実施形態において、宿主細胞は、PE−2、CAT−1、VR−1、BG−1、CR−1、およびSA−1からなる群より選択されるサッカロマイセス・セレビシエ細胞である。特別な実施形態において、宿主細胞は、菌株PE−2のサッカロマイセス・セレビシエである。別の特別な実施形態において、宿主細胞は、菌株CAT−1のサッカロマイセス・セレビシエである。別の特別な実施形態において、宿主細胞は、菌株BG−1のサッカロマイセス・セレビシエである。
幾つかの実施形態において、宿主細胞は、産業発酵、例えばバイオエタノール発酵に適した細胞である。特別な実施形態において、宿主細胞は、産業発酵環境の認識されたストレス条件である、高い溶媒濃度、高温、膨張した基質の使用、栄養不足、浸透圧ストレス、酸性、亜硫酸および細菌混入、またはそれらの組み合わせの下で生存するように調整される。
5.4 細胞内FPPレベルが上昇した宿主細胞
幾つかの実施形態において、親細胞と比較して宿主細胞は、宿主細胞の生存能力を低下させる、高レベルの細胞内FPPを含む。
幾つかの実施形態において、宿主細胞は、単位細胞培養容量あたりに、親細胞の細胞内FPPレベルよりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%高い、または少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍、またはそれを超える高さの細胞内FPPレベルを含む。
幾つかの実施形態において、宿主細胞は、単位乾燥細胞重量あたりに、親細胞の細胞内FPPレベルよりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%高い、または少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍、またはそれを超える高さの細胞内FPPレベルを含む。
幾つかの実施形態において、宿主細胞は、単位時間の単位細胞培養容量あたりに、親細胞の細胞内FPPレベルよりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%高い、または少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍、またはそれを超える高さの細胞内FPPレベルを含む。
幾つかの実施形態において、宿主細胞は、単位時間の単位乾燥細胞重量あたりに、親細胞の細胞内FPPレベルよりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%高い、または少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍、またはそれを超える高さの細胞内FPPレベルを含む。
ほとんどの実施形態において、宿主細胞の細胞内FPPレベルの上昇は、誘導化合物により誘導可能である。そのような宿主細胞は、誘導化合物の非存在下で容易に操作することができる。その後、誘導化合物が添加されて、宿主細胞内のFPPレベル上昇を誘導する。別の実施形態において、宿主細胞の細胞内FPPレベルの上昇は、例えば増殖温度などの培養条件を変化させることにより誘導可能である。細胞内FPPレベルの誘導可能な上昇により、宿主細胞の低生存能力の表現型に分子オン・オフスイッチが提供される。
細胞内FPPレベルの上昇は、宿主細胞の目的とする遺伝子操作により実行することができる。複数の酵素が、FPPおよびその前駆体の産生または利用において機能することが公知であり、これらの酵素のいずれも、宿主細胞内のFPPレベルを変化させるように操作することができる。
幾つかの実施形態において、宿主細胞の細胞内アセチル−CoAの産生増加により、宿主細胞内のFPP産生が増加される。
幾つかの実施形態において、宿主細胞のIPPおよび/またはDMAPPの産生増加により、宿主細胞内のFPP産生が増加される。幾つかのそのような実施形態において、MEV経路の1種以上の酵素の活性を上昇させることにより、宿主細胞内のIPPおよびDMAPPの産生が増加される。MEV経路の概略図を、図15に記載する。一般に該経路は、6つのステップを含む。
第一のステップにおいて、アセチルコエンザイムAの2つの分子が、酵素的に組み合わせられてアセトアセチル−CoAを形成する。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えばアセチル−CoAチオラーゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、以下のGenBankアクセション番号およびその配列が得られる生物体が挙げられる:NC_000913 領域:2324131..2325315;大腸菌)、(D49362;パラコッカス・デニトリフィカンス)、および(L20428;サッカロマイセス・セレビシエ)。
MEV経路の第二のステップにおいて、アセトアセチル−CoAが、アセチル−CoAの別の分子と酵素的に縮合して、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を形成する。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えばHMG−CoAシンターゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(NC_001145.相補配列19061..20536;サッカロマイセス・セレビシエ)、(X96617;サッカロマイセス・セレビシエ)、(X83882;アラビドプシス・タリアナ)、(AB037907;キタサトスポラ・グリセオラ)、(BT007302;ホモ・サピエンス)、および(NC_002758、遺伝子座SAV2546、遺伝子ID 1122571;スタフィロコッカス・アウレウス)が挙げられる。
第三のステップにおいて、HMG−CoAが、酵素的にメバロナートに変換される。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えばHMG−CoAリダクターゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(NM_206548;ドロソフィラ・メラノガスター)、(NC_002758、遺伝子座SAV2545、遺伝子ID1122570;スタフィロコッカス・アウレウス)、(NM_204485;ガッルス・ガッルス)、(AB015627;ストレプトマイセス属の一種 KO 3988)、(AF542543;ニコチアナ・アテヌアタ)、(AB037907;キタサトスポラ・グリセオラ)、(AX128213、トランケート型HMGRをコードする配列を提供する;サッカロマイセス・セレビシエ)、および(NC_001145:相補配列(115734..118898:サッカロマイセス・セレビシエ)が挙げられる。
第四のステップにおいて、メバロナートが、酵素的にリン酸化されて、メバロナート5−リン酸を形成する。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えばメバロン酸キナーゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(L77688;アラビドプシス・タリアナ)、および(X55875;サッカロマイセス・セレビシエ)が挙げられる。
第五のステップにおいて、第二のリン酸基が、メバロナート5−リン酸に酵素的に付加されて、メバロナート5−ピロリン酸を形成する。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えばホスホメバロン酸キナーゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(AF429385;ヘベア・ブラシリエンシス)、(NM_006556;ホモ・サピエンス)、および(NC_001145.相補配列712315..713670;サッカロマイセス・セレビシエ)が挙げられる。
第六のステップにおいて、メバロナート5−ピロリン酸が、IPPに酵素的に変換される。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えばメバロナートピロリン酸デカルボキシラーゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(X97557;サッカロマイセス・セレビシエ)、(AF290095;エンテロコッカス・フェシウム)、および(U49260;ホモ・サピエンス)が挙げられる。
他のそのような実施形態において、DXP経路の1種以上の酵素の活性を上昇させることにより、宿主細胞中のIPPおよびDMAPPの産生が増加される。DXP経路の概略図を、図16に記載する。一般にDXP経路は、7つのステップを含む。
第一のステップにおいて、ピルバートが、D−グリセルアルデヒド3−リン酸と縮合されて、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸を生成する。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えば1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸シンターゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(AF035440;大腸菌)、(NC_002947、遺伝子座PP0527;シュードモナス・プチダKT2440)、(CP000026、遺伝子座SPA2301;サルモネラ・エンテリカ・パラティフィ、ATCC 9150参照)、(NC_007493、遺伝子座RSP_0254;ロドバクター・スファロイデス2.4.1)、(NC_005296、遺伝子座RPA0952;ロドシュードモナス・パルストリスCGA009)、(NC_004556、遺伝子座PD1293;キシレラ・ファスチディオサ・テメクラ1)、および(NC_003076、遺伝子座AT5G11380;アラビドプシス・タリアナ)が挙げられる。
第二のステップにおいて、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸が、2C−メチル−D−エリトリトール−4−リン酸に変換される。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えば1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸リダクトイソメラーゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(AB013300;大腸菌)、(AF148852;アラビドプシス・タリアナ)、(NC_002947、遺伝子座PP1597;シュードモナス・プチダKT2440)、(AL939124、遺伝子座SCO5694;ストレプトマイセス・コエリコラーA3(2))、(NC_007493、遺伝子座RSP_2709; ロドバクター・スファロイデス2.4.1)、および(NC_007492、遺伝子座Pfl_1107;シュードモナス・フルオレセンスPfO−1)が挙げられる。
第三のステップにおいて、2C−メチル−D−エリトリトール−4−リン酸が、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールに変換される。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えば4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールシンターゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(AF230736;大腸菌)、(NC_007493、遺伝子座RSP_2835;ロドバクター・スファロイデス2.4.1)、(NC_003071、遺伝子座AT2G02500;アラビドプシス・タリアナ)、および(NC_002947、遺伝子座PP1614;シュードモナス・プチダKT2440)が挙げられる。
第四のステップにおいて、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールが、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトール−2−リン酸に変換される。このステップを触媒することが知られる酵素は、例えば4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールキナーゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(AF216300;大腸菌)および(NC_007493、遺伝子座RSP_1779;ロドバクター・スファロイデス2.4.1)が挙げられる。
第五のステップにおいて、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトール−2−リン酸が、2C−メチル−D−エリトリトール2,4−シクロ二リン酸に変換される。このステップを触媒することで公知の酵素は、例えば2C−メチル−D−エリトリトール2,4−シクロ二リン酸シンターゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(AF230738;大腸菌)、(NC_007493、遺伝子座RSP_6071;ロドバクター・スファロイデス2.4.1)、および(NC_002947、遺伝子座PP1618;シュードモナス・プチダKT2440)が挙げられる。
第六のステップにおいて、2C−メチル−D−エリトリトール2,4−シクロ二リン酸が、1−ヒドロキシ−2−メチル−2−(E)−ブテニル−4−二リン酸に変換される。このステップを触媒することで公知の酵素は、例えば1−ヒドロキシ−2−メチル−2−(E)−ブテニル−4−二リン酸シンターゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(AY033515;大腸菌)、(NC_002947、遺伝子座PP0853;シュードモナス・プチダKT2440)、および(NC_007493、遺伝子座RSP_2982;ロドバクター・スファロイデス2.4.1)が挙げられる。
第七のステップにおいて、1−ヒドロキシ−2−メチル−2−(E)−ブテニル−4−二リン酸が、IPPまたはその異性体DMAPPに変換される。このステップを触媒することで公知の酵素は、例えばイソペンチル/ジメチルアリル二リン酸シンターゼである。ヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(AY062212;大腸菌)および(NC_002947、遺伝子座PP0606;シュードモナス・プチダKT2440)が挙げられる。
幾つかの実施形態において、IPPからDMAPPへの異性体化を増加させることにより、宿主細胞におけるFPPの産生が増加する。幾つかのそのような実施形態において、IPPイソメラーゼの活性を上昇させることにより、IPPからDMAPPへの異性体化が増加する。IPPイソメラーゼをコードするヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(NC_000913、3031087..3031635;大腸菌)、および(AF082326;ヘマトコッカス・プルビアリス)が挙げられる。
幾つかの実施形態において、IPPおよびDMAPPのFPPへの縮合を増加させることにより、宿主細胞におけるFPPの産生が増加する。幾つかのそのような実施形態において、FPPシンターゼの活性を上昇させることにより、IPPおよびDMAPPの、またはIPPおよびゲラニルピロリン酸(「GPP」)の、FPPへの縮合が増加する。FPPシンターゼをコードするヌクレオチド配列の例示としては、限定するものではないが、(ATU80605;アラビドプシス・タリアナ)、(ATHFPS2R;アラビドプシス・タリアナ)、(AAU36376;アルテミシア・アンヌア)、(AF461050;ボス・タウルス)、(D00694;大腸菌K−12)、(AE009951、遺伝子座AAL95523;フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ヌクレアタムATCC 25586)、(GFFPPSGEN;ジベレラ・フジクロイ)、(CP000009、遺伝子座AAW60034;グルコノバクター オキシダンス621H)、(AF019892;ヘリアンサス・アンヌス)、(HUMFAPS;ホモ・サピエンス)、(KLPFPSQCR;クルイベロマイセス・ラクチス)、(LAU15777;ルピヌス・アルブス)、(LAU20771;ルピヌス・アルブス)、(AF309508;ムス・ムスクルス)、(NCFPPSGEN;ネウロスポラ・クラッサ)、(PAFPS1;パルテニウム・アルゲンタタム)、(PAFPS2;パルテニウム・アルゲンタタム)、(RATFAPS;ラッツス・ノルベギクス)、(YSCFPP;サッカロマイセス・セレビシエ)、(D89104;シゾサッカロマイセス・ポンベ)、(CP000003、遺伝子座AAT87386;ストレプトコッカス・ピオゲネス)、(CP000017、遺伝子座;ストレプトコッカス・ピオゲネス)、(NC_008022、遺伝子座YP_598856;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS10270)、(NC_008023、遺伝子座YP_600845;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS2096)、(NC_008024、遺伝子座YP_602832;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS10750)、(MZEFPS;ゼアマイス)、(AE000657、遺伝子座AAC06913;アクイフェックス・エオリクスVF5)、(NM_202836;アラビドプシス・タリアナ)、(D84432、遺伝子座BAA12575;バチルス・サチリス)、(U12678、遺伝子座AAC28894;ブラディリゾビウム・ジャポニカムUSDA 110)、(BACFDPS;ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス)、(NC_002940、遺伝子座NP_873754;ヘモフィルス・ジュクレイ35000HP)、(L42023、遺伝子座AAC23087;ヘモフィリスインフルエンザRd KW20)、(J05262;ホモ・サピエンス)、(YP_395294;ラクトバチルス・サケイ亜種サケイ23K)、(NC_005823、遺伝子座YP_000273;レプトスピラ・インテロガンス・セロバール・コペンハーゲニ・str・フィオクルズL1−130)、(AB003187;ミクロコッカス・ルテウス)、(NC_002946、遺伝子座YP_208768;ナイセリア・ゴノレアFA 1090)、(U00090、遺伝子座AAB91752;リゾビウム属の一種NGR234)、(J05091;サッカロマイセス・セレビシエ)、(CP000031、遺伝子座AAV93568;シリシバクターポメロイDSS−3)、(AE008481、遺伝子座AAK99890;ストレプトコッカス・ニューモニエR6)、および(NC_004556、遺伝子座NP 779706;キシレラ・ファスチディオサ テメクラ1)が挙げられる。
幾つかの実施形態において、産生ステップから得られた中間体をFPPの形成に転ずる阻害反応により、宿主細胞におけるFPPの産生が増加される。そのような反応としては、限定するものではないが、脂肪酸生合成、アラニン生合成、アスパラギン酸の超経路(superpathway)、糖新生、ヘム生合成、グルタミン酸生合成、およびホスホトランスアセチラーゼの作用を介したアセチル−CoAからアセタートへの変換を導くTCA回路の副反応が挙げられる。
幾つかの実施形態において、高レベルの細胞内FPPを含む宿主細胞は、宿主細胞内でのFPP消費を減少させることにより得られる。幾つかのそのような実施形態において、FPPをスクアレンに変換し得るファルネシル二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼまたはスクアレンシンターゼの活性を低下させることにより、宿主細胞におけるFPPの消費は減少する。別のそのような実施形態において、宿主細胞におけるセスキテルペンシンターゼの活性を低下させることにより、宿主細胞におけるFPPの消費は減少する。
高レベルの細胞内FPPを含む宿主細胞は、遺伝子操作技術(即ち、組換え技術)、古典的微生物学的技術、またはそれらの技術の組み合わせを利用して親細胞を遺伝子修飾することにより生成することができる。宿主細胞は、高レベルの細胞内FPPにより特定の増殖条件下で非生存可能である天然由来の遺伝子変異体であってもよい。
低い細胞生存能力を有するような高レベルの細胞内FPPを含む宿主細胞は、固形培地上の宿主細胞の増殖を、高レベルの細胞内FPPを含まない親細胞の増殖と比較することにより同定することができる。高レベルの細胞内FPPを含む宿主細胞は、親細胞と比較して、固形寒天培地上により少ない、またはより小さいコロニーを生成する。最初、宿主細胞が高レベルの細胞内FPPを含まず、親細胞と同じ生存能力を有する条件(「寛容的増殖条件」)下で宿主細胞を増殖し、その後、宿主細胞をレプリカプレートして、宿主が高レベルの細胞内FPPを含む条件(「制限的増殖条件」)下でそれを増殖させて、制限的増殖条件下のみでは低い生存能力を有するが寛容的増殖条件下では低い生存能力を有さない宿主細胞を同定することにより、特定の増殖条件下のみで高レベルの細胞内FPPを含む宿主細胞を同定することができる。そのような制限的増殖条件は、限定するものではないが、培地中の特異的栄養素の存在、培地中の特異的レベルの特異的栄養素の存在、培地中の誘導化合物の存在、培地中の抑制化合物の存在、および特異的増殖温度を含むことができる。
5.5 テルペンシンターゼ
本明細書に提供された方法は、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体を発生させることを目的としている。
幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、天然由来テルペンシンターゼの変異体である。別の実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、天然由来でないテルペンシンターゼの変異体である。
幾つかのそのような実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または付加により、天然由来テルペンシンターゼまたは天然由来でないテルペンシンターゼと異なっている。幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える追加のアミノ酸を含むことにより、天然由来テルペンシンターゼまたは天然由来でないテルペンシンターゼと異なっている。幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える追加のアミノ酸置換を含むことにより、天然由来テルペンシンターゼまたは天然由来でないテルペンシンターゼと異なっている。幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超えるアミノ酸を欠くことにより、天然由来テルペンシンターゼまたは天然由来でないテルペンシンターゼと異なっている。
幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、天然由来テルペンシンターゼまたは天然由来でないテルペンシンターゼのアミノ酸配列に対し、約50%〜約55%、約55%〜約60%、約60%〜約65%、約65%〜約70%、約70%〜約75%、約75%〜約80%、約80%〜約85%、約85%〜約90%、約90%〜約95%、または約95%〜約99%のアミノ酸配列同一性を有する。
幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、コンセンサスアミノ酸配列を含む。コンセンサスアミノ酸配列は、3つ以上のアミノ酸配列を整列させて、その配列の少なくとも2つにより共有されるアミノ酸を同定することにより得られる。幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、2つ以上の天然由来テルペンシンターゼから得られたコンセンサス配列を含む。
幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、ハイブリッドテルペンシンターゼである。ハイブリッドテルペンシンターゼは、2つ以上の異なるテルペンシンターゼの隣接するアミノ酸伸長を含む。ハイブリッドテルペンシンターゼは、限定するものではないがエクソンシャフリング、ドメインスワッピングなどをはじめとする任意の公知方法を用いて生成させることができる(例えば、Nixon et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:1069−1073; Fisch et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(15):7761−7766)。
幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、天然由来テルペンシンターゼをコードする核酸にハイブリダイズする。別の実施形態において、テルペンシンターゼ変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、適度なハイブリダイゼーション条件下で、天然由来テルペンシンターゼをコードする核酸にハイブリダイズする。更に別の実施形態において、テルペンシンターゼ変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、天然由来テルペンシンターゼをコードする核酸にハイブリダイズする。
幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体をコードするヌクレオチド配列は、特定の宿主細胞のコドン優先性(codon preference)を反映する天然由来テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列から変化する(即ち、特別な宿主細胞における発現のためにコドン最適化される)。特別な宿主細胞に好ましいコドンの使用は、一般にヌクレオチド配列の翻訳の確率、つまり発現を増加させる。特定の生物体が特定のコドンを使用して特定のアミノ酸をコードする時間の割合を要約したコドン使用頻度を、多くの生物体に関して入手することができ、適切なヌクレオチド配列を設計する際の参照として用いることができる。幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列は、サッカロマイセス・セレビシエのコドン優先性を反映して変化される(例えば、Bennetzen and Hall (1982) J. Biol. Chem. 257(6): 3026−3031参照)。幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列は、大腸菌のコドン優先性を反映するように変化する(例えば、Gouy and Gautier (1982) Nucleic Acids Res. 10(22):7055−7074; Eyre−Walker (1996) Mol. Biol. Evol. 13(6):864−872; Nakamura et al. (2000) Nucleic Acids Res. 28(1):292参照)。
テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、様々な公知の組換え技術および合成手順のいずれかを用いて得ることができる。核酸は、ゲノムDNA、cDNA、またはRNAから調製することができるが、それらの全てが、細胞から直接抽出することができ、または限定するものではないがPCRおよびrt−PCRをはじめとする様々な増幅プロセスにより組換え生成することができる。
テルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、様々な公知方法のいずれかを用いて得ることができる。例えば核酸は、化学的突然変異誘発因子もしくは放射線で処理された細胞から、またはDNA修復において欠損を有する細胞から単離することができる。適切な化学的突然変異誘発因子としては、限定するものではないが、エチルメタンスルホナート(EMS)、メチルメタンスルホナート(MMS)、N−ニトロソ尿素(ENU)、N−メチル−N−ニトロ−N’−ニトロソグアニジン、4−ニトロキノリンN−オキシド、ジエチルスルファート、ベンゾピレン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、トリエチルメラミン、アクリルアミドモノマー、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジエポキシアルカン(例えば、ジエポキシブタン)、ICR−170、ホルムアルデヒド、プロカルバジン塩酸、エチレンオキシド、ジメチルニトロサミン、7,12−ジメチルベンゾ[a]アントラセン、クロラムブシル、ヘキサメチルホスホラミド、ビスルファン、およびアクリジン染料が挙げられる(例えば、Thomas D. Brock in Biotechnology: A Textbook of Industrial Microbiology, Second Edition (1989) Sinauer Associates, Inc., Sunderland, Mass., or Deshpande Mukund V., Appl. Biochem. Biotechnol. 36, 227 (1992)参照)。適切な放射線暴露しては、限定するものではないが、紫外線照射(場合により、例えばトリメチルプソラレンなどの化学剤への暴露と組み合わせて)、γ線照射、X線、および高速中性子衝撃が挙げられる。細胞におけるDNA修復の際に欠損を導入する適切な方法としては、限定するものではないが、細胞のゲノムにおける突然変異を高頻度で発生させる(突然変異約1回/100遺伝子〜突然変異約1回/10,000遺伝子程度)突然変異体のDNA修復酵素の発現が挙げられる。DNA修復酵素をコードする遺伝子の例としては、限定するものではないが、Mut H、Mut S、Mut L、およびMut U、ならびに他の種におけるそれらの相同体(例えば、MSH 1〜6、PMS 1〜2、MLH 1、GTBP、およびERCC−1)が挙げられる。テルペンシンターゼ変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を得る他の方法としては、無細胞インビトロ系で操作(例えば、核酸の増幅のためのエラープローンPCRの使用)、細胞のゲノムにおける可動性DNA要素(例えば、転位因子)の無作為もしくは標的挿入、またはインビトロDNAシャフリング(例えば、エクソンシャフリング、ドメインスワッピングなど;例えば、Ausubel et al., Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley and Sons, New York (現行版);およびSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3d. ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (2001)参照)が挙げられる。
幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、β−ファルネセンシンターゼ、α−ファルネセンシンターゼ、トリコジエンシンターゼ、パチュロールシンターゼ、アモルファジエンシンターゼ、バレンセンシンターゼ、ファルネソールシンターゼ、ネロリドールシンターゼ、およびノートカトンシンターゼからなる群より選択されるセスキテルペンシンターゼの変異体である。
幾つかの実施形態において、テルペンシンターゼ変異体は、β−ファルネセンシンターゼ変異体である。幾つかのそのような実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、アルテミシア・アンヌアのβ−ファルネセンシンターゼから誘導される。アルテミシア・アンヌアのβ−ファルネセンシンターゼの配列は、過去に記載されている(Picaud, et al, (2005) Phytochemistry 66 (9):961−967)。アルテミシア・アンヌアのβ−ファルネセンシンターゼのヌクレオチド配列は、GenBankアクセション番号AY835398として寄託され、本明細書において配列番号112として示される。アルテミシア・アンヌアのβ−ファルネセンシンターゼのアミノ酸配列は、GenBankアクセション番号AAX39387として寄託され、本明細書において配列番号111として示される。
幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置2にセリンからアスパラギン酸塩へのアミノ酸置換(S2D突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置3にトレオニンからアスパラギンへのアミノ酸置換(T3N突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置4にロイシンからセリンへのアミノ酸置換(L4S突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置6にイソロイシンからトレオニンへのアミノ酸置換(I6T突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置9にバリンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換(V9D突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置11にフェニルアラニンからセリンへのアミノ酸置換(F11S突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置20にバリンからグルタミン酸へのアミノ酸置換(V20E突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置24にバリンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換(V24D突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置35にメチオニンからトレオニンへのアミノ酸置換(M35T突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置38にアスパラギンからセリンへのアミノ酸置換(N38S突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置50にアスパラギン酸からアスパラギンへのアミノ酸置換(D50N突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置61にロイシンからグルタミンへのアミノ酸置換(L61Q突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置72にグルタミン酸からリシンへのアミノ酸置換(F72K突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置72にグルタミン酸からバリンへのアミノ酸置換(E72V突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置80にアスパラギンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換(N80D突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置89にイソロイシンからバリンへのアミノ酸置換(I89V突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置105にグルタミン酸からアスパラギン酸へのアミノ酸置換(E105D突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置115にイソロイシンからメチオニンへのアミノ酸置換(I115M突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置115にイソロイシンからバリンへのアミノ酸置換(I115V突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置144にフェニルアラニンからチロシンへのアミノ酸置換(F144Y突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置196にトレオニンからセリンへのアミノ酸置換(T196S突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置211にセリンからトレオニンへのアミノ酸置換(S211T突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置251にロイシンからメチオニンへのアミノ酸置換(L251M突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置280にロイシンからグルタミンへのアミノ酸置換(L280Q突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置288にチロシンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換(Y288F突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置319にトレオニンからセリンへのアミノ酸置換(T319S突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置357にグルタミン酸からバリンへのアミノ酸置換(E357V突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置359にグルタミン酸からトレオニンへのアミノ酸置換(E359T突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置369にバリンからロイシンへのアミノ酸置換(V369L突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置371にロイシンからメチオニンへのアミノ酸置換(L371M突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置385にトレオニンからアラニンへのアミノ酸置換(T385A突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置398にイソロイシンからバリンへのアミノ酸置換(I398V突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置423にバリンからイソロイシンへのアミノ酸置換(V423I突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置433にメチオニンからイソロイシンへのアミノ酸置換(M433I突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置434にイソロイシンからトレオニンへのアミノ酸置換(I434T突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置442にグリシンからアラニンへのアミノ酸置換(G442A突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置442にグリシンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換(G442D突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置444にイソロイシンからロイシンのアミノ酸置換(I444L突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置446にトレオニンからアスパラギンへのアミノ酸置換(T446N突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置460にイソロイシンからバリンへのアミノ酸置換(I460V突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置467にバリンからイソロイシンへのアミノ酸置換(V467I突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置488にセリンからフェニルアラニンへのアミノ酸置換(S488F突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置495にグルタミン酸からグリシンへのアミノ酸置換(E495G突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置505にグルタミン酸からバリンへのアミノ酸置換(E505V突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置526にトレオニンからセリンへのアミノ酸置換(T526S突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置531にプロリンからセリンへのアミノ酸置換(P531S突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置556にアラニンからバリンへのアミノ酸置換(A556V突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置572にメチオニンからリシンへのアミノ酸置換(M572K突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置575に終止コドンからリシンへのアミノ酸置換(終止575K突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置348にアルギニンからリシンへのアミノ酸置換(R348K突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、β−ファルネセンシンターゼ変異体は、配列番号111で示されるが、位置18にロイシンからイソロイシンへのアミノ酸置換(L18I突然変異)を含むアミノ酸配列を有する。
5.6 宿主細胞の遺伝子操作
本明細書に提供された方法は、高レベルの細胞内FPPを含むように、またはテルペンシンターゼもしくはテルペンシンターゼ変異体を発現するように遺伝子操作された宿主細胞を得ることを含む。そのような遺伝子操作された宿主細胞は、細胞内FPPレベルを上昇させるのに、またはテルペンシンターゼもしくはテルペンシンターゼ変異体を発現するのに望ましい効果を提供する手法で、ヌクレオチドの挿入、欠失、または修飾を含んでいてもよい。そのような遺伝子修飾は、特異的酵素のコピー数または活性の減少または増加または改変を引き起こし得る。
例えば、宿主細胞中の酵素のコピー数は、酵素をコードする遺伝子の転写を改変することにより変化させてもよい。これは、例えば酵素をコードするヌクレオチド配列のコピー数を改変することにより(例えば、ヌクレオチド配列を含む高もしくは低コピー数の発現ベクターを用いることにより、または宿主細胞のゲノムにヌクレオチド配列の追加的コピー数を導入することにより、または宿主細胞のゲノムのヌクレオチド配列を欠失もしくは破壊することにより)、オペロンのポリシストロン性mRNA上のコード配列の順序を変更することにより、そのものの制御要素によりオペロンを個々の遺伝子に分解することにより、またはヌクレオチド配列が操作可能に連結されたプロモータもしくはオペレータの強度を上昇させることにより、実現することができる。あるいは、または追加として、酵素をコードするmRNAの翻訳レベルを改変することにより、宿主細胞内の酵素のコピー数を変化させてもよい。これは、例えばmRNAの安定性を改変することにより、リボソーム結合部位の配列を改変することにより、リボソーム結合部位と酵素コード配列の開始コドンとの距離もしくは配列を改変することにより、酵素コード領域の開始コドンの5’側の「上流」に位置する、もしくは5’側に隣接したシストロン間領域全体を改変することにより、ヘアピンおよび専用の配列を用いてmRNA転写産物の3’末端を安定化させることにより、酵素のコドン使用を改変することにより、酵素の生合成において使用されるレアコドンtRNAの発現を変化させることにより、ならびに/または、例えばコード配列の突然変異を介して、酵素の安定性を上昇させることにより、実現することができる。
宿主細胞における酵素の活性は、限定するものではないが、宿主細胞における溶解度上昇もしくは低下を示す、改変された形態の酵素を発現すること、酵素活性を阻害するドメインを欠く、変化させた形態の酵素を発現すること、基質へのより高いもしくは低いKcatまたはより低いもしくは高いKmを有する改変された形態の酵素を発現すること、あるいは経路の別の分子によるフィードバックまたはフィードフォワード調節により、より大きなまたは小さな影響を受ける変化させた形態の酵素を発現すること、をはじめとする複数の方法で変化させることができる。
本明細書に提供された方法は、そのようなテルペンシンターゼまたはテルペンシンターゼ変異体を天然で発現しない宿主細胞におけるテルペンシンターゼまたはテルペンシンターゼ変異体を発現させるステップを更に含む。宿主細胞におけるテルペンシンターゼまたはテルペンシンターゼ変異体の発現は、宿主細胞における発現が可能な調節要素の制御下で、テルペンシンターゼまたはテルペンシンターゼ変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を宿主細胞内に導入することにより完遂することができる。幾つかの実施形態において、核酸は、染色体外プラスミドである。別の実施形態において、核酸は、ヌクレオチド配列を宿主細胞の染色体に組み入れ得る染色体組み入れベクター(chromosomal integration vector)である。
幾つかの実施形態において、2つ以上の宿主細胞におけるテルペンシンターゼまたはテルペンシンターゼ変異体の発現レベルが類似していることが、肝要である。これは、同様の調節要素の制御下でテルペンシンターゼまたはテルペンシンターゼ変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を用いることにより、完遂することができる。そのような核酸は、染色体外発現ベクターとして、またはテルペンシンターゼもしくはテルペンシンターゼ変異体をコードするヌクレオチド配列および調節要素を、宿主の染色体に組み入れるために、用いることができる。テルペンシンターゼまたはテルペンシンターゼ変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に、2つ以上の宿主細胞内の同じ位置を標的化させて、同じ内在性調製要素の制御下でヌクレオチド配列を配置させることにより、同等の発現レベルを完遂することができる。類似の調節要素の使用に加えて、同等の発現レベルは、2つ以上の宿主細胞内のヌクレオチド配列の類似コピー数にも依存し得る。コピー数は、染色体外発現ベクターにおいて類似もしくは同一の複製起点を使用することにより、またはヌクレオチド配列を2つ以上の宿主細胞の染色体内に組み入れるために類似のタイプおよび数の染色体組み入れ構築物を使用することにより、制御することができる。核酸の複数の追加的特色が、コードされたテルペンシンターゼまたはテルペンシンターゼ変異体の発現レベルに影響を及ぼすことができ(例えば、蛋白質またはmRNAの安定性、リボソーム結合部位の配列、リボソーム結合部位と開始コドンとの距離、上流および下流の配列の性質、ヘアピンおよび他の専門の配列、ならびにコドンの使用)、提供された方法に必要とされるならば、これらの全てを改変して類似の発現レベルを確保することができる。
限定するわけではないが、当業者に公知の任意方法により、核酸を微生物に導入することができる(例えば、Hinnen et al. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1292−3; Cregg et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 5:3376−3385; Goeddel et al. , eds, 1990, Methods in Enzymology, vol. 185, Academic Press, Inc. , CA; Krieger, 1990, Gene Transfer and Expression −− A Laboratory Manual, Stockton Press, NY; Sambrook et al. , 1989, Molecular Cloning −− A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, NY;およびAusubel et al. , eds. , Current Edition, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, NY参照)。例示的技術としては、限定するものではないが、スフェロプラスト化、電気穿孔、PEG1000を介した形質転換、および酢酸リチウムまたは塩化リチウムを介した形質転換が挙げられる。
幾つかの実施形態において、宿主細胞を遺伝子修飾するのに用いられる核酸は、形質転換された宿主細胞を選択するのに有用な、および宿主細胞に選択的圧力を施して外来DNAを保持するのに有用な1つ以上の選択マーカを含む。
幾つかの実施形態において、選択マーカは、抗生物質耐性マーカである。抗生物質耐性マーカの例示としては、限定するものではないが、BLA、NAT1、PAT、AUR1−C、PDR4、SMR1、CAT、マウスdhfr、HPH、DSDA、KANRおよびSH BLE遺伝子産物が挙げられる。大腸菌からのBLA遺伝子産物は、β−タクタム抗生物質(例えば、狭域セファロスポリン、セファロマイシン、およびカルバペネム(エルタペネム)、セファマンドール、およびセフォペラゾン)、ならびにテモシリンを除く全ての抗グラム陰性菌ペニシリンに耐性を付与し;S.ノウルセイからのNAT1遺伝子産物は、ノウルセオトリシンに耐性を付与し;S.ビリドクロモゲネスTu94からのPAT遺伝子産物は、ビアラフォスに耐性を付与し;サッカロマイセス・セレビシエからのAUR1−C遺伝子産物は、オーレオバシジンA(AbA)に耐性を付与し;PDR4遺伝子産物は、セルレニンに耐性を付与し;SMR1遺伝子産物は、スルホメツロンメチルに耐性を付与し;Tn9トランスポリンからのCAT遺伝子産物は、クロラムフェニコールに耐性を付与し;マウスdhfr遺伝子産物は、メトトレキサートに耐性を付与し;クレブシエラ・ニューモニエのHPH遺伝子産物は、ハイグロマイシンBに耐性を付与し;大腸菌のDSDA遺伝子産物は、D−セリンを唯一の窒素供給源として用いて細胞をプレート上で増殖させることができ;Tn903トランスポリンのKANR遺伝子産物は、G418に耐性を付与し、ストレプトアロテイクス・ヒンダスタヌスからのSH BLE遺伝子産物は、ゼオシン(ブレオマイシ)に耐性を付与する。幾つかの実施形態において、抗生物質体性マーカは、本明細書に開示された遺伝子修飾された宿主細胞が単離された後に欠失される。
幾つかの実施形態において、選択マーカは、遺伝子修飾された微生物において栄養要求性(例えば、栄養要求性(nutritional auxotrophy))をレスキューする。そのような実施形態において、親微生物は、アミノ酸またはヌクレオチド生合成経路において機能し、非機能的であれば、1種以上の栄養素を補充しなければ親化合物が培地中で増殖し得なくなる、1種以上の遺伝子産物における機能的破壊を含む。そのような遺伝子産物としては、限定するものではないが、酵母におけるHIS3、LEU2、LYS1、LYS2、MET15、TRP1、ADE2、およびURA3遺伝子産物が挙げられる。その後、栄養要求性表現型は、破壊された遺伝子産物の機能的コピーをコードする発現ベクターまたは染色体組み入れ構築物で親細胞を形質転換することによりレスキューすることができ、生成された遺伝子修飾宿主細胞は、親細胞の栄養要求性表現型の喪失に基づいて選択することができる。URA3、TRP1、およびLYS2遺伝子の選択マーカとしての使用は、正の選択および負の選択の両者が可能であるため、著しい利点を有する。正の選択は、URA3、TRP1、およびLYS2突然変異の栄養要求性相補性により実施されるが、負の選択は、原栄養菌株の増殖を妨害するが、それぞれURA3、TRP1、およびLYS2突然変異体の増殖を可能にする特異的阻害剤、即ち、それぞれ5−フルオロオロチン酸(FOA)、5−フルオロアントラニル酸、およびα−アミノアジピン酸(aAA)に基づく。
別の実施形態において、選択マーカは、公知選択法により同定され得る他の非致命的欠損または表現型をレスキューする。
5.7 宿主細胞の増殖
本発明は、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼ変異体を発生させる方法、およびテルペンを産生する方法を提供する。該方法は一般に、炭素供給源を含む適切な培地中、適切な条件下で宿主細胞を増殖させることを含む。
微生物を増殖させるための適切な条件および適切な培地は、当該技術分野で周知である。幾つかの実施形態において、適切な培地は、1種以上の追加的薬剤、例えば誘導化合物(例えば、遺伝子産物をコードする1つ以上のヌクレオチド配列が、誘導性プロモータの制御下にある場合)、抑制化合物(例えば、遺伝子産物をコードする1つ以上のヌクレオチド配列が、抑制性プロモータの制御下にある場合)、または選択剤(例えば、遺伝子修飾を含む微生物を選択するための抗生物質)を補充されている。
幾つかの実施形態において、炭素供給源は、単糖類(単糖)、二糖類、多糖類、非発酵性炭素供給源、またはそれらの1種以上の組み合わせである。適切な単糖類の非限定的例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、リボース、およびそれらの組み合わせが挙げられる。適切な二糖類の非限定的例としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、およびそれらの組み合わせが挙げられる。適切な多糖類の非限定的例としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。適切な非発酵性炭素供給源の非限定的例としては、アセタートおよびグリセロールが挙げられる。
一態様において、本発明は、試験テルペンシンターゼを含む宿主細胞の増殖速度に基づき、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼを同定する方法を提供する。宿主細胞の増殖速度は、例えば、宿主細胞を液体培地中で所定の期間増殖させ、その後、培養物の全てまたは一部を寒天プレート上に播種し、最後に寒天プレート上に生じたコロニーの数を計数することにより決定することができる。あるいは宿主細胞の増殖速度は、所定の期間の後、培養物のバイオマスを測定することにより決定される。バイオマスは、例えばUV分光法により、液体培地の比重を決定することにより、またはヘキソサミンおよびおエルゴステロールなどのバイオマス指数の分子を定量することにより、測定することができる(Frey et al. (1992) Biol. Fertil. Soils 13: 229−234; Newell (1992) p. 521−561. In G. C. Carroll and D. T. Wicklow (ed.), The fungal community: its organization and role in the ecosystem, 2nd ed. Marcel Dekker Inc., New York)。
5.8 テルペンの産生
本発明は、テルペンを産生する方法を提供する。
幾つかの実施形態において、テルペンは、発酵培地1リットルあたり約10グラムを超える量で産生される。幾つかのそのような実施形態において、テルペンは、細胞培養物1リットルあたり、約10〜約50グラム、約15グラムを超える、約20グラムを超える、約25グラムを超える、または約30グラムを超える量で産生される。
幾つかの実施形態において、テルペンは、乾燥細胞重量1グラムあたり約50ミリグラムを超える量で産生される。幾つかのそのような実施形態において、テルペンは、乾燥細胞重量1グラムあたり、約50〜約1500ミリグラム、約100ミリグラムを超える、約150ミリグラムを超える、約200ミリグラムを超える、約250ミリグラムを超える、約500ミリグラムを超える、約750ミリグラムを超える、または約1000ミリグラムを超える量で産生される。
幾つかの実施形態において、テルペンは、単位細胞培養容量あたりに、第一の異種ヌクレオチド配列を含まない宿主細胞により産生されるテルペン量よりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%高い、または少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍、またはそれを超える量で産生される。
幾つかの実施形態において、テルペンは、単位乾燥細胞重量あたりに、第一の異種ヌクレオチド配列を含まない宿主細胞により産生されるテルペン量よりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%高い、または少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍、またはそれを超える量で産生される。
幾つかの実施形態において、テルペンは、単位時間の単位細胞培養容量あたりに、第一の異種ヌクレオチド配列を含まない宿主細胞により産生されるテルペン量よりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%高い、または少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍、またはそれを超える量で産生される。
幾つかの実施形態において、テルペンは、単位時間の単位乾燥細胞重量あたりに、第一の異種ヌクレオチド配列を含まない宿主細胞により産生されるテルペン量よりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%高い、または少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍、またはそれを超える量で産生される。
5.9 テルペンの抽出および定量
本発明の遺伝子修飾された宿主細胞により産生されたテルペンは、当該技術分野で公知の任意の適切な分離および精製法を用いて、発酵から単離されてもよい。
幾つかの実施形態において、テルペンを含む有機相は、遠心分離により発酵から分離される。別の実施形態において、テルペンを含む有機相は、自然に発酵から分離される。更に別の実施形態において、テルペンを含む有機相は、発酵反応に無乳化剤および/または核化剤を添加することにより、発酵から分離される。無乳化剤の例示としては、凝集剤および凝固剤が挙げられる。核化剤の例示としては、テルペンそのものの液滴および有機溶媒、例えばドデカン、ミリスチン酸イソプロピル、およびオレイン酸メチルが挙げられる。
幾つかの実施形態において、テルペンは、有機相中に存在し得る他の産物から分離される。幾つかの実施形態において、分離は、吸着、蒸留、気液抽出(逆抽出)、液液抽出(溶媒抽出)、限外ろ過、および標準のクロマトグラフィー技術を用いて実現される。
幾つかの実施形態において、テルペンは、純粋であり、例えば少なくとも約40%純粋、少なくとも約50%純粋、少なくとも約60%純粋、少なくとも約70%純粋、少なくとも約80%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、少なくとも約98%純粋、または98%を超えて純粋である(テルペンに関連する「純粋」は、他のテルペンまたは混入物を含まないテルペンを指す)。
テルペン産生は、限定するものではないが、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC/MS)、核磁気共鳴法(NMR)、ラマン分光法、光吸収(UV/VIS)、赤外分光法(IR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC/MS)、イオンクロマトグラフィー−質量分析法、薄層クロマトグラフィー、パルスアンペアメトリック検出法、およびUV−VIS分光法をはじめとし、当該技術分野で知られる周知方法を用いて即座に定量することができる。
宿主細胞により産生されたテルペンは、限定するものではないが、クロマトグラフィー、抽出、溶媒抽出、膜分離、電気透析法、逆浸透法、蒸留、化学的誘導体化、および結晶化をはじめとする様々な方法のいずれかを用いて回収することができる。
テルペンの定量または単離を改善する追加の処理ステップとしては、限定するものではないが、宿主細胞の破壊が挙げられる。適切な方法としては、限定するものではないが、ボルテックス処理、音波処理、およびガラスビーズの使用が挙げられる。他の処理ステップは、不適当な細胞片を上清から除去するための遠心分離を含むことができる。
以下の具体的実施例は、本開示を例示するためのものであり、特許請求の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
実施例1
この実施例は、テルペンシンターゼ変異体の生成および特徴付けに有用となるDNA構築物を生成する方法を説明する。
MevT66オペロンをベクターpAM36に挿入することにより、発現プラスミドpAM36−MevT66を生成させた。ベクターpAM36は、pACYC184ベクター(GenBankアクセション番号XO6403)からtet耐性遺伝子を除去して、それにAscI−SfiI−AsiSI−XhoI−PacI−FsIl−PmeI制限部位を含むオリゴヌクレオチドカセットを付加することにより、生成させた。MevT66オペロンに、ユビキタス前駆体アセチル−CoAを(R)−メバロン酸に一緒に形質転換するMev経路酵素のセット、即ちアセトアセチル−CoAチオラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、およびHMG−CoAリダクターゼをコードしていた。MevT66オペロンは、合成により生成させ、大腸菌における発現のためにコドン最適化されたエシェルヒア・コリのatoB遺伝子(GenBankアクセション番号NC_000913 領域:2324131..2325315;アセトアセチル−CoAチオラーゼをコードする)と、大腸菌における発現のためにコドン最適化されたサッカロマイセス・セレビシエのERG13遺伝子のコード配列(GenBankアクセション番号X96617,領域:220..1695;HMG−CoAシンターゼをコードする)と、大腸菌における発現のためにコドン最適化されたサッカロマイセス・セレビシエのHGM1遺伝子のトランケート型コード配列(GenBankアクセション番号M22002,領域:1777..3285;トランケート型HMG−CoAリダクターゼをコードする)と、を含んだ。合成により生成させたMevT66オペロンを、標準のpUCまたはpACYC起源ベクター(origin vector)などのクローニングベクターにクローニングし、それからフランキングSfiIおよびAsiSI制限部位により再度PCR増幅させて、SfiIおよびAsiSI制限エンドヌクレアーゼを用いて増幅されたDNAフラグメントを消化し、MevT66オペロンを含むおよそ4.2kbのDNAフラグメントをゲル精製して、精製されたDNAフラグメントをpAM36ベクターのSfiIおよびAsiSI制限部位に挿入して、発現プラスミドpAM36−MevT66を得た。
MevBオペロンをpBBR1MCS−1ベクターに挿入することにより、発現プラスミドpMevB−Cmを生成させた。MevBオペロンは、(R)−メバロン酸をIPPに一緒に変換する酵素のセット、即ちメバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、およびメバロン酸ピロリン酸カルボキシラーゼをコードする。ERG12遺伝子のコード配列(GenBankアクセション番号X55875,領域:580..1911; メバロン酸キナーゼをコードする)、ERG8遺伝子のコード配列(GenBankアクセション番号Z49939,領域:3363..4718;ホスホメバロン酸キナーゼをコードする)、およびMVD1遺伝子のコード配列(GenBankアクセション番号X97557,領域:544..1734;メバロン酸ピロリン酸カルボキシラーゼをコードする)を、サッカロマイセス・セレビシエのゲノムDNAからPCR増幅させた。適切なプライマー配列を選択することにより、PCR増幅の間にERG12およびERG8コード配列の終止コドンをTAAからTAGに変化させて、リボソーム結合部位を導入した。配列重複伸長(SOE;Ho, et al, 1989)により、PCR産物を一緒にMevBオペロンにスプライシングした。3’Aオーバーハングの付加の後、MevBオペロンをTAクローニングベクターpCR4(Invitrogen, Carlsbad, CA)にライゲートした。PstI制限エンドヌクレアーゼを用いてクローニング構築物を消化することによりMevBオペロンを再度切除し、MevBオペロンを含むおよそ4.2kbのDNAフラグメントをゲル精製し、精製されたDNAフラグメントをベクターpBBR1MCS−1のPstI制限部位にライゲートして(Kovach et al., Gene 166(1): 175−176 (1995))、発現プラスミドpMevB−Cmを得た。
MBIオペロンをpBBR1MCS−3ベクターに挿入することにより、発現プラスミドpMBIを生成させた。MBIオペロンは、MevBオペロンと同じ酵素に加え、IPPからDMAPPへの変換を触媒するイソペンテニルピロホスファターゼイソメラーゼもコードする。MBIオペロンは、5’末端にXmaI制限部位を含むプライマーを用いて、大腸菌のゲノムDNAからidi遺伝子のコード配列(GenBankアクセション番号AF119715)をPCR増幅することにより生成させた。XmaI制限エンドヌクレアーゼを用いてPCR産物を消化し、idiコード配列を含む0.5kb DNAフラグメントをゲル精製して、精製されたDNAフラグメントを発現プラスミドpMevB−CmのXmaI制限部位に挿入して、idiをMevBオペロンの3’末端に配置させた。その後、MBIオペロンをベクターpBBR1MCS−3のSalIおよびSacI制限部位にサブクローニングして(Kovach et al., Gene 166(1): 175−176 (1995))、発現プラスミドpMBIを得た。
ispA遺伝子を発現プラスミドpMBIに挿入することにより、発現プラスミドpMBISを生成させた。ispA遺伝子は、IPPおよびDMAPPのFPPへの縮合を触媒するファルネシルピロリン酸シンターゼをコードする。ispA遺伝子のコード配列(GenBankアクセション番号D00694,領域:484..1383)を、SacII制限部位を含むフォワードプライマーおよびSacI制限部位を含むリバースプライマーを用いて、大腸菌のゲノムDNAからPCR増幅させた。SacIIおよびSacI制限エンドヌクレアーゼを用いて、増幅されたPCR産物を消化し、ispAコード配列を含む0.9kb DNAフラグメントをゲル精製して、精製されたDNAフラグメントをpMBIのSacIIおよびSacI制限部位にライゲートして、idiのispAコード配列の3’およびMevBオペロンを配置させて、発現プラスミドpMBISを得た。
MevT66オペロンをpAM29ベクターに挿入することにより、発現プラスミドpAM25を生成させた。p15A複製起点およびカナマイシン耐性付与遺伝子をpZS24−MCS1ベクター(Lutz and Bujard (1997) Nucl Acids Res. 25:1203−1210)からオリゴヌクレオチド生成lacUV5プロモータを用いて組み立てることにより、pAM29ベクターを生成させた。EcoRIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼを用いて、MevT66オペロンを含むDNA合成構築物(先のpAM36−MevT66に関する記載を参照)を消化し、MevT66オペロンを含むおよそ4.2kbのDNAフラグメントをゲル精製して、精製されたDNAフラグメントをpAM29のEcoRIおよびHindIII制限部位にライゲートして、発現プラスミドpAM25を得た。
発現プラスミドpAM25内で、サッカロマイセス・セレビシエHMG−CoAリダクターゼのトランケート型をコードするHMG1遺伝子のトランケート型コード配列を、スタフィロコッカス・アウレウスHMG−CoAリダクターゼをコードするmvaA遺伝子のコード配列(GenBankアクセション番号BA000017,領域:2688925..2687648)と交換することにより、発現プラスミドpAM41を生成させた。mvaA遺伝子のコード配列を、SpeI制限部位を含むプライマーを用いて、スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(ATCC70069)ゲノムDNAからPCR増幅させ、SpeI制限エンドヌクレアーゼを用いてPCR産物を消化し、mvaAコード配列を含むおよそ1.3kbのDNAフラグメントをゲル精製した。HindIII制限エンドヌクレアーゼを用いて発現プラスミドpAM25を消化し、末端のオーバーハングをT4 DNAポリメラーゼを用いて平滑化し、SpeI制限エンドヌクレアーゼを用いて直線状ベクターバックボーンを部分的に消化し、トランケート型HMG1コード配列を欠くおよそ4.8kbのDNAフラグメントをゲル精製した。精製されたDNAフラグメントをライゲートして、発現プラスミドpAM41を得た。
MBISオペロンを発現プラスミドpAM36−MevT66に挿入することにより、発現プラスミドpAM43を生成させた。5’XhoI制限部位およびPacI制限部位を含むプライマーを用いて、MBISオペロンをpMBISからPCR増幅させて、XhoIおよびPacI制限エンドヌクレアーゼを用いて増幅されたPCR産物を消化して、MBISオペロンを含むおよそ5.4kbのDNAフラグメントをゲル精製して、ゲル精製されたDNAフラグメントを発現プラスミドpAM36−MevT66のXhol PacI制限部位にライゲートして、発現プラスミドpAM43を得た。
lacUV5プロモータを、発現プラスミドpAM43のMBISおよびMevT66オペロンの前に挿入することにより、発現プラスミドpAM45を生成させた。lacUV5プロモータをコードするヌクレオチド配列を含むDNAフラグメントを、オリゴヌクレオチドから合成し、pAM43のAscI SfiIおよびAsiSI XhoI制限部位に挿入して、発現プラスミドpAM45を得た。
発現プラスミドpAM41において、サッカロマイセス・セレビシエHMG−CoAシンターゼをコードするERG13遺伝子のコード配列を、スタフィロコッカス・アウレウスHMG−CoAシンターゼをコードするmvaS遺伝子のコード配列(GenBankアクセション番号BA000017,領域:2689180..2690346)と交換することにより、発現プラスミドpAM52を生成させた。mvaS遺伝子のコード配列を、スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(ATCC 70069)ゲノムDNAからPCR増幅させて、増幅されたDNAフラグメントをPCRプライマーとして用いて、Geiser他(BioTechniques 31:88−92 (2001))の方法によりpAM41内のHMG1遺伝子のコード配列を交換することにより、発現プラスミドpAM52を得た。
発現プラスミドpAM45内で、MevT66オペロンを発現プラスミドpAM52の(atoB(opt):mvaS:mvaA)オペロンと交換することにより、発現プラスミドpAM97を生成させた。AsiSIおよびSfiI制限エンドヌクレアーゼを用いて、発現プラスミドpAM45を消化して、MevT66オペロンを欠くおよそ8.3kbのDNAフラグメントをゲル精製した。SfiIおよびAsiSI制限部位を含むプライマーを用いて、pAM52の(atoB(opt):mvaS:mvaA)オペロンをPCR増幅させて、SfiIおよびAsiSI制限エンドヌクレアーゼを用いてPCR産物を消化し、(atoB(opt):mvaS:mvaA)オペロンを含むおよそ3.8kbのDNAフラグメントをゲル精製した。精製されたDNAフラグメントをライゲートして、発現プラスミドpAM97を得た。
発現プラスミドpAM97内で、サッカロマイセス・セレビシエのメバロン酸キナーゼをコードするERG12遺伝子のコード配列を、スタフィロコッカス・アウレウスのメバロン酸キナーゼをコードするmvaK1遺伝子のコード配列(GenBankアクセション番号AAG02424)と交換することにより、発現プラスミドpAM765を生成させた。スタフィロコッカス・アウレウスのメバロン酸キナーゼは、FPPによるフィードバック阻害に対して感受性が低く(Voynova et al. (2004) J. Bacteriol. 186:61−67)、そのため発現プラスミドpAM765は、発現プラスミドpAM97よりも宿主細胞内で多くのFPP産生を起こすことができる。mvaK1遺伝子のコード配列を発現プラスミドからPCR増幅させ、およそ0.9kbのPCR産物をゲル精製した。PMK−PMD−idi−ispAオペロンを、pAM97からPCR増幅させ、およそ4.1kbのPCR産物をゲル精製した。精製されたPCR産物を一緒にスティッチングし、スティッチングされた産物をゲル精製した。XhoIおよびSacI制限エンドヌクレアーゼを用いて、精製されたスティッチング産物およびpAM97を消化し、消化されたDNAフラグメントをゲル精製し、精製されたDNAフラグメントをライゲートして、発現プラスミドpAM765(配列番号1)を得た。
ベクターpAM471のP
GAL10−ERG20_P
GAL1−tHMGRインサートをベクターpAM466に挿入することにより、プラスミドpAM489を生成させた。サッカロマイセス・セレビシエのERG20遺伝子のコード配列(ERG20ヌクレオチド位置1から1208まで;ATG開始コドンのAは、ヌクレオチド1である)(EGR20)と、サッカロマイセス・セレビシエの分岐したGAL1およびGAL10プロモータを含むゲノム遺伝子座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668まで)(P
GAL)と、サッカロマイセス・セレビシエのHMG1遺伝子のトランケート型コード配列(HMG1ヌクレオチド位置1586から3323まで)(tHMGR)とを含むDNAフラグメントP
GAL10−ERG20_P
GAL1−tHMGRを、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)に挿入することにより、ベクターpAM471を生成させた。ヌクレオチド位置−856から位置548まで伸長するサッカロマイセス・セレビシエの野生型TRP1遺伝子座のセグメントを含み、塩基−226から−225までの非ネイティブ内部XmaI制限部位を持つ、DNAフラグメントTRP1
−856 to +548を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクター(Invitrogen,q Carlsbad, CA)に挿入することにより、ベクターpAM466を生成させた。表1にまとめるように、PCR増幅によりDNAフラグメントP
GAL10−ERG20_P
GAL1−tHMGRおよびTRP1
−856 to +548を生成させた。pAM489の構築については、XmaI制限酵素(New England Biolabs, Ipswich, MA)を用いてpAM471 400ngおよびpAM466 100ngを完全に消化し、P
GAL10−ERG20_P
GAL1−tHMGRインサートおよび直線化pAM466ベクターに対応するDNAフラグメントをゲル精製して、精製されたインサートの4モル当量を精製された直線化ベクター1モル当量とライゲートして、pAM480を得た。図1Rに、pAM489のTRP1_P
GAL10−ERG20_P
GAL1−tHMGR_TRPインサートのマップおよび配列番号2のヌクレオチド配列を示す。
ベクターpAM472のP
GAL10−ERG13_P
GAL1−tHMGRインサートをベクターpAM467に挿入することにより、プラスミドpAM491を生成させた。サッカロマイセス・セレビシエのERG13遺伝子のコード配列(ERG13ヌクレオチド位置1から1626まで)(EGR13)と、サッカロマイセス・セレビシエの分岐したGAL1およびGAL10プロモータを含むゲノム遺伝子座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668まで)(P
GAL)と、サッカロマイセス・セレビシエのHMG1遺伝子のトランケート型ORF(HMG1ヌクレオチド位置1586から3323まで)(tHMGR)とを含むDNAフラグメントP
GAL10−ERG13_P
GAL1−tHMGRを、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクターに挿入することにより、ベクターpAM472を生成させた。ヌクレオチド位置−723から位置−224まで伸長するサッカロマイセス・セレビシエの野生型URA3遺伝子座のセグメントを含み、塩基−224から−223までの非ネイティブ内部XmaI制限部位を持つ、DNAフラグメントURA3
−723 to 701を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクターに挿入することにより、ベクターpAM467を生成させた。表2にまとめるように、PCR増幅によりDNAフラグメントP
GAL10−ERG13_P
GAL1−tHMGRおよびURA3
−723 to 701を生成させた。pAM491の構築については、XmaI制限酵素を用いてpAM472 400ngおよびpAM467 100ngを完全に消化し、ERG13−P
GAL−tHMGRインサートおよび直線化pAM467ベクターに対応するDNAフラグメントをゲル精製して、精製されたインサートの4モル当量を精製された直線化ベクター1モル当量とライゲートして、pAM491を得た。図1Sに、pAM491のURA3_P
GAL10−ERG13_P
GAL1−tHMGR_URA3インサートのマップおよび配列番号13のヌクレオチド配列を示す。
ベクターpAM473のP
GAL10−IDI1_P
GAL1−tHMGRインサートをベクターpAM468に挿入することにより、プラスミドpAM493を生成させた。サッカロマイセス・セレビシエのIDI1遺伝子のコード配列(IDI1ヌクレオチド位置1から1017まで)(IDI1)と、サッカロマイセス・セレビシエの分岐したGAL1およびGAL10プロモータを含むゲノム遺伝子座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668まで)(P
GAL)と、サッカロマイセス・セレビシエのHMG1遺伝子のトランケート型ORF(HMG1ヌクレオチド位置1586から3323まで)(tHMGR)とを含むDNAフラグメントP
GAL10−IDI1_P
GAL1−tHMGRを、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクターに挿入することにより、ベクターpAM473を生成させた。ヌクレオチド位置−225から位置653まで伸長するサッカロマイセス・セレビシエの野生型ADE1遺伝子座のセグメントを含み、塩基−226から−225までの非ネイティブ内部XmaI制限部位を持つ、DNAフラグメントADE1
−825 to 653を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクターに挿入することにより、ベクターpAM468を生成させた。表3にまとめるように、PCR増幅によりDNAフラグメントP
GAL10−IDI1_P
GAL1−tHMGRおよびADE1
−825 to 653を生成させた。pAM493の構築については、XmaI制限酵素を用いてpAM473 400ngおよびpAM468 100ngを完全に消化し、P
GAL−IDI1_P
GAL−tHMGRインサートおよび直線化pAM467ベクターに対応するDNAフラグメントをゲル精製して、精製されたインサートの4モル当量を精製された直線化ベクター1モル当量とライゲートして、pAM493を得た。図1Tに、pAM493のADE1_P
GAL10−IDI1_P
GAL1−tHMGR_ADE1インサートのマップおよび配列番号24のヌクレオチド配列を示す。
ベクターpAM474のP
GAL10−ERG10_P
GAL1−ERG12インサートをベクターpAM469に挿入することにより、プラスミドpAM495を生成させた。サッカロマイセス・セレビシエのERG10遺伝子のコード配列(ERG10ヌクレオチド位置1から1347まで)(ERG10)と、サッカロマイセス・セレビシエの分岐したGAL1およびGAL10プロモータを含むゲノム遺伝子座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668まで)(P
GAL)と、サッカロマイセス・セレビシエのERG12遺伝子のコード配列(ERG12ヌクレオチド位置1から1482まで)(ERG12)とを含むDNAフラグメントP
GAL10−ERG10_P
GAL1−ERG12を、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクターに挿入することにより、ベクターpAM474を生成させた。ヌクレオチド位置−32から位置−1000まで伸長し、ヌクレオチド位置504から位置1103まで伸長する、サッカロマイセス・セレビシエのHIS遺伝子座の2つのセグメントと、HISMXマーカと、HIS
504 to −1103配列からHISMXマーカまでの非ネイティブXmaI制限部位と、を含むDNAフラグメントHIS3
−32 to 1000_HISMX_HIS3
504 to −1103を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクターに挿入することにより、ベクターpAM469を生成させた。表4にまとめるように、PCR増幅によりDNAフラグメントP
GAL10−ERG10_P
GAL1−ERG12およびHIS3
−32 to 1000_HISMX_HIS3
−504 to 1103を生成させた。pAM495の構築については、XmaI制限酵素を用いてpAM474 400ngおよびpAM469 100ngを完全に消化し、P
GAL−ERG10_P
GAL−ERG12インサートおよび直線化pAM469ベクターに対応するDNAフラグメントをゲル精製して、精製されたインサートの4モル当量を精製された直線化ベクター1モル当量とライゲートして、pAM495を得た。図1Dに、pAM495のHIS3_P
GAL10−ERG10_P
GAL1−ERG12_HIS3インサートのマップおよび配列番号34のヌクレオチド配列を示す。
ベクターpAM475のP
GAL10−ERG8_P
GAL1−ERG19インサートをベクターpAM470に挿入することにより、プラスミドpAM497を生成させた。サッカロマイセス・セレビシエのERG8遺伝子のコード配列(ERG8ヌクレオチド位置1から1512まで)(ERG8)と、サッカロマイセス・セレビシエの分岐したGAL1およびGAL10プロモータを含むゲノム遺伝子座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668まで)(P
GAL)と、サッカロマイセス・セレビシエのERG19遺伝子のコード配列(ERG19ヌクレオチド位置1から1341まで)(ERG19)とを含むDNAフラグメントP
GAL10−ERG8_P
GAL1−ERG19を、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクターに挿入することにより、ベクターpAM475を生成させた。ヌクレオチド位置−100から位置−450まで伸長し、ヌクレオチド位置1096から位置1770まで伸長する、サッカロマイセス・セレビシエのLEU2遺伝子座の2つのセグメントと、HISMXマーカと、LEU2
1096 to 1770配列からHISMXマーカまでの非ネイティブXmaI制限部位と、を含むDNAフラグメントLEU2
−100 to 450_HISMX_LEU2
1096 to 1770を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクターに挿入することにより、ベクターpAM470を生成させた。表5にまとめるように、PCR増幅によりDNAフラグメントP
GAL10−ERG8_P
GAL1−ERG19およびLEU2
−100 to 450_HISMX_LEU2
−1096 to 1770を生成させた。pAM497の構築については、XmaI制限酵素を用いてpAM475 400ngおよびpAM470 100ngを完全に消化し、ERG8_P
GAL−ERG19インサートおよび直線化pAM470ベクターに対応するDNAフラグメントを精製して、精製されたインサートの4モル当量を精製された直線化ベクター1モル当量とライゲートして、pAM497を得た。図1Vに、pAM497のLEU2_P
GAL10−ERG8_P
GAL1−ERG19_LEU2インサートのマップおよび配列番号47のヌクレオチド配列を示す。
ベクターTrc99A(Amman et al., Gene 40:183−190 (1985))から、2つのNcoI制限部位を除去することにより、ベクターpAM419を生成させた。Quikchange Multi Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA)を用い、製造業者の推奨するプロトコルに従って、最初に、ベクターpTrc99Aのマルチクローニング部位のNcoI制限部位をNdeI制限部位に変換した。その後、Quikchange Multi Site−Directed Mutagenesis Kitを用いて、ベクターTrc99Aの位置2699のマルチクローニング部位の外側の第二のNdeI制限部位も除去して、ベクターpAM1419(配列番号60)を得た。
ベクターpAM1419にFS_S2D−Ecコード配列を挿入することにより、発現プラスミドpAM1421(図13A)を生成させた。BamHIおよびNdeI制限エンドヌクレアーゼを用いてベクターpAM1419を消化し、およそ4.15kbの直線化ベクターバックボーンをゲル精製して、精製されたDNAフラグメントをCalf Intestinal Alkaline Phosphatse (CIP)で消化して、5’リン酸基を除去した。位置2にセリンからアスパラギン酸塩へのアミノ酸置換(S2D)を含み、大腸菌における発現のためにフランキングBamHIおよびNdeI制限部位でコドン最適化されたアルテミシア・アンヌアのb−ファルネセンシンターゼ遺伝子(GenBankアクセション番号AY835398; Picaud, et al, 2005)を、他の発現プラスミドからPCR増幅され、PCR産物をBamHIおよびNdeI制限エンドヌクレアーゼで消化し、その後、ゲル精製した。精製された直線化ベクターおよび消化したPCR産物を、T4 DNAリガーゼでライゲートして、発現プラスミドpAM1421を得た。
pRS425−Gal1ベクター(Mumberg et. al. (1994) Nucl. Acids. Res. 22(25): 5767−5768)内に、サッカロマイセス・セレビシエ(FS_Aa_Scコード配列:配列番号68)における発現のためにコドン最適化されたアルテミシア・アンヌアのβ−ファルネセンシンターゼ遺伝子のコード配列( GenBankアクセション番号AY835398)を挿入することにより、発現プラスミドpAM353を生成させた。FS_Aa_Scコード配列を合成により生成させて、5’BamHIおよび3’XhoI制限部位によりフランキングすると、標準pUCまたはpACYC起源ベクターなどのクローニングベクターの適合性のある制限部位にクローニングすることができた。BamHI XhoI制限エンドヌクレアーゼを用いて構築物を消化することによりFS_Aa_Scコード配列を再度切除して、FS_Aa_Scコード配列を含むおよそ1.7kbのDNAフラグメントをゲル精製して、精製されたDNAフラグメントをpRS425−Gal1ベクターのBamHI XhoI制限部位にライゲートして、発現プラスミドpAM353を得た。
ベクターpAM178(配列番号69)内にFS_Aa_Scコード配列を挿入することにより、発現プラスミドpAM404(図13B)を生成させた。BamHIおよびNheI制限エンドヌクレアーゼを用いてベクターpAM178を消化して、およそ7.3kbのベクターバックボーンをゲル精製した。フランキングBamHIおよびNdeI制限部位を有するFS_Aa_Scコード配列をpAM353からPCR増幅させて、BamHIおよびNheI制限エンドヌクレアーゼを用いてPCR産物を消化して、FS_Aa_Scコード配列を含むおよそ1.7kb DNAフラグメントをゲル精製した。2つのゲル精製されたDNAフラグメントをライゲートして、発現プラスミドpAM404を得た。
表6および図13Bに示された発現プラスミドを、発現プラスミドpAM404において、FS_Aa_Scコード配列を、示されたコード配列と交換することにより生成させた。BamHIおよびNheI制限エンドヌクレアーゼを用いてベクターpAM404を消化して、FS_Aa_Scコード配列を欠くおよそ7.3kbの直線化ベクターバックボーンをゲル精製した。直線化pAM404ベクターバックボーンの末端配列と重複したプライマーを用いて、FS_S2D_Ecコード配列を別の発現プラスミドからPCR増幅させた。IS_Pn_ScおよびTDS_Pn_Scコード配列を、他の発現ベクターからの制限エンドヌクレアーゼ消化により抽出した。DNAフラグメントをゲル精製した。菌株Y539を形質転換して、唯一の炭素供給源として2%グルコースを含むComplete Synthetic Medium(CSM)の、ロイシンを含まないもの(CSM−L)で宿主細胞形質転換物を選択することにより、相同組換えを介して、FS_S2D_Ecコード配列を精製された直線化ベクターに挿入した。T4 DNAリガーゼを用いて、IS_Pn_ScおよびTDS_Pn_Scコード配列を、精製された直線化ベクターにライゲートした。
発現プラスミドpAM404にTDS_Fs_Scコード配列を挿入することにより、発現プラスミドpAM1812(配列番号72;図13C)を生成させた。NotI制限エンドヌクレアーゼを用いて発現プラスミドpAM404を消化して、およそ9.0kb直線化プラスミドをゲル精製した。直線化pAM404の末端配列と重複したプライマーを用いて、TDS_Fs_Scコード配列を発現プラスミドpAM1795からPCR増幅させて、TDS_Fs_Scコード配列を含む1.2kb PCR産物をゲル精製した。菌株Y539を両方の精製されたDNAフラグメントで形質転換して、唯一の炭素供給源として2%グルコースを含むCSM−Lで宿主細胞形質転換物を選択することにより、相同組換えを介して、2つのゲル精製されたDNAフラグメントをライゲートした。
発現プラスミドpAM1812において、FS_Aa_Scコード配列を、示されたコード配列と交換することにより、表7および図13Cに示された発現プラスミドを生成させた。BamHIおよびNheI制限エンドヌクレアーゼを用いて発現プラスミドpAM1812を消化して、FS_Aa_Scコード配列を欠くおよそ7.2kbの直線化ベクターバックボーンをゲル精製した。コード配列を、他の発現ベクターからのBamHIおよびNheI制限エンドヌクレアーゼ消化により抽出し、コード配列を含むDNAフラグメントをゲル精製した。最後に、T4 DNAリガーゼを用いて、精製されたDNAフラグメントをライゲートして、発現プラスミドを得た。
発現プラスミドpAM1795にFS_Aa_Scコード配列を挿入することにより、発現プラスミドpAM1813(図13D)を生成させた。NotI制限エンドヌクレアーゼを用いて発現プラスミドpAM1795を消化して、およそ8.4kb直線化プラスミドをゲル精製した。直線化pAM404の末端配列と重複したプライマーを用いて、FS_Aa_Scコード配列をPCR増幅させて、FS_Aa_Scコード配列を含むPCR産物をゲル精製した。それを菌株Y539内に形質転換して、唯一の炭素供給源として2%グルコースを含むCSM−Lで宿主細胞形質転換物を選択することにより、相同組換えを介して、精製されたPCR産物をライゲートした。TDSおよびFSのプロモータが入れ替えられていることを除き、pAM1812およびpAM1813が同一であることに留意されたい。異なる強度のプロモータを用いれば、ファルネセン/トリコジエン比の変動が可能である。
ベクターpRS415にIS_Pn_Ssコード配列を挿入することにより、発現プラスミドpAM1653を生成させた。NotI制限ドヌクレアーゼを用いて発現プラスミドpAM1549を消化し、Klenowフラグメントで処理して平滑末端を生成させ、NotI制限ドヌクレアーゼを用いて再度消化し、IS_Pn_Scコード配列およびPGAL配列を含む2.8kbDNAフラグメントをゲル精製した。NotIおよびAleI制限エンドヌクレアーゼを用いてベクターpRS415を消化して、6.0kbの直線化されたベクターバックボーンをライゲートし、発現プラスミドpAM1653を得た。
発現プラスミドpAM1653のマルチクローニング部位から特定の制限部位を排除することにより、発現プラスミドpAM1734を生成させた。XbaIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼを用いて発現プラスミドpAM1653を消化し、Klenowフラグメントで処理して平滑末端を生成させ、最後に、自己ライゲートさせて、発現プラスミドpAM1734を得た。
発現プラスミドpAM1734内にFS_S2D_Ecコード配列を挿入することにより、発現プラスミドpAM1764(配列番号74)を生成させた。BamHIおよびNheI制限エンドヌクレアーゼを用いて発現プラスミドpAM1734を消化し、およそ6.9kbの直線化プラスミドをゲル精製した。直線化pAM1734の末端配列と重複したプライマーを用いて、FS_S2D_Ecコード配列を発現プラスミドpAM1421からPCR増幅させて、FS_S2D_Ecコード配列を含む1.7kb PCR産物をゲル精製した。菌株Y539を両方の精製されたDNAフラグメントで形質転換して、唯一の炭素供給源として2%グルコースを含むCSM−Lで宿主細胞形質転換物を選択することにより、相同組換えを介して、2つのゲル精製されたDNAフラグメントをライゲートした。
発現プラスミド1419からlacI遺伝子を欠失させることにより、発現プラスミドpAM1668を生成させた。EcoRVおよびSapI制限エンドヌクレアーゼを用いて発現プラスミドpAM1419を消化して、End−It DNA End−Repair Kit (Epicentre, Madison, WI)を用いて、製造業者の推奨するプロトコルに従い、消化したプラスミドを修復して、末端修復されたベクターを自己ライゲートし、ベクターpAM1668を得た。
発現プラスミドpAM1668に示されたコード配列を挿入ることにより、表8および図13Eに示された発現プラスミドを生成させた。BamHIおよびNheI制限エンドヌクレアーゼを用いて発現プラスミドpAM1668を消化して、およそ2.9kbの直線化ベクターバックボーンをゲル精製した。直線化pAM1668の末端配列と重複したプライマーを用いてそのコード配列をPCR増幅させて、BamHIおよびNheI制限エンドヌクレアーゼを用いてPCR産物を消化し、コード配列を含む消化したPCR産物をゲル精製した。精製された直線化ベクターおよび消化したPCR産物を最後にライゲートして、発現プラスミドを得た。
構築物Aを、表9に記載されたとおりPCR増幅により生成させた。その構築物は、サッカロマイセス・セレビシエのNDT80遺伝子の上流領域(NDT80ヌクレオチド位置−175から−952まで)、サッカロマイセス・セレビシエのLEU2マーカ(LEU2ヌクレオチド位置−661から+1541まで)、サッカロマイセス・セレビシエのGAL1遺伝子のプロモータ(GAL1ヌクレオチド位置−1から−667まで)、FS_Aa_Scコード配列、サッカロマイセス・セレビシエのCYC1遺伝子のターミネータ(CYC1ヌクレオチド位置+331から+521まで)、およびサッカロマイセス・セレビシエのNDT80遺伝子の下流位置(NDT80ヌクレオチド位置+1685から+2471まで)を含む。図1Wに、構築物Aのマップおよび配列番号86のヌクレオチド配列を示す。
構築物B(図IX)を、PCR増幅により生成させた。その構築物は、サッカロマイセス・セレビシエのNDT80遺伝子の上流領域(NDT80ヌクレオチド位置−175から−952まで)、サッカロマイセス・セレビシエのLEU2マーカ(LEU2ヌクレオチド位置−661から+1541まで)、サッカロマイセス・セレビシエのGAL1遺伝子のプロモータ(GAL1ヌクレオチド位置−1から−667まで)、HISGマーカ、サッカロマイセス・セレビシエのCYC1遺伝子のターミネータ(CYC1ヌクレオチド位置+331から+521まで)、およびサッカロマイセス・セレビシエのNDT80遺伝子の下流位置(NDT80ヌクレオチド位置+1685から+2471まで)を含む。
構築物Dを、表10に記載されたとおりPCR増幅により生成させた。その構築物は、サッカロマイセス・セレビシエのGAL1遺伝子のプロモータによりフランクされたコード配列(PGAL1;GAL1ヌクレオチド位置−1から−45まで)、サッカロマイセス・セレビシエのPGK1遺伝子のターミネータ(TPGK1:PGK1ヌクレオチド位置+1159から+1547まで)、およびサッカロマイセス・セレビシエのGAL10遺伝子のプロモータによりフランクされたTDS_Fs_Scコード配列(PGAL10;GAL10ヌクレオチド位置−1から−202まで)およびサッカロマイセス・セレビシエのADH1遺伝子のターミネータ(TADH1:ADH1ヌクレオチド位置−1から−166まで)を含む。図1Zに、構築物Dのマップおよび配列番号116のヌクレオチド配列を示す。
FastDigest(登録商標)BstZ17I制限酵素(Fisher Scientific Worldwide, Hampton, NH)を用いて消化したベクターpAM552(配列番号156)100ng、および構築物D 300ngで、指数増殖期のY3198細胞を形質転換することにより、発現プラスミドpAM2191を作製した。宿主細胞形質転換物を、唯一の炭素供給源として2%グルコースを含むCSM−L寒天プレートに播種して、個々のコロニーが約1mm径になるまで30℃で3日間インキュベートした。Zymoprep(商標) Yeast Plasmid Miniprep Kit II(Zymo Research Corporation, Orange, CA)を用いて、これらのコロニーからDNAを採取して、採取されたDNAを化学的に拮抗するXL1Blue大腸菌(Agilent Technologies Inc. , Santa Clara, CA)内に形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、カルベニシリンを補充したLysogenyブロス寒天培地に播種して、個々のコロニーが目視できるようになるまで37℃で24時間インキュベートした。QIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN Inc, Valencia, CA)を用いて、これらのコロニーからプラスミドDNAを採取し、プラスミドDNAを配列決定して、発現プラスミドpAM2191が正しく作製されていることを確認した。
実施例2
この実施形態は、テルペンシンターゼ変異体の生成および特徴付けに有用となる酵母菌株を生成する方法を説明する。
酵母菌株Y002およびY003(それぞれCEN.PK2バックグランドMAT A またはMAT α;ura3−52;trp1−289;leu2−3,112;his3Δ1;MAL2−8C;SUC2;van Dijken et al. (2000) Enzyme Microb. Technol. 26:706−714)を、サッカロマイセス・セレビシエのMET3遺伝子のプロモータと交換することにより、菌株Y93(MAT A)およびY94(MAT α)を生成させた。この目的のために、クルイベロマイセス・ラクチスのTef1遺伝子のプロモータおよびターミネータによりフランクされたカナマイシン耐性マーカ(KanMX)と、ERG9コード配列と、ERG9プロモータのトランケート型セグメント(trune. PERG9)と、ERG9の上流および下流配列によりフランクされたMET3プロモータ(PMET3)と、を含む組み込み構築物i8(配列番号87)で、指数増殖期のY002およびY003細胞を形質転換した(図1A)。宿主細胞の形質転換物を0.5μg/mL Geneticin (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を含む培地上で選択し、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y93およびY94を得た。
それぞれ菌株Y93およびY94におけるADE1遺伝子のコード配列を、カンジダ・グラブラタのLEU2遺伝子のコード配列(CgLEU2)と交換することにより、菌株Y176(MAT A)およびY177(MAT α)を生成させた。この目的のために、プライマー61−67−CPK066−G(配列番号88)および 61−67−CPK067−G(配列番号89)を用いて、3.5kb CgLEU2ゲノム遺伝子座をカンジダ・グラブラタゲノムDNA(ATCC, Manassas, VA)からPCR増幅させて、PCR産物を指数増殖期のY93およびY94細胞に形質転換した。宿主細胞の形質転換物をCSM−L上で選択し、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y176およびY177を得た。
それぞれサッカロマイセス・セレビシエのGAL1またはGAL10遺伝子のガラクトース誘導性プロモータの調節制御下で、サッカロマイセス・セレビシエのERG13、ERG10、およびERG12遺伝子のコード配列、ならびにサッカロマイセス・セレビシエのHMG1遺伝子のトランケート型コード配列の追加のコピーを、菌株Y176に導入することにより、菌株Y188を生成させた。この目的のために、指数増殖期のY176細胞を、PmeI制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)で消化した発現プラスミドpAM491およびpAM495 2μgで形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、ウラシルおよびヒスチジンを欠くCSM(CSM−U−H)上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y188を得た。
それぞれサッカロマイセス・セレビシエのGAL1またはGAL10遺伝子のガラクトース誘導性プロモータの調節制御下で、サッカロマイセス・セレビシエのERG20、ERG8、およびERG19遺伝子のコード配列、ならびにサッカロマイセス・セレビシエのHMG1遺伝子のトランケート型コード配列の追加のコピーを、菌株Y177に導入することにより、菌株Y189を生成させた。この目的のために、指数増殖期のY188細胞を、PmeI制限エンドヌクレアーゼで消化した発現プラスミドpAM489およびpAM497 2μgで形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、トリプトファンおよびヒスチジンを欠くCSM(CSM−T−H)上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y189を得た。
それぞれサッカロマイセス・セレビシエのGAL1またはGAL10遺伝子のガラクトース誘導性プロモータの調節制御下で、菌株Y188とY189を交配させて、サッカロマイセス・セレビシエのIDI1遺伝子のコード配列、およびサッカロマイセス・セレビシエのHMG1遺伝子のトランケート型コード配列の追加のコピーを導入することにより、菌株Y238を生成させた。この目的のために、菌株Y188およびY189のおよそ1×107細胞を、YPD培地プレート上で、室温で6時間混合して、二倍体細胞をCSM−H−U−T上で選択し、指数増殖期の二倍体を、PmeI制限エンドヌクレアーゼで消化した発現プラスミドpAM493 2μgで形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、アデニンを欠くCSM(CSM−A)上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y238を得た。
菌株Y238を胞子形成させることにより、菌株Y210(MAT A)およびY211(MAT α)を生成させた。二倍体細胞を2%酢酸カリウムおよび0.02%ラフィノース液体培地中で胞子形成させて、Singer Instruments MSM300 series micromanipulator (Singer Instrument Co, LTD. Somerset, UK)を用いて単離した。胞子をCSM−A−H−U−T上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y210(MAT A)およびY211(MAT α)を得た。
指数増殖期のY211細胞をベクターpAM178で形質転換することにより、菌株Y221を生成させた。宿主細胞の形質転換物を、CSM−L上で選択した。
菌株Y221のGAL80遺伝子のコード配列を欠失させることにより、菌株Y290を生成させた。この目的のために、GAL80の上流および下流配列によりフランクされたクルイベロマイセス・ラクチスのTef1遺伝子のプロモータおよびターミネータによりフランクされたハイグロマイシンB耐性マーカ(hph)を含む組み込み構築物i32(配列番号90)で、指数増殖期のY221細胞を形質転換した(図1B)。宿主細胞の形質転換物を、ハイグロマイシンBを含む培地上で選択し、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y290を得た。
ロイシンが高濃度の培地中で継体培養して菌株Y290からpAM178を除去し、CSM−L上で増殖できないことを個々のコロニーで検査することにより、菌株318を生成させて、菌株Y318を得た。
β−ファルネセンシンターゼをコードする非相同性ヌクレオチド配列を、菌株Y318に導入することにより、菌株Y409を生成させた。この目的のために、指数増殖期のY318を発現プラスミドpAM404で形質転換させた。宿主細胞の形質転換物をCSM−L上で選択して、菌株Y409を得た。
菌株Y409のGALプロモータを構成的活性にすることにより、菌株Y419を生成させた。修飾されたERG9プロモータの上流および下流配列、ならびにコード配列によりフランクされた、ネイティブプロモータおよびGAL4ターミネータ(TGAL4)(図1C)の「オペレーティブ・コンスティチューティブ(operative constitutive)」バージョン(PGAL4oc; Griggs & Johnston (1991) PNAS 88(19):8597−8601)の調節制御下で、クルイベロマイセス・ラクチスのTef1遺伝子のプロモータおよびターミネータによりフランクされたストレプトマイセス・ノウルセイのノウルセオトリシン耐性マーカ(NatR)と、サッカロマイセス・セレビシエのGAL4遺伝子のコード配列と、を含む組み込み構築物i33(配列番号91)で、指数増殖期のY409を形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、ノウルセオトリシンを含む培地上で選択し、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y419を得た。
サッカロマイセス・セレビシエのGAL1遺伝子のプロモータの制御下で、菌株Y419の修飾されたGAL80遺伝子座に、サッカロマイセス・セレビシエのERG12遺伝子のコード領域の追加のコピーを導入することにより、菌株Y677を生成させた。この目的のために、クルイベロマイセス・ラクチスのTef1遺伝子のプロモータおよびターミネータによりフランクされたストレプトマイセス・ノウルセイのカナマイシン耐性マーカ(KanR)と、GAL1プロモータ(PGAL1)およびERG12ターミネータ(TERG12)によりフランクされたサッカロマイセス・セレビシエのERG12遺伝子のコード配列およびターミネータ配列と、を含む組み込み構築物i37(配列番号92)で、指数増殖期のY677細胞を形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、カナマイシンを含む培地上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y677を得た。
菌株Y1551を、化学的突然変異により菌株Y677から生成させた。突然変異した菌株を、β−ファルネセンの産生増加によりスクリーニングして、菌株Y1551を得た。
菌株Y1778を、化学的突然変異により菌株Y1551から生成させた。突然変異した菌株を、β−ファルネセンの産生増加によりスクリーニングして、菌株Y1778を得た。
菌株Y1778のHXT3コード配列を、一方がサッカロマイセス・セレビシエ由来であり、他方がC.ブチリクス由来である、アセトアセチル−CoAチオラーゼコード配列の2コピーと、B.ジュンセアのHMGS遺伝子のコード配列の1コピーと交換することにより、菌株Y1816を生成させた。クルイベロマイセス・ラクチスのTef1遺伝子のプロモータおよびターミネータによりフランクされたハイグロマイシンB耐性マーカ(hyg)と、トランケート型TDH3プロモータ(tPTDH3)およびAHP1ターミネータ(TAHP1)によりフランクされたサッカロマイセス・セレビシエのERG10遺伝子のコード配列と、YPD1プロモータ(PYPD1)およびCCW12ターミネータ(TCCW12)によりフランクされたC.ブチリクス(チオラーゼ)のアセトアセチル−CoAチオラーゼ遺伝子のコード配列と、TUB2プロモータ(PTUB2)により進められ、サッカロマイセス・セレビシエのHXT3遺伝子の上流および下流配列によりフランクされたB.ジュンセアのHMGS遺伝子のコード配列(HMGS)と、を含む組み込み構築物i301(配列番号93)で、指数増殖期のY1778細胞を形質転換した(図1E)。宿主細胞の形質転換物を、ハイグロマイシンBを含む培地上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y1816を得た。
菌株Y2055を、化学的突然変異により菌株Y1778から生成させた。突然変異した菌株を、β−ファルネセンの産生増加によりスクリーニングして、菌株Y2055を得た。
菌株Y2295を、化学的突然変異により菌株Y2055から生成させた。突然変異した菌株を、β−ファルネセンの産生増加によりスクリーニングして、菌株Y2295を得た。
菌株Y2295の交配型をMAT AからMAT αに入れ替えることにより、菌株Y3111を生成させた。この目的のために、MAT α交配遺伝子座と、ハイグロマイシンB耐性マーカ(hygA)とを含む組み込み構築物i476(配列番号94)で、指数増殖期のY2295細胞を形質転換した(図1F)。宿主細胞の形質転換物を、ハイグロマイシンBを含む培地上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y3111を得た。
菌株Y2168を、化学的突然変異により菌株Y1816から生成させた。突然変異した菌株を、β−ファルネセンの産生増加によりスクリーニングして、菌株Y2168を得た。
菌株Y2446を、化学的突然変異により菌株Y2168から生成させた。突然変異した菌株を、β−ファルネセンの産生増加によりスクリーニングして、菌株Y2446を得た。
菌株Y2446のネイティブURA3遺伝子座に、サッカロマイセス・セレビシエのGAL80遺伝子のコード配列、プロモータ、およびターミネータを挿入することにより、菌株Y3118を生成させた。この目的のために、URA3配列を重複することにより(本来のURA3配列の相同組換えおよび回復によりGAL80遺伝子のループアウトの切除が可能になる)フランクされたサッカロマイセス・セレビシエのGAL80遺伝子のプロモータ、ターミネータ、およびコード配列を含む組み込み構築物i477(配列番号95)で、指数増殖期のY2446細胞を形質転換した(図1G)。宿主細胞の形質転換物を、5−FOAを含む培地上で選択して、菌株3118を得た。
発現プラスミドpAM404を除去することにより、菌株Y3118から菌株Y3125を生成させた。この目的のために、菌株Y3118を最初に、40mg/Lウラシルを含むYPD+0.5%ロイシン培地(YPD+L+U)3mL中でインキュベートした。細胞を、24時間ごとに最大5日間、新鮮なYPD+L+Uで100倍に希釈して発現プラスミドpAM404を除去し、その後、YPD上に播種して、30℃で最大5日間インキュベートした。小さなコロニーをYPDおよびCSM−Lの両方でレプリカプレートして、YPDで発育することができたがCSM−Lで発育できなかったコロニーを同定して、菌株Y3125を得た。
表11に示した菌株は、指数増殖期のY3125細胞を、示されたコード配列を含む示された発現ベクターで形質転換して、宿主細胞の形質転換物をCSM−L上で選択することにより、生成させた。
菌株Y211を発現プラスミドpAM426で形質転換することにより、菌株Y227を生成させた。宿主細胞の形質転換物を、CSM−L上で選択した。
菌株Y227から発現プラスミドpAM426を除去することにより、菌株Y3198を生成させた。この目的のために、Y277をYPD+L中で4日間増殖させた。24時間ごとに、新鮮なYPD+L中に培養物をOD600が0.5になるように接種した。4日後に、細胞を系列希釈して、YPD固形寒天に播種し、プレートを30℃で4日間インキュベートした。小さなコロニーをYPDおよびCSM−Lの両方でレプリカプレートして、YPDで発育することができたがCSM−Lで発育できなかったコロニーを同定して、菌株Y3198を得た。
菌株Y3111とY3118を交配させることにより、菌株Y3215を生成させた。およそ1×107細胞のY3111およびY3118を、YPD培地プレート上で室温で6時間混合することで交配が可能になり、その後、YPD寒天プレート上に播種して、単一コロニーを単離した。hphAで標識されたMAT α遺伝子座と野生型MAT A遺伝子座の両方の存在下で、コロニーPCRでスクリーニングすることにより、二倍体を同定した。
菌株3215を胞子形成させて、GAL80コード配列をループアウトさせることにより、菌株Y3000を生成させた。2%酢酸カリウムおよび0.02%ラフィノース液体培地中で、二倍体細胞を胞子形成させた。不揃いの胞子を単離して、YPD寒天に播種し、3日間発育させ、その後、CSM−Uにレプリカプレートして、GAL80を欠く(即ち、機能的URA3遺伝子を有する)細胞のみを増殖させた。その後、胞子をβ−ファルネセン産生について検査して、最良の産生体を同定し、診断PCRにより組み込み構築物i301の存在を確認して、菌株Y3000を得た。
菌株Y3000からURA3マーカを除去することにより、菌株Y3284を生成させた。この目的のために、サッカロマイセス・セレビシエのURA3遺伝子の上流および下流配列によりフランクされた、サッカロマイセス・セレビシエのGAL1またはGAL10遺伝子のガラクトース誘導性プロモータの制御下で、サルモネラのhisDコード配列と、サッカロマイセス・セレビシエのERG13遺伝子のコード配列およびHMG1遺伝子のトランケート型コード配列と、を含む組み込み構築物i94(配列番号96)で、指数増殖期のY3000を形質転換した(図1H)。宿主細胞を、5−FOAを含む培地上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y3284を得た。
菌株Y3284のNDT80コード配列を、サッカロマイセス・セレビシエのアセチル−CoAシンテターゼ遺伝子のコード配列およびZ.モビリスのPDC遺伝子のコード配列の追加のコピーと交換することにより、菌株Y3385を生成させた。この目的のために、URA3マーカと、HXT3プロモータ(PHXT3)およびPGK1ターミネータ(TPGK1)によりフランクされたサッカロマイセス・セレビシエのACS2遺伝子のコード配列(ACS2)と、GAL7プロモータ(PGAL7)およびTFH3ターミネータ(TTDH3)によりフランクされ、上流および下流NDT80配列によりフランクされたZ.モビリスのPDC遺伝子のコード配列(zmPDC)と、を含む組み込み構築物i467(配列番号97)で、指数増殖期のY3385細胞を形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、CSM−U上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y3385を得た。
菌株Y3547を、化学的突然変異により菌株Y3385から生成させた。突然変異した菌株を、β−ファルネセンの産生増加によりスクリーニングして、菌株Y3547を得た。
菌株Y3639を、化学的突然変異により菌株Y3547から生成させた。突然変異した菌株を、β−ファルネセンの産生増加によりスクリーニングして、菌株Y3639を得た。
菌株Y3639のNDT80遺伝子座のURA3マーカを、サッカロマイセス・セレビシエのGAL80遺伝子のコード配列、プロモータ、およびターミネータの組み込み物で破壊することにより、菌株Y3902を生成させた。この例において、GAL80s−2と称する突然変異対立遺伝子を用いた(Nucleic Acids Research (1984) 12(24):9287−9298)。URA3配列を重複することにより(本来のURA3配列の相同組換えおよび回復によりGAL80遺伝子のループアウトの切除が可能になる)フランクされたサッカロマイセス・セレビシエのGAL80遺伝子のプロモータ、ターミネータ、およびコード配列と、HXT3プロモータ(PHXT3)およびPGK1ターミネータ(TPGK1)によりフランクされたサッカロマイセス・セレビシエのACS2遺伝子のコード配列(ACS2)と、GAL7プロモータ(PGAL7)およびTFH3ターミネータ(TTDH3)によりフランクされ、上流および下流NDT80配列によりフランクされたZ.モビリスのPDC遺伝子のコード配列(zmPDC)と、を含む組み込み構築物i601(配列番号98)で、指数増殖期のY3639細胞を形質転換した(図1J)。宿主細胞の形質転換物を、5−FOAを含む培地上で選択して、菌株3902を得た。
ロイシンが高濃度の培地中で継体培養して発現プラスミドpAM404を除去し、ロイシンを欠く培地上での増殖できないことを個々のコロニーで検査することにより、菌株Y4027を菌株Y3902から生成させた。
菌株Y4027のADH5コード配列を、FS_D_3.5コード配列およびFS_C_7コード配列と交換することにより、菌株Y4909を生成させた(表17参照)。この目的のために、GAL1またはGAL10プロモータ(PGAL1またはPGAL10)によりフランクされたLEU2コード配列(LEU2)およびファルネセンシンターゼ変異体コード配列と、上流および下流ADH5配列によりフランクされたそれぞれCYC1またはADH1ターミネータ(TCYC1またはTADH1)と、を含む組み込み構築物i2125(配列番号99)で、指数増殖期のY4909を形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、CSM−L上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y4909を得た。
菌株Y4909からサッカロマイセス・セレビシエのコード配列、プロモータ、およびターミネータを除去することにより、菌株Y4959を生成させた。この目的のために、Y4909細胞をCSM−U上に播種し、自然なGAL80「ループアウト」組換え事象について選択して、菌株Y4959を得た。
菌株Y4959のCAN1遺伝子座にTDS_Fs_Scコード配列を挿入することにより、菌株Y5444を生成させた。この目的のために、サッカロマイセス・セレビシエのGAL1プロモータ(PGAL1)によりフランクされたTDS_Fs_Scコード配列と、サッカロマイセス・セレビシエのCYC1ターミネータ(TCYC1)と、を含む組み込み構築物i2608(配列番号100)で、指数増殖期のY4959細胞を形質転換した(図1L)。宿主細胞の形質転換物を、カナバリンを含むYNB培地上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y5444を得た。
菌株Y4027のADH5遺伝子座に、FS_A_5.3コード配列、FS_B_5.3コード配列、FS_C_7コード配列およびFS_D_3.5コード配列を挿入することにより、菌株Y4910を生成させた(表17参照)。この目的のために、GAL1またはGAL10プロモータ(PGAL1またはPGAL10)によりフランクされたLEU2コード配列(LEU2)およびファルネセンシンターゼ変異体コード配列と、上流および下流ADH5配列によりフランクされたADH1またはCYC1ターミネータ(TADH1またはTCYC1)と、を含み、組み込み構築物i2127(配列番号101)の2つのオーバーラッピングセグメントでの同時形質転換と、それによる2つのオーバーラッピングプラスミドインサート間の刺激相同組換えにより生成された組み込み構築物i2127で、指数増殖期のY4909を形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、CSM−L上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y4910を得た。
菌株Y4910から、サッカロマイセス・セレビシエのGAL80遺伝子のコード配列、プロモータ、およびターミネータを除去することにより、菌株Y4960を生成させた。この目的のために、Y4909細胞をCSM−U上に播種し、自然なGAL80「ループアウト」組換え事象について選択して、菌株Y4960を得た。
菌株Y4960のCAN1遺伝子座にTDS_Fs_Scコード配列を挿入することにより、菌株Y5445を生成させた。この目的のために、サッカロマイセス・セレビシエのGAL1プロモータ(PGAL1)と、サッカロマイセス・セレビシエのCYC1ターミネータ(TCYC1)と、によりフランクされたTDS_Fs_Scコード配列を含む組み込み構築物i2608(配列番号100)で、指数増殖期のY4959細胞を形質転換した(図1L)。宿主細胞の形質転換物を、カナバリンを含むYNB培地上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y5445を得た。
菌株Y4960からURA3マーカを除去することにより、菌株Y5064を生成させた。この目的のために、HXT3プロモータ(PHXT3)およびPGK1ターミネータ(TPGK1)によりフランクされたサッカロマイセス・セレビシエのACS2遺伝子(ACS2)と、GAL7プロモータ(PGAL7)およびTDH3ターミネータ(TTDH3)によりフランクされ、上流および下流のNDT80配列によりフランクされたZ.モビリスのPDC遺伝子のコード配列(zmPDC)と、を含む組み込み構築物i569(配列番号102)で、指数増殖期のY4960細胞を形質転換した(図1N)。宿主細胞の形質転換物を、5−FOAを含む培地上で選択して、菌株Y5064を得た。
菌株Y5064のBIO4遺伝子座に、FS_A_5.3コード配列およびFS_B_5.3コード配列を挿入することにより、菌株Y5065を生成させた(表17参照)。この目的のために、GAL1またはGAL10プロモータ(PGAL1またはPGAL10)によりフランクされたURA3コード配列(URA3)およびファルネセンシンターゼ変異体コード配列と、上流および下流BIO4配列によりフランクされたADH1またはCYC1ターミネータ(TADH1またはTCYC1)と、を含む組み込み構築物i2124で、指数増殖期のY5064を形質転換した(図10)。宿主細胞の形質転換物を、CSM−U上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y5065を得た。
菌株Y5064のBIO4遺伝子座に、FS_A_5.3コード配列、FS_B_5.3コード配列、FS_C_7コード配列およびFS_D_3.5コード配列を挿入することにより、菌株Y5066を生成させた(表17参照)。この目的のために、GAL1またはGAL10プロモータ(PGAL1またはPGAL10)によりフランクされたLEU2コード配列(LEU2)およびファルネセンシンターゼ変異体コード配列と、上流および下流ADH5配列によりフランクされたADH1またはCYC1ターミネータ(TADH1またはTCYC1)と、を含み、組み込み構築物i2127(配列番号101)の2つのオーバーラッピングセグメントでの同時形質転換と、それによる2つのオーバーラッピングプラスミドインサート間の刺激相同組換えにより生成された組み込み構築物i2127で、指数増殖期のY5064を形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、CSM−L上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y5066を得た。
菌株Y5065のCAN1遺伝子座にTDS_Fs_Scコード配列を挿入することにより、菌株Y5446を生成させた。この目的のために、サッカロマイセス・セレビシエのGAL1プロモータ(PGAL1)と、サッカロマイセス・セレビシエのCYC1ターミネータ(TCYC1)と、によりフランクされたTDS_Fs_Scコード配列を含む組み込み構築物i2608(配列番号100)で、指数増殖期のY4959細胞を形質転換した(図1L)。宿主細胞の形質転換物を、カナバリンを含み、アルギニンを欠くYNB培地上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y5446を得た。
菌株Y5066のCAN1遺伝子座にTDS_Fs_Scコード配列を挿入することにより、菌株Y5447を生成させた。この目的のために、サッカロマイセス・セレビシエのGAL1プロモータ(PGAL1)と、サッカロマイセス・セレビシエのCYC1ターミネータ(TCYC1)と、によりフランクされたTDS_Fs_Scコード配列を含む組み込み構築物i2608(配列番号100)で、指数増殖期のY4959細胞を形質転換した(図1L)。宿主細胞の形質転換物を、カナバリンを含み、アルギニンを欠くYNB培地上で選択して、選択されたクローンを診断PCRにより確認し、菌株Y5447を得た。
菌株221に、アモルファデインシンターゼ(ADS)、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ(AMO、CYP71AV1)、およびNADP−チトクロムP450オキシドリダクターゼ(CPR)をコードする発現プラスミドを導入することにより、菌株Y224を生成させた。この目的のために、アルテミシア・アンヌアのADS遺伝子のコード配列(ADS)と、アルテミシア・アンヌアのAMO遺伝子のコード配列と、アルテミシア・アンヌアのCPR遺伝子のコード配列と(全てが、サッカロマイセス・セレビシエ内での発現のためにコドン最適化されており、サッカロマイセス・セレビシエのGAL1またはGAL10のプロモータの制御下にある)、を含む発現プラスミドpAM322で、指数増殖期のY211細胞を形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、CSM−L上で選択し、菌株Y224を得た。
菌株Y224のGAL1およびGAL10遺伝子の分岐したプロモータとGAL1コード配列とを、ハイグロマイシンB耐性マーカ(hphA)と交換することにより、菌株Y284を生成させた。この目的のために、組み込み構築物i65(配列番号104;図1P)形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、ハイグロマイシンBへの耐性に基づいて選択し、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y284を得た。
サッカロマイセス・セレビシエのCTR3遺伝子のプロモータの調節制御下に菌株Y284のERG遺伝子を置くことにより、菌株Y301を生成させた。上流によりフランクされたD−セリンデアミナーゼのコード配列(dsdA)およびCTR3プロモータ(PCTR3)と、ERG9遺伝子のコード配列と、を含む、組み込み構築物i10(配列番号105)で、指数増殖期のY284細胞を形質転換した(図1Q)。宿主細胞の形質転換物を、D−セリンデアミナーゼで増殖する能力に基づいて選択し、選択されたクローンを診断PCRにより確認して、菌株Y301を得た。
発現プラスミドpAM322を除去することにより、菌株Y539を生成させた。この目的のために、菌株Y301を、0.5%(w/v)ロイシンを含有する高濃度の酵母ペプトンデキストロース(YPD)中で4日間増殖させた。24時間ごとに、0.5%(w/v)ロイシンを含有する新鮮なYPD中に培養物をOD600が0.5になるように接種した。4日後に、細胞を系列希釈して、YPD固形寒天に播種して、プレートを30℃で4日間インキュベートした。2つの異なるコロニーサイズが観察された。小さなコロニー(pAM322の減損を示す)を、ロイシンを欠く最少培地でレプリカプレートした。YPD固形寒天で増殖することができたがロイシンを欠く培地で増殖できなかったクローンを、菌株Y539として選択した。
実施例3
この実施例は、大腸菌におけるFPP枯渇に基づく選択を利用して、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼについてスクリーニングすることの実行可能性を実証する。
DH5α化学的または電気的拮抗大腸菌細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、発現プラスミドpAM1668(陰性対照)、pAM1670、pAM2096、pAM2097、pAM2098、pAM2101、およびpAM2104からなる群より選択される発現プラスミド5ngで形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、カルベニシリンを含む寒天プレートに播種し、プレートを30℃で2〜3日間インキュベートした。
図2に示されるように、発現プラスミドpAM2097またはpAM2096で形質転換された細胞は、空ベクター(pAM1668)で形質転換された細胞と類似サイズのコロニーを産生した。しかし、発現プラスミドpAM1670、pAM2098で形質転換された細胞、および発現プラスミドpAM2104またはpAM2101で形質転換された細胞(データは示さず)は、対照により産生されたものよりも小さなコロニーを産生した。より小さなコロニーサイズは、活性セスキテルペンシンターゼの発現により介された、宿主細胞におけるFPPからファルネセンへの変換によりFPPの枯渇が誘発されたことが原因の可能性がある。これらのセスキテルペンシンターゼのインビボ活性は、振とうフラスコにおいて72時間目の宿主細胞のGC分析により確認し(図4)、FPP枯渇に基づく大腸菌での選択を利用して、セスキテルペンシンターゼをインビボ酵素活性についてスクリーニングし得ることが示された。
実施例4
この実施例は、大腸菌におけるFPP毒性に基づく選択を利用して、インビボ性能が改善されたセスキテルペンシンターゼについてスクリーニングすることの実行可能性を実証する。
DH5α化学的または電気的拮抗大腸菌細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、発現プラスミドpAM765(宿主細胞内でPFFの産生を全体として増加させるMEV経路酵素をコードする)5ngと、発現プラスミドpAM1668(陰性対照)、pAM1670、pAM2096、pAM2097、pAM2098、pAM2101、およびpAM2104からなる群より選択される発現プラスミド 5ngと、で同時形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、クロラムフェニコールおよびカルベニシリンを含む寒天プレートに播種し、プレートを30℃で2〜5日間インキュベートした。
図3および表12に示されるように、空ベクター(pAM1668)で形質転換された細胞は、コロニーを産生せず、それは宿主細胞内の毒性FPPの蓄積により誘発された細胞死が原因である可能性がある(Withers at al. (2007) Appl. Environ. Microbiol. 73:6277−6283)。同様に、発現プラスミドpAM2158またはpAM2117で形質転換された細胞は、コロニーを形成せず、それはこれらのプラスミドのファルネセンシンターゼコード配列が大腸菌宿主細胞における効率的発現のためにコドン最適化されなかった、という事実を原因とする可能性がある。発現プラスミドpAM2096で形質転換された細胞も、コロニーを形成せず、シトラス・ユノスのファルネセンシンターゼが大腸菌宿主細胞において十分な活性を有さないことが示唆される。他の細胞は全て、1〜3日以内の培養でコロニーを産生し、それはおそらく発現プラスミドpAM1670、pAM2157、pAM2098、pAM2104、pAM2097、およびpAM2101によりコードされた活性セスキテルペンシンターゼによる、FPPから低毒性のセスキテルペンへの変換が原因であろう。これらのセスキテルペンシンターゼのうちの複数のインビボ活性を、振とうフラスコにおいて72時間目の宿主細胞のGC分析により確認し(図4)、FPP毒性に基づく大腸菌での選択を利用して、セスキテルペンシンターゼをインビボ酵素活性についてスクリーニングし得ることが示された。
実施例5
この実施例は、酵母におけるFPP毒性に基づく選択を利用して、インビボ性能が改善されたセスキテルペンシンターゼについてスクリーニングすることの実行可能性を実証する。
菌株Y3198を、それぞれ構築物Aまたは構築物B 500ngで形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、5mLのYPD培地中、250rpmで浸透しながら6時間インキュベートし、5mLの脱イオン水で2回洗浄した。唯一の炭素供給源として2%ガラクトースを含むCSM−L寒天プレートに、各洗浄済み培養物の半量を播種した(ガラクトースでの増殖が、菌株Y3198に遺伝子操作されたMEV経路酵素のコード配列の発現を誘導して、細胞内のFPPを増加させることに留意されたい)。唯一の炭素供給源として2%ガラクトースを含むCSM−L寒天プレートに、各洗浄済み培養物の残り半量を播種した。個々のコロニーがおよそ1mm径になるまで、プレートを30℃で3日間インキュベートした。
図5に示すように、構築物Aで形質転換された細胞のみが、唯一の炭素供給源としてガラクトースを含むCSM−L培地で増殖が可能であり、酵母におけるFPP毒性に基づく選択を利用して、セスキテルペンシンターゼをインビボ酵素活性についてスクリーニングされることが実証された。
実施例6
この実施例は、ナイルレッド蛍光分析を利用して、インビボ性能が改善されたセスキテルペンシンターゼについてスクリーニングすることの実行可能性を実証する。
相対的ファルネセン力価を決定するために、構築物Aで形質転換された菌株Y3198の48のコロニーと、発現プラスミドpAM404で形質転換された菌株Y3198の48のコロニーとを、ウェルあたり2%ガラクトース含有バードシード培地(BSM)360μLを含有する96ウェルプレートの別個のウェルに選び取った(予備培養)。999rpmの撹拌の下、30℃で2日間インキュベートした後、各ウェルの16μLを、2%ガラクトース含有の新鮮なBSM 360μLを含有する新しい96ウェルプレートのウェルに接種した(産生培養)。999rpmでの撹拌下、30℃で更に2日間インキュベートした後、ナイルレッド蛍光分析によるファルネセン力価決定のために、試料を採取した。
ナイルレッド蛍光分析では、各培養物98μLを96ウェル黒色ポリスチレン平底アッセイプレートに移し替えて、DMSO中に100μg/mLで溶解されたナイルレッド(Invitrogen, Carlsbad, CA) 2μLを、各ウェルに添加した。直ちに、蛍光レベルを、500nmでの励起および550nmでの発光により測定した。
図6に示されるように、構築物Aで形質転換された菌株Y3198中のFS_Aa_Scコード配列の単一染色体に組込まれたコピーは、高コピーの発現プラスミドpAM404で形質転換された菌株Y3198で得られたものの39%のナイルレッド蛍光シグナルを生成させた。2つの菌株の間にあるファルネセン力価におよそ3倍の差は、GC分析により確認され(データは示さず)、この系でのナイルレッド蛍光レベルに十分な差(Δ)が存在し、インビボ性能が改善されたテルペンシンターゼについて適切なスクリーニングであることが実証された。
実施例7
この実施例は、酵母におけるセスキテルペンシンターゼの拮抗を利用して、インビボ酵素活性レベルによるセスキテルペンシンターゼを順位付けることの実行可能性を実証する。
酵母菌株Y3353およびY3354それぞれについて、それぞれ発現プラスミドpAM1812またはpAM1813を有する菌株Y3125の元となる形質転換の単一コロニー8個を、ウェルあたり2%スクロース含有バードシード培地(BSM)360μLを含有する96ウェルプレートの別個のウェルでインキュベートした(予備培養)。999rpmの撹拌の下、30℃で2日間インキュベートした後、各ウェルの16μLを、4%スクロース含有の新鮮なBSM 360μLを含有する新しい96ウェルプレートのウェルに接種した(産生培養)。999rpmでの撹拌下、30℃で更に2日間インキュベートした後、試料を採取して、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によりテルペン産生について分析した。各菌株について、単一コロニーをCSM−L−M−U寒天プレート上で再度ストリークして、各再ストリークから得られた8個の単一コロニーを、記載のように発育させて、GC分析によりテルペン産生について分析した。
GC分析については、試料をメタノール/ヘプタン(1:1v/v)で抽出して、混合物を遠心分離し、細胞材料を除去した。メタノール/ヘプタン抽出物の一部をヘプタンで希釈し、その後、パルススプリット注入を利用してメチルシリコーン固定相に注入した。ファルネセンおよびトリコジエンを、GCおよび水素炎イオン化検出法(FID)を利用して、沸点により分離した。トランス−β−カリオフィレンを滞留時間マーカとして使用して、特定のGCオーブンプリファイルの間の有効な注入および溶出をモニタリングした。ファルネセンおよびトリコジエンの力価を使用して、ファルネセン/トリコジエン比を計算した。
表13に示されるように、独立した元の形質転換物の間のテルペン力価は、ウェルごとにかなり変動したため、変動係数(CV)が最大29%になった。CVは、8個の反復測定では低下した。観察されたCVから、ウェル間およびクローン間の変動により、セスキテルペンシンを産生するセスキテルペンシンターゼの活性に関して、セスキテルペンの力価から直接結論を引き出すことができないことが示される。しかし、同じく表13に示されるように、ファルネセン/トリコジエン比が、むしろ試料全体で一定しており、5.7%以下のCVを生じた。つまり比較セスキテルペンシンターゼと同じプラスミドから試験セスキテルペンシンターゼを同時発現することにより、ウェル間およびクローン間の変動が大きく減少するため、試験セスキテルペンシンターゼ(例えば、ファルネセンシンターゼ)のインビボ触媒効率を、比較セスキテルペンシンターゼ(例えば、TDS)のそれに対して指標とすることができる。
酵母におけるセスキテルペンシンターゼ活性の順位付けツールとしてセスキテルペンシンターゼの拮抗を更に検証するために、酵母菌株Y3353、Y3394、およびY3395を、記載のように評価した。表14に示されるように、絶対ファルネセン滴滴濃度は、同じく有意な変動を示したが、ファルネセン/トリコジエン比では低いCVが観察された。観察された比から判断すると、検査されたファルネセンシンターゼは、以下のとおり順位付けすることができる:FS_Ad_Scコード配列(Y3395)>FS_Aa_Scコード配列(Y3353)から発現されたアルテミシア・アンヌアのファルネセンシンターゼ>FS_S2D_Ecコード配列(Y3394)から発現されたS2D突然変異アルテミシア・アンヌアのファルネセンシンターゼ。この順位付けは、FS_As_Sc、FS_S2D_Ec、またはFS_Ad_Scコード配列(図7)の単一コピーを持つ菌株を使用したGC分析により確認し、こうして酵素におけるインビボ酵素活性レベルによりセスキテルペンシンターゼを順位付けする手段としてセスキテルペンシンターゼの拮抗の利用を検証した。
酵母におけるセスキテルペンシンターゼ活性についての順位付けツールとしてセスキテルペンシンターゼの拮抗を更に検証するために、酵母菌株Y5444、Y5445、Y5446、およびY5447を、以下の例外を含みながら記載のように評価した:各菌株について、8個のコロニーの代わりに4個のコロニーを分析し、培養物を30℃ではなく34℃でインキュベートし、予備培養は2日ではなく3日継続し、産生培養物は予備培養物の10倍希釈物であった。表15および図8に示されるように、組み入れられたファルネセンシンターゼコード配列の数と、ファルネセンとトリコジエンとの比の間に、直線関係が観察され、酵母におけるインビボ酵素活性レベルによりセスキテルペンシンターゼを順位付ける手段としてのセスキテルペンシンターゼの拮抗の有用性が確認された。
実施例8
この実施例は、セスキテルペンシンターゼ変異体のライブラリを作成する方法を説明する。
複数のファルネセンシンターゼ変異体ライブラリを、FS_S2D_Ecコード配列を鋳型として用いて作成した。各ライブラリについて、pAM1670 250から500ngを、GeneMorph(登録商標)II Random Mutagenesis Kit (Agilent Technologies, Inc., Santa Clara, CA)を用い、製造業者が示唆したプロトコルに従い、プライマーLX−268−139−S2D−F (配列番号106)およびLX−268−139−S2D−R (配列番号107)を用い、25回の増幅サイクルで、エラープローンPCRに供した。PCR産物をゲル精製して、FastDigest(登録商標)NdeI and BamHI restriction endonucleases (Fermentas Inc., Burlington, Ontario)で逐次消化した。ベクターpAM1668を消化して、同じ2つの制限エンドヌクレアーゼを用いて完全に消化して、直線化ベクターDNAフラグメントをウシ腸アルカリホスファターゼ(CIP)で処理して、5’リン酸基を除去すれば、再環状化が可能になった。精製されたPCR産物および直線化pAM1688ベクターを、T4 DNAリガーゼを用いて3:1のインサート対ベクター比でライゲートして、ライゲーション反応混合物 2μLを、製造業者が示唆するプロトコルに従って、XL1−ブルー電気的拮抗大腸菌細胞(Agilent Technologies Inc., Santa Clara, CA)に形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、カルベニシリンを含む複数のLB寒天プレート(100mm径)上で選択した。ランダム突然変異ライブラリの性能を評価するために、48個または96個の単一コロニーを、QIAprep 96 Turbo Miniprep Kit (Qiagen, Valencia, CA)を用いて各培養物から単離して、プラスミドDNAをFastDigest(登録商標)NdeI and BamHI制限エンドヌクレアーゼ(Fermentas Inc., Burlington, Ontario)を用いて消化して、プラスミドのおよそ95%がインサートを含むことを決定した。同じくプラスミドを配列決定して突然変異の頻度を決定し、FSコード配列ごとのヌクレオチド変動の推定平均が2〜6であることが見出された。残りのコロニーを寒天プレートから洗い流して、プラスミドDNAをQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen, Valencia, CA)を用いて単離した。
同じく、複数のファルネセンシンターゼ変異体ライブラリを、FS_Aa_Scコード配列を鋳型として用いて作成した。構築物Cは、FS_Aa_ScPCR産物が、最終的な組立ての前に、Mutazyme II(登録商標)Kit(Agilent Technologies, Inc., Santa Clara, CA)およびプライマーAM−288−90−CPK1618 (配列番号83)およびAM−288−90−CPK1619 (配列番号84)を用い、製造業者が示唆するプロトコルに従って、エラープローンPCRにより突然変異したこと以外は、構築物Aと本質的に同一であった。菌株Y3198を構築物C 500ngで形質転換して、宿主細胞の形質転換物を、5mLのYPD培地中で250rpmで振とうしながら、6時間回復させた後、それらを2%ガラクトースを含むCSM−L上に播種した。
実施例9
この実施例は、大腸菌におけるFPP毒性に基づく増殖選択によりセスキテルペンシンターゼ変異体のライブラリをスクリーニングする方法を説明する。
ElectroMAX DH5α−E大腸菌細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、発現プラスミドpAM765(MEV経路酵素をコードする)5ngおよび実施例8のFS_S2D_Ecに基づくファルネセンシンターゼ変異体ライブラリプラスミド 5ngでトランスフェクトした。40を超える同時形質転換実験を実施して、約2×105宿主細胞の形質転換物を生成させた。宿主細胞の形質転換物を、カルベニシリンおよびクロロフェニコールを含むLB寒天プレート(100mm径)上に播種して、30℃で2日間インキュベートした後、およそ400この大きなコロニーおよび類似の数の小さなコロニーを寒天プレート上で目視することができた。ElectroMAX DH5α−E Escherichia coli cells(Invitrogen, Carlsbad, CA)を発現プラスミドpAM765 5ngのみで形質転換して、カルベニシリンおよびクロロフェニコールを含むLB寒天プレート(100mm径)上に播種した場合には、コロニーは全く観察されなかった。これらのコロニー全てが親ファルネセンシンターゼ以上の活性を有するファルネセンシンターゼ変異体を含むと仮定すると、的中率はおよそ1%であると推定された。
実施例10
この実施例は、ナイルレッド蛍光分析を利用して、セスキテルペンシンターゼ変異体のライブラリをスクリーニングする方法を説明する。
実施例9のFPPの毒性に基づく増殖選択スクリーニングにおいて得られた大きなコロニーを、ウェルあたり5μLの脱イオン水を含む96ウェルプレートに個別に選び取った。精製した溶解物を、XL1−Blue 化学的拮抗大腸菌細胞(AGILENT TECHNOLOGIES INC., SANTA CLARA, CA)内に形質転換し、宿主細胞の形質転換物を、カルベニシリンを含むLB寒天プレート上に播種した。クロラムフェニコールが選択培地から省かれているため、発現プラスミドpAM765が、細胞から失われていることに、留意されたい。個々のコロニーを選び取って、カルベニシリンを含むLB培地中で発育させ、QIAprep 96 Turbo Miniprep Kit (Qiagen, Valencia, CA)を用いてプラスミドDNAを単離した。大きなコロニーが選択プレートから単離された後、小さなコロニーをプレートから洗い流して、プラスミドを類似の方式で混合物から単離した。
XL1−Blue化学的拮抗大腸菌細胞 (Agilent Technologies Inc., Santa Clara, CA)を、発現プラスミドpAM97(MEV経路酵素をコードする)5ngおよび単離されたプラスミド(大きなコロニーから得られる)またはプラスミド混合物(小さなコロニーから得られる)5ngでトランスフェクトした。宿主細胞の形質転換物を、カルベニシリンおよびクロロフェニコールを含むLB寒天プレート上に播種して、37℃で24時間インキュベートした。個々のコロニーを、カルベニシリンおよびクロラムフェニコールを含むM9−へペス培地を含有する96ウェルプレートに接種して、培養物を30℃で24時間インキュベートした(予備培養)。その後、各培養物50μLを用いて、第二の培養物を初期OD0.05となるよう接種した。MEV経路酵素およびファルネセンシンターゼの発現を誘導するために、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を、各培養物に最終濃度1mMとなるよう添加した。培養物を少なくとも20時間インキュベートした後(産生培養)、ファルネセン力価をナイルレッド蛍光分析で決定した。pAM97またはpAM1419で同時形質転換された大腸菌菌株を、陰性対照として用いて、pAM97またはpAM1421で同時形質転換された大腸菌菌株を、陽性対照として用いた。ナイルレッド蛍光分析を検証するために、ファルネセンの力価をGC分析によっても決定した。
図9に示すように、測定されたナイルレッド蛍光シグナルは、GC分析により決定されたファルネセン力価と直接相関しており、ナイルレッド蛍光分析がファルネセン力価を測定する手段として更に検証された。
ナイルレッド蛍光分析およびGC分析により決定された、最大ファルネセン力価を与えた大きなコロニーから得られたプラスミドで形質転換された細胞から得られた最良の70の菌株を、新しい96ウェルプレートにレプリカプレートして、産生レベルを記載のように再測定した。図10に示すように、これらの菌株のおよそ50は、親FS_S2D_Ecコード配列を含む対照菌株よりも高いファルネセン力価を生じ、最良のファルネセンシンターゼ変異体は、親ファルネセンシンターゼよりも65%多くのファルネセンを生成させた。
およそ400の大きなコロニーから抽出されたプラスミドを等モル量で混和して、プライマーLX−268−130−3−S2D−F(配列番号110)およびLX−268−130−4−S2D−R(配列番号109)を用いてFSコード配列をPCR増幅させ、PCR産物をゲル精製した。FastDigest(登録商標)Bst1101制限エンドヌクレアーゼ(Fermentas Inc., Burlington, Ontario)を用いてベクターpAM1734を直線化して、直線化されたベクターをZymo DNA Clean & Concentrator(商標) Kit(Zymo Research Corp., Orange, CA)を用いて洗浄した。精製したベクターおよびPCR産物を、1:3(ベクター:インサート)の比で混合して、相同組換えを介してライゲーションのために菌株Y539または菌株Y3198内へ形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、2%グルコース(Y539宿主)または2%ガラクトース(Y3198宿主)を唯一の炭素供給源として含むCSM−L寒天プレートに播種した。およそ2,500の個々のコロニーを選び出して、記載のようにナイルレッド蛍光分析により決定した(Y539宿主では2%グルコースを、そしてY3198宿主では2%ガラクトースを含むBSMを用いる)。標準の誘導の3倍にあたる親対照(Y539中のpAM1764(CEN.ARSプラスミドのFS_S2D_Ec))で得られた蛍光シグナルよりも大きな蛍光シグナルを生成したクローンを、CSM−L寒天プレートに再度播種して単一コロニーを得て、各リストレークの4つのコロニーを、ナイルレッド蛍光分析およびGC分析により再検査した。図11Aおよび11Bに示されるように、ファルネセンシンターゼ変異体で形質転換された細胞の多くは、親対照菌株よりも高い力価のファルネセンスを生成し、発現プラスミドpAM1765(高コピー数のプラスミドのFS_Aa_Ec)で形質転換された菌株Y539よりも高い力価を生成する細胞は少なかった。
実施例11
この実施例は、酵母におけるFPP毒性に基づく増殖選択により、セスキテルペンシンターゼ変異体をスクリーニングする方法を説明する。
実施例8の構築物Cでトランスフェクトされた菌株Y3198の洗浄された形質転換物を、唯一の炭素供給源として2%ガラクトースを含むCSM−L寒天プレートに播種した。プレートを30℃で5日間インキュベートして、コロニーを選び出し、発育させて、記載のようにナイルレッド蛍光分析およびGC分析によりファルネセン力価について分析した。図12に示されるように、唯一の炭素供給源としてガラクトースで増殖されたクローンのおよそ15%が、親対照(構築物Aでトランスフェクトされた菌株Y3198)で得られた平均力価よりも少なくとも15%高いファルネセン力価を有した。親対照よりも少なくとも15%高いファルネセン力価を有したクローンを、個々のコロニーごとに、2%グルコースを含むCSM−L寒天プレートに再ストレークした。各クローンごとに、個々のコロニー8個を選び出して、記載のようにGC分析により再検査した。GCアッセイにより対照よりも15%を超えて高い平均ファルネセン力価を維持するクローンは、セスキテル拮抗アッセイ用にプロモートした。
実施例12
この実施例は、セスキテルペンシンターゼの拮抗により、セスキテルペンシンターゼ変異体をスクリーニングする方法を説明する。
Zymoprep(商標) Yeast Plasmid Miniprep Kit (Zymo Research Corp., Orange, CA)を用いて、実施例10の、最も多くファルネセンを産生した酵母菌株から、プラスミドを単離した。プラスミドをBamHIおよびNheI制限エンドヌクレアーゼを用いて消化し、ファルネセンシンターゼ変異体コード配列をゲル精製して、2つの制限エンドヌクレアーゼで消化した発現ベクターpAM1812でライゲートし、こうしてpAM1812のFS_Aa_Scコード配列を、FS_S2D_EcまたはFS_Aa_Scコード配列と交換した。
あるいは、そして加えて、ファルネセンシンターゼ変異体コード配列を、プライマーAM−288−90−CPK1618(配列番号83)およびAM−288−90−CPK1619(配列番号84)を用いて、実施例11の、最も多くファルネセンを産生した酵母菌株の単離されたプラスミドまたは細胞溶解物からPCR増幅させて、E.Z.N.A.(登録商標)Gel Extraction Kit (Omega Bio−Tek Inc., Norcross, GA)を用い、製造業者が示唆するプロトコルに従って、PCR産物をゲル精製して、発現プラスミドpAM1948でライゲートして、菌株Y3125を精製された両方のDNAフラグメントで形質転換することにより相同組換えによりFastDigest BamHI restriction endonuclease(Fermentas Inc., Burlington, Ontario)で消化し、こうしてpAM1948のIS_Pn_Scコード配列を変異体のFS_S2D_Ecコード配列と交換した。
宿主細胞の形質転換物を、唯一の炭素供給源として2%グルコースを含むCSM−L寒天プレートに播種し、その後、30℃で少なくとも72時間、CSM−L−U寒天プレートにレプリカプレートして、宿主細胞の形質転換物中のGAL80コード配列をループアウトした。各クローンごとに、8個のコロニーを選び出し、成長させて、記載のようにGC分析によりテルペンの力価を決定した。親ファルネセンシンターゼ(pAM1812で形質転換された菌株Y3125)で得られたファルネセン/トリコジエン比よりも高い比を生成したファルネセンシンターゼ変異体を、CSM−L寒天プレートに再ストリークした。各再ストリークごとに、個々のコロニー8個を、記載のように96ウェルプレート産生実験において再検査した。ファルネセンシンターゼ変異体を含む11個の酵母菌株全てが、改善されたファルネセンシンターゼ/トリコジエン比を示し、これらのファルネセンシンターゼ変異体が酵母における改善されたインビボ酵素活性を有することが示唆された。
実施例13
この実施例は、改善された酵素活性を有するセスキテルペンシンターゼ変異体の特徴付けを説明する。
可能性のある原因の突然変異を同定するために、実施例12で同定され、本質的に記載のように生成およびスクリーニングされたファルネセンシンターゼ変異体の別のライブラリにおける改善されたファルネセンシンターゼ変異体を、Elim Biopharmeceuticals, Inc.(Hayward, CA)により配列決定した。同定された突然変異体を、表16に列挙する。要約すると、推定で合計300,000個のクローンをスクリーニングして、大腸菌および/または酵母におけるFPP毒性に基づく増殖選択、ナイルレッド蛍光および/またはGC分析、ならびに酵母におけるセスキテルペンシンターゼの拮抗により評価して、酵素活性が改善された51のファルネセンシンターゼ変異体を同定した。複数のファルネセンシンターゼ変異体を、1回を超える回数(回数は表16の変異体名の次のカッコ内に示す)同定し、特定のヌクレオチドおよびアミノ酸変化が、複数のファルネセンシンターゼ変異体において見出され、突然変異と酵素活性上昇との因果関係が示唆された。幾つかのファルネセンシンターゼ変異体において、サイレント突然変異のみが明らかにされず、これらの突然変異がコードされたFSの発現を改善する可能性が示唆された。
実施例14
この実施例は、酵母におけるセスキテルペンシンターゼの拮抗を利用して、突然変異を組み合わせ、改善されたファルネセンシンターゼ変異体をスクリーニングする方法を説明する。
実施例13において同定された様々なアミノ酸変化を、配列重複伸長(SOE; Ho, et al, 1989)により組み合わせて、その組み合わせを、記載のようにセスキテルペンシンターゼの拮抗によりスクリーニングして、酵素活性が上昇したFSを同定した。表17に示されるように、複数のファルネセンシンターゼ変異体は、野生型A.アンヌアFSよりも実質的に改善されたファルネセン/トリコジエン比を示した。これらのファルネセンシンターゼ変異体の複数の活性上昇が、ファルネセンシンターゼ変異体コード配列の単一染色体組み込みコピーを含む酵母菌株のGC分析により更に確認された(図14)。
実施例15
この実施例は、野生型ファルネセンシンターゼおよびファルネセンシンターゼ変異体蛋白質を発現および精製する方法を説明する。
ベクターpAM1490(配列番号117)のBamHIおよびNdeI部位にクローニングされたFS_Aa_Ec、FS_B_5.3_Ec(大腸菌における発現についてコドン最適化されたFS_B_5.3)、またはFS_C_8コード配列を含む発現プラスミドで、大腸菌・ロゼッタ(DE3)細胞を形質転換した。0.4mM IPTGを添加することにより宿主細胞の形質転換物の1Lの培養物中のFS発現を誘導し、各培養物を20℃で20時間インキュベートした。細胞溶解物を、Ni Sepharose(商標)6 Fast Flow樹脂(GE Healthcare, Piscataway, NJ)をプレパックしたHis GraviTrapカラムにロードした。カラムを、10mL(10倍カラム容積)の結合緩衝液(50mM トリス−HCl、pH8.0、500mM NaCl、5mM イミダゾール、5%グリセロール、0.5mM DTT)で洗浄して、50(分画1)、100(分画2)、または250mM(分画3)のイミダゾールを含む4ml溶出緩衝液(50mM トリス−HCl、pH8.0、500mM NaCl、5%グリセロール、0.5mM DTT)を用いて、段階的に溶出した。全ての分画を結合緩衝液で透析し、分画2を、透析カセット中でプロテアーゼ消化緩衝液(20mM トリス−HCl、pH7.5、200mM NaCl、5%グリセロール、1mM DTT)に対して更に透析した。His6標識を除去するために、120UのPreScission Protease (GE Healthcare, Piscataway, NJ)を、各透析カセットに直接添加して、透析液を一晩継続させた後、貯蔵緩衝液(20mM トリス−HCl、pH7.5、200mM NaCl、20%グリセロール、1mM DTT)に対して透析して、透析カセットから取り出した。GST標識プロテアーゼを除去するために、貯蔵緩衝液で予備洗浄したGlutathione Sepharose 4Bビーズ(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を、プロテアーゼ消化試料に添加し、ビーズ混合物を穏やかに混合しながら1時間インキュベートした。最後に、混合物をPoly−Prep Chromatography Column (Bio−Rad, Hercules, CA)に通すことにより、FS蛋白質を回収して、精製されたFS蛋白質を−80℃に貯蔵した。
単離されたファルネセンシンターゼ変異体を、反応速度特性に関してアッセイした。表18に示されるように、ファルネセンシンターゼ変異体のインビボ活性上昇が、単離されたファルネセンシンターゼ変異体のk
cat増加を表した。
実施例16
この実施例は、セスキテルペンシンターゼの拮抗を利用して適切なプロモータを選択し、ファルネセンシンターゼの発現を、酵母におけるFPP毒性に基づく増殖選択を可能にするレベルに調整することを説明する。
様々なプロモータを、表19に記載のようにPCR増幅させた。
pAM2191中の191GAL1プロモータを交換するために、発現プラスミドをFastDigest(登録商標) BamHI制限エンドヌクレアーゼを用いて消化して、この直線化プラスミド100ngを、プロモータのPCR産物それぞれ30ngで指数増殖期のY3198細胞に同時形質転換した。宿主細胞の形質転換物を、唯一の炭素供給源として2%グルコースを含むCSM−Lに播種して、個々のコロニーがおよそ1mmになるまで30℃で3日間インキュベートした後、記載のようにGC分析によりファルネセンおよびトリコジエン力価を決定した(表20)。FS_Aa_Scコード配列に連結されたGAL1プロモータと類似のファルネセン/トリコジエン比を与えるプロモータを選択して、記載のように、Y227におけるFPP毒性に基づく増殖選択により更にスクリーニングした。FS_A_5.3コード配列を親鋳型として用いた場合、検査されたプロモータのうちPET9遺伝子のプロモータが、改善されたFSのFPP毒性に基づく選択での使用に適することが示された。
実施例17
この実施例は、セスキテルペンシンターゼの拮抗を介して同定されたファルネセンシンターゼの有益な突然変異を関連のセスキテルペンシンターゼに移植する方法を説明する。
飽和突然変異誘発を利用して、実施例13で同定されたFSの様々なアミノ酸変化が、FS活性の改善のための原因であることを確認し、これらの突然変異の複数を、関連のセスキテルペンシンターゼである、アルテミシア・アンヌアのアモルファジエンシンターゼ(ADS)に移植して、活性の類似の改善が実現され得るかどうかを決定した。移植用に選択されたFSのアミノ酸位置は、Met35、Tyr288、Thr319、Val369、Ile434、Thr446、I460およびV467であった。多重整列に基づけば、ADSにおける整列された対応するアミノ酸は、Ala13、Cys260、Ala291、Met341、Thr406、Thr418、Phe432およびGly439である。これらの位置のそれぞれを、19の他の残基での置換により突然変異させて、核突然変異体をアモルファジエン:トリコジエン拮抗アッセイで検査した。
別個のPCR反応を用いることによりADS突然変異体を構築して、ADS遺伝子内の特異的コドンで重複する2つのDNAフラグメントを増幅させた。各オリゴヌクレオチド対を、標的領域に特異的にアニーリングするヌクレオチドにより両側がフランクされたオリゴヌクレオチドの中央のミスマッチした変性ヌクレオチド配列を用いて合成した(例えば、KがG塩基とT塩基との混合を表し、NがA塩基、T塩基、G塩基およびC塩基の混合を表す、NNK)。
ADS−TDS拮抗ベクターを調製するために、pAM1948プラスミドをBamHIおよびNheIで消化して、IS_Pn_Scコード配列を切除して、Zymocleanゲル精製キット(Zymo Research, Irvine CA)を用いてゲル精製した。残基Ala13の突然変異誘発で、ADS−A13−FおよびADS−SM−3’を用いてオープンリーディングフレーム(orf)を直接増幅させたことを除き、表22に列挙されたPCRフラグメントと表21に列挙された適当なADS−SM−5’オリゴおよびADS−SM−3’オリゴと、を等モル量で混合することにより、各飽和突然変異体を含むADSのorf増幅を実施した。増幅されたPCR産物を直線化pAM1948ないでギャップ修復して、Y3125を形質転換した。各部位の飽和突然変異体では、突然変異体のADS/TDS比をADS WTと比較することにより、倍率改善が得られた。
図17に示されるように、バリン(A291V;配列番号174)、システイン(A291C; 配列番号175)またはイソロイシン(A291I; 配列番号176)のいずれかによるAla291の置換は、ADS親物質(WT)よりも30%を超えるADS/TDS比を改善させた。
ADS A291V、A291CおよびA291Iの活性改善を確認するために、アモルファジエン力価を、核突然変異体用の発現プラスミドで形質転換された細胞内で決定した。それぞれA291V、A291CおよびA291Iを含むADS−TDSプラスミドを、BamHIおよびNheIを用いて消化して、ゲル抽出した。CEN.ARSプラスミドおよび2μ Leu2プラスミドを、同じ制限酵素を用いて直線化して、ゲル精製した。ADS突然変異体を含む消化されたフラグメントを、16℃でT4リガーゼを用い、直線化CEN.ARSまたは2μ Leu2プラスミドにライゲートした。反応物2μlをHl1−ブルー細胞に形質転換して、LBプレートに播種した。CEN.ARSまたは2μ Leu2プラスミドのいずれかの中に各ADS突然変異体を含むコロニーを、配列検証した。
産生については、各プラズマを矯正された(cured)Y227に形質転換して、CSM−Lプレートに播種した。核突然変異体ごとに8個のコロニーを選び出し、4%ガラクトース含有バードシード培地360μLを含有する96ウェルプレートで成長させた。34℃で2日間インキュベートした後、各ウェルの16μlを、産生用の4%ガラスとースを有する新鮮なバードシード培地を含有する新しい96ウェルプレートに接種した。30℃で2日間インキュベートした後、産生試料をナイルレッドおよびGC分析用に採取した。
図18に示されるように、プラスミドADS A291V、A291CおよびA291Iそれぞれは、2μプラスミドまたはCEN.ARSのいずれかで発現された場合、親ADSよりもアモルファジエン産生の増加を示した。最良の突然変異体AlaA291Valが、親よりも最大58%改善されたアモルファジエン力価を示した。
これらの結果から、テルペンシンターゼの拮抗アッセイを用いた1つのテルペンシンターゼにおいて同定された有益な突然変異体を、関連のテルペンシンターゼに有効に移植して、改善されたシンターゼ活性を実行することができた。
実施例18
この実施例は、酵母においてセスキテルペンシンターゼの拮抗を利用して、インビボ酵素活性レベルにより、パチュロールシンターゼを順位付けることの実行可能性を実証する。
発現プラスミドpAM2596、pAM2702、およびpAM2597を酵母菌株Y9120(MEV経路を含む)に形質転換することにより、それぞれ酵母菌株Y9259、Y11136、Y9260を作製し、コロニーPCRにより正しいプラスミドを含むことを確認した。各プラスミドは、GAL1プロモータ上に異なるPSアイソフォームを、そして分岐したGAL1プロモータ上にトリコジエンシンターゼ(TDS)の同一バージョンを含有した。確認されたコロニーは、単一コロニー用に再ストリークされ、それから8個のコロニーを、ウェルあたり2%スクロース含有バードシード培地(BSM)360μLを含有する96ウェルプレートの別個のウェルでインキュベートした(予備培養)。999rpmの撹拌の下、30℃で2日間インキュベートした後、各ウェルの6.4μLを、4%ガラクトースと3.33%鉱物油およびBrij−56エマルジョンとを含む新鮮なBSM 150μLを含有する新しい96ウェルプレートのウェルに接種した(産生培養)。999rpmでの撹拌下、30℃で更に4日間インキュベートした後、試料を採取して、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によりテルペン産生について分析した。
GC分析については、試料をメタノール/ブトキシエタノール/ヘプタン(100μL:50μL:400μL v/v)で抽出して、細胞材料を重力により沈降させた。ヘプタン抽出物の一部をヘプタンで希釈し、その後、パルススプリット注入を利用してメチルシリコーン固定相に注入した。パチュロールアルコールおよびトリコジエンを、GCおよび水素炎イオン化検出法(FID)を利用して、沸点により分離した。ヘキサデカンを滞留時間マーカとして使用して、特定のGCオーブンプリファイルの間の有効な注入および溶出をモニタリングした。ファルネセンおよびトリコジエンの力価を使用して、ファルネセン/トリコジエン比を計算した(パチュリ油は、パチュリアルコールの力価のおよそ3倍である)。
表24に示すように、パチュリ油/トリコジエン比は、試料全体でかなり一定しており、5.47%以下のCVを生じた。こうしてTDSと同じプラスミドからのPSを同時発現することにより、検査されたパチュロールシンターゼは、以下のとおり順位付けすることができた(最大活性から最小活性まで):PSアイソフォーム_3コード配列(Y9260)>PS_アイソフォーム_2コード配列(Y11136)>PS_アイソフォーム_2コード配列(Y9259)。
実施例19
この実施例は、モノテルペンシンターゼの拮抗を利用して、インビボ酵素活性によりモノテルペンシンターゼを順位付けすることの実行可能性を実証する。
モノテルペンリモネンのシンターゼの産生性を決定するために、pGa110プロモータにより誘導される、本明細書で比較テルペンシンターゼとして用いられるオシマム・バシリクムのミルセンシンターゼのコード配列と、同じプラスミド上のpGAL1(pAM2645)により誘導される照合リモネンシンターゼ(LS)のコード配列と、を含む拮抗ベクターを調製した。コロニーPCRにより、それぞれ異なるLSトランケーション変異体またはアイソフォームをコードする拮抗プラスミド8個が、それぞれ酵母菌株Y8270(MEV経路を含む)に形質転換され、形質転換された菌株が、正しいプラスミドを含むことを確認した。各菌株の単一コロニー8個を、炭素供給源として2%グルコースを含むバードシード培地360μLと共に96ウェルマイクロタイタープレートでインキュベートした。998RPMでの振とう下、30℃で3日間成長させた後、各培養物6μLを、ウェルあたり4%ガラクトースを含むバードシード培地75μLおよびミリスチン酸イソプロピル75μLを含有する新しい96ウェルプレートのウェルに接種した。産生プレートをVelocity 11ヒートシーラー(Agilent Technologies)で密封して、998RPMでの振とう下、30℃で成長させた後、−20℃で2時間、急速冷凍した。その後、0.001%ヘキサデカン内部標準を含む酢酸エチル300μlを急速に添加し、ヒートシーリングし、室温で2時間振とうした後、生成物をアッセイした。ミルセンおよびリモネンの絶対濃度の標準曲線を利用して、ガスクロマトグラム/水素炎イオン化検出法(GC−FID)を実施した。詳細には酢酸エチル抽出物2μLを、メチルシリコーン固定相カラムに、スプリット比1:50で注入した。注入の精密度および滞留時間の調整のために、ヘキサデカンを内部標準として用いて、この注入を分析した。オーブン温度を、2.5分間にわたり25℃から250℃まで勾配を加え、その時点でオーブンを次の飼料のために急速に冷却した。ミルセンおよびリモネンの力価を利用して、拮抗比を計算した。
図18に示されるように、テルペンシンターゼの拮抗アッセイを用いて、異なるリモネンシンターゼトランケーション変異体およびアイソフォームの相対的性能を順位付けすることができる。
本開示の範囲および周知を逸脱することなく、本開示の様々な改良および変更が当業者に明白となろう。本開示を特定の好ましい実施形態と関連づけて記載したが、特許請求の範囲がそのような特定の実施形態に不当に限定すべきでないことを、理解しなければならない。事実、当業者に理解される、本開示を実施するための記載された様式の様々な改良が、特許請求の範囲に含まれるものとする。