JP5578018B2 - 光沢度の測定方法及び測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、物体表面の光沢度の測定方法及び測定装置に関する。
最近、光学的な干渉による発色現象(構造色)を応用し、各種工業製品の表面に今までとは異なる外観を付与しようという研究が進んでいる。物品の外観に関する評価指標の一つとして、表面の光沢を定量的に表現する光沢度が挙げられる。
物体表面の光沢を定量的に表現する光沢度としては、JIS規格で定義される鏡面光沢度が良く知られている(非特許文献1)。鏡面光沢度は、光源からサンプル表面に光を規定された入射角で入射させたときの正反射光の強度と、上記と同じ条件で標準面(透明又は黒色ガラスなど)に光を入射させたときの正反射光の強度との比を用いて表される。また、その他の光沢度の定義としては、同一サンプルにおける正反射光の強度と拡散反射光の強度の比によって物体表面の光沢を表す対比光沢度が知られている。
JIS Z 8741 「鏡面光沢度―測定方法」
本発明者は、モルフォ蝶の翅に代表されるような、人間の知覚として特異な光沢を感じる表面構造の研究を進めてきた。その研究過程において、このような表面構造を有する物体においては、従来の方法で求められた光沢度の値と実際に感じられる光沢の強さとが必ずしも一致しないことを見出した。本発明は、構造色を呈する物体表面にも適用可能な、新たな光沢度の測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様の光沢度測定方法は、サンプル表面に対して入射角φで測定光を照射し、散乱光強度の角度分布関数を測定し、前記散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する微分値と、前記散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する積分値と、に基づいて光沢度Gφを決定することを特徴とする。
前記態様の光沢度測定方法においては、光沢度Gφを前記積分値で規格化された値とすることができる。
前記態様の光沢度測定方法においては、(1)式により光沢度Gφを決定することができる。
ここで、(1)式におけるθは散乱角であり、Iφ(θ)は散乱光強度の角度分布関数である。
Figure 0005578018
また、前記態様の光沢度測定方法においては、(2)式により光沢度Gφを決定することができる。
ここで、(2)式における散乱角θxおよびθyは、前記サンプル表面の法線方向をz軸、前記測定光の入射面をx−z平面とする直交座標系において、それぞれ、散乱光のx−z平面への射影がz軸となす角、散乱光のy−z平面への射影がz軸となす角であり、Iφ(θx,θy)は散乱光強度の角度分布関数である。
Figure 0005578018
前記態様の光沢度測定方法においては、(3)式で光沢度Gφを決定することができる。
ここで、(3)式における散乱角θxは、前記サンプル表面の法線方向をz軸、前記測定光の入射面をx−z平面とする直交座標系において、x−z平面内の散乱光がz軸となす角であり、Iφ(θx)は散乱光強度の角度分布関数である。
Figure 0005578018
前記態様の光沢度測定方法においては、散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する微分値を、測定された散乱光強度のうち、隣り合う測定位置間における散乱光強度の差分で表すことができる。
本発明の態様の光沢度測定装置は、サンプル表面に対して測定光を照射する光源と、前記サンプル表面からの散乱光を検出する検出器と、前記散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する微分値と、前記散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する積分値と、に基づいてサンプルの光沢度を決定する演算部と、を有する。
本発明の態様の光沢度の測定方法及び測定装置によれば、構造色を呈する物体表面に対しても、人間の知覚に対応して光沢を数値化することができる。
(2)式におけるθx及びθyの定義を示す図である。 本発明の態様の光沢度の測定装置の構成例を示す図である。 光沢度の測定手順を示すフローチャートである。 本発明の態様の光沢度の測定方法により測定された散乱光強度のデータ構造を概念的に図示したものである。
本発明の態様の光沢度測定方法においては、物体表面に角度φで測定光を入射させた際の散乱光強度の角度分布関数を測定し、散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する一次微分に基づいて、物体表面の光沢度Gφを決定する。ここで散乱光強度の角度分布関数とはある散乱角における散乱光強度を与える関数のことである。例えば、散乱角をθ、散乱光強度の角度分布関数をIφ(θ)とすると、散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する一次微分はdIφ(θ)/dθで表される。
人間が物体表面を目視する場合、その表面の光沢度は、物体表面からの散乱光(拡散反射光)が観測者の目に入射することによって知覚される。このとき物体表面のdIφ(θ)/dθの値が大きいほど、物体を目視する角度の微妙な変化によって観測者の目に入射する光の強度が大きく増減する。本発明者はこの現象が光沢度を知覚する上で重要な要素となることを発見し、光沢度の定義にdIφ(θ)/dθを導入することによって本発明に至ったのである。
上述のとおり、本発明の態様の光沢度測定方法はdIφ(θ)/dθに基づいて光沢度を決定する点に特徴を有するが、その効果は、いわゆる構造色を呈する物体表面の光沢度評価において特に顕著である。すなわち、通常の物体のIφ(θ)は、正反射光のピークの周りに緩やかに強度が変化する拡散反射帯を伴う関数形を有するので、従来の鏡面光沢度あるいは対比光沢度によっても人間の知覚に対応した光沢度の測定値を得ることが可能である。これに対して構造色を呈する物体のIφ(θ)は複雑な関数形を有し、特殊な光沢感を与えることが多いため、従来の測定方法によって得られた光沢度の値は、人間の感じる光沢の大小と対応しないことがあった。本発明の態様の光沢度測定方法は、単に反射光の強度に基づいて光沢度を決定するのではなく、光沢感の基本的な要素であるdIφ(θ)/dθに基づいて光沢度を決定するので、複雑なIφ(θ)を有する物体表面であっても、その光沢度を適切に表現することができるのである。
このようなdIφ(θ)/dθに基づく光沢度の測定は、より具体的には下記(1)式に基づいて行うことができる。
Figure 0005578018
式(1)において、光沢度Gφは、dIφ(θ)/dθを測定範囲について積分し、さらに測定範囲のIφ(θ)の積分値で規格化した値として算出される。式(1)により得られるGφの値はdIφ(θ)/dθの積分値に比例するので、dIφ(θ)/dθが大きい表面、すなわち角度変化によって散乱光の強度が急激に増減する表面ほど大きなGφの値を与えることになる。また、一定の角度範囲内でIφ(θ)が複数のピークを持つ場合は、そのピークの数が多いほどGφの値が大きくなる傾向がある。このような特徴を有する表面は、観察角度を変えたときに明暗が数多く繰り返され、かつ明暗の変化が急峻であるため、観測者に強い光沢感を与える。したがって(1)式により得られる光沢度Gφの値は人間の知覚に対応したものとなる。また、(1)式により得られる光沢度Gφの値は散乱光の全強度で規格化されているので、散乱率の絶対値が異なる表面同士を比較する場合でも、光沢度の大小を適切に対比することができる。
上述の態様の光沢度測定方法において、光沢度の算出に用いる散乱角θの方向や範囲は特に制限されず、光沢度を適切に表現可能な範囲であれば、被測定物の表面形状や反射特性に応じて適宜設定することができる。その一例として、2次元の散乱光強度分布を用いて光沢度を算出する方法を以下に説明する。
この態様の光沢度測定方法では、2次元の散乱光強度の角度分布関数をIφ(θx、θy)と表し、式(2)に基づいて光沢度Gφを決定する。
Figure 0005578018
ここでθx及びθyは図1に示すように定義される。すなわち、図1では、測定光201が入射角φでサンプル108の表面に入射し、サンプル108の表面から散乱光202が出射している。ここでは散乱光202として1本の光線を描写しているが、実際には散乱光202はサンプル108の表面から拡散して出射する。なお、図1に示すように、サンプル108の表面の法線方向をz軸とし、測定光201の入射面がx−z平面となるようにxyz直交座標を定義する。
ここで、θxは散乱光202のx−z平面への射影とz軸とがなす角であり、θyは散乱光202のy−z平面への射影とz軸とがなす角である。
本実施形態における演算方法では、このようにして表されたθx、θy、Iφ(θx,θy)を用いて(2)式による演算を行い光沢度Gφを決定する。
この態様の光沢度測定方法では、式(2)に示すとおり、散乱光強度の角度分布関数Iφ(θx,θy)をθx方向の散乱角およびθy方向の散乱角のそれぞれについて偏微分し、これらの値に基づいて光沢度Gφを決定する。より具体的には、Gφの値は、θx方向の偏微分とθy方向の偏微分の二乗和平方根の積分値を、散乱光強度の積分値で規格化した値として算出される。この態様においては、θx方向及びθy方向の双方に関して、角度変化による散乱光の強度変化が急峻であるほど大きなGφの値を与える。また、θx方向及びθy方向の双方に関して、一定の角度範囲内に存在するピークの数が多いほどGφの値が大きくなる傾向がある。このような特徴を有する表面は、観察角度を変えたときに明暗が数多く繰り返され、かつ明暗の変化が急峻であるため、観測者に強い光沢感を与える。したがって(2)式により得られる光沢度Gφの値は人間の知覚に対応したものとなる。また、(2)式により得られる光沢度Gφの値は散乱光の全強度で規格化されているので、散乱率の絶対値が異なる表面同士を比較する場合でも、光沢度の大小を適切に対比することができる。次に、本発明の態様により光沢度を測定するための測定装置について、図2を用いて説明する。
図2は光沢度の測定装置の構成例である。光沢度の測定装置100は、測定部100Aと制御部100Bとを含んで構成される。
まず、測定部100Aについて説明する。
測定部100Aは、光源101、検出器102、サンプルの載置台103、駆動装置104を含んで構成される。
光源101は、載置台103上にセットされたサンプル108の表面に対して測定光を照射することができる。そして、光源101は移動可能な支持部材(不図示)により支持されており、該支持部材が移動することにより測定点を中心とする円弧上の任意の位置に配置することができ、測定光の入射角を任意の値に設定することができる。このような光源101としては、レーザや発光ダイオードなどを発光源とし適宜コリメータや絞りなどの光学要素を配置して適切なビームの質が得られるように構成されたものを用いることができる。
検出器102は、サンプル108の表面から出射した散乱光の強度を測定することができる。検出器102も光源101と同様に不図示の移動可能な支持部材により支持されており、該支持部材が移動することにより測定点を中心とする球面上の任意の位置に検出器102を配置することができる。これにより任意の散乱角における散乱光を検出することができる。このような検出器としては、フォトダイオードなどを用いることができる。
駆動装置104は、前述の光源の支持部材および検出器の支持部材に接続されており、それぞれの支持部材を駆動することができる。
次に、制御部100Bについて説明する。
制御部100Bは、制御装置、入力装置、出力装置を含んで構成される。
制御装置105は、光源101、検出器102、駆動装置104、入力装置106、出力装置107に接続されている。制御装置105は、入力装置106からの入力信号に従って光源101のON/OFF等の制御を行う。また、制御部105は、駆動装置104を介して、光源101および検出器102をそれぞれ任意の位置に移動させることができる。また、制御装置105には不図示の演算部が備えられている。演算部は、上述したdIφ(θ)/dθの値に基づいた演算により光沢度Gφを算出する。このような演算部としてはCPUなどを用いることができる。
また、制御装置105には不図示の記憶部が備えられており、光源101および検出器102の移動プログラム、演算部における光沢度Gφの算出プログラム、検出された散乱光の強度や演算部で行われた演算結果等の格納および読み出しが可能である。
出力装置107は演算部を用いて算出された光沢度の値を出力することができる。
なお、演算部および記憶部を含む制御装置105としては、パソコンやマイクロコンピュータ、プログラマブルコントローラなど、周知の制御装置を特に制限なく用いることができる。また、上述した入力装置106としては、キーボードやマウスなどを用いることができる。また、出力装置107としては、モニタやプリンタなどの表示手段および印刷手段などを用いることができる。なお、ノートパソコンのように、制御装置105、入力装置106、出力装置107が一体となった構成のものを制御部100Bとして用いても良く、この場合は通信回線等を用いて測定部100Aと制御部100Bを接続し、制御部100Bから測定部100Aを遠隔的に制御する構成としても良い。また、測定部100Aと制御部100Bは一体に構成されていても良い。
以上の構成を有する光沢度の測定装置を用いると、上述した演算に必要なデータを得ることができ、人間の知覚に対応した光沢度を算出することができる。
次に、上述の光沢度の測定装置100により光沢度Gφを測定する方法について説明する。
本実施形態の光沢度の測定方法では、光源101は入射角φを維持し、検出器102が移動と停止を繰り返しながら散乱光強度を測定する。つまり、光源101は所定の位置に固定されたまま検出器102がある測定位置で散乱光強度を測定し、その測定位置での散乱光強度の測定が終了すると検出器102が次の測定位置に移動する。そして、再び散乱光強度を測定するという動作を検出器102が所定の測定終了位置に到達するまで繰り返す。
以下に図3を用いて上述の式(2)に基づいて光沢度を測定する具体的な手順を説明する。
図3は、光沢度の測定手順を示すフローチャートである。
まず、サンプル108を載置台103にセットする。
次に、入力装置106から測定に必要な条件を入力する(S1)。ここで入力する条件は、光源101からサンプル108の表面に測定光を照射するときの入射角φ、検出器102の測定開始位置および測定終了位置、検出器102が散乱光強度の測定を行う回数、検出器102の移動経路などである。ここで、検出器102が散乱光強度の測定を行う回数は、例えば、散乱光強度Iφ(θx,θy)を異なるn個のθxと異なるm個のθyにおける全ての組み合わせについて測定するとすれば、n×m回とすることができる。
S1における測定条件の入力が終わると、制御装置105は、入力された測定条件に基づいて駆動装置104へ制御信号を送り、駆動装置104が光源101の支持部材および検出器102の支持部材を駆動する。これにより、光源101はS1で入力した入射角φで測定光を照射する位置に移動し、検出器102はS1で入力した測定開始位置に移動する(S2)。
そして、制御装置105により光源101の出力がONに設定され、測定光がサンプル108に入射角φで照射される。サンプル108から出射した散乱光の強度は検出器102により測定される(S3)。測定された散乱光の強度は制御装置105に備えられた記憶部に記憶される。
測定開始位置での散乱光強度の測定が終わると検出器102はS1で入力した移動経路に従って次の検出位置に移動し、再度散乱光強度の測定を行う。この動作は検出器102がS1で入力した測定終了位置に到達するまで繰り返される。
ここで、検出器102の移動経路の一例について説明する。まず、検出器102が測定する散乱光強度をIφ(θx,i,θy,j)と表す。θx,iは異なるn個のθxにおいてi番目のθxを表し、θy,jは異なるm個のθyにおいてj番目のθyを表す。例えば、測定開始位置で測定される散乱光の強度はIφ(θx,1,θy,1)と表すことができる。
測定開始位置で検出器102が散乱光強度Iφ(θx,1,θy,1)を測定した後は、θy,1は固定したまま、散乱光強度Iφ(θx,2,θy,1)を測定できる位置に検出器102が移動し(S4)、散乱光強度の測定を行う(S3)。その後も同様にθy,1を固定したままθx,iを変化させて散乱光強度の測定を行い、i=nとなるまでこの動作を繰り返す。
i=nとなった後は、θy,1をθy,2に変化させ、散乱光強度Iφ(θx,1,θy,2)を測定できる位置に検出器102が移動する(S5)。その後、上記と同様にθy,2を固定したままθx,1を変化させて散乱光強度の測定を行い、再度i=nとなるまでS3およびS4の動作を繰り返す。
再度i=nとなった後は、θy,2を変化させて散乱光強度の測定を行い、j=mとなるまで上記ステップと同様の動作を繰り返す。
以上のようにして検出器102はサンプル108の周辺を移動する。
検出器102が測定終了位置(i=n、j=m)に達し、散乱光の強度の測定が終了すると、記憶部に記憶された散乱光強度のデータを演算部が読み出し、光沢度Gφを算出するための演算が行われて光沢度Gφが決定される(S6)。S6で行われた演算の結果は出力部106に表示される(S7)。
以上のようにして光沢度の測定は終了する。
次に演算部で行われる具体的な演算について図4を用いて説明する。
図4は、上記の測定方法により測定された散乱光強度のデータ構造を概念的に図示したものである。
本実施形態の光沢度の測定方法によれば、図4に示すようなn×mのマトリクス状の散乱光強度のデータが得られる。 このような離散的なデータに基づいて光沢度を算出する場合は、式(2)における偏微分を差分に置き換えて計算しても良い。すなわち、図4に示したマトリクス状のデータにおいて、隣り合う散乱光強度の差分を計算し、この差分に基づいて光沢度Gφを算出することができる。具体的には下記(4)式を用いて光沢度Gφを算出する。
Figure 0005578018
(4)式では、(2)式中の偏微分による演算を差分による計算に置き換えている。そして、差分の二乗和平方根をもとめ、その全ての和を計算する。さらに、全ての散乱光強度の和で規格化を行う。
上記(4)式のように散乱光の強度の差分を用いることで、離散的なデータであっても演算を行うことができる。
なお、上述の実施態様では、θx及びθyの双方を変化させて2次元の散乱光強度の角度分布関数を測定する手順を説明したが、θxまたはθyの一方のみを変化させて1次元の散乱光強度の角度分布関数を測定し、その測定値に基づいて光沢度を算出しても良い。例えば、測定光の入射面(x−z平面)内における散乱光の散乱角をθxとして、下記(3)式により演算を行う。
Figure 0005578018
(3)式においても、散乱光強度の角度分布関数Iφ(θx)をθx方向の散乱角について微分し、この値に基づいて光沢度Gφを決定する。したがって、上述の(1)式および(2)式の説明と同様に、(3)式により得られる光沢度Gφの値も人間の知覚に対応したものとなる。また、(3)式により得られる光沢度Gφの値は散乱光の全強度で規格化されているので、散乱率の絶対値が異なる表面同士を比較する場合でも、光沢度の大小を適切に対比することができる。
以上のように、1次元の散乱光強度の角度分布関数を測定し(3)式による演算を行えば、上述の2次元の散乱光強度の角度分布関数を測定する場合に比べて測定時間を短縮することが可能である。
なお、θxとして離散的なデータを用いる場合、(3)式における微分を差分に置き換えて計算しても良く、i番目のθxをθx,iとして下記(5)式により演算を行うことができる。
Figure 0005578018
なお、以上に説明した(1)〜(5)式において、さらに任意の定数を乗じることにより光沢度Gφを算出しても良い。例えば、任意の定数をaとして、下記(6)式により光沢度Gφを算出することができる。
Figure 0005578018
(6)式は(1)式に定数aを乗じた式である。このように定数aを乗じることにより、(1)式で算出された光沢度Gφを所望のオーダーで評価することが可能である。なお、ここでは(1)式に定数aを乗じる場合について説明したが、(2)〜(5)式についても同様に定数aを乗じて光沢度Gφを算出することができる。
モルフォ蝶の翅とサンドブラスト加工を施したアルミニウムとをサンプルとして用意して本実施形態の光沢度の測定方法により光沢度Gφを決定した。ここで、モルフォ蝶の翅とサンドブラスト加工を施したアルミニウムの光沢感は人間の見た目で同程度であった。
光沢度の測定条件は以下の通りである。
光源にはハロゲンランプを用いた。そして、光源から照射された光を回折格子で分光することにより480nmの光を取り出し、この480nmの光を測定光とした。測定光の入射角φは30度となるように設定した。
検出器にはCCDカメラを用い、測定光の入射面内における散乱光強度の角度分布関数Iφ(θx)の測定を行った。このときの検出器の測定開始位置は散乱角θxが+90度となる位置とし、測定終了位置は散乱角θxが−90度となる位置とした。前述のθxの符号は、測定位置が測定点を基準として光源と反対側にあるときに+とし、測定位置が測定点を基準として光源側にあるときに−としている。そして、散乱角θxが1度ごとの間隔となるように検出器を移動させた。
光沢度の決定は(5)式による演算で行い、θx,i−θx,i-1の値は10度となるように設定した。
以上のようにして散乱光強度の角度分布関数Iφ(θx)を測定し光沢度を算出した結果、モルフォ蝶の翅の光沢度は0.028となり、サンドブラスト加工を施したアルミニウムの光沢度は0.022となった。両者の光沢度は同程度であり、人間の知覚による光沢と本実施形態の光沢度の測定方法により決定された光沢度の値とがほぼ一致した。
(比較例)
上記の実施例で得られた散乱光強度のデータを用い、モルフォ蝶の翅及びサンドブラスト加工を施したアルミニウムの対比光沢度を算出した。ここでいう対比光沢度とは、正反射光の強度と、サンプルの法線方向における散乱光の強度との比のことである。
このようにして対比光沢度を算出した結果、モルフォ蝶の翅の対比光沢度は0.43となり、サンドブラスト加工を施したアルミニウムの対比光沢度は1.21となった。両者の対比光沢度は大きく異なり、人間の知覚による光沢と対比光沢度の値とは一致しなかった。
100 測定装置
100A 測定部
100B 制御部
101 光源
102 検出器
103 載置台
104 駆動装置
105 制御装置
106 入力装置
107 出力装置
108 サンプル
201 測定光
202 散乱光
203 射影
204 射影

Claims (7)

  1. サンプル表面に対して入射角φで測定光を照射し、
    散乱光強度の角度分布関数を測定し、
    前記散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する微分値と、前記散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する積分値と、に基づいて光沢度Gφを決定することを特徴とする光沢度の測定方法。
  2. 前記光沢度Gφは、前記積分値で規格化された値であることを特徴とする請求項1に記載の光沢度の測定方法。
  3. 請求項1または2に記載の光沢度の測定方法において、(1)式で光沢度Gφを決定することを特徴とする光沢度の測定方法。
    但し、前記散乱角をθ、前記散乱光強度の角度分布関数をIφ(θ)とする
    Figure 0005578018
  4. 請求項1または2に記載の光沢度の測定方法において、(2)式で光沢度Gφを決定することを特徴とする光沢度の測定方法。
    但し、前記サンプル表面の法線方向をz軸、前記測定光の入射面をx−z平面とする直交座標系において、散乱光の前記x−z平面への射影が前記z軸となす角をθx、y−z平面への射影が前記z軸となす角をθy、前記散乱光強度の角度分布関数をIφ(θx,θy)とする。
    Figure 0005578018
  5. 請求項1または2に記載の光沢度の測定方法において、(3)式で光沢度Gφを決定することを特徴とする光沢度の測定方法。
    但し、前記サンプル表面の法線方向をz軸、前記測定光の入射面をx−z平面とする直交座標系において、x−z平面内の散乱光がz軸となす角をθx、前記散乱光強度の角度分布関数をIφ(θx)とする。
    Figure 0005578018
  6. 前記散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する微分値が、測定された散乱光強度のうち、隣り合う測定位置間における散乱光強度の差分で表されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光沢度の測定方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光沢度の測定方法に用いる光沢度の測定装置であって、
    サンプル表面に対して測定光を照射する光源と、
    前記サンプル表面からの散乱光を検出する検出器と、
    前記散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する微分値と、前記散乱光強度の角度分布関数の散乱角に関する積分値と、に基づいてサンプルの光沢度を決定する演算部と、
    を有することを特徴とする光沢度の測定装置。
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