以下、添付図面を参照して、本願の開示する直列多重マトリクスコンバータの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータの構成例を示す図である。以下の実施形態では、交流発電機(ACG)である回転電機の発電電力を変換して交流電源へ供給する直列多重マトリクスコンバータを例に挙げて説明するが、回転電機は交流発電機に限らず、例えば、交流電動機としてもよい。また、単一交流電源として電力系統(Grid)を例に挙げて説明するが、単一交流電源はこれに限られない。
図1に示すように、第1の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1は、3相交流の電力系統2と回転電機3との間に設けられ、電力系統2と回転電機3との間の電力変換を行う。なお、以下においては、回転電機3の一例として、同期発電機を用いた場合の例を説明する。
回転電機3の回転軸には、回転電機3の回転位置を検出する位置検出器4が設けられており、かかる位置検出器4によって検出された回転電機3の回転位置θGは直列多重マトリクスコンバータ1へ入力される。
直列多重マトリクスコンバータ1は、多重変圧器10と、電力変換部20と、電流検出部24と、電圧検出部25と、停電検出部26と、制御部30とを備える。また、直列多重マトリクスコンバータ1は、系統側端子TR、TS、TTおよび発電機側端子TU、TV、TWを備え、系統側端子TR、TS、TTに電力系統2が接続され、発電機側端子TU、TV、TWに回転電機3が接続される。
多重変圧器10は、一次巻線11と、9つの二次巻線12a〜12i(以下、二次巻線12と総称する場合がある)とを備え、電力系統2から一次巻線11に入力される交流電力を9つの二次巻線12a〜12iに変圧して出力する。また、これら9つの二次巻線12a〜12iがそれぞれ個別の交流電源であり、後述する電力変換セル21a〜21iにそれぞれ接続される。
かかる多重変圧器10は、一次巻線11と少なくとも一部の二次巻線12との間に電圧位相差を発生させる移相変圧器である。多重変圧器10では、下記表1に示すように、U相、V相およびW相の各相に対応して設けられた電力変換セル部に接続される3つの二次巻線12の電圧位相が20度ずつずれている。下記表1には、一次巻線11と二次巻線12の間の電圧位相差が示されている。
具体的には、U相では、位置U1に対応する二次巻線12aに対して、位置U2に対応する二次巻線12dは、20度の電圧位相差を有し、二次巻線12dに対して、位置U3に対応する二次巻線12gは、20度の電圧位相差を有する。同様に、V相では、位置V1に対応する二次巻線12bに対して、位置V2に対応する二次巻線12eは、20度の電圧位相差を有し、二次巻線12eに対して、位置V3に対応する二次巻線12hは、20度の電圧位相差を有する。
また、W相では、位置W1に対応する二次巻線12cに対して、位置W2に対応する二次巻線12fは、20度の電圧位相差を有し、二次巻線12fに対して、位置W3に対応する二次巻線12iは、20度の電圧位相差を有する。なお、一次巻線11に対して、二次巻線12a〜12cは、電圧位相差がゼロである。
ここでは、一次巻線11と二次巻線12a〜12cとは電圧位相差がゼロであるとする。したがって、二次巻線12a〜12cのr1相、s1相およびt1相の電圧位相(以下、電圧位相θrst1と記載する)は、電力系統2の電圧位相θRST(以下、「系統位相θRST」と記載する)と同一である。また、二次巻線12d〜12fのr2相、s2相およびt2相の電圧位相(以下、電圧位相θrst2と記載する)は、系統位相θRSTに対して20°ずれている。また、二次巻線12g〜12iのr3相、s3相およびt3相の電圧位相(以下、電圧位相θrst3と記載する)は、系統位相θRSTに対して40°ずれている。
このように、電圧位相差を設けることによって、一次巻線11側に流れる高調波電流を低減することができる。なお、上記表1に示す電圧位相差は一例であり、他の値の電圧位相差であってもよい。さらに位相差を設けなくてもよい。なお、多重変圧器10を用いずに、電力変換セル21a〜21iに別々の交流電源を接続することもできる。
電力変換部20は、9つの二次巻線12a〜12iにそれぞれ接続される9つの電力変換セル21a〜21i(以下、電力変換セル21と総称する場合がある)を備える。各電力変換セル21は、二次巻線12に接続される端子T3(後述する端子Tr、Ts、Tt)と端子T1、T2との間の電力変換を行う。
二次巻線12a〜12cは、U相、V相およびW相のそれぞれの1段目の電力変換セル21a〜21cに接続され、二次巻線12d〜12fは、U相、V相およびW相のそれぞれの2段目の電力変換セル21d〜21fに接続される。また、二次巻線12g〜12iは、U相、V相およびW相のそれぞれの3段目の電力変換セル21g〜21iに接続される。
かかる電力変換部20では、3つの電力変換セル21の出力が直列接続されて各出力相が構成される。すなわち、電力変換セル21a、21d、21gによってU相の電力変換セル部が構成され、電力変換セル21b、21e、21hによってV相の電力変換セル部が構成され、電力変換セル21c、21f、21iによってW相の電力変換セル部が構成される。
具体的には、電力変換セル21aの端子T2が中性点Nに接続され、さらに、電力変換セル21aの端子T1と電力変換セル21dの端子T2とが接続され、電力変換セル21dの端子T1と電力変換セル21gの端子T2とが接続される。これにより、電力変換セル21gの端子T1を出力端子としたU相の電力変換セル部が構成される。
同様に、電力変換セル21bの端子T2が中性点Nに接続され、さらに、電力変換セル21bの端子T1と電力変換セル21eの端子T2とが接続され、電力変換セル21eの端子T1と電力変換セル21hの端子T2とが接続される。これにより、電力変換セル21hの端子T1を出力端子としたV相の電力変換セル部が構成される。
また、電力変換セル21cの端子T2が中性点Nに接続され、さらに、電力変換セル21cの端子T1と電力変換セル21fの端子T2とが接続され、電力変換セル21fの端子T1と電力変換セル21iの端子T2とが接続される。これにより、電力変換セル21iの端子T1を出力端子としたW相の電力変換セル部が構成される。
ここで、電力変換セル21の構成について説明する。図2は、電力変換セル21の具体的構成の一例を示す図である。図2に示すように、電力変換セル21は、スイッチ部22と、フィルタ23とを備える。かかる電力変換セル21は、単相マトリクスコンバータとも呼ばれる。なお、電力変換セル21には、例えば、不図示のスナバ回路が設けられる。
スイッチ部22は、双方向スイッチSw1〜Sw6を備える。かかる双方向スイッチSw1〜Sw6は、各端子Tr、Ts、Ttと各端子T1、T2との間にそれぞれ接続される。
双方向スイッチSw1は、片方向スイッチング素子13とダイオード15とを逆並列接続した回路と片方向スイッチング素子14とダイオード16とを逆並列接続した回路とを逆方向に直列に接続されて構成される。また、双方向スイッチSw2〜Sw6も、双方向スイッチSw1と同様の構成である。
片方向スイッチング素子13、14は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子が用いられる。双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子13、14を個別にオン/オフすることで、通電方向を制御することができる。
なお、双方向スイッチSw1〜Sw6は、図2に示す構成に限られない。例えば、図3に示すように、各双方向スイッチSw1〜Sw6は、片方向スイッチング素子13とダイオード16とによる直列接続体と、片方向スイッチング素子14とダイオード15とによる直列接続体とが、逆方向に並列に接続された構成であってもよい。また、双方向スイッチSw1〜Sw6は、片方向スイッチング素子13、14をそれぞれ逆阻止型のスイッチング素子とし、これらのスイッチング素子を互いに逆方向に並列接続した構成でもよい。
フィルタ23は、スイッチ部22と端子Tr、Ts、Ttとの間に設けられ、スイッチ部22によって発生する高周波成分(PWM成分)の電力系統2への影響を抑制する。かかるフィルタ23は、3つのリアクトルL1r、L1s、L1tと、3つのコンデンサC1rs、C1st、C1rtによって構成される。
リアクトルL1r、L1s、L1tは、端子Tr、Ts、Ttに一端がそれぞれ接続され、スイッチ部22側に他端が接続される。また、コンデンサC1rs、C1ts、C1rtは、リアクトルL1r、L1s、L1tのうち異なるリアクトルの他端間に接続される。なお、フィルタ23は、図2に示す構成に限られず、例えば、リアクトルL1r、L1s、L1tを設けない構成でもよい。
図1に戻って直列多重マトリクスコンバータ1の構成の説明を続ける。電流検出部24は、電力系統2と多重変圧器10との間に設けられ、電力系統2と多重変圧器10との間に流れる電流の瞬時電流値IR、IS、IT(以下、「系統相電流値IR、IS、IT」と記載する)を検出する。なお、電流検出部24は、例えば、磁電変換素子であるホール素子を利用して電流を検出する電流センサである。
電圧検出部25は、電力系統2と多重変圧器10との間に設けられ、電力系統2のR相、S相、T相の各相の瞬時電圧値VR、VS、VT(以下、「系統相電圧値VR、VS、VT」と記載する)を検出する。
停電検出部26は、系統電圧の実効電圧値Va(以下、系統電圧値Vaと記載する)が電圧値V1以下であるか否かを検出する。停電検出部26は、系統電圧値Vaが電圧値V1以下である場合には、電力系統2が停電したと判定してHighレベルの停電検出信号Sdを出力する。一方、停電検出部26は、系統電圧値Vaが電圧値V1を超える場合には、電力系統2が停電していないと判定してLowレベルの停電検出信号Sdを出力する。
停電検出部26は、系統相電圧値VR、VS、VTを固定座標上の直交した2軸のαβ成分へ変換して、α軸方向の系統電圧値Vαとβ軸方向の系統電圧値Vβとを求める。そして、停電検出部26は、系統電圧値Vα、Vβの自乗和平方根(=√(Vα 2+Vβ 2))を演算し、演算結果を系統電圧値Vaとする。
なお、停電検出部26は、二次巻線12a〜12iのいずれかの電圧に基づいて、停電検出信号Sdを出力することもできる。例えば、停電検出部26は、二次側電圧値Va1が所定の電圧値V11以下である場合に、電力系統2が停電したと判定してHighレベルの停電検出信号Sdを出力する。一方、停電検出部26は、二次側電圧値Va1が電圧値V11を超える場合には、電力系統2が停電していないと判定してLowレベルの停電検出信号Sdを出力する。
この場合、停電検出部26は、例えば、二次巻線12aのr1相、s1相およびt1相の電圧Vr1、Vs1、Vt1を固定座標上の直交した2軸のαβ成分へ変換して、α軸方向の系統電圧値Vα1とβ軸方向の系統電圧値Vβ1とを求める。そして、停電検出部26は、系統電圧値Vα1、Vβ1の自乗和平方根(=√(Vα12+Vβ12))を演算し、演算結果を二次側電圧値Va1とする。
制御部30は、第1の駆動制御部31と、第2の駆動制御部32と、切替部33とを備える。第1の駆動制御部31は、回転電機3の発生するトルク量を指示するトルク指令に基づいて電圧指令を生成し、公知のマトリクスコンバータのPWM制御方法によって電圧指令に応じた電圧を回転電機3に出力するためのスイッチ駆動信号を生成して電力変換部20へ出力する。
なお、電圧指令は、トルク指令に基づいて公知の同期発電機のベクトル制御則によって生成される。また、スイッチ駆動信号によって、電力変換部20は、各双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する複数の片方向スイッチング素子13、14を共にオンにしつつ、電圧指令に応じた電圧をPWM制御により出力し、流れる電流の大きさや通電方向が出力電圧と発電電圧の関係で決まる電力変換を行う。
第2の駆動制御部32は、系統相電圧値VR、VS、VTおよび系統相電流値IR、IS、ITに基づいて、電力変換部20の各双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する複数の片方向スイッチング素子13、14の一部をオンにして電力変換制御を行う。
各双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する複数の片方向スイッチング素子13、14の一部をオンにすることで、通電方向を制御することができる。これにより、電力系統2の電圧が回転電機3の電圧よりも極端に低い停電のような場合であっても、回転電機3と電力系統2の間に大電流が流れ続けることを避け、電流制御を行いつつ電力変換動作を行うことができる。
例えば、第2の駆動制御部32は、電力変換部20の双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子13、14のうち、二次巻線12側のいずれか2つの相の間に電流を流す片方向スイッチング素子を常にオンにする。また、第2の駆動制御部32は、電力変換部20の双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子13、14のうち、回転電機3側のいずれか2つの相の間に電流を流す片方向スイッチング素子を常にオンにする。かかる制御によって、二次巻線12側のどれか2つの相の間および回転電機3のどれか2つの相の間に電流を流し続けることができる。
切替部33は、停電検出部26から出力される停電検出信号Sdに基づいて、電力変換部20へ出力するスイッチ駆動信号を選択して出力する。具体的には、切替部33は、停電検出部26から出力される停電検出信号SdがLowレベルである場合、第1の駆動制御部31によって生成されるスイッチ駆動信号を電力変換部20へ出力する。
一方、切替部33は、停電検出部26から出力される停電検出信号SdがHighレベルである場合、第2の駆動制御部32によって生成されるスイッチ駆動信号を電力変換部20へ出力する。
したがって、電力系統2が低電圧になった場合に、第2の駆動制御部32によって生成されるスイッチ駆動信号によって、双方向スイッチSw1〜Sw6をそれぞれ構成する複数の片方向スイッチング素子13、14の一部をオンにする電力変換制御が行われる。これにより、電力系統2が低電圧になった場合でも、電力変換動作を継続することができる。
以下、第2の駆動制御部32の具体的構成の一例について具体的に説明する。図4は、第2の駆動制御部32の具体的構成の一例を示す図である。図4に示すように、第2の駆動制御部32は、有効電流補償部41と、無効電流補償部42と、パルスパターン生成部43とを備える。
まず、有効電流補償部41について説明する。有効電流補償部41は、PQ変換器51と、ローパスフィルタ(LPF)52と、系統有効電流指令器53と、減算器54と、系統有効電流制御器55とを備える。かかる有効電流補償部41は、系統有効電流値が系統有効電流指令IPrefと一致するように、系統位相補償値dθRSTを生成し、生成した系統位相補償値dθRSTをパルスパターン生成部43へ出力する。
PQ変換器51は、系統相電流値IR、IS、ITを固定座標上の直交した2軸のαβ成分へ変換して、α軸方向の系統電流値Iαとβ軸方向の系統電流値Iβとを求める。さらに、PQ変換器51は、αβ軸座標系の成分を、系統位相θRSTに応じて回転する回転座標系の成分へ変換することによって、系統有効電流IPと系統無効電流IQとを求める。
PQ変換器51は、例えば、下記式(1)の演算を行うことで、系統有効電流IPと系統無効電流IQとを求める。
LPF52は、系統有効電流IPから高周波成分を除去して減算器54へ出力する。減算器54は、系統有効電流指令器53から出力される系統有効電流指令IPrefからLPF52の出力を減算することによって、系統有効電流指令IPrefと系統有効電流IPとの偏差である系統有効電流偏差を演算し、系統有効電流制御器55へ出力する。
系統有効電流制御器55は、例えば、PI(比例積分)制御器から構成され、系統有効電流偏差がゼロとなるように比例積分演算を行うことによって、系統位相補償値dθRSTを生成する。ここでは、系統有効電流指令IPrefは、ゼロに設定されており、系統有効電流制御器55は、系統有効電流IPがゼロとなるように系統位相補償値dθRSTを生成する。
次に、無効電流補償部42について説明する。無効電流補償部42は、ローパスフィルタ(LPF)61と、系統無効電流指令器62と、減算器63と、系統無効電流制御器64とを備える。かかる無効電流補償部42は、系統無効電流値が系統無効電流指令IQrefと一致するように、発電機位相補正値dθUVWを生成し、生成した発電機位相補正値dθUVWをパルスパターン生成部43へ出力する。
減算器63は、系統無効電流指令器62から出力される系統無効電流指令IQrefからLPF61の出力を減算することによって、系統無効電流指令IQrefと系統無効電流IQとの偏差である系統無効電流偏差を演算し、系統無効電流制御器64へ出力する。
系統無効電流制御器64は、例えば、PI制御器から構成され、系統無効電流偏差がゼロとなるように比例積分演算を行うことによって、発電機位相補正値dθUVWを生成する。系統無効電流指令IQrefは、例えば、系統電圧値Vaに応じた値とすることができる。
図5は、系統無効電流指令IQrefと系統電圧値Vaとの関係の一例を示す図である。図5に示すように、系統無効電流指令器62は、系統電圧値Vaが第2閾値である電圧値V2を超え、かつ第1閾値である電圧値V1以下の領域では、系統電圧値Vaの増加に伴い直線的に減少する系統無効電流指令IQrefを生成する。
また、系統無効電流指令器62は、系統電圧値Vaが第2閾値である電圧値V2以下の場合に、最大値となり、第1閾値である電圧値V1を超える領域では、ゼロ値となる系統無効電流指令IQrefを生成する。なお、系統無効電流指令IQrefと系統電圧値Vaとの関係は、図5に示す例に限定するものではなく、異なる関係であってもよい。
次に、図4に示すパルスパターン生成部43について説明する。パルスパターン生成部43は、系統相電圧値VR、VS、VT、回転位置θG、系統位相補償値dθRST、発電機位相補正値dθUVW、停電検出信号Sdに基づき、電力変換部20の双方向スイッチSw1〜Sw6を駆動するスイッチ駆動信号を生成する。
パルスパターン生成部43は、系統周波数検出器70と、保持器71と、積分器72と、加算器73と、発電機位相生成器74と、加算器75とを備える。また、パルスパターン生成部43は、系統パルスパターン生成器76と、発電機パルスパターン生成器77と、GeGrスイッチ駆動信号生成器78と、GrGeスイッチ駆動信号生成器79とを備える。
系統周波数検出器70は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)であり、系統相電圧値VR、VS、VTに基づき、電力系統2の電圧周波数と同期した系統周波数fRSTを出力する。
保持器71は、停電検出信号SdがLowレベルからHighレベルに変化したタイミングで、系統周波数検出器70から出力される系統周波数fRSTを保持し、HighレベルからLowレベルに変化したタイミングで、系統周波数fRSTの保持を解除する。
積分器72は、保持器71から出力される系統周波数fRSTを積分し、系統位相θRSTを生成し、有効電流補償部41および加算器73へ出力する。加算器73は、系統位相θRSTに系統位相補償値dθRSTを加算して系統補正位相θRST’を生成し、生成した系統補正位相θRST’を系統パルスパターン生成器76へ出力する。
発電機位相生成器74は、回転位置θGに回転電機3の極対数を掛け算することにより、発電機位相θUVWを生成し、加算器75へ出力する。加算器75は、発電機位相θUVWに発電機位相補正値dθUVWを加算して発電機補正位相θUVW’を生成し、生成した発電機補正位相θUVW’を発電機パルスパターン生成器77へ出力する。
パルスパターン生成部43は、図6に示す電流形インバータモデルを用いてスイッチ駆動信号を生成する。図6は、電流形インバータモデルを示す図である。
図6に示す電流形インバータモデル80は、コンバータ81とインバータ82を備えるモデルである。コンバータ81は、電力系統2のR相、S相、T相にフルブリッジ接続された複数のスイッチング素子から構成される。かかるコンバータ81の各スイッチング素子は、スイッチ駆動信号Srp、Ssp、Stp、Srn、Ssn、Stn(以下、「スイッチ駆動信号Srp〜Stn」と記載する)によって駆動される。
インバータ82は、回転電機3のU相、V相、W相にフルブリッジ接続された複数のスイッチング素子から構成される。かかるインバータ82の各スイッチング素子は、スイッチ駆動信号Sup、Svp、Swp、Sun、Svn、Swn(以下、「スイッチ駆動信号Sup〜Swn」と記載する)によって駆動される。
図7は、系統パルスパターン生成器76、GeGrスイッチ駆動信号生成器78およびGrGeスイッチ駆動信号生成器79の構成を示す図である。図7に示すように、系統パルスパターン生成器76は、加算器90a〜90cと、パターン生成器91a〜91cとを備える。
加算器90a〜90cは、多重変圧器10の一次巻線11と二次巻線12の間の電圧位相差(例えば、表1参照)に応じた位相を加算し、加算結果をそれぞれパターン生成器91a〜91cへ出力する。具体的には、加算器90aは、系統補正位相θRST’に対して0°の位相を加算し、加算器90bは、系統補正位相θRST’に対して20°の位相を加算し、加算器90cは、系統補正位相θRST’に対して40°の位相を加算する。
なお、上述のように、一次巻線11と二次巻線12の間の電圧位相差は、表1に示す例に限定されない。例えば、一次巻線11と二次巻線12a〜12cとの位相差を10°、一次巻線11と二次巻線12d〜12fとの位相差を30°、一次巻線11と二次巻線12g〜12hとの位相差を50°としてもよい。この場合、加算器90aは、系統補正位相θRST’に対して10°の位相を加算し、加算器90bは、系統補正位相θRST’に対して30°の位相を加算し、加算器90cは、系統補正位相θRST’に対して50°の位相を加算する。
パターン生成器91a〜91cは、加算器90a〜90cの加算結果に基づき、各二次巻線12の電圧位相θrst1〜θrst3に対して120°通電の電流を流すコンバータ81のスイッチ駆動信号Srp〜Stnのパターンを生成する。パターン生成器91a〜91cは互いに同一の構成である。具体的には、パターン生成器91aは、加算器90aの加算結果に基づき、スイッチ駆動信号Srp1、Ssp1、Stp1、Srn1、Ssn1、Stn1(以下、「スイッチ駆動信号Srp1〜Stn1」と記載する)を生成する。
また、パターン生成器91bは、加算器90bの加算結果に基づき、スイッチ駆動信号Srp2、Ssp2、Stp2、Srn2、Ssn2、Stn2(以下、「スイッチ駆動信号Srp2〜Stn2」と記載する)を生成する。また、パターン生成器91cは、加算器90cの加算結果に基づき、スイッチ駆動信号Srp3、Ssp3、Stp3、Srn3、Ssn3、Stn3(以下、「スイッチ駆動信号Srp3〜Stn3」と記載する)を生成する。
図8は、二次巻線12a〜12cのr1相、s1相およびt1相の電圧位相θrst1とスイッチ駆動信号Srp1〜Stn1との関係を示す図であり、電圧位相θrst1に対して90°進んだ120°通電の電流を流すための両者の関係を表すものである。
系統補正位相θRST’は、系統有効電流IPがゼロとなるように求められた系統位相補償値dθRSTが系統位相θRSTに加算されて生成される。そのため、系統パルスパターン生成器76は、系統補正位相θRST’に基づき、スイッチ駆動信号Srp1〜Stn1等を生成することにより、二次巻線12側に90°進みでかつ有効電流がゼロである無効電流を流すことができる。
系統パルスパターン生成器76は、r1相、s1相およびt1相のうちいずれか2つの相の間に電流を流す片方向スイッチング素子を常にオンにするようにスイッチ駆動信号Srp1〜Stn1を生成する。例えば、0°≦θrst1<30°、330°≦θrst1<360°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Stn1、Ssp1がHighレベルであり、その他はLowレベルである。これにより、t1相とs1相との間に電流が流れる。
同様に、30°≦θrst1<90°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Srn1、Ssp1がHighレベルであり、r1相とs1相との間に電流が流れる。90°≦θrst1<150°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Srn1、Stp1がHighレベルであり、r1相とt1相との間に電流が流れる。150°≦θrst1<210°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Ssn1、Stp1がHighレベルであり、s1相とt1相との間に電流が流れる。
210°≦θrst1<270°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Ssn1、Srp1がHighレベルであり、s1相とr1相との間に電流が流れる。270°≦θrst1<330°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Stn1、Srp1がHighレベルであり、t1相とr1相との間に電流が流れる。このように、系統パルスパターン生成器76は、電圧位相θrst1に対して90°進んだ位相の電流が二次巻線12a〜12cにそれぞれ流れるようにパルスパターンを生成する。
スイッチ駆動信号Srp2〜Stn2は、スイッチ駆動信号Srp1〜Stn1に対して位相が20°進んだ信号であり、電圧位相θrst2に対して90°進んだ位相の電流を二次巻線12d〜12fにそれぞれ流すパルスパターンである。
また、スイッチ駆動信号Srp3〜Stn3は、スイッチ駆動信号Srp1〜Stn1に対して位相が40°進んだ信号であり、電圧位相θrst3に対して90°進んだ位相の電流を二次巻線12g〜12iにそれぞれ流すパルスパターンである。
このように、二次巻線12a〜12iにそれぞれ90°進みでかつ有効電流がゼロである無効電流を流すことができ、これにより、電力系統2側にも系統有効電流IPがゼロである無効電流を流すことができる。
発電機パルスパターン生成器77は、発電機補正位相θUVW’に応じたスイッチ駆動信号Sup〜Swnを生成する。図9は、発電機位相θUVWとスイッチ駆動信号Sup〜Swnとの関係を示す図である。
発電機パルスパターン生成器77は、発電機位相θUVWに対して120°通電の電流を流すインバータ82のスイッチ駆動信号Sup〜Swnのパターンを有し、発電機補正位相θUVW’に応じてスイッチ駆動信号Sup〜Swnを出力する。
発電機補正位相θUVW’は、偏差である系統無効電流偏差がゼロとなるように求められた発電機位相補正値dθUVWが発電機位相θUVWに加算されて求められる。そのため、発電機パルスパターン生成器77は、発電機補正位相θUVW’を基準とすることで、図9に示すように、発電機位相θUVWに対して、90°−dθUVW遅れた電流が流れるように、スイッチ駆動信号Sup〜Swnを出力する。これにより、系統無効電流指令IQrefと等しい大きさの無効電流を電力系統2側に流すことができる。
発電機パルスパターン生成器77は、回転電機3側のいずれか2つの相の間に電流を流すスイッチング素子を常にオンにするようにスイッチ駆動信号Sup〜Swnを出力する。例えば、0°≦θUVW−dθUVW<30°、330°≦θUVW−dθUVW<360°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Swp、SvnがHighレベルであり、その他はLowレベルである。これにより、W相とV相との間に電流が流れる。
同様に、30°≦θUVW−dθUVW<90°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Sup、SvnがHighレベルであり、U相とV相との間に電流が流れる。90°≦θUVW−dθUVW<150°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Sup、SwnがHighレベルであり、U相とW相との間に電流が流れる。150°≦θUVW−dθUVW<210°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Svp、SwnがHighレベルであり、V相とW相との間に電流が流れる。
210°≦θUVW−dθUVW<270°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Svp、SunがHighレベルであり、V相とU相との間に電流が流れる。270°≦θUVW−dθUVW<330°の範囲にある場合、スイッチ駆動信号Swp、SunがHighレベルであり、W相とU相との間に電流が流れる。このように、発電機パルスパターン生成器77は、発電機位相θUVWに対して、90°−dθUVW遅れた電流が流れるようにパルスパターンを生成する。
GeGrスイッチ駆動信号生成器78は、図7に示すように、信号生成器92a〜92cを備える。信号生成器92a〜92cは、パターン生成器91a〜91cから出力されるスイッチ駆動信号Srni、Ssni、Stni(1≦i≦3)と発電機パルスパターン生成器77から出力されるスイッチ駆動信号Sup〜Swnに基づき、下記式(2)を用いて、スイッチ駆動信号S1r、S1s、S1t、S2r、S2s、S2tを生成する。スイッチ駆動信号S1r、S1s、S1t、S2r、S2s、S2tは、図2に示すように、双方向スイッチSw1〜Sw6のうち、回転電機3側から二次巻線12側へ電流を流す片方向スイッチング素子13を駆動する信号である。下記式(2)において「*」は、「u」、「v」または「w」である。
具体的には、信号生成器92aは、パターン生成器91aから出力されるスイッチ駆動信号Srn1、Ssn1、Stn1とスイッチ駆動信号Sup、Sunに基づき、下記式(3)を用いて、U相のスイッチ駆動信号S1r、S1s、S1t、S2r、S2s、S2t(以下、SAu1と記載する)を生成する。
また、信号生成器92aは、パターン生成器91aから出力されるスイッチ駆動信号Srn1、Ssn1、Stn1とスイッチ駆動信号Svp、Svnに基づき、下記式(4)を用いて、V相のスイッチ駆動信号S1r、S1s、S1t、S2r、S2s、S2t(以下、SAv1と記載する)を生成する。
また、信号生成器92aは、パターン生成器91aから出力されるスイッチ駆動信号Srn1、Ssn1、Stn1とスイッチ駆動信号Swp、Swnに基づき、下記式(5)を用いて、W相のスイッチ駆動信号S1r、S1s、S1t、S2r、S2s、S2t(以下、SAw1と記載する)を生成する。
信号生成器92bは、信号生成器92aと同様の構成を有する。信号生成器92bは、信号生成器92aと同様に、パターン生成器91bから出力されるスイッチ駆動信号Srn2、Ssn2、Stn2とスイッチ駆動信号Sup〜Swnに基づき、上記(3)〜(5)を用いて、U相、V相およびW相のそれぞれのスイッチ駆動信号S1r、S1s、S1t、S2r、S2s、S2t(以下、それぞれSAu2、SAv2、SAw2と記載する)を生成する。なお、上記(3)〜(5)における「Srn1」、「Ssn1」、「Stn1」にそれぞれスイッチ駆動信号Srn2、Ssn2、Stn2の各値を設定する。
信号生成器92cは、信号生成器92aと同様の構成を有する。信号生成器92cは、信号生成器92aと同様に、パターン生成器91cから出力されるスイッチ駆動信号Srn3、Ssn3、Stn3とスイッチ駆動信号Sup〜Swnに基づき、上記(3)〜(5)を用いて、U相、V相およびW相のそれぞれのスイッチ駆動信号S1r、S1s、S1t、S2r、S2s、S2t(以下、それぞれSAu3、SAv3、SAw3と記載する)を生成する。なお、上記(3)〜(5)における「Srn1」、「Ssn1」、「Stn1」にそれぞれスイッチ駆動信号Srn3、Ssn3、Stn3の各値を設定する。
GrGeスイッチ駆動信号生成器79は、図7に示すように、信号生成器93a〜93cを備える。信号生成器93a〜93cは、パターン生成器91a〜91cから出力されるスイッチ駆動信号Srpi、Sspi、Stpi(1≦i≦3)と発電機パルスパターン生成器77から出力されるスイッチ駆動信号Sup〜Swnに基づき、上記式(2)を用いて、スイッチ駆動信号Sr1、Ss1、St1、Sr2、Ss2、St2を生成する。スイッチ駆動信号Sr1、Ss1、St1、Sr2、Ss2、St2は、図2に示すように、双方向スイッチSw1〜Sw6のうち二次巻線12側から回転電機3側へ電流を流す片方向スイッチング素子14を駆動する信号である。
具体的には、信号生成器93aは、パターン生成器91aから出力されるスイッチ駆動信号Srp1、Ssp1、Stp1とスイッチ駆動信号Sup、Sunに基づき、下記式(6)を用いて、U相のスイッチ駆動信号Sr1、Ss1、St1、Sr2、Ss2、St2(以下、SBu1と記載する)を生成する。
また、信号生成器93aは、パターン生成器91aから出力されるスイッチ駆動信号Srp1、Ssp1、Stp1とスイッチ駆動信号Svp、Svnに基づき、下記式(7)を用いて、V相のスイッチ駆動信号Sr1、Ss1、St1、Sr2、Ss2、St2(以下、SBv1と記載する)を生成する。
また、信号生成器93aは、パターン生成器91aから出力されるスイッチ駆動信号Srp1、Ssp1、Stp1とスイッチ駆動信号Swp、Swnに基づき、下記式(8)を用いて、W相のスイッチ駆動信号Sr1、Ss1、St1、Sr2、Ss2、St2(以下、SBw1と記載する)を生成する。
信号生成器93bは、信号生成器93aと同様の構成を有する。信号生成器93bは、信号生成器93aと同様に、パターン生成器91bから出力されるスイッチ駆動信号Srp2、Ssp2、Stp2とスイッチ駆動信号Sup〜Swnに基づき、上記(6)〜(8)を用いて、U相、V相およびW相のそれぞれのスイッチ駆動信号Sr1、Ss1、St1、Sr2、Ss2、St2(以下、それぞれSBu2、SBv2、SBw2と記載する)を生成する。なお、上記(6)〜(8)における「Srp1」、「Ssp1」、「Stp1」にそれぞれスイッチ駆動信号Srp2、Ssp2、Stp2の各値を設定する。
信号生成器93cは、信号生成器93aと同様の構成を有する。信号生成器93cは、信号生成器93aと同様に、パターン生成器91cから出力されるスイッチ駆動信号Srp3、Ssp3、Stp3とスイッチ駆動信号Sup〜Swnに基づき、上記(6)〜(8)を用いて、U相、V相およびW相のそれぞれのスイッチ駆動信号Sr1、Ss1、St1、Sr2、Ss2、St2(以下、それぞれSBu3、SBv3、SBw3と記載する)を生成する。なお、上記(6)〜(8)における「Srp1」、「Ssp1」、「Stp1」にそれぞれスイッチ駆動信号Srp3、Ssp3、Stp3の各値を設定する。
このようにU相、V相およびW相のそれぞれについて生成されたスイッチ駆動信号SAu1〜3、SAv1〜3、SAw1〜3、SBu1〜3、SBv1〜3、SBw1〜3は、パルスパターン生成部43から電力変換部20へ出力される。
具体的には、図1に示すように、U相のスイッチ駆動信号SAu1〜3、SBu1〜3は、U相の電力変換セル部を構成する電力変換セル21a、21d、21gへ出力される。また、V相のスイッチ駆動信号SAv1〜3、SBv1〜3は、V相の電力変換セル部を構成する電力変換セル21b、21e、21hへ出力される。また、W相のスイッチ駆動信号SAw1〜3、SBw1〜3は、W相の電力変換セル部を構成する電力変換セル21c、21f、21iへ出力される。
これにより、電力変換部20の双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子13、14のうち、二次巻線12側のいずれか2つの相の間に電流を流す片方向スイッチング素子が常にオンにされ、回転電機3側のいずれか2つの相の間に電流を流す片方向スイッチング素子が常にオンにされる。
ここで、図10〜図13を参照して、制御部30による双方向スイッチSw1〜Sw6の制御例について説明する。なお、図10〜図13においては、理解を容易にするために、双方向スイッチSw1〜Sw6をそれぞれ一つの記号で図示している。また、一例として、電力変換セル21a〜21cに対する制御を説明する。
図10は、二次巻線12側の電圧が図8におけるタイミングta1にあり、回転電機3側の電圧が図9におけるタイミングtb1にある場合の、制御部30による双方向スイッチSw1〜Sw6の制御状態を示す図である。
二次巻線12側の電圧が図8におけるタイミングta1にある場合、スイッチ駆動信号Srn1、Ssp1がHighレベルであり、回転電機3側の電圧が図9におけるタイミングtb1にある場合、スイッチ駆動信号Sup、SvnがHighレベルである。
上記式(2)から、U相の電力変換セル21aに対するスイッチ駆動信号S1r、Ss2がHighレベルとなり、V相の電力変換セル21bに対するスイッチ駆動信号Ss1、S2rがHighレベルとなる。したがって、電力変換部20に流れる電流は図10に示すように表すことができる。
なお、Highレベルのスイッチ駆動信号S1rは、双方向スイッチSw1を構成する片方向スイッチング素子13をオンにする信号であり、Highレベルのスイッチ駆動信号Ss2は、双方向スイッチSw5を構成する片方向スイッチング素子14をオンにする信号である。また、Highレベルのスイッチ駆動信号Ss1は、双方向スイッチSw2を構成する片方向スイッチング素子14をオンにする信号であり、Highレベルのスイッチ駆動信号S2rは、双方向スイッチSw4を構成する片方向スイッチング素子13をオンにする信号である。
図11は、二次巻線12側の電圧が図8におけるタイミングta1の状態であり、回転電機3側の電圧が図9に示すタイミングtb2の状態である場合の、制御部30による双方向スイッチSw1〜Sw6の制御状態を示す図である。図10に示す例では、回転電機3側の電圧がタイミングtb1の状態であるが、図11に示す例では、回転電機3側の電圧がタイミングtb2の状態である点で異なる。
回転電機3側の電圧が図9に示すタイミングtb2の状態である場合、スイッチ駆動信号Sup、SwnがHighレベルである。したがって、図9に示すタイミングtb1ではスイッチ駆動信号SvnがHighレベルであったが、図9に示すタイミングtb2ではスイッチ駆動信号SwnがHighレベルである。
この場合、上記式(2)から、W相の電力変換セル21cに対するスイッチ駆動信号Ss1、S2rがHighレベルとなり、電力変換部20に流れる電流は図11に示すように表すことができる。
図12は、二次巻線12側の電圧が図8におけるタイミングta1の状態であり、回転電機3側の電圧が図9に示すタイミングtb3の状態である場合の、制御部30による双方向スイッチSw1〜Sw6の制御状態を示す図である。図11に示す例では、回転電機3側の電圧がタイミングtb2の状態であるが、図12に示す例では、回転電機3側の電圧がタイミングtb3の状態である点で異なる。
回転電機3側の電圧が図9に示すタイミングtb3の状態である場合、スイッチ駆動信号Svp、SwnがHighレベルである。したがって、図9に示すタイミングtb2ではスイッチ駆動信号SupがHighレベルであったが、図9に示すタイミングtb3ではスイッチ駆動信号SvpがHighレベルである。
この場合、上記式(2)から、V相の電力変換セル21bに対するスイッチ駆動信号Ss1、S2rがHighレベルとなり、電力変換部20に流れる電流は図12に示すように表すことができる。
図13は、二次巻線12の電圧が図8におけるタイミングta2の状態であり、回転電機3側の電圧が図9に示すタイミングtb3の状態である場合の、制御部30による双方向スイッチSw1〜Sw6の制御状態を示す図である。図12に示す例では、二次巻線12の電圧がタイミングta1の状態であるが、図13に示す例では、二次巻線12側の電圧がタイミングta2の状態である点で異なる。
この場合、上記式(2)から、V相の電力変換セル21bに対するスイッチ駆動信号S1r、St2がHighレベルとなり、W相の電力変換セル21cに対するスイッチ駆動信号St1、S2rがHighレベルとなる。したがって、電力変換部20に流れる電流は図13に示すように表すことができる。
なお、Highレベルのスイッチ駆動信号St2は、双方向スイッチSw6を構成する片方向スイッチング素子14をオンにする信号であり、Highレベルのスイッチ駆動信号St1は、双方向スイッチSw3を構成する片方向スイッチング素子14をオンにする信号である。
このように、U相、V相およびW相の電力変換セル21a〜21cのうち2つの電力変換セルにおいて、スイッチ駆動信号Sr1、Ss1、St1、S1r、S1s、S1tのいずれか一つが常にHighレベルとなり、また、スイッチ駆動信号Sr2、Ss2、St2、S2r、S2s、S2tのいずれか一つが常にHighレベルとなる。
したがって、電力変換部20において、回転電機3側か二次巻線12側に電流を流すための片方向スイッチング素子13のいずれか2つが常にオンになり、二次巻線12側から回転電機3側に電流を流すための片方向スイッチング素子14のいずれか2つが常にオンになる。電力変換セル21d〜21f、および、電力変換セル21g〜21iも、それぞれ電力変換セル21a〜21cと同様に制御される。
なお、電力変換セル21d〜21fに入力される電圧は、二次巻線12d〜12fのr2相、s2相およびt2相の電圧であり、スイッチ駆動信号Srp1〜Stn1よりも位相が20°進んだスイッチ駆動信号Srp2〜Stn2により電力変換セル21d〜21fが制御される。また、電力変換セル21d〜21fに入力される電圧は、二次巻線12g〜12iのr3相、s3相およびt3相の電圧であり、スイッチ駆動信号Srp1〜Stn1よりも位相が40°進んだスイッチ駆動信号Srp3〜Stn3により電力変換セル21g〜21iが制御される。
以上のように、第1の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1の制御部30は、第1の駆動制御部31と、第2の駆動制御部32とを備える。第1の駆動制御部31は、複数の双方向スイッチSw1〜Sw6をそれぞれ構成する複数の片方向スイッチング素子13、14を共にオンにして行う電圧制御により電力変換を行う。一方、第2の駆動制御部32は、双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する複数の片方向スイッチング素子13、14の一部をオンにして行う電流制御によって電力変換を行う。
そして、直列多重マトリクスコンバータ1は、電力系統2の電圧が所定値を超える場合に、第1の駆動制御部31によって電力変換制御を行い、電力系統2の電圧が所定値以下である場合に、第2の駆動制御部32によって電力変換制御を行う。これにより、直列多重マトリクスコンバータ1は、電力系統2が低電圧になった場合でも、電力系統2側に無効電流を流しながら電力変換動作を継続することができる。
発電システムでは、電力系統2が停電などにより低電圧になった場合に、電力系統2へ無効電力を供給することが要求される場合があり、本実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1は、かかる要求に適切に対応することが可能となる。
なお、電力系統2の管理者側から無効電力の大きさを規定する系統無効電流指令IQrefが送信される場合、かかる系統無効電流指令IQrefを系統無効電流指令器62から減算器63へ出力するようにしてもよい。このようにすることで、外部から電力系統2側の無効電流の大きさを設定することができる。
また、第2の駆動制御部32は、電流形インバータモデル80をスイッチングモデルとして採用している。コンバータ81には電圧波形から90°進んだ電流を流す120°通電のスイッチングパターンが与えられ、インバータ82には系統無効電流指令IQrefに応じた大きさの無効電流を流すための位相をもった120°通電のスイッチングパターンが与えられる。コンバータ81に与えられるスイッチングパターンとインバータ82に与えられるスイッチングパターンは合成されて双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子13、14に対するスイッチ駆動信号SAとして出力される。
かかる処理により、双方向スイッチSw1〜Sw6を構成する片方向スイッチング素子13、14に対するスイッチ駆動信号SAとして出力されることから、系統無効電流指令IQrefに応じた大きさの無効電流を電力系統2に容易且つ精度よく流すことができる。
また、上述した実施形態では、120°通電のスイッチングパターンを用いて電力変換部20を駆動するようにしたが、制御方法は120°通電のスイッチングパターンに限られるものではない。すなわち、片方向スイッチング素子13、14を個別に制御する電流制御を行うことによって電力系統2側に無効電流を流しながら電力変換動作を継続するものであればよく、種々の変更が可能である。
また、上述した実施形態では、回転電機3を同期発電機として説明したが、回転電機3を誘導発電機としてもよい。回転電機3を誘導発電機とする場合、直列多重マトリクスコンバータ1は、例えば、以下のように構成される。
停電発生後において誘導発電機は残留磁束による発電電圧が発生しており、位置検出器4は、誘導発電機の回転速度を検出する。制御部30は、公知の誘導機のベクトル制御則に従って、誘導発電機に対するトルク指令を略ゼロとした上で、かかるトルク指令に基づきすべり周波数指令を生成し、位置検出器4の検出した回転速度に加算して、出力周波数指令を生成する。
そして、制御部30は、出力周波数指令を積分することにより発電機位相θUVWを生成し、生成した発電機位相θUVWを発電機位相補正値dθUVWに加算することで、発電機補正位相θUVW’を生成する。このようにすることで、電力系統2が低電圧になった場合でも、電力系統2側に無効電流を流しながら電力変換動作を継続することができる。
また、上述した実施形態では、回転電機3として発電機を適用した例を説明したが回転電機3として電動機を適用することもでき、電力系統2の電圧が低電圧になった場合であっても、電動機の速度起電力によって運転を継続することができる。
すなわち、電力系統2の電圧が低電圧になった場合、電力系統2から電動機への電力供給が困難になるが、電動機の回転子は減速しつつも回転状態にある。そのため、かかる回転によって発生する起電力を、例えば、無効電力として電力系統2へ供給することで運転を継続することができる。
また、上述した実施形態では、有効電流補償部41の一例として、図4に示す構成を説明したが、有効電流補償部41は、テーブルを用いた構成であってもよい。すなわち、有効電流補償部41において、系統有効電流IPおよび系統無効電流IQと系統位相補償値dθRSTとの関係を示す二次元テーブルを記憶する記憶部を設け、かかるテーブルから系統相電流値IR、IS、ITに基づいて、系統位相補償値dθRSTを出力してもよい。また、dθRST=−tan−1(IQ/IP)の演算により系統位相補償値dθRSTを求めて出力してもよい。
また、上述した実施形態では、無効電流補償部42の一例として、図4に示す構成を説明したが、無効電流補償部42は、テーブルを用いた構成であってもよい。すなわち、無効電流補償部42において、系統無効電流指令IQrefと発電機位相補正値dθUVWとの関係を示すテーブルを記憶する記憶部を設け、かかるテーブルから系統無効電流指令IQrefに基づいて、発電機位相補正値dθUVWを出力してもよい。
また、上述した実施形態では、U相、V相およびW相の電力変換セル部の構成をそれぞれ電力変換セル21を直列に3段接続した構成としたが、電力変換セル21を直列に2段接続した構成や電力変換セル21を直列に4段以上接続した構成であってもよい。
また、上述した実施形態において、制御部30の一部の機能を電力変換セル21に設けるようにしてもよい。例えば、各電力変換セル21毎に、第2の駆動制御部32および切替部33の機能の一部または全部を備えるようにしてもよい。
また、上述した実施形態において、系統パルスパターン生成器76は、各二次巻線12の電圧位相θrst1〜θrst3に対して90°遅れた120°通電の電流を流すスイッチ駆動信号Srp1〜3〜Stn1〜3を生成することもできる。これにより、電力系統2側に90°遅れでかつ系統有効電流IPがゼロである無効電流を流すことができる。なお、二次巻線12側に90°遅れによる無効電流を流すのか90°進みによる無効電流を流すのかは、例えば、外部から系統パルスパターン生成器76への設定によって選択することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータについて説明する。第1の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1は、系統位相θRSTに系統位相補償値dθRSTを加算して生成された系統補正位相θRST’に基づき、スイッチ駆動信号Srp1〜Stn1等を生成する。一方、第2の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータは、二次巻線12の電圧位相θrst1〜θrst3に系統位相補償値dθRSTをそれぞれ加算して生成された補償位相θrst1’〜θrst3’に基づき、スイッチ駆動信号Srp1〜Stn1等を生成する。
以下、図14〜図16を参照して第2の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータについて具体的に説明する。図14は、第2の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1Aの構成例を示す図である。なお、上述した第1の実施形態の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付し、第1の実施形態と重複する説明については適宜、省略する。
図14に示すように、第2の実施形態に係る直列多重マトリクスコンバータ1Aは、二次巻線12a、12d、12gの電圧を検出する電圧検出部94a〜94cを備える。具体的には、電圧検出部94aは、二次巻線12aと多重変圧器10との間に設けられ、二次巻線12aのr1相、s1相およびt1相の瞬時電圧Vr1、Vs1、Vt1(以下、「二次側電圧値Vr1、Vs1、Vt1」と記載する)を検出する。
また、電圧検出部94bは、二次巻線12dと多重変圧器10との間に設けられ、二次巻線12dのr2相、s2相およびt2相の瞬時電圧Vr2、Vs2、Vt2(以下、「二次側電圧値Vr2、Vs2、Vt2」と記載する)を検出する。電圧検出部94cは、二次巻線12gと多重変圧器10との間に設けられ、二次巻線12gのr3相、s3相およびt3相の瞬時電圧Vr3、Vs3、Vt3(以下、「二次側電圧値Vr3、Vs3、Vt3」と記載する)を検出する。
電圧検出部94a〜94cによって検出された二次側電圧値Vr1、Vs1、Vt1、Vr2、Vs2、Vt2、Vr3、Vs3、Vt3は、制御部30Aの第2の駆動制御部32Aへ出力される。
図15は、第2の駆動制御部32Aの具体的構成の一例を示す図である。図15に示すように、第2の駆動制御部32Aのパルスパターン生成部43Aは、二次側位相検出器95a〜95cを備える。二次側位相検出器95a〜95cは、例えば、PLLと積分器によって構成される。
二次側位相検出器95aは、PLLにより二次側電圧値Vr1、Vs1、Vt1からr1相、s1相およびt1相の電圧周波数と同期した二次側周波数を検出し、かかる二次側周波数を積分器で積分して電圧位相θrst1を生成し、出力する。また、二次側位相検出器95bは、PLLにより二次側電圧値Vr2、Vs2、Vt2からr2相、s2相およびt2相の電圧周波数と同期した二次側周波数を検出し、かかる二次側周波数を積分器で積分して電圧位相θrst2を生成し、出力する。
また、二次側位相検出器95cは、PLLにより二次側電圧値Vr3、Vs3、Vt3からr3相、s3相およびt3相の電圧周波数と同期した二次側周波数を検出し、かかる二次側周波数を積分器で積分して電圧位相θrst3を生成し、出力する。
二次側位相検出器95a〜95cから出力される電圧位相θrst1〜θrst3は、系統パルスパターン生成器76Aへ入力される。系統パルスパターン生成器76Aは、電圧位相θrst1〜θrst3と系統位相補償値dθRSTとに基づき、スイッチ駆動信号Srp1〜Stn1等を生成する。なお、第2の駆動制御部32Aは、第1の実施形態に係る第2の駆動制御部32とは異なり、系統補正位相θRST’を生成する加算器73を有していない。
図16は、図15に示す系統パルスパターン生成器76A、GeGrスイッチ駆動信号生成器78およびGrGeスイッチ駆動信号生成器79の構成を示す図である。図16に示すように、系統パルスパターン生成器76Aは、加算器96a〜96cと、パターン生成器91a〜91cとを備える。
加算器96aは、電圧位相θrst1を系統位相補償値dθRSTに加算して補償位相θrst1’を求め、パターン生成器91aへ出力する。加算器96bは、電圧位相θrst2を系統位相補償値dθRSTに加算して補償位相θrst2’を求め、パターン生成器91bへ出力する。加算器96cは、電圧位相θrst3を系統位相補償値dθRSTに加算して補償位相θrst3’を求め、パターン生成器91cへ出力する。
パターン生成器91a〜91cは、第1の実施形態のパターン生成器91a〜91cと同一の構成である。したがって、かかるパターン生成器91a〜91cは、加算器96a〜96cから出力される補償位相θrst1’〜θrst3’に基づき、各二次巻線12の電圧位相θrst1〜θrst3に対して120°通電の電流を流すスイッチ駆動信号Srp1〜Stn1、Srp2〜Stn2、Srp3〜Stn3のパターンを生成する。
このように、第2の実施形態では、二次巻線12の電圧位相θrst1〜θrst3に系統位相補償値dθRSTを加算して求めた補償位相θrst1’〜θrst3’に基づいてスイッチ駆動信号Srp1〜Stn1等のパターンが生成される。そのため、例えば、多重変圧器10の特性に基づいた設定を行うことなく、制御が可能となる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。