JP5570883B2 - 超音波ホーン - Google Patents

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この発明は超音波ホーンに関し、より詳細にはホーン表面の損耗を防ぐことにより高寿命化した超音波ホーンに関する。
超音波を用いた産業界での適用事例は多数存在し、超音波により樹脂間界面で発生した熱による樹脂の溶着、また、振動により金属表面の酸化皮膜を破り原子間結合させる接合、キャビテーションを利用した超音波洗浄、魚群探知用ソナー、非破壊検査に用いる超音波探傷といったさまざまな利用方法が実用化されている。そして、これらの超音波装置において外部への超音波の伝達部の作用は超音波ホーンが担っている。
超音波装置はどのような利用方法においても、まず発振子にて振幅を起こし、これを超音波ホーンに伝達し最終的に媒体に伝達する。各分野においてそれぞれの用途は様々であるが、長時間使用すると超音波ホーンの表面が損耗し使用不可能に至ることは共通している。
この際、超音波ホーンは、溶着の場合であれば樹脂や金属、洗浄器であれば洗浄剤、探傷であれば水やその他媒体に直接触れるので、超音波振動による磨耗、応力集中、キャビテーション、エロージョン、コロージョンといった外的刺激に常に曝されている。そこで、超音波ホーンの表面損耗が激しい理由は、これら外的刺激によるものであると従来考えられていた。
そのため、長時間に渡る連続的な外的刺激により、超音波ホーンがダメージを受けるという前記の前提に立って、従来、その対策として、様々な試みがされていた。例えば、超音波ホーン材質の検討、超音波ホーン表面に耐摩耗性の高いクロムなどの保護コーティングを行うことなどがなされていた(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)
特開2001−205452号 特開2007−111636号 特開2006−245695号 特開2005−218641号
しかし、前記の従来技術はいずれも単純に外部からの攻撃に対する保護的な意味合いでしかなく、超音波特有のダメージに対する本質的な解決にはなっていなかった。これらの保護による手法はある程度の効果はあるものの、異なる利用用途において十分満足のいく結果とはなっていなかった。
この発明は、上述した従来技術における問題点を解決することを目的として創作されたものである。本願発明者は超音波ホーンの表面損耗が激しい理由は外的刺激によるものであるという従来技術の常識に疑問を持ち、実験を重ねた結果、超音波振動におけるホーンのダメージのメカニズムを解析し、それぞれの個々の用途に応じた対策を施行するのではなく、全ての超音波利用用途通じる本質的なダメージメカニズムを解決することに成功した。
すなわち、この発明の超音波ホーンは、多結晶材料からなる超音波ホーン基材の表面をダイヤモンドライクカーボンからなる皮膜で覆うことにより非晶質化し、ホーン表面における不規則な超音波の集中を防止したことを特徴とする。
また、第2発明として、前記の第1発明の超音波ホーンにおいて、ダイヤモンドライクカーボンの硬度を20Gpa以上、厚みを0.5μm以上とした発明も開示する。
また、第3発明として、前記の第1発明または第2発明の超音波ホーンにおいて、超音波ホーン基材とダイヤモンドライクカーボンの間に、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)、シリコン(Si)から選択した少なくとも1つ以上の皮膜を、溶射により形成した発明も開示する。
第1発明の作用効果は次の通りである。
(1) ダイヤモンドライクカーボンは、ダイヤモンドの結合形態であるsp3結合をもつ微細粒子と、グラファイトの結合形態であるsp2結合をもった微細粒子により形成された非晶質であり、純粋なカーボンからなる物質である(一部水素を含むものもある)。このため、超音波が集中する起点となる結晶欠陥、不純物、結晶粒界、転位といったものが存在せず、超音波が分散され、超音波集中による超音波ホーンへのダメージを減少させる。
(2) ダイヤモンドライクカーボンが低い摩擦係数で且つ高硬度、高弾性ゆえ超音波ホーンと相手材との摺動による超音波ホーンへのダメージが少ない。
(3) ダイヤモンドライクカーボンは酸、アルカリ、溶剤といった化学的ポテンシャルに対し不活性であり、反応しづらく、また、高い電気的絶縁性を持ち、電気化学的にも安定であり、コロージョンによる超音波ホーンへのダメージを減少させる。
前記(1) の発見が、本件が新規発明である所以であり、全ての超音波利用機器、環境においてこのメカニズムを根拠にしたホーンの保護が可能である。通常、超音波ホーンは振動の伝達効率の良い、Ti、Al及びその合金により形成される(一部Feを用いたものも存在する)。これら金属は、多結晶材であり、結晶欠陥(結晶の脱落、転位等)、結晶粒界、不純物による化合物(例えばSi02 )が、ホーン表面に存在し、これらを起点にして超音波の集中が起こる。その結果、このエネルギーの集中により微視的かつ瞬間的に、高い熱が発生し、表面の金属部材を極僅か昇華させてしまう。この事象を積み重ねることにより図2に示すような表面の窪みへと発展する。この写真は樹脂の超音波接合を数千ショット行った後に形成した表面の形状であり、その形態と、窪み内の金属光沢を持った表面状態から、熱による溶融、昇華が起こったことが容易に推測できる。また、窪みの深さは0.5mm程あり、被接合物への窪み形状の転写も無いことから、被接触物との摩耗によるもので無いことは明らかである。図3に被接触物の表面状態を示した。
これに対し、ダイヤモンドライクカーボンを表面にコーティングしたホーンではこのような窪みの形成は起こらない。この理由として、ダイヤモンドライクカーボンはsp3結合(ダイヤモンドの結合状態)とsp2結合(グラファイトの結合状態)を持つナノサイズの原子の集合体が混沌と結合したアモルファスの状態を形成していることが挙げられる。つまり、一般的な金属のように結晶構造を持たないため、ここにまつわる結晶欠陥、結晶粒界、転位等が存在せず、また、物質組成としては純粋なカーボン(水素を含有する場合もあり)であり、ダイヤモンドライクカーボンを形成するに当たっては真空中での気相コーティングであることから他の成分進入による化合物の形成は起きづらい製造方法となる。よって、超音波の集中を起こす起点が存在せず、微視的発熱による溶解昇華が起きず、窪みの発生は起こらないものと推測される。
更に、下地の影響が無視できるほど微視的な表面粗さを測定した場合、つまりダイヤモンドライクカーボン本来の粗さを測定した場合、(例えばAFMを用い、ミクロンエリアでの測定)ダイヤモンドライクカーボンの粗さは他のコーティングと比較し、著しく小さいことが知られており、この場合の平均粗さは数オームストロングであるとされている。これに対し、例えばTiNであれば、100オームストロング以上であり、超音波の集中が起こる起点の要素としては粗さの観点からもダイヤモンドライクカーボンは優れた材料であることが示唆される。
また、ホーン表面は高速で振動するため、被接触物との間で摩擦による凝着が起こり、凝着物が付着するケースが存在する。更にはホーンと凝着物との間で化合物形成が起こり、凝着物及び化合物は超音波集中の起点となることが想像できる。ダイヤモンドライクカーボンの特性として、非凝着性が挙げられ、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングした場合は凝着が著しく起きづらく超音波集中の発生は抑えられる。
これら超音波の集中によるホーンの表面破壊に関する簡便な実証実験として、次の方法が挙げられる。研摩を施し、鏡面化した金属片を、水を入れた超音波洗浄器の超音波発振子上に設置すると、数箇所から泡が連続的に発生し、発生箇所を顕微鏡にて確認するとそこに結晶欠陥、または不純物の存在が確認できる。この場合、超音波の集中が起こす基材の破壊と、水中であるがゆえの超音波集中が水媒体へ伝達によるキャビテーションの発生による基材の破壊であると思われる。同様の条件で、長時間この状態を維持すると、泡の発生部部に小さな窪みが観察できる。一方、ダイヤモンドライクカーボンを同様な試験片上にコーティングし、状態を確認すると、キャビテーションによる泡の発生は確認できず、また、長時間この状態を維持しても、表面に窪みの発生は見られない。
超音波探傷、ソナー、洗浄器などの水中で利用するホーンにも同様な窪みは確認できており、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングすることでその発生を抑えることが可能となる。
前記(2) は、ダイヤモンドライクカーボンが低い摩擦係数で且つ高硬度、高弾性という物理特性を有するため、超音波溶着時の被接合部材とホーン表面との間の振動による摩耗のダメージの軽減が可能となる。また、溶着以外でも、超音波洗浄や、探傷、といった液中での使用用途においても、エロージョン、キャビテーションなど、物理的な外部応力からのホーン表面の保護に有効である。
特に、超音波溶着においては、図1に示すように、超音波発振子の主成分は縦方向の振動であり、この振動により被接合体である樹脂の界面が摩擦熱により融け、接合する。横方向の振動は発振子で発生した振動が、ブースター、ホーンへの伝わる過程で発生する余剰成分であり、全体の振動エネルギーのおよそ10%に相当する。この振動は溶着に寄与する率は低いのに対し、ホーン表面と被接合体との間で、摩擦磨耗を引き起こしホーン表面にダメージを与えてしまう。ここで、摩擦係数が低く、高硬度、高弾性であるダイヤモンドライクカーボンをコーティングすることで、横方向への振動を打ち消し、ホーン表面の磨耗を軽減させる。この際、縦成分の振動は、減衰することなく被接合体に伝達されるため溶着効率を低下させることなく、接合が可能となる。
前記(3) は、ダイヤモンドライクカーボンが化学的に安定であり、かつ非晶質であるゆえ結晶欠陥を形成しないため、表面から母材まで周囲の溶液が浸透することなく、液中におけるコロージョンに対するホーンの保護に有効である。例えば、洗浄液、めっき液、エッチング液などの酸、アルカリ液中での耐性、もしくは、水中下における局部電池形成による電気化学的な腐食に対しても効果的である。
第2発明の作用効果は次の通りである。
ダイヤモンドライクカーボンの硬度はISO14577−1に示された押し込み硬さの測定方法に準拠し、20GPa以上であることが必須条件であり、さらに、30GPa以上であることが望ましい。この範囲であれば、超音波集中によるホーン表面に窪みを形成することなく、長期に渡る連続稼動が可能となる。この実証結果は、発明を実施するための形態の項に示した。
前記の作用のメカニズムは次のように考えられる。ダイヤモンドライクカーボンは前述したようにsp2混成軌道によるグラファイト結合と、sp3混成軌道からなるダイヤモンド結合からなる微細粒子がアモルファス状に形成されたものであり、硬度は、これら微細粒子の比率により決まるといわれている。つまり、ダイヤモンド結合から成る微細粒子の比率が多く、グラファイト結合からなる微細粒子の比率が少ない場合は硬度が高く、ダイヤモンド結合からなる微細粒子の比率が少なく、グラファイト結合からなる微細粒子の比率が多い場合は硬度が低くなる。
また、グラファイトの結合は図4に示すように、平面上にカーボンによる六員環が形成され、これら平面内における結合力はsp2混成軌道の共有結合で非常に強いが、3次元的に見た場合、層同士の結合はファンデルワールス力による弱い力であり、外部から力が加わったとき、容易に層間で移動(滑り)が起こることが知られている。グラファイトの摩擦係数が低い理由もこの層間移動によるものとの説が有力である。
これに対しダイヤモンドの結合は図5に示すように立体形状をしており、共有結合により3次元的に結合されたsp3結合であるため、原始レベルでの移動、滑りを起こす強度的な弱部が存在せず、外部応力に対し容易に変形は起こさない。
sp3結合においては、強度的弱部が存在しないため、超音波の集中が起きづらいが、sp2結合においては上記したように層間の結合力は弱く、強度的弱部となり、ここを起点に超音波集中が起きるのではないかと推測される。また、押し込み硬さが20GPa以下ではsp2の比率が70%以上であることが、XPS、ラマン分光法など物理分析により明らかとなっている。
つまり、硬度が高い場合、sp2が少なく、超音波集中をおこす強度的弱点の存在頻度も低くなるため、超音波集中による微視的な発熱、溶解が起こりづらく、窪み形成が起きづらくなる。このため、長期間に渡る連続使用が可能となる。
ダイヤモンドライクカーボンの膜厚は0.5μm以上であることが必須であり、1.0μm以上であることが望ましい。この検証結果は発明を実施するための形態の項に示した。膜厚の薄いダイヤモンドライクカーボンにおいて、超音波ホーン表面における窪みの発生が起こるメカニズムはまだ良く分かっていないが、薄膜の場合、実施例からも分かるように厚膜と比較し短寿命であり、破壊の形態も他のサンプルと同様超音波ホーン表面の窪みによるものである。これは、ダイヤモンドライクカーボンの厚さが極薄いため、最表面で起こる超音波集中が下地金属にある欠陥や不純物を起点に起きてしまっているためと推測できる。
第3発明の作用効果は次の通りである。
超音波ホーンはTi、Al、及びその合金といった、超音波の伝達効率が良い材料によって作製される。これらの材料は活性な物質であり、大気中で表面に強固な酸化皮膜( 不動態化皮膜) を形成する。不動態化皮膜上には、ダイヤモンドライクカーボンを含めた気相コーティングの場合、良好な密着性が得られないことが多い。また、成膜と同一チャンバー中でArガスなどによる物理的なエッチングであるボンバーメントを長時間、高出力にて照射しても完全には不動態化皮膜を除去することは難しく、更に、超音波という微細であるが激しい振動を伴うこの過酷な環境化において、完全な密着性の確保は難しいものがあった。
一般的に、密着力の向上を狙った方法として、ダイヤモンドライクカーボンと基材との間にTi、Cr、Si等の活性な物質をダイヤモンドライクカーボンのコーティングと同一チャンバー内の真空下でコーティングする方法が知られている。しかし、この方法を用いても、チタン、アルミ、その合金基材の場合、十分な密着性は望めない場合が存在する。
また、液中でのコーティングを行う、ウェットめっきに関しても、Ti、Al及びその合金などの活性な金属は、難めっき材として知られており、これら金属表面へのウェットめっきに於いても、十分な密着を確保するのは技術的に困難な部類に分類される。
そこで、本発明では、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)、シリコン(Si)といった、カーボンとなじみ易く、且つ大気中でも特に活性でないため、不動態化皮膜を作りづらい材料に着目し、溶射法により基材とダイヤモンドライクカーボンの間にこれらの中間層を形成することにより十分な密着性を企図している。溶射法はプラズマ溶射が適しており、さらに減圧プラズマ溶射であることが望ましい。溶射の場合、プラズマ等により融けた材料を音速に近い速度で、ホーン表面に衝突させるため、気相コーティングが拡散と電気的加速によるイオンの衝突であるのに対し、十分な質量を持った物質の衝突によりホーン基材の不動態化皮膜は容易に突き破ることができ、この結合は、部分的に金属結合が形成されていると推定され、母材との間で、十分な密着を得ることができる。更にこのダイヤモンドライクカーボンと相性の良い溶射膜の上にダイヤモンドライクカーボンをコーティングすることで、超音波ホーンにおける信頼性が高く、高密着なダイヤモンドライクカーボンコーティングを可能とした。
超音波溶着装置の一例を示す構成図。 従来技術の超音波溶着ホーン表面に生じる窪みの写真。 従来技術の超音波溶着ホーンの被接触物の表面状態の写真。 グラファイト結晶構造の模式図。 ダイヤモンド結晶構造の模式図。 この発明の実施に用いるダイヤモンドライクカーボンの成膜装置の構成図。 この超音波溶着によるホーンの寿命評価を表すグラフ 水中での超音波による影響試験の方法を示す構成図。
超音波溶着のホーン寿命向上検討のため、図1に示すようにダイヤモンドライクカーボン2をホーン1上にコーティングし、他のコーティングと比較実験を行った。図6はそのためのダイヤモンドライクカーボンの成膜装置構成図である。ホーン材料はTi合金(Ti−6Al−4V)を用い、この表面にWを減圧プラズマ溶射によって約150μm形成した。更にダイヤモンド砥粒を用い、表面粗さがRa0.1μmに成るまで研磨し、洗浄を行った。
次に、真空チャンバー内でベース圧5.0×10−3Paまで減圧し、200℃まで加熱した後、Arを60sccm導入し、DC電源、電極を用いてプラズマ化し、基材に1.0kVのバイアス電圧を掛けて、物理的なエッチングであるボンバードメントを行い、表面の酸化物の除去を行った。
表面の酸化物を除去した後、過熱温度を230℃とし、イオン化蒸着法を用いてダイヤモンドライクカーボンのコーティングを行った。ベース真空圧はボンバードメントと同様5.0×10−3Paとした。イオン化蒸着法では図6に示すように、Wフィラメントに30Aの電流を流し、フィラメントとフィラメント近傍のアノード電極間に電圧を掛け、この間に熱電子を形成する。ここに、シクロヘキサンを10sccm導入し、熱電子に曝す事で、カーボンプラズマを形成させる。更に、ホーンである基板にバイアス電圧1.5kVを印加し、カーボンプラズマ内から選択的にカーボンのプラスイオンを引き込み成膜する。ダイヤモンドライクカーボン膜厚が約1.5μmとなったところで、成膜を終了した。
ダイヤモンドライクカーボン形成方法は、上記したイオン化蒸着法以外に、プラズマCVD法、PBII法、アンバランスドマグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、ECRスパッタ法、アークイオンプレーティング法、フィルタードカソーディックバキュームアーク法などが提案されており、どの手法を用いても良い。
溶射による中間層とDLCの間に気相コーティングを用いて、ダイヤモンドライクカーボンと同一チャンバー同一プロセス中にて、大気暴露を行わず、連続した成膜を前提に、Cr、Ti、Si、W、SiCなどを溶射膜とダイヤモンドライクカーボンの密着を高める下地コーティングとして行ってもよい。
次に、超音波溶着耐久性評価を、コーティング無し、クロムめっき、WC(炭化タングステン)、ダイヤモンドライクカーボンをそれぞれコーティングしたホーンを用いて行った。下記の表1に各評価サンプルの仕様を記す。
接合する樹脂は、ポリプロピレンを用い、接合条件は出力2kw、周波数20kHZ、振幅は2倍ブースターを介し32μmとした。評価方法は、超音波ホーンの形状変化に伴う樹脂の形状変化を確認し、実用域を超えたる変形をしたところでNGとした。本実験では、長期超音波使用におけるホーン表面の窪み形成のメカニズムが、超音波の集中であることを確認するために行ったものであるから、用いた接合用樹脂、ポリプロピレンにはホーンの物理的な摩耗を促進させるガラス繊維などのフィラーはあえて混入させなかった。しかし、発明の効果(2) で示したように、ダイヤモンドライクカーボンは高硬度で摩擦係数が低く、摺動における耐摩耗性が著しく高い特性を持つことから、ガラス繊維などフィラーを混入させた樹脂の溶着に関しては、より大きな効果を発揮するものである。
この結果を図7に示した。コーティング無しの超音波ホーンにおいては、およそ6,000ショットで樹脂の表面の形状変化が激しくなり、製品として形状の管理値を超えたため、この時点で評価を終了した。この時超音波ホーン表面にはおよそ0.5mm程の深さの窪みが数箇所確認できた。クロムメッキにおいては16,000ショット、WCにおいては22,000ショットで同様な状態となった。この際の超音波ホーン表面もコーティング無しの時と同様な窪みを形成しており、その形態も図2に示したものと同等であり、また、このときの樹脂の変化形態は、表面が荒れてつぶれているものの、超音波ホーンに発生した窪み形状に沿った転写はしておらず、この窪みの内部には、樹脂が接していない事が確認できた。これらの事象から超音波ホーン窪みの発生理由は、微視的な発熱による溶解、昇華であることが実証できた。
DLC1では60,000ショット打った時点で、他のコーティングと同様な局所的な窪みは発生していなかった。ただし、振動による被接合物とホーン表面の摩耗により、一部下地であるWが露出し始めたため、この時点で評価を終了した。しかし、この時点で樹脂表面への変化は確認されていない。
DLC2では、18,000ショット、DLC3では1,500ショット付近にて製品形状が問題となるレベルの変化があり、また、ホーン表面にはコーティング無しと同ように窪みが形成されていた。
DLC4に於いては、約49,000ショットで製品に問題となる変化があり、寿命と判断した。この時の超音波ホーン表面は他の形態と異なり窪みは形成していないものの、ところどころで膜が欠損、剥離を起こし、下地の粗さ増加に伴って樹脂表面の形状変化を起こしていることが確認できた。つまり、ここでのホーン寿命に至る形態は、超音波集中による窪みの発生ではなく、密着性の不完全さによるダイヤモンドライクカーボン膜の剥離であることが確認できた。
次に水中での超音波に対する耐久性評価を行った。図8はそのための影響試験の方法を示す構成図である。前評価における超音波ホーンと同一の材質(Ti−6Al−4V)を70mm×70mm×20mmのサイズに作製し、それぞれに表1に示したコーティング内容で表面処理をした。これを図8に示すように、超音波洗浄槽の超音波発振子の上面にボルトで固定した。超音波洗浄槽には純水約50Lを満たし、50℃の温度に調整し、周波数28kHz、出力1200Wにて超音波振動子を稼動させた。この状態で960時間稼動させ、表面の状態を観察した。
この結果を下記の表2に示す。評価は実体顕微鏡総合倍率30倍を用い、確認を行った。DLC1及びDLC4に関しては表面に変化は見られず、評価Aであるが、なかったが、その他のコーティング、Crめっき、WC、DLC2,3に関しては評価Cであり、図2に示すような窪みの形成が確認できた。また、何もコーティングしていない試験片においては、窪み発生の頻度が高く、評価Dであった。これら結果から、水中で使用する超音波洗浄、魚群探知機、超音波探傷、ホモジナイザーなどの超音波ホーンにおいても同様なメカニズムによるダメージが起こることが実証できた。
以上の実験結果から、この発明においてはダイヤモンドライクカーボンの硬度は20Gpa以上、厚みは0.5μm以上であれば実用上の効果が確認でき、特にダイヤモンドライクカーボンの硬度が30Gpa以上、厚みは1.5μm以上である場合に顕著な寿命向上効果が得られることが確認された。
1 ホーン
2 ダイヤモンドライクカーボン

Claims (3)

  1. 縦方向の振動をもって被接合体である樹脂の界面を摩擦熱により融かして接合させる、樹脂溶着用の超音波ホーンにおいて、多結晶材料からなる超音波ホーン基材の表面をダイヤモンドライクカーボンからなる皮膜で覆うことにより非晶質化し、ホーン表面における不規則な超音波の集中を防止したことを特徴とする超音波ホーン。
  2. ダイヤモンドライクカーボンの硬度は20Gpa以上、厚みは0.5μm以上である請求項1記載の超音波ホーン。
  3. 超音波ホーン基材とダイヤモンドライクカーボンの間に、W、WC、SiC、Siから選択した少なくとも1つ以上の皮膜を、溶射により形成した請求項1または2記載の超音波ホーン。
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