JP5569355B2 - サスペンション挙動推定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、サスペンション挙動推定方法に関し、特に、車輪と車両本体との上下方向の相対移動に伴い移動するスタビライザリンクと、前記スタビライザリンクとボールジョイントを介して連結されるスタビライザバーと、を有するサスペンション機構の挙動を推定するサスペンション挙動推定方法に関する。
車輪が路面の凹凸に乗り上げたときに車両本体に対する鉛直方向への車輪の変位をある程度許容すべく、一般に、車両の車輪周辺にはサスペンション機構が設けられている。ここで、サスペンションを構成する各部の挙動解析用モデルを作成し、各部品の動きをアニメーション表示し、各部品の形状データを用いて各部品間の干渉判定を実施する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−43208号公報
自動車のサスペンションは、走行時の路面からの力(振動)を乗員に感じさせないようにするため、上下に挙動する(バウンドする)機構を有する。また、フロントサスペンションは、旋回のためにタイヤを転舵させる(ステアする)機構を有する。サスペンション設計においてこのバウンド・ステアの動きによってサスペンション部品同士またはサスペンション部品と車両本体(ボディ)が干渉を回避するよう設計することが重要である。近年、このような干渉が発生しないよう、CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーションによって試作前にサスペンション機構10の構成を充分に確認する技術の開発が進められている。昨今における車両の小型化、開発期間短縮の要求に適切に応じるため、このようなCAEによる干渉評価の精度向上に対する要求が益々高まっている。
CAD解析の計算モデルとして、実物通りのモデルを作成する場合と実物より簡略化したモデルを作成する場合とがあるが、多くの場合、解析時間を短縮するために実物よりも簡略化したモデルを作成する。両端をボールジョイントで拘束された部品は実物通りにモデル化しても干渉チェックには不十分であり、干渉チェックに適したモデルが必要となる。このとき、実際には動かない部品を「動く可能性のある範囲」に動かすモデルを作成することにより、この問題を回避する必要がある。
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、サスペンション機構の挙動を正確に把握することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のサスペンション挙動推定方法は、車輪と車両本体との上下方向の相対移動に伴い移動するスタビライザリンクと、前記スタビライザリンクの一端と第1のボールジョイントを介して連結されるスタビライザバーと、前記スタビライザリンクの他端と第2のボールジョイントを介して連結されるロアアームと、を有するサスペンション機構の挙動を推定するサスペンション挙動推定方法において、車両本体に対する鉛直方向への前記車輪の変位、および前記車輪の転舵角度を取得するステップと、前記第1のボールジョイントのスタッドの中心軸を第1の基準スタッド軸とし、前記スタビライザリンクの両端を結ぶ直線を基準スタビライザリンク軸とし、基準スタビライザリンク軸と第1の基準スタッド軸の双方に直交する軸を第1の基準垂直軸としたとき、取得した車輪の変位および転舵角度を利用して、前記第1のボールジョイントの第1の基準スタッド軸回りの第1揺動角θ1と、前記第1のボールジョイントの第1の基準垂直軸回りの第3揺動角θ3と、を算出し、前記第2のボールジョイントのスタッドの中心軸を第2の基準スタッド軸とし、前記スタビライザリンクの両端を結ぶ直線を基準スタビライザリンク軸とし、基準スタビライザリンク軸と第2の基準スタッド軸の双方に直交する軸を第2の基準垂直軸としたとき、取得した車輪の変位および転舵角度を利用して、前記第2のボールジョイントの第2の基準スタッド軸回りの第1揺動角φ1と、前記第2のボールジョイントの第2の基準垂直軸回りの第3揺動角φ3と、を算出するステップと、算出された第3揺動角θ3を利用して、前記第1のボールジョイントの基準スタビライザリンク軸回りの第2揺動角θ2を算出し、算出された第3揺動角φ3を利用して、前記第2のボールジョイントの基準スタビライザリンク軸回りの第2揺動角φ2を算出するステップと、前記スタビライザリンクの両端において許容される揺動角を超えないように第2揺動角θ2および第2揺動角φ2の制約条件を設けるステップと、算出された第1揺動角θ1、第2揺動角θ2第3揺動角θ3、第1揺動角φ1、第2揺動角φ2、第3揺動角φ3および前記制約条件を利用してサスペンション機構の挙動を推定するステップと、を備える。
この態様によれば、第2揺動角θ2を利用してサスペンション機構の挙動を推定することができる。このため、スタビライザリンクやスタビライザバーなどの部品の挙動を正確に把握することが可能となり、サスペンション機構の挙動を正確に推定することができる。
本発明によれば、サスペンション機構の挙動を正確に把握することができる。
本実施形態に係るサスペンション挙動評価システム(図示せず)による挙動推定の対象となるサスペンション機構の構成を模式的に示す図である。 スタビライザバーとスタビライザリンクとの連結部分の断面図である。 スタビライザリンクとボールジョイントとの関係を模式的に示す図である。 本実施形態に係るサスペンション挙動評価システムの構成を示す機能ブロック図である。 本実施形態に係る挙動推定システムによる、サスペンション機構の挙動を推定するサスペンション挙動推定手順を示すフローチャートである。 (a)および(b)は、紙面と垂直にスタビライザリンク軸が向いているときのボールジョイントおよびボールジョイントを示す図である。 バウンド挙動とステア挙動を解析時間tに応じて変化させたときの第2揺動角θ2を示す図である。 図7に示す第2揺動角θを拡大表示した図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るサスペンション挙動評価システム(図示せず)による挙動推定の対象となるサスペンション機構10の構成を模式的に示す図である。サスペンション機構10は、車輪12、ステアリングナックル14、アッパーコントロールアーム16、ロアコントロールアーム18、ラックバー20、タイロッド22、ボールジョイント24、ボールジョイント26、スタビライザリンク30、スタビライザバー32、ボールジョイント34、ボールジョイント36を備える。
ステアリングナックル14は、ステアリングハブ(図示せず)などを介して回転可能に車輪12を支持する。アッパーコントロールアーム16は、一端がステアリングナックル14の上部に連結され、他端が車両本体(図示せず)に連結される。ロアコントロールアーム18は、一端がステアリングナックル14の下部に連結され、他端が車両本体に連結される。アッパーコントロールアーム16およびロアコントロールアーム18は、車両本体に対して鉛直方向に変位可能となるようステアリングナックル14を支持する。
タイロッド22の一端は、ボールジョイント24を介してステアリングナックル14に連結される。タイロッド22の他端は、ボールジョイント26を介してラックバー20に連結される。
ラックバー20は、ラック機構(図示せず)、およびステアリングシャフト(図示せず)を介して車両客室内に設けられたステアリングホイールに連結されており、このステアリングホイールが運転者によって回されることによって、車両左右方向に推進する。これにより、タイロッド22も車両左右方向に推進され、ステアリングナックル14が回動されて車輪12が転舵される。
ロアコントロールアーム18には、ボールジョイント34を介してスタビライザリンク30の下端が連結される。スタビライザリンク30の上端は、ボールジョイント36を介してスタビライザバー32の一端に連結される。以下、スタビライザリンク30とボールジョイント34との揺動中心、およびスタビライザリンク30とボールジョイント36との揺動中心を結ぶ直線をスタビライザリンク軸30aとする。
ロアコントロールアーム18は、車両本体と車輪との上下方向の相対移動が可能となるよう、車両本体およびステアリングナックル14の双方に対し揺動可能に接続されている。このため、ロアコントロールアーム18に取り付けられるスタビライザリンク30は、車両本体と車輪との上下方向の相対移動に伴い、車両本体と上下方向に相対的に移動する。このスタビライザリンク30にスタビライザバー32が連結することにより、車両のロールがスタビライザバー32によって抑制される。なお、アッパーコントロールアーム16、ロアコントロールアーム18、スタビライザバー32の各々は、ゴムブッシュ38を介して車両本体に接続される。
図2は、スタビライザバー32とスタビライザリンク30との連結部分の断面図である。ボールジョイント36は、球状のボール部36aと円錐台状に伸びるスタッド36bが一体的に結合した形状に形成される。スタッド36bは、中心軸であるスタッド軸36cがボール部36aの中心を通るよう設けられている。このボール部36aがスタビライザリンク30の一端に所定範囲内で回転可能となるよう連結される。スタッド36bは、スタビライザバー32の取付孔に挿通され固定される。なお、図2に示すθmaxは、ボールジョイント36の許容揺動角を示す。スタビライザリンク30に対するボールジョイント36の揺動角度は、この許容揺動角θmax以内に規制される。
図3は、スタビライザリンク30とボールジョイント36との関係を模式的に示す図である。本実施形態において、車両が停車中における車両本体に対する車輪12の鉛直方向の位置を基準位置とする。ここで、水平な路面に車両が停止しており且つステアリング角度がゼロ度のときの、スタビライザバー32に連結されるボールジョイント36のスタッド36bの中心軸を基準スタッド軸zとする。また、このときのスタビライザリンク30の両端を結ぶ直線、すなわちスタビライザリンク軸30aを基準スタビライザリンク軸yとする。さらに基準スタビライザリンク軸yと基準スタッド軸zの双方に直交する軸を基準垂直軸xとする。
また、基準スタッド軸z回りのボールジョイント36の揺動角を第1揺動角θ1とし、基準スタビライザリンク軸y回りのボールジョイント36の揺動角を第2揺動角θ2とし、基準垂直軸x回りのボールジョイント36の揺動角を第3揺動角θ3とする。基準スタッド軸zとスタッド軸36cとが成す角度がボールジョイント36の揺動角θとなる。
図4は、本実施形態に係るサスペンション挙動評価システム50の構成を示す機能ブロック図である。サスペンション挙動評価システム50は、PC52およびPC52に接続されるディスプレイ54を有する。PC52は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有する。
PC52には、サスペンション機構10を構成する各部品の挙動を推定する挙動推定ソフトウェアが組み込まれている。図4においてPC52は、CPU、ROM、RAMなどのハードウェア、およびこの挙動推定ソフトウェアとの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。なお、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
PC52は、モデル構築部56、解析条件取得部58、挙動推定部60、および表示制御部62を有する。モデル構築部56は、サスペンション機構10の解析モデルを構築する。解析条件取得部58は、マウスやキーボードなどの入力装置を用いてユーザによって入力されたサスペンション機構10の挙動解析に必要な挙動解析条件を取得する。挙動推定部60は、サスペンション機構10を構成する各部品の挙動を推定する。表示制御部62は、推定されたサスペンション機構10の挙動をディスプレイ54に表示させる。
図5は、本実施形態に係る挙動推定システムによる、サスペンション機構10の挙動を推定するサスペンション挙動推定手順を示すフローチャートである。まず、例えばアッパーコントロールアーム16やロアコントロールアーム18とステアリングナックル14との連結点、ロアコントロールアーム18とスタビライザリンク30との連結点、スタビライザリンク30とスタビライザバー32との連結点や、ゴムブッシュ38の特性、スタビライザリンク30の両端の位置、ボールジョイント36の軸方向など、各部品の大きさ、位置、材質を含むサスペンション機構10の諸元を特定する様々なデータが、ユーザによってPC52に入力される。なお、スタビライザリンク軸30aは、上述のようにスタビライザリンク30の両端の位置を結ぶ直線として定義される。モデル構築部56は、これらのデータを利用してサスペンション機構10の解析モデルを構築する(S10)。
さらに、バウンド挙動やステアリング挙動など挙動解析条件がユーザによって入力されると(S12)、解析条件取得部58は、その挙動解析条件を取得する。ここで、バウンド挙動とは、基準位置からの車両本体に対するサスペンション機構10の鉛直方向の変位をいう。また、ステアリング挙動とは、車輪12の転舵角度をいう。なお、このS12において、ユーザは、ボールジョイント36の許容揺動角θmaxおよび許容転舵角φmaxも入力する。
こうして解析モデルが構築され、挙動解析条件を取得すると、挙動推定部60は、構築された解析モデルおよび取得した挙動解析条件を利用して、サスペンション機構10の挙動解析を実行する(S14)。
ここで、挙動推定部60は、この挙動解析において、取得した車輪12の変位、および転舵角度を利用して、ボールジョイント36の基準スタッド軸z回りの第1揺動角θ1と、ボールジョイント36の基準垂直軸x回りの第3揺動角θ3とをまず算出する。これら第1揺動角θ1および第3揺動角θ3の算出方法は公知であることから説明を省略する。第1揺動角θ1および第3揺動角θ3が算出されると、挙動推定部60は、算出された第3揺動角θ3を利用して、ボールジョイント36の基準スタビライザリンク軸y回りの第2揺動角θ2を算出する。
具体的には、挙動推定システムは、
Figure 0005569355
によって第2揺動角θ2を算出する。この式は、基準スタッド軸zに対するスタッド軸36cの揺動角θを第2揺動角θ2および第3揺動角θ3を用いて表し、これを変形することによって導くことができる。
このように、本実施形態に係るサスペンション挙動評価システム50では、第2揺動角θ2も考慮してサスペンション機構10の挙動を推定する。これにより、スタビライザリンク30やスタビライザバー32などの部品の挙動を正確に把握することが可能となり、サスペンション機構10の挙動をより正確に把握することが可能となる。
ここで、ステアリングの挙動に関する制約条件について検討する。まず、スタビライザリンク30の両端のボールジョイント36の動きについて検討する。片側単独で考えると、両端について上述の式が成立する。ただし、両端の関係を考慮せずに回転させると、他端の許容揺動角θmaxを超える可能性がある。そこで、以下に示すような挙動の制約条件を設けることにより、両端の許容揺動角を超えない条件で解析が可能となる。
これまでは、スタビライザリンク30とスタビライザバー32との間に介在するボールジョイント36に関連する第1揺動角θ1、第2揺動角θ2、および第3揺動角θ3について述べてきたが、スタビライザリンク30とロアコントロールアーム18とに介在するボールジョイント34の揺動角をφiとすると、φiについて以下の式が成立する。
Figure 0005569355
この式におけるφi2は、ボールジョイント34の挙動揺動角である。ボールジョイント36の動きに合わせてスタビライザリンク30も動くと仮定すると、φi2は、その動いた角度分を含んだ量にする必要がある。この点に着目すると、許容揺動角を超えた挙動の推定を回避するためには、以下の式を満たす必要がある。この値を解析に用いることにより、両端の許容揺動角を考慮した解析が可能となる。
具体的に図6(a)および図6(b)に関連して説明する。図6(a)および図6(b)は、紙面と垂直にスタビライザリンク軸が向いているときのボールジョイント34およびボールジョイント36を示す図である。図6(a)に示す初期状態から、ボールジョイント36がθ0i回転した状態を示している。このとき、スタビライザリンク30も合わせて回転すると仮定すると、θ0iと同じ値であるφ0iだけボールジョイント34も回転することになる。ここで、θ2i≦φ2i−φ0iのとき、θ2iはそのまま用いる。θ2i>φ2i−φ0iのとき、θ2i=φ2i−φ0iとする。これにより、スタビライザリンク30の両端における許容揺動角を超えないよう解析することが可能となる。
さらに、挙動推定部60は、算出されたボールジョイント36の第1揺動角θ1、第2揺動角θ2、および第3揺動角θ3を利用して、車輪12の向きおよび位置を推定する。このように推定された車輪12の向きおよび位置を利用して、例えば車輪12周辺の部品と車輪12とが干渉しないよう充分な隙間が設けられているかについての隙間評価を実施することが可能となる。
図7は、バウンド挙動とステア挙動を解析時間tに応じて変化させたときの第2揺動角θ2を示す図である。バウンド挙動では、例えば解析時間tが経過するにしたがって車両本体に対する車輪12の鉛直方向の変位を段階的に複数回にわたって変化させることができる。図7に示す例では、解析時間tが経過するにしたがって、マイナスA、ゼロ、およびプラスAまでの3段階にわたってバウンド挙動が増加されている。なお、図7では、バウンド挙動において、車両が凸部に乗り上げるなどして基準位置よりも車輪12が上方に変位する方向をプラス方向としている。
また、ステアリング挙動では、例えば解析時間tが経過するにしたがって、車輪12の転舵角度を段階的に複数回にわたって変化させることができる。図7に示す例では、バウンド挙動が一定となっている期間中において、マイナスBからプラスBまで車輪12の転舵角度が1周期にわたって段階的に変化されている。なお、図7では、ステアリング挙動において、車両が右方向に旋回するときの車輪12の転舵角度をプラス方向としている。
このようにバウンド挙動およびステアリング挙動が変化することにより、車両本体に対する車輪12の鉛直方向の変位と車輪12の転舵角度との組み合わせを周期的に変化させることができる。挙動推定部60は、このように取得したバウンド挙動およびステアリング挙動を利用して、第2揺動角θ2を算出する。
図8は、図7に示す第2揺動角θ2を拡大表示した図である。挙動推定部60は、バウンド挙動とステアリング挙動とがi番目(iは自然数)の組み合わせのときの第2揺動角θ2を算出する。図8では、このときの第2揺動角θ2を第2揺動角θ2iとして示している。具体的には、挙動推定部60は、バウンド挙動とステアリング挙動とがi番目の組み合わせのときの第3揺動角θ3iを算出し、これを上述の式に当てはめて第2揺動角θ2iを算出する。
図5に戻る。挙動解析が実行されると、表示制御部62は、ユーザによって入力された、解析モデルを構築するためのデータを利用して、車輪12および車輪12の周辺の部品の3D(3次元)形状を作成して配置した画像をディスプレイ54に表示させる(S16)。次に表示制御部62は、挙動推定部60による挙動解析の結果を、バウンド挙動とステアリング挙動との組み合わせの順であるiを1から順に変化させながらディスプレイ54においてアニメーション表示する(S18)。このようなアニメーション表示方法は公知であるため説明を省略する。ユーザは、このアニメーション表示を見て、サスペンション機構10干渉はあるか否かを判定する(S20)。干渉がないと判定した場合(S20のN)、ユーザは、サスペンション機構10を構成する各部品の図面を作成するなどの次のステップへ移行する(S22)。
このように本実施形態では干渉があるか否かの判定は、ユーザによる目視によって行われるが、これに限定されないことは勿論である。たとえば、挙動推定部60は、サスペンション機構10を構成する各部品の形状および位置と、推定した当該各部品の挙動を利用して、部品同士で干渉が生じているかを判定してもよい。このように目視によらずコンピュータによって干渉判定する技術は公知であるため説明を省略する。
干渉があると判定した場合(S20のY)、本フローチャートにおける処理を終了する。ユーザは、必要に応じて部品の形状を変更し、サスペンション挙動条件やボールジョイント36の許容揺動角θmaxを変更し、またはアッパーコントロールアーム16やロアコントロールアーム18の取り付け個所やゴムブッシュ38の特性などのサスペンションの各諸元を変更した後、再びS10から処理を開始する。
以上、スタビライザリンク30とボールジョイント36との間の揺動角度を利用したサスペンション機構10の挙動推定方法について説明した。しかし、サスペンション機構10の挙動推定方法が、スタビライザリンク30とボールジョイント36との間の揺動角度を利用したものに限られないことは勿論である。
また、上述のサスペンション機構10の挙動推定方法では、第1揺動角θ1、第2揺動角θ2、および第3揺動角θ3を利用してボールジョイント36の揺動角θを算出したが、このような算出方法に限られないことは勿論である。例えば、第1揺動角θ1、第2揺動角θ2、第3揺動角θ3のいずれかに代えて、動きが数式で定義されたユーザ定義ジョイントを利用してもよい。このようなユーザ定義ジョイントは公知であるため、その詳細についての説明は省略する。
例えば、第1揺動角θ1、第2揺動角θ2、および第3揺動角θ3の各々に代えて、互いに異なるユーザ定義ジョイント1、ユーザ定義ジョイント2、およびユーザ定義ジョイント3を用いてもよい。または、第1揺動角θ1および第2揺動角θ2の各々に代えてユーザ定義ジョイント4を用い、第3揺動角θ3に代えてユーザ定義ジョイント5を用いるなど、共通のユーザ定義ジョイントを複数の軸回りのジョイントの各々に用いてもよい。
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を本実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
10 サスペンション機構、 12 車輪、 14 ステアリングナックル、 16 アッパーコントロールアーム、 18 ロアコントロールアーム、 20 ラックバー、 22 タイロッド、 24 ボールジョイント、 26 ボールジョイント、 30 スタビライザリンク、 30a スタビライザリンク軸、 32 スタビライザバー、 34,36 ボールジョイント、 36a ボール部、 36b スタッド、 36c スタッド軸、 38 ゴムブッシュ、 50 サスペンション挙動評価システム、 52 PC、 54 ディスプレイ、 56 モデル構築部、 58 解析条件取得部、 60 挙動推定部、 62 表示制御部。

Claims (1)

  1. 車輪と車両本体との上下方向の相対移動に伴い移動するスタビライザリンクと、前記スタビライザリンクの一端と第1のボールジョイントを介して連結されるスタビライザバーと、前記スタビライザリンクの他端と第2のボールジョイントを介して連結されるロアアームと、を有するサスペンション機構の挙動を推定するサスペンション挙動推定方法において、
    車両本体に対する鉛直方向への前記車輪の変位、および前記車輪の転舵角度を取得するステップと、
    前記第1のボールジョイントのスタッドの中心軸を第1の基準スタッド軸とし、前記スタビライザリンクの両端を結ぶ直線を基準スタビライザリンク軸とし、基準スタビライザリンク軸と第1の基準スタッド軸の双方に直交する軸を第1の基準垂直軸としたとき、取得した車輪の変位および転舵角度を利用して、前記第1のボールジョイントの第1の基準スタッド軸回りの第1揺動角θ1と、前記第1のボールジョイントの第1の基準垂直軸回りの第3揺動角θ3と、を算出し、前記第2のボールジョイントのスタッドの中心軸を第2の基準スタッド軸とし、前記スタビライザリンクの両端を結ぶ直線を基準スタビライザリンク軸とし、基準スタビライザリンク軸と第2の基準スタッド軸の双方に直交する軸を第2の基準垂直軸としたとき、取得した車輪の変位および転舵角度を利用して、前記第2のボールジョイントの第2の基準スタッド軸回りの第1揺動角φ1と、前記第2のボールジョイントの第2の基準垂直軸回りの第3揺動角φ3と、を算出するステップと、
    算出された第3揺動角θ3を利用して、前記第1のボールジョイントの基準スタビライザリンク軸回りの第2揺動角θ2を算出し、算出された第3揺動角φ3を利用して、前記第2のボールジョイントの基準スタビライザリンク軸回りの第2揺動角φ2を算出するステップと、
    前記スタビライザリンクの両端において許容される揺動角を超えないように第2揺動角θ2および第2揺動角φ2の制約条件を設けるステップと、
    算出された第1揺動角θ1、第2揺動角θ2第3揺動角θ3、第1揺動角φ1、第2揺動角φ2、第3揺動角φ3および前記制約条件を利用してサスペンション機構の挙動を推定するステップと、
    を備えることを特徴とするサスペンション挙動推定方法。
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