以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図である。
図1に示す情報媒体100は、個人認証媒体であり、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
この情報媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
画像I1bは、後述する情報媒体が表示する画像である。
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
画像I1bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加
えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像I1bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像I1a及びI1bの少なくとも一方とを組み合わせると、情報媒体100の改竄をより困難にすることができる。
情報媒体100のうち画像I1bに対応した部分は、以下に説明する画像表示体200を含んでいる。
図2は、本発明の一態様に係る画像表示体を概略的に示す平面図である。図3は、図2に示す画像表示体のIII−III線に沿った断面図である。図2及び図3では、画像表示体200の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、上記主面に垂直な方向をZ方向としている。また、図2及び図3では、画像表示体200のうち後述する第1部分P1と第3部分P3とが向き合っている部分を表示部DP1とし、後述する第2部分P2と第4部分P4とが向き合っている部分を表示部DP2としている。
まず、図2及び図3に示す画像表示体200の構成について説明する。
図2及び図3に示す画像表示体200は、第1層201と、第2層202と、第3層203とを備えている。図3には、一例として、第2層202が第1層201に対して前面側に位置し、第3層203が第1層201に対して背面側に位置している場合を描いている。
第1層201は、金属層を実質的に含んでおらず且つ構造色を呈する層である。第1層201は、典型的には、コレステリック液晶、パール顔料及び多層干渉膜の少なくとも1つを含んでいる。
第1層201がコレステリック液晶を含んでいる場合、第1層201は、例えば、コレステリック構造を有する化合物を含んだ材料、又は、ネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック構造を持たせたものを含んだ材料を用いて製造することができる。コレステリック液晶は、例えば、ネマチック液晶に添加するカイラル剤の量及び種類などを変化させることにより、そのヘリカルピッチ及び偏光面の捩じれ方向を変化させることが可能である。また、液晶分子の両末端に、アクリル基などの重合基を導入することもできる。こうすると、各液晶分子を配向させた後に、その配向を固定することが容易となる。
第1層201がコレステリック液晶を含んでいる場合、第1層201は、コレステリック液晶からなる層であってもよく、コレステリック液晶顔料を含んだ層であってもよい。
第1層201がコレステリック液晶からなる層である場合、第1層201における光の散乱を、最小限に抑えることが可能となる。
第1層201がコレステリック液晶顔料を含んだ層である場合、第1層201は、典型的には、コレステリック液晶の粉末と、透明なバインダとを含んでいる。この場合、例えば、ヘリカルピッチ及び偏光面の捩じれ方向などが互いに異なった複数のコレステリック液晶顔料を用いることにより、第1層201の光学特性を微調整することが可能となる。
第1層201がコレステリック液晶を含んでいる場合、第1層201を照明すると、第1層201は、円偏光性の選択反射光を射出し得る。
コレステリック液晶を含んだ第1層201は、例えば、以下のようにして形成する。
第1の方法では、まず、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、セロハン及びポリビニルアルコールなどの延伸フィルムを準備する。この延伸フィルムには、ラビング処理を施してもよい。次に、コレステリック液晶の原料を有機溶剤に溶解させた塗工液を準備する。次いで、この塗工液を、上記の延伸フィルム上に塗布する。その後、得られた塗膜を乾燥させる。これにより、延伸フィルム上で、液晶分子を配向させる。そして、この状態で紫外線などのエネルギー線を照射して、液晶分子の配向を固定する。このようにして、コレステリック液晶形成フィルムを得る。
次に、被転写体、例えば基材の一方の主面に、光透過性を有した接着剤を塗布する。そして、その上に、コレステリック液晶形成フィルムを貼り合わせる。次いで、延伸フィルムのみを剥がす。このようにして、被転写体、例えば基材の一方の主面上に、コレステリック液晶を含んだ第1層201を形成する。
第2の方法では、まず、第1層201を形成すべき主面、例えば基材の一方の主面上に、光配向インキを塗布する。その後、その塗膜を乾燥させ、偏光性の紫外光を照射して、配向膜を形成する。次いで、コレステリック液晶の原料を有機溶剤に溶解させた塗工液を準備し、この塗工液を、上記の配向膜上に塗布する。その後、得られた塗膜を乾燥させ、液晶分子を配向させる。そして、この状態で紫外線などのエネルギー線を照射して、液晶分子の配向を固定する。このようにして、コレステリック液晶を含んだ第1層201を得る。なお、この場合、第1層201を形成すべき主面と光配向インキからなる配向膜との接着性が不十分である場合には、アンカー層を更に設けてもよい。
なお、上では、配向膜を用いて液晶分子を配向させる方法について説明したが、液晶分子を配向させる方法は、これには限られない。例えば、液晶分子は、電場及び/又は磁場の印加又はせん断応力の印加によって配向させてもよい。
また、上では、紫外線の照射によって液晶分子の配向を固定する方法について説明したが、液晶分子の配向を固定する方法は、これには限られない。例えば、液晶分子の配向は、液晶分子を含んだ層を急冷させることによって固定してもよい。これらの方法のうち、紫外線の照射によって液晶分子の配向を固定する方法がより好ましい。
画像表示体200の製造コストの観点から、上記の第1及び第2の方法のうち、典型的には、第1の方法を採用する。
なお、コレステリック液晶の原料としては、例えば、エネルギー線硬化性の化合物を用いる。この化合物は、典型的には、分子中に2個以上のエネルギー線硬化性基を備えている。このような化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能性単量体、並びに、ポリウレタンアクリレート、エポキシ樹脂系ポリアクリレート及びアクリルポリオールポリアクリレートなどの多官能性オリゴマーが挙げられる。
単官能性の単量体としては、例えば、アルキル(C1〜C18)(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ(C1〜C10)アルキル(C2〜C4)(メタ)アクリレート、ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、及びアルコキシ(C2〜C10)ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
カチオン系の光重合性単量体としては、例えば、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、及びグリシジルエステル系化合物が挙げられる。また、コレステリック液晶の原料として、3次元架橋性液晶ポリオルガノシロキサンを用いてもよい。
エネルギー線硬化性の化合物を硬化する際に用いる重合開始剤としては、例えば、ラジカル系又はカチオン系の重合開始剤を用いる。
ラジカル系重合開始剤としては、例えば、α−ヒドロキシアセトフェノン系及びα−アミノアセトフェノン系などのアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、α−ジカルボニル系、並びに、α−アシルオキシムエステル系のものが挙げられる。より具体的には、例えば、α−アミノアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及びイソプロピルチオキサントンが挙げられる。また、これら重合開始剤の2以上を併用してもよい。例えば、ベンゾフェノンとN−メチルジエタノールアミンとを併用してもよい。
カチオン系重合開始剤としては、公知の化合物を制限無く使用することができる。このような重合開始剤としては、例えば、アリルヨードニウム塩−α−ヒドリキシアセトフェノン系、及びトリアリルスルホニウム塩系のものが挙げられる。カチオン系重合開始剤は、増感剤及び/又は過酸化物と併用してもよい。この場合、例えば、メタロセン化合物−パーオキサイド併用系、メタロセン化合物−チオキサントン併用系、又はメタロセン化合物−アントラセン併用系を採用することができる。
第1層201がパール顔料を含んでいる場合、第1層201は、例えば、雲母などの層状物質の粉末を含んでいる。或いは、この場合、第1層201は、後述する多層干渉膜を粉砕してなる粉末を用いてもよい。第1層201がパール顔料を含んでいる場合、第1層201は、典型的には、透明なバインダを更に含んでいる。
第1層201がパール顔料を含んでいる場合、第1層201は、典型的には、印刷法又は塗布法により形成する。これら印刷法又は塗布法としては、公知の方法を採用することができる。
第1層201が含み得る多層干渉膜は、屈折率が互いに異なった複数の層が積層されてなる。多層干渉膜を構成する各層は、例えば、セラミクス薄膜又は有機ポリマー薄膜である。多層干渉膜は、例えば、屈折率が互いに異なった層の交互積層体を含んでいる。例えば、セラミクス薄膜と、有機ポリマー薄膜とを、所定の厚みで交互に積層させることにより、特定波長の可視光のみを吸収又は反射する多層干渉膜が得られる。多層干渉膜の積層数は、例えば、2乃至9の範囲内とする。
第1層201が多層干渉膜を含んでいる場合、第1層201は、膜厚、成膜速度、積層数及び光学膜厚などの制御が可能な公知の方法を用いて形成する。このような方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及び化学気相堆積法(CVD法)が挙げられる。なお、光学膜厚とは、屈折率と膜厚との積である。
或いは、上記の多層干渉膜は、多層同時押し出しにより形成された多層フィルムであってもよい。この多層フィルムは、屈折率が互いに異なった複数のプラスチック薄膜の交互積層体である。これらプラスチック薄膜の各々は、プラスチック材料を含んでいる。これらプラスチック薄膜の各々は、必要に応じて、助剤を含んでいてもよい。
この多層フィルムは、例えば、高屈折率材料からなるプラスチック薄膜と、低屈折率材料からなるプラスチック薄膜との交互積層体を含んでいる。高屈折率材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(1.63)、ポリカーボネート(1.59)、ポリスチレン(1.59)、及びポリエチレンテレフタレート(1.58)が挙げられる。低屈折率材料としては、例えば、ナイロン(1.53)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリメチルペンテン(1.46)、及びフッ素系ポリメチルメタクリレート(1.4)が挙げられる。
第2層202は、第1部分P1と第2部分P2とを備えている。
第1部分P1は、第1層201の一部のみと向き合っている。第1部分P1は、金属層を含んでいる。図3には、一例として、第1部分P1が金属層のみからなる鏡面を構成している場合を描いている。即ち、図2及び図3に示す画像表示体200では、第1部分P1は、光反射性を有している。
第1部分P1が含んでいる金属層は、例えば、金属の単体、合金、金属酸化物、又は金属硫化物を含んでいる。この金属層が含んでいる金属又は合金としては、例えば、アルミニウム、金、銅、銀、ニッケル、イノセル(登録商標)、MoS2及びFe2O3が挙げられる。この金属層は、アルミニウムを含んでいることが特に好ましい。
第2部分P2は、第1層201の他の一部と向き合っている。第2部分P2は、第1部分P1と、面内方向に隣り合っている。図2及び図3には、一例として、第2部分P2と第1部分P1とが互いに隣接している場合を描いている。
第2部分P2は、第1部分P1と比較して、可視光透過率がより高い。なお、ここで「可視光透過率」とは、可視域の光に対する全光線透過率を意味している。また、この「全光線透過率」は、日本工業規格JIS K7361−1に準拠した測定値である。
第2部分P2は、典型的には、金属層を含んでいないか、又は、第1部分P1が含んでいる金属層と比較して膜厚がより小さい金属層を含んでいる。後者の場合、第2部分P2が含んでいる金属層を構成している金属は、典型的には、第1部分P1が含んでいる金属層を構成しているものと同一である。
第2部分P2は、金属層の代わりに又は金属層に加えて、粒子状の金属を含んでいてもよい。この金属は、典型的には、第1部分P1が含んでいる金属層を構成しているものと同一である。
第3層203は、第1層201を間に挟んで第2層202と向き合っている。第3層203は、第3部分P3と第4部分P4とを備えている。
第3部分P3は、第1部分P1と向き合っている。第3部分P3の画像表示体200の主面への正射影は、典型的には、第1部分P1の上記主面への正射影に一致している。なお、ここで及び以下において、各部分の正射影の「一致」とは、数学的に厳密な「一致」を意味するものではなく、各部分に基づいて表示される像の位置ズレが視認不可能である程度の「一致」を意味していることとする。
第3部分P3は、樹脂を含んでいる。この樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルクロリド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステルスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、シリコン樹脂、並びにゴム樹脂が挙げられる。
第3部分P3が含んでいる上記樹脂は、エネルギービームの照射によって可視光吸収率が増大するように構成されていてもよい。
例えば、この樹脂は、添加剤を含んでいてもよい。この添加剤としては、例えば、赤外線吸収剤が挙げられる。このような添加剤を含んだ樹脂を用いると、例えば、赤外線領域のエネルギービームの照射によって、添加剤の周囲における樹脂の炭化を生じさせることができる。即ち、このような構成を採用すると、エネルギービームの照射によって、可視光吸収率を増大させることが可能となる。
第3部分P3は、典型的には、透明である。この場合、第3部分P3は、無色且つ透明であってもよく、有色且つ透明であってもよい。
第4部分P4は、第3部分P3と面内方向に隣り合っている。図2及び図3には、一例として、第4部分P4と第3部分P3とが互いに隣接している場合を描いている。
第4部分P4は、第2部分P2と向き合っている。第4部分P4の画像表示体200の主面への正射影は、典型的には、第2部分P2の上記主面への正射影に一致している。また、第1部分P1と第2部分P2とが隣接しており且つ第3部分P3と第4部分とが隣接している場合、第1部分P1と第2部分P2との境界の上記主面への正射影は、典型的には、第3部分P3と第4部分との境界の上記主面への正射影に一致している。
第4部分P4は、第3部分P3と比較して、可視光吸収率がより高い。第4部分P4の構成には、特に制限はない。例えば、第3部分P3が含んでいる樹脂がエネルギービームの照射により可視光吸収率が増大するように構成されている場合、第4部分P4は、上記樹脂にエネルギービームを照射することにより得られる物質を含んでいてもよい。
次に、図2及び図3に示す画像表示体200が示す光学効果について説明する。
画像表示体200において、表示部DP1は、第1部分P1と第3部分P3とを含んだ積層構造を備えている。他方、表示部DP2は、第2部分P2と第4部分P4とを含んだ積層構造を備えている。
第2部分P2は、第1部分P1と比較して、可視光透過率がより高い。加えて、第4部分P4は、第3部分P3と比較して、可視光吸収率がより高い。それゆえ、第2部分P2と第4部分P4との組み合わせは、第1層201に起因した構造色の視認性を相対的に向上させる機能を有しており、第1部分P1と第3部分P3との組み合わせは、第1層201に起因した構造色の視認性を相対的に低下させる機能を有している。
したがって、上述した構成を採用すると、表示部DP2が表示する構造色の視認性を、大幅に向上させることができる。即ち、こうすると、表示部DP1と表示部DP2との対比により表示される画像のコントラストを、大幅に向上させることができる。
また、表示部DP1と表示部DP2とは、図2及び図3に示す画像表示体200を背面側から観察した場合にも、互いに異なった光学効果を呈する。したがって、図2及び図3に示す画像表示体200は、背面側から観察した場合にも、表示部DP1と表示部DP2との対比による画像を表示する。それゆえ、画像表示体200が表示する画像を改竄することは、比較的困難である。
上述した通り、第2部分P2は、金属層の代わりに又は金属層に加えて、粒子状の金属を含んでいてもよい。この場合、第2部分P2の材料としては、例えば、アルミペースト、カルボニル鉄粉、及びOVI(optical variable ink)が挙げられる。
また、第3部分P3は、典型的には、透明である。この場合、図2及び図3に示す画像表示体200を背面側から観察すると、表示部DP1において、第1層201に起因した光学効果を視認することができる。よって、この場合、背面側から観察した場合でも、第1部分P1に起因した構造色を観察者に視認させることができる。したがって、この場合、画像表示体200が表示する画像を改竄することは更に困難である。
そして、第4部分P4の画像表示体200の主面への正射影は、典型的には、第2部分P2の上記主面への正射影に一致させる。こうすると、第2部分P2に基づいて表示される像と第4部分P4に基づいて表示される像との位置ズレが小さくなり、画像表示体200が表示する画像の画質を更に向上させることができる。
以上において説明したように、第1部分P1は、第1層201に起因した光学効果の視認性を低下させる機能を有している。それゆえ、上では第1部分P1が金属層のみからなる鏡面を構成している場合について説明したが、第1部分P1の構成は、これには限られない。例えば、第1部分P1は、光反射性の代わりに又は光反射性に加えて、光回折性、光散乱性、及び光吸収性の少なくとも1つを有していてもよい。
図4は、一変形例に係る画像表示体を概略的に示す断面図である。図4に示す画像表示体200は、第2層202の構成が異なっていることを除いては、図2及び図3を参照しながら説明した画像表示体と同様の構成を有している。
図4に示す画像表示体200では、第1部分P1は、樹脂層202aと金属層202bとを含んでいる。樹脂層202aの一方の主面には、白色光の照射により回折光を射出可能な凹凸構造が設けられている。金属層202bは、樹脂層202aの上記凹凸構造が設けられた主面を被覆している。この金属層202bとしては、例えば、先に図2及び図3を参照しながら説明した構成を採用することができる。
この第1部分P1は、上記の凹凸構造に起因した構造色を呈する。したがって、このような構成を採用すると、画像表示体200に、より複雑な画像を表示させることが可能となる。それゆえ、こうすると、画像表示体200が表示する画像の改竄が更に困難となる。
なお、この画像表示体200では、第2部分P2は、上記の凹凸構造を有していてもよく、上記の凹凸構造を有していなくてもよい。前者の場合、第2部分P2は、典型的には、金属層を含んでいないか又は第1部分P1を構成している金属層202bと比較して膜厚がより小さい金属層を含んでいる。また、この場合、第2部分P2は、典型的には、粒子状の金属を含んでいる。
図5は、他の変形例に係る画像表示体を概略的に示す断面図である。図5に示す画像表示体200は、第1層201と第2層202との積層順が逆転していることを除いては、図2及び図3を参照しながら説明した画像表示体と同様の構成を有している。
図5に示す画像表示体200では、第3層203は、第2層202を間に挟んで、第1層201と向き合っている。即ち、この画像表示体200では、第2層202は、第1層201の背面側に位置している。
第1部分P1は、第1層201に起因した光学効果の視認性を低下させる機能を有している。この第1部分P1は、典型的には、光反射性、光回折性、及び光散乱性の少なくとも1つを有している。第1部分P1は、例えば、先に図2及び図3を参照しながら説明したのと同様の鏡面を構成している。或いは、第1部分P1は、先に図4を参照しながら説明したのと同様の回折構造を含んでいてもよい。或いは、第1部分P1は、白色光を照射したときに散乱光を射出可能な構成を有していてもよい。
図5に示す画像表示体200では、図2及び図3を参照しながら説明した画像表示体と同様に、第2部分P2と第4部分P4との組み合わせは、第1層201に起因した構造色の視認性を相対的に向上させる機能を有している。また、第1部分P1と第3部分P3との組み合わせは、第1層201に起因した構造色の視認性を相対的に低下させる機能を有している。したがって、図5に示す構成を採用した場合であっても、表示部DP2が表示する構造色の視認性を、大幅に向上させることができる。即ち、この場合にも、表示部DP1と表示部DP2との対比により表示される画像のコントラストを、大幅に向上させることができる。
図6は、他の変形例に係る画像表示体を概略的に示す断面図である。図6に示す画像表示体200は、第3部分P3及び第4部分P4が多層構造を有していることを除いては、図2及び図3に示す画像表示体と同様の構成を有している。
第3部分P3は、第1樹脂層203Aと第2樹脂層203Bと第3樹脂層203Cとがこの順に積層した積層構造を含んでいる。
第2樹脂層203Bは、典型的には、エネルギービームの照射によって可視光吸収率が増大するように構成された樹脂を含んでいる。このような樹脂としては、例えば、先に図2及び図3を参照しながら説明したものを挙げることができる。
第1樹脂層203Aは、第1部分P1と第2樹脂層203Bとの間に介在している。第1樹脂層203Aが含んでいる樹脂は、典型的には、上記のエネルギービームの波長に対して透明である。即ち、この樹脂は、典型的には、上記エネルギービームを照射しても、可視光吸収率が実質的に増大しない樹脂である。
第3樹脂層203Cは、第2樹脂層203Bを間に挟んで第1樹脂層203Aと向き合っている。第3樹脂層203Cが含んでいる樹脂は、典型的には、上記のエネルギービームの波長に対して透明である。即ち、この樹脂は、典型的には、上記エネルギービームを照射しても、可視光吸収率が実質的に増大しない樹脂である。第3樹脂層203Cは、典型的には、第1樹脂層203Aと同様の構成を有している。
これら樹脂層203A乃至203Cの各々が含んでいる樹脂は、添加剤の有無を除いては、互いに同一の種類の樹脂であることが好ましい。このような構成としては、例えば、樹脂層203A及び203Cがポリカーボネート樹脂を含み、且つ第2樹脂層203Bが添加剤を含有したポリカーボネート樹脂を含んでいる態様が挙げられる。このような構成を採用すると、第1樹脂層203Aと第2樹脂層203Bとの間、及び、第2樹脂層203Bと第3樹脂層203Cとの間における剥離が生じ難くなり、画像表示体200の耐久性が更に向上する。
第4部分P4は、第4樹脂層203A’と第5樹脂層203B’と第6樹脂層203C’とがこの順に積層した積層構造を含んでいる。
第5樹脂層203B’は、第2樹脂層203Bと隣り合っている。第5樹脂層203B’は、典型的には、第2樹脂層203Bが含んでいる樹脂にエネルギービームを照射することにより得られる物質を含んでいる。即ち、第5樹脂層203B’は、典型的には、第2樹脂層203Bと比較して、可視光吸収率がより高い。
樹脂層203A’及び203C’は、それぞれ、樹脂層203A及び203Cと隣り合っている。樹脂層203A’及び203C’は、典型的には、それぞれ、樹脂層203A及び203Cと同一の構成を有している。即ち、樹脂層203A’及び203C’は、典型的には、それぞれ、樹脂層203A及び203Cと同一の可視光吸収率を有している。
このような構成を採用した場合、例えば、第4部分P4が第5樹脂層203B’のみからなる場合と比較して、第4部分P4に記録された情報を改竄することがより困難となる。即ち、このような構成を採用すると、第4部分P4に基づいて表示される像の改竄を、更に困難とすることができる。
図2乃至図6では、画像表示体200が第1層201、第2層202、及び第3層203のみからなる場合について説明したが、画像表示体200は、これら以外の追加の層を更に含んでいてもよい。例えば、図2及び図3を参照しながら説明した画像表示体200は、第1層201と第3層203との間に、印刷層を更に含んでいてもよい。或いは、この画像表示体200は、第2層202を間に挟んで第1層201と向き合った保護層を更に含んでいてもよい。
なお、以上において説明した種々の変形例は、その2つ以上を互いに組み合わせて採用してもよい。
続いて、画像表示体200の製造方法の一例について説明する。画像表示体200は、例えば、以下に説明するブランク媒体を用いて製造することができる。
図7は、本発明の一態様に係る画像表示体の製造に利用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す断面図である。
図7に示すブランク媒体300は、光学効果層301と、第1記録層302と、第2記録層303とを備えている。
光学効果層301は、金属層を実質的に含んでおらず且つ構造色を呈する層である。この光学効果層301としては、例えば、先に第1層201について説明したのと同様の構成を採用することができる。
第1記録層302は、光学効果層301と少なくとも部分的に向き合っている。また、第1記録層302は、金属層を含んでいる。この第1記録層302としては、例えば、先に第1部分P1について説明したのと同様の構成を採用することができる。
第2記録層303は、光学効果層301を間に挟んで、第1記録層302と少なくとも部分的に向き合っている。この第2記録層303は、エネルギービームの照射によって可視光吸収率が増大するように構成されている。この第2記録層303としては、例えば、先に第3部分P3について説明したのと同様の構成を採用することができる。
このブランク媒体300は、上述した通り、画像表示体200の製造に用いられる。
図8は、本発明の一態様に係る画像表示体の製造方法の一例を概略的に示す断面図である。
図8は、図7に示すブランク媒体300のうち第1記録層302と第2記録層303とが向き合った積層部分の一部に、エネルギービームEBを照射している様子を示している。この積層部分にエネルギービームEBを照射すると、以下のような変化が生じる。
まず、第1記録層302のうちエネルギービームEBが照射された位置では、第1記録層302が含んでいる金属層が破壊される。これにより、第1記録層302の当該位置において、可視光透過率が増大する。即ち、これにより、先に説明した第2部分P2を形成することができる。なお、第1記録層302のうちエネルギービームEBが照射されていない部分は、先に説明した第1部分P1に対応している。
このようにして形成された第2部分P2は、金属層を含んでいないか、又は、第1部分P1が含んでいる金属層と比較して膜厚がより小さい金属層を含んでいる。
また、本発明者らは、このようにして形成された第2部分P2は、典型的には、粒子状の金属を含んでいることを見出している。本発明者らは、これら粒子状の金属は、エネルギービームEBの照射による金属層の破壊に起因して、金属層を構成していた金属が互いに凝集することにより形成されたものであると推測している。
次に、第2記録層303のうちエネルギービームEBが照射された位置では、可視光吸収率が増大する。これにより、先に説明した第4部分P4を形成することができる。なお、第2記録層303のうちエネルギービームEBが照射されていない部分は、先に説明した第3部分P3に対応している。
なお、上述した通り、光学効果層301は、金属層を実質的に含んでいない。したがって、光学効果層301は、エネルギービームEBが照射されても、実質的な構成の変化を生じない。即ち、光学効果層301のうちエネルギービームEBが照射された部分は、エネルギービームEBが照射される前と同様に、構造色を呈する。
このように、ブランク媒体300へのエネルギービームEBの照射により、画像表示体200を製造することができる。この方法によると、オンデマンドで、所望の画像を記録することができる。そのため、この方法は、個人情報などの個別情報を記録する場合に特に有用である。
また、この方法によると、第1記録層302に記録した画像と第2記録層303に記録した画像との位置合わせが比較的容易である。即ち、この方法によると、第4部分P4の画像表示体200の主面への正射影と、第2部分P2の上記主面への正射影とを一致させることが、比較的容易である。それゆえ、この方法によると、画像表示体200が表示する画像の画質を更に向上させることができる。
第1記録層302へのエネルギービームEBの照射と、第2記録層303へのエネルギービームEBの照射とは、同時に行ってもよく、段階的に行ってもよい。但し、前者の場合、後者の場合と比較して、第1記録層302に記録した画像と第2記録層303に記録した画像との位置ズレを更に生じ難くすることができる。即ち、前者の場合、後者の場合と比較して、画像表示体200が表示する画像の画質を更に向上させることができる。
エネルギービームEBとしては、通常、レーザビームを用いる。このレーザビームの照射源としては、例えば、Nd:YAGレーザを用いる。或いは、レーザビームの照射源として、Nd:YVO4レーザを使用してもよい。
なお、ブランク媒体300は、第1記録層302及び第2記録層303以外に、1つ以上の追加の層を更に備えていてもよい。但し、これらの追加の層は、エネルギービームEBの波長に対して透明であることが好ましい。こうすると、第1記録層302及び第2記録層303への画像の記録を、より効率的に行うことが可能となる。
以上において説明した画像表示体200は、典型的には、情報媒体100の一部として用いる。この場合、画像表示体200の第3層203は、情報媒体100を構成している基材と共通であってもよい。或いは、画像表示体200は、情報媒体100を構成している基材上に、接着層などを介して貼り付けられていてもよい。
上では、パスポートとしての情報媒体100を例示したが、情報媒体100について上述した技術は、他の情報媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証カード、IDカード及びゲームカードなどの各種カードに適用することも可能である。或いは、この技術は、住民基本台帳などの他の個人認証媒体に適用してもよい。
図9は、本発明の他の態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図である。図9に示す情報媒体400は、IDカードであり、上で説明した画像表示体200に基づいた画像I1bを含んでいる。よって、この情報媒体400は、改竄が困難である。
また、上では、情報媒体としてパスポート及びIDカードなどの個人認証媒体を例示したが、情報媒体100及び400について上述した技術は、個人認証媒体以外の情報媒体に適用することも可能である。即ち、上述した技術は、個人認証以外の目的で利用してもよい。
図10は、本発明の他の態様に係る情報媒体を概略的に示す斜視図である。図10に示す情報媒体500は、プリンタの部品及び自動車の部品などの物品であり、上で説明した画像表示体200に基づいた画像I1bを含んでいる。この画像I1bは、例えば、当該物品を流通させるべき国及び地域の情報を個別に表示する。これにより、例えば、当該物品の不正流通を追跡することが可能となる。
図6を参照しながら説明した画像表示体200を、以下のようにして製造した。
まず、画像表示体200の製造に用いるブランク媒体300を製造した。はじめに、ポリカーボネートからなるA層の一方の主面上に、光学効果層301として、光路差干渉による特定波長の多重増反射を利用した数百層の多層積層構造フィルムを形成した。A層の厚みは100μmとし、光学効果層301の厚みは20μmとした。
次いで、光学効果層301の上に、アルミニウムからなる第1記録層302を、蒸着法により形成した。この第1記録層302の厚みは、50nmとした。
次いで、上述のようにして得られた積層体と、エネルギービームの照射によって可視光吸収率が増大するように構成されたポリカーボネートからなるB層(Bayer社製;Makrofol ID 6-2 750061;厚さ100μm)と、ポリカーボネートからなるC層とを、A層とB層とが向き合うようにして固定し、この状態で、熱融着させた。このようにして、A層、B層及びC層の積層体からなる第2記録層303を形成した。なお、B層及びC層の厚みは、それぞれ、100μmとした。即ち、第2記録層303の厚みは、300μmとした。
以上のようにして、画像表示体200の製造に用いるブランク媒体300を準備した。
続いて、ブランク媒体300への顔画像の記録を行った。この記録は、KEYENCE MD−V YVO4 LASER MARKER MD−V 9600A seriesを用いて行った。
まず、ブランク媒体300の一部に、上記レーザを、レーザ出力40%、スキャンスピード1800mm/s、Qスイッチ周波数100kHzで照射した。これにより、第1記録層302の一部を破壊した。
次いで、ブランク媒体300のうち第1記録層302が破壊された部分に、上記レーザを、レーザ出力50%、スキャンスピード900mm/s、Qスイッチ周波数90kHzで照射した。これにより、第2記録層303の一部を破壊した。
このようにして、ブランク媒体300に、顔画像を記録した。これにより、図6を参照しながら説明した画像表示体200を製造した。
この画像表示体200を前面側から観察すると、上記の顔画像が、明瞭に視認できた。即ち、この顔画像は、視認性が高く且つ画質が優れていた。加えて、この画像表示体200のうち表示部DP2に対応した部分は、観察角度の変化に応じて、異なった色の像を表示した。
また、この画像表示体200を背面側から観察した場合にも、上記の顔画像を、明瞭に視認することができた。また、この画像表示体200のうち表示部DP1に対応した部分は、背面側から観察すると、観察角度の変化に応じて、異なった色の像を表示した。