JP5569136B2 - ペイロード保護装置 - Google Patents

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本発明は、ペイロード保護装置に関する。
従来から、ロケットの先端部に搭載されたペイロード(例えば、人工衛星や探査機等)をロケット打ち上げ時の過酷な環境から保護するために、ペイロードフェアリングと呼ばれる先端が円錐形状のカバー部品をロケット先端部に装着することが一般的である。このペイロードフェアリングは、互いに結合された複数のフェアリング片から構成されており、フェアリング片同士の分離によって開頭動作が可能な分割構造となっている。
例えば、下記特許文献1には、ペイロードフェアリングの内側に、ペイロードフェアリングと結合された分割型ペイロード保護カバーを設けることで、ロケット打ち上げ時の振動衝撃によってペイロードフェアリングの内壁から降り注ぐ塵埃からペイロードを保護する技術が開示されている。この技術によれば、ロケット打ち上げ時には、分割型ペイロード保護カバーによって塵埃からペイロードを保護でき、ペイロードの分離時には、ペイロードフェアリングの開頭動作に伴って分割型ペイロード保護カバーが分割されるため、問題なくペイロードをロケットから分離できる。
特開平7−165199号公報
一般的に、ペイロードフェアリングの分離開頭は、フェアリング片同士の結合に用いられている締結ボルトの爆破によって実現されている。このため、ペイロードフェアリングの分離開頭時には、締結ボルトの爆破によって生じた破片からペイロードを保護する必要がある。これに対して、上記特許文献1の技術は、ロケット打ち上げ時に生じた塵埃からペイロードを保護することを目的としており、ペイロードフェアリングの開頭開始と同時に分割型ペイロード保護カバーの分割が開始されるため、締結ボルトの爆破によって生じた破片が分割型ペイロード保護カバー内に侵入し、ペイロードに衝突する可能性がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、ロケット打ち上げシーケンス(リフトオフからペイロードの分離まで)の全工程において、ロケットに搭載されたペイロードを確実に保護することの可能なペイロード保護装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明では、ペイロード保護装置に係る第1の解決手段として、ロケットに搭載されたペイロードを保護するペイロード保護装置であって、真空引きポートを有し、前記ペイロードを覆うように前記ロケットに装着されたペイロードフェアリングと、前記ペイロードフェアリングの内側において、前記ペイロードを覆うように設けられた保護カバーと、前記ペイロードフェアリングの開頭動作に対し時間遅れを持って前記保護カバーの頭頂部を開放する保護カバー開放手段とを具備する、という手段を採用する。
また、本発明では、ペイロード保護装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記保護カバー開放手段として、前記ペイロードフェアリングの開頭動作前において弛緩状態にある一方、前記ペイロードフェアリングの開頭動作に伴って引張され、その引張力によって前記保護カバーの頭頂部が切断されるように張られたワイヤーを具備する、という手段を採用する。
また、本発明では、ペイロード保護装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記保護カバー開放手段として、前記ワイヤーに加えて、前記保護カバーの頭頂部に貼付された発熱体を具備する、という手段を採用する。
また、本発明では、ペイロード保護装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記発熱体は、電熱線或いは太陽光を吸収する金属板である、という手段を採用する。
また、本発明では、ペイロード保護装置に係る第5の解決手段として、上記第2〜第4のいずれかの解決手段において、前記保護カバーの頭頂部は、他の部位より薄肉構造となっている、という手段を採用する。
また、本発明では、ペイロード保護装置に係る第6の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記保護カバーは、前記頭頂部を開閉自在とする、互いに嵌合する部分による開閉構造を有し、前記保護カバー開放手段として、前記ペイロードフェアリングの開頭動作前において弛緩状態にある一方、前記ペイロードフェアリングの開頭動作に伴って引張され、その引張力によって前記開閉構造が開くように張られたワイヤーを具備する、という手段を採用する。
本発明に係るペイロード保護装置によれば、ペイロードフェアリングの内側に設けられた保護カバーの頭頂部を、ペイロードフェアリングの開頭動作に対し時間遅れを持って開放するため、ペイロードフェアリングの分離開頭時における締結ボルトの爆破によって生じた破片からペイロードを保護することが可能となる。
また、本発明に係るペイロード保護装置によれば、ペイロードフェアリングの内側に保護カバーを設けたため、ロケット打ち上げ時の振動衝撃によってペイロードフェアリングの内壁から降り注ぐ塵埃からもペイロードを保護することができる。
さらに、本発明に係るペイロード保護装置によれば、ロケット打ち上げ前に、ペイロードフェアリングに設けられた真空引きポートを利用してペイロードフェアリング内を真空状態にまで減圧しておくことが可能となる。従来から、ロケット打ち上げ時に発生する音響振動が、ペイロードフェアリング内の空気を介してペイロードに伝達されることがペイロードの破損原因の1つとして知られているが、上記のようにペイロードフェアリング内を真空状態としておくことで、音響振動からもペイロードを保護することができる。
このように、本発明に係るペイロード保護装置によれば、ロケット打ち上げシーケンスの全工程において、ロケットに搭載されたペイロードを確実に保護することが可能となる。
本実施形態におけるペイロード保護装置Aの構成概略図である。 打ち上げ射場におけるペイロード保護装置Aの組み付け作業工程図である。 ロケット打ち上げシーケンスの各工程におけるペイロード保護装置Aの状態を表す図である。 ペイロード保護装置Aの変形例に関する説明図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるペイロード保護装置Aの構成概略図である。この図1に示すように、本実施形態におけるペイロード保護装置Aは、ロケットRの先端部に搭載されたペイロードP(例えば、人工衛星や探査機等)を保護するものであり、ペイロードフェアリング1、保護カバー2、ワイヤー3及び4から構成されている。
ペイロードフェアリング1は、ペイロードPを覆うようにロケットRの先端部に装着された中空のカバー部品である。このペイロードフェアリング1は、互いに結合された2つのフェアリング片1a及び1bから構成されており、これらフェアリング片1a及び1bの分離によって開頭動作が可能な2分割構造となっている。これらフェアリング片1a及び1bの結合部には、両者の結合に用いられている締結ボルトを爆破することで分離開頭を実現する分離機構(図示省略)が設けられている。
また、これらフェアリング片1a及び1bは、ヒンジ機構(図示省略)を介してロケットRの先端部に取り付けられており、宇宙空間において上記の分離機構が作動して締結ボルトが爆破されるとロケットRの中心軸線を中心として左右に分離傾倒(分離開頭)し、一定の傾き角度に到達した時点でヒンジ機構から外れて自動的に投棄されるものである。
さらに、フェアリング片1aには、ペイロードフェアリング1の内部を減圧して真空状態とするために、外部に設置された真空ポンプ(図示省略)との接続を可能とする真空引きポート1cが設けられている。なお、真空引き時間を短縮するために、フェアリング片1aだけでなく、フェアリング片1bを含むペイロードフェアリング1の全体に真空引きポート1cを複数設けても良い。
保護カバー2は、ペイロードフェアリング1の内側において、ペイロードPを覆うように設けられた伸縮性を有するカバー部品であり、例えば厚さ数ミリメートルの高分子系材料(ポリエチレン等)を用いて製作されたものである。つまり、本実施形態におけるペイロード保護装置Aは、ペイロードフェアリング1及び保護カバー2による二重保護構造を採用している。このとき、保護カバー2は柔軟性を有する素材や金属であってもよい。
ワイヤー3及び4は、ペイロードフェアリング1の開頭動作前において弛緩状態にある一方、ペイロードフェアリング1の開頭動作に伴って引張され、その引張力によって保護カバー2の頭頂部が切断されるように張られたステンレスワイヤーであり、ペイロードフェアリング1の開頭動作に対し時間遅れを持って保護カバー2の頭頂部を開放する保護カバー開放手段として設けられたものである。
詳細には、ワイヤー3は、フェアリング片1aの傾倒動作前において弛緩状態にある一方、フェアリング片1aの傾倒動作に伴って引張され、その引張力によって保護カバー2の頭頂部に右向き(フェアリング片1aの傾倒方向)の外力が加わるように、フェアリング片1aと保護カバー2との間に張られている。また、ワイヤー4は、フェアリング片1bの傾倒動作前において弛緩状態にある一方、フェアリング片1bの傾倒動作に伴って引張され、その引張力によって保護カバー2の頭頂部に左向き(フェアリング片1bの傾倒方向)の外力が加わるように、フェアリング片1bと保護カバー2との間に張られている。
つまり、ペイロードフェアリング1の開頭動作に伴ってフェアリング片1a及び1bの傾き角度が大きくなる程、ワイヤー3及び4によって保護カバー2の頭頂部を左右に引っ張る力が強くなり、その力が保護カバー2の引っ張り強度を上回った時点で保護カバー2の頭頂部が切断される構成となっている。このような構成により、ペイロードフェアリング1の開頭動作に対し時間遅れを持って保護カバー2の頭頂部が開放されることになる。
以上が本実施形態におけるペイロード保護装置Aの構成に関する説明であり、以下では図2を参照しながら打ち上げ射場におけるペイロード保護装置Aの組み付け作業工程について説明すると共に、図3を参照しながらロケット打ち上げシーケンスの各工程におけるペイロード保護装置Aの状態について説明する。
図2は、打ち上げ射場におけるペイロード保護装置Aの組み付け作業工程図である。まず、図2(a)に示すように、ロケットRの先端部にペイロードPを搭載した後、図2(b)に示すように、ペイロードPを覆うように保護カバー2をロケットRの先端部に装着する。なお、この時点では、保護カバー2がペイロードPに接触していても構わないが、ペイロードPの表面を傷つけないように注意を払う必要がある。
続いて、図2(c)に示すように、ペイロードフェアリング1(フェアリング片1a及び1b)と、ワイヤー3及び4の組み付け作業を行う。具体的には、まず、フェアリング片1aをヒンジ機構を介してロケットRの先端部に取り付け、フェアリング片1aと保護カバー2の間にワイヤー3を張った後、フェアリング片1aをロケットRに対して直立状態にさせる。
そして、フェアリング片1bをヒンジ機構を介してロケットRの先端部に取り付け、フェアリング片1bと保護カバー2の間にワイヤー4を張った後、フェアリング片1bをロケットRに対して直立状態にさせ、爆破による分離機構付きの締結ボルトを用いて、フェアリング片1a及び1bを互いに向かい合わせた状態で結合する。これにより、内部が密閉され且つ内部に保護カバー2及びペイロードPを収容するペイロードフェアリング1が完成する。また、この時点では、ワイヤー3及び4は弛緩状態となっている。
最後に、図2(d)に示すように、フェアリング片1aに設けられた真空引きポート1cと、外部に設置された真空ポンプとを接続し、真空ポンプによってペイロードフェアリング1の内部気圧を真空状態にまで減圧する。この時、保護カバー2の内部気圧と外部気圧との間に差圧が生じる(内部気圧の方が高い)ため、伸縮性を有する保護カバー2は膨張し、ペイロードPと保護カバー2との間に空間が形成される。なお、真空引き終了後、真空引きポート1cは閉じられ、以後、ペイロードフェアリング1の内部は真空状態に保持される。以上のような各作業によってペイロード保護装置AがロケットRに組み付けられ、ロケットRの打ち上げ準備が完了する。
図3は、ロケット打ち上げシーケンスの各工程におけるペイロード保護装置Aの状態を表す図である。まず、図3(a)に示すように、ロケットエンジンの点火によってロケットRの打ち上げが行われる(リフトオフ)。ここで、従来から、ロケット打ち上げ時に発生する音響振動が、ペイロードフェアリング1内の空気を介してペイロードPに伝達されることがペイロードPの破損原因の1つとして知られているが、本実施形態では、上記のようにペイロードフェアリング1内を真空状態としておくことで、音響振動からペイロードPを保護することができる。
また、本実施形態では、ペイロードフェアリング1の内側に保護カバー2を設けたため、ロケット打ち上げ時の振動衝撃によってペイロードフェアリング1の内壁から降り注ぐ塵埃からもペイロードPを保護することができる。なお、本実施形態では、従来と同様に、ペイロードフェアリング1がロケットRの先端部に装着されていることにより、ロケットRが宇宙空間に向けて飛翔している間に、ペイロードPが過酷な環境に曝されることを防ぐことができる。
そして、ロケットRは宇宙空間に到達後、ペイロードPの分離・軌道投入体勢に入る。この時、図3(b)に示すように、ペイロードフェアリング1の分離機構が作動して締結ボルトが爆破され、ペイロードフェアリング1は左右に分離開頭し始める(つまりフェアリング片1a及び1bが左右に傾倒し始める)。ここで、締結ボルトの爆破によって生じた破片が飛散するが、保護カバー2の頭頂部はペイロードフェアリング1の開頭動作に対し時間遅れを持って切断(開放)されるため、この時点では未だ保護カバー2の頭頂部は切断されておらず、締結ボルトの爆破によって生じた破片からペイロードPを保護することができる。
そして、図3(c)に示すように、ペイロードフェアリング1の開頭動作に伴ってフェアリング片1a及び1bの傾き角度が大きくなり、ワイヤー3及び4によって保護カバー2の頭頂部を左右に引っ張る力が保護カバー2の引っ張り強度を上回った時点で保護カバー2の頭頂部が切断され、ペイロードPが宇宙空間に露出する。なお、ペイロードフェアリング1の開頭動作がさらに進行し、フェアリング片1a及び1bの傾き角度が一定の傾き角度に到達すると、これらフェアリング片1a及び1bはヒンジ機構から外れて自動的に投棄される。この時、保護カバー2、ワイヤー3及び4も一緒に投棄される。
最後に、図3(d)に示すように、ペイロードフェアリング1、保護カバー2、ワイヤー3及び4が投棄された後、ペイロードPがロケットRから分離され、軌道に投入される。
ペイロードPの分離後、ロケットRも投棄され、ロケット打ち上げシーケンスは終了する。
以上説明したように、本実施形態におけるペイロード保護装置Aによれば、ロケット打ち上げシーケンス(リフトオフからペイロードPの分離まで)の全工程において、ロケットRに搭載されたペイロードPを確実に保護することが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態では、保護カバー開放手段として、ワイヤー3及び4を設けた場合を例示して説明したが、例えばこれらワイヤー3及び4に加えて、保護カバー2の頭頂部に発熱体を貼付するような構成を採用しても良い。つまり、発熱体から発せられる熱による温度上昇によって保護カバー2の頭頂部を溶解、または引っ張り強度を低下させることにより、ワイヤー3及び4による保護カバー2の切断を確実に行うことができるようになる。
このような発熱体としては、例えば、電熱線或いは太陽光を吸収する金属板を用いることができる。電熱線を用いる場合には、この電熱線に電流を供給するための電源が必要となるが、太陽光を吸収する金属板を用いる場合には、ペイロードフェアリング1が分離開頭し始めると、保護カバー2の頭頂部が太陽光に曝されて金属板が発熱するため、電源等を必要としないというメリットがある。また、保護カバー2の切断をより確実とするために、上記の保護カバー開放手段に加えて、保護カバー2の頭頂部を、他の部位より薄肉構造としても良い。
(2)上記実施形態及び変形例(1)では、ワイヤー3及び4の引張力によって保護カバー2の頭頂部を強制的に切断する場合を説明したが、例えば図4(a)に示すように、保護カバー2の頭頂部に、当該頭頂部を開閉自在とする、互いに嵌合する部分による開閉構造5を設け、ワイヤー3及び4の引張力によって開閉構造5が開くような構成を採用しても良い。この場合、ワイヤー3及び4は、ペイロードフェアリング1の開頭動作前において弛緩状態にある一方、ペイロードフェアリング1の開頭動作に伴って引張され、その引張力によって開閉構造5が開くように張られている(図4(b)、(c)参照)。
A…ペイロード保護装置、1…ペイロードフェアリング、1a、1b…フェアリング片、1c…真空引きポート、2…保護カバー、3、4…ワイヤー、5…開閉構造

Claims (6)

  1. ロケットに搭載されたペイロードを保護するペイロード保護装置であって、
    真空引きポートを有し、前記ペイロードを覆うように前記ロケットに装着されたペイロードフェアリングと、
    前記ペイロードフェアリングの内側において、前記ペイロードを覆うように設けられた保護カバーと、
    前記ペイロードフェアリングの開頭動作に対し時間遅れを持って前記保護カバーの頭頂部を開放する保護カバー開放手段と
    を具備し、
    前記保護カバー開放手段として、前記ペイロードフェアリングの開頭動作前において弛緩状態にある一方、前記ペイロードフェアリングの開頭動作に伴って引張され、その引張力によって前記保護カバーの頭頂部を開放するように張られたワイヤーを具備する
    ことを特徴とするペイロード保護装置。
  2. 前記ワイヤーは、前記保護カバーの頭頂部が切断されるように張られていることを特徴とする請求項1に記載のペイロード保護装置。
  3. 前記保護カバー開放手段として、前記ワイヤーに加えて、前記保護カバーの頭頂部に貼付された発熱体を具備することを特徴とする請求項2に記載のペイロード保護装置。
  4. 前記発熱体は、電熱線或いは太陽光を吸収する金属板であることを特徴とする請求項3に記載のペイロード保護装置。
  5. 前記保護カバーの頭頂部は、他の部位より薄肉構造となっていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のペイロード保護装置。
  6. 前記保護カバーは、前記頭頂部を開閉自在とする、互いに嵌合する部分による開閉構造を有し、
    前記ワイヤーは、前記開閉構造が開くように張られていることを特徴とする請求項1に記載のペイロード保護装置。
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