JP5567115B2 - 手術器具 - Google Patents

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Description

本発明は、内視鏡下又は腹腔鏡下手術用に設計された手術器具に関する。
内視鏡下又は腹腔鏡下手術等の最小侵襲手術の領域において、手術野への接近は患者の身体(腹部又は胸部等)の小切開部を介して行なわれる。この小切開部に術者は直径が3〜15mmで変動する管により形成されるカニューレを配置し、このカニューレを介して術者は、モニタ上へビデオ画像を得るための内視鏡又は手術野で処置を行なうための長尺かつ微小な器具のいずれかを患者の身体内に挿入することができる。
多くの既存の器具は微小(一般に直径5mm程度)且つ剛直な細長い本体(一般に長さ30cm程度)により構成される。器具の近位端は術者用の把持ハンドルを含み、器具の遠位端には、鉗子又は任意で電流を伝導して切除することができる鋏(単極又は双極)が取り付けられることが多い。
腹腔鏡下手術の主な利点は最小限の切開部にあるが長尺の器具での遠隔操作では手際が悪くなってしまうなどの制約もある。実際に、器具が剛直である場合には、一定の切開点を介して器具を挿入することは平面的に運動制限となり、自由度(DoF)が、切開点を中心とした回転運動を3つと、器具の貫入並進運動との4つに制限されてしまう。特に、剛直な従来の腹腔鏡下手術用の器具では、器具の遠位端を屈曲させて鉗子を術者に対して最適に配向することは不可能である。これは外科的処置における腹腔鏡下手術道具の適用を大きく制限している。
このため、器具の主要本体に関して可動性を呈する遠位端を含む新規な器具の開発がおこなわれるようになった。例えば、縫合処置では外科医は湾曲した針を用いるがこの処置を最適な条件で行なう場合、外科医は、
1.針の平面が鉗子の軸に対して垂直になるように針を把持し、
2.針の平面を縫合対象の縁部に対して垂直に配置し、
3.針の平面に対して垂直な軸に従って針を回動させて縫合対象の組織内に針を挿入させる。
従って、好ましい条件で縫合を行なうためには、器具の軸を縫合対象の縁部に対して略平行に配置し、鉗子を軸のまわりで回動させなければならない。一部の処置においては、手術野に対する切開点の配置が、剛直な器具を用いると鉗子の軸を縫合対象の縁部と整合させることができないような配置となり、縫合を行なうことが実質的に難しくなる。こうした理由から、遠位側の可動性により鉗子の軸を器具の主挿入軸に対して配向することができる器具が開発された。
また、針の貫入を制御する鉗子自体の最終的な回転運動(鉗子の固有回転)は、組織を穿通するだけの十分な力を加えながら鉗子の軸の方向に対して高い精度と最大限の安定性をもって行なわれなければならない。
遠位側の可動性を有する器具は、米国特許第7,338,513号、米国特許第7,316,681号、米国特許第7,398,707号及び米国特許出願公開第20080228196号の各文献に説明されている。
これらの文献に記載の器具は、鉗子の軸を器具の主挿入軸に対して、この主挿入軸に対して垂直な何らかの軸のまわりで行なわれる回転に従って配向することができるようになっている。これは、可撓性スリーブ及びケーブルを用いたシステム(米国特許第7,338,513号)又は2つの垂直なピボットジョイントを用いること(米国特許第7,398,707号)のいずれかによって行われる。いずれの場合も、使用される機構により主挿入軸と鉗子の軸との間における2つの回転自由度がもたらされる。このため、挿入点のレベルに配置されるカニューレによってもたらされる主挿入軸の固有回転を用いることにより、3つの回転を組み合わせてあらゆる鉗子の好適な配向を創出することが可能になる。しかし、縫合処置の上述の動き、即ち鉗子の固有回転を創出するためには、一般にこれらの3つの動きを複雑に組み合わせること及びこれらの動きを同期させることが、これらの動きの発動レベルで必要とされ、処置の遂行が非常に複雑になる。スリーブとケーブルとを有する設計(米国特許第7,338,513号)の場合は、組立体の剛性が不十分であり、力を加えたときに、困難無くして鉗子の軸を安定に保って軸自体を回動させることはできない。ピボットと3つの複合回転とを有するシステムの場合は、動きの同期を実現するためには複雑なロボットシステムが必要になる(米国特許第7,398,707号)。
その他の文献に、鉗子の動きを3つの回転を組み合わせることによらずに行なわれる器具が記載されている。米国特許第7,241,288号では、鉗子は歯車系により操作され、鉗子を屈曲させること(鉗子の軸の配向)又は自身の軸のまわりにおいて配向すること(固有回転)のいずれかが可能である。しかし、これらの動きのいずれかを制御するためには、機械クラッチを用いなければならない。このため、これらの動きが独立した近位側の動きにより直接制御されるわけではない。
米国特許第6,913,613号に記載の器具は、遠位側の鉗子を自身の軸に従って配向することを可能にする、自身の軸に従った捩れに対しては剛直である可撓性のロッドと、この鉗子の傾斜を道具の軸に対して制御する剛直な制御ロッドとを含む。これらの2つのロッドは管体内において延在する。この器具は製作が難しく複雑である。
米国特許第7,338,513号 米国特許第7,316,681号 米国特許第7,398,707号 米国特許出願公開第20080228196号
本発明の目的は、簡単に使用することができ、上述の制限事項及び欠点の少なくとも1つに対処することができる手術器具を提供することである。
この目的のために、
− 長手軸に従った細長アームであって、当該細長アームにピボットジョイントを用いて前記長手軸に対して実質的に直交する軸に従って取り付けられる遠位端を有する細長アームと、
− 細長アームと実質的に同軸をなす駆動シャフトであって、ピボットジョイントに面する(向かい合う)ユニバーサルジョイント(自在継手)を形成する手段を含む駆動シャフトと、
− 駆動シャフト上にしっかりと固定されるとともに細長アームの遠位端上及び該遠位端の延長線上において回転可能に取り付けられた遠位側道具であって、互いに異なる独立した2つの回転自由度、すなわち、一方が細長アームの長手軸に対して略垂直な軸のまわりの回転自由度、他方が遠位側道具の自らの軸に対して実質的に共線をなす軸のまわりの回転自由度、を有するようになっている遠位側道具と
を含む手術器具であって、
細長アームは直列に取り付けられてピボットジョイントを形成する複数のリンク要素を含み、ユニバーサルジョイントを形成する手段はカルダンジョイントを含むことを特徴とする手術器具を提供する。
ここで、慣用的用語において、ユニバーサルジョイントとは、2つの軸を接続するために用いられ、一方の軸が他方の軸に対していかなる角位置にあっても、一方の軸の回転運動が他方の軸に伝達されるようになっているキネマティックジョイントである。いくつかの種類のユニバーサルジョイントがあり、カルダンジョイントはその具体的な一例である。基本的に、カルダンジョイントは、中央要素の両側に取り付けられる2つの端部要素を含む機械的連結システムによって構成され、各端部要素は中央要素とピボットジョイントをなして取り付けられ、中央要素内の2つのピボットジョイントの軸は垂直である。
本発明によれば、直接伝達を可能にすることにより、鉗子の軸位置の修正或いは動きの再編成をクラッチシステムを使用することなしに行い、鉗子の自らの軸のまわりにおける無限回転が創出される。全ての回転は独立的に維持及び/又は発動される。更に、必要な場合には全てを同時に回転させることができる。回転を逆転又は取消さなくても、また別の回転に関するあらゆる動きができる。このため、遠位側の動きが最適に選択されて、器具を簡単に制御しながら例えば縫合処置を行なうことができる。カルダンジョイントをユニバーサルジョイントとして、直列に取り付けられるリンク要素と組み合わせて用いることにより、器具の製造は大幅に単純化される。
任意であるが、手術器具は以下の特徴の少なくとも1つを個別に又は組み合わせで有しているのが有利である。
− 2つの隣接するリンク要素は有限ピボットジョイントを用いて互いに取り付けられる。
− 各リンク要素は、隣接するリンク要素の方へと延在する2つのラグ部を含む中空筒形要素であり、ラグ部は互いに対向して有限ピボットジョイントを形成する。
− ユニバーサルジョイントを形成する手段は、直列に取り付けられるリンク要素間の有限ピボットジョイントと同じ個数のカルダンジョイントを含む。
− ユニバーサルジョイントを形成する手段は、少なくとも2つのカルダンジョイントを含み、細長アームは、直列に取り付けられて2つの有限ピボットジョイントを有するピボットジョイントを形成する少なくとも3つのリンク要素を含む。
− 各カルダンジョイントは、直列に取り付けられるリンク要素によって形成される(複数の)有限ピボットジョイントの1つに向かい合い(面し)、各カルダンジョイントは対応する有限ピボットジョイントのピボット軸と交差する2つのピボット軸を備える。
− カルダンジョイントは、中央要素の両側に取り付けられる2つの端部要素を含み、各端部要素は垂直なピボット軸に従い、ピボットジョイントを用いて中央要素に取り付けられ、各々の端部要素と中央要素との間のピボットジョイントは対応する接触面のガイドされた摺動によってもたらされる。
− 中央要素は2つの垂直な直径方向の平面上にくり抜かれる2つの溝を有する球体の形状を有し、端部要素は、この球体上で摺動することができるように形成される凹面を備えた端部を有する。
− 端部要素の凹面は更に、球体の溝に対して補完的な形状を有する突出した畝部を含んで、突出した畝部は端部要素を中央要素上で摺動させるガイドレールの役割を果たす。
− カルダンジョイントの端部要素及び中央要素は、長手軸に沿って貫通穴を含み、この貫通穴を介して1本以上のケーブルが細長アーム内において延在する。
− 遠位側道具の作動ケーブルが貫通穴を介して細長アーム内において延在し、この作動ケーブルはシースにより包囲される。
− 駆動シャフトは更に、長手軸に沿った細長アームに対する並進移動に従って摺動的に取り付けられ、ユニバーサルジョイントを形成する手段は、直列に取り付けられる2つのカルダンジョイントを含む。
− 細長アームは中空であると共に、少なくとも部分的に駆動シャフトを外囲する。
− 手術器具が更にハンドルと伝達装置とを含み、ハンドルは細長アームの近位端に接続され、2つの自由度に従った動きは、伝達装置により、ハンドルにおいて生じしめられた2つの独立した動きに結合される。
− 手術器具が、道具の独自の軸のまわりにおける回転の大きさが伝達装置によって構造的に制限されないように構成される。
本発明のその他の特徴及び利点は以下の説明から明らかになるであろうが、以下の説明は、単に例証のために提示するものであって本発明をいかなる形でも制限するものではなく、且つ添付図面を参照して読まれるべきである。
本発明の第1の実施形態による手術器具の遠位端の側面図である。 図1の手術器具の二分割図である。 遠位端が完全折畳み状態にある図1の手術器具の側面図である。 遠位端が真直状態にある図1の手術器具の側面図である。 本発明の第2の実施形態による手術器具の分解側面図である。 図4の手術器具の遠位端の側面図である。 図1の手術器具に関する図3aと同様の側面図である。 図1の手術器具に関する図3bと同様の側面図である。 完全折畳み状態にある図4の手術器具の遠位端のピボットジョイントの駆動機構の断面図である。 真直状態にある図4の手術器具の遠位端のピボットジョイントの駆動機構の断面図である。 本発明の第3の実施形態による手術器具の分解図である。 図8の手術器具の遠位端の断面図である。 真直状態にある図8の手術器具の遠位端のピボットジョイントの駆動装置の、作動ワイヤのみを示す機構図である。 完全折畳み状態にある図8の手術器具の遠位端のピボットジョイントの駆動装置の、作動ワイヤのみを示す機構図である。 本発明の第4の実施形態による手術器具の分解斜視図である。 図11の手術器具の分解斜視図のAで示す部分の拡大図である。 遠位端が真直状態にある図11の手術器具の斜視図である。 遠位端が真直状態にある図11の手術器具の断面図である。 遠位端が完全折畳み状態にある図11の手術器具の斜視図である。 遠位端が完全折畳み状態にある図11の手術器具の断面図である。
図1及び2を参照して、本発明による手術器具の第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による手術器具1の遠位部分の図である。手術器具1は、ここでは長手軸(図示せず)に従った回転柱面形状の細長アーム11を含む。細長アームは中空であり、遠位部分において、細長アーム11の長手軸に対して略直交する軸10を含み細長アームの一部分の直径に従って延在する連結手段により長手方向に終端する半円周上の開口を有する。これらの連結手段は細長アームを、これに対して補完的な連結手段を含む遠位端2に接続する。これにより、細長アーム11と遠位端2との間にピボットジョイントが形成される。ここで、遠位端2は中空であって、軸のまわりにおいて回転柱面形状をなし、端面12のレベルを除いて半円周上において遠位端2の略全長にわたって開口する。遠位端2の部分は細長アーム11の部分と略同一である。従って、展開した状態では、図1及び2に示すように、遠位端2は細長アーム11の長手方向延長線上に延在して、細長アーム11の長手軸が遠位端2の軸と一致する。端面12は、遠位端2の軸に沿って外方に向かって突出して延在する軸の部分を含む。この場合は鉗子である遠位側道具9は、遠位端2の軸に従った延長線上において端面12の軸の部分上に回転可能に取り付けられる。近位端のレベルにおいて、細長アーム11は、長手アーム11の長手軸である軸方向穴13を含む端面を有する。
本発明による手術器具1は、細長アーム11とほぼ同軸をなして取り付けられて細長アーム11内において穴13から遠位側道具9まで延在する駆動シャフト3を含み、駆動シャフト3は遠位側道具9と結合して遠位側道具9をその軸のまわりで回転動作させることができる。駆動シャフト3は、ここでは自身の軸に従って回転自在、且つ、細長アーム11の軸に対する並進移動に従って摺動自在である。駆動シャフト3は、自身の遠位端において、図1に示すように遠位端2及び細長アーム11の半円周上に形成される開口内へと延在するユニバーサルジョイント(自在継手)4、5、6、7及び8を形成する手段を含む。これにより、ユニバーサルジョイントはピボットジョイントの方を向いて、即ちユニバーサルジョイントはピボットジョイントの回転運動を伴うように構成される。
ここで、上記の本発明の実施形態において、ユニバーサルジョイントを形成する手段は、駆動シャフトの部分6により第2のカルダンジョイント7、8と直列に取り付けられる第1のカルダンジョイント4、5を含む。本明細書では、従来の用語で、カルダンジョイントは、中央要素の両側に取り付けられる2つの端部要素を含む機械的連結システムを指し、各端部要素は中央要素とピボットジョイントをなして取り付けられる。加えて、中央要素とそれぞれ2つの端部要素との間の2つのピボットジョイントの軸は垂直である(即ち直交し交差する)と共に、同じ点で結合されて、それぞれ端部要素から延在する2つの軸間における角回転運動の伝達が可能になる。
図1及び2に示す例では、カルダンジョイントは支柱の形態をとる中央部材を含み、この支柱の分枝部は端部材4、5及び7、8がピボットジョイントをなして取り付けられる軸を形成する。
遠位側道具9により果たされる機能は、この目的のために中空とされる駆動シャフト3の内側に延在するケーブルによって制御される。このケーブルは耐性金属により製作されるが、依然として十分な可撓性を維持して、ピボットジョイントを軸10のまわりで用いたときに遠位端2の動きに追随する。
図3a及び3bを参照して、本発明による手術器具1の機能を以下に簡単に説明する。図3aは90°程度に折畳んだ状態を示し、図3bは展開した状態を示している。いずれの場合も駆動シャフトの近位端に加えられる回転運動15が遠位側道具9の回転運動14を引き起こす。この回転運動の完璧な伝達は、ユニバーサルジョイントを形成する手段によって可能とされ、このためピボットジョイントの軸10のまわりで旋回する遠位端2の折畳みの度合いを問わない。折畳んだ状態から展開した状態への(或いは2つの異なる折畳んだ状態間の)移行は、駆動シャフト3が自らの軸に従って並進移動することによって行なわれる。駆動シャフトの近位端をこの並進移動に従って移動させるときに、操作者は遠位側道具9の配向を制御する。これにより、ケーブルの存在を排除して、この配向を達成することができる。実際には、この並進移動により、細長アーム1と遠位端2との間のピボットジョイントの軸10と細長アーム11の軸上における遠位側道具9のあらゆる点の正投影との間の距離が変化する。遠位端11が剛性であるために軸10のまわりにおける回転運動が引き起こされて、折畳み状態(又は展開)がもたらされ、駆動シャフトは、ユニバーサルジョイントを形成する手段により、この動きに追随する。
次に、図4及び5を参照して、本発明による第2の実施形態の手術器具100を説明する。本発明による手術器具100は、ここでは長手軸(図示せず)に従った回転柱面形状の細長アーム111を含む。細長アーム111は遠位側において、細長アーム111の長手軸に対して略垂直な軸110を有する基部リンク要素101を含む。細長アーム111は更に、近位端の穴112と基部リンク要素101の軸110と同様であると共に第2のリンク要素101の遠位端に配置される軸110とを有する第2のリンク要素102を含む。第2のリンク要素102は、基部リンク要素101の軸110と第2のリンク要素102の穴112とが協働して、以ってピボットジョイントを形成することにより、基部リンク要素101に回転可能に取り付けられる。細長アーム111は更に、近位端において第2のリンク要素102の穴112と同様の穴112を有する第3のリンク要素105を含む。同様に、第3のリンク要素105は、第2のリンク要素102の軸110と第3のリンク要素105の穴とが協働して、以って第2のピボットジョイントを形成することにより、第2のリンク要素102に回転可能に取り付けられる。この第3のリンク要素105は、細長アーム111の遠位端を形成する。第3のリンク要素の遠位端には、この場合は鉗子である遠位側道具9が第3のリンク要素105の延長線上に取り付けられる。この遠位側道具は、該道具に取り付けられた第3のリンク要素105の長手軸のまわりにおいて回転可能に取り付けられる。変形態様の実施形態として、いくつかのリンク要素102を基部リンク要素101と遠位側道具9を担う第3のリンク要素105との間に直列に取り付けることができる。従って、遠位側道具9は細長アーム111の遠位端上及び該遠位端の延長線上において回転可能に取り付けられる。第3のリンク要素105により形成される細長アーム111の遠位端は、第3のリンク要素のピボットジョイントに従って取り付けられる。
本発明による手術器具100は、細長アーム111とほぼ同軸をなして取り付けられて、細長アーム111のまわりにおいて実質的に細長アーム111の近位端から実質的に基部リンク要素101の近位部分まで延在する駆動シャフト103を含む。駆動スリーブ104は駆動シャフト103の遠位端に駆動シャフトの延長線上において堅固に取り付けられる。駆動スリーブ104は遠位側道具9に取り付けられて、遠位側道具9を駆動してその軸のまわりで回転運動させるようにする。駆動スリーブ104は、一旦取り付けられると、図5に示すように、基部リンク要素101、第2のリンク要素102および第3のリンク要素105のまわりに延在する。駆動シャフト103と、以ってスリーブ104とは、細長アーム111に対して自身の軸に従って自由に回転する。駆動スリーブ104はユニバーサルジョイントを形成する手段を形成する。駆動スリーブ104は長手軸に従った捩り応力に対して剛直であると共に、長手軸に対して垂直なあらゆる軸に従った捩り応力に対しては可撓性で弾性変形が可能である。ある軸に従った捩りは、平行平面上で作用する2つの逆方向の偶力の作用によって生じられ、その軸のまわりにおける捻れに対応する。図4及び5の実施形態において、駆動スリーブは、駆動シャフト103の長手軸のまわりにおける回転運動を遠位側道具9に伝達するように長手軸に従った捩り応力に対して剛直(剛性)であり、基部リンク要素101と第2のリンク要素102と第3のリンク要素105との間のピボットジョイントを用いると容易に変形させることができるように長手軸に対して垂直なあらゆる軸に従った捩り応力に対しては可撓性(フレキシブル)で弾性変形が可能であるベローズを含む(図6a及び6b参照)。ベローズは例えば金属であってよい。あらゆるその他の適合材料を用いて、このベローズを製作することができる。
遠位側道具9により果たされる機能は、この目的のために中空とされる細長アーム111の内側に延在するケーブルによって制御される。このケーブルは耐性金属により製作されるが、依然として十分な可撓性を維持して、ピボットジョイントを軸110のまわりで用いたときに遠位端の動きに追随する。同様に、基部リンク要素101と第2のリンク要素102と第3のリンク要素105との間のピボットジョイントの使用は、一方では細長アーム111の内側においてほぼ互いに平行で細長アーム111の長手軸に対して平行をなして延在し、他方ではこの長手軸の両側に離間する2本のケーブル130及び131(図7a及び7b参照)を手段として達成される。各ケーブル130(131)は第3のリンク要素105に固着的に締結される遠位端132(133)を有する。一方のケーブルに牽引力135を加えることにより、図7bに示すように上述のピボットジョイントを用いることができる。これらの異なるケーブルは、これらのケーブルを保護するだけではなく、同時に主挿入軸に従って配置されるケーブルの長さが手術器具の屈曲に依存しないようにして、これらのケーブルを主軸の湾曲に従わせるシースにより外囲される。これにより、例えば遠位側道具9を作動させるケーブルを引くことによって遠位側道具9を細長アーム207に対して枢動させるときに周囲の構造に対する力が創出されることを防ぐことができる。
次に、本発明による手術器具100の作用を簡単に説明する。図6b(7b)に90°程度の折畳んだ状態が示されており、他方、図6a(7a)には展開した状態が示されている。いずれの場合も駆動シャフトの近位端に加えられる回転運動120が遠位側道具9の回転運動121を引き起こす。この回転運動の完璧な伝達は、ユニバーサルジョイント(駆動スリーブ104)を形成する手段によって可能とされ、このことはピボットジョイントの軸110のまわりで旋回する遠位端2の折畳みの度合いを問わない。折畳んだ状態から展開した状態への(或いは2つの異なる折畳み状態間の)移行は、ケーブル130、131の一方をその軸に従って並進移動135を起こさせることによって行なわれる。これらのケーブルの一方をこの並進移動に従って移動させることにより、操作者は遠位側道具9の配向を制御する。
次に、図8及び9を参照して、本発明による第3の実施形態の手術器具200を説明する。本発明による手術器具200は、ここでは長手軸(図示せず)に従った回転柱面形状の細長アーム207を含む。細長アーム207は中空であると共に、遠位側において、中空の基部リンク要素201を含み、この基部リンク要素は細長アーム207の延長線上に延在し互いに対向して細長アーム207の長手軸に対して略垂直な軸210を形成する2つのラグ部を含む。細長アーム207は更に、第2の中空リンク要素202、203(中間リンク要素とも呼ばれる)を含み、これらの第2のリンク要素は該第2のリンク要素202、203の延長線上に延在し互いに対向して基部リンク要素201の軸210と同様の軸210を形成する、該第2のリンク要素202、203の遠位端に配置される2つのラグ部を含む。第2のリンク要素202は、基部リンク要素201上において軸210に対して回転可能に取り付けられて、以ってピボットジョイントを形成する。同様に、第2のリンク要素202及び203は互いの軸210に対して回転可能に取り付けられて、以って第2のピボットジョイントを形成する。細長アーム207は更に第3の中空リンク要素204(端部リンク要素とも呼ばれる)を含む。同様に、この第3のリンク要素204は第2のリンク要素203上において軸210に対して回転可能に取り付けられて、以って第3のピボットジョイントを形成する。この第3のリンク要素204は細長アーム207の遠位端を形成する。
第3のリンク要素204の遠位端には、ここでは鉗子である遠位側道具9が第3のリンク要素204の延長線上において取り付けられる。遠位側道具9は、第3のリンク要素204上において第3のリンク要素の長手軸のまわりで回転可能に取り付けられる。変形態様の実施形態として、2つを超える個数のリンク要素202、203を基部リンク要素201と遠位側道具9を担う第3のリンク要素204との間に直列に取り付けることができる。従って、遠位側道具9は、細長アーム207の遠位端上及び該遠位端の延長線上において回転可能に取り付けられる。第3のリンク要素204により形成される細長アーム207の遠位端は、第3のリンク要素上のピボットジョイントに従って取り付けられる。
変形態様の実施形態として、第3のリンク要素204は直接、基部リンク要素201上に直列に取り付けられる。また他の変形態様の実施形態として、単一の第2のリンク要素202が第3のリンク要素204と基部リンク要素201との間に直列に取り付けられる。
全てのリンク要素(201、202、203、204)は、直列に取り付けられるとピボット機能を達成する分節要素である。このリンク要素(201、202、203、204)の組立体は、各々の椎骨が細長アーム207の長手軸に対して垂直なピボット軸210に従ってピボットジョイントを用いてその前の椎体に取り付けられる1組の略円筒形の中空椎体と同様であってよい。このようなピボットジョイントは、有限ピボットジョイント又は、旋回角範囲がリンク要素の形状によって構造的に制限されるため、限定ピボットジョイントとも呼ばれる。ピボットジョイント210の全ての軸は平行になって、全屈曲角が各対をなす椎体間の回転角の総計となるようになる。一連の有限ピボットジョイントは、全体ピボットジョイントに対応する本体全体に関して累計的な枢動をもたらす。
好適な実施形態によれば、中空椎体は略円筒形である。これらの椎体は、1つを別の1つに対してピボット210の軸に従って摺動させることにより、互いにパズル片のように組み付けることができる。従って、ロッドを用いてピボットジョイントを物理的に形成しなくてもよくなり、ピボットジョイントは現実には後続の椎体上に構成される補完的形状を有する各椎体のラグ部の協働によって達成され、この補完的形状は例えば椎体を形成する円筒体の縁部により形成される切欠部である。このような構成により、組立体の組立ては大幅に単純化される。加えて、このような構成は、椎体の内壁又は外壁に窪み又はまた他の構造を導入することなしにピボットジョイントが形成されて、一方では椎体の内側の余地の減少を確実に排除することができると共に、他方では手術器具の挿入用トロカール内における変位を妨げかねない要素を有さない平滑な手術器具を確保できるという利点をも有する。椎体は何らかの手段により互いに入れ子状態の位置に保たれるが、好ましくは椎体を貫通するピボットジョイント作動ケーブル及び/又は椎体の内側に配置される要素により保持され、この位置の確保は特に椎体を重ね合わせることによって保たれる。その他の椎体結合方法、例えばラグ部の内面から延在するエンボシング部と協働する穴を椎体の表面上に設けて、例えば挟着による固定を可能にすることも可能である。好適な実施形態によれば、全ての椎体は同一であるが、必ずしもそうでなくてもよい。
上述のような1組の椎体によりピボット機能を確保することには数々の利点がある。まず、既に指摘したように、特殊な組立て(入れ子式/パズル式及び更には挟着による)により、手術器具に必要なその他の機械的機能を設けることができるだけの十分に大きな内部空間を維持することができる。加えて、本発明の構成では、小型の部材を用いると共に5mm程度の手術器具外径を保証して、かなりの旋回角範囲と手術器具を操作する上で十分な組立体の剛性とを確保することができる。実際に、一連の連続する椎体で一般的に利用されているもは90°の角範囲であるが、2つの連続する椎体間における各ピボットにより少なくとも20°の角範囲(有限ピボットジョイントと見なされる角範囲に対応する)を達成することができる。更にまた、本発明の構成により、手術器具の巧みな操作に必要とされる剛性、特に全体ピボットの軸に直交する軸に従った捩り剛性を確保することができ、これは特に椎体の全円筒形状と椎体の特殊な結合とによる。加えて、ピボット軸210が細長アーム207の長手軸に対して垂直をなすため、椎体のラグ部を直径方向に軸に従って円筒状本体内に配置することが可能になって、これらのラグ部が円筒外壁に対して突出するのを防ぐことができる。
図8〜10に示す実施形態による手術器具200は、細長アーム207とほぼ同軸をなして取り付けられて、細長アーム207内において実質的に細長アーム207の近位端から実質的に基部リンク要素201の近位端まで延在する駆動シャフト3を含む。駆動スリーブ206は駆動シャフト3の遠位端に駆動シャフトの延長線上において堅固に取り付けられる。駆動スリーブ206は遠位側道具9に固着的に取り付けられて、遠位側道具9を駆動してその軸のまわりで回転運動させるようにする。駆動スリーブ206は、一旦取り付けられると、図9に示すように、基部リンク要素201と第2のリンク要素202、203と第3のリンク要素204との範囲内に延在するように構成される。駆動シャフト3と、以ってスリーブ206とは、細長アーム207に対して自身の軸に従って自由に回転する。駆動スリーブ206はユニバーサルジョイントを形成する手段を形成する。このフレキシブル駆動スリーブは長手軸に従った捩り応力に対して剛直であると共に、長手軸に対して垂直なあらゆる軸に従った捩り応力に対しては可撓性で弾性変形が可能である。図8及び9の実施形態において、駆動スリーブは、駆動シャフト3の長手軸のまわりにおける回転運動を遠位側道具9に伝達するように長手軸に従った捩り応力に対して剛直であり、基部リンク要素201と第2のリンク要素202、203と第3のリンク要素204との間のピボットジョイントを用い、容易に変形させることができ、長手軸に対して垂直なあらゆる軸に従った捩り応力に対しては可撓性で弾性変形が可能であるベローズを含む。ベローズは例えば金属であってよい。あらゆるその他の適合材料を用いて、このベローズを製作することができる。
遠位側道具9により果たされる機能は、この目的のために中空とされる駆動シャフト3の内側に延在するケーブルによって制御される。このケーブルは耐性金属により製作されるが、それでいて十分な可撓性を維持して、ピボットジョイントを軸210のまわりで用いたときに遠位端の動きに追随する。同様に、基部リンク要素201と第2のリンク要素202、203と第3のリンク要素204との間のピボットジョイントの使用は、細長アーム207の内側において基部リンク要素201の近位部分から延在するケーブル212(図10a及び10b参照)を手段として達成される。ケーブル212は第3のリンク要素204に固着的に締結される遠位端211を有する。このケーブルの一部分214は、細長アーム207の外側において第2のリンク要素202、203に対向して延在する。このケーブルに牽引力213を加えることにより、図10bに示すように上述のピボットジョイントを用いることができる。変形態様として、ケーブル212の直径方向反対側に配置される第2のケーブルを用いることができる。また他の変形態様としては、ケーブルの一部分214が第2のリンク要素の内側に延在する(第2のケーブルが用いる場合は、この第2のケーブルも第2のリンク要素の内側に延在させることができる)。これらの異なるケーブルは、該ケーブルを保護するだけではなしに、同時に主挿入軸に従って配置されるケーブルの長さが手術器具の屈曲に依存しないようにして、これらのケーブルを主軸の湾曲に従わせるシースにより外囲されてよい。これにより、例えば遠位側道具9を作動させるケーブルを引くことによって遠位側道具9を細長アーム207に対して枢動させるときに周囲の構造に対する力が創出されることを防ぐことができる。
次に、本発明による手術器具200の機能を簡単に説明する。図10bに90°程度の折畳んだ状態が示されており、他方、図10aには展開した状態が示されている。いずれの場合も駆動シャフトの近位端に加えられる回転運動が遠位側道具9の回転運動を引き起こす。この回転運動の完璧な伝達は、ユニバーサルジョイント(駆動スリーブ206)を形成する手段によって可能とされ、このことはピボットジョイントの軸210のまわりで旋回する遠位端の折畳みの度合いを問わない。折畳んだ状態から展開した状態への(或いは2つの異なる折畳み状態間の)移行は、ケーブル212を該ケーブルの軸に従って並進移動させることによって行なわれる。このケーブルをこの並進移動に従って移動させることにより、操作者は遠位側道具9の配向を制御する。
次に、図11〜16を参照して、本発明による第4の実施形態の手術器具300を説明する。本発明による手術器具300は、本発明の第3の実施形態による手術器具200の細長アーム207と同様の形状を有する細長アーム307を含む。従って、細長アーム307は、ピボット機能を果たす1つ以上のリンク要素を含み、この1組のリンク要素は、各々の椎体が細長アームの軸に対して垂直なピボットジョイント軸に従ってその前の椎体に取り付けられる1組の中空椎体と同様であってよい。
より正確には、本発明の第4の実施形態において、細長アーム307は、ピボットジョイント(オーバーオールピボットジョイントとも呼ばれる)を形成する5つのリンク要素(301、302、303、304、305)を含む。細長アーム307は中空であり、遠位側において、中空の基部リンク要素301を含み、この基部リンク要素は細長アーム307の方向に延在し互いに対向して細長アーム307の長手軸に対して略垂直な軸310を形成する1組のピボットラグ部(雌側のみ)を含む。細長アーム307は更に、中空の中間リンク要素(302、303、304)を含み、これらの中間リンク要素は該中間リンク要素(302、303、304)の延長線上に延在し互いに対向して基部リンク要素301の軸310に対して平行な軸のまわりでの回転を可能にし、該中間リンク要素(302、303、304)の遠位端に配置される2つのラグ部を含む。中間リンク要素302は、基部リンク要素301上において軸310に対して回転可能に取り付けられて、以って第1の有限ピボットジョイント(リンク要素の形状が自然に旋回範囲を制限するため、限定ピボットジョイントとも呼ばれる)を形成する。同様に、中間リンク要素(302、303、304)は軸310に対して互いに回転可能に取り付けられて、以って第2及び第3の有限ピボットジョイントを形成する。細長アーム307は更に中空の端部リンク要素305を含む。同様に、この端部リンク要素305は最後の中間リンク要素304上において軸310に対して回転可能に取り付けられて、以って第4の有限ピボットジョイントを形成する。この端部リンク要素305は細長アーム307の遠位端を形成する。一連の有限ピボットジョイントは、全体ピボットジョイントに対応する本体全体に関して累計的な枢動をもたらす。ピボットジョイント310の全ての軸は平行であり、全屈曲角が各対をなすリンク要素間の回転角の総計となるようにする。加えて、椎体は穿孔されて、2本のケーブル(312、314)をピボットジョイント310の軸の両側に配置することが可能になっている。ケーブル(312、314)は最後の椎体に取り付けられると共に、その他の椎体の開口内において摺動し、これによって取付け後に2本のケーブル(312、314)のどちらかを引くことにより全てのピボットジョイントを作動させると共に、以って屈曲させることが可能になる。
手術器具300は、細長アーム307とほぼ同軸をなして取り付けられて、細長アーム307内において実質的に細長アーム307の近位端から実質的に基部リンク要素301の近位部分まで延在する駆動シャフト3を含む。駆動シャフト3は、自身の遠位端において、異なるリンク要素により形成される空洞部内に延在するユニバーサルジョイントを形成する手段を含み、これらのユニバーサルジョイントを形成する手段は少なくとも1つのカルダンジョイントを含む。ユニバーサルジョイントを形成する手段は、好ましくは2つのカルダンジョイントを含む。全範囲の動作(長手方向及び半径方向の回転)を維持するために、ユニバーサルジョイントを形成する手段は、より好ましくは椎体(301、302、303、304、305)により形成されるピボット軸310の個数と同じ個数のカルダンジョイントを含む。従って、図11〜16に示す例では、それぞれ異なるリンク要素(301、302、303、304、305)間に形成されるピボット軸310のレベル、即ち対応するピボットジョイントに隣接して配置される4つのカルダンジョイント(320、330、340、350)が設けられる。この実施形態の好適な態様によれば、各カルダンジョイントを形成する2つのピボットジョイントの軸は、それが配置されるレベルでピボット軸310と交差する。
既に指摘したように、カルダンジョイントは、中央要素の両側に取り付けられる2つの端部要素を含む機械的連結システムであり、各端部要素は中央要素とピボットジョイントをなして取り付けられる。図11〜16に示す実施形態において、カルダンジョイントを形成する部材間のピボットジョイントは表面同士のガイドされた摺動によってもたらされる。これを達成するために、例えば中央部材の表面上において摺動する表面を自身の端部に有する端部材を用いることができ、これらの中央部材及び端部材は摺動ガイド手段も含む。
従って、図12から明らかなように、カルダンジョイント320の中央部材322は、2つの垂直な直径方向の平面に好ましくは2つの直径方向の円形に従って2つの溝がくり抜かれた球体であることが好ましい。より好ましくは、各溝は球体のまわりにおいて円を形成する。端部材321及び323は、このため、球体322上において摺動可能に形成される端部であって、例えば球体322に対して補完的な半円筒状又は半球状の形状を有する中空/凹面を含む端部を有する。端部材321及び323の端部の接触面は更にまた、好ましく、は該接触面から突出する畝部を含み、この畝部は球体322の中空溝の形状寸法に対応する形状を有して、突出する畝部が端部材321及び323を中央部材322上において摺動させるガイドレールの役割を果たすようになっている。更にまた端部材321及び323は略円筒状の形状を有する。好適な実施形態において、2つの連続するカルダンジョイントは、球体上において摺動するように形成される中空面を自身の2つの端部に備えた円筒状の形状を有する共通の端部材(2つのカルダンジョイントの2つの球体間に配置される端部材に対応する)を有してよい。
本実施形態においては、ショルダ部が好ましくは駆動シャフト3の軸に従った摺動を防ぎ、摺動面間の接触は、特に異なる部材の機械的な組立てによる外圧によって維持される。既に指摘したように、球体は、その中心が椎体のピボット軸上に位置して、接触面により形成されるピボットジョイントの軸が椎体のピボット軸と交差するように配置されることが好ましい。カルダンジョイントを形成する全ての部材は、椎体の内側に配置することができる程度に小型である。カルダンジョイントの端部材を形成する円筒体の外径は、好ましくは、円筒体が椎体の内側で摺動することができるように椎体の内径に合わされ、これにより、カルダンジョイントを形成する円筒体及び球体を細長アーム307の長手軸に従って椎体の内側に挿入し摺動させることができるため、組立体の組立てが容易になる。
従って、このような1組のカルダンジョイントの組立ては、それぞれカルダンジョイント(320、330、340、350)の端部要素と中央要素とを形成する一連の円筒状要素及び球状要素を椎体内に挿入し椎体間において積み重ねる段階によって構成される。その結果、円筒体の突出する畝部は、その前の円筒体の突出する畝部が挿入されていない球体の溝内に挿入され、よって2つの連続する円筒体を接続する球体と接触するこれらの円筒体の突出する畝部が直交する。球体の中心は対応する椎体のピボット軸に従って確実に配置される。組立体は、その後、細長アーム307の長手軸に対応する積重ね軸による並進移動を、例えばねじ方式により阻止される。これにより、カルダン運動に係わる円筒体とこれらの球体との相対移動により最近位側円筒体と最遠位側円筒体との間で遠位部分の固有回転の伝達が可能になる。有利な点として、各中間円筒体に関して端部の突出する畝部が互いに直交方向に加工される場合及びカルダンジョイントの個数が偶数である場合に、伝達を全体として等速に維持することができる。
その他の実施形態に関しては、例えば鉗子である遠位側道具9は、端部リンク要素305の延長線上において該端部リンク要素の遠位端に取り付けられる。遠位側道具9は、端部リンク要素305上において該端部リンク要素の長手軸のまわりで回転可能に取り付けられる。この遠位側道具9は、好ましくは細長アーム307の内側に延在するケーブルにより作動される。より好ましくは、カルダンジョイントによる伝達装置を形成する円筒状及び球状部材は、器具が屈曲していないときに器具の主軸に従った貫通穴により貫かれる。カルダンジョイントの部材に形成されるこれらの異なる穴は、牽引力を伝達して器具の遠位端に配置される遠位側道具9を作動させる可撓性の機械ケーブル360又は信号、命令又は単極及び/又は双極電流を伝達する電気ケーブル(図示せず)を貫通させることを可能にする。こうしたケーブルは、好ましくは、こうしたケーブルを保護するだけではなしに、同時に主挿入軸に従って配置されるケーブルの長さが手術器具の屈曲に依存しないようにして、これらのケーブルを主軸の湾曲に従わせるシース361により外囲される。これにより、例えば遠位側道具9を作動させるケーブルを引くことによって遠位側道具9を細長アーム207に対して枢動させるときに周囲の構造に対する力が創出されることを防ぐことができる。
次に、本発明による手術器具300の作用を説明する。図15及び16に90°に折畳んだ状態が示されており、他方、図13及び14には展開した状態が示されている。いずれの場合も、駆動シャフトの近位端に加えられる回転運動370が遠位側道具9の回転運動371を引き起こす。この回転運動の完璧な伝達は、ユニバーサルジョイント(カルダンジョイント320、330、340、350)を形成する手段によって可能とされ、このことは有限ピボットジョイントの軸310のまわりで旋回する遠位端の角偏向を問わない。折畳んだ状態から展開した状態への(或いは2つの異なる折畳み状態間での)移行は、ケーブル312、314の一方をその軸に従って並進移動させることによって行なわれる。これらのケーブルの一方をこの並進移動に従って移動させることにより、操作者は遠位側道具9の配向を制御する。
上記の手術器具に用いられる異なるケーブルの制御、例えば遠位側道具の作動ケーブル及び/又はピボットジョイントの作動ケーブルの制御は、使用者により手動で行なわれるか、又は手術器具の操作を自動化する1つ以上のモータを手段として行なわれてよい。更にまた、モータを用いて駆動シャフトをその長手軸のまわりで回転させることもできる。
上記の手術器具は、鉗子の固有の回転運動がその他の動き(特に鉗子の軸を器具の主軸に対して配向する動き)とは完全に切り離され、近位部分のレベルで行なわれる回転運動により直接伝達されることを特徴とする遠位側の可動性を有することにより、既存の器具とは区別される。
これにより、器具の挿入軸に対して略直交する軸のまわりの回転による鉗子の軸の配向と鉗子の軸のまわりにおける回転との2つの独立した動きをハンドルのレベルで生じしめることによって遠位部分の2つの動きを制御することが可能になる。
当然ながら、本発明の範囲から逸脱することなしに本発明の様々な変形例が可能である。

Claims (12)

  1. − 長手軸に沿って延びる細長アーム(11、307)であって、当該細長アームにピボットジョイントを形成する手段を用いて前記長手軸に対して直交する軸のまわりに取り付けられる遠位端(2、305)を有する細長アーム(11、307)と、
    − 前記細長アームと同軸をなす駆動シャフト(3)であって、前記ピボットジョイントに向かい合うユニバーサルジョイントを形成する手段を含む駆動シャフト(3)と、
    − 前記駆動シャフトにしっかりと固定されるとともに前記細長アームの前記遠位端上及び前記遠位端の延長線上において回転可能に取り付けられた遠位側道具(9)であって、互いに異なる独立した2つの回転自由度、すなわち一方が前記細長アームの前記長手軸に対して垂直な軸のまわりの回転自由度、他方が前記遠位側道具の自らの軸に対して共線をなす軸のまわりの回転自由度、を有するようになっている遠位側道具(9)と
    を含み、
    前記細長アームは、直列に取り付けられて前記ピボットジョイントを形成する複数のリンク要素(301,302,303,304,305)を含み、2つの隣接するリンク要素が有限ピボットジョイントにより互いに取り付けられ、前記ユニバーサルジョイントを形成する手段は、直列に取り付けられる前記複数のリンク要素(301,302,303,304,305)間の前記有限ピボットジョイント(310)の個数と同じ個数のカルダンジョイント(320,330,340,350)を含み、前記各カルダンジョイント(320,330,340,350)は、直列に取り付けられた前記複数のリンク要素(301,302,303,304,305)により形成される前記複数の有限ピボットジョイント(310)のうちの一つに向かい合い、前記各カルダンジョイント(320,330,340,350)は、対応する有限ピボットジョイントのピボット軸(310)と交差する2つのピボット軸を有することを特徴とする手術器具(1)。
  2. 各リンク要素(301,302、303、304、305)は、隣接する前記リンク要素の方へと延在する2つのラグ部を含む中空筒形要素であり、前記ラグ部は互いに対向して前記有限ピボットジョイント(310)を形成する請求項に記載の手術器具。
  3. 前記各リンク要素の前記ラグ部により形成される有限ピボットジョイントは、所定の軸を有し、全ての前記有限ピボットジョイントの軸は互いに平行である、請求項2記載の手術器具。
  4. 前記カルダンジョイント(320,330,340,350)は、前記中空のリンク要素(301,302、303、304、305)の内部に収容されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の手術器具。
  5. 前記カルダンジョイント(320)は、中央要素(322)の両側に取り付けられる2つの端部要素(321、323)を含み、各端部要素(321、323)は、互いに垂直をなす複数のピボット軸のまわりにピボットジョイントを用いて前記中央要素(322)に取り付けられ、各々の前記端部要素(321、323)と前記中央要素(322)との間の前記ピボットジョイントは対応する接触面のガイドされた摺動によってもたらされる請求項1〜4のいずれか一項に記載の手術器具。
  6. 前記中央要素(322)は、垂直をなす2つの直径方向の平面上にくり抜かれる2つの溝を有する球体の形状を有し、前記端部要素(321、323)は、前記球体(322)上において摺動可能となるように形成される凹面を備えた端部を有する請求項に記載の手術器具。
  7. 前記端部要素(321、323)の前記凹面は更に、前記球体(322)の前記溝に対して補完的な形状を有する突出した畝部を含んで、前記突出した畝部が前記端部要素(321、323)を前記中央要素(322)上において摺動させるガイドレールとしての役割を果たすようになっている請求項に記載の手術器具。
  8. 前記カルダンジョイントの前記端部要素(321、323)及び前記中央要素(322)は、前記長手軸に沿った貫通穴を含み、1本以上のケーブルが前記細長アーム内に、前記貫通穴を介して延在する請求項5〜7のいずれか一項に記載の手術器具。
  9. 前記遠位側道具(9)の作動ケーブル(360)は、前記細長アームの範囲内において前記貫通穴を介して延在し、前記作動ケーブル(360)はシース(361)により取り巻かれる請求項に記載の手術器具。
  10. 前記細長アームは中空であると共に、少なくとも部分的に前記駆動シャフトを外囲する請求項1〜9のいずれか一項に記載の手術器具。
  11. − ハンドルと、
    − 伝達装置と
    をさらに含み、
    前記ハンドルは前記細長アームの前記近位端に接続され、前記2つの自由度に従った動きは、前記伝達装置により、前記ハンドルで生ぜしめられる2つの独立した動きに結合される請求項1〜10のいずれか一項に記載の手術器具。
  12. 更に前記道具の独自の軸のまわりにおける回転範囲が前記伝達装置により構造的に制限されることがないように構成される請求項1〜11のいずれか一項に記載の手術器具。
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