JP5566977B2 - 鉄道車両の駆動システム - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両の駆動装置に係り、特に、電力蓄積手段を設備してブレーキ時の発電エネルギの蓄電を可能とし、この蓄電エネルギを再利用して駆動装置に電力を供給する技術に関する。
鉄道車両は、鉄の車輪がレール面上を転がることで走行するため、走行抵抗が自動車に比べて小さいことが特徴である。特に、最近の電気鉄道車両では、制動時に主電動機を発電機として作用させることで制動力を得ると同時に、制動時に主電動機で発生する電気的エネルギを架線に戻して他列車の力行エネルギとして再利用する回生ブレーキ制御を行っている。この回生ブレーキを備える電気鉄道車両は、回生ブレーキを備えていない電気鉄道車両に比べて、約半分のエネルギ消費で走行することが可能とされており、走行抵抗が小さい鉄道車両の特徴を生かした省エネ手法といえる。
ところで、鉄道車両で回生ブレーキが動作するとき、回生された電力を消費する相手が必要である。これまでの一般的な鉄道車両では、回生ブレーキで発電した電力を、車両が備える集電装置を通して架線に戻し、その車両と同じ給電区間を走行する他の列車の車両の力行電力として再利用している。同じ給電区間を複数の列車が走行しているときは、一車両の回生ブレーキが動作するタイミングで、力行する他列車が存在する確率が高い。
逆に、同じ給電区間に一列車のみ走行しているときは、その列車の回生ブレーキが動作しても、その電力を吸収する力行車両がいない。このため、架線に戻る回生ブレーキ電流が僅少であるため、回生電力によりインバータ装置の直流電圧が大きくなる。この結果、インバータ装置の許容電圧を上回り、高電圧保護で回生ブレーキ失効が発生し、以後は回生ブレーキが動作せずに空気ブレーキだけで停車するので、回生ブレーキによる省エネルギ効果が得られない。
このように、回生ブレーキ電力を架線に戻すには、その電力を吸収する他の力行車両が存在している必要があるという制約がある。しかし、回生ブレーキ電力を蓄電できる機能を設けられるのであれば、他の力行車両が存在しているか否かに関わらず、回生ブレーキによる省エネルギ効果を得られる。
蓄電装置を設ける位置は、おもに地上側の給電設備に併設する場合と、車上側のインバータ装置に併設する場合が考えられる。同じ給電区間に走行する車両数が比較的多い場合、その車両全てに蓄電装置を設けるよりも、給電設備に蓄電装置を併設する方が低コストに実現できる。しかし、前述のように元々車両数が多ければ、他の力行車両で回生ブレーキ電力を吸収できる確率が高い。このため、回生ブレーキ電力を吸収する蓄電装置が必要な場面では、蓄電装置を車上側のインバータ装置への併設を選択するケースが多くなると考えられる。
回生電力を吸収する蓄電装置を車上側のインバータ装置に併設する例としては、特許文献1の車両用駆動制御装置で述べられている。図5に回生電力を吸収する蓄電装置を車上側のインバータ装置に併設する機器構成の一例を示す。
力行時、インバータ105は、蓄電装置102のみから又は直流電源108と蓄電装置102から受電し、モータ106を駆動する。回生時は回生電力を蓄電装置102のみへ又は直流電源108と蓄電装置102へ回生する。また、停車、惰行時は、直流電源108で蓄電装置102を充電する、或いは蓄電装置102から直流電源108へ放電させる。蓄電装置102の充放電電流は、スイッチング素子111,112をスイッチングすることにより制御される。スイッチング素子111,112は、蓄電装置の充放電時の電流がある設定した電流よりも大きいときには高いスイッチング周波数で動作し、電流が当該設定した電流よりも小さいときには低いスイッチング周波数で動作する。また、蓄電装置102のみで力行・回生動作をする場合、スイッチング素子111,112のオン・オフの状態を固定する。
回生電力を吸収する蓄電装置は、充放電時に内部抵抗により発熱する。この発熱は蓄電装置にファンなど適切な冷却機能を設けることで過温度を防止できる。しかし、充放電による蓄電装置の発熱はエネルギの損失となるので、蓄電装置に充電した電力量に対して実際に充電された電力量は小さく、また、蓄電装置に充電された電力量のすべてを放電により取り出すことはできない。この充放電による損失は蓄電装置の種類により異なるが、リチウムイオン電池では充放電の際、10%程度の電力量損失が発生する実測例がある。
このようなことから、回生電力については、蓄電装置に充電して力行電力として再利用するよりも、架線に戻して多列車の力行電力として再利用するほうがエネルギ損失は少ないと言われている。しかし、架線を通じて他列車まで電力を伝送する際にも架線又はレールの抵抗分によるエネルギ損失は必ず発生する。このため、回生電力の有効利用には、蓄電装置に充放電するときのエネルギ損失と、架線を通して他列車に電力を送電するときのエネルギ損失との、いずれか少ないほうを選択することが重要と考えられる。
特許文献1に開示されている車両用駆動制御装置では、蓄電装置に充放電するときのエネルギ損失と、架線を通して他列車に電力を送電するときのエネルギ損失の大小を比較する機能については記述されていない。
特開2005−278269号公報
直流き電方式の鉄道は、商用交流電力(三相交流)をき電用変電所でシリコン整流器等により直流に変換して電気車に供給する。一般的に用いられている並列き電方式では、隣接するき電用変電所間は事故時の冗長性等を考慮してき電線を解して結ばれている一方、電車線はき電毎にセクションが設けられている。即ち、一電車線区間には、隣接する二つのき電変電所より直流電力が供給される。き電用変電所の間隔は、線路条件、走行する電気車の性能、運転条件、電源事情等により異なり、都市圏の幹線で5km程度、亜幹線で10km程度である。
通常、き電用変電所では直流電力から三相交流電力(商用交流電源)への逆変換は行われない。このため、一電気車の回生電力の消費は同一電車線区間を走行する力行車両に限定される。すなわち、回生車両とその回生電力を消費する力行車両間の距離は、都市圏幹線で最大5km程度、亜幹線で10km程度である。直流き電回路の抵抗値は、架線方式、レール規格により若干の大小はあるが、概ねR1=0.04[Ω]/[km]程度であることが知られている(例えばエース出版発行、「電気鉄道工学」P73)。即ち、回生車両とその回生電力を消費する力行車両間の距離に応じて、その間の抵抗値は変化する(都市圏幹線で最大0.2Ω程度、亜幹線で0.4Ω程度)。
一方、回生電力を蓄電装置に充放電するシステムでは、使用する蓄電媒体には必ず内部抵抗分が存在する。この内部抵抗は蓄電媒体の種類により異なるが、鉄道車両において回生電力の充放電を目的とする場合、蓄電装置として実現できる冷却性能を考慮すると、内部抵抗による発熱量を4kw程度に抑えることが必要であることをこれまでの経験から得ており、これを設計上の限界値としている。例えば、都市圏を走行する電気車では、4個モータを制御するインバータ装置の消費電流は、直流部の定格で200A程度である。この電流を蓄電装置に充放電することを考えると、その内部抵抗はR2=4[kw]/(200[A])=0.1[Ω]となるように設計する。
以上のことから、回生電力を充放電する蓄電装置をもつ車両では、蓄電装置の内部抵抗は0.1Ωとなるように設計することから、電車線に戻す際の抵抗分が0.1Ω以上、即ち回生電力を消費する力行車両との距離が2.5km以上である場合は、電車線に戻して他車両の力行電力として消費するのではなく、回生電力を蓄電装置に充放電して自車両の力行電力として消費するほうが、一き電区間における電力損失を低減できるといえる。一方、電車線に戻す際の抵抗分が0.1Ω以下、即ち回生電力を消費する力行車両との距離が2.5km以下である場合は、回生電力を蓄電装置に充放電して自車両の力行電力として消費するのではなく、電車線に戻して他車両の力行電力として消費する方が、一き電区間における電力損失を低減できるといえる。
本発明の目的は、自列車が回生ブレーキを開始したとき、回生電力を吸収する他車両までの距離を推定して、自列車の蓄電システムへの充電と、他列車の力行電力としての消費のうち、より電力損失の小さい方法を選び、回生電力を有効利用する鉄道車両の駆動システムを実現することである。
上記課題を解決し、目的を達成するため、本発明による鉄道車両の駆動システムは、車両の外部で電力を発生する電力発生手段と、所定の電力供給区間に存在する前記車両に、前記電力発生手段によって発生された前記電力を供給する電力供給手段と、前記電力供給手段から前記車両に電力を取り込む集電手段と、前記車両に取り込まれた前記電力に基づく高圧直流電力を交流電力に変換するインバータ手段と、前記インバータ手段により駆動される電動機と、前記集電手段と前記インバータ手段間の通流電流を検出する電流検出手段と、前記集電手段から取り込まれた前記電力の電圧を検出する電圧検出手段とを備え、前記電流検出手段と前記電圧検出手段とがそれぞれ検出した電流と電圧の検出値に基づいて、前記所定の電力供給区間に存在する前記車両と他の車両との間における前記電力供給手段の抵抗値を算出し、前記抵抗値に応じて前記車両と前記他の車両との間の距離を推定することを特徴としている。
また、本発明は、更に、低圧直流電力を供給する電力蓄積手段と、前記高圧直流電力の通流部分と前記低圧直流電力の通流部分間の通流電流を調整制御するスイッチ手段と、前記両通流部分間を流れる前記通流電流を検出する手段と、前記高圧直流電力及び前記低圧直流電力の電圧を検出する直流電圧検出手段とを備え、更に、前記電力供給手段の前記抵抗値又は前記車両と前記他の車両との間の前記距離に応じて前記スイッチ手段における前記通流電流を調整制御する充放電制御手段を備えることができる。更にまた、前記充放電制御手段は、前記インバータ手段が回生ブレーキ動作中に、算出された前記電力供給手段の前記抵抗値が所定値よりも大きいことに応答して、前記インバータ手段により発生された回生電力を前記電力蓄積手段に充電するように、前記スイッチ手段の通流電流を調整制御することができる。
発明によれば、自列車が回生ブレーキを開始したとき、回生電力を吸収する他車両までの距離を推定して、自列車の蓄電システムへの充電と、他列車の力行電力としての消費とのうち、より電力損失の小さい方を選び、回生電力を有効利用する鉄道車両の駆動システムを実現できる。
本発明による鉄道車両の駆動システムの一実施形態について、その基本構成を示す概念図である。 本発明による電気車の駆動システムにおける一実施形態の機器構成を示す図である。 本発明による電気車の駆動システムの一実施形態における制御方式を示すブロック図である。 本発明による電気車の駆動システムを複数列車で稼動させた場合の動作例である。 回生電力を吸収する蓄電装置を車上側のインバータ装置に併設する機器構成の一例を示す図である。
以下、本発明による鉄道車両の駆動システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の電気鉄道車両の駆動システムの一実施形態について、その基本構成を示す概念図である。車両1a,1b,1cは、列車編成を構成する車両、又はその一部である。車両1aと車両1bは車間連結器2aで連結されている。車両1bと車両1cは車間連結器2bで連結されている。車両1aは、台車4aを介して輪軸5a,5bにより、また、台車4bを介して輪軸5c,5dにより、図示していないレール面上に支持されている。車両1bは、台車4cを介して輪軸5e,5fにより、また、台車4dを介して輪軸5g,5hにより、図示していないレール面上に支持されている。車両1cは、台車4eを介して輪軸5i,5jにより、また、台車4fを介して輪軸5k,5lにより、図示していないレール面上に支持されている。
車両1aには、インバータ装置6、蓄電システム7、電圧センサ8c、電流センサ9e及び統括制御手段10が搭載されている。インバータ装置6は、図示していない電車線から、集電装置3を通じて電力が供給される。この電力は、インバータ装置6により、可変電圧可変周波数(VVVF)の交流電力に変換され、図示していない電動機に供給して、輪軸5a,5b,5c,5dを駆動する。蓄電システム7は、蓄電された直流電力を放電して、インバータ装置6に供給できる。また、集電装置3により得られた電力を、インバータ装置6を介して充電できる。
電圧センサ8cは、電車線から集電装置3により供給された電力の対地電圧、即ち架線電圧Esを検出する。検出された架線電圧Esは統括制御装置10に入力される。電流センサ9eは、電車線から集電装置3により供給された電力の電流量、即ち架線電流Isを検出する。検出された架線電流Isは統括制御装置10に入力される。統括制御手段10は、架線電圧Esの所定時間における増加量(増加率ともいう)ΔEsと、架線電流Isの当該所定時間における増加量(増加率ともいう)ΔIsとの比率であるR_reg=ΔEs/ΔIsを算出する。インバータ装置6の回生ブレーキ動作中に、比率R_reg=ΔEs/ΔIsが所定値Ref_dif_ecf_isを超えたとき、以後は蓄電システム7はインバータ装置6の回生電力を優先的に充電する。
車両1b,1cは、車両1aに搭載しているインバータ装置6、蓄電システム7、統括制御手段10を搭載しておらず、輪軸5e,5f,5g,5h,5i,5j,5l,5mは駆動されない付随車両として図示している。これは、一般的な車両構成に、本発明の鉄道車両の駆動システムを適用した一例であり、本発明の鉄道車両の駆動システムの構成と、車両構成の関連付け意図するものではない。
本発明による鉄道車両の駆動システムは、列車編成を構成する車両のうち、少なくとも1両にインバータ装置6、蓄電システム7、統括制御手段10を搭載する。同一編成内に車両1aと同じ機器構成を持つ車両を複数連結する場合、又は車両1aに搭載されているインバータ装置6、蓄電システム7、統括制御手段10を複数の車両に分割搭載する場合でも、本発明の目的は達成できる。
この構成によれば、車両1a,1b,1cで構成される自列車が回生ブレーキ動作を始めるとき、回生ブレーキで電車線に戻される電流の増加量ΔIsと、架線電圧の増加量ΔEsとの比率R_reg=ΔEs/ΔIsに基づいて、回生ブレーキ動作で発生する電力を、電車線に戻して他の力行する列車に消費させるか、自列車が備えている蓄電システムに充電させるかを判断できる。
自列車と他列車の距離が短く、両者間の電車線の抵抗成分が小さいときは、回生ブレーキによる架線電流の増加に対する架線電圧の増加割合は小さい。この状態を比率R_reg=ΔEs/ΔIsが所定値Ref_dif_ecf_isよりも小さいことで判断する。このとき、回生電力を蓄電システムに充電せず、電車線に戻して他の力行する列車に消費させる。即ち、自列車の蓄電システムに充電して再利用するよりも、自列車の回生電力が他列車の力行電力として消費された方が、電力損失を抑えられ、回生電力を有効利用できる。
また、自列車と他列車の距離が長く、両者間の電車線の抵抗成分が大きいときは、回生ブレーキによる架線電流の増加に対する、架線電圧の増加割合は大きい。この状態を比率R_reg=ΔEs/ΔIsが所定値Ref_dif_ecf_isよりも大きいことで判断する。このとき、回生電力を電車線に戻して他の力行する列車に消費させるのではなく、回生電力を蓄電システムに充電する。即ち、自列車の回生電力が他列車の力行電力として消費するよりも、自列車の蓄電システムに充電して再利用する方が電力ロスをおさえられ、回生電力を有効利用できる。
ところで、所定値Ref_dif_ecf_isは、蓄電装置22の内部抵抗を0.1Ω以下となるように設計することを考慮して、電車線に戻す際の抵抗分として0.1Ω以下の設定することを想定している。
以上のように、本発明によれば、自列車が回生ブレーキを開始したとき、回生電力を吸収する他車両までの距離を推定して、自列車の蓄電システムへの充電と、他列車の力行電力としての消費とのうち、より電力損失の小さい方法を選んでいるので、回生電力を有効利用する鉄道車両の駆動システムを実現できる。
図2は、本発明による鉄道車両の駆動システムの一実施形態における機器構成を示す図である。図2に示すように、集電装置3から給電した直流電力は、フィルタリアクトル12及びフィルタコンデンサ13aで構成するLC回路(フィルタ回路)により高周波数域の変動分を除去した後、インバータ装置14に入力される。インバータ装置14は、入力された直流電力を可変電圧可変周波数(VVVF)の3相交流電力に変換して、主電動機15a,15bを駆動する。なお、インバータ装置14が駆動する主電動機が2台の場合を示しているが、インバータ装置14が駆動する主電動機の台数はこれに限定されない。
電圧センサ8aは、フィルタコンデンサ13aの両端の直流部電圧Ecfを検出する。電流センサ9a,9b,9cは、インバータ装置14と、主電動機15a,15bの間の3相交流電力線を流れる各相の電流を検出して、インバータ装置14に入力する。接地点101はこの回路の基準電位を決めている。スイッチング素子18a,18bは、前述の集電装置3及び接地点101とインバータ装置14の間にある直流電力部のうち、高電位側と低電位側の間に直列配置する。電圧センサ8bは、蓄電装置22と平滑リアクトル21の電力線間に配置して、後述の蓄電装置22の端子間電圧V_btrを検出する。平滑コンデンサ13bは、蓄電装置22の出力端子間に並列接続して、後述のスイッチング素子18a,18bの動作により発生する電流変動分が、蓄電装置22に流入することを抑える。
充放電制御装置20は、インバータ装置14の回生電力P_inv、電圧センサ8aの電圧検出値V_dc(フィルタコンデンサ13aの両端の直流部電圧Ecf)、電圧センサ8bの電圧検出値V_btr(蓄電装置22の端子間電圧)、電流センサ9dの電流検出値I_btr(蓄電装置22に入出力する電流)、統括制御手段10から充放電許可信号Ebl_chg_dcgを入力とし、ゲートアンプ19a,19bにスイッチング素子18a,18bのオン/オフを指令するゲートパルス信号GP1,GP2を出力する。ゲートアンプ19a,19bは、ゲートパルス信号GP1,GP2を入力とし、これを基にスイッチング素子18a,18bをオン/オフ可能な電圧制御信号に変換し、スイッチング素子18a,18bをオン/オフ制御する。電流センサ9dは、後述の蓄電装置22に入出力する電流を検出する。
蓄電装置22として適用されるものは、回生失効時など回生電力の瞬時吸収を最優先に考えるのであれば、単位体積あたりの充放電入出力性能が高い電気二重層キャパシタ装置が考えられる。しかし、積極的に省エネルギを進めるためには、付近に力行する車両が存在せず、回生電力を電車線に戻せない状況でも、自車内でエネルギを蓄電して回生ブレーキを最大限動作させ、それを力行電力の一部として活用して、運動エネルギ損失を低減することが重要である。また、鉄道車両ではシステム冗長性の確保が重要であるため、停電状態でも安全な退避箇所までの自力走行を実現する要求が考えられる。このため、単位体積当たりの蓄電能力が高いリチウムイオン電池などで構成することが妥当と言える。
蓄電装置22の充放電制御は、スイッチング素子18a又は18bを周期的にオン/オフすることで実現する。この充放電制御において、平滑リアクトル21は、蓄電装置22に通流する電流の変化率を所定値内に抑える機能を持つ。
電圧センサ8cは、電力線から集電装置3により供給された電力の対地電圧、即ち、架線電圧Esを検出する。検出された架線電圧Esは統括制御装置10に入力される。電流センサ9eは、電力線から集電装置3により供給された電力の電流量、すなわち架線電流Isを検出する。検出された架線電流Isは統括制御装置10に入力される。統括制御手段10は、架線電圧Esの所定時間における増加量ΔEsと、架線電流Isの当該所定時間における増加量ΔIsの比率R_reg=ΔEs/ΔIsを算出する。インバータ装置6より入力される運転指令信号NTCをもとに、回生ブレーキ動作中であることを判断し、比率R_reg(=ΔEs/ΔIs)が所定値Ref_dif_ecf_isを超えたとき、以後蓄電装置22の充電及び放電を許可し、インバータ装置6の入力電圧Ecfを所定範囲(上限Ref_ecf_up、下限Ref_ecf_low)に制御する。
ここで、スイッチング素子18bを周期的にオン/オフすることにより、蓄電装置22の電力を放電する制御について説明する。
前述のスイッチング素子18bを所定時間Ton_bだけオンすると、蓄電装置22の出力端子間は短絡されるが、平滑リアクトル21は、その電流増加率を一定値内に抑えると同時に、Ton_bの期間に通流した電流と、蓄電装置22の端子電圧の積を時間積分した電力エネルギを蓄える。その後、スイッチング素子18bを所定時間Toff_bだけオフすると、直流電力部側に平滑リアクトル21に蓄えられた電力エネルギは、スイッチング素子18aのダイオード部を介して、前述の集電装置3及び接地点101とインバータ装置14の間にある直流電力部側に放出される。このとき、直流電力側で得られる電圧値V_dcは、蓄電装置22の端子電圧V_btrを基準として、前述のスイッチング素子18bをオンする時間Ton_bと、オフする時間Toff_bの比率から次式で決定する。
V_dc=V_btr×((Ton_b+Toff_b)/Toff_b) [数式1]
次に、スイッチング素子18aを周期的にオン/オフして、蓄電装置22に電力を充電する制御について説明する。
前述のスイッチング素子18aを所定時間Ton_aだけオンすると、前述の集電装置3及び接地点101とインバータ装置14の間にある直流電力部の、接地点101に対する電位V_dcが、蓄電池22の端子間電圧(接地点101に対する電位)V_bcよりも高いとき(V_dc>V_bc)、直流電力部から蓄電装置22の向きに電流が流れる。このとき、平滑リアクトル21は、その電流増加率を一定値内に抑えると同時に、Ton_aの期間に通流した電流と、蓄電装置22の端子電圧の積を時間積分した電力エネルギを蓄える。その後、スイッチング素子18aを所定時間Toff_aだけオフすると、直流電力部側に平滑リアクトル21に蓄えられた電力エネルギは、蓄電装置22の高電位側端子から、低電位側端子に抜け、スイッチング素子8bのダイオード部を経て、平滑リアクトル11に戻る一巡の回路が構成される。即ち、スイッチング素子18aを所定時間Toff_aだけオフしている期間は、平滑リアクトル21に蓄えられた電力エネルギが、蓄電装置22に充電電流が流れ続け、平滑リアクトル21に蓄えられた電力エネルギが放出されるに従い、充電電流は減衰していく。このとき、蓄電装置22で得られる端子間電圧値V_btrは、直流部電圧V_dcを基準として、前述のスイッチング素子18aをオンする時間Ton_aと、オフする時間Toff_aの比率から次式で決定する。
V_btr=V_dc×(Ton_a/(Ton_a+Toff_a)) [数式2]
以上の構成により、回生ブレーキを開始したとき、制御装置10では、電圧センサ8aの検出値である直流部電圧V_dcの増加量ΔEsと、電流センサ9eで検出した架線電流Isの増加率量ΔIsと、これらを基に比率R_reg=ΔEs/ΔIsを演算し、比率R_regが所定値Ref_dif_ecf_isを超えたとき、電流センサ9dの電流検出値I_btrを、所定の充電電流指令値Ref_I_chg(図示していない)に追従するように、ゲートアンプ19a,19bの出力であるゲートパルス信号GP1,GP2を制御して、スイッチング素子18a,18bを駆動できる。
また、インバータ装置14の回生電力P_regenと、蓄電装置22の端子間電圧V_btrとにより、蓄電装置22に充電可能な充電電流指令値Ref_I_dcg(図示していない)を充放電制御装置20で演算し、電流センサ9dの電流検出値I_btrを、前述の充電電流指令値Ref_I_dcgに追従するように、ゲートアンプ19a,19bの出力であるゲートパルス信号GP1,GP2を制御して、スイッチング素子18a,18bを駆動できる。
以上説明したように、この構成によると、自列車と他列車の距離が短く、両者間の電車線の抵抗成分が小さいときは、回生電力を蓄電システムに充電せず、電車線に戻して他の力行する列車に消費させ、自列車と他列車の距離が長く、両者間の電車線の抵抗成分が大きいときは、回生電力を電車線に戻して他の力行する列車に消費させるのではなく、回生電力を蓄電システムに充電する。即ち、本発明によれば、自列車が回生ブレーキを開始したとき、回生電力を吸収する他車両までの距離を推定して、自列車の蓄電システムへの充電と、他列車の力行電力としての消費のうち、より電力損失の小さい方法を選び、回生電力を有効利用する鉄道車両の駆動システムを実現することができる。
図3は、本発明の電気車の駆動システムの一実施形態における制御方式を示すブロック図である。
本発明の一実施形態における充放電制御装置9では、以下の制御を行う。
(A)インバータ装置14が回生ブレーキ動作したとき
(B1)架線電流増加に対する架線電圧の上昇率が所定値よりも小さいとき、
インバータ装置14の直流側入力である直流部の電力を蓄電装置22に充放電して、直流部の電圧を所定範囲内に保つように定電圧制御する。
(B2)架線電流増加に対する架線電圧の上昇率が所定値よりも大きいとき、
蓄電装置22における充電電流の許容範囲内で、インバータ装置14の回生電流を蓄電装置22に充電するように定電流制御する。
以下、具体的な制御方法を説明する。
差分演算器40aは、図示していない電圧センサ8aで検出した架線電圧Esを入力として、現在値(Es_1)と、現在値から所定時隔Δt_esだけ過去の測定値(Es_2)の電圧差分ΔEs=Es_1-Es_2を算出する。差分演算器40bは、図示していない電流センサ9eで検出した架線電流Isを入力として、現在値(Is_1)と、現在値から所定時隔Δt_isだけ過去の測定値(Is_2)の電流差分ΔIs=Is_1-Is_2を算出する。ここでは、架線電流Isは回生ブレーキを始めるときに増加し、この架線電流Isの増加により架線電圧Esが増加する。このため、所定時隔Δt_es,Δt_isは、図示していないインバータ装置14の最小PWM制御動作周期以上とすればよい。PWM制御動作周期はインバータ装置毎に異なるが、一般的には変調音の音質も考慮して1kHz程度とすることが多い。
高位選択器42aは、電流差分ΔIsと最小電流差分ΔIs_minのうち大きい方を選択して電流差分ΔIs_2を出力する。ここで、最小電流差分ΔIs_minは通常、電流センサ9eが認識できる最小の電流値をIs_minとすると、これが0[A]からIs_minまでの前述した所定時間Δt_isにおける変化量として定義する。すなわち次式で表せる。
ΔIs_min=|Is_min/Δt_is| [数式3]
除算器44aは、電圧差分ΔEsから電流差分ΔIs_2を除算して電圧変化率Dif_ecf_isを求める。加減算器31aは、電圧変化率Dif_ecf_isから、所定値としての電圧変化率判定値Ref_dif_ecf_isを減算し、電圧変化率差分Delta_dif_ecfを算出する。即ち、
Dif_ecf_is=ΔEs/ΔIs_2
Delta_dif_ecf=Dif_ecf_is-Ref_dif_ecf_isである。
ところで、電圧変化率判定値Ref_dif_ecf_isは、蓄電装置22の内部抵抗を0.1Ω以下となるように設計することを考慮して、電車線に戻す際の抵抗分として0.1Ω以下の設定することを想定している。
比較器32aは、電圧変化率差分Delta_dif_ecfを入力として、充放電可能信号Ebl_chg_3を出力する。充放電可能信号が「Ebl_chg_3=0」のとき充放電不可、「Ebl_chg_3=1」のとき充放電可能を示す。比較器32aは、電圧変化率差分Delta_dif_ecfが0以下に変化した以後「充放電可能信号Ebl_chg_3=0」を出力し、電圧変化率差分Delta_dif_ecfがVAよりも大きい値に変化した以後「充放電可能信号Ebl_chg_3=1」を出力する。ここで、電圧変化率差分Delta_dif_ecfが0よりも大きい値に変化したことを判定する判定値VAは、0よりも大きく0近傍の値を設定する。電圧センサ8cが認識できる最小の電圧値をEs_minとすると、これが0[V]からEs_minまでの前述した所定時間Δt_esにおける変化量を最小電圧差分ΔEs_minと定義し、VAはΔEs_minと前述の電流差分ΔIs_minの比として次式のように決定しても良い。
VA=ΔEs_min/ΔIs_min [数式4]
論理積演算器34aは、回生ブレーキ中であることを示す運転信号Bと、充放電可能信号Ebl_chg_3を入力として、その論理積である充電可能信号Ebl_chg_2を算出する。
フリップフロップ41は、セット入力として充電可能信号Ebl_chg_2を、リセット入力として、回生ブレーキ中であることを示す運転信号Bを論理反転器33aにて論理反転した信号Not_Bを入力として、回生吸収制御判定信号Ebl_chg_1を出力する。即ち、リセット信号Not_Bが「1」のとき、出力である回生吸収制御判定信号Ebl_chg_1は常時「0」である。リセット入力Not_Bが「0」のとき、セット入力Ebl_chg_2に「1」がセットされた以降、リセット入力Not_Bに「1」がセットされるまでの期間、回生吸収制御判定信号Ebl_chg_1は「1」を出力する。
比較器32bは、蓄電装置22の蓄電状態信号SOCを入力として、充電許可信号Chg_okを出力する。充電許可信号が「Chg_ok=0」のとき充電不許可、「Chg_ok=1」のとき充電許可を示す。比較器32bは、蓄電状態信号SOCがSOCH0よりも大きい値に変化した以後「Chg_ok=0」を出力し、蓄電状態信号SOCがSOCH1以下に変化した以後「Chg_ok=1」を出力する。ここで、SOCH0は蓄電装置22の備える蓄電容量において充電を許可する蓄電量範囲の上限値、SOCH1は、SOCH0近傍でそれ以下の値である。例えば、蓄電容量のうち30%から70%の範囲において充放電を許可する場合はSOCH0=70%、SOCH1=69%のように設定する。
論理積回路34cは、回生ブレーキ中であることを示す運転信号Bと、充電許可信号Chg_okを入力として、チョッパゲートスタート指令Cmd_gstを出力する。
低位選択器43は、フィルタコンデンサ電圧Ecfと、フィルタコンデンサ電圧EcfをリミットAVR制御する上での上限値であるRef_ecf_upとを入力として、小さい方を選択して定電圧制御指令値Ref_avr_1を出力する。
選択器36bは、低位選択器43の出力である定電圧制御指令値Ref_avr_1と、フィルタコンデンサ電圧Ecfを入力とし、これらを論理積回路34cの出力であるチョッパゲートスタート指令Cmd_gstに応じて選択し、リミット定電圧制御指令値Ref_avrを出力する。チョッパゲートスタート指令Cmd_gstが「0」のときはフィルタコンデンサ電圧Ecfを選択して出力し、定電圧制御ゲートスタート指令Cmd_gstが「1」のときは低位選択器43の出力である定電圧制御指令値Ref_avr_1を選択して出力する。
加減算器31dは、選択器36bの出力であるリミット定電圧制御指令値Ref_avrから、フィルタコンデンサ電圧Ecfを減算して、リミット定電圧制御の電圧差分値Delta_avrを算出する。安定化制御器37aは、チョッパゲートスタート指令Cmd_gstと、電圧差分値Delta_avrとの入力を受けて、チョッパゲートスタート指令Cmd_gstが「1」のとき、電圧差分値Delta_avrを最小化するための操作量Ref_I_avrを演算して出力する。なお、充電ゲートスタート指令Cmd_gstが「0」のときは、常に「操作量Ref_I_avr=0」を出力する。
除算器44bは、インバータ装置14の回生ブレーキ動作中に出力する回生電力P_regenから、フィルタコンデンサ電圧Ecfを除算して、回生電流I_regenを算出する。
高位選択器42bは、蓄電装置22の充電電流の許容値Lmt_I_chgと、除算器44bの出力である回生電流I_regenとのうち、大きい方を選択して充電電流指令値Ref_I_chgを出力する。ここで、蓄電装置22を一例とした蓄電媒体では通常、放電電流を正値、充電電流を負値で示す。また、インバータ装置14を一例とした電気車の駆動装置の直流入力電流は通常、力行電流を正、回生電流を負値で示す。即ち、高位選択器42bは、負値である充電電流の許容値Lmt_I_chgと、同じく負値である回生電流I_regenのうち、絶対値の小さいほうを出力することを意図している。
選択器36cは、高位選択器42bの出力である蓄電装置22の充電電流指令値Ref_I_chgと、安定化制御器37aで演算されたリミット定電圧制御の電圧差分値Delta_avrを最小化するための操作量Ref_I_avrとの入力を受けて、これらをフリップフロップ41の出力である回生吸収制御判定信号Ebl_chg_1に応じて選択して、定電流制御基準値Ref_acrとして出力する。回生吸収制御判定信号Ebl_chg_1が「0」(近傍に力行列車ありの判定)のときは操作量Ref_I_avrを選択して出力し、回生吸収制御判定信号Ebl_chg_1が「1」(近傍に力行列車無しの判定)のときは充電電流指令値Ref_I_chgを選択して出力する。
加減算器31eは、選択器36cの出力である定電流制御基準値Ref_acrから、蓄電池電流I_btrを減算して、定電流制御の電流差分値Delta_acrを算出する。安定化制御器37bは、チョッパゲートスタート指令Cmd_gstと、電流差分値Delta_acrを入力とする。チョッパゲートスタート指令Cmd_gstが「1」のとき、電流差分値Delta_acrを最小化するための電圧操作量Delta_Vを演算して出力する。なお、チョッパゲートスタート指令Cmd_gstが「0」のときは、常に「電圧操作量Delta_V=0」を出力する。
PWM生成器38は、チョッパゲートスタート指令Cmd_gstと、電圧操作量Delta_Vと、蓄電池電圧V_btrを入力とする。Cmd_gstが「1」のとき、電圧操作量Delta_Vと、蓄電池電圧V_btrをもとに、PWMゲートパルス信号GP1を生成する。なお、チョッパゲートスタート指令Cmd_gstが「0」のときは、PWMゲートパルス信号を出力しない。
位相シフト演算器39は、PWMゲートパルス信号GP1を入力として、PWMゲートパルス信号GP1に対して、180度だけ位相を遅らせたPWMゲートパルス信号GP2を生成して出力する。
以上説明したように、この構成によると、自列車と他列車の距離が短く、両者間の電車線の抵抗成分が小さいときは、回生電力を蓄電システムに充電せず、電車線に戻して他の力行する列車に消費させ、自列車と他列車の距離が長く、両者間の電車線の抵抗成分が大きいときは、回生電力を電車線に戻して他の力行する列車に消費させるのではなく、回生電力を蓄電システムに充電する。即ち、本発明によれば、自列車が回生ブレーキを開始したとき、回生電力を吸収する他車両までの距離を推定して、自列車の蓄電システムへの充電と、他列車の力行電力としての消費のうち、より電力損失の小さい方法を選び、回生電力を有効利用する鉄道車両の駆動システムを実現できる。
図4は、本発明の電気車の駆動システムを複数列車にて稼動させる場合の動作例を示す図である。ここでは、一列車が回生ブレーキを開始したときに着目する。
列車53a,53bについては、模式的に一車両にて示しているが、1両編成だけではなく複数車両が連結された一列車であることも想定される。電力発生手段51は、電力供給手段52を介して列車53a,53bに電力を供給する。ここで、電力発生手段51としては、産業用途の高圧交流電力を鉄道向けの直流電力に変換する変電所を想定しているが、電力を一時蓄積する蓄電手段(バッテリ、キャパシタ等)や、小型の発電手段(エンジン発電機、燃料電池等)と電力変換手段との組合せとすることも考えられる。また、電力供給手段52としては、架線方式、第三軌条方式、第三・第四軌条方式等を適用することも考えられる。
時刻t1において、自列車53aはブレーキ信号Bのオンにより減速を開始し、自列車53aの速度Velが減少を始める。このとき、自列車53aの回生ブレーキ動作により、回生電力が電力供給手段52を介して力行している他列車53bに供給される。その際、自列車53aが電力供給手段52に供給する架線電流Isの増加により、架線電圧Esが増加する。この架線電流Isに対する架線電圧Esの増加率は、回生する自列車53aと、力行する他列車53bとの距離により異なる。ここでは、ブレーキ信号Bがオンした直後の架線電流Isの増加率をΔIs、架線電圧Esの増加率をΔEsとしている。架線電流Isの増加率ΔIsに対する、架線電圧Esの増加率ΔEsの比率を「回生負荷指標R_reg」と定義する。
R_reg=ΔEs/ΔIs [数式5]
この回生負荷指標R_regと、図3に示した電圧変化率判定値Ref_dif_ecf_isの大小を比較して、近傍に力行列車が存在するか、存在しないかを判断する。
ところで、電圧変化率判定値Ref_dif_ecf_isは、蓄電装置22の内部抵抗を0.1Ω以下となるように設計することを考慮して、電車線に戻す際の抵抗分として0.1Ω以下の設定することを想定している。
(a)R_reg<Ref_dif_ecf_isのとき
近傍に力行列車が存在すると判断する。すなわち、自列車53aのブレーキ動作により発生した回生電力を、近傍の力行列車53bが電力供給手段52を経由して消費することによるエネルギ損失の方が、自列車53aの蓄電システム7に充電し、これを放電して自列車53aの力行電力として消費する際のエネルギ損失よりも小さい状態であると判断する。
図4(a)では、自列車53aは、他列車53bより距離L1だけ離れた地点を走行している場合を示している。距離L1は、電力発生手段51が電力供給手段52を通じて電力を供給する同一区間内において、概ね2km以内の距離を想定している。
時刻t1で開始した自列車53aの回生ブレーキは、時刻t2aで回生ブレーキ力指令に応じた回生電流まで立ち上がる。回生負荷指標R_reg=ΔEs/ΔIsが、電圧変化率判定値Ref_dif_ecf_isよりも小さい状態であれば、自列車53aの蓄電システム7は、フィルタコンデンサ電圧Ecfを所定値Ref_ecf_up以下に抑えるリミット定電圧制御を動作させる。インバータ装置14からの回生電流は、まず電力供給手段52に優先的に戻し、力行列車52bにより消費される。時刻t3aでフィルタコンデンサ電圧EcfがRef_ecf_upを超過すると、蓄電システム7によるリミット定電圧制御は、フィルタコンデンサ電圧をRef_ecf_upに保持するように定電圧制御する。このとき、回生電流の一部が蓄電装置22に充電される。速度の低下により回生電流は徐々に減少し、時刻t4a以降で蓄電装置22に充電しなくてもフィルタコンデンサ電圧EcfをRef_ecf_up以下に維持できるようになり、以後、時刻t5aで自列車53aが停止するまで、すべての回生電流を電力供給手段52に戻すことができる。
なお、蓄電装置22に充電された回生電力は、自列車53aの次回以降の力行時、力行電力のすべてまたは一部として消費する。これにより、自列車53aの回生電力は、電力供給手段52に戻され力行列車53bで消費された電力分と、蓄電装置22に充電され自列車52aの次回以降の力行時に消費された電力分を合わせて有効活用できる。
(b)R_reg≧Ref_dif_ecf_isのとき
近傍に力行列車が存在しないと判断する。すなわち、自列車53aのブレーキ動作により発生した回生電力は、近傍の力行列車53bが電力供給手段52を経由して消費する際のエネルギ損失よりも、自列車53aの蓄電システム7に充電し、これを放電して自列車53aの力行電力として消費する際のエネルギ損失の方が小さいと判断する。
図4(b)では、自列車53aは、他列車53bより距離L2だけ離れた地点を走行している場合を示している。距離L2は、電力発生手段51が電力供給手段52により電力を供給する同一区間内において、概ね2km以上の距離を想定している。
時刻t1で自列車53aの回生ブレーキを開始し、回生ブレーキ力指令に応じた回生電流が時刻t2bまで立ち上がった時点で回生負荷指標R_reg=ΔEs/ΔIsが、電圧変化率判定値Ref_dif_ecf_isを超過した状態を示している。この時点で、回生電流を優先的に蓄電装置22に充電する、充電優先回生制御を開始する。回生電流は蓄電装置22へ優先的に充電されるため、電力供給手段52へ戻される電流は一時的に減少するが、時刻t3bで回生電流が蓄電装置22の充電電流の許容値Lmt_I_chgに達すると、回生電流と充電電流許容値Lmt_I_chgの差分が電力供給手段52に戻される。時刻t4bに達すると、回生電流が蓄電装置22の充電電流の許容値Lmt_I_chgを下回るため、以後は時刻t5bで自列車53aが停止するまで回生電流を蓄電装置22だけで吸収する。
なお、蓄電装置22に充電された回生電力は、自列車53aの次回以降の力行時、力行電力のすべてまたは一部として消費する。これにより、自列車53aの回生電力は、電力供給手段52に戻され力行列車53bで消費された電力分と、蓄電装置22に充電され自列車52aの次回以降の力行時に消費された電力分を合わせて有効活用できる。
以上説明したように、この構成によると、自列車と他列車の距離が短く、両者間の電車線の抵抗成分が小さいときは、回生電力を蓄電システムに充電せず、電車線に戻して他の力行する列車に消費させ、自列車と他列車の距離が長く、両者間の電車線の抵抗成分が大きいときは、回生電力を電車線に戻して他の力行する列車に消費させるのではなく、回生電力を蓄電システムに充電する。すなわち、本発明によれば、自列車が回生ブレーキを開始したとき、回生電力を吸収する他車両までの距離を推定して、自列車の蓄電システムへの充電と、他列車の力行電力としての消費のうち、より電力損失の小さい方法を選び、回生電力を有効利用する鉄道車両の駆動システムを実現できる。
1…車両 2…車間連結器
3…集電装置 4…台車
5…輪軸 6…インバータ装置
7…蓄電システム 8…電圧検出器
9…電流検出器 10…統括制御手段
10…統括制御手段
12…フィルタリアクトル
13…フィルタコンデンサ
14…インバータ装置 15…主電動機
16…電圧センサ 17…電流センサ
18…スイッチング素子 19…ゲートアンプ
20…充放電制御装置 21…平滑リアクトル
22…蓄電装置 24…インバータ装置
31…加減算器 32…比較器
33…論理反転器 34…論理積演算器
35…論理和演算器 36…切替器
37…安定化制御器 38…PWM生成器
39…位相シフト演算器 40…差分演算器
41…フリップフロップ 42…高位選択器
43…低位選択器 44…除算器
51…電力発生手段 52…電力供給手段
53…列車
101…集電装置
102…フィルタリアクトル
103…フィルタコンデンサ
104…インバータ装置 105…主電動機
106…電圧センサ 107…電流センサ
108…スイッチング素子
109…ゲートアンプ
110…制御装置
111…平滑リアクトル
112…蓄電装置
201…接地

Claims (10)

  1. 車両の外部で電力を発生する電力発生手段と、
    所定の電力供給区間に存在する前記車両に、前記電力発生手段によって発生された前記電力を供給する電力供給手段と、
    前記電力供給手段から前記車両に電力を取り込む集電手段と、
    前記車両に取り込まれた前記電力に基づく高圧直流電力を交流電力に変換するインバータ手段と、
    前記インバータ手段により駆動される電動機と、
    前記集電手段と前記インバータ手段間の通流電流を検出する電流検出手段と、
    前記集電手段から取り込まれた前記電力の電圧を検出する電圧検出手段とを備え、
    前記電流検出手段と前記電圧検出手段とがそれぞれ検出した電流と電圧の検出値に基づいて、前記所定の電力供給区間に存在する前記車両と他の車両との間における前記電力供給手段の抵抗値を算出し、前記抵抗値に応じて前記車両と前記他の車両との間の距離を推定すること
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
  2. 請求項1に記載の鉄道車両の駆動システムにおいて、
    低圧直流電力を供給する電力蓄積手段と、前記高圧直流電力の通流部分と前記低圧直流電力の通流部分間の通流電流を調整制御するスイッチ手段と、前記両通流部分間を流れる前記通流電流を検出する手段と、前記高圧直流電力及び前記低圧直流電力の電圧を検出する直流電圧検出手段とを備え、更に、前記電力供給手段の前記抵抗値又は前記車両と前記他の車両との間の前記距離に応じて前記スイッチ手段における前記通流電流を調整制御する充放電制御手段を備えること
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
  3. 請求項2に記載の鉄道車両の駆動システムにおいて、
    前記充放電制御手段は、前記インバータ手段が回生ブレーキ動作中に、算出された前記電力供給手段の前記抵抗値が所定値よりも大きいことに応答して、前記インバータ手段により発生された回生電力を前記電力蓄積手段に充電するように、前記スイッチ手段の通流電流を調整制御すること
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
  4. 請求項3に記載の鉄道車両の駆動システムにおいて、
    前記充放電制御手段は、前記インバータ手段が回生ブレーキ動作中に、算出された前記電力供給手段の前記抵抗値が前記所定値よりも小さいことに応答して、前記インバータ手段により発生された前記回生電力を前記集電手段を通じて前記電力供給手段に戻すこと
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
  5. 請求項2の鉄道車両の駆動システムにおいて、
    前記充放電制御手段は、前記インバータ手段が回生ブレーキ動作中に、推定した前記他の車両との前記距離が所定値よりも大きいことに応答して、前記インバータ手段により発生された回生電力を前記電力蓄積手段に充電するように、前記スイッチ手段の通流電流を調整制御すること
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
  6. 請求項5に記載の鉄道車両の駆動システムにおいて、
    前記充放電制御手段は、前記インバータ手段が回生ブレーキ動作中に、算出された前記電力供給手段の前記抵抗値が前記所定値よりも小さいことに応答して、前記インバータ手段により発生された前記回生電力を前記集電手段を通じて前記電力供給手段に戻すこと
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
  7. 請求項3〜6のいずれか一項に記載の鉄道車両の駆動システムにおいて、
    前記充放電制御手段は、前記電力供給手段の前記抵抗値は、前記インバータ手段が回生ブレーキ動作の開始の際に、所定時間における前記電流検出手段が検出した前記通流電流の増加率に対する前記電圧検出手段が検出した前記電圧の増加率の比率として算出すること
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
  8. 請求項7に記載の鉄道車両の駆動システムにおいて、
    前記電力供給手段の前記抵抗値が大小比較される前記所定値は、前記電力蓄積手段の内部抵抗に相当する大きさに設定されていること
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
  9. 請求項3〜6のいずれか一項に記載の鉄道車両の駆動システムにおいて、
    前記充放電制御手段は、前記インバータ手段の回生電力、前記電圧検出手段の電圧検出値、前記電力蓄手段の端子間電圧、前記電力蓄手段に入出力する電流、及び統括制御手段からの充放電許可信号を入力とし、前記スイッチ手段のためのゲートアンプにオン/オフを指令するゲートパルス信号を出力すること
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
  10. 請求項9に記載の鉄道車両の駆動システムにおいて、
    前記充放電制御手段は、前記電力供給手段の前記抵抗値が前記所定値を超えたとき、前記電力蓄手段に入出力する電流の検出値を、所定の充電電流指令値に追従するように、前記ゲートパルス信号を出力すること
    を特徴とする鉄道車両の駆動システム。
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