JP5565233B2 - 架橋高分子電解質膜、それを用いた膜電極接合体、燃料電池 - Google Patents
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Description
PEFCは、車載用電源や、家庭据置用電源などへの使用が期待されている。特に車載用では、高温かつ低加湿条件下で高いプロトン伝導度を示す高分子電解質膜が望まれる。
炭化水素系高分子電解質膜のプロトン伝導性を向上させるためには、高分子電解質膜のイオン交換容量(以下、IECと略す場合がある)を上げる必要がある。その方法の一つとして、高分子電解質膜をスルホン化させる手法がこれまで提案されてきた(特許文献1参照)。
高いプロトン伝導性と耐水性を兼ね備えた炭化水素系高分子電解質膜を得るという観点から、高分子電解質を架橋する方法が提案されている。
その一つに、高分子電解質膜に放射線を照射する方法がある(特許文献2参照)。しかしながら、放射線照射により高分子電解質膜が劣化してしまうことや、放射線で架橋を行うためには大規模な設備を必要とすることがこの手法の問題点である。
プロトン酸基を介さずに架橋をする方法も幾つか報告例がある。例えば、高分子電解質の主鎖と、架橋剤との間でエステル結合を作り架橋する方法がある(非特許文献1、2参照)。しかしながら、エステル結合は加水分解を受けやすいことや、架橋剤の導入によりIECが低下してしまうことが問題であった。
また、前記プロトン伝導性高分子のプロトン酸基がスルホン酸基であることが望ましい。スルホン酸基は解離定数が大きく高いプロトン伝導性を示し、水に対する安定性が高いという顕著な効果を奏する。
さらに、前記架橋剤のプロトン伝導性高分子に対する添加量が、プロトン伝導性高分子100質量部に対し、0.5質量部以上100質量部以下であることが望ましい。プロトン伝導性高分子に含まれるプロトン酸基を介さずに架橋反応を容易に進行させることができ、かつプロトン伝導性を向上させ、さらに耐水性にも優れるという顕著な効果を奏する。
本発明による燃料電池は、上記架橋高分子電解質膜および上記膜電極接合体のうち少なくとも一方を用いたことを特徴とする。このような構成によれば、低加湿条件下でも、プロトン伝導性が高く、発電性能や耐水性にも優れているという顕著な効果を奏する。
本発明の実施形態による架橋高分子電解質膜は、プロトン酸基を有するプロトン電導性高分子と、プロトン酸基を有する架橋剤とを反応させて、プロトン酸基以外の部分を介して架橋して得られる架橋高分子を主成分として形成される架橋高分子電解質膜において、前記プロトン伝導性高分子が芳香族高分子からなるものである。
前記基体となるプロトン伝導性高分子の中でも、架橋剤との反応性を考慮すると、架橋剤との反応性の高い電子密度の高いサイトが存在する芳香環を高分子主鎖内に有する樹脂が好ましく用いられる。
前記プロトン伝導性高分子におけるプロトン酸基の種類は特に制限はないが、スルホン酸基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などを用いることができ、中でも、解離定数、水への安定性などを考慮するとスルホン酸基が好ましい。
本実施形態で使用する架橋剤は、プロトン伝導性高分子のプロトン酸基を介さずにプロトン酸基以外の部分で架橋反応を進行させることができ、かつ架橋剤自身もプロトン酸基を有しており、架橋高分子電解質膜のプロトン伝導度を向上させることができる架橋剤であればよい。
架橋方法としては、光照射法、加熱法、pH調整法などを用いることができるが、本実施形態において用いるプロトン伝導性高分子と架橋剤の溶液は酸性であるため、酸性下で反応するpH調整法が好ましい。
加熱法を用いることで、装置やプロセスなどが簡便になり容易、かつ経済的に架橋反応を行うことができる利点もある。
また、本実施形態の架橋高分子電解質膜にシート状の補強剤を添加してもよい。補強剤としては、アラミド不織布、液晶ポリマー、ガラスクロス、ガラス不織布、ポリテトラフルオロエチレン不織布、ポリテトラフルオロエチレン多孔体、ポリフェニレンスルフィドレジンなどを用いることができ、これらは単独で用いても複用することもできる。
溶媒としては、有機溶媒、水、無機溶媒など常温で液体状態であるものが好適に使用できる。
以上の製造方法により、架橋高分子電解質膜を効率よく容易に製造することができる。
本実施形態による架橋高分子電解質膜は、燃料電池用電解質膜として好適に用いることができるが、特にこれに限定されることはない。例えば、電気二重層キャパシタ用電解質膜、プロトン交換膜などに用いることができる。
図1は本発明の実施形態による膜電極接合体の一実施態様の断面説明図である。本実施形態による膜電極接合体は図1に示したような積層構造からなる。
前記のようにして製造した本実施形態の高分子電解質膜1の両面に常法により空気極側電極触媒層2および燃料極側触媒層3を接合・積層して膜電極接合体12が形成される。電極触媒層2、3は、それぞれ導電剤としてのカーボンブラック粒子に反応触媒、前記プロトン伝導性高分子または前記プロトン伝導性高分子と架橋剤とを反応させて前記プロトン伝導性高分子のプロトン酸基以外の部分を介して化学結合して得られる高分子電解質膜から構成されている。
以上のように、本実施形態によれば、電極触媒層を架橋高分子電解質膜の両面に接合してなる高性能のMEAが得られる。
図2は、この膜電極接合体12を装着した固体高分子型燃料電池の単セルの一実施態様の構成を示す分解断面図である。膜電極接合体12の空気極側電極触媒層2および燃料極側電極触媒層3と対向して、それぞれカーボンペーパーにカーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の混合物を塗布した構造を持つ空気極側ガス拡散層4および燃料極側ガス拡散層5が配置されている。これによりそれぞれ空気極6および燃料極7が構成される。そして、それらを、一組のセパレータ10により挟持して単セル11が構成される。
このような構成の単セル11において、空気や酸素などの酸化剤を空気極6に供給し、水素を含む燃料ガスもしくは有機物燃料を燃料極7に供給することによって、発電が行われる。
本発明の膜電極接合体の製造方法の例についてさらに説明する。燃料ガスを均一に電極触媒層2、3中に供給するための前記導電性多孔質体などからなるガス拡散層4、5上に、反応触媒、前記導電剤およびプロトン酸基を有するプロトン伝導性高分子からなるインキを塗布し、その後、乾燥させることにより触媒電極層2、3を積層し、その後、この触媒電極層2、3によりプロトン伝導性架橋高分子電解質膜1を挟持して熱圧着により接合して膜電極接合体(MEA)12を製造する方法を用いることができる。ガス拡散層4、5上に触媒電極層2、3を形成するインキの塗布方法はドクターブレード法、スクリーン印刷法、スプレー法などを用いることができる。
また、MEA12の製造方法としては、プロトン伝導性架橋高分子電解質膜1の両面に触媒電極層2、3を転写やスプレー噴霧により作製し、その後、ガス拡散層4、5で挟持する方法を用いても良い。
(実施例1)
スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン1gと、架橋剤の2,5−ジメトキシ−ベンゼンスルホン酸0.15gを有機溶媒中で混合させた。
次に、作製した溶液をポリイミド基材上にキャスト法により成膜し、溶媒を乾燥させた後、得られた膜を加熱プレスすることにより、反応を進行させて本実施例の架橋高分子電解質膜を得た。熱プレスの条件は、プレス温度120℃、プレス時間3h、プレス圧力60kgf/cm2とした。
得られた高分子電解質膜をジメチルホルムアミド(DMF)に浸したところ、溶解しなかったことから架橋していることを確認した。
架橋剤に1,4−ベンゼンジメタノールを用いること以外は、実施例1と同様な方法で架橋高分子電解質膜を得た。
比較例1の架橋高分子電解質膜と比べて、本実施例1の架橋高分子電解質膜は、IECの値が向上した。加えて、温度80℃、相対湿度30%以上90%以下の範囲内におけるプロトン伝導度が100%以上向上した。
2 空気極側電極触媒層
3 燃料極側電極触媒層
4 空気極側ガス拡散層
5 燃料極側ガス拡散層
6 空気極
7 燃料極
8 ガス流路
9 冷却水流路
10 セパレータ
11 単セル
12 膜電極接合体
Claims (9)
- プロトン酸基を有するプロトン伝導性高分子と、プロトン酸基を有する架橋剤とをプロトン酸基以外の部分を介して架橋反応させて得られる架橋高分子を主成分として形成された架橋高分子電解質膜において、
前記プロトン伝導性高分子が芳香族系高分子からなり、
前記架橋剤を構成するプロトン酸基がスルホン酸基であり、
前記架橋剤が、下記一般式(1)または(2)で表される、スルホン酸基を有する化合物であることを特徴とする架橋高分子電解質膜。
- 前記プロトン伝導性高分子が、プロトン酸基を有するポリエーテルケトン、プロトン酸基を有するポリエーテルエーテルケトン、プロトン酸基を有するポリエーテルスルホン、またはプロトン酸基を有するポリフェニレンであることを特徴とする請求項1に記載の架橋高分子電解質膜。
- 前記プロトン伝導性高分子におけるプロトン酸基がスルホン酸基であることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれか1項に記載の架橋高分子電解質膜。
- 前記プロトン伝導性高分子の水素イオン交換容量が0.5meq/g以上5meq/g以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の架橋高分子電解質膜。
- 前記架橋剤が、加熱することにより架橋反応を開始することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の架橋高分子電解質膜。
- 前記架橋反応における加熱温度が60℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の架橋高分子電解質膜。
- 前記架橋剤のプロトン伝導性高分子に対する添加量が、プロトン伝導性高分子100質量部に対し、0.5質量部以上100質量部以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の架橋高分子電解質膜。
- 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の架橋高分子電解質膜を用いたことを特徴とする膜電極接合体。
- 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の架橋高分子電解質膜および請求項8に記載の膜電極接合体のうち少なくとも一方を用いたことを特徴とする燃料電池。
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