JP5564538B2 - エンジンの燃焼室構造 - Google Patents

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Description

この発明は、エンジンの燃焼室構造に関する。
エンジンの燃焼室に関して従来から種々の構造が提案されている。たとえば特許文献1には副燃焼室を有する燃焼室構造が開示されている。
特開平6−42411号公報
しかし、前述した従来構造では、副燃焼室での燃焼が主燃焼室の外部で燃焼する外燃機関となってしまう。そのため冷却による損失エネルギーが大きく、熱効率が低いという問題があった。
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、高い熱効率を得ることができるエンジンの燃焼室構造を提供することを目的とする。
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために本発明の実施形態に対応する符号を付するが、これに限定されるものではない。
本発明は、燃焼室内に燃焼室と同径上に設けられる複数の点火部(25)と、それら複数の点火部のうち隣り合う点火部のどちらかひとつに偏倚して配置され、着火された混合気の火炎が伝播してくる位置に形成された開口(11a)と、その開口の反対端を閉塞する底(11c)と、を含む開口と筒径が同一の筒穴部(11)を備え、この筒穴部(11)は、偏倚した側の点火部からの火炎伝播による圧力波が底で跳ね返ることで開口から高速のガスが噴出することを特徴とする。
本発明によれば、着火された混合気の火炎が筒穴部の開口に伝播し通り過ぎると、開口から高速ガスが噴出し燃焼室内の未燃ガスの拡散を促進する。さらに燃焼室内に燃焼室と同径上に複数の点火部を設けるので、燃焼室内において未燃ガスが溜まりやすい外周領域の燃焼が促進される。また複数の点火部から火炎が伝播されるので筒穴部からの噴出ガスが発生しやすくなり、燃焼促進と未燃ガスの拡散との相乗効果が得られる。また、筒穴部は偏倚する側の点火部からの火炎伝播によって確実に高速のガスを噴射する。これらによって筒内での燃焼速度が速くなり燃焼期間が短縮され、熱効率が高くなる。
本発明によるエンジンの燃焼室構造の第1実施形態を示す図である。 環状点火プラグを示す斜視図である。 基礎的な燃焼室構造を示す図である。 図3に示した燃焼室構造による実験結果を示す図である。 筒穴部から非常に高速のガスが噴出する現象について説明する図である。 本発明によるエンジンの燃焼室構造の第1実施形態の作用効果を説明する図である。 本発明によるエンジンの燃焼室構造の第2実施形態を示す図である。
以下では図面等を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明によるエンジンの燃焼室構造の第1実施形態を示す図であり、図1(A)は上方から燃焼室を透視した図、図1(B)は側方から燃焼室を透視した図である。
エンジンの燃焼室10は、本実施形態ではいわゆるペントルーフタイプが例示されている。ペントルーフ稜線には天井点火プラグ30が設けられる。ペントルーフ稜線を挟んで一方のルーフ(図1では右側のルーフ)には吸気バルブ31が設けられる。ペントルーフ稜線を挟んで他方のルーフ(図1では左側のルーフ)には排気バルブ32が設けられる。なおエンジンの当業者においては重力方向とは別に上死点/下死点という表現が使用される。水平対向エンジン等においては、必ずしも上死点が重力方向の上、下死点が重力方向の下になるとは限らないし、また仮にエンジンを倒立した場合には、上死点が重力方向の下、下死点が重力方向の上になる。本明細書においては、慣習にしたがい、上死点側を上、下死点側を下、とし、燃焼室の上方をルーフと表現する。
エンジンの燃焼室10の外周には点火部25が設けられる。この外周点火部25は、本実施形態では、図2に示す環状点火プラグ20に形成された放電ギャップである。なお図1では、点火部分のイメージにしたがって通常の点火プラグに模して点火部を図示するが、詳細は図2を参照して後述する。
点火部25は、本実施形態では4つ設けられる。そしてひとつの点火部25と、もうひとつの点火部25と、の間に筒穴部11が形成される。
筒穴部11は、ひとつの点火部25と、もうひとつの点火部25と、の真ん中ではなく、一方の点火部25に偏倚して形成される。筒穴部11は、着火された混合気の火炎が伝播してくる位置に形成された開口11aと、その開口11aの反対端を閉塞する底11cと、を含む。筒穴部11の軸線Aの方向は、燃焼室10の半径方向である。このような配置になっているので、筒穴部11の軸線Aは、開口11aの中心11bと点火部25とを結んだ直線Bと交叉し、直線Bに一致しない。また筒穴部11の直径dに対する深さLの比L/dが6よりも大きくなるように、筒穴部11の開口11aの穴径(直径)d及び筒穴部11の深さLが設定される。たとえば筒穴部11の開口11aの穴径(直径)dが1mmであり、深さLが10mmである。
図2は、環状点火プラグを示す斜視図である。
環状点火プラグ20は、環状ボディ21と、中心電極22と、導電部23と、アース24と、を含む。
環状ボディ21は、セラミックなどの絶縁性の材料で構成される。
中心電極22は、たとえば白金(Pt)、イリジウム(Ir)などのように耐熱性及び導電性のある材料で構成された細長い棒状電極である。中心電極22の先端は、環状ボディ21の内周面21aに位置する。図示を省略するが中心電極22は、点火コイルに接続される。
導電部23は、たとえば白金(Pt)、イリジウム(Ir)などのように耐熱性及び導電性のある材料が環状ボディ21の内周面21aに蒸着処理されて長方形に形成される。本実施形態では4つの導電部23a〜23dが設けられる。この4つの導電部23a〜23dが中心電極22の先端を先頭として、環状ボディ21の内周面21aに所定間隔を開けて一列に設けられる。中心電極22の両側に位置する導電部23a,23dのうち一方の導電部23aは中心電極22に近接して放電ギャップ25aを構成する。他方の導電部23dは、一方の導電部23aよりも中心電極22から十分に離間している。このため中心電極22に電圧が印加されても、中心電極22と導電部23dとの間では放電しない。中心電極22の先端22aと環状ボディ21の上面21b及び下面21cとの距離は、中心電極22の先端22aと導電部23aとの距離に比べて十分大きい。互いに隣接する導電部23の間には、3つの放電ギャップ25b〜25dが形成される。3つの放電ギャップ25b〜25dのギャップ量は全て等しい。またそのギャップ量と略等しくなるように放電ギャップ25aが形成される。
環状点火プラグ20においては、放電ギャップ25a〜25dのギャップ量の和、すなわちギャップ量の総和によってエネルギー量が決定される。そして導電部23の所定位置に筒穴部11が形成される。
アース24は、中心電極22に印加された電圧をシリンダヘッドに逃がす。アース24は、中心電極22の両側に位置する導電部23a,23dのうち中心電極22から離間した導電部23dに連続するように形成される。アース24は、導電部23と同様にたとえば白金(Pt)、イリジウム(Ir)などのように耐熱性及び導電性のある材料を蒸着処理することによって環状ボディ21の内周面21aから上面21bにかけて形成される。環状ボディ21の上面21bに貼り付けられた部分がシリンダヘッドに接触することで、中心電極22に印加された電圧をシリンダヘッドに逃がす。
このような構造の環状点火プラグ20を使用すれば、点火コイルのエネルギーを受けて各放電ギャップ25a〜25dで飛火し、多点点火することができる。
次に本実施形態の作用効果を図3〜図5を参照して説明する。なお図3は本実施形態の作用効果を理解しやすくするための基礎的な燃焼室構造を示す図である。
図3に示した燃焼室10では、外周にひとつの点火部25を設けた。図3では、ボア径80mmの燃焼室10の左端に、点火部25を設けた。また燃焼室10には、着火された混合気の火炎が伝播してくる位置の燃焼室内に開口し、反対端は閉塞する筒穴部11を形成した。筒穴部11の大きさは、穴径(直径)dが1mm、深さLが10mmである。筒穴部11の軸線Aの方向は、燃焼室10の半径方向である。このような配置になっているので、筒穴部11の軸線Aは、開口11aの中心11bと点火部25とを結んだ直線Bと交叉し、直線Bに一致しない。
図4は、図3に示した燃焼室構造による実験結果を示す図であり、火炎の伝播状態を時間ごとに示してある。なお時間の経過につれて図4(A)→図4(L)と進む。
図4(A)で燃焼室内の混合気が点火部25によって着火されると、着火点から火炎が急激に進行する。そして図4(F)で火炎の進行波が筒穴部11の開口11aに到達し、筒穴部11の開口11aを過ぎると、図4(G)から分かるように筒穴部11の開口11aからガスが噴出する。次の瞬間である図4(H)を見ると、点火部25から始まる火炎の進行に比べて、筒穴部11からのガスの噴出が非常に速いことが分かる。このガスによって燃焼室内の未燃ガスの拡散が促進され未燃ガスの火炎に対する接触面積が拡大する。そのため筒内での燃焼速度が速くなり熱効率を高くする作用効果が得られたのである。
図5は、筒穴部11から非常に高速のガスが噴出する現象について説明する図である。
ガスの噴出現象の生じる理由について本件発明者らは以下のように考察した。混合気が燃焼室内に存在する状態で点火部25が点火すると、図5(A)に示すように火炎が進行する。なお火炎の進行波をW1〜W6で示す。そして火炎が筒穴部11の開口11aに到達すると、開口近傍の混合気が燃焼する。混合気は燃焼すると熱膨張する。そして図5(B)に示すように熱膨張による圧力波が、筒穴部11に存在する混合気(未燃ガス)を筒穴部11の底11cのほうへ押し込めるように作用する。すると筒穴部11の底11cにおいてガス圧力が非常に高圧になる。するとその圧力波の跳ね返りによって、筒穴部11から非常に高速のガスが噴出することで、ガスの噴出現象が生じると考えられる。
なお詳細は省略するが、本件発明者らは、筒穴部11の穴径dを変えても実験した。すると穴径dが1〜3mmのときは高速ガスの噴出現象を確認できたが、穴径dが5mmのときはガスの噴出現象が弱かった。これは穴径dが大きすぎたために、開口近傍で燃焼した混合気による圧力閉じ込め現象が生じにくかったためと考えられる。また穴径dが1mmよりも小径であると火炎が筒穴部11の内部に進行しにくく、この場合もガスの噴出現象が弱かった。したがってガスの噴出現象を得るには、適度な穴径にする必要があるということが本件発明者らによって知見された。
また本件発明者らは、筒穴部11の深さLを変えても実験した。すると筒穴部11の直径dに対する深さLの比L/dが6よりも大であるときは高速ガスの噴出現象を確認できた。これに対して比L/dが6よりも小さいとガスの噴出現象が弱かった。これは深さLが小さいと筒穴部11に閉じ込められる圧力が小さいためであると考えられる。したがってガスの噴出現象を得るには、適度な深さLにする必要があるということが本件発明者らによって知見された。
さらに本件発明者らは、筒穴部11の位置を変えても実験した。すると筒穴部11の軸線Aが、開口11aの中心11bと点火部25の着火部分21とを結んだ直線Bに一致する位置、たとえば筒穴部11が点火部25に対向する位置では、ガスの噴出現象が弱まった。軸線Aが直線Bに一致しては、点火部25からの進行波と、筒穴部11からの噴出ガスと、がエネルギーをお互いに相殺するためであると考えられる。したがって高速ガスの噴出現象を得るには、筒穴部11を適切な位置にする必要があるということが本件発明者らによって知見された。
上記において燃焼室10にひとつの外周点火部25とひとつの筒穴部11を設けた場合を例示して説明したが、複数設けても同様の現象が生じる。そこで本実施形態では図1に示したように、燃焼室10の外周に4つの外周点火部25を設けるとともに、4つの筒穴部11を設けたのである。このようにすることで4つの筒穴部11から高速ガスが噴出する。このガスによって燃焼室内の未燃ガスの拡散作用が促進され未燃ガスの火炎に対する接触面積が拡大する。そのため筒内での燃焼速度が速くなり熱効率を高くできたのである。
図6は、本実施形態における点火部25と筒穴部11との配置による作用効果を説明する図である。上述したように、点火部25が点火すると火炎が進行する。なお火炎の進行波をW1〜W3で示す。そして火炎が筒穴部11の開口11aに到達すると図5で説明した理由によって筒穴部11から高速のガスが噴出する。
このとき筒穴部11が、ひとつの点火部25と別のもうひとつの点火部25との真ん中に形成されるとすると、各点火部25からの火炎の進行波W1は同時に筒穴部11の開口11aに到達する。双方の火炎の進行波W1が同時に到達しては、筒穴部11の開口11aにおける各火炎の熱膨張をお互いに相殺してしまい圧力波が弱まってしまうと考えられる。
本実施形態では図1にも示したように、筒穴部11は、ひとつの点火部25と、もうひとつの点火部25と、の真ん中ではなく、一方の点火部25に偏倚して形成される。これにより偏倚する側の点火部25からの火炎伝播によって筒穴部11から高速のガスが噴出する。さらに筒穴部11の軸線Aの方向は、燃焼室10の半径方向であるので、筒穴部11から噴出するガスは燃焼室10の中心に向かって噴出する。また燃焼室10においてピストン冠面の中心領域は、火炎伝播が遅く、未燃混合気が多く溜まる。筒穴部11から噴出する高速のガスは、この未燃領域に向かって噴出することとなる。そのため筒内での燃焼期間を短縮でき熱効率を高くできたのである。
(第2実施形態)
図7は、本発明によるエンジンの燃焼室構造の第2実施形態を示す図である。
第1実施形態においては、筒穴部11を燃焼室10の側壁面に形成したが、他の場所に形成してもよい。たとえば、シリンダヘッドの天井点火プラグ30の近傍、すなわち天井点火プラグ30と、吸気バルブ31や排気バルブ32と、の間に形成してもよい。点火プラグ30の近傍であれば火炎進行波が早めに筒穴部11を通過するので早期に高速ガスが噴出する。これによって燃焼室内の拡散が早期に生じ燃焼が促進されて熱効率が高くなる。また吸気バルブ31や排気バルブ32の傘表面に形成してもよい。さらにピストン冠面に形成してもよい。いずれにせよ燃焼室の火炎が伝播してくる位置に形成すればよい。そして筒穴部11の軸方向が火炎の伝播方向に一致しない向きに形成すればよい。このように構成することで、筒穴部11から高速ガスが噴出することとなり、筒内での燃焼を促進することができ熱効率を高くできる。
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。たとえば、筒穴部は上記例示した個数に限らず適宜設定すればよい。図3〜図5を参照して説明したように、ひとつであっても効果を十分得ることができる。また上記では環状点火プラグとして4つの点火部を持つタイプを例示したが、点火部点数は適宜変更すればよい。さらに上記では点火プラグとしてひとつの環状ボディに複数の点火部を有する環状点火プラグを例示したが、天井点火プラグのような通常の点火プラグを複数使用してもよい。点火機能を有するものであれば、いずれでもよい。さらにまた上記説明においては天井点火プラグを有するエンジンを例示して説明したが、ディーゼルエンジンであってもよい。
10 燃焼室
11 筒穴部
11a 開口
11b 中心
11c 底
20 環状点火プラグ
25 点火部
25a〜25d 放電ギャップ(点火部)
30 天井点火プラグ

Claims (7)

  1. 燃焼室内に燃焼室と同径上に設けられる複数の点火部と、
    前記複数の点火部のうち隣り合う点火部のどちらかひとつに偏倚して配置され、
    着火された混合気の火炎が伝播してくる位置に形成された開口と、
    前記開口の反対端を閉塞する底と、
    を含む前記開口と筒径が同一の筒穴部と、
    を備え
    前記筒穴部は、偏倚した側の前記点火部からの火炎伝播による圧力波が前記底で跳ね返ることで前記開口から高速のガスが噴出する、
    ことを特徴とするエンジンの燃焼室構造。
  2. 前記点火部は、内径が前記燃焼室と同径であって燃焼室壁面に沿って環状に形成される絶縁性の環状ボディを含む環状点火プラグの点火部分であって、その環状ボディの内周面に臨んで設けられる、
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃焼室構造。
  3. 前記筒穴部の軸線は、前記点火部から伝播する火炎の進行方向と交叉する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの燃焼室構造。
  4. 前記筒穴部の軸線は、開口中心と前記点火部の点火部とを結んだ直線と交叉する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの燃焼室構造。
  5. 前記筒穴部の開口径は、1mm以上3mm以下である、
    ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造。
  6. 前記筒穴部は、その直径に対する深さの比が6よりも大である、
    ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造。
  7. 前記筒穴部は、前記開口から噴出するガスが前記燃焼室の中心に向かって噴出するように配置される、
    ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造。
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