JP5562738B2 - 子宮体部類内膜腺癌の予後判定方法 - Google Patents

子宮体部類内膜腺癌の予後判定方法 Download PDF

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本発明は、子宮体部類内膜腺癌の予後を判定する方法に関し、詳しくは、特異的な腫瘍マーカーが存在しない子宮体部類内膜腺癌組織におけるカルボニルレダクターゼ(carbonyl reductase:CR)の発現状況をスコア化することにより、子宮体部類内膜腺癌の予後を判定する方法に関する。さらにまた、CRと特異的に結合する抗体、当該抗体を作製するためのペプチド、当該抗体を用いてCRを検出するための検査用キットに関する。
近年わが国では、子宮体癌が急激に増加している。欧米において、子宮体癌は最も頻度が高い婦人科悪性腫瘍であり、女性の悪性腫瘍の中では、乳癌、肺癌、大腸癌に次いで4番目の発症率である。日本においては子宮体癌のさらなる増加が危惧されている。実際、子宮体癌の人口10万対の罹患率は、1975年と1998年を比較すると1.4から4.5に増加していると報告されている。増加原因としては食生活の欧米化による肥満傾向、晩婚化、少子化等が挙げられている。このような状況の中で、子宮体癌の臨床的な重要性はますます高くなると考えられている。
子宮体癌を検出するための腫瘍マーカーとして、現在よく知られているものは、CA125、CA19−9、CA72−4、CEA等があげられる。しかしながら、検出を表す陽性率はCA125では21.1〜43.0%、CA19−9では24.0〜31.0%、CA72−4では21.4〜33.3%であり、CEAでは2.1〜14%と低い(非特許文献1)。このように、子宮体癌に対する特異性の高い腫瘍マーカーは存在しているとは言い難い。
また、子宮体癌は根治手術を行い、摘出した臓器の病理組織学的検索の結果から、予後予測を行っているのが現状である。従って、術後の化学療法や放射線療法等の補助療法の必要性については摘出手術をするまでは判断できない。不要な治療を受ける患者数を減らし得るような、癌の予後を予測して判定する方法が望まれている。
これまで、癌の予後を判定する方法について、いくつかの報告がある。膀胱癌の予後に関しては、尿中に存在する細胞の中心体複製異常の有無の検出による判定方法が明らかにされており(特許文献1)、メラノーマ又は肺癌の発症や進行については、CD166(ALCAM:activated leukocyte−cell adhesion molecule:活性化白血球接着分子)を血液中から検出し、この検出結果に応じて予後の状況を判定する方法が開示されている(特許文献2)。また、乳癌、肺癌、前立腺癌、または胃癌等の癌から骨転移のリスクが高いと予測する方法として、尿や癌細胞中のγ−GTP(γ−グルタミルトランスペプチダーゼ)レベルを測定し、該γ−GTPレベルが設定値より高い場合に、骨転移のリスクが高いと予測する方法が開示されている(特許文献3)。食道扁平上皮癌に関しては、特定の染色体の特異的な構造変化を検出する方法による予後の診断方法が開示されている(特許文献4)。本発明者らは、先に、子宮頸部扁平上皮癌のI・II期に関して、原発部位のCRの免疫組織染色による発現パターンを分類し、予後の判定方法を明らかにした(特許文献5)。
CRについては、in vitroの研究で、高転移能を有する細胞では、発現が低下すること、過剰発現によって、転移能は低下することが報告されている(非特許文献2)。このことから、CRは癌の悪性度や転移に関与することが推察されるが、子宮体癌の大部分を占める子宮体部類内膜腺癌患者の予後判定方法を開示した知見はない。
特開2006−275989号公報(表2) 特許第3779294号公報(図2) 特開2006−153499号公報(図2) 特開2002−272497号公報(表2、3) 特開2008−182987号公報(図6〜8、表2)
村上 明弘 他 女性外来診療マニュアル 産婦人科と腫瘍マーカー 産婦人科治療 94:619−623,2007 Ismail,E et al. Cancer Res 60:1173−1176,2000
子宮体部類内膜腺癌については、癌の予後を予測して、不要な治療を受ける患者数を減らし得るような術後判定の方法は知られていない。本発明は、高精度で、かつ特異性の高い癌の予後判定法を提供することをその主な課題とする。
CRは、扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしてよく知られているSCC抗原に結合する分子であることが、本発明者らにより見出されている(Murakami, A et al.Int J Oncol 34: 1395−1400, 2010)。CRの発現パターンは、癌組織において同一ではなく、発現が強い細胞と弱い細胞が存在する。さらに、原発組織におけるCRの免疫組織染色では、発現が低下している症例では予後不良の結果となった。本発明者らは、その点に着眼して、発現パターンと子宮体部類内膜癌の予後の密接な関連を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(4)を提供する。
(1)癌の予後を判定する方法であって、癌組織におけるカルボニルレダクターゼの発現パターンを指標とする子宮体部類内膜腺癌の予後判定方法。
(2)癌組織におけるカルボニルレダクターゼの発現パターンを、染色強度と染色陽性細胞の割合でスコア化し、陰性であるか、弱陽性である場合を、予後不良と判定することを特徴とする上記(1)に記載の予後判定方法。
(3)癌組織におけるカルボニルレダクターゼの発現パターンを、カルボニルレダクターゼと特異的に結合する下記のいずれかのペプチドを基に得られた抗体を用い、免疫組織染色法により測定することを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載の予後判定方法。
(a)配列表の配列番号2または配列番号3に示すアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列表の配列番号2または配列番号3に示すアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法を実施するためのキットであって、カルボニルレダクターゼと特異的に結合する抗体、免疫組織染色用の試薬および器具類を含有する予後判定用キット。
本発明により、癌の予後判定法、特に子宮体部類内膜腺癌の高精度かつ高特異度の予後判定法を提供することができ、さらに、簡便に判定するための判定用キットを提供することができる。
正常子宮内膜で強く発現するCRの局在についての検出を示す図である。 正常子宮内膜で性周期の変化における変化免疫組織染色によるCRの発現パターンを示す図である(A,B;増殖期、C,D;分泌期)。 子宮体部類内膜腺癌における免疫組織染色によるCRの発現パターンで、陰性の検出結果を示す図である。 子宮体部類内膜腺癌における免疫組織染色によるCRの発現パターンで、弱陽性の検出結果を示す図である。 子宮体部類内膜腺癌における免疫組織染色によるCRの発現パターンで、強陽性の検出結果を示す図である。 子宮体部類内膜腺癌における進行期別のCRの発現パターンを示す図である。 子宮体部類内膜腺癌患者におけるCR染色スコア別のPFSを示す図である(A;強陽性、弱陽性、陰性の3群で検討、B;強陽性、弱陽性+陰性の2群で検討)。 子宮体部類内膜腺癌患者におけるCR染色スコア別のOSを示す図である(A;強陽性、弱陽性、陰性の3群で検討、B;強陽性、弱陽性+陰性の2群で検討)。
子宮体癌のうち、組織学的に最も頻度多くみられるのが、子宮体部類内膜腺癌である。本発明は、子宮体部類内膜腺癌の予後判定方法であり、判定に用いるためのペプチドを作製し、該ペプチドに対する抗体を作製する。次いで、該抗体を用いて癌組織内のCRの発現パターンを測定し、癌組織内のCRの発現パターンを解析することにより、癌の予後を判定するものである。
CRは、ヒトの脳より精製され、分子量が約30kDaの分子で、277のアミノ酸からなる(Wermuth,B. J Biol Chem 256:1206−1213,1981、Wermuth,B.et al J Biol Chem 263:16185−16188,1988)。その遺伝子は21番染色体長腕22.12に位置し、マウスの遺伝子とは82%の相同性を持つことが明らかにされている(Forrest,GL.et al.Biochim Biophys Acta 1048:149−155,1990)。CRは、カルボニル化合物を基質とする細胞質に局在しているNADPH依存性の酵素である。脳ではプロスタグランジンやステロイドの還元を触媒する作用を有すること、また、肝臓では解毒作用に関与することが知られている。
CRの遺伝子に関する情報は、ヒトCRとして公知であり、NCBIの遺伝子データベースにおいて、アクセッションナンバーJ04056として登録されている。それによると、配列表の配列番号1に示すDNAとアミノ酸配列からなるポリペプチドであることがわかる。
ヒトCRは、公知の方法により調整することができる。Wermuthらが明らかにしているように、ヒト胎盤から得られたcDNAのライブラリーからクローンを用いて生産する方法がある(Wermuth,B. J Biol Chem 256:1206−1213,1981)。あるいは、GST(グルタチオン S−トランスフェラーゼ)蛋白質との融合として、大腸菌等の宿主細胞内で発現させ、グルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することもできる。
CRの発現パターンの測定は、CRと同様の免疫原性を有する、少なくとも8アミノ酸以上、好ましくは10アミノ酸以上のアミノ酸配列からなるペプチドを用いて行う。上記ペプチドは、所望の免疫原性を有する限り、アミノ末端および/またはカルボキシ末端が修飾されていてもよく、例えば、配列表の配列番号2または配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをあげることができる。あるいは、上記ペプチドは、配列番号2または配列番号3に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたペプチドであってもよい。このような変異体は、配列表の配列番号2または配列番号3に記載のアミノ酸配列と、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するものであっても良い。
配列番号2のペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列の第184番目のヒスチジン(His)から第195番目のグリシン(Gly)までのアミノ酸配列部位を抗原決定部位とみなし、N末端側のヒスチジンの前にシステインを付加して、化学的に合成されたものであり、CHQKEGWPSSAYGのアミノ酸配列を有する。
また、配列番号3のペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列の第99番目のアスパラギン(Asp)酸から第113番目のスレオニン(Thr)までのアミノ酸配列部位が、別のもう1つの抗原決定部位とみなし、C末端側のスレオニンの後にシステインを付加して、化学的に合成されたものであり、DPTPFHIQAEVTMKTCのアミノ酸配列を有する。
上記ペプチドの作製法としてはいくつかの方法があげられる。例えば、CRの遺伝子情報を基にマーカー遺伝子又はその部分遺伝子を発現ベクターに組込み、これを適当な宿主細胞に導入して、形質転換体を作成し、該形質転換体を培養して組み換え蛋白質を発現させ、発現させた組み換え蛋白質を培養体又は培養上清から精製することにより得る方法、あるいは、CRのアミノ酸配列情報を基にオリゴペプチドを化学的に合成する方法があげられる。さらにまた、CRの蛋白質を適切な蛋白切断酵素を用いて切断して得ることもできる。
本発明に使用する抗体は、上記ペプチドを認識する抗体であり、癌組織内のCRと特異的に結合し、CRの発現パターンを測定することができる抗体である。該抗体は、公知の方法を用いて作製することができ、ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。また、CRを認識する特性を失わない限り、低分子化抗体や、修飾された抗体などの抗体フラグメントであってもよい。
例えば、ポリクローナル抗体は、上記抗原性を有する配列表の配列番号2または配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するペプチド、あるいは、配列表の配列番号2または配列番号3に記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたペプチドを、必要に応じて適当なアジュバントを用いて、ウサギ、ラット、マウス、サル、ヒツジなどの哺乳動物の皮下あるいは腹腔内に投与して感作し、感作した動物から血液を採取し、この血液から公知の方法により血清を分離して得られる。ポリクローナル抗体としては、分離した血清をそのまま使用することができるが、さらに、例えば、SDS−PAGE(SDS−polyaclylamidegel electrophoresis、SDSアクリルアミドゲル電気泳動)や、CNBr−activated Sepharose 4B(アマシャム社製)を使用するAffinity法で精製して使用することもできる。
上記抗体を用いたCRの発現パターンの測定は、公知の蛋白質の測定方法に従って行うことができる。例えば、ウェスタンブロッティング法、ドットブロット法や、免疫沈降法、酵素免疫測定法 (EIA; enzyme−immuno assay、ELISA;enzyme−linked immunosorbent assay)、放射線免疫測定法(RIA;radio−immuno assay)、蛍光抗体法(FIA;fluorescent immuno assay)、免疫組織染色等の免疫学的測定法が挙げられる。
上記測定法においては、CRと特異的に結合する抗体を検出可能な物質で標識する。標識としては、放射性同位体や例えばビオチン、アビジン等のアフィニティー標識、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素標識、例えばFITC、ローダミン等蛍光標識、ECL(Enhanced Chimi Luminescence)による化学発光標識等があげられる。そのような標識は組み合わせても良く、標識を行う方法は、すでによく知られている方法で行う。
免疫学的測定法の例としては、競合アッセイ法やサンドイッチ法があげられる。当該サンドイッチ法のELISA法では、結合した酵素標識抗体に、酵素基質となる物質を加えて発色あるいは発光させ、その後に反応停止液を加え、発色あるいは発光の強さやパターンを測定する。試料中の抗原濃度に比例した強さやパターンが得られるため、対照物質との比較に基づいて試料中の抗原の発現状況を把握することができる。
本発明の、抗体を用いたCRの発現解析は、ヒト組織染色用キットを用いることもできる。免疫組織化学染色用キットのヒストファイン(ニチレイ社製)を使用する場合は、CRと結合した抗体に、ビオチン標識抗ウサギIgG抗体を2次抗体として結合させ、そこへ酵素試薬であるペルオキシターゼ標識ストレプトアビジンを結合させる。次いで、DAB(3,3−Diaminobenzidine)によりペルオキシターゼを染色することにより、癌組織中のCRの発現パターンを観察することができる。
癌患者の組織を用いて、癌の予後を判定する場合は、インフォームド・コンセントが得られた患者の癌組織を用いる。子宮体癌類内膜腺癌患者の進行期区分は、FIGO(国際産科婦人科連合:International Federation of Gynecology and Obsterics)の基準により、進行期I〜IVまでの4段階に区分できる。進行期Iは、癌が子宮体部に限局するもの、進行期IIは、癌が子宮体部および頸部に及ぶもの、進行期IIIは、癌が子宮外に広がるが、小骨盤腔を越えていないもの、または所属リンパ節転移のあるもの、進行期IVは、癌が小骨盤腔を越えているか、明らかに膀胱または腸粘膜を侵すものと定められている。
本発明の子宮体部類内膜腺癌の予後を判定するための、癌組織におけるCRの発現は、患者から得られた癌組織に由来する試料に、本発明の抗体組成物を接触させてCRの免疫複合体を形成させ、当該免疫結合体を染色させて検出することができ、CRの発現パターンを測定することにより該癌の予後を判定することができる。評価法は、例えばUmemotoらの方法(Br.J.Cancer 85:1032−1036, 2001)に準じて行うことができる。すなわち、CRの発現パターンを、染色強度(High:+3、Moderate:+2、Weak:+1、Negative:+0)と、染色陽性細胞の割合(50%以上:+2、50% 未満:+1、全く染色されない:+0))でスコア化し、合計したものを3つのパターン(A)強陽性、(B)弱陽性、(C)陰性に分けて評価する。各々のパターンから、(1)無進行生存(PFS:progression free survival、手術日から臨床的に再発が確認されるまでの期間)、および(2)全生存(OS:overall survival、手術日から死亡までの期間)について、統計学的に解析し、予後を判定する方法である。
癌組織のCRの発現パターンが、(A)強陽性である場合には、PFSおよびOSは延長しており、予後良好であると予測でき、CRの発現パターンが、(B)弱陽性、あるいは(C)陰性である場合には、PFSおよびOSは低く、予後不良と予測することができる。
本発明はまた、子宮体部類内膜腺癌の高精度かつ高特異度の予後判定を行うための試薬を予め組み合わせたキットを提供する。該キットには、抗体のほか、固定化担体、標識物質、標識の検出に用いられる基質化合物等を含めることもできる。
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げるが本発明はこれに限定されない。
<ペプチドの合成>
配列番号1に示すCRのアミノ酸配列の情報を解析し、CRの抗原決定部位を検索した。その結果、配列番号1のアミノ酸配列の第184番目のヒスチジン(His)から第195番目のグリシン(Gly)までのアミノ酸配列部位が優れた抗原決定部位と分かった。そこで、CRの抗体を作成するために、N末端側のヒスチジンの前にシステインを付加した合成ペプチドCHQKEGWPSSAYG(配列表の配列番号2)を作製した。
<CRの抗体作製>
実施例1で作成した合成ペプチドを、フロイントアジュバントを用いてエマルジョンを作製し、当該エマルジョンをウサギの皮下に注射して免疫した。免疫は、第1回目に0.15mgの合成ペプチドを投与し、2週間後に0.3mg、その後は2週間おきに計4回の投与を行った。採血は、合成ペプチドを投与する前、合成ペプチドを3回投与した1週間後、さらに4回目を投与した1週間後に各1ccずつ、計3回の試験採血を行った。各試験採血におけるCRの抗体価はELISA法で測定した。最終免疫終了の1週間後に、免疫したウサギから全血を最終採血した。最終採血分はCNBr−acvivated Sepharose 4B(アマシャム・ファルマシア社製)によるaffinity精製を実施し、CRのポリクローナル抗体を得た。
<正常子宮内膜上皮組織中のCRの検出>
実施例2で作製した抗体を用いて、患者の同意を得て採取した正常子宮内膜上皮組織におけるCRの発現を免疫染色により確認した。実験法は、精製したポリクローナル抗体と、ヒストファインSAB−PO(R)キット(ニチレイ社)を用いて、プロトコールに従い、免疫組織染色を(1)〜(8)の手順に従って実施した。(1)ホルマリン固定パラフィン包埋組織を5μm厚に切り出し、キシレンに3回浸した後、100%エタノールに浸して、脱パラフィン操作を行う。(2)0.3%過酸化水素入りメタノールに組織切片を50分浸し、内因性ペルオキシダーゼを失活させる。(3)組織切片をPBSで3回洗浄後、作製した抗CR抗体の非特異的吸着を防ぐため、ヒストファインSAB−PO(R)キットに付属する10%ヤギ正常血清を用いて室温で10分間ブロッキングを行う。(4)一次抗体反応として、1%ウシアルブミン含有PBSで2μg/mlの濃度に調整した抗CRポリクローナル抗体と4℃で一晩反応させる。(5)組織切片をPBSで3回洗浄後、キットに含まれる二次抗体ビオチン標識ヤギ抗ラビットIgG抗体と室温で10分間反応させる。(6)終了後、組織切片をPBSで3回洗浄し、キットに含まれるペルオキシターゼ標識ストレプトアビジン溶液を添加する。室温で5分間反応させる。(7)終了後、組織切片をPBSで3回洗浄し0.02% DAB液(30mgDABを、130mlの0.05M Tris HCl bufferと、20mlの0.05MTrisma baseに溶解する。)に1分間浸す。終了後、5分間流水で洗浄する。(8)へマトキシリン染色し、流水で10分間洗浄し、封入する。
以上の結果より、CRは正常子宮内膜上皮の細胞質に局在しており(図1)、正常子宮内膜上皮においては増殖期と比較して分泌期で強く発現していることが明らかとなった(図2A〜D)。
<子宮体部類内膜腺癌組織中のCRの検出>
組織の採取および検討に対し、インフォームド・コンセントが得られた手術前未治療で予後の追跡が可能である子宮体部類内膜腺癌患者109名を対象に行った。各進行期における癌患者例数は表1のとおりであった。


上記患者の初回手術症例より採取した癌組織を用いて、実施例3と同様に、免疫組織染色を(1)〜(8)の手順に従って実施した。免疫組織染色によるCRの発現パターンを、図3、図4、図5に示した。CRの発現パターンは、Umemotoらの方法(Br.J.Cancer 85:1032−1036,2001)に準じて、スコア化し、3種類に分類した。すなわち、染色強度(High:+3、Moderate:+2、Weak:+1、Negative:+0)および染色陽性細胞の割合(50%以上:+2、50%未満:+1、全く染色されない:+0)の合計により、表2のようにスコアリングして分類した。CRの発現が低下している陰性+弱陽性群とCRの発現が保たれている陽性群の2群に分類すると、図6に示すように進行期が進むにつれて、明らかにCR陰性+弱陽性群の割合が増加した。
<CR発現パターン別の予後>
実施例4で、癌組織を提供した癌患者について、予後最長175ヶ月間の追跡を行い、各染色パターン(強陽性、弱陽性、陰性)におけるPFSとOSを調べた結果を、図7、8に示した。弱陽性と陰性を示した群では、PFSの低下が認められ、さらに、OSも低下が認められた。また、強陽性群と発現が低下している弱陽性+陰性群の2群で比較してもPFSおよびOSともに低下が認められた。P値(母集団を比較した統計学的有意性)からも明らかなように、子宮体部類内膜腺癌原発巣におけるCRの発現減弱を示す弱陽性と陰性の症例では、再発・死亡に至るなど、予後不良であった。以上の結果より、CRは子宮体部類内膜腺癌の予後を判定し、治療の個別化を検討する上で新たな指標となりうることが明らかとなった。
本発明の、癌組織中のCRの発現パターンを指標とする子宮体部類内膜腺癌の予後判定方法は、細胞の状況を肉眼的に行うため、精度のよい判定が可能になり、癌患者に対し、予後に関する重要な情報を与えることができ、術後補助療法の必要性を検討する判断材料になりうる。また、癌治療や癌転移抑制をもたらす創薬のスクリーニングについても、CRの発現パターンを指標にして行うことが可能になると考えられる。

Claims (5)

  1. 子宮体部類内膜腺癌の予後を判定する方法であって、癌組織におけるカルボニルレダクターゼの発現パターンを指標とする方法。
  2. EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療を受けない子宮体部類内膜腺癌患者を対象とする、請求項1に記載の予後判定方法。
  3. 癌組織におけるカルボニルレダクターゼの発現パターンを、染色強度と染色陽性細胞の割合でスコア化し、陰性であるか、弱陽性である場合を、予後不良と判定することを特徴とする請求項1または2に記載の予後判定方法。
  4. 癌組織におけるカルボニルレダクターゼの発現パターンを、カルボニルレダクターゼと特異的に結合する下記のいずれかのペプチドを基に得られた抗体を用い、免疫組織染色法により測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の予後判定方法。
    (a)配列表の配列番号2または配列番号3に示すアミノ酸配列からなるペプチド;
    (b)配列表の配列番号2または配列番号3に示すアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド。
  5. ルボニルレダクターゼと特異的に結合する抗体、免疫組織染色用の試薬および器具類を含有する、子宮体部類内膜腺癌の予後判定用キット。
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