JP5562616B2 - セマフォリン発現増強剤 - Google Patents

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Description

本発明は、セマフォリン発現増強剤に関する。
セマフォリン3Aは血管内皮細胞増殖抑分子や神経突起伸長阻害活性分子として知られており(特許文献1)、セマフォリン3Aタンパク質を自然発症皮膚炎モデルマウスに皮内注射すると、皮疹が改善すると報告されている(特許文献2)。
再公表01/15721号公報 特開2008−297243号公報
しかしながら、皮内注射は皮疹の重症患者に対しては有効な治療手段であるかもしれないが、日常的に治療行為や予防行為として行う場合には簡便さに欠けるものであった。また、セマフォリンを含有する外用剤は、セマフォリンが構造的に不安定なこともあり開発されるに至っていない。
従って、本発明の課題は優れたセマフォリン発現増強作用を有するとともに簡便に使用可能且つ安全性が高いセマフォリン発現増強剤を提供することにある。
そこで本発明者らは前記課題を解決すべく広く植物の抽出物についてその薬理作用を検討してきたところ、ヒノキ科植物の抽出物が優れたセマフォリン発現増強作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はヒノキ科植物(Cupressaceae)又はその抽出物を有効成分とするセマフォリン発現増強剤を提供するものである。
本発明の有効成分であるヒノキ科植物(Cupressaceae)又はその抽出物によればセマフォリンの発現を増強することができる。また、ヒノキ科植物(Cupressaceae)又はその抽出物は、古くから薬用に広く用いられているものであり、安全性が高い。
ヒト皮膚再構築モデルにおけるセマフォリン発現に対するアスナロエキスの効果を示す図である。
本発明のセマフォリン発現増強剤の有効成分であるヒノキ科植物としては、ヒノキ、アスナロ等が挙げられるが、このうちアスナロ(Thujopsis dolabrata)が好ましい。ヒノキ科植物、特にアスナロの生理活性については、抗微生物作用、美白作用、骨疾患予防作用、細胞接着抑制作用、抗アレルギー作用、免疫抑制作用、抗炎症作用等が知られている(特開平2−62809号、特開平5−345710号、特開平6−340542号、特開平9−315991号)が、セマフォリンに対する作用については全く知られていない。
本発明に用いるヒノキ科植物抽出物は、ヒノキ科植物の全体又は部分を溶媒で抽出して得られる。ヒノキ科植物の部分としては、葉部、小枝部等が挙げられる。より具体的には、ヒノキ科植物の主に葉部、小枝部等を乾燥又は乾燥することなく粉砕した後、常温下又は加温下で溶媒により、又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることができる。なお、本発明におけるヒノキ科植物抽出物とは、各種溶媒抽出液又はその希釈液、濃縮液もしくは乾燥末を意味するものとする。
好ましくは、溶媒抽出物は、ヒノキ科植物の全部、部分又はそれらの乾燥末を水、有機溶媒(石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン等のケトン類;ピリジン等の塩基性溶媒;ブタノール、プロパノール、エタノール、メタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の一価又は多価アルコール系溶媒など)、水性アルコール等を用い、通常3〜70℃で抽出処理することにより得られる。
ヒノキ科植物からの好ましい具体的抽出例としては、ヒノキ科植物の乾燥粉砕物100gをエタノール1リットルに浸漬し、室温で時々撹拌しながら7日間抽出を行い、得られた抽出液をろ過して上澄みを得る方法が挙げられる。
上記抽出物は、そのまま本発明の有効成分として用いることができるが、当該抽出物を濃縮後、さらに適当な分離手段、例えばゲルろ過やシリカゲルカラムクロマト法、高速液体クロマト法等により、活性の高い画分を分画して用いることもできる。
以上のヒノキ科植物抽出物は、そのまま、又は希釈、濃縮もしくは凍結乾燥した後、粉末状又はペースト状に調製し、適宜製剤化して用いることができる。また、さらに必要により活性炭等を用いて脱臭、脱色等の精製処理を施してから用いることもできる。
ヒノキ科植物抽出物は、後記実施例に示すように、優れたセマフォリン発現増強作用を有することから、セマフォリンの発現の増強が必要とされる皮膚疾患や皮膚症状の予防改善に非常に有用である。
本発明のセマフォリン発現増強剤は、通常用いられる添加剤とともに任意の形態に製剤化される。これらの製剤中のヒノキ科植物抽出物の含有量は、固形物換算で0.0001〜0.1質量%、さらに0.01〜0.1質量%が好ましい。なお固形物換算とは、測定試料10mlを105℃にて6時間乾燥処理して得られた固形物量に基づき換算された値である。
本発明のセマフォリン発現増強剤の剤型としては、皮膚外用剤が好ましい。当該皮膚外用剤には、必要に応じて、化粧品、医薬部外品、医薬品の皮膚外用剤に配合される界面活性剤、保湿剤、油剤、増粘剤、顔料、色素、塩類、キレート剤、中和剤、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、精製水、天然水、深層海洋水、エチルアルコール等を適宜配合することができる。また、皮膚外用剤の具体的剤型としては、軟膏、ローション、乳液、クリーム、ゲル、パック、粉末、エアゾール、パップ剤等が挙げられる。
本発明のセマフォリン発現増強剤は、セマフォリン3Aタンパク質の発現を増強するため、単回適用でなく、一定期間以上皮膚の所定部に適用するのがより好ましい。セマフォリン3Aタンパク質の発現を増強するためには、ヒノキ科植物抽出物を固形物換算で0.0001〜0.1質量%含有する組成物を、1回当たり0.1mg/cm2〜5mg/cm2の量を1日1〜5回、3日以上、より好ましくは1週間以上皮膚に適用するのが好ましい。さらに、1回当たり1mg/cm2〜3mg/cm2の量を1日1〜3回、1週間以上、より好ましくは10日間以上皮膚に適用するのが好ましい。
以下の実施例、試験例により本発明をさらに詳しく説明する。
参考例1
(アスナロエキスの製法)
アスナロの乾燥枝葉(約1kg)を細切し、エタノール(10リットル)に浸漬して、室温で時々攪拌しながら7日間抽出を行い、得られた抽出液をろ過し、ろ液を5℃で3日間静置した後、再度ろ過して上澄みを得る。これに9倍量の50%1,3−ブチレングリコール溶液を加え、ろ過する。そのろ液を濃縮し、これに更に1,3−ブチレングリコールおよび精製水を加えて、ろ過して製品(約100L)とする。得られたアスナロエキスの1,3−ブチレングリコールの含有量は54.75%、含水量は45%、アスナロ固形物0.25%であった。
試験例1
ヒト皮膚再構築モデルとしてテストスキンLSE−High(東洋紡社製)を用い、培養した。培地に参考例1のアスナロエキスの1%(V/V)1,3−ブチレングリコール:エタノール=1:1溶液もしくはコントロール溶媒(1,3−ブチレングリコール:エタノール=1:1)を2mg/cm2の量となるように添加して、72時間培養後、テストスキン表皮部分をピンセットで剥ぎ取り、RNAを回収し、RT-PCRでセマフォリン3A及びG3PDHの発現を調べた。
その結果を図1に示す。図1から明らかなとおり、アスナロエキス添加群で有意にセマフォリン3A発現度合い(SEMA3A/G3PDH)が上昇した。

Claims (1)

  1. アスナロを、一価アルコール、多価アルコール及び水性アルコールから選ばれる一種以上の溶媒で抽出して得られるアスナロ抽出物を有効成分とするセマフォリン発現増強剤。
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