JP5561814B2 - 過電流引き外し機構 - Google Patents

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本発明は、配線用遮断器や漏電遮断器の過電流引き外し機構に関するものである。
配線用遮断器や漏電遮断器の過電流引き外し部には、熱膨張率の異なる2枚の金属片を貼り合わせたバイメタルが使用される。一般的に、定格電流が低い遮断器には、バイメタルに直接電流を流すことによりバイメタルを湾曲させる直熱式の過電流引き外し機構(例えば、特許文献1)が用いられる。一方、電気抵抗が高いバイメタルに大容量の電流を流すと、過電流によってバイメタルが焼き切れる恐れがある。このため、定格電流の高い遮断器では、バイメタルに直接電流を流す代わりに、バイメタルに隣接させて接合したヒータに電流を流して発熱させ、バイメタルに間接的に熱を伝えてバイメタルを湾曲させるようにした傍熱式の過電流引き外し機構(例えば、特許文献2)が用いられていることが通常である。
図8には、直熱式の過電流引き外し機構の構成説明図を示し、図9には、傍熱式の過電流引き外し機構の構成説明図を示している。
直熱式の過電流引き外し機構の主回路は、一端部を可動接点1と溶接したヨリ線2と、該ヨリ線2の他端部に溶接されたバイメタル5と、一端部が該バイメタル5に溶接され、他端部が端子部7に溶接されたヨリ線6から構成される。図8に示すように、放熱効果を上げる為にバイメタル5の放熱面には、放熱を促進するバイメタル放熱用板8が隣接して接合されているが、当該バイメタル放熱用板8は、前記主回路には組み込まれておらず、電流は流れ込まない構成となっている。
一方、傍熱式の過電流引き外し機構の主回路は、一端部を可動接点1と溶接したヨリ線2と、該ヨリ線2の他端部に溶接されたヒータ9と、一端部が該ヒータ9に溶接され、他端部が端子部7に溶接されたヨリ線6から構成される。図9に示すように、ヒータ9の放熱面には、バイメタル5が接合されているが、当該バイメタル5は、前記主回路には組み込まれておらず、電流は流れ込まない構成となっている。すなわち、傍熱式の過電流引き外し機構においては、専らヒータ9から放熱される熱が、バイメタル5の湾曲を促す熱源となっている。
図7には、直熱式の過電流引き外し機構と、傍熱式の過電流引き外し機構が、引き外し動作を生じる時間と、通電量の関係を示している。直熱式の過電流引き外し機構では、低い通電量(I)でも短時間(t)で引き外し動作が生じるが、傍熱式の過電流引き外し機構では、低い通電量が(I)では、引き外しまでに長時間(t)を必要とする。配線用遮断器や漏電遮断器の過電流引き外し機構に関し、定格電流の200%以上の電流を流した際に引き外し動作時間が生じるまでに要する時間がJIS規格(JISC8370)に定められているが。例えば、図7に示すように、通電量(I)に対し、引き外し時間はt以下であることが、当該JIS規格に定められている。この場合、通電量(I)の条件下、引き外しまでにt時間必要である傍熱式の過電流引き外し部は当該条件を満足することができない。このため、定格電流が小さい遮断器には、傍熱式の過電流引き外し機構は適さない。
一方、配線用遮断器や漏電遮断器の過電流引き外し機構に関し、定格電流の600%以上の電流を流した際に必要な引き外し動作時間がモータ保護開閉器の安全規格(UL 508(工業用制御装置の安全規格))として定められている。例えば、図7に示すように、通電量(I)に対し、引き外し時間はt以上t以下であることが、当該モータ保護開閉器の安全規格に定められている。しかし、通電量(I)の条件下、t時間で引き外し動作が生じてしまう直熱式の過電流引き外し機構は放熱用板を接合させ放熱効果を高めても当該条件を満足することができない問題があった。
特開平5−198238号公報 特開2007−242398号公報
本発明の目的は前記問題を解決し、定格電流が小さい(30A以下)遮断器に必要なJIS規格(JISC8370)およびモータ保護開閉器の安全規格(UL508(工業用制御装置の安全規格))を満足する過電流引き外し機構を提供することである。
前記課題解決を目的とする本発明の過電流引き外し機構は、過過電流引き外し機構の電流回路に組み込まれ、該回路を流れる電流に起因して発生するジュール熱により変形し開閉機構を作動させ、可動接点を開離させるバイメタルと、該バイメタルの発熱面に少なくとも一部の面が密着して平行配置された放熱用板を有する過電流引き外し機構であって、バイメタルと放熱用板を、電気伝導性を有する接合手段を介して接合し、前記放熱用板には、前記接合手段近傍の端部を、バイメタルとは反対方向に向けて折り曲げ形成した第一の溶接部と、他端部を、バイメタル方向に向けて折り曲げ形成した第二の溶接部を形成し、前記放熱用板の第二の溶接部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させるとともに、バイメタルの端部のうち、前記接合手段近傍の端部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させた傍直熱式の構成、あるいは、前記放熱用板の第一の溶接部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させるとともに、バイメタルの端部のうち、前記接合手段と反対側の端部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させた傍直熱式の構成、あるいは、前記放熱用板の第二の溶接部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させるとともに、前記放熱用板の第一の溶接部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させた傍熱式の構成、あるいは、バイメタルの端部のうち、前記接合手段近傍の端部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させるとともに、バイメタルの端部のうち、前記接合手段と反対側の端部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させた直熱式の構成としたことを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の過電流引き外し機構において、放熱用板とバイメタルを接合する接合手段が、かしめ手段と溶接手段からなることを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の過電流引き外し機構において、かしめ手段が、バイメタルと放熱用板の端部に形成した穴部に挿入されたリベット、または、放熱用板の背面側を叩き出して形成し、バイメタルの端部に形成された穴部に挿入されたジョックであることを特徴とするものである。
本発明に係る過電流引き外し機構は、放熱用板には、前記接合手段近傍の端部を、バイメタルとは反対方向に向けて折り曲げ形成した第一の溶接部と、他端部を、バイメタル方向に向けて折り曲げ形成した第二の溶接部を形成し、前記放熱用板の第二の溶接部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させるとともに、バイメタルの端部のうち、前記接合手段近傍の端部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させた傍直熱式の構成、あるいは、前記放熱用板の第一の溶接部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させるとともに、バイメタルの端部のうち、前記接合手段と反対側の端部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させた傍直熱式の構成、あるいは、前記放熱用板の第二の溶接部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させるとともに、前記放熱用板の第一の溶接部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させた傍熱式の構成、あるいは、バイメタルの端部のうち、前記接合手段近傍の端部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させるとともに、バイメタルの端部のうち、前記接合手段と反対側の端部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させた直熱式の構成を備えるため、図6に示すように、従来の直熱式に比べてバイメタルの湾曲スピードが緩やかになり、また、従来の傍熱式に比べてバイメタルの湾曲スピードが上昇し、定格電流が小さい(30A以下)遮断器に必要なJIS規格(JISC8370)およびモータ保護開閉器の安全規格(UL 508(工業用制御装置の安全規格))を満足する過電流引き外し機構を提供することができる。
実施形態1の過電流引き外し機構の説明図である。 図1の分解図である。 実施形態1の別の形態の説明図である。 実施形態2の過電流引き外し機構の説明図である。 実施形態3の過電流引き外し機構の説明図である。 本発明の過電流引き外し機構における、引き外し動作時間と通電量の関係図である。 直熱式の過電流引き外し機構および傍熱式の過電流引き外し機構における、引き外し動作時間と通電量の関係図である。 直熱式の過電流引き外し機構の構成説明図である。 傍熱式の過電流引き外し機構の構成説明図である。
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
(実施形態1)
図1には、実施形態1の過電流引き外し機構の説明図を示し、図2には、図1の分解図を示している。
本発明の過電流引き外し機構は、一端部を可動接点1と溶接したヨリ線2と、該ヨリ線2の他端部に溶接された放熱用板4と、金属製のリベット3を用いて該放熱用板4と接合されたバイメタル5と、一端部が該バイメタル5に溶接され、他端部が端子部7に溶接されたヨリ線6と、から構成される。バイメタル5の発熱面と、放熱用板4は少なくとも一部の面が密着して平行配置されている。また、バイメタル5の発熱面と放熱用板4の上端に隙間を設けている。これは、例えば気温が氷点下のとき等にバイメタルが逆反りした場合を想定して余裕を持たせているものである。
放熱用板4とバイメタル5との接合手段は、放熱用板4とバイメタル5の端部に穴部を形成し、これらの穴部にリベットを挿入してかしめた上で、溶接(スポット溶接)を行い固定する方法の他に、放熱用板4の背面側を叩き出してジョックを形成し、バイメタル5の端部に形成した穴部に該ジョックを挿入し、かしめた上で、溶接(スポット溶接)を行い固定する方法等でもよい。例えば、リベットまたはジョックのみによる接合や、溶接(スポット溶接)のみによる接合を行った場合、接合部に空隙が生じ、該空隙よって抵抗可変しやすくなり、大電流が流れたり、または電流が流れないという問題点が発生しやすくなるが、リベットまたはジョックを挿入し、かしめた上で、溶接(スポット溶接)を行い固定することにより、接合部の空隙を完全に埋め、前記問題を回避することができる。なお、放熱用板4とバイメタル5との接合は、バイメタルの下端部で行い、バイメタルの上端部は開放構造とすることが好ましい。
本実施形態は、可動接点1と接合されたヨリ線2を電流流入部である放熱用板4の溶接部4bに接合され、該放熱用板4と電気伝導性を有する接合手段であるリベット3を介してバイメタル5が接合され、電流流出部である該バイメタル5の上端部からヨリ線6を介して端子部7と接合された形態である。すなわち、主回路の電流は、可動接点1から、ヨリ線2、放熱用板4、リベット3、バイメタル5、ヨリ線6、端子部7へと流れる。本発明の放熱用板4は、主回路を構成し、バイメタル5で発生するジュール熱を吸収するバイメタル放熱用機能を備えている。また、図3のように、可動接点1と接合されたヨリ線2を電流流入部であるバイメタル5の下端部に接合され、該バイメタル5と電気伝導性を有する接合手段であるリベット3を介して放熱用板4が接合され、電流流出部である該放熱用板4の溶接部4cからヨリ線6を介して端子部7と接合された形態としても良い。
該放熱用板4の形状は、バイメタル5との間の放熱効率を考慮して決定され、通常は放熱面積を大きくとれるように、図1に示す平板形状を有している。放熱用板4のその他の形状として、バイメタル5をコ字状に囲む形状としてもよい。
該放熱用板4は、バイメタル5の湾曲方向に対して垂直方向に配置された放熱面4aと、該放熱面の端部から垂直方向に立設した溶接部4bを有し、該溶接部4bの一方には可動接点1側のヨリ線2が溶接されている。ただし、溶接部4bを設ける代わりに、放熱面4aに直接ヨリ線を溶接してもよい。
本実施形態の過電流引き外し機構によれば、バイメタル5を主回路に組み込む構成により、定格電流が低く、主回路に流れる電流が小さい遮断器においても、電流が流れるバイメタル5で発生するジュール熱により、迅速にバイメタル5を湾曲させてトリガレバーを作用させ、遮断器をトリップさせることができる。また、本実施形態の過電流引き外し機構によれば、ヨリ線2から放熱用板4を介してバイメタル5に電流を流す構成により、直接ヨリ線2からバイメタル5に電流を流す構成(従来の直熱式)に比べて、バイメタル5の湾曲スピードを緩やかにし、モータ保護開閉器の安全規格(UL 508(工業用制御装置の安全規格))を満足することができる。
図6には、本発明の過電流引き外し機構における、引き外し動作時間と通電量の関係図を示している。図6に示すように、本発明によれば、従来の直熱式と傍熱式の中間的な特性を備えることができる。
なお、図2に示すように該放熱用板4の上端部に更に溶接部4cを形成し、下部の溶接部4bには可動接点1と溶接したヨリ線2を溶接し、上部の溶接部4cには端子部7と溶接したヨリ線6を溶接して、傍熱式の過電流引き外し機構(図9)とすることができる。また、可動接点1と溶接したヨリ線2および端子部7と溶接したヨリ線6を直接バイメタル5に溶接して直熱式の過電流引き外し機構(図8)とすることもできる。
(実施形態2)
図4には、実施形態2の過電流引き外し機構の説明図を示している。
本実施形態では、溶接部4bを放熱面4aの中間位置付近に形成したものである。主回路の電流が、可動接点1から、ヨリ線2、放熱用板4、リベット3、バイメタル5、ヨリ線6、端子部7へと流れることは、実施形態1と同様であるが、本実施形態では、ヨリ線2を介して放熱用板4に流入した電流が、リベット3を介して流出するまでの距離を確保したことにより、高い放熱効果を得ることができる。
(実施形態3)
図5には、実施形態3の過電流引き外し機構の説明図を示している。
本実施形態では、ヨリ線2を分岐構造として、第1回路の電流を可動接点1から、ヨリ線2、放熱用板4、リベット3、バイメタル5、ヨリ線6、端子部7に流し、第2回路の電流を可動接点1から、ヨリ線2、バイメタル5、ヨリ線6、端子部7に流している。このように、回路電流を並列にすることにより、高い放熱効果を得ることができる。
なお、一般的には、放熱用板4は、バイメタル5よりも抵抗が小さい部材を用いている為、前記のように並列配置した場合には放熱用4に多くの電流が流れるが、バイメタル5の抵抗を小さくなるように調整して、第1回路と第2回路に流れる電流を均等配分することが望ましい。
1 可動接点
2 ヨリ線
3 リベット
4 放熱用板
5 バイメタル
6 ヨリ線
7 端子部
8 バイメタル放熱用板
9 ヒータ

Claims (3)

  1. 過電流引き外し機構の電流回路に組み込まれ、該回路を流れる電流に起因して発生するジュール熱により変形し開閉機構を作動させ、可動接点を開離させるバイメタルと、
    該バイメタルの発熱面に少なくとも一部の面が密着して平行配置された放熱用板を有する過電流引き外し機構であって、
    バイメタルと放熱用板を、電気伝導性を有する接合手段を介して接合し、
    前記放熱用板には、前記接合手段近傍の端部を、バイメタルとは反対方向に向けて折り曲げ形成した第一の溶接部と、他端部を、バイメタル方向に向けて折り曲げ形成した第二の溶接部を形成し、
    前記放熱用板の第二の溶接部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させるとともに、バイメタルの端部のうち、前記接合手段近傍の端部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させた傍直熱式の構成、
    あるいは、
    前記放熱用板の第一の溶接部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させるとともに、バイメタルの端部のうち、前記接合手段と反対側の端部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させた傍直熱式の構成、
    あるいは、
    前記放熱用板の第二の溶接部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させるとともに、前記放熱用板の第一の溶接部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させた傍熱式の構成、
    あるいは、
    バイメタルの端部のうち、前記接合手段近傍の端部を、ヨリ線を介して可動接点と溶接させるとともに、バイメタルの端部のうち、前記接合手段と反対側の端部を、ヨリ線を介して端子部と溶接させた直熱式の構成
    としたことを特徴とする過電流引き外し機構。
  2. 放熱用板とバイメタルを接合する接合手段が、かしめ手段と溶接手段からなることを特徴とする請求項1記載の過電流引き外し機構。
  3. かしめ手段が、バイメタルと放熱用板の端部に形成した穴部に挿入されたリベット、または、放熱用板の背面側を叩き出して形成し、バイメタルの端部に形成された穴部に挿入されたジョックであることを特徴とする請求項2記載の過電流引き外し機構。
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