JP5559543B2 - 投影対物器械を製造する方法及びこの方法によって製造される投影対物器械 - Google Patents

投影対物器械を製造する方法及びこの方法によって製造される投影対物器械 Download PDF

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Description

本発明は、投影対物器械のための初期設計を定める段階、及びメリット関数を用いてこの設計を最適化する段階を含む投影対物器械を製造する方法に関する。本方法は、小型デバイスを製造するマイクロリソグラフィ工程において用いることができる投影対物器械の製造に用いられる。同じく本発明は、本方法によって製造される投影対物器械に関する。
マイクロリソグラフィ工程は、集積回路、液晶要素、マイクロパターン構造体、及びマイクロ機械構成要素のような小型デバイスの製造において一般的に用いられる。この工程では、投影対物器械は、パターン構造体(通常は、フォトマスク(マスク、レチクル))のパターンを基板(通常は、半導体ウェーハ)上に投影する役割を達成する。基板は、投影放射線を用いてパターン化する構造体の像によって露光される感光層(レジスト)で被覆される。
更に微細な構造体を作り出すために、投影対物器械の像側開口数(NA)を高めること、及びより短い波長、好ましくは、260nmよりも短い波長を有する紫外放射線を用いることの両方が求められる。その結果、投影対物器械の複雑性に対して益々高い要求が課せられる。通常、投影対物器械は、レンズ及び曲面ミラーなどのような少なくとも10個、又は20個、又は更に25個又はそれよりも多くの複数の光学要素を有する。各単一の光学要素のみならず、ある一定の方式で配列された複数の光学要素を収容する構造体全体は、大きい像視野内への低レベルの収差での基板上へのパターン構造体の結像をもたらすように高精度に設計及び製造すべきである。
投影対物器械の新しい設計を作成することは、投影対物器械の構造パラメータ及び品質パラメータの最適化を伴う複雑な作業である。構造パラメータは、レンズを形成する材料の屈折率、レンズ及びミラー(適用可能な場合)の表面形状パラメータ、各レンズの第1の表面と第2の表面の間の距離、異なる光学要素の表面の間の距離、投影対物器械の対物面と投影対物器械の物体側の前部要素の入射表面との間の距離、投影対物器械の像側の前部要素の出射表面と像平面の間の距離、隣接する光学要素の間、対物面と物体側の前部要素との間、及び像平面と像側の前部要素との間に配置された媒体の屈折率を含む。
品質パラメータは、例えば、投影対物器械の選択された収差、像側開口数、及び倍率などによって投影対物器械の光学性能を表すパラメータを含む。
今日、投影対物器械の光学性能及び他の品質特徴の望ましい仕様に準拠させる設計の最適化は、ある一定の境界条件を満たしながら投影対物器械のパラメータを最適化する光線追跡のようなコンピュータ式方法を伴っている。「Optical Research Associates、 Inc.」から販売されているレンズ解析及び設計プログラムである「CODE V」は、この目的のために用いられる汎用ソフトウエアツールである。この最適化は、適切に選択されたメリット関数を設計パラメータに基づいて最小又は最大にする段階を含む。一般的に、メリット関数の構成は、特定の設計の最適化目標を説明する光学態様、製造可能性態様、及び他の態様を表すことができるいくつかのメリット関数成分を利用して行われる。
設計パラメータの数の多さに起因して、最適化工程の解空間は高い次元を有し、この解空間内には、計算法が罠にはまって要求仕様を満たす設計からかけ離れた結果をもたらすかもしれない多くの極小値及び極大値が存在する。従って、マイクロリソグラフィのための投影対物器械を設計する光学器械設計者は、ある一定の用途に適し、及び/又は設計者の直感に基づいて所定の境界条件を満たす新しい設計の原則を判断するという高度な作業を充足すべきである。従って、設計者は、コンピュータベースの最適化に対して成功が可能な「開始点」として機能する「初期設計」を特定し、次に、それに基づいてコンピュータ式最適化によって設計を改善することになる。一般的に、1つ又はそれよりも多くの結果は、依然として望ましい全体的仕様に対して不十分であることになり、従って、満足な解が見つかるまで多くの労力をかけることが必要であることになる。従って、コンピュータ式製造の段における新しい設計のコストは高くなるであろう。
適切な設計が見つかった状態で、製造工程の実際の製品を得るために、投影対物器械の光学要素を製造して組み立てなければならない。これらの製造段階中は、光学面のスクラッチ及び汚染のような起こり得る表面欠陥をできる限り回避するために注意を払わなければならない。低及び中程度の開口のシステムは、そのような歪みに関して比較的許容性を有する場合があるが、通常、像側の開口数NAが>1.0である開口数範囲での液浸作動に向けて設計された投影対物器械のような非常に高開口数のリソグラフィ投影対物器械の製造工程においては、表面欠陥に関して非常に厳しい仕様が適用される。
少なくとも1つの中間像、少なくとも1つの凹ミラー、及び物体表面から到来する放射線を凹ミラーに向けて偏向するように配列された又は凹ミラーから到来する放射線を像表面に向けて偏向するように配列された少なくとも1つの平面折り畳みミラーを有する反射屈折投影対物器械は、これらの用途に頻繁に適用される。代表的な例は、例えば、WO2004/019128A2又はJP2005−003982Aに示されている。
光学面上の表面欠陥は、基本的に異なる損失機構に起因する光損失を引き起こすことにより、投影対物器械の光学性能に致命的な影響を及ぼす場合がある。例えば、理想的に平滑な表面上の比較的粗い表面区域は、典型的に迷光を引き起こすことになり、光学性能に悪影響を及ぼす。また透過表面の欠陥は、位相物体として作用する場合があり、それによって干渉に起因する光損失が発生する。不透明な汚染は、投影ビームの区域を遮蔽する可能性があり、それによって像視野内の強度分布の不均一性が生じる。光学面上の表面欠陥によって引き起こされる性能劣化に比較的鈍感な投影対物器械を有することが望ましい。
WO2004/019128A2 JP2005−003982A
本発明の1つの目的は、マイクロリソグラフィのための複合投影対物器械を光学性能に関して高い基準を維持しながら費用効率的に製造することを可能にする投影対物器械を製造する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、投影対物器械内の光学面上に存在する表面欠陥に関して比較的鈍感な光学性能を有するマイクロリソグラフィのための投影対物器械を製造することを可能にする投影対物器械を製造する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、強度の低レベルの視野変化を有する投影対物器械を製造する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、投影対物器械内の光学面上の汚染によって引き起こされる表面欠陥及び他の影響に対して比較的鈍感な投影対物器械を提供することである。
上記及び他の目的に対する解決法として、本発明は、1つの形式化に従って、投影対物器械のための初期設計を定める段階、及びこの設計をメリット関数を用いて最適化する段階を含む投影対物器械を製造する方法を提供し、本方法は、各々が特定の品質パラメータを反映する複数のメリット関数成分を定める段階を含み、このメリット関数成分のうちの1つは、投影対物器械の像表面内の有効照度に対して正規化された有効照度を表す正規化有効照度値が、投影対物器械の像表面の直近の最終光学面を除き、投影対物器械の各光学面上の所定の照度閾値を超えないことを要求する最大照度要件を定め、本方法は、投影対物器械の予備設計の対応する特徴に基づいてメリット関数成分の各々に対して数値を計算する段階と、このメリット関数成分から、品質パラメータを反映する数値で表すことができる全体メリット関数を計算する段階と、投影対物器械の少なくとも1つの構造パラメータを連続的に変更し、得られる全体メリット関数が所定の許容値に達するまで各連続的変更を用いて生じた全体メリット関数値を再計算する段階と、得られた全体メリット関数に対して所定の許容値を有する最適化された投影対物器械の構造パラメータを取得する段階と、パラメータを実装して投影対物器械を製造する段階とを更に含む。
一般的には、「照度」という用語は、表面での単位面積当たりの電磁放射線の仕事率を表している。具体的には、「照度」という用語は、表面上に入射する電磁放射線の仕事率を表している。本明細書に用いる「有効照度」は、光学面上に入射する全体照度に対する寄与を説明し、この寄与は、単一の物体視野点から出射する放射線に由来するものである。有効照度は、本出願では、代替的に「ピンホール照度」として表す。
光学面上の大きい値の有効照度が回避される場合には、投影対物器械の光学性能は、投影対物器械内の光学面上に存在する表面欠陥に関して比較的鈍感なものにすることができる。
多くの場合に、「最終光学面」、すなわち、投影対物器械の像表面に最も近い光学面には、最終光学面を最適化工程から除外することを要求する特定の条件が課せられる。最終光学面にわたる放射光線の入射点の空間分布は、関わっている投影工程の概念(乾式投影又は液浸投影)、及び像側作業空間(最終光学面と基板表面を配置すべき像表面の間の空間)内の幾何学的条件によって大幅に影響を受ける。例えば、液浸露光のための液浸液を導入するために最終光学面と像表面の間に幅狭な間隙(典型的に1ミリメートル又はそれよりも長い幅)を設けることが有用である場合がある。像空間内での液浸媒体の流入及び流出という観点から、多くの場合に、実質的に平面の最終光学面を有することが望ましい。これらの条件下では、最終光学面の強度負荷(例えば、有効照度によって表される)は、基本的に、像側作業距離、有効像視野サイズ、最後の光学要素の後の媒体の屈折率、及び像側開口数NAによって判断される。従って、最終光学面の位置と表面形状とを表す構造パラメータは、自由パラメータではなく、最適化手順から除外すべきである。
様々な条件が、光学面上の有効照度の極大値を引き起こすか又はそれに寄与すると考えられる。例えば、光学面が火面領域内に位置する場合には、大きい有効照度値が発生するであろう。実施形態では、これらの条件は、投影対物器械内の潜在的な火面領域の位置及び範囲を計算し、かつ光学面が火面領域の内側に位置決めされないように投影対物器械の構造パラメータを最適化することによって系統的に回避される。
代替的又は追加的に、光線束の実部分開口サイズが極度に小さくなる場合には、光学面は決定的であると考えられる。従って、方法の実施形態は、いくつかの代表的視野点を定める段階と、視野点から発する光線束及び光線束の光学面との交差ゾーンを計算し、光線束の光学面との交差ゾーンが、交差ゾーンの面積によって定められる部分開口サイズを有する実部分開口を定める段階と、部分開口サイズ閾値を定める段階と、選択された視野点に対する実部分開口サイズが、投影対物器械の像表面に直近の最終光学面を除き、投影対物器械の全ての光学面に対する部分開口サイズ閾値を下回らないように、投影対物器械の構造パラメータを最適化する段階とを含む。
方法の実施形態は、極度に高い有効照度集中の1つよりも多くの原因を考慮するルーチンを含むことができる。例えば、1つのメリット関数成分は、上述のように最大照度要件を定めることができ、別のメリット関数成分は、全ての光学面(最終光学面を除く)上の実部分開口サイズが所定の実部分開口サイズ閾値を超える光学面のみを得られる光学設計が自動的に有することになるような最小の実部分開口要件を定めることができる。
本方法は、様々な種類の光学システム、特に、NA>1を得ることができる液浸リソグラフィのための投影対物器械に頻繁に見られる比較的高い像側開口数を有するマイクロリソグラフィに用いられる投影対物器械の設計に適用することができる。多くの従来技術の投影対物器械の詳細な解析は、小さい有効及び/又は実際の部分開口及び/又は火面条件が、特に、少なくとも1つの凹ミラー及び少なくとも1つの中間像、並びに凹ミラーに向って延びるビーム束を凹ミラーから反射されたビーム束から分離する少なくとも1つの平面偏向ミラーを有する反射屈折投影対物器械において発生する場合があることを示している。この種類の投影対物器械は、それらが、火面条件が発生する及び/又は極度に小さい有効及び/又は実際の部分開口が発生する光学面(像表面に近い最終光学面を除く)を持たないように本発明の実施形態に従って設計することができる。
一部の実施形態では、投影対物器械は、物体表面に配列された軸外物体視野を投影対物器械の像表面に配列された軸外像視野上に結像するように配列された複数の光学要素を含み、この光学要素は、物体表面から到来する放射線から第1の中間像を生成し、かつ第1の瞳表面を含む第1の屈折対物器械部分と、第1の中間像を第2の中間像内に結像する少なくとも1つの凹ミラーを含み、かつ第1の瞳表面と光学的に共役な第2の瞳表面を含む第2の対物器械部分と、第2の中間像を像表面上に結像し、かつ第1及び第2の瞳表面と光学的に共役な第3の瞳表面を含む第3の屈折対物器械部分とを形成する。
実施形態は、厳密に2つの中間像を有する場合がある。
第2の対物器械部分は、厳密に1つの凹ミラーを有することができ、投影対物器械は、物体表面から到来する放射線を凹ミラーの方向に偏向する第1の折り畳みミラーと、凹ミラーから到来する放射線を像表面の方向に偏向するための第2の折り畳みミラーとを有することができる。偏向ミラーは、両方ともに平面とすることができる。投影対物器械は、NA>1で液浸リソグラフィに向けて設計することができる。
厳密に2つの中間像及び単一の凹ミラーを有し、中間像に近い光学面において光線束の比較的小さい実部分開口が発生する従来技術の反射屈折投影対物器械の詳細図である。 厳密に2つの中間像及び単一の凹ミラーを有し、折り畳みミラーが火面領域内に位置決めされた従来技術の反射屈折投影対物器械の詳細図である。 瞳表面に位置決めされ、双極照明によって照らされ、極の一方の領域内に汚染が存在するレンズ表面の概略的な軸線方向投影図である。 極度に高い照度の集中を有する光学面を回避する製造法の好ましい実施形態を示す略流れ図である。 本発明の実施形態に従って瞳表面を実質的に同じラスタ視野面積を有するラスタ視野に分割する瞳点の瞳ラスタを示す図である。 図4に示す瞳ラスタの光線の瞳表面から分離したある選択された光学面上の交差点を示し、比較的高い有効照度(又はピンホール照度)の領域を示す図である。 図4に示す瞳ラスタの光線の瞳表面から分離したある選択された光学面上の交差点を示し、火面条件を有する領域を示す図である。 2つの中間像、1つの凹ミラー、及び2つの平面偏向ミラーを有し、中間像に近い光学面上で火面条件が系統的に回避された反射屈折投影対物器械の実施形態を示す図である。 図7の実施形態の第1及び第2の折り畳みミラー上の矩形視野の縁部の周囲で選択された視野点の受光域を示す図である。
本発明の好ましい実施形態によって解決される問題のいくつかへの序論として、液浸リソグラフィに適応した高開口反射屈折投影対物器械NA>1を考察する。多くの場合にそのような設計は、光学面上に比較的小さい実部分開口を提供する。本明細書に用いる「実部分開口」という用語は、特定の物体点(すなわち、物体表面内の視野点)から発する光線束の光学面上の「受光域」(交差ゾーン)を意味する。小さい実部分開口は、特に、少なくとも1つの凹ミラー及び少なくとも1つの中間像に加えて、凹ミラーに向って延びるビーム束を凹ミラーから反射されるビーム束から分離する少なくとも1つの平面偏向ミラーを有する反射屈折投影対物器械において発生する可能性がある。
図1Aは、例示目的でWO2004/019128A2の図2から引用した従来技術の反射屈折投影対物器械の詳細を示している。この投影対物器械は、平面物体表面OSからの物体視野を第1の中間像IMI1へと結像する第1の屈折対物器械部分OP1、第1の中間像IMI1を第2の中間像IMI2へと結像するための凹ミラーCMを含む反射屈折対物器械部分OP2、及び第2の中間像IMI2を物体表面OSに対して平行である平面の像表面上に結像する屈折対物器械部分OP3(部分的にのみ示している)を含む。第1の平面折り畳みミラーFM1は、物体表面から到来する放射線を凹ミラーCMに向って偏向させる。第1の折り畳みミラーに対して直角を成す第2の平面折り畳みミラーFM2は、凹ミラーから到来する放射線を像表面に向って偏向させる。
完全に光軸AXの外側に位置決めされた有効物体視野の軸外視野点FP1から発する光線束RBは、光学システム内での光学面の位置に依存してサイズが変化する交差ゾーン内で光学面と交差する。本出願ではこれらの交差ゾーンを「実部分開口」で表している。図1では、いくつかの代表的な交差ゾーンを太線で強調している。物体表面の直後の平行平面プレートの入射側にある第1の実部分開口SA1は、視野表面(物体表面)に比較的近くにあり、比較的小さい。メニスカスレンズの凹の入射側にある第1の瞳表面P1に近い第2の実部分開口SA2サイズは、基本的に、その位置にある瞳サイズに対応し、比較的大きい。全ての実部分開口は、この瞳表面において実質的に重なり合う。第1の折り畳みミラーFM1の直ぐ上流の正のメニスカスレンズの凹の出射側にある実部分開口SA3において、更に第1の中間像の直ぐ上流の第1の折り畳みミラーFM1上に形成された実部分開口SA4によって分るように、実部分開口は、光学面が第1の中間像IMI1の近くに位置決めされる時に次第に小さくなる。それとは対照的に、凹ミラーCMの直前の負のメニスカスレンズの凸表面上の第5の実部分開口SA5は、基本的に、凹ミラーCMが位置決めされた第2の瞳P2サイズに対応する大きいサイズを有する。
口径食及び瞳掩蔽のない像を得るために、これらの設計では軸外の物体視野及び像視野が用いられる。軸外視野が用いられる場合には、軸外物体視野と光軸の間の距離が増し、それによって「設計物体視野」が拡大する時に、結像収差を補正するために必要な労力は増加する。「設計物体視野」は、投影対物器械が、目標とするリソグラフィ工程において十分な結像忠実性を有しながら投影することができる物体表面の全ての視野点を含む。設計物体視野内では、全ての結像収差は、目標とする投影目的に対して十分に補正されるが、設計物体視野の外側の視野点では、収差のうちの少なくとも1つは望ましい閾値よりも高い。従って、補正を容易にするためには、設計物体視野サイズを小さく保つことが望ましい場合があり、これは、光軸と軸外物体視野の間のオフセットを最小にすることを必要とする。多くの場合にこのオフセットを最小にする手順は、視野表面に比較的近いミラー表面及び/又はレンズ表面を有する設計をもたらし、それによって視野表面に近いこれらの光学面上に存在する対応する実部分開口は小さくなる。例えば、第1の中間像IMI1の直ぐ上流のレンズ及びミラー上の実部分開口SA3及びSA4は比較的小さい。
一般的に、光学面上の小さい実部分開口は、製造工程及び得られる光学面の除染度に対して厳しい要件を必要とし、基本的に光学面は、有意な表面欠陥のないものでなければならない。選択された視野点から放出されるエネルギは、小さい実部分開口の領域内の比較的小さい区域の上に集中するので、小さい部分開口のその領域内に存在する欠陥は、光線束内に存在する光強度の一部を遮蔽することになり、それによって光損失がもたらされる。対応する実部分開口が小さい場合には、単純に、摂動を引き起こす欠陥の面積と実部分開口の面積(受光面積)の間の比率がより好ましくないものになるので、所定サイズの表面欠陥は、大きい実部分開口を有する区域内よりも大きい光損失効果を引き起こす。欠陥によって引き起こされる局所光損失は、投影対物器械によって製造される構造体の限界寸法に関して直接的な問題を有する均一性誤差を引き起こす場合がある。特に、限界寸法の望ましくない変化(CD変化)は、基板上の感光コーティング(フォトレジスト)の感度レベルに関連して引き起こされる場合がある。
更に、局所光損失は、瞳のエネルギ重心の典型的に非擾乱区域方向のシフトから生じるテレセントリシティ誤差を引き起こす恐れもある。具体例として、図2は、投影対物器械内の円形瞳表面に位置決めされたレンズ表面LSの軸線方向投影図を概略的に示している。投影露光機は、例えば、高密に束ねられた単方向の線を印刷する時に焦点深度及び/又はコントラストを改善するために双極照明で作動される。この双極照明に対応する投影放射線の強度分布は、光軸AXに対して対向する側にあり、光エネルギが集中する2つの「極」、第1の極PO1及び第2の極PO2によって特徴付けられる。光強度は光軸上には存在しない。レンズ表面LS上の第1の極PO1の区域内には、表面汚染CONが存在する。汚染CONは、第1の極PO1内に存在する光エネルギのかなりの部分を遮蔽するので、瞳のエネルギ重心は、擾乱を受けない第2の極PO2に向ってシフトすることになる。瞳内のこの偏芯されたエネルギ重心は、ウェーハが位置決めされた像空間内を像の強度重心が伝播する伝播方向に対応する。汚染CONに起因して、伝播方向は光軸からシフトし、光軸に対して有限の角度に方向付けられる。例えば、高低のある基板表面及び/又はウェーハ台によって引き起こされる位置変化に起因して、基板表面の位置が局所的に変化する場合には、テレセントリシティによって誘起される歪曲を招く場合がある空中像の傾きが生じる。
実部分開口が実質的に均一に照らされ、それによって実部分開口内の異なる場所の間で局所放射線エネルギ流入の較差が全くないか又は極めて僅かしかないことが仮定される場合には、上述の実部分開口サイズは、表面欠陥に関してどの光学面が決定的であるかということを示す妥当な指標であると考えられる。
多くの純屈折光学システムでは、実部分開口内での照度の実質的に均一な分布は妥当な近似とすることができる。しかし、実部分開口内での局所照度には有意な変化が存在する可能性があり、それによって実部分開口内で有意な局所照度較差が発生する可能性がある。実部分開口内での局所照度に関して起こり得る不均一性に対処するには、実部分開口内で照度の局所変化に対処することを可能にする「有効部分開口」を定めることが有利であることが判明している。上記に示すように、光学面上の欠陥は、比較的大きい放射線エネルギが欠陥区域内に集中する場合に決定的であるとすることができる。従って、実部分開口内で、実部分開口の他の部分と比較した時に局所照度が比較的大きい値を有する領域は、特に決定的であると考えられる。放射線エネルギの局所集中に関連する問題を大幅に回避するためには、実部分開口区域を解析することにより、有効照度の最大値が発生する単一の領域(又は複数の領域)を識別することが有利であると考えられる。幾何学的側面では、局所照度は、対物面内の単一の視野点から発する光線の「幾何学的光線密度」の指定値によって特徴付けることができ、有効照度の最大値は、幾何学的光線密度の最大値が発生する場合に発生する。
ここで、幾何学的光線密度(又は有効照度)のこれらの極大値に対処するシステムの最適化を考察する。各実部分開口が均一に照らされると仮定すると、システムのレイアウトの公差は、ある一定の値を有することができる。しかし、実部分開口内で放射線エネルギの局所集中が発生する場合には、公差はより厳しいものとすべきである。この効果は、最大幾何学的光線密度(又は最大有効照度)を有する場所を表す部分開口に対応する「有効部分開口」を定めることによって対処することができる。この概念で実部分開口が均一に照らされるシステムでは、「有効部分開口」サイズは、「実部分開口」サイズに等しい。しかし、実部分開口内で放射線エネルギの局所集中が発生する場合には、この局所集中は、有効部分開口サイズによって表され、従って、実部分開口サイズよりも小さくなる。
例示的に、図1Bは、WO2004/019128A2の実施形態5から引用した別の従来技術の反射屈折投影対物器械の詳細を示している。等しいか又は同様の特徴は、図1Aにおけるものに等しい参照番号で示している。1つの光線束RBが、物体表面OS内のある選択された視野点FP1から出射する。物体表面における光線束の開き角は、物体側開口数NAOBJによって判断される。光線R1及びR2を含む様々な選択された光線の軌道を示している。図面から明らかなように、光線束RBの光線によって定められる幾何学的光線密度は、第1の折り畳みミラーFM1の上流の大きい正のメニスカスレンズMLの領域までは光学面にわたって基本的に均一である。しかし、光線が折り畳みミラーFM1に接近する時に、光線の局所密度(すなわち、幾何学的光線密度)は、光軸に近い領域と比較した時に光線束の外側部分(光軸AXから最も離れた)で高まる。言い換えれば、幾何学的光線密度は、第1の中間像IMI1の上流の短い距離のところにある第1の折り畳みミラー領域内で不均一になる。特に、視野点FP1から異なる開口値で発する光線R1とR2とは、第1の折り畳みミラーFM1に近い領域、又は第1の折り畳みミラーFM1の領域内で交差する。(単一の光線のこれらの交差点は、特に、それぞれ中間像IMI1、IMI2に光学的に近い第1の折り畳みミラーFM1及び第2の折り畳みミラーFM2の領域内で発生することに注意されたい。)共通の視野点から異なる開口で発する光線の交差点は、「火面」条件の存在を示している。図1Bから、第1の折り畳みミラー及び第2の折り畳みミラーFM1、FM2が、光線束RBの光線が交差する領域内に位置決めされている、すなわち、「火面領域」内に位置決めされていることは明らかである。
上述のように、特定の視野点に対応する幾何学的光線密度は、光学面上の全照度に対する特定の視野点の寄与に関する表現と考えることができる。
本出願では、この寄与を「有効照度」で表している。想像実験において、光学システムの対物面内で照らされるピンホール(単一の視野点を表す)を考えられたい。光線束は、この視野点から発する。この視野点に対応する「有効照度」は、この視野点から発する光線束のある選択された光学面上での照度寄与である。光学面上に入射する全照度に対するこの寄与は、光学面上の位置(又は場所)の関数であり、同じく物体表面内のピンホールの位置の関数でもある。有効照度(単一の物体視野点に対応する照度)の全ての値の最大値が、所定の「照度閾値」を超えてはならないことが想定されている。
火面領域内、すなわち、火面条件が存在する領域内では、有効照度(ピンホール照度)が発散し、実際に、比較的小さい表面区域上に光エネルギの重度の集中を招く場合がある。光線伝播の観点からは、物体点から異なる開口数で放出される異なる光線が、光学面上又はその近くで交差する場合には、光学面上に火面条件が与えられる。火面領域内に位置決めされた光学面上の表面欠陥は、対物面から異なる開口角で放出される光線に対して影響を有し、それによって火面領域の外側に位置する欠陥よりも実質的に大きく結像品質を潜在的に悪化させる。
本発明による投影対物器械を製造する方法の実施形態では、光学面上の火面条件及び/又は光学面上の極度に小さい有効部分開口の発生は、コンピュータベースの光学設計に用いられる対応するサブルーチンによって系統的に回避され、投影対物器械の光学要素の典型的なレイアウトが誘導される。これらの限界条件が系統的に回避される場合には、得られる投影対物器械の光学性能を実質的に危うくすることなく、工程の除染度に対する要件を緩和することができる。
この実施形態では、計算処理に用いられるメリット関数成分のうちの1つが最大照度要件を定め、この要件は、各光学面(像表面に最も近い最終光学面を除く)上で発生する有効照度IRRDDEFFの最大値が、所定の照度閾値IRRTVを超えないことを要求する。
本明細書に用いる「照度」という用語は、単位面積当たりで表面での電磁放射線の仕事率を表している。特に「照度」という用語は、表面上に入射する電磁放射線の仕事率を表している。照度のSI単位は、ワット毎平方メートル(W/m2)である。照度は、場合によっては強度とも呼ばれるが、異なる単位を有する放射強度と混同しないようにすべきである。「有効照度」(同じく「ピンホール照度」とも表す)は、光学面上に入射する全照度に対する、単一の物体視野点から出射する放射線に由来する寄与を表している。光線伝播の観点からは、「有効照度」は、共通視野点から等距離開口間隔で発する異なる光線の「幾何学的光線密度」に対応する。有効照度は、表面上で均一である可能性がある。典型的には、有効照度は表面にわたって変化する可能性があり、それによって最大有効照度(大きい局所幾何学的光線密度に対応する)の領域、及び有効照度の小さい値(小さい幾何学的光線密度に対応する)の領域が形成される。
光学面上で有効照度の比較的大きい値が発生する場合には、これらの光学面は、スクラッチ及び汚染のような表面欠陥に関して決定的である場合がある。有効照度の比較的大きい値は、例えば、光学面上の火面条件及び/又は光学面上の極度に小さい有効部分開口によって引き起こされる可能性がある。
ここで、図3に示す略流れ図の流れに沿って、投影対物器械の光学設計(レイアウト)を計算するのに用いられるソフトウエアプログラムに実施される最適化ルーチンの実施形態を説明する。第1段階S1(収差に関する最適化「OPT AB」)では、光学設計の基本レイアウトが収差に関して最適化され、最適化設計D1が得られる。この目的のために、投影対物器械の1つ又はそれよりも多くの構造パラメータを変更し、得られる設計の全収差を計算するのに適切な光学設計プログラムの従来のサブルーチンを用いることができる。得られる最適化設計D1は、1つ又はそれよりも多くの光学面上に有効照度の大きい集中が局所的に発生する光学面を有していても、そうでなくてもよい。
第2段階S2では、最適化設計が解析され、投影対物器械の像表面内の有効照度に対して正規化された有効照度を表す正規化有効照度値IRRADEFFが、投影対物器械の各光学面(投影対物器械の像表面の直近の最終光学面を除く)上の所定の照度閾値IRRTVを超えるか否かが判断される。
正規化有効照度値IRRADEFFが、いかなる光学面(最終光学面を可能な例外として)上の照度閾値IRRTVをも超えない場合には、最適化設計D1を表すパラメータが判断段階S3内に入力され、収差レベルABが、所定の収差閾値ATVよりも上に位置するか又は下に位置するかが判断される。収差レベルが収差閾値よりも低い場合には、最適化設計D2が、最適化手順の結果として出力される。最終設計D2は、段階S2における照度判断への入力として機能する最適化設計D1に等しいものとすることができる。
段階S2における照度判断が、少なくとも1つの光学面(最終光学面を除く)において、最適化設計D1の正規化有効照度値IRRADが照射閾値IRRTVを超えているように判断した場合には、計算ルーチンは照度最適化段階S4(OPT IRRAD)へと進み、ここで最適化設計D1は、有効照度に関して決定的な光学面上の局所照度集中を低減するように再度最適化される。この目的のために、投影対物器械の少なくとも1つの構造パラメータが変更され、最大照度要件を定めるメリット関数成分を含む全メリット関数が用いられる。得られる再最適化設計D1’は、次に、段階S1を通じて照度判断段階S2内に入力され、正規化照度値が、注目している光学面の各々における照度閾値IRRTVよりも低くなっているか否かが判断される。この目的で2回又はそれよりも多くの再最適化段階を含む反復を用いることができる。
照度判断段階S2が、得られる再最適化設計D1’が照度の極大値の発生に関して最適化されたように判断した場合には、この最適化された構造は収差判断段階S3内に入力され、照度に関する再最適化によって1つ又はそれよりも多くの決定的な収差がそれぞれの収差閾値よりも上がったか否かが判断される。再最適化設計が収差に関して依然として許容範囲内である場合には、段階S5において最終設計D2’が得られ、かつ出力される。
収差に関して設計を最適化する必要がある場合には、段階S2から受け取られる構造パラメータは、段階S1内に入力され、光学設計(既に照度に関して最適化されている)は、収差に関しても修正される。収差に関して設計を再度最適化し、依然として全ての決定的な光学面における限界照度閾値IRRTVよりも低い正規化照度値を得るために、1つ又はそれよりも多くの反復が必要である可能性がある。最終設計D2’は、再最適化手順の結果である。
一部の実施形態では、照度を判断する判断段階S2におけるサブルーチンは、像表面の直近の最終光学面を除く全ての光学面上の火面条件の発生、及び/又は全ての光学面上の極度に小さい部分開口を回避することを可能にする。
ここで、図4から6に関連して、光学面上の火面条件の発生を系統的に回避する計算ルーチンに対して説明する。
製造の計算部分の第1段階では、いくつかの代表的視野点が定められる。これらの代表的視野点から発する光線束の光線に対して光線追跡が実施される。
第2段階では、投影対物器械の瞳表面内で、2次元アレイにおいて所定の距離で互いに分離するラスタ点アレイを表す瞳ラスタが定められる。
第3段階では、代表的視野点から発し、瞳ラスタのラスタ点を通過する光線の光線軌道が、代表的視野点の各々に対して計算される。この目的のために、「CODE V」、OSLO、又はZEMAXのような市販の設計プログラムを用いることができる。
典型的に瞳ラスタは、投影対物器械の利用される開口全体を網羅し、開口は、各代表的視野点から発する光線束の開き角を決める。図4に概略的に例示している瞳ラスタの実施形態では、瞳表面内のラスタ点の座標は、極座標で与えられ、隣接するラスタ点(すなわち、間に所定の距離を有する互いに直近のラスタ点)は、方位角方向に同じ距離を有する。この実施形態では、円周(方位角)方向に隣接するラスタ点の間の角間隔幅は10/3度である。半径方向(動径座標)のラスタ点の座標は、それぞれの光線と光軸の間に含まれる開口角に対応する。本出願ではこれらの角度を「瞳角」とも表している。瞳角の正弦の絶対値は、角度0と最大角であるkmax=NA・βとの間で、
Figure 0005559543
に従う平方根関数に従って段階的に増大し、ここでi=0、1、・・・、nであり、NAは、投影対物器械の像側開口数であり、βは、物体視野と像視野の間の拡大係数である。そうすることにより、瞳表面は、実質的に同じラスタ視野面積を有するラスタ視野(ラスタセル)に細分化される。
第4段階では、各光学面に対して、これらの選択された光線の投影対物器械内の光学面との交差点が計算される(一部の場合には、像表面の直近の最終光学面を可能性として除外する)。
その後の段階では、瞳表面内で直接に隣接するラスタ点の対が考察される。直接に隣接するラスタ点は、対の両方のラスタ点が、同じ方位角座標又は同じ瞳角座標のいずれかを有するが、それぞれの他方の座標は、予め選択された間隔幅に従ってそれぞれの座標方向に1つの座標間隔だけ異なることを特徴とする。隣接するラスタ点の各対において、次式の差分商が計算される。
Figure 0005559543
ここで、fは、それぞれの光学面の番号を表し、i、jは、隣接する瞳ラスタ点のインデックスを表している。式(1)では、変数x及びkはベクトルである。ベクトルxの成分は、光学面上の点の実空間での座標を表している。ベクトルkの成分は、光学システムの入射瞳内(すなわち、瞳空間内)で光線の伝播方向を向く単位ベクトルのx、y、及びz座標を表す方向正弦値である。従って、(1)における差分商は、瞳空間内で所定の間隔幅を有する間隔(変数k)と光学面上の実空間内で対応する間隔幅(変数x)の間の関係を示す基準値である。言い換えれば、式(1)の差分商によって定められる勾配パラメータgf ijは、瞳座標における所定の差分に対するそれぞれの表面上の交差点の変化程度を表している。(式(1)の差分商は、微分商の近似値であり、典型的に数値計算において有限間隔幅が用いられることを示している。式(1)の差分商は、間隔幅がゼロに近づく時に微分商になる。)
上述の式(1)で与えられる数値基準は、線形勾配を用いて定められることに注意されたい。より精密には、方向空間内の1つの格子メッシュ要素に対応する表面上の関連格子メッシュ要素の面積の間の比率を制御することができる。しかし、実際には、殆どの場合、光線密度の局所ピークを回避するのにほぼ直交方向に線形勾配を制御することで十分である。
更に別の段階では、光学面上の隣接する交差点の間の最小許容勾配を表す勾配閾値が定められる。例えば、勾配閾値gf ij(最小)=10mmを定めることができる。
勾配パラメータの意味の更に別の具体例として、図5は、ある選択された代表的視野点に対する図4に示す瞳ラスタの光線のある選択された光学面f上の交差点を示している。交差点の局所密度は、光学面の右下部分における高照度領域HIRADにおいて、この高照度領域に直径方向に対向する左上部分のような光学面の他の部分よりも有意に高いので、光学面にわたる交差点の分布及びその得られる照度の分布は一様ではないことは明らかである。しかし、方位角及び半径方向の交差点の順序は、瞳表面内のものと同じであることから(それぞれの区域内の照度の量を示す隣接する交差点の間の間隔幅は、光学面にわたって有意に変化するが)、光学面上に火面条件は与えられていない。図5に示している状況は、勾配パラメータgf ijにおける4.7mmの値に対応する。
次の段階では、勾配パラメータの最小値が、光学面の各々(任意的に、最終光学面を除く)に対して計算される。特定の光学面に対して計算された最小値が勾配閾値よりも小さいことが判明した場合には、それぞれの光学面上の最小勾配をその値が勾配閾値に等しいか又はそれよりも大きくなるまで増加させるように、投影対物器械の構造パラメータが最適化される。例えば、最適化手順は、それぞれの光学面と隣接する視野表面(物体表面、中間像、又は像表面等)との間の距離を拡大する段階を含む。代替的又は追加的に、隣接する交差点に対して計算される勾配を増大するために、最小勾配領域内の物体表面の局所傾きを変更することができる。
対応する「有効部分開口」の半径は、次式に従って計算することができる。
Figure 0005559543
ここで、Min(gf ij)は、式(1)の差分商の最小値であり、NAOBJは像側開口数である。勾配パラメータの最小値を有する領域は、最大幾何学的光線密度(及び最大有効照度)を有する領域に対応することに注意されたい。
最適化手順の最終結果として、勾配パラメータが勾配閾値に等しいか又はそれよりも大きくなるように、投影対物器械の全ての光学面が位置決めされ、成形される。照度の観点からは、この要件は、投影対物器械の像表面内の照度に正規化された照度を表す正規化照度値IRRADが、投影対物器械の各光学面(投影対物器械の像表面に間近の最終光学面を除く)上の所定の照度閾値を超えない条件に対応する。照度が正規化照度の許容最大値を超えない場合には、上述のように、投影対物器械の光学性能は、光学面上の潜在的な欠陥に比較的鈍感になる。
比較のために、図6は、視野点に対する瞳ラスタの光線の火面条件が発生する領域内にある「仮想」システムの表面上の交差点を示している。仮想表面の左上部分では、瞳の外縁部の瞳座標に対応する交差点が、光軸と瞳の外縁部との間のいずれかの場所に位置決めされたラスタ点に対応する交差点よりも、軸上光線の交差点の近くに位置することは明らかである。言い換えれば、ある一定の視野点から異なる開口数(瞳ラスタ内の異なる動径座標で表される)で発する光線は、それぞれの光学面上又はその近くで交差し、それによって瞳表面内で大きい開口値に対応する光線は、小さい開口値に対応する光線よりも軸上光線の近くで光学面と交差する。この図では、勾配パラメータgf ijは、火面領域CAUSTIC(左上部分)内に位置する光学面領域内で最小値0mmに達する。
上述の方法を系統的に用いると、光学面のうちのいずれもが火面領域及び/又は非常に小さい有効部分開口を有する領域内に位置決めされない光学設計が誘導される。光学システム内でそのような光学面が回避される場合には、表面品質及び/又は汚染に関する仕様を緩和することができ、それによって光学システムの製造が容易になる。
図7は、これらの条件を満たす反射屈折投影対物器械100の実施形態を示している。この投影対物器械は、公称UV作動波長λ=193nmで設計される。仕様を表1、1Aに提供する。投影対物器械100は、平面の物体表面OS(対物面)に配列されたレチクル上のパターン像を平面の像表面IS(像平面)内に、例えば4:1の縮小スケールで厳密に2つの実中間像IMI1、IMI2を生成しながら投影するように設計される。矩形の有効物体視野OF及び像視野IFは軸外であり、すなわち、光軸AXの完全に外側である。第1の屈折対物器械部分OP1は、物体表面内のパターンを第1の中間像IMI1へと拡大スケールで結像するように設計される。第2の反射屈折(屈折/反射)対物器械部分OP2は、第1の中間像IMI1を第2の中間像IMI2内に1:(−1)に近い倍率で結像する。第3の屈折対物器械部分OP3は、第2の中間像IMI2を像表面IS上に大きい縮小比で結像する。
投影ビームのビーム経路を辿るのを容易にするために、図7では、軸外物体視野OFの外側視野点の主光線CRの経路を太線で示している。本出願の目的では、「主光線」という用語(1次光線としても公知である)は、有効使用物体視野OFの最外側視野点(光軸から最も遠い)から入射瞳の中心へと延びる光線を意味する。システムの回転対称性に起因して、主光線は、例証目的で図に示している子午平面内の対等な視野点から選択することができる。基本的に物体側でテレセントリックである投影対物器械では、主光線は、物体表面から平行に又は光軸に対して非常に小さい角度で発射する。更に、結像過程は、周辺光線の軌道によって特徴付けられる。本明細書に用いる「周辺光線」は、軸上物体視野点(光軸上の視野点)から開口絞りの縁部へと延びる光線である。軸外有効物体視野が用いられる場合には、口径食の理由から、この周辺光線は、像形成に寄与することができない。主光線及び周辺光線は、投影対物器械の光学性能を特徴付けるように選択される。所定の軸上位置で、そのような選択された光線と光軸の間に含まれる角度をそれぞれ「主光線角度」(CRA)及び「周辺光線角度」(MRA)で表している。所定の軸上位置でのそのような選択された光線と光軸の間の半径距離をそれぞれ「主光線高さ」(CRH)及び「周辺光線高さ」(MRH)で表している。
主光線CRが光軸と交差する位置において、互いに共役な瞳表面P1、P2、及びP3が形成される。第1の瞳表面P1は、物体表面と第1の中間像の間の第1の対物器械部分内に形成され、第2の瞳表面P2は、第1の中間像と第2の中間像の間の第2の対物器械部分内に形成され、第3の瞳表面P3は、第2の中間像と像表面ISの間の第3の対物器械部分内に形成される。
第2の対物器械部分OP2は、単一の凹ミラーCMを含む。第1の平面折り畳みミラーFM1は、物体表面から到来する放射線を凹ミラーCMの方向に反射するように、第1の中間像IMI1に光学的に近くに光軸に対して45°の角度で配列される。第1の折り畳みミラーの平面ミラー表面に対して直角に整列した平面ミラー表面を有する第2の折り畳みミラーFM2は、凹ミラーCMから到来する放射線を物体表面に対して平行な像表面の方向に反射する。
折り畳みミラーFM1、FM2の各々は、エタンデュ(幾何学的光束)が小さく保たれるように中間像の光学的に近くに位置する。中間像は、好ましくは、平面ミラー表面上に位置せず、それによって中間像と光学的に最も近いミラー表面の間に有限の最小距離が生じる。それによってスクラッチ又は不純物のようなミラー表面内のいかなる障害も像表面上に鮮明に結像されないことが確実になる。
第1の対物器械部分OP1は、各々第1の瞳表面P1のいずれかの側に正の屈折力を有する2つのレンズ群LG1、LG2を含む。第1のレンズ群LG1は、投影対物器械のテレセントリックな入射瞳を第1の瞳表面P1内に結像するように設計され、それによって1回のフーリエ変換を実施するフーリエレンズ群の方式で作用する。このフーリエ変換は、第1の瞳表面において17°程度の比較的小さい最大主光線角度CRAP1を生じる。その結果、ラグランジュの不変量に従って第1の瞳の光学的に使用可能な直径は比較的大きく、第1の瞳表面の放射線ビームの直径D1=145mmで示している。
大きい瞳直径と共に、比較的小さい主光線角度は、瞳空間PSの比較的大きい軸線方向延長範囲に対応する。本出願の目的では、瞳空間は、周辺光線高さMRHが主光線高さCRHよりも実質的に大きく、光線高さ比RHR=CRH/MRHにおいてRHR<|B|≪1が満たされる領域として定められる。光線高さ比の上限Bは、例えば、0.4よりも小さく、又は0.3よりも小さく、又は0.2よりも小さいものとすることができる。この条件が満たされる場合には、瞳空間内で適用された補正は、基本的に視野一定効果を有することになる。瞳空間の軸線方向延長範囲は、それぞれの瞳における主光線角度が低減する時に増大する。この実施形態では、条件RHR<0.3が満たされる。
この実施形態では、瞳空間PSは、瞳表面の直ぐ下流にLG2の第1のレンズL1−6(両凸レンズ)を含み、瞳表面の像側のその後のレンズL1−7まで、更に第1の瞳表面の直ぐ上流の正の両凸レンズL1−5まで延びている。各々少なくとも40mmの軸線方向延長範囲を有し、内部に1つ又はそれよりも多くの肉薄の補正要素を置くことを可能にする自由空間FS1(=41mm)及びFS2(=62mm)が、瞳表面P1のいずれかの側の瞳空間PS内、すなわち、瞳表面に光学的に近くに形成される。従って、この実施形態は、視野の全ての視野点に対して基本的に同じである補正効果(視野一定補正)を得るために、第1の瞳表面P1に光学的に近い1つ又はそれよりも多くの補正要素を導入することを可能にする。
瞳空間PS内の条件RHR≒0が満たされる第1の瞳表面P1には、平行プレートPPが位置決めされる。平行プレートは、投影対物器械の元の設計の一部であり、補正要素のためのプレースホルダとして機能することができ、この補正要素は、同様に基本的に同じ厚み及び材料を有し、少なくとも1つの表面が非球面形状を有する平行平面プレートとして形成することができる。
上述のように、典型的にマイクロリソグラフィに用いられる高開口投影対物器械では、光線束の比較的小さい実部分開口及び/又は有効部分開口が、ある一定の物体表面、例えば、視野表面に近い物体表面において発生する可能性がある。例えば、図7の実施形態では、第1の折り畳みミラーFM1及び第2の折り畳みミラーFM2は、両方ともにそれぞれ隣接する中間像IMI1及びIMI2に光学的に近くに位置決めされ、それによって比較的小さい実部分開口がこれらの折り畳みミラー上で発生する。一般的に、光学面上の照度は、部分開口サイズが縮小する時に増大する。比較的大きい値の照度が光学面上で発生する場合には、これらの光学面は、スクラッチ及び汚染のような表面欠陥に関して決定的である場合がある。また、特に視野表面に近い光学システムのある一定の光学面上では、火面条件が発生する可能性がある。光学面が火面領域内に位置する場合には、照度は発散すると考えられる。
小さい部分開口の領域及び/又は火面条件が発生する領域に光学面を有する光学システムでは、これらの効果に起因して、表面品質及び汚染に関する仕様を特に厳しく保たなければならない。これに反して、光学システム内でそのような表面が回避される場合には、表面品質及び/又は汚染に関する仕様を緩和することができ、それによって光学システムの製造が容易になる。
図7の実施形態の製造では、比較的大きい部分開口を得るために第1及び第2の折り畳みミラーFM1、FM2が中間像から十分に分離して配置されるような、かつ火面条件の制御に関して折り畳みミラーFM1及びFM2のいずれの上にも火面条件が発生しないような光線経路の補正に特別の重点が置かれた。これを第1の折り畳みミラーFM1及び第2の折り畳みミラーFM2上の矩形視野の縁部の周囲の18個の選択された視野点の受光域を示している図8で定性的に例証する。各受光域では、光線束を10個の等距離開口間隔で示している。同じ視野点から発する異なる開口の光線束に対応する実質的に楕円形の線は交差しないが、折り畳みミラーの交差なしに交互に重なっていることが明らかである。これは、第1及び第2の折り畳みミラーの両方が、火面条件のない領域、すなわち、「無火面」領域内にあることを示している。同様に、幾何学的に折り畳みミラーFM1、FM2と凹ミラーの間の二重経路領域内で、第1及び第2の中間像に光学的に比較的近くに配列された正の両凸レンズは、無火面領域内にある。その結果、図7の実施形態は、中間像IMI1、IMI2に近い光学面上の表面欠陥及び/又は汚染に対して比較的耐性を有する。
好ましい実施形態の上述の説明は、一例として提供したものである。個々の特徴は、本発明の実施形態として単独又は組合せのいずれにおいても実施することができ、又は他の用途分野において実施することができる。更に、これらの特徴は、他に依存することなくそれ自体で保護可能な有利な実施形態を表すことができ、これらの実施形態に対して、出願時に本出願において保護が請求され、又は本出願の係属中に保護が請求されることになる。上記に提供した開示内容から、当業者は、本発明及びそれに伴う利点を理解するだけでなく、開示した構造及び方法に対する様々な変更及び修正が明らかであることを見出すであろう。従って、本出願人は、特許請求の範囲及びその均等物によって定められる本発明の精神及び範囲に収まる全てのそのような変更及び修正が保護されることを求めるものである。
全ての特許請求の範囲の内容は、引用によって本明細書の一部を構成するものである。
表1
Figure 0005559543
Figure 0005559543
表1A
Figure 0005559543
S1 収差に関する最適化「OPT AB」である第1段階
D1 最適化設計
IRRADEFF 正規化有効照度値
IRRTV 照度閾値

Claims (5)

  1. 投影対物器械のための初期設計を定める段階とメリット関数を用いて該設計を最適化する段階とを含む投影対物器械を製造する方法であって、
    各々が特定の品質パラメータを反映する複数のメリット関数成分を定める段階、
    を含み、
    前記複数のメリット関数成分を定める段階は、
    いくつかの代表的視野点を定める段階と、
    前記投影対物器械の瞳表面において互いに離間したラスタ点のアレイを表す瞳ラスタを定める段階と、
    前記代表的視野点の各々に対して、該代表的視野点から発して前記瞳ラスタの前記ラスタ点を通過する光線の光線軌道を計算する段階と、
    各光学面に対して、前記光線の該光学面との交差点を計算する段階と、
    を含み、
    前記メリット関数成分のうちの1つは、投影対物器械の像表面における有効照度に対して正規化された有効照度を表す正規化有効照度値が、該投影対物器械の像表面に直近の最終光学面を除く該投影対物器械の各光学面上の所定の照度閾値を超えないことを要求する最大照度要件を定め、さらに、該方法は、
    前記投影対物器械の予備設計の対応する特徴に基づいて前記メリット関数成分の各々に対する数値を計算する段階と、
    前記メリット関数成分から、品質パラメータを反映する数値で表すことができる全体メリット関数を計算する段階と、
    前記投影対物器械の少なくとも1つの構造パラメータを連続的に変更し、得られる全体メリット関数値を該得られる全体メリット関数が所定の許容値に達するまで各連続的変更を用いて再計算する段階と、
    を含み、
    前記再計算する段階は、
    各光学面に対して、互いに直近に配列された隣接するラスタ点に対応する交差点の間のそれぞれの勾配を表す複数の勾配パラメータを計算する段階と、
    隣接する交差点の間の最小許容勾配を表す勾配閾値を定める段階と、
    前記勾配パラメータが、前記最終光学面を除く前記投影対物器械の各光学面に対する前記勾配閾値を下回らないように該投影対物器械の構造パラメータを最適化する段階と、
    を含み、
    前記得られる全体メリット関数に対して前記所定の許容値を有する最適化された投影対物器械の前記構造パラメータを取得する段階と、
    前記パラメータを実装して前記投影対物器械を製造する段階と、
    を更に含むことを特徴とする方法。
  2. 前記投影対物器械内の火面領域の位置及び範囲を計算する段階と、
    光学面が火面領域内に位置決めされないように前記投影対物器械の前記構造パラメータを最適化する段階と、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記瞳ラスタは、前記瞳表面が、実質的に同じラスタ視野面積を有するラスタ視野に細分化されるように定められることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記瞳ラスタは、隣接するラスタ点が、方位角方向に同じ距離を有し、かつ瞳角kが、
    Figure 0005559543
    に従って0とkmax=NA・βの間で段階的に変化するような極座標で定められ、ここで、i=0、1、・・・、nであり、NAは、前記投影対物器械の像側開口数であり、βは、物体視野と像視野の間の拡大係数であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. いくつかの代表的視野点を定める段階と、
    前記視野点から発する光線束と、交差ゾーンの面積によって定められる実部分開口サイズを有する実部分開口を定める該光線束の光学面との交差ゾーンとを計算する段階と、
    部分開口サイズ閾値を定める段階と、
    選択された視野点に対する前記実部分開口サイズが、前記投影対物器械の像表面の直近の最終光学面を除く該投影対物器械の全ての光学面に対して前記部分開口サイズ閾値を下回らないように該投影対物器械の前記構造パラメータを最適化する段階と、
    を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
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