JP5555257B2 - 天然繊維含有プラスチック製造用複合材料及びその製造方法、並びに天然繊維含有プラスチック及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の実施の形態に係る複合材料の製造方法は、天然繊維と熱可塑性樹脂とを用いた複合材料の製造方法であって、前記天然繊維に植物由来のポリフェノールを担持させる工程を有することを特徴とする。
本発明の実施の形態において使用される天然繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、亜麻(フラックス)、大麻(ヘンプ)、いらくさ、ラミー、ジュート、ケナフ(ハイビスカス)などの靭皮繊維、コイア、シサル麻(ラン)などの硬質繊維に分類されるものが挙げられる。中でも、亜麻(フラックス)、ラミー、ケナフを用いることが、価格と機械特性、汎用性の点で好ましい。
上記天然繊維は、1種で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
本発明の実施の形態において使用される樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、射出成形用、圧縮成形用、及び押出成形用の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)樹脂、ポリエステル樹脂{(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂)、(ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエチレン樹脂)}、ポリスチレン、ポリアクリル樹脂(メタアクリレート、アクリレート等)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。中でも、射出成形用として、ポリプロピレン、ABS樹脂を用いることが、取扱いが容易である等の点で好ましい。その他、圧縮成形用の熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂、ユリア樹脂を用いることが、取扱いが容易である等の点で好ましい。
上記熱可塑性樹脂は、1種で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
本発明の実施の形態において使用される植物由来のポリフェノールとしては、特に限定されるものではないが、成形時の耐熱性に優れ、フォギングとブリードアウトが少ない点で分子量440以上の多量体(2量体以上)又は分子量290以上の1量体であるポリフェノールが好ましい。
ポリフェノールを担持させる工程は、その方法が特に限定されるものではなく、例えば、ポリフェノールを溶解させた溶液に複合材料を浸漬する方法や、同溶液を複合材料に噴霧又ははけ塗りする方法等により行うことができる。中でも、ポリフェノールを溶解させた溶液に複合材料を浸漬する方法が、均等に担持できる点で好ましい。
複合材料の製造方法は、上記のポリフェノールを担持させる工程を有することに特徴を有するものであり、その他の工程は特に限定されるものではなく、特許文献1や特許文献2等に記載の公知の方法を採用することができる。ポリフェノールを担持させる工程は、公知の方法により複合材料を製造した後に行うことが好ましいが、公知の方法による製造前であっても製造途中であってもよい。
本発明の実施の形態に係る天然繊維含有プラスチックの製造方法は、本発明の実施の形態に係る複合材料をプラスチック成形(特に射出成形又は圧縮成形)する工程を有することを特徴とする。本発明にはプラスチック成形手法全般が適用でき、射出成形及び圧縮成形以外の手法としては、押出成形、ブロー成形、ハンドレイアップなどを挙げることができる。
本発明の実施の形態によれば、臭いの低減された天然繊維含有プラスチックを提供することできる。また、フォギング物質量が低減された天然繊維含有プラスチックを提供することできる。また、これらを製造するための複合材料を提供することできる。
供試体を射出成形及び圧縮成形により以下に示す方法にて製造した。
射出成形とは、プラスチック原料を射出成形機で溶融温度に加熱して可塑化した後、金型内に圧入、冷却固化させて成形品を得る方法である。
特許文献2に記載の方法に従って、ポリプロピレン繊維70質量%と亜麻繊維30質量%を混合した複合繊維を用いて、機織機(製品名:NAFARUプラント、Svoboda Umformtechnik製)によりペレット粒子(長繊維ペレット)を製造した。
一方で、ブドウポリフェノール粉末(商品名:グラブィノール−SL、キッコーマン株式会社製)及び緑茶ポリフェノール粉末(商品名:ポリフェノン70A、三井農林株式会社製)を使用し、それぞれを蒸留水に溶解させて、1質量%、3質量%、5質量%の水溶液を作製した。
各濃度のブドウポリフェノール水溶液又は緑茶ポリフェノール水溶液に製造した上記ペレット粒子を浸し、80℃の恒温槽中で6時間乾燥させてポリフェノール担持試料とした。
作製したポリフェノール担持試料を射出成形機(製品名:Allrounder Centrex Model 520C-2000-675、Arburg製)で射出成形し、ダンベル試験片形状を有する射出成形品を得た。成形は、加熱温度180℃及び220℃と条件を変えて行った。
使用したブドウポリフェノールは、プロアントシアニジン約85質量%と不純物約15質量%を含有していた。
また、使用した緑茶ポリフェノールは、エピガロカテキンガレート約45質量%、エピガロカテキン約20質量%、エピカテキンガリレート約10質量%、エピカテキン約9質量%、不純物16質量%を含有していた。
圧縮成形とは、上型と下型の間の空間にプラスチック原料を入れ、金型自体を加熱し、原料が溶融状態になった後、加圧して、原料を空間の細部までいきわたらせ、冷却固化する方法である。
ブドウポリフェノール粉末(商品名:グラヴィノール−SL、キッコーマン株式会社製)及び緑茶ポリフェノール粉末(商品名:ポリフェノン70A、三井農林株式会社製)を使用し、それぞれを蒸留水に溶解させて、1質量%、3質量%、5質量%の水溶液を作製した。
各濃度のブドウポリフェノール水溶液又は緑茶ポリフェノール水溶液に、シート状の亜麻繊維を浸し、その後、加圧ローラにて100kPaの圧力を加えながら、1m/秒の速度で通過させ脱液後、さらに、100℃で1時間、乾燥させて亜麻繊維へポリフェノールを担持させた。
この亜麻繊維とポリプロピレンフィルムを20cm×30cmに切りそろえ、交互に積み重ねて7層(亜麻3層、PP4層;混合材料のうち亜麻繊維の割合は50質量%)とし、圧縮成形機(製品名:polystat 300S、Schwabenthan製)で圧縮成形した。成形条件は、加熱温度190℃、圧力約750N/cm2で2分間、加熱加圧し、ヒーターを止め、加圧したまま、その後10分間、自然冷却し、材料を硬化させた。
製造した供試体(射出成形品及び圧縮成形品)について、以下に示す方法により、官能試験として臭気試験及びフォギング(Fogging)試験をドイツの下記規格に基づき行った。
ドイツ自動車技術協会規格(Verband der Automobilindustrie; VDA)
ドイツ工業品基準規格(Deutsche Industries Normen; DIN)
臭気の評価(VDA270)を以下の方法により行った。
1Lのガラス瓶中に50g(20cm×30cm)の供試体を封入し、80±2℃、2時間の条件下で保温した。これを取り出して直ぐにその臭気を下記の6段階で評価した。具体的には、4人のパネラーがそれぞれの試料を下記の6段階で評価し、その平均値を臭気試験の結果とした。
<臭気評価基準(VDA270)>
1:知覚できない(無臭)
2:知覚できるが不快ではない
3:はっきりと知覚できるが不快ではない
4:不快である
5:とても不快である
6:我慢できない
フォギング試験は、材料のフォギング性を再現・評価するものであり、フォギングとは、自動車内装材に含まれる添加物が、高温になった車内で揮発して外気で冷えた窓ガラス内面に凝縮し、白く曇らせて視界を妨げる現象をという。成形品から発生する化学物質を測定するフォギング試験をDIN75201−Aの規格に従って行った。
具体的には、直径80mmのビーカの中に10gの供試体を入れ、アルミニウム箔で包まれた金属プレートでビーカに蓋をして、100℃で16時間保持した。なお、その金属プレートは常に冷却されている。直径80mmのアルミニウム箔の表面に付着した物質の総質量を測定した。
製造した供試体(射出成形品及び圧縮成形品)について、以下に示す規格に従って、引っ張り強度、引っ張り伸び率、シャルピー衝撃強度、曲げ強度、及び曲げ伸び率の測定を行った。
1.引っ張り強度 DIN EN ISO 527-1
2.引っ張り伸び率 DIN EN ISO 527-1
3.シャルピー衝撃強度 DIN EN ISO 179
4.曲げ強度 DIN EN ISO 178
5.曲げ伸び率 DIN EN ISO 178
前述の製造方法により、1質量%、3質量%、5質量%のブドウポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品(実施例1A〜3A)、1質量%、3質量%、5質量%の緑茶ポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品(実施例1B〜3B)、及びポリフェノール水溶液に浸漬せずに製造した射出成形品(比較例1)について前述の方法により臭気試験を行った。射出成形は、180℃で行った。結果を図1に示す。
前述の製造方法により、1質量%、3質量%、5質量%のブドウポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品(実施例4A〜6A)、1質量%、3質量%、5質量%の緑茶ポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品(実施例4B〜6B)、及びポリフェノール水溶液に浸漬せずに製造した射出成形品(比較例2)について前述の方法によりフォギング試験を行った。射出成形は、180℃で行った。結果を図2に示す。
前述の製造方法(射出成形温度180℃及び220℃)により、5質量%のブドウポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品(実施例7A、8A)、5質量%の緑茶ポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品(実施例7B、8B)、及びポリフェノール水溶液に浸漬せずに製造した射出成形品(比較例3、4)について前述の方法により臭気試験を行った。結果を図3に示す。
前述の製造方法(射出成形温度180℃及び220℃)により、5質量%のブドウポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品(実施例9A、10A)、5質量%の緑茶ポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品(実施例9B、参考例10B)、及びポリフェノール水溶液に浸漬せずに製造した射出成形品(比較例5、6)について前述の方法によりフォギング試験を行った。結果を図4に示す。
前述の製造方法により、1質量%、3質量%、5質量%のブドウポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した圧縮成形品、1質量%、3質量%、5質量%の緑茶ポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した圧縮成形品、及びポリフェノール水溶液に浸漬せずに製造した圧縮成形品(比較例)について前述の方法により臭気試験を行った。
これより、緑茶ポリフェノール水溶液よりもブドウポリフェノール水溶液による処理の方が圧縮成形品からの悪臭低減効果に優れていることが分かる。また、圧縮成形品よりも射出成形品において、悪臭低減効果がより高いことが分かった。
前述の製造方法おいて、ブドウポリフェノールを溶解させる溶媒を水100質量%+エタノール0質量%、水80質量%+エタノール20質量%、水50質量%+エタノール50質量%に変えて、それぞれ3質量%のブドウポリフェノール溶液に浸漬させて製造した圧縮成形品(実施例11A〜13A)、及びポリフェノール溶液に浸漬せずに製造した圧縮成形品(比較例7)について前述の方法により臭気試験を行った。結果を図5に示す。
また、ブドウポリフェノール中のプロアントシアニジンは分子量が大きいため、常温の純水への溶解性が悪く、溶液を作成するのに長い時間を要するが、水80質量%にエタノール20質量%を加えた溶媒、及び水50質量%にエタノール50質量%を加えた溶媒では、プロアントシアニジンの溶解性が格段に向上し、短時間で溶液を作成することができた。水溶媒にエタノールを添加することにより、工程時間の短縮が可能となる。
前述の製造方法により、1質量%、3質量%、5質量%のブドウポリフェノール水溶液又は緑茶ポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品(実施例)、及びポリフェノール水溶液に浸漬せずに製造した射出成形品(比較例)について前述の方法により機械特性の測定を行った。射出成形は、180℃で行った。結果を図6〜10に示す。
前述の製造方法により、1質量%、3質量%、5質量%のブドウポリフェノール水溶液又は緑茶ポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した圧縮成形品、及びポリフェノール水溶液に浸漬せずに製造した圧縮成形品(比較例)について前述の方法により機械特性の測定を行った。ポリフェノールを担持させた亜麻繊維とポリプロピレン母材との圧縮成形品は、厚さ3mm、密度3.1kg/m2であった。圧縮成形前のポリフェノールを担持させた亜麻繊維は、厚さ5mm、密度430g/m2であった。結果を図11〜15に示す。
前述の製造方法により、3質量%のブドウポリフェノール水溶液に浸漬させて製造した射出成形品、及びポリフェノール水溶液に浸漬せずに製造した射出成形品(比較例)について、約2.5cm×2.5cmに切り出した2.0gの供試サンプルからの揮散成分をマイクロ固相抽出−ガスクロマトフラフ質量分析法により分析した。供試サンプルを80℃で2時間加温し、その際に発生した揮発成分について分析を行なった。
Claims (15)
- 天然繊維と熱可塑性樹脂とを用いた複合材料の製造方法であって、
前記天然繊維に植物由来のポリフェノールであるプロアントシアニジン又はカテキン類を担持させる工程を有することを特徴とする複合材料の製造方法。
- 前記担持させる工程は、前記ポリフェノールを溶解させた溶液に前記天然繊維を浸漬させる工程(以下、浸漬工程という。)を含むことを特徴とする請求項1記載の複合材料の製造方法。
- 前記ポリフェノールは、分子量440以上の多量体又は分子量230以上の1量体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合材料の製造方法。
- 前記植物は、ブドウ又は緑茶であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記ポリフェノールは、1〜5質量%ポリフェノール含有水溶液として用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記ポリフェノールは、溶媒が水99.9〜50質量%及びエタノール0.1〜50質量%であるポリフェノール含有溶液として用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記複合材料は、前記天然繊維を10〜80質量%及び前記熱可塑性樹脂を90〜20質量%用いて製造されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記複合材料は、ペレット粒子の形状にされた後、前記浸漬工程に付されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記複合材料は、マット形状にされた後、前記浸漬工程に付されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 前記天然繊維は、マット形状にされた後、前記複合材料とされる前に、前記浸漬工程に付されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
- 熱可塑性樹脂と植物由来のポリフェノールであるプロアントシアニジン又はカテキン類が担持された天然繊維とを含む複合材料。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法によって製造された複合材料又は請求項11に記載の複合材料をプラスチック成形して製造されることを特徴とする天然繊維含有プラスチック。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法によって製造された複合材料又は請求項11に記載の複合材料を射出成形して製造されることを特徴とする天然繊維含有プラスチック。
- 請求項1〜7、9〜10のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法によって製造された複合材料又は請求項11に記載の複合材料を圧縮成形して製造されることを特徴とする天然繊維含有プラスチック。
- 天然繊維と熱可塑性樹脂とを用いて複合材料を製造する工程と、
前記複合材料を射出成形又は圧縮成形する工程とを有し、
前記複合材料を製造する工程は、前記天然繊維に植物由来のポリフェノールであるプロアントシアニジン又はカテキン類を担持させる工程を含むことを特徴とする天然繊維含有プラスチックの製造方法。
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