JP5554135B2 - 衣料用パットの製造方法 - Google Patents

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本発明は、通気性が良好な衣料用パット製造方法に関する。
従来、ブラカップ(ブラジャーのカップ)、衣服の肩パット、衣服の肘当てパット等に用いられる衣料用パットには、熱プレス型にポリウレタンフォームを挟んで加熱圧縮成形し、賦形したものがある。
しかし、加熱圧縮成形により賦形されたパットは、ポリウレタンフォームの両面が圧縮された状態で塑性変形し、形状固定されているため、通気性に劣り、蒸し暑い夏期には不快感を与える問題がある。
また、通気性を向上させるため、加熱圧縮成形された合成樹脂発泡体からなる第1のパット部材に不織布からなる第2のパット部材を接合することが提案されている、しかし、このパットにおいては、2種類のパット部材を接合しなければならず、製造作業に手間取るのみならず、材料コスト及び製造コストが嵩む問題がある。
特開2001−234402号公報 特開2007−162147号公報
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、通気性が良好で、安価で、かつ製造が容易な衣料用パット製造方法の提供を目的とする。
請求項の発明は、ポリウレタンフォームを加熱圧縮により賦形する衣料用パットの製造方法において、前記衣料用パットの人体側となる片面のみに凹凸を形成し凹部が溝として繋がったポリウレタンフォームに対し、前記凹凸が形成されていない面側のみを加熱しながら前記ポリウレタンフォームの圧縮を行い賦形することを特徴とする。
請求項の発明は請求項において、前記ポリウレタンフォームはセル膜の除去されたものであることを特徴とする。
請求項の発明によれば、衣料用パットの人体側となる片面のみに 凹凸を形成し凹部が繋がったポリウレタンフォームを、前記凹凸が形成されていない面側のみを加熱しながら前記ポリウレタンフォームの圧縮を行い、賦形するため、凹凸の形成された人体側の面が熱で塑性変形するのを抑えることができ、凹凸形状及び凹部の溝を残すことができる。製造された衣料用パットは、人体側の面における凹部の溝を通って空気が流れ、通気性が良好となる。しかも、衣料用パットを構成するポリウレタンフォームは凹凸の形成された人体側とは反対側の面のみが加熱されているため、製造された衣料用パットは、人体側が反対側よりも低い圧縮状態となり、人体側の通気性が良好なものとなる。さらに、複数種類の部材を接合する必要がないため、衣料用パットの製造が容易になり、衣料用パットが安価になる。
請求項の発明によれば、衣料用パットを構成するポリウレタンフォームが、セル膜(気泡膜)の除去された三次元網状骨格からなるため、通気性の向上した衣料用パットを製造することができる。
本発明の製造方法により得られた一実施形態に係る衣料用パットの斜視図である。 図1の断面図である。 片面に凹凸が形成されたポリウレタンフォームの概略斜視図である。 ポリウレタンフォームの凹凸部を拡大して示す断面図である。 本発明の衣料用パットの製造方法に使用する熱プレス型の概略断面図である。 本発明の衣料用パットの製造方法における加熱圧縮時の概略断面図である。 他の実施形態における熱プレス型の概略断面図である。 通気性測定用試験体の斜視図である。
図1及び図2に示す衣料用パット10は、ブラカップ用のものであり、ポリウレタンフォームを加熱圧縮成形によりブラカップ形状(お椀形状)に賦形したものからなる。前記衣料用パット10は、人体側11の面に凹凸を有すると共に凹部13が溝15として繋がっている。符号14は前記凹凸の凸部である。また、前記人体側11に対して反対側12は凹凸の無い面となっている。
本実施例の衣料用パット10は、パットの中央部16よりも縁部17で前記凸部14の倒れ(屈曲)が大きくなっており、前記凹凸部分の厚みが前記衣料用パット10の縁部17で薄くなっている。前記衣料用パット10の厚みは、適宜決定されるが、より好ましくは0.2〜20mm程度である。
前記衣料用パット10を構成するポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームからなり、特には、公知の除膜処理(溶解法や爆発法等)によりセル膜の除去されたものが好ましい。セル膜の除去されたポリウレタンフォームは、三次元網状骨格からなるため、衣料用パット10の通気性が向上する。また、前記衣料用パット10は、人体側11が反対側12よりも低い圧縮状態でポリウレタンフォームが塑性変形して形状固定されている。すなわち、ポリウレタンフォームのセル間隔は、前記反対側12よりも人体側11で粗になっているため、前記衣料用パット10は人体側11で通気性が良好になる。
前記衣料用パット10は、布等からなる表皮材(図示せず)でパットの両面が覆われて使用される。なお、表皮材は、縫製等によりパットの両面に設けたり、あるいは予め袋状にして袋状表皮材内に衣料用パットを収納するようにしてもよい。
前記衣料用パットの製造方法について説明する。前記衣料用パットの製造は、ポリウレタンフォームの加熱圧縮成形により行われる。
図3には、衣料用パットの製造方法で使用するポリウレタンフォーム10Aの一例を示す。前記ポリウレタンフォーム10Aは、軟質ポリウレタンフォームからなり、公知の除膜処理によりセル膜の除去された三次元網状骨格のものが特に好ましい。前記軟質ポリウレタンフォームの密度(JIS K 7222)は13〜90kg/m、セル数(JIS K 6400−1:2004)は5〜70個/25mmが、感触性及び通気性の点で好ましい。
前記ポリウレタンフォーム10Aは、衣料用パットの人体側となる面11Aのみに凹凸を形成し、凹凸の凹部13Aが溝15Aとして繋がったものである。なお、人体側に対して反対となる面は、凹凸の形成されていない面12Aで構成され、平坦になっている。符号14Aは凸部である。前記凹凸の形成は、公知のプロファイル加工等により容易に行うことができる。加熱圧縮前の前記ポリウレタンフォーム10Aの厚みは、適宜決定されるが、好ましくは2〜60mm程度である。また、図4に示すように凹凸の深さ(凹部13Aの底部から凸部14Aの頂部までの距離)t及び凸部14Aの間隔uは、適宜決定されるが、好ましくは凹凸の深さtがポリウレタンフォーム10Aの厚みの30〜85%、凸部14Aの間隔uが12〜70mm程度である。
前記人体側となる面11Aのみに凹凸が形成されたポリウレタンフォーム10Aを、図5に示すように、熱プレス型50の雄型51と雌型55間に配置する。その際、前記人体側となる凹凸の形成されている面11Aを雄型51の型面52へ向けると共に、前記凹凸の形成されていない面12Aを雌型55の型面56へ向けて配置する。
前記雄型51は、衣料用パットにおける人体側の面を賦形する分割型である。前記雄型51は、衣料用パットの人体側の面に応じた形状の膨出面からなる前記型面52と、その周囲のパーティング面53とからなり、前記型面52が本実施例では略球面の一部で構成されている。なお、前記雄型51の型面52は非加熱面とされ、前記型面52を加熱するための加熱手段が雄型51には設けられていない。
一方、前記雌型55は、衣料用パットにおける人体側とは反対の面を賦形する分割型である。前記雌型55は、衣料用パットの人体側とは反対の面に応じた形状の凹面からなる前記型面56と、その周囲のパーティング面57とからなり、前記型面56が本実施例では、お椀形状に窪んだ面となっている。前記雌型55には、加熱手段が設けられ、前記型面56を所定温度に加熱可能となっている。前記加熱は、電気ヒータによる加熱や、オイル等の熱媒による加熱が挙げられる。なお、熱媒による加熱の場合には、外部の熱媒供給装置と接続された熱媒循環パイプが前記雌型55に埋設される。
次に、図6に示すように、前記プレス型50の雄型51と雌型55を接近させて、前記ポリウレタンフォーム10Aを前記雄型51の加熱されていない型面52と前記雌型55の加熱されてる型面56間で挟んで加熱圧縮し、前記型面52、56形状に賦形する。その際、本実施形態では、前記雄型51の型面52と雌型55の型面56間の間隔は、型面の中央部で最も大とされ、型面の縁で最も小となるように前記雄型51と前記雌型の型面が構成されている。また、前記雌型55における型面56の加熱温度は、前記ポリウレタンフォーム10Aの凹凸の形成されていない面12Aが加熱圧縮により塑性変形可能な温度とされる。前記型面56の具体的な加熱温度は、ポリウレタンフォームの種類等によって異なるが、例として150〜260℃程度を挙げる。
前記加熱圧縮によって前記ポリウレタンフォーム10Aは、前記凹凸の形成されていない面12Aのみが、前記雌型55の加熱された型面56によって加熱されながら押圧されるため、前記凹凸の形成されていない面12A側で圧縮塑性変形の程度が大に、すなわち高い圧縮程度となり、一方、反対側の凹凸が形成されている面11A側では、低い圧縮程度となる。そのため、前記凹凸が形成されている面11A側では前記凹凸形状が残され、前記凹部の溝が繋がった状態となる。
その後、前記熱プレス型50の雄型51と雌型55間を拡げ、成形品を取り出し、トリミングを施して不要部分を除去すれば、前記衣料用パット10が得られる。このようにして得られた衣料用パット10は、人体側の面に凹凸を有すると共に、凹部が溝として繋がっているため、凹部の溝を通って人体とパットとの隙間に空気が流れ、通気性が良好となる。しかも、前記衣料用パット10は、人体側の面で低い圧縮程度となっているため、良好な通気性を有する。さらに、前記ポリウレタンフォーム10Aとして、セル膜の除去されたポリウレタンフォームを使用すれば、セル膜の除去されたポリウレタンフォームが奏する良好な通気性を得ることができ、凹部の溝を通って人体とパットとの隙間に空気が流れるのみならず、ポリウレタンフォーム中を空気が貫通するように流れるため、より通気性が向上する。特に、人体側の面で低い圧縮程度となっているため、セル膜の除去されたポリウレタンフォームによる通気性が損なわれるのを抑えることができ、良好な通気性を得ることができる。なお、前記衣料用パットは、前記加熱圧縮時に雄型51の型面52と雌型の型面56による圧縮程度が大にされた部分で、前記凹凸における凸部の倒れが大きくなっている。また、前記衣料用パットは、その後、縫製等により表面材で両面が覆われて使用される。
なお、図7に示すように、前記ポリウレタンフォーム10Aの両面に表面材25A,26Aを配置して前記の熱圧縮成形を行うことにより、衣料用パットの両面を表面材で覆ってもよい。
密度(JIS K 7222)が35kg/m、セル数(JIS K 6400−1:2004)が50個/25mmからなるセル膜の除去された軟質ポリウレタンフォームを、プロファイル加工して凹凸の深さが30mm、凸部の間隔が16mmの凹凸を片面に形成し、厚みを40mmとした賦形用ポリウレタンフォームを形成した。この賦形用ポリウレタンフォームを、図5に示した熱プレス型の雄型と雌型間に、賦形用ポリウレタンフォームの凹凸面が雄型の型面を向くようにして配置し、熱プレス型の雄型の型面と雌型の型面間で加熱圧縮成形した。使用した熱プレス型は、雌型内に埋設した媒体配管に加熱した熱媒体を流すことにより雌型の型面を200℃に加熱し、一方、雄型の型面は非加熱とした。また、前記加熱圧縮時、前記雄型の型面と雌型の型面との間隔は、型面中央部で10mm、型面の縁で0.2mmとした。加熱圧縮成形後、成形品を型から取り出し、トリミングして不要部を除去し、衣料用パットを得た。
このようにして得られた衣料用パットは、人体側の面に凹凸が残っており、かつ凹部が溝として繋がっていた。また、得られた衣料用パットを、中央部を通る位置で切断して切断面の状態を目視で確認したところ、人体側が反対側よりも圧縮状態の低いものとなっていた。
また、上記と同一の軟質ポリウレタンフォームを用いて、プロファイル加工により凹凸の深さが7.5mm、凸部の間隔が16mmの凹凸を片面に形成し、厚みを17.5mmとしてなる賦形用ポリウレタンフォームを作成した。これを上記と同じく、加熱圧縮成形し、トリミングして不要部を除去し、衣料用パットを得た。この衣料用パットも人体側の面に凹凸が残っており、かつ凹部が溝として繋がっており、切断面の状態も人体側が反対側よりも圧縮状態の低いものとなっていた。
本発明の衣料用パットにおける速乾性、通気性、感触を調べるため、次に示す実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の試験体を、速乾性測定用、通気性測定用、感触測定用に4種類作成した。
密度(JIS K 7222)が35kg/m、セル数(JIS K 6400−1:2004)が50個/25mmからなるセル膜の除去された軟質ポリウレタンフォームを、プロファイル加工して凹凸の深さが30mm、凸部の間隔が16mmの凹凸を片面に形成し、厚みを40mmとした実施例1の試験体用の賦形用ポリウレタンフォームとした。また、実施例1の試験体用の賦形用ポリウレタンフォームに使用したのと同一のセル膜が除去された軟質ポリウレタンフォームを、プロファイル加工して凹凸の深さが7.5mm、凸部の間隔が16mmの凹凸を片面に形成し、厚みを17.5mmとして、実施例2の試験体用の賦形用ポリウレタンフォームを作成した。
実施例1及び2の試験体用の賦形用ポリウレタンフォームを、200℃に加熱した熱板と非加熱の平板間に、凹凸面が非加熱の平板を向くようにしてそれぞれ配置し、熱板と平板間の間隔を5mmにして1分間加熱圧縮成形し、その後に平面寸法をそれぞれ200×200mmにトリミングして実施例1及び2の試験体を得て、さらにこの試験体を50×50mmにカットして速乾性測定用とし、残りは他の測定用とした。なお、得られた実施例1及び2の試験体は、前記非加熱の平板と当接した片面に凹凸が残っており、かつ凹部が溝として繋がっていた。また、各実施例の試験体の切断面の状態を目視で確認したところ、凹凸側が反対側よりも圧縮状態の低いものとなっていた。
一方、前記凹凸を形成しない軟質ポリウレタンフォーム(厚み10mm)を用いた以外は実施例1の試験体と同様にして比較例1の試験体を作成した。また、前記比較例1において、軟質ポリウレタンフォームの両面共、190℃に加熱した熱板で押圧して比較例2の試験体を得た。
このようにして得られた実施例1、実施例2及び比較例1の速乾性測定用試験体(50×50mm)に対して、非加熱の平板と当接して形成された面(実施例では凹凸面)に水0.3gをスプレーにより均一に塗布し、乾燥前重量を測定した後に水塗布面を下にして平板の上に載置し、1時間後に試験体の重量を測定すると共に、試験体の水塗布面における乾き具合を目視により判断した。また、次の式により水分乾燥率を計算した。
水分乾燥率(%)={(乾燥前重量−1時間後の重量)/乾燥前重量}×100
比較例2の速乾性測定用試験体については、何れか一方の面に水0.3gをスプレーにより均一に塗布し、乾燥前重量を測定した後に水塗布面を下にして平板の上に載置し、1時間後に試験体の重量を測定すると共に、試験体の水塗布面における乾き具合を目視により判断した。また、前記の式により水分乾燥率を計算した。
実施例の通気性測定用試験体及び比較例の通気性測定用試験体に対しては、それぞれ、ASTM3574に準じて通気性を測定した。すなわち、通常は、図8の(8−1)に示すように、サンプル50×50mmのサンプルの厚み(25mm)方向Kに貫通する方向に空気を流して測定する。しかし、本発明は、凹部の繋がった溝に空気が流れることによる通気性に特徴があるため、図8の(8−2)にあるように凹部の繋がった溝に空気が流れるように試験体(50mm幅、奥行き・厚み25mm)Sを配置して測定した。流通開口部が50×50mmなので、同じ材質の軟質フォームを足りない開口部分を補うサイズにして補充し(測定用補充部材S1)、全体として50×50mm(厚み25mm)の通気性測定用試験体Sとした。なお、実施例の通気性測定用試験体Sは、図8の(8−1)にあるように、凹凸を有する加熱圧縮後の衣料用パット10と前記測定用補充部材S1とを合わせて、50×50mm(厚み25mm)のサイズとなる。
また、実施例の感触測定用試験体及び比較例1及び2の感触測定用試験体に対しては、オートグラフ(圧縮試験機)により、50mm/minの圧縮速度で押圧して圧縮荷重を測定し、5mm圧縮時の荷重によって初期の感触を調べた。なお、実施例及び比較例1の感触測定用試験体については、非加熱の平板と当接して形成された面(実施例では凹凸面)を押圧される側とし、一方比較例2の感触測定用試験体については、何れか一方の面を押圧される側とした。
前記の測定結果を表1に示す。表1の結果から、実施例は比較例1及び比較例2に比べて速乾性、通気性に優れ、また初期の5mm圧縮時の荷重が小さく、初期の感触が良好であることがわかる。
Figure 0005554135
なお、本発明の衣料用パット及びその製造方法は、前記のブラカップ用に限られず、肩パット、あるいは肘当て等、種々の用途に適用される。
10 衣料用パット
10A ポリウレタンフォーム
11 人体側
11A 人体側となる面
12 反対側
12A 凹凸の形成されていない面
13、13A 凹部
14、14A 凸部
15、15A 溝
50 熱プレス型
51 雄型
52 雄型の型面
55 雌型
56 雌型の型面

Claims (2)

  1. ポリウレタンフォームを加熱圧縮により賦形する衣料用パットの製造方法において、
    前記衣料用パットの人体側となる片面のみに凹凸を形成し凹部が溝として繋がったポリウレタンフォームに対し、前記凹凸が形成されていない面側のみを加熱しながら前記ポリウレタンフォームの圧縮を行い賦形することを特徴とする衣料用パットの製造方法。
  2. 前記ポリウレタンフォームはセル膜の除去されたものであることを特徴とする請求項1に記載の衣料用パットの製造方法。
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