JP3678963B2 - カップ付き女性用衣類 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラジャー等のカップ付き女性用衣類に関する。かかるカップ付き女性用衣類には、ブラジャー、ブラスリップ、ボディースーツ等のファンデーション衣類の他、水着やレオタード等も含まれる。
【0002】
【従来の技術】
ブラジャー等のブラカップに多用されるポリウレタン素材や不織布は、素材自体に通気性のないものが多く、特に夏場やスポーツ時などの発汗時に蒸れたりして不快感を伴う。
【0003】
かかる問題を解消すべく、通気性のよいポリウレタン素材や不織布の開発が進んでおり、これら通気性のよい素材を採用することで従来に比べてブラジャーの通気性の改善がなされている。
【0004】
また、ブラカップに複数の通気孔を設け、当該通気孔を介してカップ部の内側に空気を供給することで、ブラジャーの通気性の改善を図る技術も開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の技術では、素材そのものの通気性の向上には限界があるため、ブラジャーの通気性の飛躍的な向上は図れなかった。
【0006】
また、ブラカップに複数の通気孔を設けた場合であっても、通気孔のある部分には空気が点状に触れてその部分は蒸れないかもしれないが、カップ部内側の広い範囲で通気性を良くすることはできなかった。
【0007】
そこで本発明は、通気性が良好でカップ部内側での蒸れを抑えることが可能なカップ付き女性用衣類を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、運動時などにおいて生じるカップ部内側の蒸れは、主に乳房の下縁基底線(バージスライン)に沿う部分で発生する熱に起因するものであり、かかる部分の通気性を良くすることで蒸れの大部分が解消されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明のカップ付き女性用衣類は、左右一対のカップ部を備えたカップ付き女性用衣類であって、着用状態で乳房の下縁基底線に沿うようにカップ部内側の下縁湾曲部に設けられる空気を通すための下縁湾曲溝と、下縁湾曲溝からカップ部の上縁部に向かって延びるように、カップ部内面に設けられる縦溝と、下縁湾曲溝に設けられており、カップ部内面とカップ部外面とを連絡する通気孔と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このカップ付き女性用衣類では、カップ部内側の下縁湾曲部に下縁湾曲溝が設けられているため、着用状態で乳房の下縁基底線に沿う部分とカップ部との間に空間が生じる。しかも下縁湾曲溝に通気孔を有しているため、当該通気孔を介してカップ部内部に流入した空気が下縁湾曲溝内を流動する。
【0011】
したがって、乳房の下縁基底線に沿う部分で発生した熱の大部分は、下縁湾曲溝に流れ込んでカップ部外部へ流れ出る空気とともに取り除かれて、カップ部内部での蒸れが抑えられる。
【0012】
また、下縁湾曲溝に流入した空気を縦溝を通してカップ部の上縁部から放出することが可能となるため、空気の循環効率が高められて通気性の一層の向上が図られる。
【0013】
また本発明のカップ付き女性用衣類では、縦溝は、カップ部頂部を挟んで少なくとも2本設けられている、ことを特徴としてもよい。このカップ付き女性用衣類では、カップ部頂部を挟んで縦溝が設けられているため、カップ部頂部に位置する乳頭によって空気の流れが妨げられることがなくなり、縦溝を通して空気をカップ部外部へ効率よく放出することができる。また、乳頭が縦溝に当たるおそれがないため、着用時に乳頭がこすれて痛みを生ずるおそれもない。
【0014】
また本発明のカップ付き女性用衣類では、通気孔は、少なくとも下縁湾曲溝と縦溝とが交わる部分に設けられている、ことを特徴としてもよい。このようにすれば、通気孔からカップ部内部に流入した空気は、下縁湾曲溝と縦溝とに分かれて効率よく流れていくため、カップ部内部の通気性のより一層の向上を図ることができる。
【0015】
また本発明のカップ付き女性用衣類では、縦溝内には凹凸部が設けられている、ことを特徴としてもよい。このようにすれば、縦溝内を流れる空気の流出速度を高めてカップ部内部の通気性のより一層の向上を図ることができる。
【0016】
また本発明のカップ付き女性用衣類では、縦溝は、カップ部内面に設けられる複数の隆起部の間に設けられている、ことを特徴としてもよい。このようにすれば、複数の隆起部の間に縦溝が形成される。
【0017】
また本発明のカップ付き女性用衣類では、カップ部はカップとワイヤー部とを備えており、下縁湾曲溝は、カップ内面に設けられる隆起部と、当該カップ内面の下縁湾曲部に沿って縫着されるワイヤー部と、の間に設けられていることを特徴としてもよい。このカップ付き女性用衣類では、下縁湾曲溝は、カップ内面に設けられる隆起部と、当該カップ内面の下縁湾曲部に沿って縫着されるワイヤー部との間に設けられる。
【0018】
本発明のカップ付き女性用衣類は、左右一対のカップ部を備えたカップ付き女性用衣類であって、着用状態で乳房の下縁基底線に沿うようにカップ部内側の下縁湾曲部に設けられた空気を通すための下縁湾曲溝と、下縁湾曲溝からカップ部の上縁部に向かって延びるように、カップ部内面に設けられる縦溝と、を備え、下縁湾曲溝の底面の少なくとも一部は、メッシュ構造部材により構成されている、ことを特徴とする。
【0019】
このカップ付き女性用衣類では、カップ部内側の下縁湾曲部に下縁湾曲溝が設けられているため、着用状態で乳房の下縁基底線に沿う部分とカップ部との間に空間が生じる。しかも下縁湾曲溝の底面の少なくとも一部はメッシュ構造部材により構成されているため、当該メッシュ構造部材を介してカップ部内部に流入した空気が下縁湾曲溝内を流動する。したがって、乳房の下縁基底線に沿う部分で発生した熱の大部分は、下縁湾曲溝に流れ込んでカップ部外部へ流れ出る空気とともに取り除かれて、カップ部内部での蒸れが抑えられる。また、下縁湾曲溝に流入した空気を縦溝を通してカップ部の上縁部から放出することが可能となるため、空気の循環効率が高められて通気性の一層の向上が図られる。
【0020】
また本発明のカップ付き女性用衣類では、縦溝は、カップ部頂部を挟んで少なくとも2本設けられている、ことを特徴としてもよい。このカップ付き女性用衣類では、カップ部頂部を挟んで縦溝が設けられているため、カップ部頂部に位置する乳頭によって空気の流れが妨げられることがなくなり、縦溝を通して空気をカップ部外部へ効率よく放出することができる。また、乳頭が縦溝に当たるおそれがないため、着用時に乳頭がこすれて痛みを生ずるおそれもない。
【0021】
また本発明のカップ付き女性用衣類では、縦溝内には凹凸部が設けられている、ことを特徴としてもよい。このようにすれば、縦溝内を流れる空気の流出速度を高めてカップ部内部の通気性のより一層の向上を図ることができる。
【0022】
また本発明のカップ付き女性用衣類では、縦溝は、カップ部内面に設けられる複数の隆起部の間に設けられている、ことを特徴としてもよい。このようにすれば、複数の隆起部の間に縦溝が形成される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかるカップ付き女性用衣類としてのブラジャー10を示す斜視図である。
【0025】
図示のとおり、ブラジャー10は一対のカップ部12、肩ストラップ14、脇布16を備えている。このブラジャー10は左右が対称であるため、一方のみについて説明する。
【0026】
カップ部12は、ブラカップ18とワイヤー部20とを備えている。ブラカップ18は、ポリウレタン、不織布、樹脂発泡体やその他の樹脂などの厚みのある成型可能な材料からなるシート状のカップ用基材の表裏面に、織布、編物などを重ね合わせたシート状物の積層体を、例えば真空成型法あるいは熱プレス法を用いてモールド成型したものである。
【0027】
ワイヤー部20は、乳房の形状を整えるために金属や合成樹脂、繊維強化合成樹脂などからなるワイヤーをバイアステープなどで被覆してなるものである。
【0028】
図2に、このカップ部12を内側から見た平面図を示す。本実施形態にかかるブラジャー10では、カップ部12の内側の構造に特徴がある。すなわち、図2に示すように、ブラカップ18内面の下縁湾曲部には、ワイヤー部20が弧を描くように縫着されている。また、ブラカップ18の内面には3つの隆起部22が設けられている。これら隆起部22は、ブラカップ18をモールド成型する際に金型によって一体的に成型されたものである。そして、これら隆起部22とワイヤー部20との間に、着用状態で乳房の下縁基底線(バージスライン)に沿うように下縁湾曲溝24が設けられている。この下縁湾曲溝24の幅は、広いところで1〜2cm、狭いところで0.5〜1cmあり、一方深さは3〜8mmある。
【0029】
また、3つの隆起部22の間には、下縁湾曲溝24からブラカップ18の上縁部26に向かって延びる2本の縦溝28が設けられている。これら2本の縦溝28は、平行もしくは上広がりに設けるのが好ましく、またブラカップ18の頂部を挟むように設けることが好ましい。この縦溝28の幅は、広いところで1〜2cm、狭いところで0.5〜1cmあり、一方深さは1.5〜8mmである。
【0030】
ここで縦溝28は、図3の断面図に示すように最も深い箇所がブラカップ18の頂部位置まで、より好ましくは頂部位置を越えて伸びるように設けることが望ましい。このようにすれば、縦溝28内を流れる空気の流出速度を高めてカップ部12内部の通気性の向上を図ることができる。
【0031】
そして、下縁湾曲溝24内には、図1〜図3に示すようにブラカップ18の内面と外面とを連絡する4個の通気孔30が設けられている。ここでこれらの通気孔30は、図示の通り少なくとも下縁湾曲溝24と縦溝28とが交わる部分に設けられていることが好ましい。このようにすれば、通気孔30からカップ部12内部に流入した空気は、下縁湾曲溝24と縦溝28とに分かれて効率よく流れていくため、カップ部12内部の通気性の向上を図ることができる。また、縦溝28内であってブラカップ18の上縁部26付近にも通気孔32が設けられており、縦溝28内の通気性の向上が図られている。ここで、これらの通気孔30,32の大きさは、溝幅と比べて小さくすることが好ましい。このようにすれば、カップ部12内部への空気の吸引力が大きくなる。
【0032】
なお、本実施形態にかかるブラジャー10では、カップ部12の外面には薄手の装飾布が被覆されているため、通気孔30,32を通して肌が露見することがないようになっている。
【0033】
図4は、図1におけるIV−IV線に沿った断面図を示している。図示の通り、ブラカップ18の内面には隆起部22とワイヤー部20との間に設けられた下縁湾曲溝24、および隆起部22の間に設けられた2本の縦溝28が存在しており、これらの溝24,28によって乳房の表面から離間した空間が形成されている。
【0034】
次に、図5〜図7を参照して本実施形態にかかるブラジャー10の通気作用について説明する。
【0035】
図6は、安静時など乳房が下方位置にある状態でのカップ部12と乳房との関係を示している。図示の通り、乳房が下方位置にある状態では、隆起部22とワイヤー部20との間に設けられた下縁湾曲溝24により、乳房の下縁基底線に沿う部分に空間が形成されている。したがって、この状態では図5に示すように下縁湾曲溝24内に設けられた通気孔30からカップ部12内部に流入した空気は体幹で暖められ、暖かい空気は上昇するという物理現象により、図中の矢印で示すように下縁湾曲溝24内および縦溝28内を通って、ブラカップ18の上縁部26よりカップ部12外部へ流出する。
【0036】
一方、図7は運動時など乳房が揺れて上方位置にある状態でのカップ部12と乳房との関係を示している。図示の通り、乳房が上方位置にある状態では、乳房下部とカップ部12との間に広い空間40が生じる。この空間40は減圧状態にあるため、通気孔30を介してのカップ部12内部への空気の流入が促進される。そして、カップ部12内部において体幹で暖められた空気が、物理現象により、図5中の矢印で示すように下縁湾曲溝24内および縦溝28内を通って、ブラカップ18の上縁部26よりカップ部12外部へ流出する。このように運動時においては、図7に示すように乳房が上方に位置することにより、乳房下部とカップ部12との間に減圧状態の広い空間40が形成され、カップ部12内部への空気の流入が促進され、図6に示すように乳房が下方位置へ戻るにしたがって当該減圧空間40内の空気が下縁湾曲溝24および縦溝28を通ってカップ部12外部へ押し出される。このように、運動時においては乳房が上下動することに基づく、いわゆるふいご作用によって、カップ部12内部と外部との間で空気の循環が促進される。よって、カップ部12内での通気性が向上し、蒸れの抑制が図られる。
【0037】
次に、本実施形態のブラジャー10の作用および効果について説明する。
【0038】
本実施形態にかかるブラジャー10では、ブラカップ18内面に設けられる隆起部22と、当該ブラカップ18内面の下縁湾曲部に沿って縫着されるワイヤー部20との間に下縁湾曲溝24が設けられているため、着用状態で乳房の下縁基底線に沿う部分とカップ部12との間に空間が生じる。しかも下縁湾曲溝24には通気孔30が設けられているため、当該通気孔30を介して下縁湾曲溝24とカップ部12外部との間で空気の循環が起こる。したがって、乳房の下縁基底線に沿う部分で発生した熱の大部分は、下縁湾曲溝24に流れ込んでカップ部12外部へ流れ出る空気とともに取り除かれて、カップ部12内部での蒸れを抑制することができる。
【0039】
また本実施形態にかかるブラジャー10では、下縁湾曲溝24に流入した空気は縦溝28を通してブラカップ18の上縁部26からも放出されるため、空気の循環効率が高められて通気性の一層の向上を図ることができる。
【0040】
また本実施形態にかかるブラジャー10では、ブラカップ18の頂部を挟んで縦溝28が設けられているため、ブラカップ18頂部に位置する乳頭によって空気の流れが妨げられることがなくなり、縦溝28を通して体幹で暖められた空気をカップ部12外部へ効率よく放出することができる。また、乳頭が縦溝28に当たるおそれがないため、着用時に乳頭がこすれて痛みを生ずるおそれもない。
【0041】
また本実施形態にかかるブラジャー10では、通気孔30は縦溝28と下縁湾曲溝24との交わる部分に設けられているため、通気孔30からカップ部12内部に流入した空気を、下縁湾曲溝24と縦溝28とに分けて効率よく流すことができ、カップ部12内部の通気性のより一層の向上を図ることができる。
【0042】
また本実施形態にかかるブラジャー10では、縦溝28内であってブラカップ18の上縁部26付近にも通気孔32が設けられているため、通気性のより一層の向上を図ることができる。
【0043】
また本実施形態にかかるブラジャー10では、複数の隆起部22の間に縦溝28が形成されているため、カップ部12に丸みを出しやすく、かつカップ部12の強度が上がり、造形性の向上を図ることができる。
【0044】
なお、上記した実施形態では縦溝28が2本のブラジャー10について説明したが、この縦溝28の数は2本に限定されることなく3本以上であってもよく、3〜6本が好ましい。図8は、縦溝28を3本有する本実施形態のブラジャー10の変形例を示している。これら3本の縦溝28は、ブラカップ18内面の4個の隆起部22の間に形成されている。この場合でも、縦溝28はブラカップ18頂部を挟むように設けると好ましい。また、図示の通り少なくとも縦溝28と下縁湾曲溝24との交わる部分に通気孔30を設けると好ましい。このようにすれば、カップ部12内での通気性のより一層の向上を図ることができる。
【0045】
(第2実施形態)
以下、図9および図10を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態において説明した要素と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0046】
図9は、本発明の第2実施形態にかかるブラジャー10の構成を示す斜視図であり、図10は本実施形態にかかるブラジャー10のカップ部12を内側から見た平面図である。
【0047】
本実施形態のブラジャー10では、カップ部12下縁の構造が上記した第1の実施形態と相違している。すなわち、本実施形態のブラジャー10では、ワイヤー部20はメッシュ構造部材50を介してブラカップ18の下縁と連結されている。このメッシュ構造部材50は、メッシュ布やメッシュ状に形成された樹脂部材などから構成されている。そして、下縁湾曲溝24はブラカップ18内面に設けられる隆起部22と、当該ワイヤー部20との間に設けられており、当該メッシュ構造部材50が下縁湾曲溝24の一部を構成している。そして、このメッシュ構造部材50を通して下縁湾曲溝24内に空気が出入りするようになっている。
【0048】
なお、本実施形態ではカップ部12は土台布52に縫着されており、この土台布52の側縁から脇布16が延びている。
【0049】
このように、本実施形態にかかるブラジャー10では、ブラカップ18内面に設けられる隆起部22と、当該ブラカップ18の下縁にメッシュ構造部材50を介して縫着されるワイヤー部20との間に下縁湾曲溝24が設けられているため、着用状態で乳房の下縁基底線に沿う部分とカップ部12との間に空間が生じる。しかも下縁湾曲溝24にはメッシュ構造部材50を介して空気が流入出するため、下縁湾曲溝24とカップ部12外部との間で空気の循環が起こる。したがって、乳房の下縁基底線に沿う部分で発生した熱の大部分は、下縁湾曲溝24に流れ込んでカップ部12外部へ流れ出る空気とともに取り除かれて、カップ部12内部での蒸れを防止することができる。
【0050】
また本実施形態にかかるブラジャー10では、下縁湾曲溝24に流入した空気は縦溝28を通してブラカップ18の上縁部26からも放出されるため、空気の循環効率が高められて通気性の一層の向上を図ることができる。
【0051】
また本実施形態にかかるブラジャー10では、ブラカップ18の頂部を挟んで縦溝28が設けられているため、ブラカップ18の頂部に位置する乳頭によって空気の流れが妨げられることがなくなり、縦溝28を通して体幹で暖められた空気をカップ部12外部へ効率よく放出することができる。また、乳頭が縦溝28に当たるおそれがないため、着用時に乳頭がこすれて痛みを生ずるおそれもない。
【0052】
なお、上記した実施形態では縦溝28が2本のブラジャー10について説明したが、この縦溝28の数は2本に限定されることなく3本以上であってもよく、3〜6本が好ましい。
【0053】
図11は、縦溝28を3本有する本実施形態のブラジャー10の変形例を示している。これら3本の縦溝28は、ブラカップ18内面の4個の隆起部22の間に形成されている。また、この変形例ではブラカップ18はシームレスタイプのものではなく、上カップ18aと下カップ18bとからなる2枚接ぎのタイプのものである。そしてメッシュ構造部材50は、下カップ18bの下縁とワイヤー部20との間に縫着されており、当該メッシュ構造部材50が下縁湾曲溝24の一部を構成している。このメッシュ構造部材50の両側縁は、上カップ18aの下縁に設けられた溝56と連絡されており、このメッシュ構造部材50と上カップ18aの溝とで下縁湾曲溝24が構成されている。この場合、図示の通り3本の縦溝28はメッシュ構造部材50の部分を起点にブラカップ18の上縁部26に向かって延びるように設けると好ましい。このようにすれば、カップ部12内での通気性の向上を図ることができる。
【0054】
この変形例にかかるブラジャー10では、メッシュ構造部材50からカップ部12内部に流入した空気は、体幹で暖められた後に上カップ18aの溝56および縦溝28を通って上カップ18aの上縁部26からカップ部12外部に放出される。
【0055】
なお、特公昭35−11440号公報には、カップ部の下縁湾曲部にメッシュ構造の布を縫着してなるブラジャーが開示されている。しかし、このブラジャーはメッシュ素材によりカップ部に融通性、揺動性を持たせて運動性の向上を図ったものであり、カップ部内部での通気性改善を目的として構成されたものではない。またこのメッシュ構造の布を通して乳房の表面に空気が当たることがあっても、カップ部内部で空気が流動する溝が存在しないため、通気性が良いものとは言えない。これに対し本実施形態にかかるブラジャー10では、ブラカップ18の下縁湾曲部に下縁湾曲溝24を有しているため、メッシュ構造部材50を通してカップ部12内部に流入した空気が下縁湾曲溝24内を流動してブラカップ18の上縁部26から流出する。しかも、ブラカップ18の内面には縦溝28が設けられているため、この縦溝28を介しても空気がカップ部12外部へ流出する。このように、下縁湾曲溝24および縦溝28を通してカップ部12内部の熱をカップ部12外部へ効率よく放出することができるため、カップ部12内部での蒸れを防止することができる。
【0056】
以上、第1および第2の実施形態において本発明のブラジャー10を説明したが、これらブラジャー10の内部に蛍光性の粉末を散在させたものを実際に着用し、乳房が揺れる程度に軽い運動を行って暗環境下で空気の流れを観察した。その結果、蛍光性の粉末が縦溝28および下縁湾曲溝24を通ってブラカップ18の上縁部26より放出される様子が実験により観察されている。このように、上記した実施形態にかかるブラジャー10では、通気性が極めて優れているため、カップ部12内側での蒸れを効果的に抑制することができる。
【0057】
次に、本発明者の行ったブラジャーの通気性試験について説明する。
【0058】
(使用サンプル)
第1実施形態において説明した下縁湾曲溝と当該下縁湾曲溝内に設けられる通気孔とを有するウレタンブラジャー(図1参照;図14〜16において「溝穴」と称す)と、第2実施形態において説明した下縁湾曲溝とメッシュ構造部材とを有するウレタンブラジャー(図8参照;図14〜16において「溝メッシュ」と称す)を用いた。なお、比較のためカップ部内面に溝を有しない従来のウレタンブラジャーをも用いて通気性試験を行った。
【0059】
(環境設定条件)
通気性試験は、室温30℃、室内湿度70%RHの条件下で行った。
【0060】
(使用モニタ)
モニタとして、20代で、B70の女性を使用した。
【0061】
(試験内容)
図12に示すように、まずブラジャーを着用して安静にした状態で、センサを装着して皮膚温の測定を開始した。
【0062】
次に、5分間の運動を行い、運動終了後は再び安静の状態を保った。その後、ブラジャーを外して皮膚温の測定を終了した。
【0063】
そして、深部温(鼓膜温)が測定開始時の温度に戻った後、再び他のブラジャーを着用し、上記した皮膚温の測定を行った。
【0064】
なお、皮膚温は、図13に示すように(i)ブラジャー外部の胸部正中線上、(ii)カップ部内部の上部位置、(iii)カップ部内部の下部位置の三カ所で測定した。
【0065】
図14〜図16は、それぞれ(i)〜(iii)の測定個所における皮膚温の温度変化の様子を表している。
【0066】
図示のとおり、本発明の実施形態にかかるブラジャーでは、いずれの測定個所においても従来のブラジャーと比べて皮膚温の低下が見られる。これは、本発明の実施形態にかかるブラジャーではカップ部内部での通気性が改善されたからと考えられる。
【0067】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、図17の断面図に示すように、縦溝28内であって下縁湾曲溝24の近傍に凹凸部60を設けてもよい。このようにすれば、縦溝28内での空気の流出速度を高めてカップ部12内部の通気性のより一層の向上を図ることができる。この凹凸部60による通気性の向上は実験によっても確かめられており、これは空気の通路に山と谷が存在することで、図17中の矢示の通り空気の回転が起きて流出速度が速くなったからであると推測される。なお、凹凸部60の山の数は限定されないが、2個程度が好ましい。
【0069】
また、上記した実施形態ではモールド成型によりブラカップ18の縦溝28を形成したが、ポリウレタンや不織布などからなる厚みのあるカップ用基材にテープ状布を縫着し、その箇所の厚みを押さえることによって縦溝28を形成してもよい。また、ダブルラッシェルという素材自体に凹凸のある布を用い、この溝を縦方向に使うことによって縦溝28を形成してもよい。この場合、ダブルラッシェルの溝の幅や深さは、上記した実施形態のものと同程度のものに形成しておく必要がある。なお、モールド成型により縦溝28を形成した場合は、縦溝28の深さや幅を自由に設定することができ、また繰り返しの着用や洗濯による変形の少ない耐久性に優れたものを得ることができるので好ましい。
【0070】
また、第2実施形態にかかるブラジャー10において、縦溝28内に通気孔を設けて通気性の更なる向上を図ってもよい。
【0071】
【発明の効果】
本発明のカップ付き女性用衣類では、カップ部内側の下縁湾曲部に下縁湾曲溝が設けられているため、着用状態で乳房の下縁基底線に沿う部分とカップ部との間に空間が生じる。しかも下縁湾曲溝に空気を案内する空気案内手段を有しているため、当該空気案内手段を介して下縁湾曲溝とカップ部外部との間で空気の循環が起こる。その結果、乳房の下縁基底線に沿う部分で発生した熱の大部分を、下縁湾曲溝に流れ込んでカップ部外部へ流れ出る空気とともに取り除くことができるため、カップ部内部での蒸れを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるブラジャーを示す斜視図である。
【図2】カップ部を内側から見た平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面を示す断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面を示す断面図である。
【図5】ブラジャー内部での空気の流れを示す斜視図である。
【図6】乳房が下方位置にある状態でのカップ部と乳房との関係を示す側断面図である。
【図7】乳房が上方位置にある状態でのカップ部と乳房との関係を示す側断面図である。
【図8】第1実施形態にかかるブラジャーの変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかるブラジャーを示す斜視図である。
【図10】カップ部を内側から見た平面図である。
【図11】第2実施形態にかかるブラジャーの変形例を示す斜視図である。
【図12】通気性試験における試験内容を示すタイムチャートである。
【図13】通気性試験における皮膚温の測定箇所を示す図である。
【図14】カップ部外部の胸部正中線上の皮膚温の温度変化の様子を示すグラフである。
【図15】カップ部内部の上部位置での皮膚温の温度変化の様子を示すグラフである。
【図16】カップ部内部の下部位置での皮膚温の温度変化の様子を示すグラフである。
【図17】縦溝内に設けられた凹凸部と空気の流れを示す断面図である。
【符号の説明】
10…ブラジャー、12…カップ部、18…ブラカップ、20…ワイヤー部、22…隆起部、24…下縁湾曲溝、28…縦溝、30…通気孔、50…メッシュ構造部材、60…凹凸部。
Claims (10)
- 左右一対のカップ部を備えたカップ付き女性用衣類であって、
着用状態で乳房の下縁基底線に沿うように前記カップ部内側の下縁湾曲部に設けられる空気を通すための下縁湾曲溝と、
前記下縁湾曲溝から前記カップ部の上縁部に向かって延びるように、前記カップ部内面に設けられる縦溝と、
前記下縁湾曲溝に設けられており、前記カップ部内面と前記カップ部外面とを連絡する通気孔と、
を備えることを特徴とするカップ付き女性用衣類。 - 前記縦溝は、前記カップ部頂部を挟んで少なくとも2本設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のカップ付き女性用衣類。
- 前記通気孔は、少なくとも前記下縁湾曲溝と前記縦溝とが交わる部分に設けられている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカップ付き女性用衣類。
- 前記縦溝内には凹凸部が設けられている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカップ付き女性用衣類。
- 前記縦溝は、前記カップ部内面に設けられる複数の隆起部の間に設けられている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカップ付き女性用衣類。
- 前記カップ部はカップとワイヤー部とを備えており、前記下縁湾曲溝は、前記カップ内面に設けられる前記隆起部と、当該カップ内面の下縁湾曲部に沿って縫着される前記ワイヤー部と、の間に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のカップ付き女性用衣類。
- 左右一対のカップ部を備えたカップ付き女性用衣類であって、
着用状態で乳房の下縁基底線に沿うように前記カップ部内側の下縁湾曲部に設けられた空気を通すための下縁湾曲溝と、
前記下縁湾曲溝から前記カップ部の上縁部に向かって延びるように、前記カップ部内面に設けられる縦溝と、を備え、
前記下縁湾曲溝の底面の少なくとも一部は、メッシュ構造部材により構成されている、ことを特徴とするカップ付き女性用衣類。 - 前記縦溝は、前記カップ部頂部を挟んで少なくとも2本設けられている、ことを特徴とする請求項7に記載のカップ付き女性用衣類。
- 前記縦溝内には凹凸部が設けられている、ことを特徴とする請求項7又は8に記載のカップ付き女性用衣類。
- 前記縦溝は、前記カップ部内面に設けられる複数の隆起部の間に設けられている、ことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のカップ付き女性用衣類。
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