以下に、本願の開示する通信装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
続いて、実施例2に係る通信装置について説明する。ここで、本実施例では、利用者により携帯される携帯端末が電界通信および無線通信を併用して、物品に付されたRFID(Radio Frequency IDentification)タグ、いわゆるタグとの間で通信を行うことにより、タグを検索する場合を想定する。なお、上記の「携帯端末」は、上記の実施例1で言う「通信装置」に含まれる。また、「タグ」は、上記の実施例1で言う「他の通信装置」に含まれる。
[システム構成]
図3は、実施例2に係るタグ検索システムの構成を示す図である。図3に示すタグ検索システム100は、携帯端末10と、タグ30A〜タグ30Bとを有する。なお、図3に示す例では、携帯端末が1つ、タグが2つ存在する場合を図示したが、開示の装置の適用範囲は図示の構成に限定されない。すなわち、携帯端末が複数存在する場合やタグが1つまたは3つ以上存在する場合にも開示の装置を同様に適用できる。なお、タグ30A及びタグ30Bは、両者を区別なく説明する場合にタグ30と総称する。
携帯端末10は、利用者によって携帯される通信装置である。かかる携帯端末10の一態様としては、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)やPDA(Personal Digital Assistant)などの移動体端末を採用できる。また、伝送媒体20の一態様としては、携帯端末10を携帯する者の人体を採用できる。なお、本実施例では、可搬の通信装置を用いる場合を説明するが、固定の通信装置、例えば計算機などがタグを検索する場合にも開示の装置を同様に適用できる。また、本実施例では、人体を伝送媒体とする場合を説明するが、低周波帯および高周波帯の電波を供給した場合に図2A及び図2Bに示した特性を示すものであれば伝送媒体20とすることができる。
この携帯端末10は、通信事業者であるキャリア(carrier)によって提供されるキャリア通信の機能の他、電界通信および無線通信の2種類の対タグ通信の機能を有する。かかる対タグ通信のうち電界通信を行う場合には、携帯端末10は、低周波帯域の電波を伝送媒体20に供給することにより伝送媒体20を電界通信用のアンテナとし、電界領域60内に所在するタグ30との間で通信を行う。また、無線通信を行う場合は、携帯端末10は、高周波帯域の電波を伝送媒体20に供給することにより伝送媒体20を無線通信用のアンテナとし、無線領域80内に所在するタグ30との間で通信を行う。これら電界領域60および無線領域80は、それぞれ異なる大きさの領域が形成され、伝送媒体20に高周波帯の電波が供給される無線領域80の方が電界領域60よりも大きい領域が形成される。
携帯端末10は、電界領域60および無線領域80の大きさがそれぞれ異なることを利用して、携帯端末10に対するタグ30の位置を判別する。これを説明すると、携帯端末10は、電界通信および無線通信を併用して、各対タグ通信の通信圏に所在するタグ30を対象にタグ30に予め付与されたタグID(identifier)を問い合わせる。このとき、携帯端末10は、無線通信によるタグIDの問合せおよび電界通信によるタグIDの問合せの両方に応答したタグ30については携帯端末10及びタグ30が接触していると判別する。また、携帯端末10は、無線通信によるタグIDの問合せだけに応答したタグ30については携帯端末10及びタグ30が近接していると判別する。また、携帯端末10は、無線通信によるタグIDの問合せおよび電界通信によるタグIDの問合せのいずれについても応答がないタグ30については携帯端末10及びタグ30が接触も近接もしていないと判別する。
なお、ここで言う「接触」とは、タグ30が電界領域60内に所在する状態を指し、携帯端末10が装着される伝送媒体20とタグ30が付される物品とが直接的または間接的に触れ合っている状態だけでなく、両者が微少な領域を挟んで隔てられた状態も含む。また、「近接」とは、タグ30が電界領域60よりも広い無線領域80内に所在し、かつ携帯端末10が装着される伝送媒体20とタグ30が付される物品とが接触はしていない状態を指す。
このように、電界通信の機能および無線通信の機能を併せ持つ携帯端末10では、タグ30が携帯端末10に近接しているのか、携帯端末10と接触しているのか、あるいは携帯端末10と近接も接触もしていないのかを判別できる。これらの判別によって、携帯端末10は、人の周りにどのような物品が存在し、その中でも人がどの物品に触れているかというセンシング(sensing)を行うことができる。かかる「物品に触れる」という行動は、人の意図を強く反映した行動であり、コンピュータが人の行動を推定する上で有用な情報となり得る。これに加えて、携帯端末10は、「近くにあるものの触っていない物品」についてもセンシングできる。かかる「近くにあるものの触っていない物品」についても、「物品に触れる」という人の行動と同等に、コンピュータが人の行動を推定する上で有用な情報となり得る。
タグ30は、リーダとの間で通信を行うRFIDタグであり、電界通信および無線通信の2種類の対リーダ通信の機能を有する。ここで言う「リーダ」とは、対タグ通信の機能を有する装置の総称であり、その一態様として携帯端末10を含む。一例としては、携帯端末10から無線通信によるタグIDの問合せを受け付けた場合には、タグ30は、自装置に予め付与されたタグIDを無線通信を用いて携帯端末10に応答する。また、携帯端末10から電界通信によるタグIDの問合せを受け付けた場合には、タグ30は、自装置に予め付与されたタグIDを電界通信を用いて携帯端末10に応答する。なお、タグ30は、任意の物品に付すことができる。かかる物品の一例としては、椅子、箱や机などが挙げられる。また、タグ30には、貼り付け対象とする物品に応じて、ラベル型、カード型、コイン型やスティック型など任意の形状のタグを採用できる。
[携帯端末の構成]
続いて、本実施例に係る携帯端末の構成について説明する。図4は、実施例2に係る携帯端末の構成を示すブロック図である。図4に示すように、携帯端末10は、対タグ通信部11と、ホスト(host)12とを有する。なお、図4の例では、図4に示した機能部以外にも既知の携帯端末が有する各種の機能部を有するものとする。一例としては、キャリアが提供する通信機能の他、操作ボタンなどの入力デバイス、表示部などの表示デバイスやタッチパネルなどの入出力デバイスが挙げられる。
対タグ通信部11は、ホスト12からの指示に基づきタグ30との間で通信を行う通信部である。この対タグ通信部11は、図4に示すように、インターフェース11aと、スイッチ11bと、導体11cと、信号処理回路11dと、高周波回路11eと、低周波回路11fとを有する。なお、高周波回路は、上記の実施例1で言う「第1の通信部」に含まれる。また、低周波回路は、上記の実施例1で言う「第2の通信部」に含まれる。また、導体は、上記の実施例1で言う「導体部」に含まれる。
このうち、インターフェース(interface)11aは、他の機器、例えばホスト12との間で通信を行うための処理部である。一例として、インターフェース11aは、ホスト12から信号処理回路11bへデータを出力する。また、インターフェース11aは、信号処理回路11bからホスト12へデータを出力する。
また、スイッチ(switch)11bは、信号の入出力先を切り替える回路である。かかるスイッチ11bの一例としては、物理的に入出力先を切り替えるリレースイッチなどを採用できる。また、他の一例としては、電子的に入出力先を切り替える半導体などのスイッチング素子を採用できる。
このスイッチ11bは、高周波回路11e及び低周波回路11fと導体11cとの間に介在し、後述の判別部12bbからの指示にしたがって導体11cの接続先を高周波回路11eへ切り替えたり、また、低周波回路11fへ切り替えたりする。一例として、無線通信を行う場合には、スイッチ11bは、高周波回路11eと導体11cとを接続する。また、電界通信を行う場合には、スイッチ11bは、低周波回路11fと導体11cとを接続する。
また、導体11cは、導電性を有する物質である。例えば、後述の高周波回路11eによって高周波信号が入力された場合には、導体11cは、変調された高周波数帯域の電波を伝送媒体20へ伝搬させる。この結果、伝送媒体20が無線通信用のアンテナとして機能し、電界領域60より広い無線領域80が伝送媒体20の周辺に形成されることになる。また、後述の低周波回路11fによって低周波信号が入力された場合には、導体11cは、低周波数帯域の電波を伝送媒体20へ伝搬させる。この結果、伝送媒体20が電界通信用のアンテナとして機能し、伝送媒体20の表面に電波の電界領域60が形成されることになる。なお、導体11cの一例としては、鉄やアルミニウムなどの金属が挙げられる。
信号処理回路11dは、入力される信号に対して各種の処理を実行する回路である。一例としては、タグ30へデータを送信する場合には、信号処理回路11dは、ホスト12から入力された送信データ、例えばタグ30に自装置のタグIDを応答させるコマンドデータに冗長符号を付加したり、また、符号化したりする。そして、信号処理回路11dは、先に付加処理および符号化処理を行ったデータを高周波回路11e及び低周波回路11fへ出力する。他の一例としては、タグ30からデータを受信した場合には、信号処理回路11dは、高周波回路11eまたは低周波回路11fから入力されたデータ、例えばタグ30からの応答結果であるタグ30のタグIDを復号化したり、誤り訂正したりする。そして、信号処理回路11dは、先に復号化処理および誤り訂正処理を行ったデータをホスト12へ出力する。
高周波回路11eは、高周波信号によりタグ30との間で無線通信を行う回路である。一例としては、タグ30へデータを送信する場合には、高周波回路11eは、信号処理回路11dから入力されたデータ信号を高周波帯の信号に変調した上でその高周波信号を後段のスイッチ11bへ出力する。このとき、スイッチ11bにより高周波回路11eと導体11cとが接続されている場合には導体11cへ高周波信号が供給されるが、両者が接続されていない場合には高周波信号は導体11cに供給されない。かかる変調周波数の一態様としては、2.5GHzを始めその周辺など、公知の技術で使用される高周波帯域を任意に採用できる。他の一例としては、タグ30からデータを受信した場合には、高周波回路11eは、導体11cから入力された高周波信号からデータ信号を検波(復調)した上でそのデータ信号を信号処理回路11dへ出力する。
低周波回路11fは、低周波信号によりタグ30との間で電界通信を行う回路である。一例としては、タグ30へデータを送信する場合には、低周波回路11fは、信号処理回路11dから入力されたデータ信号を低周波帯の信号に変調した上でその低周波信号を後段のスイッチ11bへ出力する。このとき、スイッチ11bにより低周波回路11eと導体11cとが接続されている場合には導体11cへ低周波信号が供給されるが、両者が接続されていない場合には低周波信号は導体11cに供給されない。かかる変調周波数の一態様としては、10MHzを始めその周辺など、公知の技術で使用される低周波帯域を任意に採用できる。他の一例としては、タグ30からデータを受信した場合には、低周波回路11fは、導体11cから入力された低周波信号からデータ信号を検波した上でそのデータ信号を信号処理回路11dへ出力する。
ホスト12は、携帯端末10の全体制御を行う制御部であり、対タグ通信部11のホストとして機能する。このホスト12は、携帯端末10の基本機能、例えばキャリア通信機能を提供する他、図4に示すように、物品テーブル12aと、判別部12bとを有する。
このうち、物品テーブル12aは、タグの識別情報であるタグIDとタグが貼り付けられた物品との対応関係が定義されたテーブルである。
図5は、物品テーブルの一例を示す図である。図5の例では、携帯端末10が検索対象とするタグのIDを保持しておき、保持したタグID「α」〜「δ」の4つのタグを対象に検索を行う場合を想定する。図5に示すように、タグID「α」のタグが物品「A」に貼り付けられていることを示す。また、タグID「β」のタグが物品「B」に貼り付けられていることを示す。また、タグID「γ」のタグが物品「C」に貼り付けられていることを示す。また、タグID「δ」のタグが物品「D」に貼り付けられていることを示す。
判別部12bは、無線通信および電界通信を用いてタグ30を検索することにより得られた通信方式別のタグIDの応答結果に基づいて、携帯端末10が装着された伝送媒体20及びタグ30が付された物品の位置関係を判別する処理部である。なお、以下では、電界通信および無線通信を併用して、各対タグ通信の通信圏に所在するタグ30を対象にタグ30にタグIDを問い合わせることを「タグの検索」と呼ぶ。
図6は、伝送媒体及び物品の位置関係の判別ロジックを説明するための図である。図6に示す記号「○」は、携帯端末10がタグ30の検索に成功したことを示す。図6に示す記号「×」は、携帯端末10がタグ30の検索に失敗したことを示す。
図6に示す例では、無線通信によるタグ30の検索に成功し、かつ電界通信によるタグ30の検索に成功した場合には、携帯端末10が携帯される伝送媒体20がタグ30と接触していると判別部12bに判別させることを示す。また、無線通信によるタグ30の検索に成功し、かつ電界通信によるタグ30の検索に失敗した場合には、携帯端末10が携帯される伝送媒体20がタグ30と近接していると判別部12bに判別させることを示す。また、無線通信によるタグ30の検索および電界通信によるタグ30の検索の両方に失敗した場合には、携帯端末10が携帯される伝送媒体20がタグ30と近接も接触もしておらず、非近接の位置関係にあると判別部12bに判別させることを示す。なお、図6に示す例では、無線通信によるタグ30の検索に失敗し、かつ電界通信によるタグ30の検索に成功した場合の判別ロジックを図示していない。この場合には、電界通信によるタグ30の検索に成功しているので、両者が接触していると判別させることもできる。
かかる位置関係判別処理の動作の一例について説明する。例えば、判別部12bは、無線通信を行うために、スイッチ11bを高周波回路11eと導体11cとを接続するように切り替える。そして、判別部12bは、予め通信対象として定められたタグ30に対して、無線通信によりIDを応答させる指令を示すデータをインターフェース11aに出力して、無線領域80内に所在するタグ30にIDを問い合わせる。このようにして、判別部12bは、無線領域80内に所在するタグ30を検索する。そして、判別部12bは、応答されたIDを配列Hに設定する。そして、判別部12bは、応答されたIDの個数を変数Nに設定する。例えば、n個のIDが応答された場合には、判別部12bは、n個のIDを配列H[0]〜H[n−1]に設定し、応答されたIDの個数nを変数Nに設定する。
続いて、判別部12bは、電界通信を行うために、スイッチ11bを低周波回路11fと導体11cとを接続するように切り替える。そして、判別部12bは、予め通信対象として定められたタグ30に対して、電界通信によりIDを応答させる指令を示すデータをインターフェース11aに出力して、電界領域60内に所在するタグ30にIDを問い合わせる。このようにして、判別部12bは、電界領域60内に所在するタグ30を検索する。そして、判別部12bは、応答されたIDを配列Lに設定する。そして、判別部12bは、応答されたIDの個数を変数Mに設定する。例えば、m個のIDが応答された場合には、判別部12bは、m個のIDを配列L[0]〜L[m−1]に設定し、応答されたIDの個数mを変数Mに設定する。
そして、判別部12bは、変数i、jの値を0に設定する。そして、判別部12bは、配列H[i]に設定されたIDと配列L[j]に設定されたIDとが一致するか否かの判定を行う。判別部12bは、肯定判定するか、または変数jの値が変数Mの値と一致するまで、変数jの値を1つずつインクリメントし、繰り返し判定を行う。
ここで、判別部12bは、一致するIDが存在する場合には、配列H[i]に設定されたIDが示すタグを特定する。そして、判別部12bは、特定したタグに対応する物品を物品テーブル12aから特定する。その後、判別部12bは、伝送媒体20及び特定した物品が接触していると判別する。なお、電界領域60内にタグ30が位置しても対応する物品が伝送媒体20と接触しない場合があるが、電界領域60は、伝送媒体20の表面のみに発生するような伝送媒体20からの距離が微少となる領域の電界である。したがって、電界領域60内にタグ30が位置すれば、対応する物品と伝送媒体20との距離は、あたかも接触するような近いものとなる。よって、判別部12bは、電界領域60内にタグ30が位置するにもかかわらず、対応する物品が伝送媒体20と接触しない場合であっても接触していると判別する。
一方、配列H[i]に設定されたIDと配列L[j]に設定されたIDとの比較で一致するIDが存在しない場合には、判別部12bは、配列H[0]に設定されたIDが示すタグ30を特定する。そして、判別部12bは、特定したタグ30に対応する物品を物品テーブル12aから特定する。その後、判別部12bは、伝送媒体20及び特定した物品が近接していると判別する。
そして、判別部12bは、配列H[i]に設定されたIDに対して行った同様の処理を配列H[i+1]に設定されたIDから配列H[N−1]に設定されたIDまで順に行う。
このようにして、判別部12bは、携帯端末10及びタグ30が接触または近接していると判別する。このような判別の結果、伝送媒体20を人間の人体とした場合には、伝送媒体20及び人間に近接する物品の情報を得ることが可能となる。近くにあれば通常人間が触れる可能性が高い物品である場合などには、このような情報は、近くにあるのに人間が触らないという、人間の意図を強く反映した行動を示すものである。それゆえ、本実施例に係る携帯端末10は、伝送媒体20である人間がどういう状況であるのかを推定するにあたって、有益な情報を得ることができる。
図7は、伝送媒体に対する物品の位置関係の一例を示す図である。なお、図7の例では、伝送媒体20として、人間を用いた場合が示されている。なお、図7に示す例では、タグαが物品Aに貼り付けられ、また、タグβが物品Bに貼り付けられ、また、タグγが物品Cに貼り付けられ、また、タグδが物品Dに貼り付けられているものとする。
図7の例では、タグαは、電界領域60内に位置しているので、無線通信および電界通信の両方によって検索される。また、タグβ及びタグγは、電界領域60内に位置してなく、無線領域80内に位置しているので、電界通信によっては検索されずに無線通信によって検索される。また、タグδは、電界領域60内に位置しておらず、かつ無線領域80内に位置していないので、無線通信および電界通信の両方によって検索されない。
このような場合、判別部12bは、伝送媒体20と物品Aとが接触していると判別する。また、判別部12bは、伝送媒体20と物品B及び物品Cとが近接していると判別する。さらに、判別部12bは、伝送媒体20と物品Dとが接触も近接もしていないと判別する。
[タグの構成]
図8は、実施例2に係るタグの構成を示すブロック図である。図8に示すタグ30は、携帯端末10からの問い合わせの指令に応じてIDを応答する。図8に示すように、タグ30は、対リーダ通信部31とスレーブ32とを有する。
対リーダ通信部31は、インターフェース31aと、アンテナ31bと、電極31cと、信号処理回路31dと、高周波回路31eと、低周波回路31fとを有する。
このうち、インターフェース31aは、他の機器、例えばスレーブ32との間で通信を行うためのインターフェースである。一例として、インターフェース31aは、スレーブ32から信号処理回路31dへデータを出力する。また、インターフェース31aは、信号処理回路31dからスレーブ32へデータを出力する。
また、アンテナ31bは、高周波の電波、すなわち無線通信の電波を送受信するアンテナである。例えば、後述の高周波回路31eによって高周波信号が入力された場合には、アンテナ31bは、変調された高周波数帯域の電波を送信する。
また、電極31cは、導電性を有する物質である。また、後述の低周波回路31fによって低周波信号が入力された場合には、電極31cは、低周波数帯域の電波を送信する。なお、電極31cの一例としては、鉄やアルミニウムなどの金属が挙げられる。
信号処理回路31dは、入力される信号に対して各種の処理を実行する回路である。一例としては、携帯端末10へデータを送信する場合には、信号処理回路31dは、スレーブ32から入力された送信データ、例えば自装置のIDを示すデータに冗長符号を付加したり、また、符号化したりする。そして、信号処理回路31dは、先に付加処理および符号化処理を行ったデータを高周波回路31e及び低周波回路31fへ出力する。他の一例としては、携帯端末10からデータを受信した場合には、信号処理回路31dは、高周波回路31eまたは低周波回路31fから入力されたデータ、例えば携帯端末10からの自装置のIDを応答させるコマンドデータを復号化したり、誤り訂正したりする。そして、信号処理回路31dは、先に復号化処理および誤り訂正処理を行ったデータをスレーブ32へ出力する。
高周波回路31eは、高周波信号により携帯端末10との間で無線通信を行う回路である。一例としては、携帯端末10へデータを送信する場合には、高周波回路31eは、信号処理回路31dから入力されたデータ信号を高周波帯の信号に変調した上でその高周波信号を後段のアンテナ31bへ出力する。かかる変調周波数の一態様としては、2.5GHzを始め、その周辺などの高周波帯域を任意に採用できる。他の一例としては、携帯端末10からデータを受信した場合には、高周波回路31eは、アンテナ31bから入力された高周波信号からデータ信号を検波(復調)した上でそのデータ信号を信号処理回路31dへ出力する。
低周波回路31fは、低周波信号により携帯端末10との間で電界通信を行う回路である。一例としては、携帯端末10へデータを送信する場合には、低周波回路31fは、信号処理回路31dから入力されたデータ信号を低周波帯の信号に変調した上でその低周波信号を後段の電極31cへ出力する。かかる変調周波数の一態様としては、10MHzを始め、その周辺などの高周波帯域を任意に採用できる。他の一例としては、携帯端末10からデータを受信した場合には、低周波回路31fは、電極31cから入力された低周波信号からデータ信号を検波した上でそのデータ信号を信号処理回路31dへ出力する。
スレーブ32は、ホスト12の制御を受けて動作する回路である。スレーブ32は、例えば、ASICやFPGAなどの集積回路またはCPUやMPUなどの電子回路である。例えば、スレーブ32は、携帯端末10から送信されたデータを取得し、取得した受信データを解析する。そしてスレーブ32は、解析の結果に応じた処理を実行する。例えば、解析の結果、無線通信により送信されたデータが自装置のIDの問い合わせを示すものである場合には、スレーブ32は、自装置のIDを無線通信で送信するように、IDを示す無線通信の送信データをインターフェース31aに出力する。
また、解析の結果、電界通信により送信されたデータがIDの問い合わせを示すものである場合には、スレーブ32は、自装置のIDを電界通信で送信するように、IDを示す電界通信の送信データをインターフェース31aに出力する。
[処理の流れ]
次に、本実施例に係る位置関係判別処理の流れを説明する。図9は、実施例2に係る位置関係判別処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、携帯端末10の電源がON状態である限り、所定の周期、例えば0.5秒周期、1秒周期、1.5秒周期などで起動される。
[位置関係判別処理]
図9に示すように、判別部12bは、スイッチ11bを高周波回路11eと導体11cとを接続するように切り替える(ステップS101)。続いて、判別部12bは、IDの問い合わせの指令を示す無線通信の送信データをインターフェース11aに出力する(ステップS102)。そして、判別部12bは、無線領域80内に位置するタグから応答されたIDを配列Hに設定する(ステップS103)。
続いて、判別部12bは、ステップS103で応答されたIDの個数を変数Nに設定する(ステップS104)。そして、判別部12bは、スイッチ11bを低周波回路11fと導体11cとを接続するように切り替える(ステップS105)。続いて、判別部12bは、IDの問い合わせの指令を示す電界通信の送信データをインターフェース11aに出力する(ステップS106)。その後、判別部12bは、電界領域60内に位置するタグから応答されたIDを配列Lに設定する(ステップS107)。そして、判別部12bは、ステップS107で応答されたIDの個数を変数Mに設定する(ステップS108)。
そして、判別部12bは、変数iの値を0に設定する(ステップS109)。続いて、判別部12bは、変数jの値を0に設定する(ステップS110)。その後、判別部12bは、配列H[i]に設定されたIDと、配列L[j]に設定されたIDとが一致するか否かを判定する(ステップS111)。ここで、配列H[i]に設定されたIDと、配列L[j]に設定されたIDとが一致する場合(ステップS111肯定判定)には、判別部12bは、配列H[i]に設定されたIDが示すタグに対応する物品を物品テーブル12aから特定する(ステップS112)。そして、判別部12bは、伝送媒体20及び特定した物品が接触していると判別し(ステップS113)、ステップS118へ移行する。
一方、配列H[i]に設定されたIDと、配列L[j]に設定されたIDとが一致しない場合(ステップS111否定判定)には、判別部12bは、変数jの値を1つインクリメントする(ステップS114)。そして、判別部12bは、変数jの値と変数Mの値とが一致するか否かを判別する(ステップS115)。
ここで、変数jの値と変数Mの値とが一致しない場合(ステップS115否定判定)には、判別部12bは、ステップS111へ移行する。一方、変数jの値と変数Mの値とが一致する場合(ステップS115肯定判定)には、判別部12bは、配列H[i]に設定されたIDが示すタグに対応する物品を物品テーブル12aから特定する(ステップS116)。そして、判別部12bは、ステップS116で特定した物品及び伝送媒体20は近接していると判別する(ステップS117)。
続いて、判別部12bは、変数iの値を1つインクリメントする(ステップS118)。その後、判別部12bは、変数iの値と変数Nの値とが一致するか否かを判別する(ステップS119)。ここで、変数iの値と変数Nの値とが一致しない場合(ステップS119否定判定)には、上記ステップS110〜ステップS118の処理を再度行う。一方、変数iの値と変数Nの値とが一致する場合(ステップS119肯定判定)には、処理を終了する。
[実施例2の効果]
上述してきたように、本実施例に係る携帯端末10は、低周波の電界通信の機能と高周波の無線通信の機能とを1つの装置に併せ持たせる場合に、無線通信に際しては、伝送媒体20をアンテナとして使用する。このため、本実施例に係る携帯端末10では、無線通信用のアンテナ装置を設けて無線通信を行う場合よりも、送信時におけるアンテナの利得を向上させることができる。それゆえ、本実施例に係る携帯端末10によれば、上記の実施例1と同様に、通信時の消費電力を抑制できる。
これに関連して、本実施例に係る携帯端末10は、伝送媒体20をアンテナとして使用するので、無線通信を行う場合にチップアンテナなどの専用アンテナを必要としない。このため、本実施例に係る携帯端末10によれば、インピーダンス等のアンテナ設計を不要化できる。さらに、本実施例に係る携帯端末10では、無線通信用のアンテナを始め、無線通信に必要な処理回路を電界通信に使用するものと共用できる。よって、本実施例に係る携帯端末10によれば、装置規模を小型化できる。
また、本実施例に係る携帯端末10は、無線通信および電界通信を併用して、タグ30からタグIDを取得する。そして、本実施例に係る携帯端末10は、無線通信により取得されたタグIDが、電界通信により取得されていない場合には、そのタグIDが付された物品が伝送媒体20の近傍にあって伝送媒体20に接触していないと判別する。これによって、本実施例に係る携帯端末10によれば、コンピュータが人の行動を推定する上で有用な情報、すなわち「近くにあるものの触っていない物品」という情報をセンシングできる。
ここで、本実施例に係る携帯端末10の従来技術に対する優位性を説明する。本実施例に係る携帯端末10は、既存技術で行われるように混線や干渉を避けるためでなく、伝送媒体20と物品との位置関係を判別するために、異なる伝送波周波数帯域の通信を用いる。また、本実施例に係る携帯端末10は、伝送媒体20と物品との位置関係を判別するために、電波強度を変化させることにより、伝送媒体20と物品との距離を測ることも考えられる。すなわち、電波の強度を所定の値から段階的に下げ、物品に付されたタグ30と通信できなくなった際の電波強度を距離に換算することで、物品との位置関係を判別することも考えられる。しかしながら、電波強度を変化させる場合には、自装置に対して判別対象の物品の位置が遠方である可能性があるため、判別開始時に通信範囲を広く設定する必要がある。よって、電波強度を変化させた場合には、判別開始時の電波強度を大きくする必要があり、消費電力を抑制することはできない。一方、本実施例に係る携帯端末10は、伝送波周波数帯域に応じて通信範囲が異なるという特性を利用して、単に伝送波周波数帯域が異なる通信を用いて物品と間でにおける位置関係を判別しているので、判別開始時の電波強度を大きくする必要がない。したがって、本実施例に係る携帯端末10は、省電力で伝送媒体20および物品の位置関係を判別することができる。
[実施例2の応用例]
さて、上記の実施例2では、全てのタグ30に対して無線通信及び電界通信の両方を行うことによりタグを検索する場合を例示したが、開示の携帯端末はこれに限定されない。例えば、検索対象とするタグ30の個数を低減する観点から、電界通信により検索するタグ30を、無線通信により検索したタグ30のみとすることもできる。
このように、電界通信により検索するタグ30を限定するのは、全てのタグを対象に検索を行うと、不要な検索を試行してしまう場合があるからである。すなわち、電界領域60より無線領域80は広いので、無線通信により検索されないタグ30は、電界通信によっても検索されない。特に、タグ30の数が多く、かつ無線通信により検索されないタグ30の数が多い場合には、検索されないタグ30に対して電界通信によって不要な検索を試みることとなる。そこで、不要な検索を行わないようにするために、実施例2の応用例では、電界通信により検索するタグ30を無線通信により検索したタグ30のみとする。
[処理の流れ]
次に、実施例2の応用例に係る携帯端末の処理の流れを説明する。図10は、実施例2の応用例に係る位置関係判別処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、図9に示した位置関係判別処理と同様、所定の周期で起動される。
[位置関係判別処理]
図10に示すように、判別部12bは、高周波回路11eと導体11cとを接続するようにスイッチ11bを切り替える(ステップS201)。続いて、判別部12bは、IDの問い合わせの指令を示す無線通信の送信データをインターフェース11aに出力する(ステップS202)。そして、判別部12bは、無線領域80内に位置するタグから応答されたIDを配列Hに設定する(ステップS203)。続いて、判別部12bは、ステップS203で応答されたIDの個数を変数Nに設定する(ステップS204)。
そして、判別部12bは、低周波回路11fと導体11cとを接続するようにスイッチ11bを切り替える(ステップS205)。続いて、判別部12bは、変数iの値を0に設定する(ステップS206)。その後、判別部12bは、配列H[i]に設定されたIDが示すタグを問い合わせの対象とする指令を示す電界通信の送信データをインターフェース11aに出力する(ステップS207)。そして、判別部12bは、配列H[i]に設定されたIDが示すタグからIDの応答があるか否かを判定する(ステップS208)。ここで、IDの応答がある場合(ステップS208肯定判定)には、判別部12bは、配列H[i]に設定されたIDが示すタグに対応する物品を物品テーブル12aから特定する(ステップS209)。そして、判別部12bは、伝送媒体20及び特定した物品が接触していると判別し(ステップS210)、ステップS213へ移行する。
一方、IDの応答がない場合(ステップS208否定判定)には、判別部12bは、配列H[i]に設定されたIDが示すタグに対応する物品を物品テーブル12aから特定する(ステップS211)。そして、判別部12bは、ステップS210で特定した物品及び伝送媒体20は近接していると判別する(ステップS212)。
続いて、判別部12bは、変数iの値を1つインクリメントする(ステップS213)。その後、判別部12bは、変数iの値と変数Nの値とが一致するか否かを判別する(ステップS214)。ここで、変数iの値と変数Nの値とが一致しない場合(ステップS214否定判定)には、上記ステップS208〜ステップS213の処理を再度行う。一方、変数iの値と変数Nの値とが一致する場合(ステップS214肯定判定)には、処理を終了する。
[実施例2の応用例の効果]
このように、本応用例に係る携帯端末10は、無線通信により無線領域80内に位置する全てのタグ30からタグIDを取得した後に、無線通信により取得されたタグIDが電界通信により取得できるか否かを判定する。これによって、本応用例に係る携帯端末10は、無線通信により取得されたタグIDが、電界通信により取得されているか否かを判定する。したがって、本応用例に係る携帯端末10では、電界通信によりタグIDが取得できないタグを除いてタグの検索を行うことができる。それゆえ、本実施例に係る携帯端末10によれば、消費電力をさらに抑制できる。
さて、上記の実施例2では、無線通信および電界通信を個別に行う場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されない。そこで、実施例3では、無線通信および電界通信を同時に行う場合について説明する。
[携帯端末50の構成]
図11は、実施例3に係る携帯端末の構成を示すブロック図である。図11に示すように、携帯端末50は、対タグ通信部51と、ホスト52とを有する。かかる対タグ通信部51は、図4に示す実施例2に係る対タグ通信部11に比較して、実施例2の高周波回路11e、低周波回路11f、スイッチ11bに代えて、次に示す回路を有する点が異なる。すなわち、かかる対タグ通信部51は、サーキュレータ51a、ハイパスフィルタ51b、ローパスフィルタ51c、高周波回路51d、低周波回路51e、バッファ515a〜515dを有する。また、ホスト52は、図4に示す実施例2に係るホスト12に比較して、実施例2の判別部12bに代えて、判別部52aを有する点が異なる。なお、以下では、上記の実施例2と同様の機能を果たす回路や機器については図4と同様の符号を付し、その説明は省略することとする。
サーキュレータ51aは、第1の所定の方向から入力された信号を対応する第2の方向から出力する。例えば、サーキュレータ51aは、後述の発信回路513aから信号が入力されると、かかる信号をハイパスフィルタ51bを介して導体11cへ出力する。また、サーキュレータ51aは、導体11cから信号が入力されると、かかる信号をバッファ515bを介して受信回路513bへ出力する。
ハイパスフィルタ51bは、入力された信号のうち高周波成分を通過させ低周波成分を遮断する回路である。例えば、ハイパスフィルタ51bは、導体11cから信号が供給されると、高周波数帯域の信号をサーキュレータ51a、バッファ515bを介して受信回路513bに供給する。
ローパスフィルタ51cは、入力された信号のうち低周波成分を通過させ高周波成分を遮断する回路である。例えば、ローパスフィルタ51cは、導体11cから信号が供給されると、低周波数帯域の信号をバッファ515dを介して受信回路514bに供給する。
バッファ515a〜515dは、データの同期をとるための回路である。例えば、バッファ515a及びバッファ515cは、発信回路513a及び発信回路514aから導体11cへ供給する信号の同期をとる。また、バッファ515b及びバッファ515dは、導体11cから受信回路513b及び受信回路514bへ供給する信号の同期をとる。
導体11cは、後述の発信回路513aから高周波信号と、発信回路514aから低周波信号とが供給されると、高周波数帯域と低周波数帯域とを重畳した電波を伝送媒体20に供給する。
高周波回路51dは、高周波信号によりタグ30との間で無線通信を行う回路である。高周波回路51dは、発信回路513aと、受信回路513bとを有する。
発信回路513aは、高周波信号によりタグ30に対してデータを送信する回路である。例えば、発信回路513aは、信号処理回路11dから入力されたデータ信号を高周波帯の信号に変調した上でその高周波信号を後段のバッファ515aへ出力する。かかる変調周波数の一態様としては、2.5GHzを始め、その周辺などの高周波帯域を任意に採用できる。
受信回路513bは、高周波信号によりタグ30からデータを受信する回路である。例えば、受信回路513bは、タグ30からデータを受信した場合には、導体11cから入力された高周波信号からデータ信号を検波(復調)した上でそのデータ信号を信号処理回路11dへ出力する。
低周波回路51eは、低周波信号によりタグ30との間で電界通信を行う回路である。低周波回路51eは、発信回路514aと、受信回路514bとを有する。
発信回路514aは、低周波信号によりタグ30に対してデータを送信する回路である。例えば、発信回路514aは、信号処理回路11dから入力されたデータ信号を低周波帯の信号に変調した上でその低周波信号を後段のバッファ515cへ出力する。かかる変調周波数の一態様としては、2.5GHzを始め、その周辺などの高周波帯域を任意に採用できる。
受信回路514bは、低周波信号によりタグ30とからデータを受信する回路である。例えば、受信回路514bは、タグ30からデータを受信した場合には、導体11cから入力された低周波信号からデータ信号を検波(復調)した上でそのデータ信号を信号処理回路11dへ出力する。
判別部52aは、伝送媒体20及び物品の位置関係を判別する処理部である。例えば、判別部52aは、無線通信によりタグ30を検索し、無線領域80内に所在するタグ30を検索する。そして、判別部52aは、電界通信によりタグ30を検索し、電界領域60内に所在するタグ30を検索する。続いて、判別部52aは、無線通信により検索したタグ30を、電界通信により検索できない場合には、伝送媒体20及びタグ30に対応する物品が近接していると判別する。また、判別部52aは、無線通信により検索したタグ30を電界通信により検索した場合には、伝送媒体20及びタグ30に対応する物品が接触していると判別する。また、判別部52aは、無線通信及び電界通信によりタグ30を検索できない場合には、伝送媒体20及びタグ30に対応する物品が接触も近接もしていないと判別する。
例えば、判別部52aは、以下のような処理を行うことにより、伝送媒体20及び物品が接触または近接していると判別する。
判別部52aが行う判別の処理の一例について説明する。例えば、判別部52aは、予め通信対象として定められたタグ30に対して、無線通信及び電界通信によりIDを応答させる指令を示すデータをインターフェース11aに出力して、無線領域80内に所在するタグ30にIDを問い合わせる。このようにして、判別部52aは、無線領域80内に所在するタグ30及び電界領域60内に所在するタグ30を検索する。そして、判別部52aは、受信回路513bが受信したIDを配列Hに設定する。そして、判別部52aは、受信回路513bが受信したIDの個数を変数Nに設定する。例えば、n個のIDが応答された場合には、判別部52aは、n個のIDを配列H[0]〜H[n−1]に設定し、応答されたIDの個数nを変数Nに設定する。
そして、判別部52aは、受信回路514bが受信したIDを配列Lに設定する。そして、判別部52aは、受信回路514bが受信したIDの個数を変数Mに設定する。例えば、m個のIDが応答された場合には、判別部52aは、m個のIDを配列L[0]〜L[m−1]に設定し、応答されたIDの個数mを変数Mに設定する。
そして、判別部52aは、変数i、jの値を0に設定する。そして、判別部52aは、配列H[i]に設定されたIDと配列L[j]に設定されたIDとが一致するか否かの判定を行う。判別部52aは、肯定判定するか、または変数jの値が変数Mの値と一致するまで、変数jの値を1つずつインクリメントし、繰り返し判定を行う。
ここで、判別部52aは、一致するIDが存在する場合には、配列H[i]に設定されたIDが示すタグを特定する。そして、判別部52aは、特定したタグに対応する物品を物品テーブル12aから特定する。その後、判別部52aは、伝送媒体20及び特定した物品が接触していると判別する。なお、電界領域60内にタグ30が位置しても対応する物品が伝送媒体20と接触しない場合があるが、電界領域60は、伝送媒体20の表面のみに発生するような伝送媒体20からの距離が微少となる領域の電界である。したがって、電界領域60内にタグ30が位置すれば、対応する物品と伝送媒体20との距離は、あたかも接触するような近いものとなる。よって、判別部52aは、電界領域60内にタグ30が位置するにもかかわらず、対応する物品が伝送媒体20と接触しない場合であっても接触していると判別する。
一方、配列H[i]に設定されたIDと配列L[j]に設定されたIDとの比較で一致するIDが存在しない場合には、判別部52aは、配列H[0]に設定されたIDが示すタグ30を特定する。そして、判別部52aは、特定したタグ30に対応する物品を物品テーブル12aから特定する。その後、判別部52aは、伝送媒体20及び特定した物品が近接していると判別する。
そして、判別部52aは、配列H[i]に設定されたIDに対して行った同様の処理を配列H[i+1]に設定されたIDから配列H[N−1]に設定されたIDまで順に行う。
このようにして、判別部52aは、携帯端末10及びタグ30が接触または近接していると判別する。
[処理の流れ]
次に、本実施例に係る携帯端末の処理の流れを説明する。図12は、実施例3に係る位置関係判別処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、所定時間間隔、例えば0.5秒、1秒、1.5秒などの間隔で起動される。
[位置関係判別処理]
図12に示すように、判別部52aは、IDの問い合わせの指令を示す無線通信及び電界通信のデータをインターフェース11aに出力する(ステップS301)。そして、判別部52aは、無線領域80内に位置するタグ30から応答されたIDを配列Hに設定する(ステップS302)。
続いて、判別部52aは、無線領域80内に位置するタグ30から応答されたIDの個数を変数Nに設定する(ステップS303)。その後、判別部52aは、電界領域60内に位置するタグから応答されたIDを配列Lに設定する(ステップS304)。そして、判別部52aは、電界領域60内に位置するタグ30から応答されたIDの個数を変数Mに設定する(ステップS305)。ここで、以降のステップS306〜S316のそれぞれは、図9に示すステップS109〜S119のそれぞれと同様の処理であるため、説明を省略する。
[実施例3の効果]
上述してきたように、本実施例に係る携帯端末50は、低周波の電界通信の機能と高周波の無線通信の機能とを1つの装置に併せ持たせる場合に、無線通信に際しては、伝送媒体20をアンテナとして使用する。このため、本実施例に係る携帯端末50では、無線通信用のアンテナ装置を設けて無線通信を行う場合よりも、送信時におけるアンテナの利得を向上させることができる。それゆえ、本実施例に係る携帯端末50によれば、上記の実施例1と同様に、通信時の消費電力を抑制できる。
これに関連して、本実施例に係る携帯端末50は、伝送媒体20をアンテナとして使用するので、無線通信を行う場合にチップアンテナなどの専用アンテナを必要としない。このため、本実施例に係る携帯端末50によれば、上記の実施例1と同様に、インピーダンス等のアンテナ設計を不要化できる。さらに、本実施例に係る携帯端末50では、無線通信用のアンテナを始め、無線通信に必要な処理回路を電界通信に使用するものと共用できる。よって、本実施例に係る携帯端末50によれば、上記の実施例1と同様に、装置規模を小型化できる。
さらに、本実施例に係る携帯端末50は、高周波数帯域と低周波数帯域とを重畳した電波を導体11cから伝送媒体20に供給することで、タグ30を検索する。また、本実施例に係る携帯端末50は、導体11cで受信した電波の高周波成分をハイパスフィルタ51bで通過させ、通過させた信号を受信回路513bで受信している。また、本実施例に係る携帯端末50は、導体11cで受信した電波をローパスフィルタ51cで低周波数成分のみ通過させ、通過させた信号を受信回路514bで受信している。このように、本実施例に係る携帯端末50は、タグ30と、高周波の無線通信と低周波の電界通信を同時に行うことが可能である。したがって、本実施例に係る携帯端末50によれば、2種類の通信方式を個別に用いる場合よりも、タグ30との通信を早く行うことができる。