JP5549971B2 - 分子電子デバイス及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基板上に機能性有機分子、すなわち、整流やスイッチ等の機能を有する(単分子の)有機分子が配され、これ(ら)が導電性重合分子鎖すなわち、分子ワイヤによって結線された分子電子デバイスに関する。また、その製造方法にも関する。
情報処理装置に使われるシリコン半導体を用いたデバイスは、極微小化、超高集積化によりその性能を著しく上げてきたものの、一層の微小化、高性能化は原理的、技術的、経済的な問題のためやがて限界に達しようとしている。そこで、情報処理デバイスの一層の微小化、高性能化を実現させるためには、従来とは異なる新しい概念のナノメートルスケール・デバイスの開発が必要になる。その有力候補の一つは、基板上に整流やスイッチ等の機能を持つ有機分子(機能性有機分子)を配し、これ(ら)を分子ワイヤで結線した分子電子デバイスの概念である。
整流やスイッチ等の機能を持つ有機分子は、従来いくつか提案され、その機能を実験的に確かめる試みもなされている(非特許文献1)。前記非特許文献1では、整流やスイッチ等の機能を持つ有機分子の機能を実験的に確かめるために、その分子を金属電極に接続して行なっている。
有機分子を金属電極(又は金属)で接続しようとする場合には、次のような問題がある。
(1)金属電極(又は金属)は、従来のシリコンデバイスに使われているリソグラフィー技術を用いて作製されるため、集積度の点で従来のシリコンデバイスを大きく超えることは難しい。
(2)金属電極(又は金属)と、その金属に電気的障壁無しに結合する有機分子(化学種)との組み合わせは、例えば、よく使われる金電極に対してはそれに結合できるチオール基含有の有機化合物等に限られる。
一方、分子ワイヤについては、先に本発明者らは、不飽和結合が隣接するように規則的に配列させた多重結合を有するモノマーからなる薄膜(自己集合膜)に、走査トンネル顕微鏡(STM)の探針によってパルス電圧を加えそのモノマーを連鎖重合させ、予めSTM探針を用いて作っておいた上記薄膜上の欠陥を利用することでその重合反応を停止させ、所望の位置に所望の長さで導電性高分子ナノワイヤを作製する方法を開発した(特許文献1)。
また、特許文献2では、末端部に、導体に対して結合可能な官能基を有するポルフィリン系金属錯体を有する導電性分子ワイヤが提案されている。
〔発明の目的又は動機〕
本発明の目的は、基板上に、単分子からなる機能性有機分子が配され、前記機能性有機分子には一分子幅の導電性ポリマー鎖が共有結合で連結されてなる分子電子デバイスを提供することであり、またその製造方法を提供することでもある。
〔発明の要旨〕
機能性有機分子を金属で接続しようとする場合の、前記いくつかの困難を避けるため、本発明者らは、整流やスイッチ等の機能をもつ機能性有機分子を、先に開発した導電性高分子ナノワイヤで結線することを種々検討し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、基板上に、単分子からなる機能性有機分子と、前記機能性有機分子に共有結合で連結する一分子幅の導電性ポリマー鎖と、が配されてなる分子電子デバイスを提供する。
また、本発明は、上記分子電子デバイスを製造する方法であって、以下の工程を含んでいる製造方法、も提供する。
工程(1):基板上に、連鎖重合可能で、かつ、重合後は導電性ポリマーとなりうる有機モノマーの規則的配列を含む薄膜を形成する(基板上での有機モノマー薄膜形成工程);
工程(2):その薄膜上に、単分子からなる機能性有機分子を離散的に配置する(機能性有機分子の離散的配置工程);
工程(3):前記薄膜の所定の箇所に刺激を加え、その刺激した箇所の連鎖重合可能な有機モノマーから前記機能性有機分子に向かって一分子幅の導電性ポリマー鎖を生長させる(導電性ポリマー鎖形成工程);
工程(4):生長した導電性ポリマー鎖の先端が、前記機能性有機分子に達し、その有機分子と共有結合で結合し、その導電性ポリマー鎖の生長が止まる(機能性有機分子−導電性ポリマー鎖の結合工程)。
本発明の分子電子デバイスは新規である。また、これを用いることにより、将来の情報処理装置の一層の微小化、高性能化に寄与できる。更に、機能性有機分子と分子ワイヤとの電気的な接続が確実なものとなるとともに、製品としてのバラつきも少なくなる。
本発明の製造法により、本発明の分子電子デバイスを製造できる。更に、製造プロセスが簡単になるという効果も発揮される。
重合可能で、かつ、重合後は導電性ポリマーとなりうる有機モノマーのジアセチレン化合物の連鎖重合反応が進行する様子を模式的に示した図(化学式)。 本発明に係る製造方法を模式的に示す斜視図で、(a)はナノワイヤ伸張途中、(b)はナノワイヤ伸張終了を示す。 10,12−ノナコサジイン酸分子膜上に配されたフタロシアニン分子(機能性有機分子)の走査トンネル顕微鏡像(左)とその説明図(右)。 10,12−ノナコサジイン酸分子膜上に配されたフタロシアニン分子(機能性有機分子)に向けて直線的に延びる1本の重合分子鎖線を示す走査トンネル顕微鏡像(左)とその説明図(右)。 連鎖重合鎖(ポリジアセチレン化合物)とフタロシアニンとの結合を示す図(化学式)。 10,12−ノナコサジイン酸分子膜上に配されたフタロシアニン分子(機能性有機分子)を挟んで直線的に延びる2本の線を示す走査トンネル顕微鏡像(左)とその説明図(右)。
1:ジアセチレン化合物分子
2:ポリジアセチレン化合物
3:カルベン
R:置換基
R’:置換基
21:基板
22:重合可能な有機モノマーの薄膜
23:機能性有機分子(単分子)
24:一分子幅の導電性ポリマー鎖
25:走査トンネル顕微鏡探針
26:トンネル電流
27:導電性ポリマー鎖と機能性有機分子の結合
31:フタロシアニン
32:ポリジアセチレン化合物
33:カルベン
34:フタロシアニンとポリジアセチレン化合物との結合(共有結合)
41:10,12−ノナコサジイン酸
42:導電性ポリマー鎖
43:フタロシアニン
〔発明の更に詳しい説明〕
初めに、本発明の分子電子デバイスの製造方法を更に詳しく説明する。
本発明の製造方法は、先に述べた通り、以下の工程を含んでいる。
工程(1):基板上での有機モノマー薄膜形成工程;
工程(2):機能性有機分子の離散的配置工程;
工程(3):導電性ポリマー鎖形成工程;及び
工程(4):機能性有機分子−導電性ポリマー鎖の結合工程。
以下、工程順に説明する。
工程(1)の有機モノマー薄膜形成工程で用いる基板の材質は、導電性でも、絶縁性でも、あるいは、半導体でも、いずれも用いることができる。但し、工程(3)において導電性ポリマー鎖形成のための刺激にパルス電圧を用いる場合には、導電性または半導体基板を用いることが好ましい。また、その基板に載せる機能性有機分子又は導電性ポリマー鎖は分子サイズであるために、その基板表面は原子レベルで平坦なものが好ましい。そのような基板としては、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、マイカ、サファイア、シリコン、酸化ケイ素、金等からなる基板を用いることができる。
基板上に形成(載置)させる有機モノマーとしては、連鎖重合可能で、かつ、重合後は導電性ポリマーとなりうる有機モノマー、更に具体的には、多重結合(二重結合または三重結合)を有する分子で、重合反応を起こす能力を有する分子を用いる。このような分子としては、炭素−炭素二重結合を持つアルケン、炭素−炭素三重結合を持つアルキン、炭素−炭素三重結合を二つ含むジアセチレン化合物、炭素−炭素二重結合を二つ含むジオレフィン化合物、シアノ基(炭素−窒素三重結合)を含む化合物等が挙げられ、中でも炭素−炭素三重結合を二つ含むジアセチレン化合物が好ましく用いられる。ジアセチレン化合物は、一般式はR−C≡C−C≡C−R’で表され、これは紫外線照射や熱により固相重合することが知られており、その反応は、次式(化1)で表される。ここで、置換基のR、R’は同じでも異なってもよく、分子間距離が連鎖重合反応に適した間隔(好ましくは4.9±0.2オングストローム)で基板上に配列するものを選ぶ。RがCH(CH11で、R’が(CHCOOH のジアセチレン化合物(すなわち、10,12−ペンタコサジイン酸)や、RがCH(CH15でR’が(CHCOOHのジアセチレン化合物(すなわち、10,12−ノナコサジイン酸)等が好ましく使用できる。
また、上記有機モノマーを基板上に規則的に配列させるためには、その分子の自己集合性(すなわち、自己集合膜)を利用する。例えば、有機モノマーを水不溶の有機溶媒に溶かし、水を張った容器にこれを少量滴下し、溶媒を蒸発させ、水上に有機モノマーの薄膜を作り、その後、その薄膜を基板上に移し取り、その基板上で有機モノマーの自己集合膜を形成させればよい。分子の自己集合性(自己集合膜)に代えて、ラングミュア−ブロジェット膜等も使うこともできる。
また、気相中又は真空中、基板を有機モノマーの蒸気に晒すことにより薄膜を作成することもできる。有機モノマー分子そのもの、あるいは有機モノマーを溶媒に溶かした溶液を、基板に直接のせてもよいし、塗布あるいは噴霧してもよい。溶液を基板にのせる場合には、溶媒と基板の界面にモノマーを配列させてもよいし、溶媒を蒸発させてモノマーのみを基板上に残してもよい。
このようにして形成された有機モノマーの規則的配列を含む薄膜は、前記有機モノマーが膜状に規則的に配列された層であって、この層は有機モノマーだけであっても、その有機モノマー以外の他の分子や化合物を含んでもよい。また、同種の有機モノマー同士を配列させてもよいし、二種以上のモノマーを配列させてもよい。この薄膜の厚みはその有機モノマー1分子分の厚みでも、これらが2分子分以上に重層した厚みでもよい。ここで肝心なことは、薄膜内で、多重結合を有する有機モノマーを不飽和結合が隣接するように配列させる(連鎖重合反応できるように、有機モノマーの不飽和結合をそれぞれ近傍に位置させる)ことである。それゆえに、刺激により連鎖重合反応を開始させると、重合分子鎖の末端がその近傍にある他の有機モノマー分子の不飽和結合と次々に重合反応を起こすことができる(図1参照)。なお、有機モノマーは必ずしも直線状に整列していなくともよい。
工程(2)では、基板上の有機モノマーの規則的配列を含む薄膜の上に、単分子からなる機能性有機分子を配置する。ここで用いる「機能性有機分子」は、整流、トランジスタ、スイッチ、記憶、発光等の電子デバイスとしての機能を持つ分子(下に例示する)である。用いる機能性有機分子は、連鎖重合反応で伸びた導電性ポリマーと結合(共有結合)するために、ラジカルやカルベンと反応しやすい不飽和結合等の反応基を持つ分子が好ましい。また、薄膜上への機能性有機分子の配置は、それら分子の塊(凝集物)を配置させるのではなく、離散した一個ずつの分子(単分子)を配置させるために、離散性の高い(凝集しにくい)分子であることも必要である。
整流機能を持つ有機分子としては、具体的には、一般式D−s−A で表される構造を持つ化合物がある。ここで、
Dは電子供与性の化学種(ドナー)で、例えば、テトラチアフルバレン誘導体、テトラセレナフルバレン誘導体、キノリン誘導体、あるいはアセン誘導体等であり、
Aは電子受容性の化学種(アクセプター)で、例えば、テトラシアノキノジメタン誘導体、ジシアノキノジイミン誘導体、ニッケルジチオレン錯体誘導体、亜鉛ジチオレン錯体誘導体、白金ジチオレン錯体誘導体、パラジウムジチオレン錯体誘導体、金ジチオレン錯体誘導体、ニトロベンゼン誘導体等であり、
sはσ結合性もしくはπ結合性のスペーサーで、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、カルボニル、エーテル、エステル、アミン、アミド、ビニレン、エチニレン、フェニレン等である。
トランジスタ機能を持つ分子としては、ベンゼン誘導体、アセン誘導体、アンヌレン誘導体、ペリレン誘導体、コロネン誘導体、ヘキサベンゾコロネン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体、オリゴフェニレンエチニレン誘導体、オリゴピリジニル錯体誘導体、オリゴチオフェン誘導体等がある。
スイッチ機能・記憶機能を持つ分子としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ロタキサン、カテナン、オリゴフェニレンエチニレン誘導体、ジチエニルエテン誘導体等がある。
発光機能を持つ分子としては、フタロシアニン誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、ジピリリルジシアノベンゼン、ベンズオキサゾール誘導体、ジスチリル誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾクリセン誘導体、アリールアミン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ペリレン誘導体、アリールエチニルベンゼン誘導体、オリゴピリジン誘導体、オリゴフェニル誘導体等がある。
上記種々の機能性有機分子の中でも、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ベンゼン誘導体、アセン誘導体、アンヌレン誘導体、ペリレン誘導体、コロネン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体、オリゴフェニレンエチニレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ジチエニルエテン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体又はキノリン誘導体とテトラシアノキノジメタン誘導体又はジシアノキノジイミン誘導体とを含む化合物が好ましく用いられる。
フタロシアニン誘導体におけるフタロシアニンとしては、フタロシアニン(配位金属なし)、銅フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、鉄フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、鉛フタロシアニン、銀フタロシアニン、スズフタロシアニン、リチウムフタロシアニン、ナトリウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、カドミウムフタロシアニン、二塩化ケイ素フタロシアニン、塩化アルミニウムフタロシアニン、二塩化スズフタロシアニン、塩化ガリウムフタロシアニン、塩化インジウムフタロシアニン、二塩化チタンフタロシアニン、水酸化アルミニウムフタロシアニン、水酸化ガリウムフタロシアニン、二水酸化ケイ素フタロシアニン等が好ましく用いられる。
これらのうち、フタロシアニン(配位金属なし)、銅フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、鉄フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、鉛フタロシアニン、又はスズフタロシアニンが特に好ましく用いられる。
基板上の有機モノマーの規則的配列を含む薄膜の上に、単分子からなる機能性有機分子を載せる方法としては、有機モノマー薄膜を載せた基板を、気相中、または真空中で、上記薄膜付き基板を機能性有機分子の蒸気に晒して行なうことができる。あるいは、機能性有機分子を溶媒に溶かした溶液を、上記薄膜付き基板に塗布あるいは噴霧してもよい。
工程(3)の導電性ポリマー鎖形成工程における刺激としては、好ましくは薄膜へのパルス電圧の印加により行なう。そのほかに、電子線、紫外線、X線、またはγ線を照射することにより行ってもよいし、また、薄膜を加熱することで行ってもよい。それらの刺激により、モノマー分子を励起させ連鎖重合反応を引き起こす。連鎖重合反応が進行中の導電性ポリマー鎖の先端には、反応活性なラジカル(炭素原子に結合を作っていない不対電子が1つある状態)またはカルベン(2個の非結合電子を持つ2価の炭素)が存在している。導電性ポリマー鎖の長さは1分子分だけ長くなり、その先端の炭素原子に再びラジカルまたはカルベンが生じる。この過程の繰り返しにより、連鎖重合反応が進行していく(図1参照)。
薄膜上でパルス電圧を印加するときの電極には、走査プローブ顕微鏡のプローブが好ましく用いられる。図2は、走査プローブ顕微鏡プローブを用いた本発明の方法を模式的に示している。有機モノマー薄膜上に、そのモノマー分子とは異なる機能性有機分子(単分子)を離散的に配置し、その機能性有機分子に向かうモノマー分子列上で走査トンネル顕微鏡の探針でパルス電圧をかけ、連鎖重合反応を引き起こすと、連鎖重合反応は機能性有機分子に向かって進行し、やがて導電性ポリマー鎖の先端が機能性有機分子の位置に到達する。このとき、導電性ポリマー鎖の先端の反応活性なラジカルまたはカルベンが、機能性有機分子に接近することになるので、図2(b)に示すように、そのラジカルまたはカルベンが機能性有機分子と反応して結合する。その結果、導電性ポリマー鎖と機能性有機分子とが結合した構造が作成される。
さらに、連鎖重合反応を2ヶ所以上で引き起こすことにより、同一の機能性有機分子に2本以上の重合分子鎖を接続させることも可能である。
なお、上記パルス電圧は、0〜1秒間に0〜50ボルトの電圧変化を与えて行なうことが好ましい。また、上記パルス電圧は、離散的に配置した機能性有機分子に向かう有機モノマー分子列上で、機能性有機分子から0.1nmから10μm離れたところにある有機モノマー分子に焦点を絞って局所的に印加することが好ましい。
また、刺激を与える方法によっては、刺激が与えられる位置、すなわちそこから導電性ポリマー鎖の成長が始まる位置を高い精度で制御できないことがある。そのような場合、必要個数よりも多くの機能性有機分子を基板上に配置するとともに、このような刺激方法によって多数の導電性ポリマー鎖を成長させて配線を行い、所望の接続がなされた機能性有機分子−導電性ポリマー鎖の組み合わせからなる回路部分だけを使用することも可能である。
以上の製造方法により、本発明の分子電子デバイス、すなわち、基板上に、単分子からなる機能性有機分子と、前記機能性有機分子に共有結合で連結する一分子幅の導電性ポリマー鎖とが配されてなる分子電子デバイスを製造できる。以上の製造方法を採用することにより、導電性ポリマー鎖が機能性有機分子に共有結合により連結されると、導電性ポリマー鎖の成長はその時点で自動的に停止する。したがって、たとえば、上述のようにモノマー層の上に機能性有機分子が載っている状態で導電性ポリマー鎖の成長を行う場合でも、機能性有機分子の下を導電性ポリマー鎖がくぐりぬけて成長し続けるのを防止するために別途のステップや構造を設ける必要はない。また、このようにして製造された分子電子デバイスにおいては、機能性有機分子と導電性ポリマー鎖の結合は共有結合という強固な結合によってなされるため、両者の電気的接続は確実・安定なものとなり、また製品間のバラつきも少なくなる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
基板として高配向焼結グラファイト(GE Advanced Ceramics社製、グレードZYH、約10mm×10mm×1mm)を用いた。連鎖重合可能で、かつ、重合後は導電性ポリマーとなりうる有機モノマー分子としては、10,12−ノナコサジイン酸(東京化成工業株式会社)を用いた。また、機能性有機分子としては、フタロシアニン(配位金属M:なし)(東京化成工業株式会社)を用いた。
10,12−ノナコサジイン酸を約150mg/Lの濃度となるようにクロロホルムに溶解し、容器に張った純水の表面上に前記溶液を約3.5μl/cm滴下した。クロロホルムが蒸発した後、水面上に形成された10,12−ノナコサジイン酸分子膜を、劈開した高配向焼結グラファイトを水平に水面に接触させて移し取り、自己集合膜を形成させた。引き続き、10,12−ノナコサジイン酸分子膜が移し取られたグラファイト基板を、真空容器に入れて排気し、その真空容器内で、フタロシアニン分子を入れた石英ガラス製るつぼを加熱し、上記10,12−ノナコサジイン酸分子膜が移し取られたグラファイト基板にフタロシアニン分子の蒸気をさらすことにより、蒸着を行った。蒸着させるフタロシアニン量は、毎秒0.01〜0.03nmの蒸着速度で5〜10秒間とした(水晶振動子膜厚計による測定)。
このようにして得られた、フタロシアニン分子を蒸着させた10,12−ノナコサジイン酸分子膜付き高配向焼結グラファイト基板を、真空容器から取り出し、室温、大気中で走査トンネル顕微鏡により観察した。走査トンネル顕微鏡の探針にはPt‐Ir製の針を用い、試料電圧−1V、トンネル電流40pAの定電流モードにて像の観察を行った。図3に、観察された走査トンネル顕微鏡像の一例(図3の左)とその説明図(図3の右)を示す。図3から、10,12−ノナコサジイン酸分子(41)が規則的に直線状に並んだ分子膜の上に、5分子のフタロシアニン(43)が乗っている様子が分かる。
次に、基板上の10,12−ノナコサジイン酸分子膜上の所定の位置、すなわち、フタロシアニン分子に向かう10,12−ノナコサジイン酸分子列上の一点に、走査トンネル顕微鏡探針を置き、探針と基板の間に−3.8V、5μ秒のパルス電圧をかけた。その結果、パルス電圧をかけた場所で10,12−ノナコサジイン酸の連鎖重合反応が引き起こされ、導電性ポリマー鎖(ポリジアセチレン)(42)が生成・伸張し、蒸着させたフタロシアニン分子に達するとそこでそのフタロシアニン分子と結合し、その導電性ポリマー鎖の伸張は止まった。図4に、そのときの走査トンネル顕微鏡像(図4の左)とその説明図(図4の右)を示す。導電性ポリマー鎖は明るい直線として観察されている。また、第一原理密度汎関数法による理論計算を行った結果、導電性ポリマー鎖とフタロシアニン分子とが共有結合で結合した構造は安定に存在し、図4の走査トンネル顕微鏡像と矛盾ないことがわかった。さらにそのエネルギーを計算すると、導電性ポリマー鎖先端のカルベンが何とも反応せずにそのまま伸張が止まった場合や、フタロシアニン分子の下にあるモノマー分子と反応して導電性ポリマー鎖の伸張がさらに続いた場合に比べて、それぞれ2.5eV、0.7eV安定であることがわかった。したがってこのことは、導電性ポリマー鎖とフタロシアニンが共有結合で結合していることを裏付けている(図5に連鎖重合鎖とフタロシアニンとの結合前後の化学式を示す)。
さらに、上記の導電性ポリマー鎖を作成した10,12−ノナコサジイン酸分子列と同一の分子列上で、上記蒸着させたフタロシアニン分子に対して反対側の一点に、走査トンネル顕微鏡探針を置き、再度、探針と基板の間に−3.8V、5μ秒のパルス電圧をかけた。そうすると、フタロシアニン分子の反対側に2本目の導電性ポリマー鎖が生成・伸張し、蒸着させたフタロシアニン分子に達するとそこでそのフタロシアニン分子と共有結合し、その導電性ポリマー鎖の伸張は止まった。こうして、基板上の1つのフタロシアニン分子の両側に各々共有結合で連結された導電性ポリマー鎖(2本の導電性ポリマー鎖)を伸張させることができた。図6に、そのときの走査トンネル顕微鏡像(図6の左)とその説明図(図6の右)を示す。
実施例2
機能性有機分子としては、銅フタロシアニン(シグマ アルドリッチ株式会社)を用いたほかは、実施例1と同様に行なった。グラファイト基板上の1つの銅フタロシアニン分子の両側に、各々共有結合で連結された導電性ポリマー鎖(2本の導電性ポリマー鎖)を伸張させることができた(図示せず)。
実施例3
機能性有機分子としては、亜鉛フタロシアニン(東京化成工業株式会社)を用いたほかは、実施例1と同様に行なった。基板上の1つの亜鉛フタロシアニン分子の両側に、各々共有結合で連結された導電性ポリマー鎖(2本の導電性ポリマー鎖)を伸張させることができた(図示せず)。
なお、ここでは、基板上で、一つの機能性有機分子(フタロシアニン分子)の両側に各々導電性ポリマー鎖(2本の導電性ポリマー鎖)を伸張させた例を示したが、上記連鎖重合可能な有機モノマーの同一の分子列上の異なる位置に、機能性有機分子(同じであっても異なってもよい)や電極等の別のコンポーネントを配せば、導電性ポリマー鎖は機能性有機分子間あるいは機能性有機分子と電極との結線(配線)として利用できる。
特開2002−69111 特開2004−058260
C.Joachim et al.:Nature, vol.408, 541-548(2000)

Claims (12)

  1. 基板上に
    単分子からなる機能性有機分子と、
    前記機能性有機分子に共有結合で連結するとともに、前記基板の表面に平行に伸びる一分子幅の導電性ポリマー鎖と
    配されてなる分子電子デバイス。
  2. 前記導電性ポリマー鎖は前記基板上の薄膜中に形成されており、
    前記機能性有機分子は前記薄膜上に配置されている、
    請求項1の分子電子デバイス。
  3. 前記薄膜は重合することにより前記導電性ポリマーを形成するモノマーを含む、請求項2の分子電子デバイス。
  4. 前記機能性有機分子はフタロシアニン分子である、請求項1の分子電子デバイス。
  5. 前記導電性ポリマー鎖は、基板上に配された連鎖重合可能、かつ、重合後は導電性ポリマーとなりうる有機モノマーの規則的配列を連鎖重合させて得られる導電性ポリマー鎖である、請求項1〜4のいずれかの分子電子デバイス。
  6. 前記導電性ポリマー鎖はポリジアセチレン化合物である、請求項1〜4のいずれかの分子電子デバイス。
  7. 基板上に、単分子からなる機能性有機分子と、前記機能性有機分子に共有結合で連結する一分子幅の導電性ポリマー鎖と、が配されてなる分子電子デバイスを製造する方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
    (1)基板上に、連鎖重合可能で、かつ、重合後は導電性ポリマーとなりうる有機モノマーの規則的配列を含む薄膜を形成する;
    (2)その薄膜上に、単分子からなる機能性有機分子を離散的に配置する;
    (3)前記薄膜の所定の箇所に刺激を加え、その刺激した箇所の連鎖重合可能な有機モノマーから前記機能性有機分子に向かって導電性ポリマー鎖を生長させる;そして
    (4)生長した導電性ポリマー鎖の先端が、前記機能性有機分子に達し、その有機分子と共有結合で結合し、その導電性ポリマー鎖の生長が止まる。
  8. 工程(3)における刺激は、前記薄膜へのパルス電圧の印加により行なう、請求項7の製造方法。
  9. パルス電圧の印加は走査トンネル顕微鏡用プローブを用いて行なう、請求項8の製造方法。
  10. 工程(1)における薄膜として自己集合膜を用いる、請求項7〜9のいずれかの製造方法。
  11. 工程(1)における有機モノマーとしてジアセチレン化合物を用いる、請求項7〜10のいずれかの製造方法。
  12. 工程(2)における機能性有機分子としてフタロシアニン分子を用いる、請求項7〜11のいずれかの製造方法。
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