JP5547235B2 - 試料破砕器具および試料破砕回収器具 - Google Patents
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Description
前記杵部材が、杵部材本体の少なくとも一の端部に粗面加工されたテーパー部が形成された棒状の杵部材であり、前記臼部材が、底部が逆載頭円錐状であって、前記逆載頭円錐状の載頭端部が開口し、前記開口した開口部に係止部材を介してフィルタ部材が配設され、前記杵部材を挿入した際に前記杵部材のテーパー部と前記逆載頭円錐状と接触する面に粗面加工がなされている筒状の臼部材であって、前記臼部材に、試料と前記杵部材とを挿入し、前記杵部材を押圧および回転させて前記杵部材の粗面加工と前記臼部材の粗面加工との間で試料を擂潰し、前記擂潰した試料に遠心力を付加して前記フィルタ部材を通過させて破砕する、試料破砕方法である。
以下、図面を参照して本発明を説明する。
(i)試料破砕器具
本発明の試料破砕器具は、棒状の杵部材と、前記杵部材を挿入しうる臼部材とからなる試料破砕器具である。
本発明の試料破砕器具は、図3Aに示すように、杵部材(P)と、底部に係止部材(23)を介してフィルタ部材(25)が固定された臼部材(M)と共に、筒状の試料回収容器(R)と組み合わせて、図3Bに示す試料破砕回収器具としたものである。図3Bは、試料回収容器(R)に底部に係止部材(23)を介してフィルタ部材(25)が固定された臼部材(M)を装着し、前記臼部材(M)に杵部材(P)を挿入した試料破砕回収器具の断面図である。前記臼部材(M)の底部に試料通過性のフィルタ部材が配設されるため、遠心力によって試料を臼部材から試料回収容器(R)に移行させることができる。杵部材(P)を押圧、回転して試料を擂潰して破砕した場合には、破砕試料を臼部材(M)のフィルタ部材(25)の上から回収することができるが、破砕後に臼部材(M)を試料回収容器(R)に挿入して遠心すれば、試料回収容器(R)の底部に破砕試料を集積させることができる。専用の試料回収容器(R)を使用するため、予め試料回収容器に臼部材(M)を装着して杵部材(P)によって擂潰操作を行うことができ、擂潰後に試料破砕回収器具を遠心することで、試料をフィルタ部材を通過させて破砕することができる。
本発明で使用する杵部材(P)は、棒状であって、両端部をそれぞれ破砕端部、把持端部と称すれば、破砕端部が擂潰部となる。
なお、杵部材(P)は、図2Aに示す円柱状に限定されず、図5Eに示すように、中空で形成されるものであってもよい。
本発明で使用する臼部材(M)は、底部を有する筒状であり、前記底部は、前記杵部材を挿入した際に前記擂潰部と略同形であり、前記臼部材の内壁は、前記擂潰部との接触面に粗面加工がなされたものである。杵部材(P)がテーパー状である場合には、臼部材は、底部が逆載頭円錐状に形成された筒状の臼部材本体(20)を有し、かつ前記杵部材を挿入した際に前記杵部材(P)のテーパー部(11)が載頭円錐状と接触する部分に粗面加工(Rb)がなされたものとなる。
臼部材(M)は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフッ化エチレン、ポリカーボネートなどの合成樹脂で構成することができる。材質は、杵部材(P)と同一であっても異なっていても良い。合成樹脂製の臼部材(M)に粗面加工(Rb)を行うことで、筋肉組織などの繊維を多く含む組織を破砕しうることが判明した。
フィルタ部材(25)は、フィルタ底臼部材(M2)の内径より僅かに大きい外径を有し、臼部材(M2)の内周面の係止部材(23)の上に嵌着される。フィルタ部材(25)は、軸直交断面の直径が1〜300μmの貫通孔が設けられた厚み1〜3mmのポリプロピレン製又はガラス製の硬質フィルタである。貫通孔のサイズを適宜選択することで、試料の破砕の程度を調整することができる。また、破砕目的に応じてポアサイズの異なる複数枚のフィルタを重層してもよい。なお、フィルタ部材(25)は市販品を使用することもできる。例えば、ポリプロピレン製フィルタとしては、ドイツのポーレックス(POREX)社製フィルタを使用することができ、ガラス製フィルタとしては、柴田科学社製フィルタなどを使用することができる。
臼部材(M)は、底部にフィルタ部材(25)が配設されるか否かに対応して異なる破砕方法を選択することができる。このため、図1Bに例示されるフィルタ部材のない閉鎖底臼部材(M1)と、図2Bに例示されるフィルタ部材が固定されたフィルタ底臼部材(M2)とに分けて臼部材(M)の他の構成を説明する。
試料破砕回収器具には、前記試料破砕器具に、前記試料破砕器具を内部に収納することができ、かつ筒状の試料回収容器(R)が配設される。前記試料破砕器具と試料回収容器(R)とを一組とすることで、破砕試料を試料回収容器(R)に直接回収することが可能となり、破砕操作および試料の回収を容易かつ安全に行うことができる。
本発明の試料破砕器具を使用すれば、筋繊維などの組織からなる試料を、少量であっても効率的に破砕することができる。前記したように、フィルタ部材(25)の有無に対応して破砕試料の回収方法も異なるため、閉鎖底臼部材(M1)と、フィルタ底臼部材(M2)とに分けて説明する。
臼部材(M)として閉鎖底臼部材(M1)を使用する場合は、臼部材(M1)のフランジ(27)側から試料を挿入し、さらに杵部材(P)を挿入し、杵部材(P)を押圧回転して試料を破砕する。破砕操作は、試料に緩衝液や生理食塩水を添加して行ってもよい。破砕試料は、臼部材(M1)の内壁や杵部材(P)のテーパー部(11)に付着しているため、付着する破砕試料を杵部材(P)で掻き取り回収することができる。また、破砕試料に緩衝液を添加して懸濁液として回収してもよい。更に、破砕後に臼部材(M1)に杵部材(P)を挿入した状態で遠心装置などで遠心力を付加し、破砕試料を閉鎖底臼部材(M1)の底部に集積させてもよい。杵部材(P)を抜き取れば、臼部材(M1)に直接に、破砕試料を回収することができる。この際、臼部材(M1)の上部に蓋部(29)が配設される場合には、蓋部で臼部材(M1)の開口部を密封し、破砕試料に夾雑物が混入することを防止したり内容物の乾燥を回避することができる。
臼部材(M)としてフィルタ底臼部材(M2)を使用する場合は、予め、係止部材(23)を介してフィルタ部材(25)が固定された臼部材(M2)を試料回収容器(R)に装着し、臼部材(M2)に試料と杵部材(P)とを挿入して破砕を行うことができる。臼部材(M2)が上端にフランジ(27)を有するものであれば、試料回収容器(R)のフランジ(37)の上部に前記フランジ(27)の下面を載置することで、試料回収容器(R)の底部と臼部材(M2)の底部とを密着させることなく試料回収容器(R)内にフィルタ底臼部材(M2)を装着させることができる。また、臼部材(M2)のフランジ(27)に一対の爪状固定部(27a)が配設される場合には、試料回収容器(R)のヒンジ(38)の両端に前記一対の爪状固定部(27a)を係止することで、臼部材(M2)を試料回収容器(R)内に位置決め固定することができる。この位置決め固定により臼部材(M2)の試料回収容器(R)内での回転が回避されるため、効率的に破砕操作を行うことができる。
長さ68mm、テーパー角(θa)が9°、粗面がJIS B0601(2001)の最大高さ(Rz)68〜73μmのポリアセタール製の棒状の杵部材と、蓋部装着時の全長が40mm、底部が逆載頭円錐状でテーパー角(θb)が10°、粗面がJIS B0601(2001)の最大高さ(Rz)68〜73μmのポリプロピレン製の臼部材とからなる図1に示す形状の試料破砕器具を使用してマウスの肝臓からタンパク質の抽出を行った。
マウスの肝臓約80mgを切り出し前記臼部材に入れ、1mlのトリゾル試薬(Life technologies社製)を加えた。杵部材を前記臼部材に挿入して押圧、回転して肝臓組織を擂潰し破砕した。
破砕後の破砕物を杵部材を臼部材に挿入したまま遠心分離操作し、杵部材を取り出し、遠心した試料から非破砕試料と脂質とを除去した後、ブラッドフォード法に従いタンパク質量の定量を行った。タンパク質量は21.27mgであった。
粗面加工がないこと以外は比較例1と同様の装置を使用し、比較例1と同様にしてタンパク質量を測定した。その結果、タンパク質量は、17.28mgであった。
比較例1で使用した粗面を有する試料破砕器具を使用し、マウスの肝臓および腎臓約50mgを破砕試料とし、破砕物からRNAの抽出を行った。
マウスの肝臓および腎臓の各々50mgをそれぞれ臼部材に投入し、破砕試料に1mlのトリゾル試薬(Life technologies社製)を加え、杵部材を臼部材に挿入して押圧、回転して擂潰し破砕した。
破砕後の破砕物を遠心分離操作し、非破砕試料を除去し、破砕物からRNAの抽出を行った。抽出したRNAの濃度は分光光度計を用いて定量した。結果を表1に示す。
図3Aに示す蓋部装着時の全長が40mmのポリプロピレン製試料回収容器と、図2に示す全長が30mm、底部に直径3mm、厚さ1.5mm、軸直交断面の直径が70〜130μmの孔径を有するポリプロピレン製のフィルタ部材が装着された逆載頭円錐状でテーパー角(θb)が12°、粗面がJIS B0601(2001)の最大高さ(Rz)68〜73μmのポリプロピレン製の臼部材、および長さ65mm、テーパー角(θa)が11°、粗面がJIS B0601(2001)の最大高さ(Rz)68〜73μmのポリアセタール製の棒状の杵部材とからなる試料破砕回収器具を使用してマウスの肝臓および腎臓からRNAの抽出を行った。
前記試料回収容器に臼部材を挿入し、マウスの各臓器約50mgを切り出しておのおの前記臼部材に入れ、200μlのトリゾル試薬(Life technologies社製)を加えた。次いで、杵部材を臼部材に挿入して押圧、回転して擂潰し破砕した。
杵部材を臼部材に挿入したまま試料破砕回収器具を遠心分離操作し、臼部材と杵部材とを取り出し800μlのトリゾル試薬を加え、試料回収容器の底部から破砕試料を回収し、回収した破砕物からRNAの抽出を行った。抽出したRNAの濃度は分光光度計を用いて定量した。結果を表1に示す。
特許文献2の図4に示す形状の試料破砕器具として、バイオマッシャーI(株式会社ニッピ製)を使用して肝臓および腎臓組織50mgを破砕した。この試料破砕器具に使用するフィルタ部材は、直径6mm、厚さ1mm、軸直交断面の直径が70〜130μmの孔径を有するポリプロピレン製であった。
予めフィルタ部材を破砕用チューブ11に装着し、前記フィルタ12上に組織と200μlのトリゾル試薬を投入し、開口部側から破砕棒20を滑動自在に密封して挿入した。その後、試料回収用チューブ40に前記破砕用チューブ11を破砕棒20と共に挿入し遠心した。遠心後に破砕用チューブ11と破砕棒20とを除去し800μlのトリゾル試薬を加え、試料回収用チューブ40の底部から、破砕試料を回収し、回収した破砕物からRNAの抽出を行った。抽出したRNAの濃度は分光光度計を用いて定量した。結果を表1に示す。
破砕試料を心臓組織50mgに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、RNA抽出量を測定した。結果を表2に示す。
破砕試料を心臓組織50mgに変更した以外は、比較例4と同様に操作して、RNA抽出量を測定した。結果を表2に示す。
(1)比較例1と比較例2の結果から、肝臓などの軟組織であっても、杵部材と臼部材に粗面加工を形成した比較例1のタンパク質量は、粗面加工のない比較例2より1.2倍も収量が高く、粗面加工によって破砕効率を向上しうることが判明した。
(2)比較例3、実施例1、比較例4の結果から、フィルタ部材を配置し、かつ粗面加工を有する杵部材、臼部材からなる本発明の試料破砕器具は、肝臓などの軟組織からRNAを効率的に抽出しうることが判明した。特に、粗面加工を有する杵部材、臼部材を有するがフィルター部材は有しない比較例3の試料破砕器具のデーターと比較すると、試料がフィルター部材を通過することでより微細に粉砕され、この結果、RNA抽出量が上昇したと推定される。なお、比較例3のRNA抽出量は、比較例4のRNA抽出量と近似した。これにより、粗面加工が形成された杵部材や臼部材によって、フィルター部材を通過すると同程度の破砕がなされることが判明した。
(3)実施例2と比較例5の結果から、心臓などの繊維含有量が多い組織では、粗面加工を有する杵部材、臼部材からなる本発明の試料破砕器具を使用すると、フィルター部材を通過させただけの比較例5より、6倍のRNAを抽出することができた。
11・・・テーパー、
13・・・跳ね返り防止部材、
15・・・螺旋状の溝、
16・・・螺旋状の突出部、
20・・・臼部材本体、
23・・・係止部材、
25・・・フィルタ部材、
27・・・上端フランジ、
27b・・・上端フランジの突出部、
28・・・ヒンジ、
29・・・蓋部、
30・・・スクリュー容器および試料回収容の筒状体、
33・・・試料回収容の蓋部、
33a・・・試料回収容の蓋部の貫通孔、
P・・・杵部材、
M・・・臼部材、
R・・・試料回収容器、
Ra、Rb・・・粗面加工
Claims (5)
- 棒状の杵部材と、前記杵部材を挿入しうる臼部材とからなる試料破砕器具であって、
前記杵部材は、杵部材本体の少なくとも一の端部に粗面加工されたテーパー部が形成され、
前記臼部材は、底部が逆載頭円錐状に形成された筒状であり、前記逆載頭円錐状の載頭端部が開口し、前記開口した開口部に係止部材を介してフィルタ部材が配設され、前記杵部材を挿入した際に前記杵部材のテーパー部と載頭円錐状の接触面に粗面加工がなされ、
前記杵部材の長手方向の中心線に対するテーパー角と、臼部材の長手方向の中心線に対する前記逆載頭円錐状の内壁の角度とが略同一であり、
前記杵部材および臼部材に形成された粗面加工は、Rzが1〜300μmであることを特徴とする、試料破砕器具。 - 前記杵部材は、前記テーパー部に螺旋状の溝、および/または杵部材本体に螺旋状の突出部が形成されるものである、請求項1記載の試料破砕器具。
- 前記杵部材は、前記臼部材の内周より小径の跳ね返り防止部材が貫通している、請求項1または2記載の試料破砕器具。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の試料破砕器具と、前記試料破砕器具を内部に収納しうる、筒状の試料回収容器とを備える試料破砕回収器具。
- 更に、前記試料回収容器内で前記臼部材の回転が防止される機構を配設する、請求項4記載の試料破砕回収器具。
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