JP5544653B2 - 抗原抗体反応の検出方法 - Google Patents

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本発明は、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)によって発生する表面プラズモン共鳴光により蛍光物質を励起して蛍光を発生させ、表面プラズモン励起増強蛍光を検出することにより抗原抗体反応を検出できるバイオチップ、抗原抗体反応検出用キット、及び、それらを用いた抗原抗体反応の検出方法に関する。
生体分子の相互作用を調べる技術であるバイオセンシングや、それに使用されるバイオチップの開発が成されている。生体分子の相互作用を調べる方法の一つに、表面プラズモン共鳴(以下SPRとも記す)を使用した分光分析法が知られている。例えば、下記特許文献1には、表面プラズモン共鳴測定及び蛍光測定によって得られた信号を個別に分析することによって、被検体の固相への結合を判定する装置及びその方法が開示されている。また、下記特許文献2には、抗原抗体反応などの生体分子相互作用を高精度で検出することができる装置および方法が開示されている。
また、下記特許文献3には、クレッチマン型のようにプリズムを使用する必要が無い、表面に周期構造を有するマイクロプレート、及びそれを用いた表面プラズモン励起増強蛍光顕微鏡が開示されている。
特開平10−307141号公報 特開2006−208069号公報 特開2008−286778号公報 国際公開第2008/099968号パンフレット
バイオセンシングやバイオチップの開発においては、第1の課題として高感度検出が可能な装置の開発があり、第2の課題として特異的にターゲットを認識する抗体を高密度にチップ表面に配列させる技術の開発がある。しかし、現状ではこれらの課題は十分には達成できていない。
第2の課題に関しては、上記した特許文献4に、酸化亜鉛結合性ラクダ抗体によって抗体を酸化亜鉛に安定的に結合できることが開示されている。また、上記非特許文献1には、燐酸緩衝液を調整すれば、酸化亜鉛への任意のタンパク質の非特異吸着を抑制し、酸化亜鉛結合性ペプチドと融合させたGFPを酸化亜鉛に特異吸着させることができることが開示されている。しかし、タンパク質の非特異吸着をより抑制し、特異的にターゲットを認識する抗体を、より高密度にチップ表面に配列させる手段が要望されている。
本発明は、上記の課題を解決すべく、高感度検出が可能であり、特異的にターゲットを認識する抗体を高密度にチップ表面に配列させることができるバイオチップ、抗原抗体反応検出用キット、及び抗原抗体反応の検出方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の第1のバイオチップは、
表面に周期構造を有するベース基板と、
前記周期構造の上に形成された金属層と、
前記金属層の上に形成された消光抑制層と、
前記消光抑制層の上に結合された二重特異性抗体とを備え、
前記金属層が、表面プラズモン共鳴光を発生し得る金属で形成され、
前記消光抑制層が酸化亜鉛で形成され、
前記二重特異性抗体が、一端が酸化亜鉛を認識し、他端が抗原を認識する抗体であり、
蛍光標識されている前記抗原が前記二重特異性抗体の前記他端に結合された状態、または、蛍光標識されていない前記抗原が前記二重特異性抗体の前記他端に結合され且つ前記抗原を認識する蛍光標識された二次抗体が前記抗原に結合された状態で、
光が入射されて表面プラズモン共鳴光によって増強された電場を発生させ、
発生した前記電場を、前記抗原が蛍光標識されている場合には前記抗原の励起場として、前記二次抗体が前記抗原に結合されている場合には前記二次抗体の励起場として増強蛍光が検出されることを特徴としている。
本発明の第2のバイオチップは、上記の第1のバイオチップにおいて、
前記二重特異性抗体が、4F2−GFP4 VHHダイマーであることを特徴としている。
本発明の第3のバイオチップは、上記の第1又は第2のバイオチップにおいて、
前記金属層が、135nm以上200nm以下の厚さに形成された銀であり、
前記消光抑制層側から前記光を入射し、前記消光抑制層側から前記増強蛍光を検出するときに使用されることを特徴としている。
本発明の第4のバイオチップは、上記の第1又は第2のバイオチップにおいて、
前記金属層が、10nm以上50nm以下の厚さに形成された銀であり、
前記ベース基板側から前記光を入射し、前記消光抑制層側から前記増強蛍光を検出するときに使用されることを特徴としている。
本発明の第1の抗原抗体反応検出用キットは、
表面に周期構造を有するベース基板、前記周期構造の上に形成された金属層、及び、前記金属層の上に形成された酸化亜鉛層を有するチップと、
一端が酸化亜鉛を認識し、他端が抗原を認識する二重特異性抗体を含む溶液とを備え、
前記溶液が前記酸化亜鉛層の表面に接触され、前記二重特異性抗体が前記酸化亜鉛層に結合し、結合した前記二重特異性抗体に蛍光標識された前記抗原が注入された後、あるいは、結合した前記二重特異性抗体に蛍光標識されていない前記抗原が注入され、且つ前記抗原を認識する蛍光標識された二次抗体が注入された後、表面プラズモン励起増強蛍光の検出に使用されることを特徴としている。
本発明の第2の抗原抗体反応検出用キットは、上記の第1の抗原抗体反応検出用キットにおいて、
前記二重特異性抗体が、4F2−GFP4 VHHダイマーであることを特徴としている。
本発明の第1の抗原抗体反応の検出方法は、
表面に周期構造を有するベース基板と、前記周期構造の上に形成された金属層と、前記金属層の上に形成された酸化亜鉛層とを有するバイオチップを用いて抗原抗体反応を検出する方法であって、
前記バイオチップの前記酸化亜鉛層の表面に、一端が酸化亜鉛を認識し、他端が抗原を認識する二重特異性抗体の前記一端を結合させる第1ステップと、
前記二重特異性抗体の前記他端に前記抗原を結合させる第2ステップと、
前記第2ステップ後のバイオチップに、光を入射して表面プラズモン共鳴光によって増強された電場を発生させ、発生した前記電場を励起場として用いて増強蛍光を検出する第3ステップとを含み、
前記抗原が蛍光標識されている場合には、前記第3ステップにおいて、発生した前記電場を前記抗原の励起場として用い、
前記抗原が蛍光標識されていない場合には、前記第2ステップが、前記抗原を認識する蛍光標識された二次抗体を前記抗原に結合させる第4ステップを含み、前記第3ステップにおいて、前記電場を前記二次抗体の励起場として用いることを特徴としている。
本発明の第2の抗原抗体反応の検出方法は、上記の第1の抗原抗体反応の検出方法において、
前記二重特異性抗体が、4F2−GFP4 VHHダイマーであることを特徴としている。
本発明の第3の抗原抗体反応の検出方法は、上記の第1又は第2の抗原抗体反応の検出方法において、
前記第2ステップにおいて、前記二重特異性抗体の前記他端に前記抗原を結合させた後の前記バイオチップを、界面活性剤を含む燐酸緩衝液でリンスすることを特徴としている。
本発明の第4の抗原抗体反応の検出方法は、上記の第1〜第3の抗原抗体反応の検出方法の何れかにおいて、
前記第3ステップにおいて、633nmの波長の前記光を前記酸化亜鉛層側から共鳴角度Y°の入射角度で入射し、前記酸化亜鉛層側から検出角度X°で前記増強蛍光を検出し、
前記周期構造のピッチが、300nm以上420nm以下または630nm以上800nm以下の場合、Y+6−1≦X≦Y+6+1であり、
前記周期構造のピッチが、440nm以上630nm未満の場合、Y−6−1≦X≦Y−6+1であり、
前記周期構造のピッチが、420nmより大きく440nm未満の場合、−Y+6−1≦X≦−Y+6+1、且つ、X≧0であることを特徴としている。
本発明の第5の抗原抗体反応の検出方法は、上記の第1〜第3の抗原抗体反応の検出方法の何れかにおいて、
前記第3ステップにおいて、633nmの波長の前記光を前記ベース基板側から共鳴角度Z°の入射角度で入射し、前記酸化亜鉛層側から検出角度X°で前記増強蛍光を検出し、
前記周期構造のピッチが、300nm以上380nm以下または660nm以上760nm以下の場合、Z+18−1≦X≦Z+18+1であり、
前記周期構造のピッチが、440nm以上560nm以下の場合、Z−18−1≦X≦Z−18+1であり、
前記周期構造のピッチが、380nmより大きく440nm未満の場合、−Z+18−1≦X≦−Z+18+1、且つ、X≧0であり、
前記周期構造のピッチが、560nmより大きく660nm未満の場合、−Z+65−6≦X≦−Z+65+6、且つ、X≧0であることを特徴としている。
本発明によれば、従来よりも高い検出感度で、増強蛍光を検出することができる。消光抑制層に酸化亜鉛を使用するので、SiOを使用する場合のように酸化されることがなく、安定して測定が可能である。
また、一端が酸化亜鉛に結合し他端が蛍光標識タンパク質に結合する二重特異性抗体を使用するので、検出対象である蛍光標識タンパク質を特異的に消光抑制層(酸化亜鉛)の近傍に位置させることができる。さらに、界面活性剤(Tween20)を含む燐酸緩衝液でリンスすることにより、消光抑制層(酸化亜鉛)へのタンパク質等の非特異吸着を抑制することができる。
具体的には、本発明によれば、正面照射系では、酸化亜鉛をコーティングしたガラス基板の300倍以上の増強蛍光を検出することができる。さらに、光学系を最適化することにより1000倍まで増強することも可能であり、pMオーダーの抗原濃度まで計測することができる。本発明により蛍光標識タンパク質からの蛍光強度を計測した値と、二重特異性抗体を使わないで非特異吸着による蛍光標識タンパク質からの蛍光強度を計測した値との比であるSample/Ctrlのシグナル比は、酸化亜鉛をコーティングしたガラス基板の数十倍以上向上する。
また、本発明によれば、背面照射系では、酸化亜鉛をコーティングしたガラス基板の30倍以上の増強蛍光を検出することができる。さらに、光学系を最適化することにより100倍以上の増強が可能である。Sample/Ctrlのシグナル比は、酸化亜鉛をコーティングしたガラス基板の100倍に向上する。また、pMオーダーの抗原濃度まで計測することができる。
また、本発明によれば、検査時間が短く迅速な検査が可能である。例えば、本発明によれば、22pMという非常に濃度の薄い試料に関して、約30分の迅速な検査が可能である(実施例3参照)。また、これよりも濃度の高い試料であれば、約10分というさらに迅速な検査が可能である。
さらに、消光抑制層としてSiO2を用いる場合と比較すると、本発明によれば、屈折率(誘電率)が大きいZnOを使用することによって、抗原の結合位置での電場強度を大きくすることができ、二重特異性抗体を高密度に周期構造基板に結合させることができるので、実施例は省略するが、消光抑制層としてSiO2を用い、これに抗体(本発明の二重特異性抗体ではない)を化学修飾した周期構造基板を使用する場合よりも、蛍光標識タンパク質を、濃度が低い場合でも高感度に計測することができる。
本発明の実施の形態に係るバイオチップの概略構造を示す図である。 バイオチップに対する入射光の方向及び増光蛍光の検出方向を示す図である。 ベース基板表面の周期構造を示す断面図である。 スロープを有する周期構造を示す断面図である。 正面照射系において、励起光の波長が633nmの場合に、周期構造のピッチに対する共鳴角(実線)および共鳴角で入射した場合の蛍光ピークが現れる検出角度(破線)の関係を示すグラフである。 背面照射系において、ベース基板がポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいはSiO(Glass)であり、励起光の波長が633nmの場合に、周期構造のピッチに対する共鳴角の関係を示すグラフである。 2次元周期構造を示す平面図である。 部分的に周期構造を形成したマイクロプレートの構成を示す断面図および平面図である。 本発明のバイオチップ(Ag膜厚139nm)を用いて正面照射系で測定した反射率を示すグラフである。 本発明のバイオチップ(Ag膜厚139nm)を用いて正面照射系で測定した蛍光強度を示すグラフである。 本発明のバイオチップ(Ag膜厚135nm)を用いて正面照射系で測定した蛍光強度を示すグラフである。 本発明のバイオチップ(Ag膜厚135nm)を用いて正面照射系で3種類の入射角度について検出角度を変化させて測定した蛍光強度を示すグラフである。 本発明のバイオチップ(Ag膜厚39nm)を用いて背面照射系で測定した反射率を示すグラフである。 本発明のバイオチップ(Ag膜厚39nm)を用いて背面照射系で測定した蛍光強度を示すグラフである。 本発明のバイオチップ(Ag膜厚39nm)を用いて背面照射系で測定した反射率および蛍光強度を示すグラフである。 本発明のバイオチップ(Ag膜厚39nm)を用いて背面照射系で5種類の入射角度について検出角度を変化させて測定した蛍光強度を示すグラフである。
以下に、添付の図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るバイオチップの概略構造を示す断面図である。図1に示したバイオチップ1は、ベース基板2と、ベース基板2の表面に形成された第1接着層3、金属層4、第2接着層5、及び消光抑制層6とを備えて構成されている。本バイオチップ1が使用されるとき、消光抑制層6の表面に二重特異性抗体7を含む溶液が滴下され、消光抑制層6の表面に二重特異性抗体7が結合する。図1は、消光抑制層6の表面に二重特異性抗体7が結合している状態を示す。二重特異性抗体7は、一方の端部7aが消光抑制層6に結合(以下「認識」とも記す)し、他方の端部7bが特定の生体分子に結合する。
本バイオチップ1は、消光抑制層6の表面に二重特異性抗体7が結合した状態で、検出対象を含む溶液を搭載し、二重特異性抗体7の消光抑制層6に結合していない端部7bを、対象の生体分子と結合させた状態で、図2に示したように、バイオチップ1の正面または背面から所定波長の光Lin1、Lin2が照射される。これによって、表面プラズモン共鳴が発生し、対象の生体分子に結合された例えば蛍光標識タンパク質8からの増強された蛍光Lpを検出することができる。
ベース基板2は、表面に周期的構造である格子が形成されている。ベース基板2は、入射光および放射される蛍光に対して透明な材質、例えばガラス、プラスチックなどで形成されていれば、正面および背面の何れからの照射においても使用できる。光の照射と検出を同じ側から行うのであれば、ベース基板2は透明である必要はない。
周期構造は、例えば一方向に沿ってほぼ等間隔に配置された複数の溝を有する形状であり、溝は、例えば鋸歯状溝、正弦波状溝、矩形状溝である。上記した特許文献3に開示されたマイクロプレートと同様に形成することができる。ナノスケールの周期構造をもつ周期構造は、例えば、特許第3350711号公報、特許第2832337号公報、特開2004−117810号公報などに開示されている方法を使用して形成することができる。プラスチックであれば、型を用いたプレス成型や、光硬化樹脂を用いてナノインプリントによって形成することもできる。
具体的には、ベース基板2の表面の周期構造は、断面形状が図3に示した矩形状である。周期構造の周期(ピッチとも記す)、即ち隣接する溝の間隔(M+V)は、観察に使用する波長以下、例えば10〜1000nm(ナノメートル)であり、好ましくは100〜600nmである。周期構造の高さd(溝の深さ)は4〜400nm、アスペクト比d/Vは0.005〜10である。周期に対する凸部の長さの割合をM%、周期に対する凹部の長さの割合をV%として、M/(M+V)でデューティ比を定義する。望ましい溝の深さdは20〜40nmであり、望ましいデューティ比は0.5である。
第1接着増3は、ベース基板2と金属層4を接着するための層であり、ベース基板2が安定して金属層4と固着する材質であれば省略することができる。例えば、膜厚0.1〜3nmの薄膜として形成される。
金属層4は、金、銀、銅、プラチナ、ニッケルなどの遷移金属であることが好ましく、例えばスパッタによって形成される。金属層4の膜厚は、10〜500nmが好ましく、より好ましくは50〜200nmである。しかし、金属層4は、遷移金属に限定されず、表面プラズモンを発生可能な金属であればよく、その場合にも膜厚は10〜500nmが好ましく、より好ましくは50〜200nmである。
ベース基板2の表面に、スパッタなどによって金属層4を形成した場合、図4に示すように周期構造の段差部分に対応する部分が傾斜(以下、この部分をスロープSLという)して、金属層4は山(M%)、谷(V%)、スロープ(SL%)から構成される。図4において、第1接着増3は省略している。また、後述する金属層4の上の消光抑制層6も同様の形状に形成される。
第2接着増5は、金属層4と消光抑制層6を接着するための層であり、金属層4が消光抑制層6と安定して固着する材質であれば省略することができる。例えば、膜厚0.1〜3nmの薄膜として形成される。
消光抑制層6は、抗体と結合する抗体結合層でもあり、酸化亜鉛(ZnO)で形成されている。酸化亜鉛は、通常観察に使用される入射光や発生する蛍光の波長領域で吸収を持たず(若しくは吸収の少ない)、透明な薄膜として形成することができる。例えば、スパッタによって形成する。表面プラズモン励起増強蛍光法の特徴である増強蛍光は、蛍光分子と金属との距離が近いと、強い励起場で励起された蛍光も金属表面にエネルギー移動して消光されてしまう。従って、試料を金属層4から所定距離だけ離隔させて消光を抑制することが必要である。また、表面プラズモン共鳴による励起場は近接場であるために、金属表面から離れるにしたがってその電場強度は減衰するため、金属表面からおよそ100nm以内に存在する蛍光分子のみが効率よく励起される。そのために、消光抑制層6の膜厚は、約10nm〜100nmの範囲で金属層4の種類、消光抑制層6の屈折率、光の波長などに応じて決定される。酸化亜鉛は屈折率がSiOより大きく、消光抑制層の最適な膜厚はSiOより薄くなることが期待できる。たとえば、膜厚の最適値は、金属層4が銀で消光抑制層6が酸化亜鉛で、633nmの波長の励起光を用いた場合10〜50nmであり、より好ましくは10〜30nmである。
通常、試料を含む水溶液(燐酸緩衝液など)をバイオチップ1上に搭載して観測する。従って、金属層4に銀を使用する場合には、水中で非常に不安定な銀を保護するために、ベース基板2と銀との間および銀と消光抑制層6(ZnO)との間に、酸化を防止する層(酸化防止層)を形成することが望ましい。なお、酸化防止層は、少なくとも銀と消光抑制層6との間にあればよい。酸化防止層を別途に形成する代わりに、第2接着層5に酸化防止層としての機能を持たせてもよい。第1接着層3及び第2接着層5を、例えばクロム(Cr)、アルミニウム、チタン、パラジウムなどで形成すれば、銀を保護できる。
上記のように形成された、バイオチップ1を用いて生体分子の相互作用を検出する場合、消光抑制層6であるZnOの表面に二重特異性抗体7を結合させ、さらに蛍光標識タンパク質8で修飾した生体分子(図示せず)の蛍光標識タンパク質8を二重特異性抗体7に結合させる。例えば、ZnOの表面に、二重特異性抗体7を含む溶液を滴下し、さらに蛍光標識タンパク質8を含む溶液を滴下する。なお、本明細書では、「蛍光標識タンパク質」とは、蛍光試薬で標識されていない蛍光タンパク質をも意味する。また、蛍光標識タンパク質8の代わりに、二重特異性抗体7に抗原を結合させ、さらにこの抗原に蛍光標識された二次抗体を結合させてもよい。
蛍光標識タンパク質8は、例えばGFP(Green Fluorescent Protein)である。その場合、二重特異性抗体7には、例えば、酸化亜鉛結合性ラクダ抗体4F2と抗GFPラクダ抗体cAbGFP4を融合させた二重特異性抗体4F2−GFP4 VHHダイマーを使用する(特許文献4参照)。これはZnOとGFPを認識する部位をもつ二重特異性抗体である。分子量は31562、吸光係数は43100である。GFPを二重特異性抗体7に結合させた後に、界面活性剤(Tween20)を含む燐酸緩衝溶液でリンスすることによって、GFPのZnOへの非特異吸着を抑制することができる。これは、燐酸緩衝溶液中では、GFPはZnOに殆ど吸着しないからである。
本バイオチップ1は、光の入射および検出方向によって、望ましい条件が異なる。具体的には、Crの第1接着層3は膜厚1nm以下、Crの第2接着層5は膜厚約1nm、Agの金属層4は膜厚10〜500nmであり、正面照射系(消光抑制層側から光を入射)ではAgの膜厚約150nm以上が望ましく、背面照射系(ベース基板側から光を入射)ではAgの膜厚約30〜40nmが望ましい。ZnOの消光抑制層6は、抗体結合層でもあり、膜厚は約10〜20nmが望ましい。
また、後述するように、本バイオチップ1を使用する場合、適切な入射角度θin及び検出角度θoutで蛍光を検出することが望ましい。適切な入射角度θin及び検出角度θoutは分散曲線、ドルーデモデルを用いて、ある範囲で予想できるが、正確な角度は反射率の入射角依存性の計測および蛍光強度の検出角依存性の計測によって求めることができる。ピッチ480nmのチップでHe−Neレーザー光(波長633nm)を正面照射系で使用する場合には、例えば入射角度θin1は約10°〜16°が望ましく、約14°が最も望ましい。また、検出角度θoutは約5〜9°が望ましく、約7°が最も望ましい。ピッチ480nmのチップで上記と同じ波長の入射光を背面照射系で使用する場合には、例えば入射角度θin2(図2参照)は約12〜30°が望ましく、約23°が最も望ましい。また、検出角度θoutは約5〜9°が望ましく、約7°が最も望ましい。
望ましい入射角度θin及び検出角度θoutは、本バイオチップ1のピッチと入射光の波長とに依存するが、ピッチ480nm、波長633nm以外の場合には、次のように決定することができる。励起光の波長より40nm程度長波長側で蛍光検出をする場合において、検出角度θoutは正面照射系でみられる共鳴角Y°の+6±1°か−6±1°に設定するとよい。たとえば、633nmの光で励起する場合、約300〜約430nmあるいは約630〜約800nmのピッチをもつ本周期構造では、正面照射系の共鳴角+6±1°(Y+6−1≦θout≦Y+6+1)に、約430〜約630nmのピッチをもつ本周期構造では、正面照射系の共鳴角−6±1°(Y−6−1≦θout≦Y−6+1)に検出角を設定すればよい。なお、430nmのピッチ付近、より正確には約420〜約440nmのピッチでは、正面照射系の共鳴角Yと検出角度θoutとの和が6±1°になるように、検出角度を設定することが望ましい(Y+θout=6±1)。したがって、正面照射系の共鳴角Yに対して、−Y+6−1≦θout≦−Y+6+1、およびθout≧0を満たすように、検出角度θoutを設定することが望ましい。
また、背面照射系の場合、検出角度θoutは共鳴角Z°とすると、たとえば、ベース基板にポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用し、633nmの光で励起する場合、約300〜約380nmあるいは約660〜約760nmのピッチをもつ本周期構造では、背面照射系の共鳴角+18±1°(Z+18−1≦θout≦Z+18+1)に、約440〜約560nmのピッチをもつ本周期構造では、背面照射系の共鳴角−18±1°(Z−18−1≦θout≦Z−18+1)に検出角を設定すればよい。約380〜約440nmのピッチでは、背面照射系の共鳴角Zと検出角度θoutとの和が18±1°になるように、検出角度を設定する(Z+θout=18±1)。したがって、背面照射系の共鳴角Zに対して、−Z+18−1≦θout≦−Z+18+1、およびθout≧0を満たすように、検出角度θoutを設定する。約560〜約660nmのピッチでは、背面照射系の共鳴角Zと検出角度θoutとの和が65±6°になるように、検出角度を設定する(Z+θout=65±5)。したがって、背面照射系の共鳴角Zに対して、−Z+65−6≦θout≦−Z+65+6、およびθout≧0を満たすように、検出角度θoutを設定する。
図5に、正面照射系において、励起光の波長が633nmの場合に周期構造のピッチに対する共鳴角および蛍光ピークが現れる検出角度の関係を示す。図5において、シミュレーション結果を曲線で表し、共鳴角の実験値を黒点とエラーバーで表している。実線が共鳴角を表し、破線が蛍光ピークが現れる検出角度を表す。図5のグラフから、上記の正面照射系における角度条件が適切であることが分かる。
また、図6に、背面照射系において、ベース基板がPMMAとSiOの場合を示しており、励起光の波長が633nmの場合に周期構造のピッチに対する共鳴角の関係を示す。図6においても、シミュレーション結果を曲線で表し、共鳴角の実験値を黒点とエラーバーで表している。近接する2本の点線のうち、左側はベース基板がPMMAの場合を表し、右側はベース基板がSiOの場合を表す。なお、検出角は図5の破線に従う。図6の近接する2本の点線のうち左側の点線と、図5の破線とから、上記の背面照射系における角度条件が適切であることが分かる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、周期構造の形状は、上記した一方向に溝を有する形状に限定されず、ベース基板の表面に交差する2方向に溝を形成した2次元周期構造や円形(フレネル)の周期構造であってもよい。図7は、2次元周期構造が形成されたベース基板2’の平面図である。ベース基板5’の表面には、複数の溝部9が直交する2方向に、即ち凸部10が直交する2方向に配列している。溝9を形成する2方向は、直交していなくてもよく、斜めであってもよい。
また、図8(上側は縦断面図、下側は平面図)に示したように、ベース基板2”の表面上の、アレイ状に配置された複数の領域11に周期構造を形成した後、ベース基板2”の上に金属層4’、消光抑制層6’を順に形成すればよい。このとき、全ての領域11において周期構造の溝を同じ方向になるように形成することが望ましい。蛍光マイクロプレートリーダーで観測する場合、これらの複数の領域11の上に微量の試料をスポッティングして観測する。
また、図8では、ベース基板2”の表面全体に金属層4’および消光抑制層6’を形成しているが、これに限定されず、少なくとも周期構造が形成された領域11の上に金属層4’および消光抑制層6’が形成されていればよい。また、各領域11に、図7に示した2次元周期構造を形成してもよい。
また、本バイオチップ1と、二重特異性抗体7を含む溶液を封入したカプセルとを、少なくとも含むキットとして提供してもよい。その場合、カプセルの溶液をバイオチップ1の消光抑制層6の表面に滴下させて、二重特異性抗体7を消光抑制層6の表面に結合させて、抗原抗体反応の検出に使用すればよい。
以下に、実施例を示し、本発明の特徴をさらに明らかにする。
ベース基板にナノインプリントによる光硬化性樹脂を用いて周期構造を形成し、その上に、Cr(第1接着層)/Ag(金属層)/Cr(第2接着層)/ZnO(消光抑制層)の4層を成膜した。周期構造は、周期(M+N)が約480nm、デューティ比(M/(M+V))が約0.6である。第1接着層の厚さは1nm未満、第2接着層の厚さは1nm、消光抑制層(ZnO)の厚さは18nmである。そして、Agの厚さを変えて実験した。
実験に使用した試料は次のとおりである。
抗原として、GFPを用い、GFP 2.2μM(1mg/mLを100mL+Cy5 Labeling Kitで反応後カラムを通して1.1mL×2本(2:1で)回収)(分子量26795/吸光係数18700)を10倍希釈したものを標準試料(Tween入り緩衝溶液で調製)とした。
抗体として、上記した二重特異性抗体4F2−GFP4 VHHダイマー(分子量31562/吸光係数43100)1μMを用いた。
緩衝溶液は、10mMのphospahte(pH7.5)/200mMのNaClの混合溶液を用いた。GFP注入からは、10mMのphosphate(pH7.5)/200mMのNaCl/0.05%のTween20(Polyoxyethylene(20) sorbitan monolaurate):界面活性剤)の混合溶液を用いた。
SPR−SPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy)計測プロセスは、次のステップ1〜ステップ5の順序で行った。
ステップ1:緩衝溶液を注入後に測定(バックグラウンドの計測)
ステップ2:1μMの二重特異性抗体30μlを注入し、二重特異性抗体が基板に結合した後(10分から20分インキュベーション)に測定
ステップ3:10Mの緩衝溶液(二重特異性抗体Rinse)40μlを注入し、基板に結合しなかった二重特異性抗体を除去した後に測定
ステップ4:220nMのCy5標識GFP 30μlを注入し抗原抗体相互作用が十分に平衡状態になった10分経過後に測定
ステップ5:Tween入り緩衝溶液(GFP Rinse)40mlを注入し、基板に結合しなかったGFPを除去後に測定
上記の条件で作製したバイオチップを正面照射系で用い、波長633nmの光を入射して測定した。図9は、Agの厚さを139nmにしたときの、反射率R(%)を示すグラフである。Airは界面が空気での測定値であり、Bufferは界面が緩衝溶液の測定値である。
図10は、図9と同じチップを使用して、220nMのCy5標識GFP(Cy5−GFP)をRinse(ステップ5)後に測定した蛍光強度を示すグラフである。入射方向と検出方向の成す角度(入射角度θin1と検出角度θoutの和)を55°にして測定した。「Grating chip」は、図9と同じチップを使用した結果である。「ZnO-coated Glass slide」は、周期構造を形成していない平板ガラス上にZnOを形成したものを使用した結果である。
図11は、Agを厚さ135nmに形成したチップを使用し、図10と同様に測定したときの、蛍光強度を示すグラフである。最大ピークの入射角度は14°であるので、このときの検出角度は41°である。
図12は、図11と同じチップを使用して、3種類の入射角度(図11において下向きの矢印で示す14°、18°、20°)に対して検出角度を変化させて測定した結果を示すグラフである。図11のピーク値は、図12の白丸で示した値に対応する。図12から、何れの入射角度の場合にも、検出角度が7°のときに蛍光強度が最大となることが分かる。これは、蛍光がプラズモンと再結合することによって増強する結果を利用するものである。また、検出される蛍光強度のピーク値は、入射角度に依存するが、検出角度にはほとんど依存しないことが分かる。入射角度が14°、検出角度が7°の場合に最大の検出感度が得られる。
同様に、Agの厚さを変えたチップを用いて蛍光強度を測定した結果を表1に示す。
Figure 0005544653
表1において、周期構造「あり」は、本発明のチップを使用した場合であり、周期構造「なしは」平板ガラスを用いた場合である。全てZnOをコーティングしている。抗体「あり」は、上記の二重特異性抗体を使用し、ステップ1〜5を全て行った場合であり、抗体「なし」は、上記の二重特異性抗体を使用しなかった場合、即ちステップ2及び3を行わなかった場合である。蛍光強度1は、入射角度を14°、検出角度を41°にして測定した結果であり、蛍光強度2は、入射レーザーの強度を蛍光強度1の場合の4倍にし、入射角度を14°、検出角度を7°にして測定した結果である。なお、同等に作製したチップを用いても測定した日によって値が±20%以内で変動するので、同日の測定結果を比較できるように、異なる日に測定した結果に下線を引いている。
表1の、第1行〜第5行から、溶液中では光とのカップリングは大きくない(30%)が、銀の膜厚が大きいほどCy5−GFPの蛍光強度が高くなった。
一方、Agの厚さが同等である本発明のチップを用いた結果である第5行(上段の値)と第6行の値とを比較すると、蛍光強度が約70倍増大している。これは、二重特異性抗体による特異結合をプラズモン増強により高感度検出する効果であるが、第7行と第9行の比較および第10行(上段の値)と第11行の比較では約6倍しか増大していないことを考慮すると、二重特異性抗体と本発明の周期構造を有するチップとの相乗効果と言える。
また、第4行と第10行(上段の値)とを比較すると、蛍光強度が約70〜85倍増大している。これは、本発明のチップによる効果、即ち周期構造、Ag及び二重特異性抗体の効果である。
また、第4行と第10行の蛍光強度2を比較すると、約300倍増大している。蛍光強度1が70〜85倍程度の増強であるのに比べ、大きく増大しているのは、本発明のチップの効果(周期構造、最適なAgの膜厚、及び二重特異性抗体の効果)、及び検出角度を7°にすることによる蛍光とプラズモンの再結合の効果である。従って、本発明のチップを使用し観測条件を最適化すれば、蛍光強度を1000倍に増大させることも可能である。
実施例1と同様にチップを作製し、背面照射系で、上記のステップ1〜5でSPR−SPFS計測プロセスを行った。
図13は、Agの厚さを39nm(ZnOの厚さ、周期構造の周期は実施例1と同じ)にしたときの、反射率R(%)を示すグラフである。図14は、図13と同じチップを使用して、Cy5−GFPをRinse(ステップ5)後に測定した蛍光強度を示すグラフである。検出角度θoutを0°に固定し、入射角度θin2を変化させて測定した。
Agの厚さを変えたチップを用いて蛍光強度を測定した結果を表2に示す。
Figure 0005544653
表2において、周期構造、抗体の「あり」「なし」の意味は、表1と同じである。
蛍光強度3は、入射角度を24°、検出角度を0°にして測定した結果である。なお、第1行〜第3行の括弧を付した値は、入射角度を12.5°として測定した値である(後述する図15に示す蛍光強度のグラフにある低角側のピーク値に対応)。
表2の、第1行〜第3行から、銀膜厚が小さいほどCy5−GFPの蛍光強度が大きくなった。
また、Agの厚さが近似する本発明のチップを用いた結果である第1行と第5行とを比較すると、蛍光強度が約50倍増大している。これは、二重特異性抗体による効果であるが、第6行と第7行との比較、第8行と第9行との比較では約2倍しか増大していないことを考慮すると、二重特異性抗体と本発明の周期構造を有するチップとの相乗効果と言える。
また、第1行と第8行とを比較すると、蛍光強度が約24倍増大している。これは、本発明のチップによる効果、即ち周期構造、Ag及び二重特異性抗体の効果である。
実施例2と同様にチップを作製し、背面照射系で、上記のステップ1〜5と同様にSPR−SPFS計測プロセスを行った。但し、ステップ4において、Cy5標識GFP 30μlを注入してから測定するまでの時間、即ち抗原抗体相互作用が十分に平衡状態に達するまでの待ち時間は、2.2nM、22nMまたは220nMのCy5標識GFPを注入した場合には10分とし、22pMまたは220pMのCy5標識GFPを注入した場合には30分とした。
図15は、Agの厚さを39nm(ZnOの厚さ、周期構造の周期は実施例1、2と同じ)にしたときの、反射率R(%)及び蛍光強度(cps)を示すグラフである。検出角度θoutを0°に固定し、入射角度θin2を変化させて測定した。蛍光強度は、Cy5−GFPをRinse(ステップ5)後に測定した結果であり、Bufferは、図13のBufferと同じデータである。
図15の蛍光強度のグラフには2つのピークがある。図15の左側のピークは、AgとZnOとの界面でのSPRによるものであり、右側のピークは、ベース基板とAgとの界面でのSPRによるものである。Agの両側のベース基板とZnOとの屈折率が異なるために、ダブルディップのグラフになっている。また、Agの厚さが厚くなると、1つのピークになる。これは、下側(ベース基板とAgとの界面)で生じたSPRの影響が表に出てこないからである。12.5度での左側のピークには、溶液中に浮遊している物質からの光が含まれている可能性があるので、このような影響を受ける可能性がある場合には検出角23°で検出することが望ましい。
図16は、図15と同じチップを使用して、Cy5−GFPをRinse(ステップ5)後に測定した蛍光強度を示すグラフである。5種類の入射角度θin2(図15において下向きの矢印で示す10°、20°、24°、30°、40°)で検出角度θoutを正負の方向に変化させて測定した。負の角度は、図2において、バイオチップ1の法線よりも左側で蛍光Lpを検出することを意味する。図16において、S10、S20、S24、S30、S40は、入射角度10°、20°、24°、30°、40°に対応する。
図16では、蛍光強度は検出角度0°を挟んでほぼ対称なグラフになっている。入射角度20°又は24°の場合、検出角度の正負によらず約7°で蛍光強度が最大になっている。図16において下向きの矢印で示した値を比較すると、検出角度7°の値は、検出角度0°の値の約4.5倍増大している。従って、実施例2の表2の結果(検出角度0°)では、本発明のバイオチップを使用すればスライドガラスと比較して約24倍に増強された蛍光を検出することができたので、検出角度7°で検出すれば、スライドガラスと比較して100倍に増強された蛍光を検出することができる。
Agの厚さが37nmのチップ(ZnOの厚さ、周期構造の周期は実施例1、2と同じ)を作製し、背面照射系で、検出角を6°あるいは7°に設定し、GFPの濃度を変えてステップ1〜5でSPR−SPFS計測プロセスを行った。その結果を表3に示す。*を付した列は、最適な検出角にセットし、633nmの波長の光を透過させず、640nm以上の光を透過するようなフィルターを挿入したときの結果である。
Figure 0005544653
第3行と第4行の値を比較すると、220nMのGFP濃度で、検出された蛍光強度に有意な差が見られない。従って、ZnOをコーティングしただけで周期構造を有しない基板では、220nM以下の濃度では特異的結合を検出できない。
これに対して、第1行と第2行の値を比較すると、何れの濃度においても検出感度に数十倍から百倍の違いがある。即ち、本発明の周期構造を有する基板では、22pMの低濃度まで特異的結合を区別できる。このことから、本発明が、低濃度の抗原の特異的結合を検出する上で有効であることがわかる。
1 バイオチップ
2、2’、2” ベース基板
3 第1接着層
4、4’ 金属層
5 第2接着層
6、6’ 消光抑制層
7 二重特異性抗体
8 蛍光標識タンパク質
9 溝部
10 凸部
11 周期構造が形成された領域
Lin1、Lin2 照明光
Lp プラズモン励起増強蛍光

Claims (3)

  1. 表面に周期構造を有するベース基板と、前記周期構造の上に形成された金属層と、前記金属層の上に形成された酸化亜鉛層とを有するバイオチップを用いて抗原抗体反応を検出する方法であって、
    前記金属層が、135nm以上200nm以下の厚さに形成された銀であり、
    前記バイオチップの前記酸化亜鉛層の表面に、一端が酸化亜鉛を認識し、他端が抗原を認識する二重特異性抗体の前記一端を結合させる第1ステップと、
    前記二重特異性抗体の前記他端に前記抗原を結合させる第2ステップと、
    前記第2ステップ後のバイオチップに、光を入射して表面プラズモン共鳴光によって増強された電場を発生させ、発生した前記電場を励起場として用いて増強蛍光を検出する第3ステップとを含み、
    前記第2ステップにおいて、前記二重特異性抗体の前記他端に前記抗原を結合させた後の前記バイオチップを、界面活性剤を含む燐酸緩衝液でリンスし、
    前記抗原が蛍光標識されている場合には、前記第3ステップにおいて、発生した前記電場を前記抗原の励起場として用い、
    前記抗原が蛍光標識されていない場合には、前記第2ステップが、前記抗原を認識する蛍光標識された二次抗体を前記抗原に結合させる第4ステップを含み、前記第3ステップにおいて、前記電場を前記二次抗体の励起場として用い、
    前記第3ステップにおいて、633nmの波長の前記光を前記酸化亜鉛層側から入射角度Y°で入射し、前記酸化亜鉛層側から検出角度X°で前記増強蛍光を検出し、前記増強蛍光の強度がピークとなる際の前記入射角度Y°および前記検出角度X°の関係が、
    前記周期構造のピッチが、300nm以上420nm以下または630nm以上800nm以下の場合、Y+6−1≦X≦Y+6+1であり、
    前記周期構造のピッチが、440nm以上630nm未満の場合、Y−6−1≦X≦Y−6+1であり、
    前記周期構造のピッチが、420nmより大きく440nm未満の場合、−Y+6−1≦X≦−Y+6+1、且つ、X≧0であることを特徴とする抗原抗体反応の検出方法。
  2. 表面に周期構造を有するベース基板と、前記周期構造の上に形成された金属層と、前記金属層の上に形成された酸化亜鉛層とを有するバイオチップを用いて抗原抗体反応を検出する方法であって、
    前記金属層が、10nm以上50nm以下の厚さに形成された銀であり、
    前記バイオチップの前記酸化亜鉛層の表面に、一端が酸化亜鉛を認識し、他端が抗原を認識する二重特異性抗体の前記一端を結合させる第1ステップと、
    前記二重特異性抗体の前記他端に前記抗原を結合させる第2ステップと、
    前記第2ステップ後のバイオチップに、光を入射して表面プラズモン共鳴光によって増強された電場を発生させ、発生した前記電場を励起場として用いて増強蛍光を検出する第3ステップとを含み、
    前記第2ステップにおいて、前記二重特異性抗体の前記他端に前記抗原を結合させた後の前記バイオチップを、界面活性剤を含む燐酸緩衝液でリンスし、
    前記抗原が蛍光標識されている場合には、前記第3ステップにおいて、発生した前記電場を前記抗原の励起場として用い、
    前記抗原が蛍光標識されていない場合には、前記第2ステップが、前記抗原を認識する蛍光標識された二次抗体を前記抗原に結合させる第4ステップを含み、前記第3ステップにおいて、前記電場を前記二次抗体の励起場として用い、
    前記第3ステップにおいて、633nmの波長の前記光を前記ベース基板側から入射角度Z°で入射し、前記酸化亜鉛層側から検出角度X°で前記増強蛍光を検出し、前記増強蛍光の強度がピークとなる際の前記入射角度Z°および前記検出角度X°の関係が、
    前記周期構造のピッチが、300nm以上380nm以下または660nm以上760nm以下の場合、Z+18−1≦X≦Z+18+1であり、
    前記周期構造のピッチが、440nm以上560nm以下の場合、Z−18−1≦X≦Z−18+1であり、
    前記周期構造のピッチが、380nmより大きく440nm未満の場合、−Z+18−1≦X≦−Z+18+1、且つ、X≧0であり、
    前記周期構造のピッチが、560nmより大きく660nm未満の場合、−Z+65−6≦X≦−Z+65+6、且つ、X≧0であることを特徴とする抗原抗体反応の検出方法。
  3. 前記二重特異性抗体が、4F2−GFP4 VHHダイマーであることを特徴とする請求項またはに記載の抗原抗体反応の検出方法。
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