JP5544587B2 - 樹脂複合材成形用金型および樹脂複合材の製造方法 - Google Patents

樹脂複合材成形用金型および樹脂複合材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属、ガラスまたはセラミック等から成る基材と樹脂とが接合した樹脂複合材を形成するための金型および金属、ガラスまたはセラミック等から成る基材と樹脂とが接合されている樹脂複合材の製造方法に関する。
電気・電子部品、電気・電子機器および自動車部品等を含む多くの用途において、電気的特性、強度、剛性または耐熱性等の所定の性能を確保しながら、より軽量化、高機能化した部材が求められている。
このような要求に対応するために、従来、金属、セラミックスまたはガラス等からなる部材の一部を樹脂化した複合材、および樹脂で形成した部材を金属、セラミックスまたはガラス等からなる部材で補強した複合材のような、金属、セラミックスまたはガラス等からなる剛性の高い部材(基材)と樹脂とを接合して一体化した樹脂複合材が用いられている。
金属体と樹脂体を接合する方法として、金属体の表面に、凹凸を形成する等の処理を施した後、該金属体を金型内に挿入し、金型のキャビティーに樹脂を射出し、射出成形する方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。この方法では、射出成形時に溶融(軟化)状態の樹脂が、金属体表面の凹凸内に侵入し、その後の冷却過程でも樹脂が凹凸内に残存することから、アンカー効果により金属体と樹脂体の接着強度を確保して金属と樹脂が強固に接合した樹脂複合材を形成できる。
アンカー効果による金属等の基体と樹脂との接合・一体化について、本願発明者らは、基体として、金属(表面に陽極酸化皮膜を形成した金属を含む)、ガラス、セラミック、または紙とガラス繊維材と樹脂との複合材等の複合材に金属箔を積層またはメッキした材料を用い、この基体の表面を化学的に処理して、多官能の反応性化合物を結合させておくことにより、基体(反応性化合物)と樹脂との間に化学結合を生じさせ、基体と樹脂との間が強固に接合した樹脂複合材を得ることができることを見いだした(例えば、特許文献3、4)。
これらアンカー効果を用いた方法に限らず、金属、セラミックスまたはガラス等の基体と樹脂とを強固に接合させる多くの方法では、基体を所定の温度まで加熱した後、基体表面に樹脂を接触させて接合することが好ましい。
また、速やかに次の樹脂複合材の生産に移行できるように、基体と樹脂とを接触させた後(必要な場合は所定時間保持した後)は、得られた樹脂複合材を取り出すことができる所定の温度まで冷却することが好ましい。
このため、金型または金型の一部を加熱および冷却することで、金型のキャビティーに配置した基体を加熱および冷却することが行われている。
より具体的には、金型本体または基材を挿入するキャビティーを彫り込んだ入れ子に装着した電熱ヒーターを用いて金型本体または入れ子を加熱する方法が知られている。
また金型内に形成した流路に蒸気または温水のような熱媒体を流すことにより金型を加熱する方法、および電磁誘導を用いて金型を加熱する方法も知られている。
一方、金型の少なくとも一部分を冷却する場合には、金型に形成した流路に冷水等の冷却媒体を通して冷却する方法が知られている。また、冷風を用いて金型を外側から冷却する方法も知られている。
国際公開第WO2004/041532号公報 特開2007−203585号公報 特開2009−114504号公報 国際公開第WO2009/157445号公報
しかし、金型はある程度の大きさおよび質量を有することから、金型の少なくとも一部を加熱または冷却することにより基材を加熱または冷却することは、金型を加熱するために多くの熱量を供給する必要がある。同様に、金型を冷却するために多くの熱量を金型から奪う必要がある。
このため、基材の加熱および冷却のコストが高くなるという問題と、基材の加熱および冷却に多くの時間を要するため生産効率が低下するという問題があった。
そこで本発明は、基材と樹脂とを接合して樹脂複合材を形成するための金型であって、基材を高効率かつ迅速に加熱および冷却することができる金型を提供すること、および基材と樹脂とが接合された樹脂複合材の製造方法であって、基材を高効率かつ迅速に加熱および冷却することができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、キャビティーに基材を配置した後、該キャビティーに樹脂を導入することにより、前記基材と前記樹脂とを接合して樹脂複合材を形成するための金型であって、前記基材の温度を測定する温度センサーと、前記基材と接触して前記基材を加熱する加熱源と、前記加熱源が前記基材から離間して生ずる前記加熱源と前記基材との間の空隙に、前記基材を冷却する冷却媒体を導入する誘導路と、を含むことを特徴とする金型である。
本発明の態様2は、前記加熱源が、前記基材の前記樹脂と接合する面と反対側の面と接触および離間することを特徴とする態様1に記載の金型である。
本発明の態様3は、金型のキャビティーに基材を配置する工程と、加熱源を前記基材に接触させて前記基材を所定温度に加熱した後、前記キャビティーに樹脂を導入する工程と、前記加熱源を前記基体から離間させて生ずる前記基体と前記加熱源との間の空隙に冷却媒体を導入して前記基体を冷却する工程と、を含むことを特徴とする樹脂複合材の製造方法である。
本発明の態様4は、前記加熱源が、前記基材の前記樹脂と接触する面と反対側の面と接触することを特徴とする態様3に記載の製造方法である。
本発明の態様5は、前記基材が、水酸化物、水和酸化物、アンモニウム塩、アミン化合物、カルボン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩およびフッ化物より成る群から選ばれる少なくとも1つを含む金属化合物皮膜と、該脱金属化合物皮膜の上に配置された水シラノール含有トリアジンチオール誘導体を含んで成る反応性化合物層と、を含むことを特徴とする態様3または4に記載の製造方法である。
本発明の態様6は、前記金属化合物皮膜が、金属の水和酸化物および水酸化物の少なくとも一方を含むことを特徴とする態様5に記載の製造方法である。
本発明の態様7は、前記金属化合物皮膜が、リン酸水素金属塩、リン酸二水素金属塩およびリン酸金属塩より成る群から選択される少なくとも1つのリン酸塩を含むことを特徴とする態様5に記載の製造方法である。
本発明の態様8は、前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、前記所定の温度が前記熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点から−50℃〜+100℃の範囲であることを特徴とする態様3〜7のいずれかに記載の製造方法である。
本発明の態様9は、前記樹脂が熱硬化性樹脂であり、前記所定の温度が熱硬化性樹脂の硬化温度から+0℃〜+100℃の範囲であることを特徴とする態様3〜7のいずれかに記載の製造方法である。
本願発明の金型および樹脂複合部材の製造方法を用いることで、基材と樹脂とが接合されてなる樹脂複合材用の基材を高効率かつ迅速に加熱および冷却することが可能となる。
図1は、本発明に係る金型100の断面図であり、基材200を加熱可能な状態を示している。 図2は、本発明に係る金型100の断面図であり、基材200を冷却可能な状態を示している。 図3は、(a)加熱コアの位置の時間変化、(b)基材の温度の時間変化、(c)冷却媒体供給装置のオン/オフの時間変化、および(d)金型の開閉の時間変化を模式的に示すグラフである。 図4は、本発明に係る好ましい基材200の一部分を模式的に示す断面図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は、図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。
1.金型
図1は、本発明に係る金型100の断面図である。基材200を加熱可能な状態を示す。詳細は後述するが、加熱源として機能し、図の上下方向に移動可能な加熱コア300を基材200に接触させることにより基材200を加熱することができる。
従来の金型を加熱し、加熱された金型からの熱電伝導により基材を加熱する場合と比べて、直接、基材200を加熱できることから基材200を高効率でかつ迅速に加熱することが可能となる。
図2は、本発明に係る金型100の断面図であり、基材200を冷却可能な状態を示す。詳細は後述するが、加熱コア300は基材200と離間し、冷却媒体導入口22aよりも下方に移動している。このため、基材200と加熱コア300との間に空隙26が形成されている。例えば空気のような冷却媒体が冷却媒体誘導路22を通り、冷却媒体導入口22aから空隙26に導入される。そして冷却媒体が基材200に接触することで基材200を冷却することが可能となる。
従来の金型を冷却し、冷却された金型への熱電伝導により基材を冷却する場合と比べて、直接、基材200を冷却できることから基材200を高効率でかつ迅速に冷却することが可能となる。
以下に、金型100の詳細を説明する。
金型100は、固定側金型(上型)15と可動側金型(下型)11とから成なる。
固定側金型15と可動側金型11は、例えば真空吸着装置を金型開閉装置として用いることで、固定側金型15と可動側金型11とが接触した状態(閉じた状態)と固定側金型15と可動側金型11とが離間した状態(開いた状態)とを得ることができる。図1および図2はいずれも閉じた状態を示している。
なお、金型の配置は図1および図2に示す形態に限定されるわけではなく、上型15を可動側金型とし、下型11を固定側金型としてもよく、また上型15と下型11の両方を可動金型としてもよい。
さらに、本願発明に係る発明は、このような上型と下型のような上下に分離する金型に限定されるものではなく、キャビティーに基材200を挿入でき、基材200と樹脂16が接合して得られる樹脂複合材を取り出すことが可能な金型であれば如何なる形態の金型を用いてもよい。
上型15には上型キャビティー16が設けられている。上型キャビティー16の上部にはゲート18およびランナー19が設けられている。そして、図示しない、例えば射出成形機の射出機構等の溶融樹脂供給装置のノズルから供給された溶融した樹脂24がランナー19とゲート18を通り上型キャビティー16に供給され、冷却されて凝固する。
下型11には、その内部に基材200を配置することができる下型キャビティー12が設けられている。
下型キャビティー12と上型キャビティー16は、金型100が閉じた状態では、繋がって1つのキャビティーとなる。
なお、下型キャビティー12および/または上型キャビティー16は、金型内に中子設置し、該中子に設けてもよい。中子を使用すると、中子を取り替えるだけで容易にキャビティーの形状等を変更できるという利点がある。
また、下型キャビティー12の下部には、基材200と接触して基材200を加熱する加熱源として機能する加熱コア300が配置されている。加熱コア300は、図1および図2の上下方向に移動可能である。
図1に示す状態では、加熱コア300は、上方に位置し基材200と接触し、基材200を加熱することが可能である。
一方、図2に示す状態では加熱コア300は、基材200から離間し、冷却媒体導入口22aよりも下部に位置している。加熱コア300が基材200から離間することで、基材200と加熱コア300との間に空隙26が形成される。
この空隙26には、下型11内部に配置された冷却媒体誘導路22および冷却媒体導入口22aを介して冷却媒体を導入することが可能であり、空隙26に冷却媒体が導入されると基材200は冷却される。
加熱コア300は、例えば金属等の材料からなり、内部に基材200の温度(表面温度)を測定するための温度センサー14と、加熱コアを加熱するヒーター17とを有している。
加熱コアに用いる材料は、ヒーター17からの熱を均一に分布できるように熱伝導性に優れた材料であることが好ましい。このような材料として、ベリリウム銅および鋼を例示することができる。
加熱コア300は、基材200をより均一に加熱できるように、好ましくは基材200の樹脂24を接合する面積の50%以上の面積と接触できる。また、加熱コア300は。基材200を過度な加熱を抑制するために、好ましくは基材200の樹脂24を接合する面積の120%以下の面積と接触できる。このような好ましい面積を有する加熱コア300と基材200との接触は、例えば基材200と樹脂24とが接合する部分の直下で、かつ基材200の樹脂24と接合する面の反対側の面等、基材200と樹脂24の接合部の近傍であることが好ましい。
なお、図1に示す実施形態では、加熱コア300は、基材200の表面のうち樹脂24と接する表面と反対側の表面と接している。
このような実施形態では、加熱コアが樹脂24と干渉することがない。また、基材の厚さ方向の距離は一般的に幅方向の距離より短いことが多いため、基材200の樹脂と接す面を迅速に加熱できるという利点がある。
しかし、本願発明は図1に示す実施形態に限定されるものではなく、例えば基材200の側面と接触・離間するように加熱コア300を配置してもよく、また基材200が樹脂24と接する表面と同一の面内(例えば、樹脂24と接しない部分)と接触・離間するように加熱コア300を配置してもよい。
温度センサー14は、接触式と非接触式のいずれであってもよい。接触式の温度センサーとしては、例えば、熱電対、測温抵抗体、サーミスタ測温体がある。接触式の温度センサーを用いる場合、加熱コア300が基材200と接触している際に、温度センサー14も基材200と接触するように配置しなければならない。
非接触式温度センサーとしては、例えば赤外線センサーがある。温度センサー14が非接触式である場合は、温度センサー14が基材200と接触していなくても基材200の温度を測定できるため、加熱コア300が基材200と接触していない状態でも基材200の温度を測定できるという利点がある。
図1および図2に示すように、温度センサー14の側面は好ましくはセンサーコア13により取り囲まれている。センサーコア13は、ヒーター17からの熱が温度センサー14に伝わり、温度センサー14の温度測定結果が影響されるのを抑制する効果を有する。すなわち、センサーコア13を備えることにより、温度センサー14は、より正確に基材200の温度を測定することができる。センサーコア13は、熱伝導性低い材料よりなることが好ましく、このような材料として例えばセラミック、チタンおよびステンレス鋼を用いることができる。
なお、図1に示す実施形態では、上述のように温度センサー14は、加熱コア300の内部に配置されているが、このような実施形態に限定されるものではなく、温度センサー14として、接触式温度センサーまたは非接触式センサーを加熱コア300の外部(例えば上型15の内部)に配置してもよい。
加熱コア300と温度センサー14は、基材200に接合される樹脂24が導入される上型キャビティー16の配置に応じて、金型100内に複数個配置してもよい。
また、必要に応じて、温度センサー14は、加熱コア300の内部および/または外部に複数個配置してもよい。複数の温度センサー14を用いることで得られる、複数の温度測定値を例えばデータ処理装置に取り込み、平均値、中央値、最大値、最低値などの数値を用いて、基材200の温度を演算により決定することが可能となる。
ヒーター17は、加熱コア300を加熱昇温できる、既知の如何なる加熱体(ヒーター)を用いてもよい。このようなヒーターとして、例えば抵抗加熱式ヒーター、誘導加熱式ヒーター、および加熱コア300内に設けた流路を流れる温水または蒸気等の熱媒体(加熱体)がある。図1に示す例ではヒーター17は、ドリルで空けた穴の中に配置した抵抗加熱式のヒーターである。
ヒーター17は、基材200を所定の温度に昇温するのに十分な発熱量を有する。好ましくは、ヒーター17は基材200を400℃以上に加熱することができる。
図1に示す実施形態ではヒーター17は、加熱コア300の内部に配置されているが、これに代えて、またはこれに加えて、例えば加熱コア300の下部に接触して配置する等、ヒーター17を加熱コア300の外部に配置することも可能である。
加熱コア300は好ましくは、その側面と下型11との間に隙間20を有するように配置される。隙間20を有することで、加熱コア300の有する熱量が熱伝達により下型11に奪われるのを抑制することができるからである。
隙間20は、好ましくは0.5mm以上である。上述の効果をより確実に得ることができるからである。
なお、加熱コアの側面と下型11との間に隙間20を有するとは、加熱コア300の側面全体が完全に下型11と接触していない状態だけでなく、加熱コア300の側面の一部が下型11と接触している状態を含むことは言うまでもない。
加熱コア300の断面形状(加熱コア300が上下に移動する方向に垂直な面での形状)は任意の形状でよいが、好ましい断面形状は円形である。断面形状が円形であれば、熱膨張の異方性がなく、取り扱いが容易だからである。
下型11は、その内部に冷却媒体として機能する気体または液体を通すことができる冷却媒体誘導路22と、冷却媒体誘導路22の出口(空隙26または加熱コア300と対向する出口)として機能する冷却媒体導入口22aとを有する。
冷却媒体誘導路22と冷却媒体導入口22aとは、例えば、下型11にドリルで穴を空けることで設置することが可能である。
2.製造方法
次に上述の金型100を用いて、樹脂複合材を製造する方法を以下に詳述する。
まず、上型15と下型11を開いた(分離した)状態で下型11の下型キャビティー12に基材200を配置した後、上型15と下型11を閉じる(図1に示すように接触させる)。
以後は、図3を用いて説明する。
図3は、(a)加熱コアの位置の時間変化、(b)基材の温度の時間変化、(c)冷却媒体供給装置のオン/オフ(すなわち、冷却媒体の供給の有無)の時間変化、および(d)金型の開閉の時間変化を模式的に示すグラフである。いずれのグラフも横軸は時間の経過を示しており、全てのグラフの横軸(時間の経過)は同じである(すなわち、横軸上の位置が同じであれば同じ時間経過である)。
初期状態では、上述のように、そして図3(d)に示すように金型は閉じた状態であり、加熱コア300は最低位に位置している。ここで「最低位」とは、加熱コア300が上下に移動する際の最も下側の位置を意味し、この最低位にあるときは例えば図2に示すように、加熱コア300は冷却媒体導入路22aよりも低い位置(下側)に位置する。
また、初期状態では冷却媒体供給装置は、図3(c)に示すように作動しておらず、従って冷却媒体は空隙26に供給されていない。
さらに、初期状態では基材200は、例えば室温のような初期温度となっている。
そして、加熱コア300のヒーター17により、加熱コア300が所定の温度に達すると、図3(a)に示すように加熱コア300を最低位から最高位に上昇させる。ここで、「最高位」とは、加熱コア300が上下に移動する際の最も上側の位置(最も高い位置)を意味する。加熱コア300は、最高位に位置すると図1に例示するように基板200と接触する。
このような加熱コア300の上昇(および下降)は、加熱コア300を例えば、エア・シリンダーのような、信号により駆動(上昇および下降)・停止できる装置と接続することにより行ってよい。
そして、図3(b)に示すように基材200の温度が上昇する。この基材温度の上昇は、温度センサー14によりモニターされており、温度センサー14による測定結果を用い、必要に応じてヒーター17の発熱量をフィードバック制御してもよい。
基材200の温度が目標温度に達すると、上型15の上型キャビティー16に樹脂24(溶融状態の樹脂)が導入される。導入された樹脂24が基材200の表面に達すると、樹脂24は基材200と接合を開始する。
樹脂24の上型キャビティー16への導入は、例えば射出成形機の射出機構のノズルをランナー19に接続した後、射出機構よりランナー19とゲート18を介して樹脂24を上型キャビティー16に射出することにより行ってもよい。
なお、樹脂24の射出は、例えば成形外観に加えて、接合強度とそのバラツキを確認して、樹脂24を溶解するバレルおよびノズルの温度、射出速度、樹脂24を基材200に押し付ける保圧力、保圧時間等の条件を制御して行うのが好ましい。
基材200の目標温度は、基材200の種類および樹脂24の種類等により異なるが、例えば140℃〜550℃である。基材の200の目標温度は、樹脂24が熱可塑性樹脂の場合は、好ましくは、樹脂24のガラス転移点または融点の−50℃〜+200℃の範囲、より好ましくは、−30℃〜150℃の範囲であり、樹脂24が熱硬化性樹脂の場合は、好ましくは樹脂24の硬化温度の+0℃〜100℃の範囲であり、より好ましくは、+0℃〜80℃の範囲である。
樹脂24が、熱可塑性樹脂の場合、溶融した樹脂24により基材200が加熱され、基材200の表面の温度が上昇し、かつ樹脂24が流動して化学反応により接合する温度を維持するには、基材200の表面の温度がガラス転移点または融点の−50℃以上(融点のより50℃低い温度以上)であることが好ましく、+200℃を超えると、樹脂24が分解して物性が低下する場合があるからである。
一方、樹脂24が熱硬化性樹脂の場合は、基材200の表面上で樹脂24が流動して化学反応により接合するには、硬化温度以上であることが好ましいが、硬化温度の+100℃(硬化温度より100℃高い温度)を超えると、硬化速度が速すぎて、化学反応による接合が不十分になる場合があるからである。
なお、樹脂24が熱可塑性樹脂の場合の更により好ましい実施形態では、樹脂24がガラス転移点と融点の両方を有する場合は、融点の−50℃〜+200℃の範囲(より好ましくは、融点の−30℃〜150℃の範囲)であり、樹脂24が融点を有せずガラス転移点のみを有する場合は、ガラス転移点の−50℃〜+200℃の範囲(より好ましくは、ガラス転移点の−30℃〜150℃の範囲)である。
図3(b)に示す例では基材200の温度は、目標温度に到達後、目標温度に維持されているが、例えば目標温度以上の予め定めた範囲内等、所定の温度範囲内で変動してもよい。
基材200が目標温度(あるいは所定温度範囲内)で維持され樹脂24と基材が十分に接合されるともに、上型キャビティー16への樹脂24の導入が完了すると、図3(a)に示すように加熱コア300は、最高位から最低位に向かい下降を開始する。
この下降により、加熱コア300は基材200と離れ、基材200と加熱コア300との間に空隙26を生ずる。
そして、加熱コア300が冷却媒体導入口22aよりも下側に到達すると、図3(c)に示すように冷却媒体供給装置をONにし、冷却媒体を空隙26に導入する。空隙26に導入された冷却媒体は基材200を冷却する。また、基材200を冷却することにより樹脂24を冷却することも可能である。
冷却媒体供給装置として、例えば冷凍エアー発生機を冷却媒体誘導路22に接続してもよい。
冷却媒体としては、安価で取り扱いが容易なことから空気を用いることが好ましいが、これ以外にも窒素、炭酸ガスもしくはそれらの混合気体のような気体、または水もしくはブラインのような液体を用いることもできる。但し、液体を使用する場合は、温度センサー17と同センサーを挿入している穴の防水に配慮することが好ましい。
基材200の冷却は、得られた樹脂複合材を金型100から取り出すことができる所定の温度まで(図3(b)の例では初期温度と同じ温度まで)行う。そして、この所定の温度に達すると図3(d)に示すように金型100を開く。これにより得られた樹脂複合材を取り出すことができる。
3.基材
以下に基材200について説明する。
基材200として、用いることができる材料は、特に限定されるものはなく、例えば金属、ガラス、セラミック、表面に金属箔を積層またはメッキした複合材(例えば紙とガラス繊維材と樹脂との複合材)がある。また、陽極酸化被膜を形成した金属等、表面処理により新たな層を形成した材料を基材200として用いてもよい。
図4は、とりわけ好ましい基材200を示す、断面図である。
図4に示す基材200は、ベース材料1の上に、金属化合物皮膜2を有し、さらに金属化合物被覆の上に反応性化合物層3を有している。
ここで、ベース材料1は、金属、ガラス、セラミックまたは表面に金属箔を積層またはメッキした複合材(例えば紙とガラス繊維材と樹脂との複合材)である。ベース材料1は陽極酸化被膜を形成した金属であってもよい。
詳細は後述するが、金属化合物皮膜2は水酸化物、水和酸化物、アンモニウム塩、アミン化合物、カルボン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、およびフッ化物より成る群から選ばれる少なくとも1つを含む皮膜である。
反応性化合物層3は、アルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体、シラノール含有トリアジンチオール誘導体および脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体から成る群より選択される少なくとも1つを含んで成る分子層である。
本願発明者はベース材料1の上に、金属化合物皮膜2を有し、さらに金属化合物被覆の上に反応性化合物層3を有する基材200を用いることで、基材200と樹脂24との間が極めて強固に接合された樹脂複合材を得ることができることを見出した。
詳細は後述するが、金属化合物皮膜2の上に配置(塗布)された反応性化合物層3に含有されるアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体等は、以下のように変化することで、基材200と樹脂24とを強力に接合するものと考えられる。
但し、このメカニズムは、得られた結果より予想したものであり、本願発明の範囲を限定するものではない。
金属化合物皮膜2に塗布された反応性化合物層3に含有されるアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体は、まず加水分解によりシラノール含有トリアジンチオール誘導体となる。これにより金属化合物皮膜2との間に水素結合的な緩い結合を生じる。
次に、基材200を所定温度に加熱することでシラノール含有トリアジンチオール誘導体のシラノール部分と金属化合物皮膜2に含まれる水酸化物、水和酸化物、アンモニウム塩、アミン化合物、カルボン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸およびフッ化物等の少なくとも1つとの間に脱水または脱ハロゲン結合反応が起こり、シラノール含有トリアジンチオール誘導体は、脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体に変わる。この結果、反応性化合物は金属化合物皮膜と化学的に結合する。
そして、樹脂24が熱可塑性樹脂の場合は、加熱され溶融した状態の樹脂分子が、また、樹脂24が熱硬化性樹脂の場合は、流動状態の樹脂分子が、反応性化合物層3と接触して、脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体のトリアジンチオール誘導体部分(トリアジンチオール金属塩部分またはビスマレイミド類を結合したトリアジンチオール誘導体)との間に化学的結合を生じる。
本願発明の好ましい実施形態の1つでは、金型100内で、表面に反応性化合物層3を有する基材200を流動状態の樹脂24と接触させる際に、基材200の温度(表面温度)を温度センサー14で測定し、適切な温度に加熱した状態で、樹脂24を上型キャビティー16に射出することで、樹脂と基材とを強固に接合させることを特徴としている。
なお、本明細書において用いる用語「反応性化合物」および「反応性化合物層」は、アルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体、シラノール含有トリアジンチオール誘導体および脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体から成る群より選択される少なくとも1つを含んで成る分子層を意味する。
以下に図4に示した好ましい実施形態に係る基材200(以下、「好ましい基材200」という場合がある。)の詳細を説明する。
好ましい基材200を用いた樹脂複合材を得るためには以下の工程(処理)を実施する必要がある。
1).ベース材1の表面に金属化合物皮膜2を形成する金属化合物処理
2).金属化合物皮膜2のうえにアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体を含む反応性化合物を塗布し、金属化合物皮膜2の上に脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体を含む反応性化合物層3を形成する反応性化合物処理
3).前記反応性化合物処理をして得た好ましい基材200と金型100を用いて、基材200を所定の温度に加熱して樹脂24を接合する接合工程
これらのうち、接合工程については、「2.製造方法」で示した製造方法において、好ましい基材200を用いることで実現できる。
従って、以下に金属化合物処理と反応性化合物処理について説明する。
I.金属化合物処理
金属化合物皮膜(「化合物皮膜」ともいう)とは、水酸化物、水和酸化物、アンモニウム塩、アミン化合物、カルボン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、およびフッ化物より成る群から選ばれる少なくとも1つを含む皮膜を意味する。
好ましくは、これらの水酸化物、水和酸化物、アンモニウム塩、アミン化合物、カルボン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、およびフッ化物の合計が金属化合物皮膜の主成分(例えば質量比で金属化合物皮膜2の50%以上)となっている。
以下に金属化合物処理の詳細を示す。
I−1.ベース材料
ベース材料1には各種の金属、表面に皮膜を形成した金属、ガラス、セラミックスならびに例えば紙および/またはガラス繊維材と樹脂の複合基材のような複合材料に金属箔を積層またはメッキした材料などを用いることが可能である。
ベース材料1に用いる、好ましい金属として、鉄及びその合金、鋼(合金鋼を含む)、ステンレス鋼、アルミニウム及びその合金、銅及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金、これら金属および合金のメッキ品を例示できる。
セラミックは、アモルファスまたは結晶性の金属酸化物が使用可能である。好ましいアモルファスの金属酸化物の例は、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、石英ガラス、鉛ガラスである。結晶性の金属酸化物の例は、アルミナ、β-アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、ベリリア、酸化亜鉛、チタニア、ムラニア、酸化錫、ITO、フェライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウムなどがあげられる。また、表面に皮膜を形成した金属は、陽極酸化処理により上記結晶性金属酸化物皮膜を形成した金属材料として、アルマイトと呼ばれるアルミナを形成したアルミニウム合金、マグネシアを形成したマグネシウム合金、チタニアを形成したチタンおよびチタン合金、酸化亜鉛を形成した亜鉛および亜鉛合金、酸化錫を形成した錫および錫合金などがあげられる。
紙やガラス繊維材などに樹脂を複合強化した基材に金属箔を積層または金属および合金のメッキした材料としては、各種の基板材料がある。
これらの好適な金属より成るベース材料1は金属化合物皮膜2の形成が容易である。すなわちこれらの好適な金属は、その電位−pH図に示されるように、酸、アルカリに反応するpH範囲が広く、金属化合物皮膜の形成が比較的容易である。さらに、得られた金属化合物皮膜2が優れた安定性を有するという利点もある。
ベース材料1の形成には、押出し、圧延、プレス加工、鍛造加工、鋳造、ダイカスト、焼結などの各種の方法を用いることができる。また、これらの方法で成形後得られた成形材に機械加工を加えて形状、寸法等を調整してもよい。
ベース材料1の形状は、板(シート)状、管状、円筒状、直方体状、円錐状、角錐状を含む如何なる形状であってもよい。
I−2.洗浄処理
ベース材料1の表面は、製造工程で生じる偏析、酸化被膜により不均一となったり、加工成形時に使用した圧延油、切削油、プレス油などが付着したり、あるいは搬送時に、発錆、指紋の付着等などで汚れる場合がある。このため、ベース材料1の表面の状態によっては適切な洗浄方法を用いて洗浄処理を行うのが好ましい。但し、洗浄は必須の処理ではない。
洗浄方法には、研削、バフ研磨、ショットブラストなどの物理的方法、例えばアルカリ性の脱脂液中で電解処理を行い、発生する水素や酸素を利用して洗浄を行う電気化学的方法、アルカリ性、酸性および中性の溶剤(洗浄剤)による化学的方法を用いることができる。
操作の簡便性、コストの優位性から、化学的洗浄法を用いるのが好ましい。化学洗浄に用いる洗浄剤としては、硫酸−フッ素系、硫酸−リン酸系、硫酸系、硫酸−シュウ酸系、硝酸系のような酸性洗浄剤や水酸化ナトリウム系、炭酸ナトリウム系、重炭酸ナトリウム系、ホウ酸−リン酸系、リン酸ナトリウム系、縮合リン酸系、フッ化物系、ケイ酸塩系のようなアルカリ性洗浄剤を含む工業的に使用可能ないずれの洗浄剤を用いてもよい。安価であること、操作性が良いこと、ベース材料1の表面を荒らさないことから、縮合リン酸系、リン酸ナトリウム系、重炭酸ナトリウム系のような弱アルカリ性水溶液(弱アルカリ性洗浄剤)を用いるのが好ましい。
洗浄処理を行った後、必要に応じて表面の粗面化処理を行った後、後述する金属化合物処理により、ベース材料1の表面に所望の金属化合物皮膜2を形成することが不可欠である。従って、その前工程である洗浄処理では、ベース材料1の表面の付着物を除去し、次工程での処理が阻害されない程度に、金属の酸化物皮膜を除去し、均一化しておくとともに、ベース材料1が洗浄時に溶解等により過度に損傷しないことが好ましい。このため、ベース材料1が鉄、ステンレス系材料、アルミニウム合金材またはチタン材より成る場合、ベース材料1の溶解が僅かであるオルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウムのような弱エッチングタイプを用いるのが好ましく、表面を溶解しない非エッチングタイプを用いることがさらに好ましい。
非エッチングタイプの洗浄剤としては、縮合リン酸塩を主体とした洗浄剤を用いるのが好ましい。縮合リン酸塩としては、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム等を用いることができ、例えば、アルカリ成分が30g/L(そのうち縮合リン酸塩の占める割合が50〜60%)のpH約9.5の水溶液を用いることができる。処理温度は、40〜90℃、処理時間5〜20分程度で良好な洗浄を行うことができる。洗浄後には、水洗を行う。アルカリ成分の好ましい濃度20〜100g/L、より好ましくは20〜60g/L、最も好ましくは20〜40g/Lであり、好ましいpHは9〜12、好ましい温度は40℃〜60℃である。このような条件を満たす弱アルカリ性水溶液中にベース材料1を浸漬することで、表面の洗浄および均一化を行うことができる。
上記以外にも、ホウ砂やI族やII族のオルソケイ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ砂のようなナトリウム塩または第1リン酸ナトリウム、第2リン酸ナトリウム、第3リン酸ナトリウム等の各種リン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムのようなリン酸塩類を用いてもよい。
ベース材料1に銅または銅合金を用いる場合、上記のような弱エッチングタイプまたは弱酸を使用することが出来る。例えば、硫酸、塩酸、リン酸のような鉱酸の1%未満の溶液およびそれらの混合溶液で、温度30〜50℃で洗浄することが出来る。
一方、ベース材料1としてアルカリと反応し難いマグネシウムまたはマグネシウム合金を用いる場合は、上記の洗浄剤のほか、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを使用することが出来る。好ましい脱脂条件は、例えば、濃度10〜100g/L、温度50〜90℃の水酸化ナトリウム水溶液を使用する。
1−2.金属化合物処理
必要に応じて上述の洗浄処理および/または粗面化処理を実施した後、ベース材料1の表面に、金属化合物処理(「化合物処理」ともいう)を実施して、水酸化物、水和酸化物、アンモニウム塩、カルボン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩およびフッ化物の少なくとも1つを含む金属化合物皮膜2を形成する。
金属化合物処理は以下に示す化合物、酸等の少なくとも1つを用いて、例えばこれらの水溶液に浸漬することにより実施する。
なお、本明細書に示す「金属化合物被膜」の「金属」とは、ベース材料1に含まれる金属および詳細を以下に示す金属化合物処理に用いる溶液(金属化合物処理液)に含まれる金属のうちの少なくとも一種を意味する。
金属化合物処理は、アルカリ性の溶液を用いるアルカリ処理と、酸性の溶液を用いる酸性処理に大別できる。以下にそれぞれの詳細を示す。
アルカリ処理は詳細を以下に示す中性またはアルカリ性を示す溶液を用いて、例えばこれらの溶液に浸漬することにより金属化合物処理を行う。アルカリ処理ではpH7〜12の中性から弱アルカリ性を示す、化合物の水溶液を用いるのが好ましい。
酸性処理とは詳細を以下に示す酸性を示す溶液を用いて、例えばこれらの溶液に浸漬することにより金属化合物処理を行う。酸性処理ではpH2〜5の弱酸性を示す、化合物の水溶液を用いるのが好ましい。
アルカリ処理および酸性処理について、以下に具体的に用いる溶液を示して説明する。
I−2−1.アルカリ処理
アルカリ処理に用いる金属化合物処理液(アルカリ化合物の水溶液)にベース材料1を浸漬し金属化合物処理を行うことができる。
(1)I族元素の水酸化物、I族元素の塩、II族元素の水酸化物、II元素の塩
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムのようなI族元素(周期律表でI族の元素)の水酸化物;I族元素の塩;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムのようなII族元素(周期律表でII族の元素)の水酸化物およびII族元素の塩の水溶液を用いることができる。これらの何れかを用いることにより、ベース材料1の表面に、水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が生成する。このような金属化合物皮膜2の主成分となる水酸化物の例として金属水酸化物(金属はベース材料1に含まれる金属)がある。また、金属化合物皮膜2として、金属水酸化物に代えて或いは金属水酸化物とともに金属水和酸化物が生成する。
金属化合物処理に用いるI族元素の水酸化物、I族元素の塩、II族元素の水酸化物およびII族元素の塩をより詳細に示す。
I族元素の水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが例示される。例えば、水酸化ナトリウムの水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、水酸化ナトリウムの濃度0.04〜100g/L、温度30〜80℃で処理を行うのが好ましい。これにより、金属基体1の表面には、金属水酸化物および/または金属水和酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が形成される。
I族元素の塩とは、I族元素と酸とにより生ずる塩であり、その水溶液がアルカリ性を示す金属塩である。主に弱酸とI族元素とが結合して生じる塩であり、このようなI族元素の塩としては、オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、およびステアリン酸カリウムが例示される。例えば、炭酸カリウムの水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、炭酸カリウムの濃度0.05〜100g/L、温度30〜80℃で処理を行うのが好ましい。これにより、ベース材料1の表面には、金属炭酸塩、金属水酸化物および/または金属水和酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が形成される。
II族元素の水酸化物として、水酸化カルシウム、水酸化バリウムが例示される。例えば、水酸化バリウム八水和物の水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、水酸化バリウム八水和物の濃度0.05〜5g/L、温度30〜80℃で処理を行うのが好ましい。
また、II族元素の塩とは、II族元素と弱酸とにより生ずる塩であり、その水溶液がアルカリ性を示す金属塩である。主に弱酸とII族元素とが結合して生じる塩であり、このようなII族元素の塩としては、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、および酢酸バリウムが例示される。例えば、酢酸バリウムの水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、酢酸バリウムの濃度0.05〜100g/L、温度30〜80℃で処理を行うのが好ましい。これにより、金属基体1の表面には、金属カルボン酸塩、金属水酸化物および/または金属水和酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が形成される。
例えばI族元素の塩およびII族元素の塩として、オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のような、I族元素のケイ酸塩の水溶液を用いて金属化合物処理を行った場合は、形成された金属化合物皮膜2は主成分として水酸化物に加えケイ酸塩も含む場合が多い。なお、このようなケイ酸塩の例として金属ケイ酸塩(金属はベース材料1に含まれる金属)がある。例えば、オルソケイ酸ナトリウムの水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、オルソケイ酸ナトリウムの濃度は0.05〜100g/L、温度は30〜80℃であることが好ましい。これにより、金属基体1の表面には、金属ケイ酸塩、金属水酸化物および/または金属水和酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が形成される。
(2)アンモニア、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体または水溶性アミン化合物
アンモニア、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体または水溶性アミンの化合物の水溶液もアルカリ性を示す。これらの水溶液にベース材料1を浸漬しても金属化合物皮膜を形成できる。これらの水溶液の場合は、ベース材料1の表面に、金属水酸化物(金属はベース材料1に含まれる金属)のような水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が生成し、かつその極性からベース材料1にアミン錯体の形成および/または吸着が生じる。ただし、アンモニアの場合は、アルミニウムに対しては錯体を形成しない。また、アンモニアは、例えばアルミニウムと反応し水酸化物との複合塩であるアンモニウム塩を形成する。アンモニア、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、水溶性アミンは、広い意味でのアミン系化合物であり、アンモニア、ヒドラジン以外ではヒドラジン誘導体として加水ヒドラジン、炭酸ヒドラジン等を、水溶性アミンとしてメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、アリルアミン等を用いることができる。例えば、ヒドラジンの水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、ヒドラジンの濃度0.5〜100g/L、温度30〜80℃であることが好ましい。これにより、金属基体1の表面には、水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2に加え、金属とヒドラジンの錯体の形成および/またはヒドラジンの吸着による金属化合物皮膜2が形成される。
以上に説明した「(1)I族元素の水酸化物、I族元素の塩、II族元素の水酸化物、II族元素の塩」および「(2)アンモニア、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体または水溶性アミン化合物」の具体例は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムのような炭酸塩を含む。これらの炭酸塩の水溶液を用いて金属化合物処理を行うことで、ベース材料1の表面に、これら炭酸塩、炭酸水素塩及び/または水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が形成される。これらの炭酸塩、炭酸水素塩および/または水酸化物は、炭酸金属塩(金属はベース材料1に含まれる金属)を含んでもよい。また、種類の異なる金属の炭酸塩を混合した溶液中で金属化合物処理を行うことにより、ベース材料1に含まれる金属の炭酸塩以外の複数の炭酸塩を形成してもよい。
例えば、炭酸ナトリウムの水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、水溶液は炭酸ナトリウムの濃度:0.05〜100g/L、温度:30〜90℃の範囲内であることが好ましい。これにより、金属基体1の表面には、金属炭酸塩および/または金属水和酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が形成される。
I−2−2.酸性処理
以下に酸性処理に用いる金属化合物処理液の具体例を示す。
(1)リン酸、リン酸塩
リン酸、例えばリン酸水素亜鉛、リン酸水素マンガン、リン酸水素カルシウムのようなリン酸水素金属塩、例えばリン酸二水素カルシウムのようなリン酸二水素金属塩、および例えばリン酸亜鉛、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸カルシウムナトリウム、リン酸ジルコニウムのようなリン酸金属塩等の−HPO、−HPOまたは−POを含有するリン酸およびリン酸塩の溶液を用い、金属化合物処理を行う。なお、本明細書でいうリン酸とはオルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸等を含む広義の酸性のリン酸であり、リン酸塩とは、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸等の広義の酸性のリン酸の化合物を含む概念である。
リン酸を用いることで、ベース材料1の表面にリン酸金属塩および/または水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が形成される。
一方、リン酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、リン酸マンガン、リン酸水素マンガン、リン酸水素金属塩、リン酸二水素金属塩、リン酸金属塩、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウムナトリウム、リン酸ジルコニウム、リン酸バナジウム、リン酸ジルコニウムバナジウムのようなリン酸塩(リン酸の金属塩)の水溶液を用いて金属化合物処理を行うことにより、ベース材料1の表面に、これらリン酸塩および/または水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2を形成できる。これらのリン酸塩および/または水酸化物の金属化合物皮膜2は、ベース材料1に含まれる金属のリン酸金属塩を含んでもよい。また、種類の異なる金属のリン酸塩を混合した溶液中で金属化合物処理を行うことにより、複数のリン酸塩を形成してもよい。
例えば、リン酸ジルコニウムの水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、水溶液は、濃度:1〜100g/L、温度:20〜90℃であることが好ましい。また、これ以外のリン酸、リン酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、リン酸マンガン、リン酸水素マンガン、リン酸水素金属塩、リン酸二水素金属塩、リン酸金属塩、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸カルシウムのようなリン酸、リン酸塩の水溶液を用いる場合は、水溶液は、濃度:5〜30g/L、温度:20〜90℃であるのことが好ましく、温度については25℃〜75℃であることがより好ましい。一方、リン酸ジルコニウム、リン酸バナジウム、リン酸ジルコニウムバナジウムの水溶液を用いる場合は、水溶液は、濃度:0.2〜2g/L、温度:30〜70℃であるのことが好ましく、温度については50℃〜70℃であることがより好ましい。
(2)カルボン酸、カルボン酸塩
タンニン酸のようなカルボン酸水溶液を用い、アベース材料1に金属化合物処理を行う。これにより、ベース材料1の表面に、カルボン酸の金属塩、および/または水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜が生成する。
ギ酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸の金属塩の水溶液を用いて金属化合物処理を行ってもよい。この場合、ベース材料1の表面には、金属塩とその一部に水酸基が付いた塩基性の金属化合物皮膜2が生成する。例えばシュウ酸金属塩水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、水溶液は、濃度:0.5〜100g/L、温度30〜70℃であることが好ましい。
(3)フッ化物
フッ化水素酸、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、ケイフッ化水素酸、ケイフッ化アンモニウム、ホウフッ化水素酸、ホウフッ化アンモニウムのようなフッ化物水溶液にベース材料1を浸漬しても金属化合物皮膜を形成ができる。これにより、ベース材料1の表面に、金属フッ化物および/またはベース材料1に含まれる金属の水酸化物のような水酸化物を主成分とする金属化合物皮膜2が形成される。例えば、フッ化水素アンモニウム水溶液を用いて金属化合物処理を行う場合、水溶液は、濃度:1〜60g/L、温度:30〜70℃であることが好ましい。
(4)硫酸、硫酸塩
硫酸、または硫酸ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸カルシウム、硫酸チタニル、硫酸ジルコニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウムのような硫酸の金属塩水溶液を用い、金属化合物処理を行う。これらの硫酸、硫酸塩を用いた場合には、金属硫酸塩を主成分とする金属化合物皮膜2がベース材料1の表面に形成される。
例えば、硫酸カリウム金属塩の水溶液を用いて金属塩化合物処理を行う場合、水溶液は、濃度0.5〜30g/L、温度30〜60℃であることが好ましい。
以上に示した示す金属化合物処理の中でもベース材料1が、鉄及びその合金、鋼、ステンレス鋼、マグネシウム及びその合金、ならびに銅及びその合金から成る群から選択されるいずれかである場合、酸性処理の「(1)リン酸、リン酸塩」に記載の方法を用いるのが好ましい。
ベース材料1がアルミニウムまたはその合金である場合、アルカリ処理の「(1)I族元素の水酸化物、I族元素の塩、II族元素の水酸化物、II族元素の塩」およびならびに酸性処理の「(1)リン酸、リン酸塩」に記載の方法を用いるのが好ましい。
ベース材料1がチタンまたはその合金では、酸性処理の「(3)フッ化物」に記載の方法を用いるのが好ましい。
リン酸、リン酸塩による処理が好ましい理由は、金属化合物皮膜2として形成されるリン酸塩化合物が大きな極性を有し、トリアジンチオール誘導体のアルコキシシランが加水分解して生成するシラノールと結合しやすいためと考えられる。
I族元素の水酸化物、I族元素の塩、II族元素の水酸化物、II族元素の塩を用いた処理が好ましい理由は、水酸化物、水和酸化物がベース材料表面に密に形成されやすく、そのOH基および酸基がトリアジンチオール誘導体のアルコキシシランが加水分解して生成するシラノールと結合しやすいこと、及びその結合強度が大きいからであると考えられる。
フッ化物による処理が好ましい理由は、形成される金属のフッ化物のフッ素が活性で、トリアジンチオール誘導体のアルコキシシランが加水分解して生成するシラノールと結合しやすいためと考えられる。
反応性化合物中のアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体が金属化合物皮膜2に浸透して、金属化合物皮膜2と反応するサイトが多くなり、トリアジンチオール誘導体のアルコキシシランが加水分解して生成するシラノールと金属化合物皮膜2の水酸基、水和酸化物、アンモニウム基、リン酸基、炭酸基、硫酸基、ケイ酸基、カルボン酸基、またはフッ化物とが、加熱処理によって脱水反応または脱ハロゲン反応を起こし、化学的に結合する。この様にして、生成する脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体被覆と金属化合物皮膜2との間に、より強固な結合を得ることができる。
さらに、樹脂24が接合後に冷却されて収縮する際に、金属化合物皮膜2が樹脂24と金属化合物皮膜2との間に生じる応力を分散吸収し、樹脂24の剥離および金属化合物皮膜2のクラックの発生を防ぐ効果を有する。
なお、上記の溶液を用いた金属化合物処理は、ベース材料1の全体または一部を、溶液(金属化合物処理液)に浸漬することのみでなく、ベース材料1の表面の全部または一部を、スプレー、塗布等により溶液で被覆すること、または溶液と接触させることも含む。
従って、上記からも明らかなように、金属化合物皮膜2は、必ずしもベース材料1の表面全体に形成される必要はなく、適宜、必要な部分にのみ形成してもよい。
また、上述した金属化合物被膜を形成する方法を2つ以上組み合わせて、金属化合物処理としてもよいことは言うまでもない。
すなわち、複数の上述した金属化合物処理に用いる溶液(金属化合物処理液)を混合した溶液を用いて金属化合物皮膜を形成してもよい。また、上述した金属化合物処理に用いる溶液(金属化合物処理液)のうちの一種類を用いて金属化合物処理を行った後、別の種類の金属化合物処理液を用いて更に金属化合物処理を行ってもよい。
II.反応性化合物処理
上述の方法により、ベース材料1の表面に金属化合物皮膜2を形成した後、金属化合物皮膜2の上に反応性化合物層3を塗布して形成する。
反応性化合物層3は、金属化合物皮膜2に塗布された時点でアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体を含んでいる(好ましくは質量%で50%以上含んでいる。)
反応性化合物層3は、アルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体以外に例えばトリアジンチオールを含んでもよい。
反応性化合物層3に用いるアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体は、例えばアルコキシシラン含有トリアジンチオール金属塩のような、既知のものでよい。
即ち、以下の(式1)または(式2)に示した一般式で表される。
Figure 0005544587
Figure 0005544587
式中のR、RおよびRは炭化水素である。Rは、例えば、H−、CH−、C−、CH=CHCH−、C−、C−、C13−のいずれかである。Rは、例えば、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCHCHCH−、−CHCHSCHCH−、−CHCHNHCHCHCH−のいずれかである。Rは、例えば、−(CHCHCHOCONHCHCHCH−、または、−(CHCHN−CHCHCH−であり、この場合、NとRとが環状構造となる。
式中のXは、CH−、C−、n−C−、i−C−、n−C−、i−C−、t−C−のいずれかである。Yは、CHO−、CO−、n−CO−、i−CO−、n−CO−、i−CO−、t−CO−等のアルコキシ基である。式中のnは1、2、3のいずれかの数字である。Mはアルカリ金属であり、好ましくはLi、Na、KまたはCeである。
金属化合物皮膜2を被覆形成した後、金属化合物皮膜2の表面にアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体の被覆を形成するためにアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体の溶液を作製する。用いる溶媒は、アルコキシシラン含有トリアジンジチオール誘導体が溶解するものであればよく、水およびアルコール系溶剤がこれに該当する。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、カルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合溶媒も使用可能である。アルコキシシラン含有トリアジンジチオール誘導体の好ましい濃度は0.001g〜20g/Lであり、より好ましい濃度は0.01g〜10g/Lである。
得られた、アルコキシシラン含有トリアジンジチオール誘導体溶液中に、金属化合物皮膜2を備えたベース材料1を浸漬する。溶液の好ましい温度範囲、より好ましい温度範囲は、それぞれ0℃〜100℃、20℃〜80℃である。一方、浸漬時間は、1分〜200分が好ましく、3分〜120分がより好ましい。
この浸漬により、アルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体のアルコキシシラン部分は、加水分解してシラノールになるので、浸漬後のアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体は、シラノール含有トリアジンチオール誘導体となり、金属化合物皮膜2との間に水素結合的な緩い結合を生じ化学的結合力を得ることができる。
従って、これにより、表面に金属化合物皮膜2およびシラノール含有トリアジンチオール誘導体被覆を含む反応性化合物層3を有するベース材料1を得ることができる。
そして、ベース材料1を乾燥および脱水反応促進熱処理を目的に100℃〜450℃まで加熱する。この加熱により、シラノール含有トリアジンチオール誘導体のシラノール部分に、上述した金属化合物皮膜2に含まれる水酸化物、カルボン酸塩、リン酸塩、ケイ酸およびフッ化物の少なくとも1つと脱水または脱ハロゲン結合反応が起こることから、シラノール含有トリアジンチオール誘導体は、脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体に変わり、金属化合物皮膜2との間で化学的に結合する。
この加熱処理の結果、ベース材料1と金属化合物皮膜2および反応性化合物層3より成る、表面に樹脂を接合するのに用いる好ましい基材200を得ることができる。
次に、この脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体と樹脂との接合力をより強くするために必要に応じ適宜、反応性化合物層3の脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体を、接合補助剤として例えばジマレイミド類であるN,N’−m−フェニレンジマレイミドやN、N‘−ヘキサメエチレンジマレイミドのようなラジカル反応により結合性を有する化合物とジクルミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドのような過酸化物またはその他のラジカル開始剤とを含む溶液に浸漬する。浸漬後、好ましい基材200を、30℃〜270℃で、1分〜600分間、乾燥・熱処理する。
これにより、脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体は、トリアジンチオール金属塩(トリアジンチオール誘導体)部分の金属イオンが除去され、硫黄がメルカプト基になって、このメルカプト基がN,N’−m−フェニレンジマレイミドのマレイン酸の2つの二重結合部の一方と反応してN,N’−m−フェニレンジマレイミドを結合した脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体となる。
ラジカル開始剤は、樹脂を成形する際に行う加熱等の熱による分解でラジカルを生じ、上記マレイン酸による2つの二重結合部の他方の結合を開き、樹脂と反応、結合させる作用を有する。
さらに、必要に応じ適宜、過酸化物、レドックス触媒などのラジカル開始剤をベンゼン、エタノールなどの有機溶媒に溶解させた溶液を、浸漬またはスプレーにより噴霧する等により反応性化合物層3の表面に付着させて、風乾する。
ラジカル開始剤は、樹脂を成形する際に行う加熱等の熱による分解でラジカルを生じ、上記マレイン酸による2つの二重結合部の他方の結合を開き、または、トリアジンチオール誘導体の金属塩部分に働いて、樹脂と反応、結合させる作用を有する。
なお、本願発明に係る好ましい基材200と樹脂体24を一体化した樹脂複合材の金属化合物皮膜2および反応性化合物3が含む脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体は、例えばXPS分析(X線光電子分光分析)によりその成分を同定することができる。
4.樹脂
樹脂24は、上述したように熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン(PS)、ポリブチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル、ポリアミド(PA)、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アイオノマー樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルスルフォンなどの他、PC/ABS、PBT/ABS、PA/ABS、PC/PS等のポリマーアロイなどを使用できる。また、熱可塑性樹脂には、熱可塑性エラストマーも含む。熱可塑性エラストマーは、例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン系、トランスイソプレンなどのエラストマーを使用できる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノール、ポリウレタン、シリコーン、ジアリルテレフタレートなどを使用してよい。また、熱硬化性樹脂は、補強材、フィラーを添加したものであってもよい。
1 ベース材
2 金属化合物皮膜2
3 反応性化合物層3
11 可動側金型(下型)
12 キャビティー(下型キャビティー)
13 センサーコア
14 温度センサー
15 固定側金型(上型)
16 キャビティー(上型キャビティー)
17 ヒーター
18 ゲート
19 ランナー
22 冷却媒体誘導路
22a 冷却媒体導入口
24 樹脂
26 空隙
100 金型
200 基材
300 加熱コア

Claims (9)

  1. キャビティーに基材を配置した後、該キャビティーに樹脂を導入することにより、前記基材と前記樹脂とを接合して樹脂複合材を形成するための金型であって、
    前記基材の温度を測定する温度センサーと、
    前記基材と接触して前記基材を加熱する加熱源と、
    前記加熱源が前記基材から離間して生ずる前記加熱源と前記基材との間の空隙に、前記基材を冷却する冷却媒体を導入する誘導路と、
    を含むことを特徴とする金型。
  2. 前記加熱源が、前記基材の前記樹脂と接合する面と反対側の面と接触および離間することを特徴とする請求項1に記載の金型。
  3. 金型のキャビティーに基材を配置する工程と、
    加熱源を前記基材に接触させて前記基材を所定温度に加熱した後、前記キャビティーに樹脂を導入する工程と、
    前記加熱源を前記基体から離間させて生ずる前記基体と前記加熱源との間の空隙に冷却媒体を導入して前記基体を冷却する工程と、
    を含むことを特徴とする樹脂複合材の製造方法。
  4. 前記加熱源が、前記基材の前記樹脂と接触する面と反対側の面と接触することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記基材が、
    水酸化物、水和酸化物、アンモニウム塩、アミン化合物、カルボン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩およびフッ化物より成る群から選ばれる少なくとも1つを含む金属化合物皮膜と、
    該脱金属化合物皮膜の上に配置された水シラノール含有トリアジンチオール誘導体を含んで成る反応性化合物層と、
    を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の製造方法。
  6. 前記金属化合物皮膜が、金属の水和酸化物および水酸化物の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記金属化合物皮膜が、リン酸水素金属塩、リン酸二水素金属塩およびリン酸金属塩より成る群から選択される少なくとも1つのリン酸塩を含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
  8. 前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、前記所定の温度が前記熱可塑性樹脂のガラス転移点または融点から−50℃〜+100℃の範囲であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記樹脂が熱硬化性樹脂であり、前記所定の温度が熱硬化性樹脂の硬化温度から+0℃〜+100℃の範囲であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
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