JP5544352B2 - 触覚センサユニット、当該触覚センサユニットを備えたロボット、及び荷重算出方法 - Google Patents
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Description
更に上記構成の触覚センサユニットによれば、電圧印加手段が、圧電体層に異なる周波数の交流電圧を印加して、共振周波数検出手段が、片持ち梁構造体の第1の共振モードにおける第1の共振周波数と、第2の共振モードにおける第2の共振周波数とを検出する。被膜に加えられた垂直荷重と剪断荷重とは、後述の式(7)に示すように、第1の共振周波数の変化率である無荷重時に対する第1の変化率と第2の共振周波数の変化率である無荷重時に対する第2の変化率とに基づいて算出することができる。これにより、荷重算出手段は、1つの片持ち梁構造体の共振周波数に基づいて、垂直荷重と剪断荷重とを算出することができる。このように、1つの片持ち梁構造体によって複数の荷重方向成分を検知することができるので、片持ち梁構造体を同密度に設けた場合の触覚センサユニットの感度を、従来よりも向上させることができる。したがって、片持ち梁構造体を高密度に配置しやすいので、高性能化が容易な触覚センサユニットを実現できるという効果を奏する。また、同程度の感度の触覚センサユニットを実現するために必要な片持ち梁構造体の数を、従来に比べ減らすことができるので、製造コストを削減できる。
前記荷重算出手段は、前記第3の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第3の変化率に基づいて、前記荷重の前記被膜に対する垂直方向の成分と2つの剪断方向の成分とを算出し、当該2つの剪断方向の成分は互いに直交することが好ましい。
更に上記構成の荷重算出方法によれば、1つの片持ち梁構造体によって複数の荷重方向成分を検知することができるので、片持ち梁構造体を同密度に設けた場合の触覚センサユニットの感度を、従来よりも向上させることができる。
また、上記構成の荷重算出方法によれば、被膜に加えられた荷重のうち、垂直荷重と剪断荷重との正負により算出領域を複数象現に分け、複数象現の各々の象現内の点のうち、垂直荷重と剪断荷重との双方の絶対値が最大となる点における荷重誤差を補正する。その結果、垂直荷重と剪断荷重とによっては変化しない行列Aに基づいて算出した誤差をコーナー点の荷重データを用いて補正することができ、さらに、算出の参照とする参照荷重のデータを少なくでき、荷重算出方法による結果の信頼性を向上することができる。
図1は、本実施形態に係る触覚センサユニット1の概略構成を示すブロック図である。図2は、触覚センサユニット1の部分拡大断面図である。触覚センサユニット1は、片持ち梁構造体2、エラストマー3、基板4、およびマイコン部5を有している。基板4は、シリコンで形成されており、エラストマー3によって被覆されている。基板4上には、片持ち梁構造体2が複数設けられており、片持ち梁構造体2は、一端が基板4に固定され、当該一端から他端に向かって基板4から離れる方向に反り上がるように形成されている。マイコン部5は、各片持ち梁構造体2に接続されており、電圧印加部51、共振周波数検出部52および荷重算出部53を備えている。マイコン部5は、本発明の演算部を構成する。
従来技術では、垂直荷重と剪断荷重とを検知するために、2つの片持ち梁構造体を必要としていたが、本発明の実施形態によれば、従来技術と異なり、単一の片持ち梁構造体で複数方向の荷重成分を分離して検知することができる。従って、圧感と同時にすべり感覚の検知が容易な触覚センサユニットを実現できるという効果を奏する。また、本実施形態では、1つの片持ち梁構造体によって、複数の荷重方向成分(垂直荷重方向成分と剪断荷重方向成分)を検知できる。これにより、片持ち梁構造体を同密度に設けた場合の触覚センサユニットの感度を、従来よりも向上させることができる。したがって、片持ち梁構造体を高密度に配置しやすいので、触覚センサユニットの高性能化が容易である。また、同程度の感度の触覚センサユニットを実現するために必要な片持ち梁構造体の数を、従来に比べ減らすことができるので、製造コストを削減できる。
なお、本発明に係る触覚センサユニットは、圧電体層に印加する電圧の周波数を片持ち梁構造体の共振周波数に合わせることにより片持ち梁構造体の共振振動を誘起している。従って、片持ち梁構造体の共振振動が誘起されさえすれば、圧電体層が含まれることに限定されない。例えば、外部から基板やエラストマーに加振することにより片持ち梁構造体の共振を誘起しえる。また、圧電体層に換えて片持ち梁構造体にヒータ部を設けることで熱膨張による振動を誘起し得る。
PZT層2aの共振周波数は、エラストマー3に加わる荷重に応じて変化する。本実施形態では、図1に示す共振周波数検出部52が、片持ち梁構造体2の共振周波数を検出し、荷重算出部53が、検出された共振周波数の変化率に基づいて、エラストマー3に加わる荷重の垂直方向の成分と剪断方向の成分とを算出する。このように、本発明の荷重算出方法は、基板と、前記基板の上に形成された被膜と、圧電体層を含む片持ち梁構造体とを備えた触覚センサユニットにおいて、前記被膜に加えられた荷重を算出する荷重算出方法であって、前記片持ち梁構造体は、その一端が前記基板に固定され、当該一端から他端に向かって前記基板から離れる方向に反り上がっており、第1の共振周波数及び前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数で共振可能であり、前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とを算出する変化率算出ステップと、前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分を算出する方向成分算出ステップとを包含する。以下では、その算出方法について詳細に説明する。
fr1=a・PN …式(1)
fr1=b・PT …式(2)
fr2=c・PN …式(3)
fr2=d・PT …式(4)
が成り立つ。ここで、係数a〜dは、単位荷重に対する共振周波数変化率を示している。なお、係数a〜dの具体的な数値は、後述の実施例において例示する。
fr1(PN,PT)=fr1(PN,0)+fr1(0,PT) …式(5)
fr2(PN,PT)=fr2(PN,0)+fr2(0,PT) …式(6)
が近似的に成り立つ。これにより、
本発明の荷重算出方法によって算出された荷重値を補正する方法を説明する。補正処理では、予め求められた補正値に基づいて荷重の方向成分を補正する。行列A(数2)では軸上4点でのデータを用いて荷重を算出したが、実際には行列Aの値は一定でなく垂直荷重PNと剪断荷重PTとによって変化すべきである。ただ、算出に用いるデータをもっと細かく取って間を補間すれば算出精度が向上することは間違いないが、算出の参照とする参照荷重のデータは実用上は少ないほど良い。そこで測定荷重範囲フルスケールの8点を算出のために用いる。さらに、垂直荷重PNの正負、剪断荷重PTの正負により算出領域を4象現に分け、一つの象現内で軸上端点データを用いて線形逆算出を行なう。さらに線形逆算出した結果に対して、象現内で垂直荷重PN、剪断荷重PTの絶対値が最大となる点(コーナー点)での誤差を軸からの離れ具合に応じて補正する。以下にフルスケールの8点、即ち軸上4点とコーナー4点のうち、軸上4点を(−t、0)、(0、t)、(t、0)、(0、−t)とし、コーナー4点を(−t、−t)、(−t、t)、(t、t)、(t、−t)とした場合において、補正処理の詳細を説明する。
手順2:垂直荷重の第一推定荷重P1Nと剪断荷重の第一推定荷重P1Tの符号をそれぞれSN(=−1(P1N<0)、1(P1N≧0))、ST(=−1(P1T<0)、1(P1T≧0))とする。SN、STは、4象現いずれの場合をも含めて一般化した記述にするために導入した記号に過ぎない。
手順3:行列A1を定義する。
手順4:コーナー点での算出値pN(=A1 −1(fr1(tSN,tST))及びpT(=A1 −1(fr2(tSN,tST))と算出誤差eN(=pN−tSN)及びeT(=pT−tST))を求めておく。行列A1を用いた線形逆推定(手順5)では軸から離れた点で誤差が出ることが分かっているので、手順4でその誤差を予め求めておく。すなわち、「算出値pN、pTには算出誤差eN、eTが含まれている」ということである。
手順5:行列A1に基づき測定値から線形逆推定を行ない、第二推定荷重(P2=A1 −1F)を算出する。
手順6:コーナー点での算出誤差に基づいて第二推定荷重を求める。ここで、係数cはP2を補正するための係数であり、係数cとしては「軸上で0軸から離れるほど大きくなり、軸上最大絶対値点における算出値pN及びpTで1」という条件を満たす必要がある。
手順7:補正係数を用いて第二推定荷重の算出誤差を補正し、第三推定荷重P3を算出する。
また、本実施形態に係る触覚センサユニット1を、例えば介護ロボットに設けることにより、圧覚およびすべり感覚を高い精度で検知できる介護ロボットを実現できる。この場合、触覚センサユニット1の片持ち梁構造体2、エラストマー3および基板4は、介護ロボットの被介護者と接触する部分に設けられる。
垂直荷重PNと剪断荷重PTとを算出することができる。その算出結果を表6に示す。
2 片持ち梁構造体
2a PZT層(圧電体層)
2c Au層(電圧印加手段)
2d Pt/Ti層(電圧印加手段)
3 エラストマー(樹脂)
4 基板
5 演算部
51 電圧印加部(電圧印加手段)
52 共振周波数検出部(共振周波数検出手段)
53 荷重算出部(荷重算出手段)
Claims (5)
- 基板と、
前記基板の上に形成された被膜と、
一端が前記基板に固定され、当該一端から他端に向かって前記基板から離れる方向に反り上がった片持ち梁構造体とを備え、
前記被膜に加えられた荷重を検出する触覚センサユニットであって、
前記片持ち梁構造体は、第1の共振モードにおける周波数である第1の共振周波数、及び前記第1の共振モードとは異なる第2の共振モードにおける周波数であって、前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数で共振可能であり、
前記第1の共振周波数の荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分を算出する演算部を備え、
前記演算部は、
前記片持ち梁構造体に含まれる圧電体層に異なる周波数の交流電圧を印加して、前記第1の共振モードおよび前記第2の共振モードで前記片持ち梁構造体を共振させる電圧印加手段と、
前記第1の共振周波数と前記第2の共振周波数とを検出する共振周波数検出手段と、
前記被膜に荷重が加えられていない時を無荷重時として、前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第1の変化率と、前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第2の変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分である前記被膜に対する垂直方向の成分と剪断方向の成分とを算出する荷重算出手段とを備えることを特徴とする、触覚センサユニット。 - 前記電圧印加手段は、前記圧電体層に異なる周波数の交流電圧を印加して、第3の共振モードで前記片持ち梁構造体をさらに共振させ、
前記共振周波数検出手段は、前記第3の共振モードにおける前記片持ち梁構造体の第3の共振周波数をさらに検出し、
前記荷重算出手段は、前記第3の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第3の変化率に基づいて、前記荷重の前記被膜に対する垂直方向の成分と2つの剪断方向の成分とを算出し、当該2つの剪断方向の成分は互いに直交する、請求項1に記載の触覚センサユニット。 - 前記片持ち梁構造体は前記荷重の方向に対し非対称であり、
前記片持ち梁構造体には、互いに絶縁された複数の電極が設けられている、請求項1又は2に記載の触覚センサユニット。 - 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の触覚センサユニットを備えたロボットであって、
前記基板、前記被膜および前記片持ち梁構造体が、前記ロボットの接触対象物との接触部分に設けられていることを特徴とするロボット。 - 基板と、前記基板の上に形成された被膜と、片持ち梁構造体とを備えた触覚センサユニットにおいて、前記被膜に加えられた荷重を算出する荷重算出方法であって、
前記片持ち梁構造体は、その一端が前記基板に固定され、当該一端から他端に向かって前記基板から離れる方向に反り上がっており、第1の共振周波数及び前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数で共振可能であり、
前記第1の共振周波数の荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とを算出する変化率算出ステップと、
前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分を算出する方向成分算出ステップと、
前記被膜に加えられた荷重のうち、垂直荷重と剪断荷重との正負により算出領域を複数象現に分けるステップと、
前記複数象現の各々の象現内の点のうち、前記垂直荷重と前記剪断荷重との双方の絶対値が最大となる点における荷重誤差を補正する補正ステップと
を包含する荷重算出方法。
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