以下、本発明のいくつかの実施形態の例について図面を参照して説明する。
図1〜3に示すように、本発明の第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10は、絶縁基体1と、絶縁基体1の上面に設けられた枠状部2と、絶縁基体1および枠状部2との間に密閉空間を形成するように枠状部2の上に設けられたダイヤフラム3と、絶縁基体1の上に設けられた、静電容量形成用の静止側電極パターン11と、ダイヤフラム3の下面に設けられた可動側電極パターン31とを備えている。静止側電極パターン11と可動側電極パターン31との間には静電容量が形成される。
ダイヤフラム3が外部から圧力を受けたときに、その圧力に応じてダイヤフラム3が撓んで、静止側電極パターン11と可動側電極パターン31との間隔が変化する。これにより、静止側電極パターン11と可動側電極パターン31との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を測定し、演算を行なうことによって外部の圧力の大きさを求めることができる。なお、圧力の大きさを求めるための演算は、絶縁基体1の下面の凹部12に圧
力検出用素子61を設け、この圧力検出用素子61を用いて行なうことができる。また、圧力検出用パッケージ10の外部に別途装置を設け、この装置を用いて演算を行なうこともできる。
本発明の第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10は、可動側電極パターン31が温度の変化に対して抵抗値が変化するものであって、可動側電極パターン31に接続された、抵抗値を計測するための配線導体7がさらに設けられている。圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度が変化したときに、その温度変化に応じて可動側電極パターン31の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化を測定し、演算を行なうことによって圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度の変化の大きさを求めることができる。なお、温度の変化の大きさを求めるための演算は、絶縁基体1の下面の凹部12に抵抗測定用素子62を設け、この抵抗測定用素子62を用いて行なうことができる。また、圧力検出用パッケージ10の外部に別途装置を設け、この装置を用いて演算を行なうこともできる。
このように、本発明の第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10は、可動側電極パターン31によって、ダイヤフラム3が外部から受ける圧力および圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度の変化の両方を測定することができる。したがって、温度を検出するための電極をダイヤフラム3の下面に別途設ける必要がなくなるため、ダイヤフラム3を小型化することができる。その結果、圧力検出用パッケージ10を小型化することができる。
また、本発明の第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10は、可動側電極パターン31における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積が、配線導体7における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積よりも小さい。これにより、温度が変化したときの可動側電極パターン31の抵抗の変化の大きさを精度よく測定することができる。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における絶縁基体1は、平面視したときの形状が円形状である。このように、平面視したときに絶縁基体1の形状が円形状であることから、ダイヤフラム3に外部の圧力が加わった際に枠状部2を経由して絶縁基体1に伝わる力が偏ることを抑制することができる。その結果、絶縁基体1に部分的に大きな変形が生じる可能性を低減することができるので、圧力検出用パッケージ10の信頼性を向上させることができる。なお、本例においては、絶縁基体1は平面視したときの形状が円形状であるが、特にこれに限られるものではなく、四角形状、楕円形状、または多角形状であってもよい。
また、第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における絶縁基体1の下面側には、圧力検出用素子61および抵抗測定用素子62を収納するための凹部12が形成されている。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における絶縁基体1としては、酸化アルミニウム質焼結体(Al2O3)、窒化アルミニウム質焼結体(AlN)、ムライト質焼結体(3Al2O3・2SiO2)、炭化珪素質焼結体(SiC)、窒化珪素質焼結体(Si3N4)およびガラスセラミックスのような絶縁材料を用いることができる。
また、絶縁基体1の上面の外周部であって枠状部2が設けられる領域には、第1の金属層91が設けられている。第1の金属層91が設けられることによって、絶縁基体1と絶縁基体1の上面に設けられる枠状部2とをろう付けする場合に、相互の接合性を向上させることができる。第1の金属層91としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における静止側電極パターン11は、絶縁基体10の上面に設けられている。静止側電極パターン11と後述する可動側電極パターン31との間には静電容量が形成される。ダイヤフラム3が外部から圧力を受けたときに、その圧力に応じてダイヤフラム3が撓んで、静止側電極パターン11と可動側電極パターン31との間隔が変化する。これにより、静止側電極パターン11と可動側電極パターン31との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を測定し、演算を行なうことによって外部の圧力の大きさを求めることができる。なお、圧力の大きさを求めるための演算は、絶縁基体1の下面の凹部12に圧力検出用素子61を設け、この圧力検出用素子61を用いて行なうことができる。図1に示す例では、凹部12に設けた圧力検出用素子61を凹部12に充填した樹脂で気密封止した状態を示している。また、圧力検出用パッケージ10の外部に別途装置を設け、この装置を用いて同様の演算を行なうこともできる。
静止側電極パターン11は、平面透視したときの形状が円形状である。静止側電極パターン11の外周の形状が、後述する枠状部2の内周の形状と相似であることにより、広い領域に形成することができる。そのため、可動側電極パターン31との間に形成される静電容量を大きくすることができ、圧力検出用パッケージ10の外部からの圧力に対する感度を向上させることができる。なお、本例においては、絶縁基体1は平面視したときの形状が円形状であるが、特にこれに限られるものではない。例えば、静止側電極パターン11の外周の形状が、図4に示すように可動側電極パターン31と部分的に同じ形状であって、静止側電極パターン411と可動側電極パターン31とが対向するように設けられていても良い。具体的には、複数の折り返し部314と複数の直線部313とを有する形状であっても良い。これにより、静止側電極パターン411と可動側電極パターン31との間の静電容量を確保しながら、平面透視したときの静止側電極パターン411の面積を減らすことができる。これにより、圧力検出用パッケージ10の生産コストを低減することができる。
静止側電極パターン11は後述する第1の接続導体51と電気的に接続されている。なお、静止側電極パターン11が短絡することを防止するために、第1の金属層91に対して静止側電極パターン11が離間するように設けられている。
静止側電極パターン11としては、導電性の良好な材料を用いることが望ましい。具体的には、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における枠状部2は、絶縁基体1の上面において、静止側電極パターン11を囲むように設けられている。このように、枠状部2が設けられていることによって、絶縁基体1とダイヤフラム3との間に所定の間隔を確保することができる。これにより、ダイヤフラム3に外部の圧力が加わったときに、ダイヤフラム3を撓ませることができる。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における枠状部2は、枠状部2の内周が円形状である。このように、平面視したときに枠状部2の内周が円形状であることから、ダイヤフラム3に外部の圧力が加わった際に枠状部2に伝わる力を分散させて絶縁基体1に伝えることができる。その結果、絶縁基体1に部分的に大きな変形が生じる可能性を低減することができるので、圧力検出用パッケージ10の信頼性を向上させることができる。なお、第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10においては、枠状部2の内周が円形状であるが、特にこれに限られるものではなく、四角形状、楕円形状、または多角形状であってもよい。
枠状部2は、絶縁材料によって形成される。具体的には、酸化アルミニウム質焼結体(Al2O3)、窒化アルミニウム質焼結体(AlN)、ムライト質焼結体(3Al2O3・2SiO2)、炭化珪素質焼結体(SiC)、窒化珪素質焼結体(Si3N4)およびガラスセラミックスのような絶縁材料を用いることができる。さらに、枠状部2は、絶縁基体1と同じ材料を用いて形成されることが好ましい。これにより枠状部2と絶縁基体1との熱膨張率差を低減することができ、圧力検出用パッケージ10の信頼性を向上させることができるからである。
また、枠状部2の下面には第2の金属層92が、上面には第3の金属層93が、それぞれ設けられている。これらの第2の金属層92および第3の金属層93が設けられることによって、枠状部2と絶縁基体1との接合性および枠状部2と枠状部2の上に設けられるダイヤフラム3との接合性をそれぞれ向上させることができる。第2の金属層92および第3の金属層93としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
枠状部2は第1の金属層91および第2の金属層92を介してろう材等によって絶縁基体1に接合されている。ろう材としては、例えば銀(Ag)ろうまたは銀−すず(Ag−Sn)ろうを用いることができる。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10におけるダイヤフラム3は、絶縁基体1および枠状部2との間に密閉空間を形成するように枠状部2の上に設けられている。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10におけるダイヤフラム3は、平面視したときの形状が円形状である。これにより、外部から圧力を受けたときにダイヤフラム3に生じる応力のばらつきを小さくすることができる。そのため、圧力検出用パッケージ10の感度を向上させることができる。本例においては、ダイヤフラム3は平面視したときの形状が円形状であるが、特にこれに限られるものではなく、四角形状、楕円形状、または多角形状であってもよい。
ダイヤフラム3は、絶縁材料によって形成される。具体的には、酸化アルミニウム質焼結体(Al2O3)、窒化アルミニウム質焼結体(AlN)、ムライト質焼結体(3Al2O3・2SiO2)、炭化珪素質焼結体(SiC)、窒化珪素質焼結体(Si3N4)およびガラスセラミックスのような絶縁材料を用いることができる。さらに、ダイヤフラム3は、枠状部2と同じ材料を用いて形成されることが好ましい。これによりダイヤフラム3と枠状部2との熱膨張率差を低減することができ、圧力検出用パッケージ10の信頼性を向上させることができるからである。
また、ダイヤフラム3の下面の外周部には、第4の金属層94が設けられている。このような第4の金属層94が設けられることによって、ダイヤフラム3と枠状部2とをろう付けする場合に、相互の接合性が向上する。第4の金属層94としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)等を用いることができる。
ダイヤフラム3は第4の金属層94を介してろう材等によって枠状部2に接合されている。ろう材としては、例えば銀ろうを用いることができる。
このように、ダイヤフラム3、枠状部2および絶縁基体1による密閉空間の形成は、絶縁基体1と枠状部2および枠状部2とダイヤフラム3とを、それぞれろう材によって接合することにより行なうことができる。これにより、静止側電極パターン11および可動側電極パターン31が外気によって変質することを抑制できる。その結果、圧力検出用パッケージ10の信頼性を向上させることができる。なお、密閉空間の内部には、不活性気体
を充填することができる。不活性気体としては、窒素(N2)またはアルゴン(Ar)を用いることができる。これにより、静止側電極パターン11および可動側電極パターン31が変質することをさらに抑制できる。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における配線導体7は、可動側電極パターン31の抵抗値を測定するためのものであり、可動側電極パターン31に接続されている。具体的には、配線導体7は、可動側電極パターン31の一端および他端と絶縁基体1の凹部12に設けられる抵抗測定用素子62とをそれぞれ電気的に接続している。配線導体7は、枠状部2および絶縁基体1の内部に設けられており、枠状部2の上面および絶縁基体1の凹部12にそれぞれ引き出されている。なお、配線導体7は、後述する第1の接続導体51および第2の接続導体52ならびに第1の金属層91、第2の金属層92および第3の金属層93とはそれぞれ離間するように設けられている。これは、配線導体7と、これらの接続導体51、52および金属層91、92、93との間の電気的な短絡を防止するためである。
配線導体7としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における可動側電極パターン31は、ダイヤフラム3の下面に設けられている。可動側電極パターン31と静止側電極パターン11との間に静電容量が形成される。
可動側電極パターン31は、温度の変化に応じて抵抗値が変化する材料によって形成されている。具体的には、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
また、枠状部2とダイヤフラム3とが接する領域において、可動側電極パターン31は配線導体7および後述する第2の接続導体52と電気的に接続されている。なお、可動側電極パターン31が短絡することを防止するために、可動側電極パターン31は第4の金属層94に対して離間するように設けられている。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10において、可動側電極パターン31は、密閉空間の温度の変化に対応して抵抗値が変化する。そして、可動側電極パターン31に接続された、抵抗値を計測するための配線導体7がさらに設けられている。これにより、温度を検出するための電極を密閉空間内に別途設けることなく、可動側電極パターン31の抵抗値の変化に基づき圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度の変化を測定することができる。このため、圧力検出用パッケージ10を小型化することができる。なお、温度の変化の大きさを求めるための演算は、絶縁基体1の下面の凹部12に抵抗測定用素子62を設け、この抵抗測定用素子62を用いて行なうことができる。なお、図1においては、抵抗測定用素子62を圧力検出用素子61の向こう側に配置して、圧力検出用素子61とともに凹部12内に樹脂で気密封止した状態を示している。また、圧力検出用パッケージ10の外部に別途装置を設け、この装置を用いて同様の演算を行なうこともできる。
なお、可動側電極パターン31が銅(Cu)によって形成されている場合は、可動側電極パターン31の温度が20℃から100℃に変化したときに、可動側電極パターン31の抵抗率は1.59×10−8(Ω・m)から2.23×10−8(Ω・m)に変化する。このように、温度が変化したときにこれに合わせて抵抗率も十分に変化するため、可動側電極パターン31の抵抗の大きさの変化から温度の変化を求めることができる。
さらに、第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における可動側電極パターン31は、電流の流れる方向に垂直な断面の断面積が、配線導体7における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積よりも小さい。このため、可動側電極パターン31の抵抗の変化の大きさをより精度よく測定することができる。その結果、圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度の変化をより精度よく測定することができる。
なお、可動側電極パターン31はダイヤフラム3の下面に設けられていることにより、ダイヤフラム3と密閉空間との間に位置している。これにより、圧力検出用パッケージの外部において温度の変化があった場合に、密閉空間の温度の変化とともに可動側電極パターン31の温度も変化することができる。その結果、密閉空間の温度の変化を速やかに反映することができる。
なお、ここでいう可動側電極パターン31の断面積と配線導体7の断面積との比較は、以下の方法で行なうことができる。可動側電極パターン31における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積は、図10に示すように、ダイヤフラム3を可動側電極パターン31における電流の流れる方向と直交する面で切った断面のうち可動側電極パターン31が露出している部分をS1と定義する。配線導体7における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積は、図11に示すように、枠状部2を平面方向に切った断面のうち配線導体7が露出している部分をS2と定義する。このS1の面積とS2の面積とを比較することで、可動側電極パターン31の断面積と配線導体7の断面積との比較を行なうことができる。なお、断面積の比較方法は、上記の方法に限られるものではなく、例えば、配線導体7の断面積を求める場合においては、絶縁基体1を切った断面から配線導体7の断面積を求めてもよい。
また、図3に示すように、第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における可動側電極パターン31は、折り返し部314を備えている。圧力検出用パッケージ10は、可動側電極パターン31が折り返し部314を備えていることにより、可動側電極パターン31の電流の流れる方向に垂直な断面の断面積を大きくすることなく、平面透視したときの可動側電極パターン31の面積を大きくすることができる。これにより、可動側電極パターン31の抵抗値を低下させることなく、可動側電極パターン31と静止側電極パターン11との間に形成される静電容量を大きくすることができる。その結果、密閉空間の温度の変化の測定精度を向上させるとともに、圧力検出用パッケージ10の外部からの圧力に対する感度を向上させることができる。
また、図5に示すように、第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における可動側電極パターン531は、折り返し部5314と直線部5313とを備えており、折り返し部5314における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積が、直線部5313における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積よりも大きくなるように設けられてもよい。このように、折り返し部5314における断面積が大きくされていることにより、折り返し部5314の抵抗値が直線部5313の抵抗値と比べて大きくなることを低減することができる。これにより、可動側電極パターン531に電流が流れることによって生じる熱のばらつきを低減することができる。その結果、ダイヤフラム3に熱応力が生じる可能性を低減することができ、圧力検出用パッケージ10の信頼性を向上させることができる。
なお、ここでいう「折り返し部における電流の流れる方向に垂直な断面」とは、平面透視したときに折り返し部5314の外周と内周とを最短距離で結ぶ仮想直線で切った断面と言い換えることができる。
なお、可動側電極パターン31は、電気抵抗率が配線導体7の電気抵抗率よりも大きくされてもよい。これにより、可動側電極パターン31の抵抗の変化の大きさをより精度よ
く測定することができる。その結果、圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度の変化をより精度よく測定することができる。可動側電極パターン31の電気抵抗率を配線導体7の電気抵抗率よりも大きくする方法としては、可動側電極パターン31の主材料を配線導体7の主材料と比べて電気抵抗率の大きな材料を用いる方法が挙げられる。具体的には、例えば配線導体7が銅(Cu)を主材料として形成されている場合であれば、可動側電極パターン31の主材料にタングステン(W)を用いることができる。また、可動側電極パターン31と配線導体7との主材料が同じである場合は、副材料の量や種類を変えることによって、可動側電極パターン31の電気抵抗率を配線導体7の電気抵抗率よりも大きくすることができる。
可動側電極パターン31と配線導体7との電気抵抗率の比較には、以下の方法を用いることができる。可動側電極パターン31および配線導体7を別々に溶融し、これを可動側電極パターン31および配線導体7ごとに集めて同形状の試験片を形成する。これに一定の電圧をかけて流れた電流の大きさを比較し、流れた電流値が少ない側を電気抵抗率の大きい側と判断する。
また、可動側電極パターン31は、抵抗温度係数が配線導体7の抵抗温度係数よりも大きくされてもよい。これにより、可動側電極パターン31の抵抗の変化の大きさをより精度よく測定することができる。その結果、圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度の変化をより精度よく測定することができる。可動側電極パターン31の抵抗温度係数を配線導体7の抵抗温度係数よりも大きくする方法としては、可動側電極パターン31の主材料を配線導体7の主材料と比べて抵抗温度係数の大きな材料を用いる方法が挙げられる。具体的には、例えば配線導体7が銅(Cu)を主材料として形成されている場合であれば可動側電極パターン31の主材料にタングステン(W)を用いることができる。
可動側電極パターン31と配線導体7との抵抗温度係数の比較には、以下の方法を用いることができる。可動側電極パターン31および配線導体7を別々に溶融し、これらを可動側電極パターン31および配線導体7ごとに集めて同形状の試験片を形成する。これらの試験片それぞれに対して異なる2点の温度で抵抗率の測定を行ない、同じ試験片で得られた2点の温度間の抵抗率の差を2点の温度の温度差で割った値を抵抗温度係数としてみなすことができる。このように得られた試験片ごとの抵抗温度係数を比較することで、可動側電極パターン31と配線導体7との抵抗温度係数の比較を行なう。なお、抵抗率の測定には、JIS規格(JISK7194)に記載の4探針法を用いることができる。また、試験片の大きさがJIS規格で定められた大きさに満たない場合は、これに準ずる方法で測定を行なうことができる。
さらに、図6に示すように可動側電極パターン631は、第1の領域311と第1の領域311よりもダイヤフラム3の最大振幅部30から離れて位置している第2の領域312とを有しており、第1の領域311における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積が、第2の領域312における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積よりも大きくなるように設けてもよい。このように、可動側電極パターン631のうち、ダイヤフラム3の最大振幅部30に近い部分、つまりダイヤフラム3が外力によって撓んだ際に最も力がかかりやすい部分の断面積を大きくすることによって、可動側電極パターン631の外力に対する強度を向上させることができる。これにより、圧力検出用パッケージ10の信頼性を向上させることができる。
なお、ここでいうダイヤフラム3の「最大振幅部」とは、枠状部2の上に設けられた状態のダイヤフラム3に圧力を加えた際に、ダイヤフラム3が最も大きく撓む部分を意味する。枠状部2の内周の平面視形状が円形状である場合は、ダイヤフラム3の下面のうち密閉空間に面している領域の中央部分を最大振幅部30とする。また、枠状部2の内周の平
面視形状が四角形状または正多角形状である場合は、圧力検出用パッケージ10を平面透視したときに、ダイヤフラム3のうち枠状部2の内周の対角線の交点と重なる部分を最大振幅部30とする。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10は、さらに第1の接続導体51および第2の接続導体52を備えている。第1の接続導体51は、静止側電極パターン11および絶縁基体1の凹部12に設けられる圧力検出用素子61を電気的に接続するために設けられている。また、第2の接続導体52は可動側電極パターン31および圧力検出用素子61を電気的に接続するために設けられている。第1の接続導体51は、絶縁基体1の内部に設けられており、絶縁基体1の凹部12に引き出されている。第2の接続導体52は、枠状部2および絶縁基体1の内部に設けられており、枠状部2の上面および絶縁基体1の凹部12に引き出されている。なお、第1の接続導体51および第2の接続導体52は、互いに離間し、さらに第1の金属層91、第2の金属層92および第3の金属層93に対してそれぞれ離間するように設けられている。
第1の接続導体51および第2の接続導体52としては、導電性の良好な材料を用いることが望ましい。具体的には、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10は、さらに複数の外部接続導体8を備えている。外部接続導体8は、絶縁基体1の凹部12に設けられる圧力検出用素子61および抵抗測定用素子62と外部回路(図示せず)との間で電気信号を伝送するために設けられている。複数の外部接続導体8のそれぞれは、一方の端部が凹部12に引き出されるように設けられ、他方の端部が絶縁基体1の下面のうち、凹部12の外側の部位に引き出されるように設けられている。
外部接続導体8としては、導電性の良好な材料を用いることが望ましい。具体的には、例えば、導電性の良好な材料として、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
なお、第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10においては、絶縁基体1、枠状部2およびダイヤフラム3はそれぞれ別々に形成されているが、これに限られるものではない。例えば、絶縁基体1と枠状部2、または、枠状部2とダイヤフラム3が一体的に形成されていてもよい。これにより、圧力検出用パッケージ10の部品点数を減らすことができる。さらに、一体的に形成した部位間においては、接合用の金属層を形成する必要がないため、圧力検出用パッケージ10の構造を簡略化することができる点で好ましい。
次に、第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10の製造方法を説明する。圧力検出用パッケージ10において、例えば、絶縁基体1、枠状部2またはダイヤフラム3が酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウム等のセラミック原料粉末に適当な有機バインダ、溶剤、可塑剤、分散剤を添加混合して泥漿状となすとともに、これをドクタブレード法を採用してシート状に成形してセラミックグリーンシートとなし、しかる後、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工や切断加工を施すとともに、これを約1600℃の高温で焼成することで作製される。
また、第1の接続導体51、第2の接続導体52、外部接続導体8、第1の金属層91、第2の金属層92、第3の金属層93、第4の金属層94、静止側電極パターン11および可動側電極パターン31は、タングステン(W)等の金属粉末に適当な有機バインダ、溶剤、可塑剤および分散剤等を添加混合して得たメタライズペーストをスクリーン印刷
法を採用して絶縁基体1用、枠状部2用またはダイヤフラム3用のセラミックグリーンシートに所定のパターンに印刷塗布し、これを絶縁基体1、枠状部2またはダイヤフラム3用のセラミックグリーンシートとともに焼成することによって所定のパターンに形成される。
なお、枠状部2とダイヤフラム3との接合には、ガラスを用いることもできる。例えば、枠状部2およびダイヤフラム3をガラス成分を含有する絶縁材料で形成し、これらを加熱することで接合することができる。また、枠状部2とダイヤフラム3との間にガラスペーストを接合材として設けることもできる。このように、枠状部2とダイヤフラム3とをガラスを用いて接合することによって、ろう材を用いて接合する場合と比べてダイヤフラム3にかかる熱を低減することができる。これにより、ダイヤフラム3が熱膨張および熱収縮によって変形する可能性を低減することができる。その結果、圧力検出用パッケージ10の信頼性を向上させることができる。
次に、本発明の第2の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10について説明する。なお、本例の各構成において、第1の実施形態と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
図7〜9に示すように、第2の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10は、第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10と比較して、可動側電極パターン731、配線導体77および静止側電極パターン711の構成が異なる。
第2の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における可動側電極パターン731は、ダイヤフラム3の下面に設けられており、静止側電極パターン711との間には静電容量が形成される。可動側電極パターン731は、平面透視したときの形状が円形状である。このように、可動側電極パターン731の形状が円形状であることから、ダイヤフラム3に外部の圧力が加わった際に可動側電極パターン731に伝わる力を分散させることができる。その結果、可動側電極パターン731に部分的に大きな変形が生じる可能性を低減することができるので、圧力検出用パッケージ10の信頼性を向上させることができる。
可動側電極パターン731としては、導電性の良好な材料を用いることが望ましい。具体的には、導電性の良好な材料として、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
第2の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における配線導体77は、静止側電極パターン711の抵抗値を測定するためのものであり、静止側電極パターン711に接続されている。具体的には、配線導体77は、静止側電極パターン711の一端および他端のそれぞれと絶縁基体71の凹部12に設けられる抵抗測定用素子62とを電気的に接続している。配線導体77は、絶縁基体1の内部に設けられており、絶縁基体1の凹部12に引き出されている。なお、短絡を防止するために、配線導体77は、第1の接続導体51および第2の接続導体52ならびに第1の金属層91とは離間するように設けられている。
配線導体77としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
第2の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における静止側電極パターン711は、絶縁基体1の上面に設けられており、温度の変化に応じて抵抗値が変化する材料によって形成されている。具体的には、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅
(Cu)または銀(Ag)を用いることができる。
第2の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10は、静止側電極パターン711が温度の変化に対して抵抗値が変化するものであって、静止側電極パターン711に接続された、抵抗値を計測するための配線導体77がさらに設けられていることにより、温度を検出するための電極を密閉空間内に別途設けることなく、圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度の変化を測定することができる。このため、圧力検出用パッケージ10を小型化することができる。
さらに、第2の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における静止側電極パターン711は、電流の流れる方向に垂直な断面の断面積が、配線導体77における電流の流れる方向に垂直な断面の断面積よりも小さい。このため、静止側電極パターン711の抵抗の変化の大きさをより精度よく測定することができる。その結果、圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度の変化をより精度よく測定することができる。
さらに、配線導体7が静止側電極パターン711に接続されていることによって、圧力検出用パッケージ10の密閉空間の温度の変化をより精度よく測定することができる。詳しくは、ダイヤフラム3に外部から圧力がかかったときに、可動側電極パターン731に及ぼされる力よりも静止側電極パターン711に及ぼされる力の方が小さい。そのため、可動側電極パターン731に生じる変形よりも静止側電極パターン711に生じる変形の方が小さく、可動側電極パターン731の抵抗値の変化よりも静止側電極パターン711の抵抗値の変化の方が小さい。このため、静止側電極パターン711に配線導体77を接続することにより、可動側電極パターン731に配線導体77を接続する場合と比べて、ダイヤフラム3に外部から圧力がかかったときに測定される温度の変化のばらつきを低減することができる。
本発明の一実施形態の例の圧力検出装置100は、上記の実施形態の例に代表される圧力検出用パッケージ10と、この圧力検出用パッケージ10における絶縁基体1の凹部12に収納された圧力検出用素子61および抵抗測定用素子62とを備えている。なお、本例でも、圧力検出用素子61および抵抗測定用素子62は凹部12に充填した樹脂によって気密封止されている状態を示している。このように、小型化されている圧力検出用パッケージ10を備えていることから、圧力検出装置100を小型化することができる。
本発明の実施形態の例の圧力検出装置100における圧力検出用素子61は、第1の接続導体51、第2の接続導体52および外部接続導体8に接続されている。圧力検出用素子61は、第1の接続導体51および第2の接続導体52を介して伝達された静電容量の変化から、ダイヤフラム3に加えられた圧力を演算し、その結果を外部接続導体8に出力する機能を備えている。具体的には、圧力検出用素子61に圧力の大きさと圧力をかけたときの静電容量の大きさとの関係のデータをあらかじめ記録させておき、このデータと検出された静電容量の大きさとを照合することによって、ダイヤフラム3に加えられた圧力の大きさを求めることができる。
圧力検出用素子61は、絶縁基体1の下面の凹部12に設けられており、樹脂によって気密封止されている。圧力検出用素子61が絶縁基体1の下面に設けられていることにより、別部材に圧力検出用素子61が設けられている場合と比較して、静止側電極パターン711および可動側電極パターン731と圧力検出用素子61との間の配線長さを小さくすることができる。これにより、第1の接続導体51および第2の接続導体52間で生まれる不要な静電容量の形成を小さくすることができる。その結果、圧力検出装置100は、ダイヤフラム3に加えられた外部からの圧力を精度よく検知することができる。また、圧力検出用素子61は、樹脂によって気密封止されていることにより、耐久性が向上する
。
本発明の実施形態の例の圧力検出装置100における抵抗測定用素子62は、配線導体77および外部接続導体8に接続されている。抵抗測定用素子62は、配線導体77を介して伝達された抵抗値の変化から、密閉空間の温度を演算し、その結果を外部接続導体8に出力する機能を備えている。抵抗測定用素子62は、絶縁基体1の下面の凹部12に設けられており、樹脂によって気密封止されている。
抵抗測定用素子62が絶縁基体1の下面に設けられていることにより、別部材に抵抗測定用素子62が設けられている場合と比較して、配線導体77の配線長さを小さくすることができる。これにより、配線導体77を電気が流れることによって生じる不要な電圧降下の発生を低減することができる。その結果、圧力検出装置100は、密閉空間の温度の変化の大きさを精度よく検知することができる。このように、密閉空間の温度の変化の大きさを検知することができることにより、密閉空間中の気体がダイヤフラム3に及ぼす圧力の大きさの変化を求めることができる。具体的には例えば、抵抗測定用素子62に密閉空間の温度の大きさとその温度における抵抗の大きさとの関係のデータおよび密閉空間の温度の大きさとその温度における密閉空間中の気体の圧力との関係のデータをあらかじめ記録させておき、これらのデータと検出された抵抗の大きさとを照合することによって、密閉空間中の気体がダイヤフラム3に及ぼす圧力の大きさを求めることができる。そのため、検知される圧力が密閉空間の温度によって受ける影響を補正することができる。また、抵抗測定用素子62は、樹脂によって気密封止されていることにより、耐久性が向上する。
第1の接続導体51、第2の接続導体52、配線導体77および外部接続導体8と圧力検出用素子61または抵抗測定用素子62との接続方法としては、例えば、はんだバンプ、金バンプ、導電性樹脂またはボンディングワイヤを用いることができる。
なお、本発明は上述の実施形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更や実施の形態の組合せを行なうことは何等差し支えない。
例えば、第1の実施形態の例の圧力検出用パッケージ10における可動側電極パターン31において、可動側電極パターン31は、それぞれ抵抗率が異なる材料から形成される2つ以上の部位から構成されており、最大振幅部30の近くに位置している部位が最大振幅部30から遠くに位置している部位よりも抵抗率が大きい構成としてもよい。この場合には、最も圧力の影響を受けやすい最大振幅部30の温度を重点的に検知することができるため、圧力検出用素子61によって検知される圧力が密閉空間の温度によって受ける影響の補正の精度を向上させることができる。