JP5540225B2 - 溶融金属接触材及びコーティング膜 - Google Patents
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Description
そのため、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の溶融金属が用いられる鋳造プロセス等の分野においては、より耐食性に優れた溶融金属接触材が望まれている。
[1]溶融金属に接触する物に用いられる溶融金属接触材であって、
RE2Ti2O7(但し、REは希土類元素を示す。)で表されるチタン酸希土類を含み、
前記チタン酸希土類の含有割合は、前記溶融金属接触材を100質量%とした場合に、50〜100質量%であることを特徴とする溶融金属接触材。
[2]前記溶融金属が、アルミニウム、マグネシウム、銅、又はそれらの合金を主成分とする前記[1]に記載の溶融金属接触材。
[3]前記チタン酸希土類を含むチタン酸希土類含有部と、
前記チタン酸希土類含有部の表面に形成されたマグネシア膜と、を有する前記[1]又は[2]に記載の溶融金属接触材。
[4]前記マグネシア膜の表面にスピネル膜を有する前記[3]に記載の溶融金属接触材。
[5]溶融金属に接触する部分にコーティングされるコーティング膜であって、
RE2Ti2O7(但し、REは希土類元素を示す。)で表されるチタン酸希土類を含み、
前記チタン酸希土類の含有割合は、前記コーティング膜を100質量%とした場合に、50〜100質量%であることを特徴とするコーティング膜。
また、チタン酸希土類を含むチタン酸希土類含有部と、このチタン酸希土類含有部の表面に形成されたマグネシア膜(MgO膜)とを有する場合には、より耐食性に優れる溶融金属接触材となる。更には、マグネシウム合金溶湯が用いられる場合においても、耐還元性に非常に優れており、優れた耐食性を発揮する。
更に、マグネシア膜の表面にスピネル膜(MgAl2O4膜)を有する場合には、より耐食性に優れる溶融金属接触材となる。更には、マグネシウム合金溶湯が用いられる場合においても、耐還元性に非常に優れており、優れた耐食性を発揮する。
本発明のコーティング膜は、溶融金属(特に、アルミニウム、マグネシウム、銅、又はそれらの合金を主成分とする溶融金属)に接触する部分にコーティングされるものであり、特定のチタン酸希土類を含んでいるため、耐還元性に非常に優れており、優れた耐食性が得られる。そのため、鋳造プロセス等の溶融金属が用いられる分野において、溶融金属と接触するラドル等の鋳造用治工具等のコーティング膜として好適に用いることができ、且つそれらを長寿命化することができる。更には、鋳造品の機械的特性に悪影響を及ぼす治工具成分(例えば、鉄等)の溶湯中への溶解を抑制し、鋳造品の性能を向上することができる。
[1]溶融金属接触材
本発明の溶融金属接触材は、溶融金属に接触する物に用いられるものであって、RE2Ti2O7(但し、REは希土類元素を示す。)で表されるチタン酸希土類を含むことを特徴とする。
前記「溶融金属に接触する物」としては、例えば、ラドル、ストーク、樋、管路、溶湯搬送容器、湯だまり等の鋳造用治工具等が挙げられる。本発明の溶融金属接触材は、優れた耐食性を有しているため、これらの鋳造用治工具等を長寿命化することができる。更には、鋳造品の機械的特性に悪影響を及ぼす治工具に含有されている成分(例えば、鉄等)の溶湯中への溶解を抑制し、鋳造品の性能を向上することができる。
具体的には、一般用アルミニウム合金ダイカスト、特殊用アルミニウム合金ダイカスト等が挙げられる。一般用アルミニウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、ADC10、ADC10Z、ADC12、ADC12Zが挙げられる。特殊用アルミニウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、ADC1、ADC3、ADC5、ADC6、ADC14が挙げられる。
具体的には、一般用マグネシウム合金ダイカスト、特殊用マグネシウム合金ダイカスト等が挙げられる。一般用マグネシウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、MDC1B、MDC1Dが挙げられる。特殊用マグネシウム合金ダイカスト(JIS記号)としては、MDC2B、MDC3B、MDC4が挙げられる。
前記希土類元素(RE)は特に限定されないが、Y、Yb、Er、Dy、Ho、Tm及びLuのうちの少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくはY、Er、Ho及びTmのうちの少なくとも1種であり、更に好ましくは、Yである。
また、溶融金属接触材におけるチタン酸希土類の含有割合は、溶融金属接触材を100質量%(但し、不可避不純物は除く)とした場合に、50〜100質量%であり、更に好ましくは70〜100質量%である。
チタン酸希土類の製造に用いられるチタン源としては、例えば、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムエトキシド、チタニウムブトキシド等のチタニウムアルコキシドやルチル等が挙げられる。
また、チタン酸希土類の製造に用いられる希土類源としては、例えば、硝酸希土類、酢酸希土類、炭酸希土類、希土類酸化物等が挙げられる。
尚、成形方法は特に限定されず、ホットプレス法等の公知の方法を用いることができる。また、焼成条件は特に限定されず、例えば、焼成温度は約1200〜1400℃、焼成雰囲気は、大気雰囲気や、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気等とすることができる。更に、焼結体の製造には、公知の焼結助剤等の添加剤を用いることができる。
また、前記マグネシア膜の表面に形成される「スピネル膜」の厚みは特に限定されず、適宜調整することができる。具体的には、例えば、0.1〜3μm、特に0.5〜2μmとすることができる。
本発明のコーティング膜は、溶融金属に接触する部分にコーティングされるものであって、RE2Ti2O7(但し、REは希土類元素を示す。)で表されるチタン酸希土類を含むことを特徴とする。尚、「溶融金属」及び「チタン酸希土類」については、それぞれ、前記[1]溶融金属接触材における「溶融金属」及び「チタン酸希土類」の説明をそのまま適用することができる。
また、コーティング膜におけるチタン酸希土類の含有割合は、コーティング膜を100質量%(但し、不可避不純物は除く)とした場合に、50〜100質量%であり、更に好ましくは70〜100質量%である。
具体的には、例えば、チタニウムテトラ−iso−プロポキシド[Ti(O−iPr)4]と、エチレングリコールと、無水クエン酸とを混合した後、硝酸イットリウム・6水和物[Y(NO3)3・6H2O]を追加し、無色透明になるまで混合し、それを基材上にコーティングする。その後、130℃でエステル化反応させた後、1300℃以上で加熱することで、チタン酸イットリウム膜を形成することができる。
前記基材の材質は、コーティング膜をその表面に形成可能であればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、チタン酸アルミニウム、サイアロン等のセラミックス;鋳鉄等の金属等が挙げられる。
尚、「マグネシア膜」及び「スピネル膜」については、それぞれ、前記[1]溶融金属接触材における「マグネシア膜」及び「スピネル膜」の説明をそのまま適用することができる。
<実施例1>
チタニウムテトラ−iso−プロポキシド[Ti(O−iPr)4]と、エチレングリコールと、無水クエン酸とを混合した。更に、無色透明になるまでビーカー内で混合して(50℃×1時間)、硝酸イットリウム・6水和物[Y(NO3)3・6H2O]をビーカー内に追加し、無色透明になるまで混合した(50℃×1時間)。尚、各成分の配合割合はモル比[チタニウムテトラ−iso−プロポキシド:硝酸イットリウム・6水和物:エチレングリコール:無水クエン酸]で、0.2:0.2:4:1である。その後、130℃×5時間の条件にて、エステル化反応させた後、マントルヒーターを用いて、350℃×5時間の条件にて熱分解した。
次いで、得られた熱分解物をアルミナ鞘に移し、大気中(0.3L/分の酸素気流中)において、5℃/分で1300℃まで昇温し、その温度を1時間保持することによって仮焼した後、粉砕し、目開き100μmの篩いを通すことにより、調整粉末(仮焼粉末)を得た。尚、分析装置(型式「RINT2000、(株)リガク」)を用いてX線回折分析を行った結果、得られた仮焼粉末は、Y2Ti2O7の単相であることが確認できた(図1参照)。
尚、前記分析装置にてX線回折を行った結果、得られた焼結体は、Y2Ti2O7の単相であることが確認できた(図1参照)。また、相対密度は96%であった。
実施例1のチタン酸イットリウム焼結体を切削加工し、試験片1〜3[各寸法;10×20×6(mm)]を形成した。そして、図2(浸漬前)に示すように、アルミナ坩堝にアルミナ棒を配設し、その上に前記試験片を配置し、更にその上にアルミニウム合金塊[「ADC12」、組成(質量%);Si:11、Cu:2、Fe:0.9、Zn:0.8、Mg:0.3、Al:残り]を配置した。尚、この際における、各試験片と、アルミニウム合金塊との体積比(アルミニウム合金塊/試験片)は、50である。
その後、100cc/分のAr気流中、下記の処理条件にて加熱処理を行い、アルミニウム合金塊を溶融させて、試験片である焼結体の底面以外の表面を溶融アルミニウム合金と接触させた。
次いで、5℃/分で25℃まで降温し、溶融アルミニウム合金を凝固させた。
試験片1;5℃/分で720℃まで昇温し、その温度を100時間保持
試験片2;5℃/分で800℃まで昇温し、その温度を100時間保持
試験片3;5℃/分で900℃まで昇温し、その温度を100時間保持
アルミニウム合金が付着した状態(図2(浸漬後)参照)で試験片を切断し、樹脂(スペシフィックス冷間埋込樹脂、丸本ストルアス(株))に埋め込み固定し、切断面を鏡面仕上げして、電界放出型走査電子顕微鏡(型式「S4500、(株)日立製作所」)を用いて、試験片とアルミニウム合金との境界近傍を観察し、顕微鏡に付属されるエネルギー分散型X線分析装置(型式「EMAX−7000、(株)堀場製作所」)を用いてEDS分析した。その結果を図3〜図5に示す。
試験片に固着したアルミニウムを10%NaOH溶液浸漬により除去して、試験片における溶融アルミニウム合金との接触側及び非接触側を、分析装置(型式「RINT2000、(株)リガク」)を用いてX線回折分析を行った。その結果を図6〜図8に示す。
尚、試験片1(720℃での加熱処理)では、固着したアルミニウムが自然に剥離したため、10%NaOH溶液浸漬による除去は行っていない。
試験片1(720℃加熱処理)は、断面組織の観察及びEDSプロファイル測定(図3参照)並びにX線回折分析の結果(図6参照)によれば、溶融アルミニウム合金との接触面、非接触面ともに、表面にマグネシア(MgO)が生成されていたのみであり、優れた耐還元性を有しており、溶融アルミニウム合金に対する耐食性に優れていることが確認できた。
尚、このマグネシアは、アルミニウム合金の溶融の際に生じるMg(気体)によって、アルミナ治具が還元したと考えられる。しかしながら、このマグネシアは試験片の表面のみに形成されており、チタン酸イットリウム焼結体を腐食するものではない。逆に、マグネシアは耐食性に優れるものであるため、溶融マグネシウム合金に対しても、優れた耐食性が得られると考えられる。
また、試験片2では、溶融アルミニウム合金との接触面、非接触面ともに、スピネル(MgAl2O4)が生成されていた。スピネルは、下記の系の存在により、生成すると考えられる。
4Al2O(気体)+Mg(気体)=MgAl2O4+6Al(気体)
そして、このスピネルは、耐食性に優れるものであるため、チタン酸イットリウム(Y2Ti2O7)の耐還元性には何ら問題がなく、溶融マグネシウム合金に対しても、優れた耐食性が得られると考えられる。
尚、図4において、溶融アルミニウム合金との非接触側は、試験片を固定するための樹脂が完全に流れ込まなかったため空隙となっている。また、この試験片2では、溶融アルミニウム合金との非接触面に、チタン酸イットリウム(Y2Ti2O7)が多少還元し、YTiO3が生成されているが(図7参照)、分解には至っておらず、耐食性は十分に保たれると考えられる。また、溶融アルミニウム合金との接触面にAl(OH)3が生成しているが(図7参照)、これは、試験片に固着したアルミニウムを10%NaOH溶液浸漬により除去した際に生成したものである。
以上より、この試験片2は、優れた耐還元性を有しており、溶融アルミニウム合金に対する耐食性に優れていることが確認できた。
尚、図5において、溶融アルミニウム合金との接触側は、アルミニウムが固着したままであったため樹脂ではなくAlとなっている。また、この試験片3では、溶融アルミニウム合金との非接触面に、チタン酸イットリウム(Y2Ti2O7)が多少還元し、YTiO3が生成されているが(図8参照)、分解には至っておらず、耐食性は十分に保たれると考えられる。また、溶融アルミニウム合金との接触面にAl(OH)3が生成しているが(図8参照)、これは、試験片に固着したアルミニウムを10%NaOH溶液浸漬により除去した際に生成したものである。
以上より、この試験片3は、優れた耐還元性を有しており、溶融アルミニウム合金に対する耐食性に優れていることが確認できた。
Claims (5)
- 溶融金属に接触する物に用いられる溶融金属接触材であって、
RE2Ti2O7(但し、REは希土類元素を示す。)で表されるチタン酸希土類を含み、
前記チタン酸希土類の含有割合は、前記溶融金属接触材を100質量%とした場合に、50〜100質量%であることを特徴とする溶融金属接触材。 - 前記溶融金属が、アルミニウム、マグネシウム、銅、又はそれらの合金を主成分とする請求項1に記載の溶融金属接触材。
- 前記チタン酸希土類を含むチタン酸希土類含有部と、
前記チタン酸希土類含有部の表面に形成されたマグネシア膜と、を有する請求項1又は2に記載の溶融金属接触材。 - 前記マグネシア膜の表面にスピネル膜を有する請求項3に記載の溶融金属接触材。
- 溶融金属に接触する部分にコーティングされるコーティング膜であって、
RE2Ti2O7(但し、REは希土類元素を示す。)で表されるチタン酸希土類を含み、
前記チタン酸希土類の含有割合は、前記コーティング膜を100質量%とした場合に、50〜100質量%であることを特徴とするコーティング膜。
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