JP5536837B2 - ディーゼルエンジン - Google Patents

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Description

本発明は、排気浄化装置を備えたディーゼルエンジンに関する。
従来、ディーゼルエンジンには、その排気ガスに含まれる粒子状物質(以下、「PM」と記す。)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」と記す。)を備える排気浄化装置が設けられている。前記DPFは、例えば、セラミックスからなるハニカム構造の多孔質部材であり、その内部を排気ガスが通過することでPMが捕集され、排気ガスが浄化される。
上記のようなディーゼルエンジンにおいては、排気浄化装置によって排気ガスを浄化する過程でDPFの内部にPMが堆積し、排気浄化装置の機能低下を引き起こすばかりか、排気抵抗の増加等によりディーゼルエンジンに悪影響を及ぼす恐れがある。そのため、DPFに堆積したPMを定期的に除去するように、DPFの再生を行う制御がなされている。当該DPFの再生は、排気ガスの流動方向におけるDPFの上流側と下流側との差圧(以下、単に「DPF前後の差圧」と記す。)に基づいて推定されるPMの堆積量が所定の閾値を越えた場合に行われる。
しかし、PMには、燃焼除去することができる煤等の可燃成分の他に、燃料添加剤や潤滑油添加剤等に由来するアッシュが含まれる。当該アッシュは、燃焼除去することができないため、DPFへの堆積が進行すると、DPF前後の差圧から推定されるPMの堆積量と、実際に堆積しているPMの堆積量との乖離が大きくなり、適切にDPFの再生を行えない等の問題が生じる。
このような問題を解決するために、特許文献1には、ディーゼルエンジンの運転時間からアッシュのDPFへの堆積量を推定し、DPFの再生を行った直後には、DPF前後の差圧から推定されるPMの堆積量をアッシュの堆積量とみなして、アッシュの堆積量を高精度に算出することで、適切にDPFの再生を行う技術が開示されている。
しかし、特許文献1に記載の技術は、DPF前後の差圧から推定されるPMの堆積量が所定の閾値を越えた場合のみ、ポスト噴射等によってPMを燃焼除去する。つまり、ディーゼルエンジンの運転状態や排気ガスの温度等を考慮しないため、効率良くDPFの再生を行うことができず、ポスト噴射による再生頻度の増加による潤滑油希釈、及び燃費の悪化を招く点で不利である。
特開2007−16684号公報
本発明は、過度に再生制御が実施されるのを防止し、効率良くディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行うことができるディーゼルエンジンを提供する。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、酸化触媒と、ディーゼルパティキュレートフィルタと、前記ディーゼルパティキュレートフィルタの上流側と下流側との差圧に基づいてディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質の量を推定し、該堆積した粒子状物質の推定量に基づいてディーゼルパティキュレートフィルタを再生する制御手段とを備えるディーゼルエンジンにおいて、酸化触媒が活性温度に達した後、前記制御手段を介して、排気ガスの温度を酸化触媒の活性温度よりも高温に設定した目標温度まで上昇させることによって、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する第一再生制御が行えるように構成し、前記第一再生制御は、吸入空気の量を調整する吸気絞りの開度を段階的に制御して、排気ガスの温度を上昇させることにより行ない、前記吸気絞りは、酸化触媒が活性温度に達するまでの間、第一再生制御の目標温度まで上昇させるために必要な開度よりも開いた状態に制御され、酸化触媒が活性温度に達した後は、第一再生制御の目標温度まで上昇させるために必要な開度となるように制御される構成とし、前記第一再生制御では、燃料噴射弁のポスト噴射による粒子状物質の燃焼除去を実行しない構成としたものである。
請求項2においては、請求項1記載のディーゼルエンジンにおいて、再生開始スイッチがONであるか否かにかかわらず、前記第一再生制御が開始される構成としたものである。
請求項3においては、請求項1又は請求項2に記載のディーゼルエンジンにおいて、前記制御手段は、前記第一再生制御の他に、第二再生制御と第三再生制御を実行可能とし、前記第一再生制御は、粒子状物質の堆積量が第一閾値を超えた場合に、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質を酸化触媒の活性温度領域で燃焼することで除去する制御とし、前記第二再生制御は、粒子状物質の堆積量が第一閾値を超えた状態で第一設定時間経過した場合、又は第二設定時間毎に実行し、燃料噴射弁のポスト噴射を使用して、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する制御とし、前記第三再生制御は、粒子状物質の堆積量が第一閾値よりも大きい第二閾値を超えた状態で、再生開始スイッチがONのとき、又は、前回実施した第二再生制御又は第三再生制御から、第二設定時間よりも短い第三設定時間以上経過した状態で、再生開始スイッチがONのとき、燃料噴射弁のポスト噴射を使用して、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質を前記第二再生制御の粒子状物質の燃焼温度よりも高い燃焼温度で燃焼することで除去する制御としたものである。
本発明は以上の如く構成したことにより、次のような効果を奏するものである。
本発明によれば、第一再生制御の実施の効率化を図ることが可能となり、燃費の悪化を防止することができる。
また、過度に、第二再生制御、第三再生制御が実施されるのを防止し、効率良くディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行うことができる。また、ポスト噴射による潤滑油の希釈、及び燃費の悪化を防止することができる。
ディーゼルエンジンの構成を示す概略図。 制御パネルの構成を示す図。 第一再生と第二再生と第三再生との関係を示す図。 再生制御を示すフローチャート。 自己再生領域と第一再生領域とを示す図。 再生時に吸気絞りの開度変更を採用した場合における吸気絞りの開度変更のタイミングを示す図。 第二再生領域を示す図。
以下では、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジン1について説明する。
図1に示すように、ディーゼルエンジン1は、直噴式直列四気筒のディーゼルエンジンであり、エンジン本体2、吸気通路3、排気通路4、EGR装置5、排気浄化装置6、制御パネル7、及びECU8等から構成されている。
エンジン本体2は、圧縮された空気に燃料を供給することによって燃焼させ、この燃焼による膨張エネルギーから回転動力を得るものである。エンジン本体2は、筒状のシリンダ、及び当該シリンダの内部に摺動可能に設けられるピストンを含むシリンダブロックと、前記シリンダの開口を塞ぐように前記シリンダブロックに取り付けられたシリンダヘッドとを具備する。前記ピストンと前記シリンダと前記シリンダヘッドとの間には、燃焼室21が形成されている。
燃焼室21は、前記ピストンと前記シリンダと前記シリンダヘッドとの間に形成された空間であり、前記シリンダヘッドに設けられた燃料噴射弁22によって、燃料が燃焼室21に噴射される。燃焼室21は、本実施形態においては、エンジン本体2に四つ形成されている。
燃料噴射弁22は、前記シリンダヘッドに燃焼室21と同数設けられ、各燃焼室21に燃料を噴射できるようにそれぞれ配置されている。燃料噴射弁22は、燃料の噴射を適宜の回数及び時期に行うことができ、当該燃料噴射の状態を変更することによって、エンジン本体2のエンジン回転数、及びトルク等が変更可能となっている。
また、エンジン本体2には、回転センサ23が設けられている。
回転センサ23は、エンジン本体2のエンジン回転数を計測する部材であり、エンジン本体2のクランク軸、又はフライホイール等の近傍に配置されている。
また、エンジン本体2には、エンジン本体2の燃焼室21に吸入空気を導く通路となる吸気通路3と、エンジン本体2から排出される排気ガスの通路となる排気通路4が接続されている。
吸気通路3は、吸気マニホールド31、吸気管32、及び吸気絞り33等から構成されている。
吸気マニホールド31は、吸入空気を各燃焼室21に均等に配分するための部材であり、前記シリンダヘッドに固定されている。本実施形態においては、エンジン本体2に四つの燃焼室21が直列に形成されているため、吸気マニホールド31の一端部は、四つの通路に分岐するように形成され、各燃焼室21と連通するようにエンジン本体2に接続されている。一方、吸気マニホールド31の他端部は、吸気管32に接続されている。
吸気管32は、吸気マニホールド31の他端部に接続された管であり、吸入空気の流動方向における最も上流側に配置されている。つまり、吸気管32から外気が吸入され、図示しないエアクリーナによって浄化された後、吸気マニホールド31を介してエンジン本体2の各燃焼室21へ供給される。吸気管32の中途部には、吸気絞り33が設けられている。
吸気絞り33は、エンジン本体2の燃焼室21へ供給される吸入空気の量を調整する部材であり、吸気管32の中途部に設けられている。吸気絞り33には、例えば、バタフライバルブが採用され、DCサーボモータ等によって開度を調整することで、吸気管32の内部空間の断面積を変化させ、燃焼室21へ供給される吸入空気の量を調整することが可能となっている。
排気通路4は、排気マニホールド41、排気管42、上流側排気絞り43、及び下流側排気絞り44等から構成されている。
排気マニホールド41は、エンジン本体2の燃焼室21から排出された排気ガスを集合させるための部材である。排気マニホールド41の一端部は、吸気マニホールド31と同様に四つの通路に分岐するように形成され、各燃焼室21と連通するようにエンジン本体2に接続されている。一方、排気マニホールド41の他端部は、排気管42に接続されている。
排気管42は、排気マニホールド41の他端部に接続された管であり、排気ガスの流動方向における最も下流側に配置されている。排気管42の中途部には、排気ガスを浄化する排気浄化装置6が設けられており、それを挟むように上流側排気絞り43、及び下流側排気絞り44が設けられている。つまり、エンジン本体2の各燃焼室21から排気マニホールド41を介して排気管42に排出された排気ガスは、排気浄化装置6によって浄化された後に外部に排出される。
上流側排気絞り43、及び下流側排気絞り44は、エンジン本体2の燃焼室21から排出された排気ガスによって排気通路4の内部に生じる圧力を調整する部材であり、吸気絞り33と同様に、バタフライバルブ等が採用される。上流側排気絞り43は、排気ガスの流動方向における排気浄化装置6の上流側に設けられ、下流側排気絞り44は、排気ガスの流動方向における排気浄化装置6の下流側に設けられている。DCサーボモータ等によって上流側排気絞り43、及び下流側排気絞り44の開度を調整することで、排気管42の内部空間の断面積を変化させ、排気浄化装置6へ流入する排気ガスの量、及び排気浄化装置6から流出する排気ガスの量を調整することが可能となっている。
EGR装置5は、排気マニホールド41から吸気マニホールド31へ排気ガスの一部を再循環ガスとして還元して、燃焼室21に供給される吸入空気の酸素濃度を低減するための装置である。EGR装置5は、EGR管51、及びEGRバルブ52等から構成されている。
EGR管51は、吸気マニホールド31と排気マニホールド41とを連通させる管であり、一端が吸気マニホールド31に接続され、他端が排気マニホールド41に接続されている。
EGRバルブ52は、排気マニホールド41から吸気マニホールド31へ還元される再循環ガスの量を調整する部材であり、EGR管51の中途部に設けられている。EGRバルブ52は、DCサーボモータ等によって開度を調整することで、再循環ガス通路の通路断面積を変化させ、再循環ガスの量を調整することが可能となっている。
排気浄化装置6は、エンジン本体2の燃焼室21から排出される排気ガスに含まれる粒子状物質(以下、「PM」と記す。)を除去して、排気ガスを浄化する装置である。排気浄化装置6は、排気管42の中途部に設けられ、上流側排気絞り43と下流側排気絞り44との間に配置されている。排気浄化装置6は、酸化触媒61、DPF62、圧力センサ63a・63b、及び温度センサ64等から構成されている。ここで、PMとは、排気ガスに含まれる粒子状物質(Particulate Matter:PM)であり、燃焼除去することができる煤等の可燃成分と、燃料添加剤や潤滑油添加剤等に由来し、燃焼除去することができないアッシュとからなる。
酸化触媒61は、エンジン本体2の燃焼室21から排出される排気ガスに含まれるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びSOF(可溶性有機成分)を酸化して除去する部材である。また、酸化触媒61は、排気ガスに多く含まれるNO(一酸化窒素)を酸化することによって、NO2(二酸化窒素)に変化させる。
DPF62は、PMを捕集することで排気を濾過すると共に、堆積したPMを酸化して除去するディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)である。DPF62は、酸化触媒61よりも排気ガスの流動方向における下流側に配置されている。本実施形態においては、DPF62は、SiC(炭化ケイ素)からなり、排気ガスに含まれるPMがDPF62に形成された微細な穴を通過する際に捕集される。DPF62によって捕集されたPMに含まれる可燃成分は、排気ガスが酸化反応を進行させることができる温度の場合に、排気ガスに含まれるO2(酸素)、及び酸化触媒61で生成されたNO2(二酸化窒素)によって酸化されて除去される。一方、捕集されたPMに含まれるアッシュは、燃焼除去されず、DPF62に堆積する。
圧力センサ63a・63bは、エンジン本体2から排出される排気ガスの圧力を計測する部材であり、それぞれ排気ガスの流動方向におけるDPF62の上流側と下流側とに配置されている。
温度センサ64は、エンジン本体2から排出される排気ガスの温度を計測する部材であり、酸化触媒61とDPF62との間に配置されている。なお、温度センサ64を排気ガスの流動方向における酸化触媒61の上流側、又はDPF62の下流側に配置してもよい。
制御パネル7は、ディーゼルエンジン1の現在の制御状態(DPF62の再生制御状態)を示すと共に、作業者が手動でECU8に所定の制御信号を送信するための部材であり、例えば、ディーゼルエンジン1が作業車両に搭載される場合においては、作業者によって視認及び操作可能となるように運転席近傍に配置される。図2に示すように、制御パネル7は、DPF62の再生制御状態に応じて点灯する通常再生中ランプ71、リセット再生中ランプ72、緊急再生中ランプ73、緊急再生禁止中ランプ74、及び緊急再生指示ランプ75と、作業者が手動でECU8に所定の制御信号を送信するための緊急再生開始スイッチ76とを具備する。
ECU8は、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit:ECU)であり、ディーゼルエンジン1を制御する手段として機能する。ECU8は、各種演算処理を実行する中央処理装置(CPU)、制御プログラム等を記憶させた読み出し専用のメモリ(ROM)、及び各種プログラムやデータ等を一時的に記憶させて随時読み書き可能なメモリ(RAM)等で構成されている。
ECU8は、燃料噴射弁22と電気的に接続されており、燃料噴射弁22の燃料噴射状態(時期、回数、圧力等)を制御可能である。
ECU8は、回転センサ23と電気的に接続されており、回転センサ23によって計測されたエンジン本体2のエンジン回転数を取得可能である。
ECU8は、吸気絞り33と電気的に接続されており、吸気絞り33の開度を制御可能である。
ECU8は、上流側排気絞り43、及び下流側排気絞り44とそれぞれ電気的に接続されており、上流側排気絞り43、及び下流側排気絞り44の開度を制御可能である。
ECU8は、EGRバルブ52と電気的に接続されており、EGRバルブ52の開度を制御可能である。
ECU8は、圧力センサ63a・63bとそれぞれ電気的に接続されており、圧力センサ63a・63bによって計測されたDPF62通過前後の排気ガスの圧力を取得可能である。
ECU8は、温度センサ64と電気的に接続されており、温度センサ64によって計測された排気ガスの温度を取得可能である。
ECU8は、制御パネル7と電気的に接続されており、所定の制御信号の制御パネル7への送信、及び制御パネル7からの所定の制御信号の受信が可能である。
ECU8は、電気的に接続された上記の複数の部材を制御することにより、DPF62の再生制御を行う。図3に示すように、ECU8によるDPF62の再生制御は、第一再生、第二再生、及び第三再生を含む。
第一再生は、ECU8によって推定された、PMのDPF62への堆積量(以下、単に「PM堆積量」と記す。)[g/l]が第一閾値を超えた場合に、DPF62に堆積したPMを酸化触媒61の活性温度領域で20[min]燃焼することで除去する制御である。ここで、「活性温度領域」とは、酸化触媒61の活性温度(約200[℃])よりも高い温度であって、暴走再生が生じない程度の比較的低い温度であり、本実施形態においては、300[℃]強である。
第二再生は、PM堆積量が第一閾値を超えた状態で第一設定時間経過した場合、又は第二設定時間(100[h])毎に、ポスト噴射を使用して、DPF62に堆積したPMを約560[℃]で30[min]燃焼することで、アッシュ以外のPMを完全に除去する制御である。
第三再生は、PM堆積量が第二閾値を超えた状態で作業者が制御パネル7の緊急再生開始スイッチ76を押した場合、又は前回実施した第二再生又は第三再生から第三設定時間(50[h])以上経過した状態で作業者が制御パネル7の緊急再生開始スイッチ76を押した場合に、ポスト噴射を使用して、DPF62に堆積したPMを約600[℃]で15[min]燃焼することで、アッシュ以外のPMを完全に除去する制御である。
ここで、「第一閾値」、及び「第二閾値」とは、それぞれECU8によるDPF62の再生制御において最適な値として、予め実験等によって求められたものである。第一閾値は、第二閾値よりも若干小さい値に設定されている。第二閾値は、ECU8によるDPF62の暴走再生が起こりうる限界値から所定の安全率をもって設定されている。また、「第一設定時間」、「第二設定時間」、及び「第三設定時間」とは、ECU8によるDPF62の再生制御において最適な時間として、予め実験等によって求められたものである。本実施形態においては、第二設定時間は、100[h]に設定され、第三設定時間は、50[h]に設定されている。
以下では、図4〜図7を参照して、ECU8によるDPF62の再生制御について詳細に説明する。
図4に示すように、ECU8は、ステップS1〜ステップS20の処理を行う。
ステップS1において、ECU8は、PMのDPF62への堆積量(以下、単に「PM堆積量」と記す。)を算出する。PM堆積量の算出は、以下の二種類の手法で行われる。
PM堆積量を算出するための第一の手法は、排気ガスの流動方向におけるDPF62の上流側と下流側との差圧(以下、単に「DPF62前後の差圧」と記す。)に基づいてPM堆積量を推定するものである。DPF62前後の差圧は、DPF62の上流側と下流側とに設けられた圧力センサ63a・63bによって、DPF62通過前後の排気ガスの圧力をそれぞれ計測し、これらの計測値をECU8が圧力センサ63a・63bから取得して演算を行うことで算出される。DPF62前後の差圧に対するPM堆積量は、予め実験等によって求められ、差圧マップとしてECU8に記憶されているため、ECU8は、上記のように算出したDPF62前後の差圧に基づいてPM堆積量を求める。第一の手法によって算出されたPM堆積量を以下において「第一PM堆積量」と記す。
PM堆積量を算出するための第二の手法は、エンジン本体2から排出されるPMの量(以下、単に「PM排出量」と記す。)からDPF62で再生されるPMの量(以下、単に「PM再生量」と記す。)を減じて算出される値を積算することでPM堆積量を推定するものである。PM排出量、及びPM再生量は、それぞれエンジン本体2のエンジン出力に基づいて求めることができる。エンジン本体2のエンジン出力は、エンジン本体2に設けられた回転センサ23によって計測されたエンジン本体2のエンジン回転数と、燃料噴射弁22が燃焼室21に噴射する燃料の噴射量とをECU8が取得し、ECU8に記憶された所定のマップを参照することで求められる。エンジン本体2のエンジン出力に対するPM排出量、及びエンジン本体2のエンジン出力に対するPM再生量は、それぞれ予め実験等によって求められ、マップとしてECU8に記憶されているため、上記のように算出したエンジン本体2のエンジン出力に基づいてPM排出量、及びPM再生量が求められる。ECU8は、所定の時間毎にPM排出量、及びPM再生量を上記のように求め、PM排出量からPM再生量を減じた値をDPF62に単位時間あたりに堆積するPMの量とみなして、当該値を積算することでPM堆積量を算出する。第二の手法によって算出されたPM堆積量を以下において「第二PM堆積量」と記す。
ECU8は、第一PM堆積量、及び第二PM堆積量を算出した後、制御段階をステップS2に移行する。
ステップS2において、ECU8は、PM堆積量が第二閾値以上であるか否かを判定する。詳細には、ECU8は、第一PM堆積量が第二閾値以上であるか否かを判定し、更に第二PM堆積量が第二閾値以上であるか否かを判定する。第一PM堆積量が第二閾値以上でない場合、又は第二PM堆積量が第二閾値以上でない場合、ECU8は、制御段階をステップS3に移行する。第一PM堆積量が第二閾値以上である場合、又は第二PM堆積量が第二閾値以上である場合、ECU8は、制御段階をステップS17に移行する。
ステップS3において、ECU8は、緊急再生開始スイッチ76が作業者によって押されたかどうか、つまり緊急再生開始スイッチ76がONであるか否かを判定する。緊急再生開始スイッチ76がONでない場合、ECU8は、制御段階をステップS4に移行する。緊急再生開始スイッチ76がONである場合、ECU8は、制御段階をステップS13に移行する。
ステップS4において、ECU8は、PM堆積量が第一閾値以上であるか否かを判定する。詳細には、ECU8は、第一PM堆積量が第一閾値以上であるか否かを判定し、更に第二PM堆積量が第一閾値以上であるか否かを判定する。第一PM堆積量が第一閾値以上である場合、又は第二PM堆積量が第一閾値以上である場合、ECU8は、制御段階をステップS5に移行する。第一PM堆積量が第一閾値以上でない場合、又は第二PM堆積量が第一閾値以上でない場合、ECU8は、制御段階をステップS9に移行する。
ステップS5において、ECU8は、PM堆積量が第一閾値を超えた状態で第一設定時間経過したか否かを判定する。PM堆積量が第一閾値を超えた状態で第一設定時間経過していない場合、ECU8は、制御段階をステップS6に移行する。PM堆積量が第一閾値を超えた状態で第一設定時間経過している場合、ECU8は、制御段階をステップS10に移行する。
ステップS6において、ECU8は、エンジン本体2のエンジン出力が第一再生を実施可能な運転領域にあるか否かを判定する。図5に示すように、エンジン本体2の運転領域は、「自己再生領域」と、「第一再生領域」と、それ以外の領域である「低負荷領域」とからなる。
自己再生領域は、エンジン本体2が出力境界値Ptr1以上のエンジン出力となる運転領域である。自己再生領域においては、エンジン本体2の負荷が比較的高く、エンジン本体2から排出される排気ガスがPMを充分に燃焼除去することができる程度の温度(例えば、350[℃]以上)を有し、いわゆる自己再生が行われる。
第一再生領域は、エンジン本体2が出力境界値Ptr1未満かつ出力境界値Ptr2以上のエンジン出力となる運転領域である。第一再生領域においては、自己再生領域よりもエンジン本体2の負荷が低く、自己再生が行われないが、第一再生を行うことで自己再生が行われるのと同等の効果を奏する。つまり、第一再生領域は、自己再生領域を拡大した運転領域といえる。
低負荷領域は、エンジン本体2が出力境界値Ptr2未満のエンジン出力となる運転領域である。低負荷領域においては、エンジン本体2が低負荷で、エンジン本体2から排出される排気ガスの温度が低く、再生に時間がかかるため、自己再生、及び第一再生が行われない。
エンジン本体2のエンジン出力が第一再生を実施可能な運転領域、つまり第一再生領域にある場合、ECU8は、制御段階をステップS7に移行する。エンジン本体2のエンジン出力が第一再生を実施しない運転領域、つまり自己再生領域等、第一再生領域以外の運転領域にある場合、ECU8は、制御段階をステップS1に移行する。
ステップS7において、ECU8は、通常再生中ランプ71を点灯させる。これは、作業者が制御パネル7によって通常再生、つまり第一再生が行われているということを視認できるようにするためである。ECU8は、通常再生中ランプ71を点灯させた後、制御段階をステップS8に移行する。
ステップS8において、ECU8は、第一再生を行う。前述のように、第一再生は、DPF62に堆積したPMを300[℃]強で20[min]燃焼することで除去する制御である。第一再生は、エンジン本体2のエンジン出力が第一再生領域にある場合にのみ行われる。換言すれば、エンジン本体2のエンジン出力が高負荷で排気ガスの温度が高くなる自己再生領域にある場合、及びエンジン本体2のエンジン出力が低負荷で排気ガスの温度が低くなる低負荷領域にある場合には、第一再生が行われない。これは、自己再生領域では、排気ガスの温度が充分に高く、PMの再生が適切に行われているためであり、低負荷領域では、排気ガスの温度が低すぎて、酸化触媒61が活性温度(約200[℃])に達さず再生が行われないため、又は再生に長時間を要するためである。これにより、第一再生の実施を効率化することが可能となる。したがって、燃費の悪化を防止することができる。
第一再生においては、燃料噴射弁22の燃料噴射状態(時期、回数、圧力等)変更、吸気絞り33の開度変更、上流側排気絞り43の開度変更、下流側排気絞り44の開度変更、及びEGRバルブ52の開度変更等のうちの一つ、又はそれらの組み合わせによってエンジン本体2から排出される排気ガスの温度を目標温度(300[℃]強)まで上昇させる。
なお、排気ガスの温度を上昇させるにあたって吸気絞り33の開度変更を採用する場合には、段階的に排気ガスの温度を上昇させるように吸気絞り33の開度を制御することが好ましい。図6に示すように、吸気絞り33は、再生開始時から酸化触媒61が活性温度(約200[℃])に達するまでの間、第一再生の目標温度(300[℃]強)まで上昇させるために必要な最終的な開度よりも若干開いた状態に制御される。酸化触媒61が活性温度(約200[℃])に達した後、吸気絞り33は、第一再生の目標温度(300[℃]強)まで上昇させるために必要な開度となるように制御される。吸気絞り33を閉じるに従ってエンジン本体2における燃焼効率が悪化し、排気ガスに含まれる炭化水素の量が増加する。当該炭化水素は、酸化触媒61によって酸化し浄化されるが、酸化触媒61が活性温度(約200[℃])に達していない場合には浄化されない。そのため、吸気絞り33を第一再生の目標温度(300[℃]強)まで上昇させるために必要な最終的な開度まで一気に閉じず、一旦、酸化触媒61が炭化水素を浄化可能な活性温度(約200[℃])に達するのに必要な開度まで閉じる。これにより、炭化水素の排出量を低減することができる。
ECU8は、第一再生を行った後、通常再生中ランプ71を消灯させて、制御段階をステップS1に移行する。
ステップS9において、ECU8は、エンジン本体2の運転時間が運転開始から、又は第二再生又は第三再生が終了してから第二設定時間(100[h])であるか否かを判定する。エンジン本体2の運転時間が運転開始から、又は第二再生又は第三再生が終了してから第二設定時間(100[h])である場合、ECU8は、制御段階をステップS10に移行する。エンジン本体2の運転時間が運転開始から、又は第二再生又は第三再生が終了してから第二設定時間(100[h])でない場合、ECU8は、制御段階をステップS1に移行する。なお、本実施形態においては、第二設定時間を100[h]としたが、燃費の悪化等の問題を招かなければそれに限定しない。また、時間ではなく、燃料噴射弁22の燃焼室21への燃料噴射量を基準としてもよい。
ステップS10において、ECU8は、エンジン本体2のエンジン出力が第二再生を実施可能な運転領域にあるか否かを判定する。図7に示すように、エンジン本体2の運転領域は、「第二再生領域」と、それ以外の領域、つまり第二再生を行うことができない領域とからなる。
第二再生領域は、出力境界値Ptr3以上のエンジン出力となる運転領域である。第二再生領域は、第一再生領域(図5参照)よりも広い。詳細には、第二再生領域は、軽負荷かつ低回転の運転領域以外の運転領域である。これは、第二再生が第一再生と異なり、吸気絞り33の開度変更等によって、PMを燃焼除去させることができる温度(NOx転換温度)まで排気ガスの温度を上昇させる必要はなく、第二再生においてポスト噴射を行うのに必要な温度(酸化触媒61の活性温度)まで上昇させればよいためである。そのため、ディーゼルエンジン1が作業車両に搭載される場合においては、作業車両を停止させたりせずに、作業を継続しながら第二再生を行うことができる。
出力境界値Ptr3未満のエンジン出力となる運転領域では、エンジン本体2が低負荷で、エンジン本体2から排出される排気ガスの温度が低く、酸化触媒61の活性温度に達しないため、又は活性温度に達するまでの時間がかかるため、第二再生が行われない。
エンジン本体2のエンジン出力が第二再生を実施可能な運転領域、つまり第二再生領域にある場合、ECU8は、制御段階をステップS11に移行する。エンジン本体2のエンジン出力が第二再生を実施しない運転領域、つまり第二再生領域以外の運転領域にある場合、ECU8は、制御段階をステップS6に移行する。
ステップS11において、ECU8は、リセット再生中ランプ72を点灯させる。これは、作業者が制御パネル7によってリセット再生、つまり第二再生が行われているということを視認できるようにするためである。ECU8は、リセット再生中ランプ72を点灯させた後、制御段階をステップS12に移行する。
ステップS12において、ECU8は、第二再生を行う。前述のように、第二再生は、ポスト噴射を使用して、DPF62に堆積したPMを約560[℃]で30[min]燃焼することで除去する制御である。第二再生は、PM堆積量が第一閾値を超えた状態で第一設定時間経過した場合に行われる。これにより、第一再生で充分にPMを燃焼除去できず、DPF62に堆積したPMを充分に燃焼除去することができ、PMがDPF62に過剰に堆積することによって起こる暴走再生を防止することができる。また、第二再生は、エンジン本体2の運転時間が運転開始から、又は第二再生又は第三再生が終了してから第二設定時間(100[h])である場合に行われる。これにより、定期的にDPF62に堆積したPMを充分に燃焼除去することができ、PM堆積量の算出時における誤差を低減することができる。なお、作業者が緊急再生開始スイッチ76を押すことによって実施される第三再生と同様に、作業者が適宜のスイッチを押すことによって第二再生が実施されるように構成してもよい。
また、第二再生におけるPMの燃焼温度(約560[℃])は、第三再生におけるPMの燃焼温度(約600[℃])よりも若干低く設定されている。これにより、第三再生よりも時間がかかるが、エンジン本体2の負荷変動が激しい作業環境下においても、酸化触媒61の過昇温による熱劣化を防ぐと共に、作業を継続しつつ再生を行うことができる。
第二再生においては、まず、第一再生と同様に、燃料噴射弁22の燃料噴射状態(時期、回数、圧力等)変更、吸気絞り33の開度変更、上流側排気絞り43の開度変更、下流側排気絞り44の開度変更、及びEGRバルブ52の開度変更等のうちの一つ、又はそれらの組み合わせによってエンジン本体2から排出される排気ガスの温度を酸化触媒61の活性温度(約200[℃])まで上昇させる。その後、ポスト噴射を行うことで排気ガスの温度を第二再生の目標温度(約560[℃])まで上昇させる。なお、排気ガスの温度を上昇させるにあたって吸気絞り33の開度変更を採用する場合には、第一再生と同様に、段階的に排気ガスの温度を上昇させるように吸気絞り33の開度を制御することが好ましい。
第二再生においては、DPF62に堆積したPMをポスト噴射を使用することで約560[℃]で30[min]燃焼するため、DPF62に堆積したPMが完全に除去されたものとみなして、ECU8は、記憶されている現在のPM堆積量をゼロにする。しかし、PMには燃焼除去できないアッシュが含まれており、実際のPM堆積量はゼロではない。そのため、予め実験等によって求められてECU8に記憶された、DPF62前後の差圧とアッシュとの関係を示すマップを参照し、第二再生直後に算出されたDPF62前後の差圧に基づいて、DPF62に残存するアッシュの量を推定する。そして、当該アッシュの推定量に基づいて、ステップ1において第一PM堆積量を算出する際に用いられ、DPF62前後の差圧に対するPM堆積量を示す差圧マップを更新する。これにより、第一PM堆積量の算出時において、アッシュの堆積量が考慮されることになり、過度に第一再生、第二再生、又は第三再生が実施されるのを防止することができる。また、第二PM堆積量の算出時において、積算誤差を低減することができる。
ECU8は、第二再生を行った後、リセット再生中ランプ72を消灯させると共に、緊急再生禁止中ランプ74を点灯させて、制御段階をステップS1に移行する。
ステップS13において、ECU8は、第二再生又は第三再生が終了してから第三設定時間(50[h])以上経過したか否かを判定する。なお、ECU8は、第二再生又は第三再生が終了してからの運転時間が第三設定時間(50[h])となった時点で、緊急再生禁止中ランプ74を消灯させるものとする。第二再生又は第三再生が終了してから第三設定時間(50[h])以上経過している場合、ECU8は、制御段階をステップS14に移行する。第二再生又は第三再生が終了してから第三設定時間(50[h])以上経過していない場合、ECU8は、制御段階をステップS4に移行する。なお、本実施形態においては、第三設定時間を50[h]としたが、燃費の悪化等の問題を招かなければそれに限定しない。また、時間ではなく、燃料噴射弁22の燃焼室21への燃料噴射量を基準としてもよい。
ステップS14において、ECU8は、エンジン本体2がアイドル状態(ディーゼルエンジン1が作業車両に搭載される場合においては、作業車両が中立状態)にあるか否かを判定する。エンジン本体2がアイドル状態である場合、ECU8は、制御段階をステップS15に移行する。エンジン本体2がアイドル状態でない場合、ECU8は、制御段階をステップS4に移行する。
ステップS15において、ECU8は、緊急再生中ランプ73を点灯させる。これは、作業者が制御パネル7によって緊急再生、つまり第三再生が行われているということを視認できるようにするためである。ECU8は、緊急再生中ランプ73を点灯させた後、制御段階をステップS16に移行する。
ステップS16において、ECU8は、第三再生を行う。前述のように、第三再生は、ポスト噴射を使用して、DPF62に堆積したPMを約600[℃]で15[min]燃焼することで除去する制御である。第三再生は、PM堆積量が第二閾値を超えた状態で作業者が制御パネル7の緊急再生開始スイッチ76を押した場合に行われる。これにより、緊急時の再生としてDPF62の再生を行うことができ、PMがDPF62に過剰に堆積することによって起こる暴走再生を防止することができる。また、第三再生は、PM堆積量が第二閾値を超えていない状態であっても、作業者が制御パネル7の緊急再生開始スイッチ76を押した場合に行われるが、前回実施した第二再生又は第三再生から第三設定時間(50[h])以上経過していなければ第三再生を実施できない。これにより、無制限に第三再生を実施するのを防ぐことが可能となる。したがって、ポスト噴射によるエンジン本体2の潤滑油希釈を防止することができる。
第三再生においては、まず、第二再生と同様に、燃料噴射弁22の燃料噴射状態(時期、回数、圧力等)変更、吸気絞り33の開度変更、上流側排気絞り43の開度変更、下流側排気絞り44の開度変更、及びEGRバルブ52の開度変更等のうちの一つ、又はそれらの組み合わせによってエンジン本体2から排出される排気ガスの温度を酸化触媒61の活性温度(約200[℃])まで上昇させる。その後、ポスト噴射を行うことで排気ガスの温度を第三再生の目標温度(約600[℃])まで上昇させる。なお、排気ガスの温度を上昇させるにあたって吸気絞り33の開度変更を採用する場合には、第一再生と同様に、段階的に排気ガスの温度を上昇させるように吸気絞り33の開度を制御することが好ましい。
第三再生においては、DPF62に堆積したPMをポスト噴射を使用することで約600[℃]で15[min]燃焼するため、第二再生と同様に、DPF62に堆積したPMが完全除去されたものとみなして、ECU8は、記憶されている現在のPM堆積量をゼロにすると共に、第三再生直後におけるDPF62前後の差圧から算出したPM堆積量に基づいて、DPF62前後の差圧に対するPM堆積量を示す差圧マップを更新する。これにより、第一PM堆積量の算出時において、アッシュの堆積量が考慮されることになり、過度に第一再生、第二再生、又は第三再生が実施されるのを防止することができる。また、第二PM堆積量の算出時において、積算誤差を低減することができる。
ECU8は、第三再生を行った後、緊急再生中ランプ73及び緊急再生指示ランプ75を消灯させると共に、緊急再生禁止中ランプ74を点灯させて、制御段階をステップS1に移行する。
ステップS17において、ECU8は、緊急再生指示ランプ75を点灯させる。これは、作業者が制御パネル7によって緊急再生、つまり第三再生を行うために、緊急再生開始スイッチ76を押す必要があるという警告が出されていることを視認できるようにするためである。なお、警告音を出すことにより、作業者に緊急再生開始スイッチ76の押下を促すように構成してもよい。ECU8は、緊急再生指示ランプ75を点灯させた後、制御段階をステップS18に移行する。
ステップS18において、ECU8は、PM堆積量が第二閾値を超えた状態で第四設定時間(10[min])以上経過したか否かを判定する。PM堆積量が第二閾値を超えた状態で第四設定時間(10[min])以上経過している場合、ECU8は、制御段階をステップS19に移行する。PM堆積量が第二閾値を超えた状態で第四設定時間(10[min])以上経過していない場合、ECU8は、制御段階をステップS20に移行する。ここで、「第四設定時間」とは、ECU8によるDPF62の再生制御において最適な時間として、予め実験等によって求められたものである。本実施形態においては、第四設定時間は、10[min]に設定されている。ただし、第四設定時間は、暴走再生等の問題を招かなければ、10[min]に限定しない。また、時間ではなく、燃料噴射弁22の燃焼室21への燃料噴射量を基準としてもよい。
ステップS19において、ECU8は、エンジン本体2のエンジン出力を制限する。詳細には、ECU8は、エンジン本体2のエンジン回転数、及びトルク等が通常時の数値まで上昇しないように制限する。これにより、作業者が警報を無視して作業を続けた場合であっても、エンジン出力が上がらないため作業の続行が困難となり、再生を余儀なくすることとなって、作業者に第三再生の実施、つまり緊急再生開始スイッチ76の押下を促すことができる。更に、排気ガスの高温化を防止することができ、PMがDPF62に過剰に堆積した時に、排気ガスの高温化に伴う暴走再生を防止することができる。更に、排気ガスの圧力が低下することで、PMがDPF62に過剰に堆積した時に、排気ガスが漏れるのを防止することができる。また、ECU8は、エンジン本体2の最低エンジン回転数を上昇させる。これにより、PMがDPF62に過剰に堆積した時に、排気ガスの減少に伴う暴走再生を防止することができる。
ステップS20において、ECU8は、ステップS3と同様に、緊急再生開始スイッチ76が作業者によって押されたかどうか、つまり緊急再生開始スイッチ76がONであるか否かを判定する。緊急再生開始スイッチ76がONである場合、ECU8は、制御段階をステップS14に移行する。緊急再生開始スイッチ76がONでない場合、ECU8は、制御段階をステップS1に移行する。
1 ディーゼルエンジン
2 エンジン本体
3 吸気通路
4 排気通路
5 EGR装置
6 排気浄化装置
7 制御パネル
8 ECU
21 燃焼室
22 燃料噴射弁
33 吸気絞り
43 上流側排気絞り
44 下流側排気絞り
52 EGRバルブ
61 酸化触媒
62 DPF

Claims (3)

  1. 酸化触媒と、ディーゼルパティキュレートフィルタと、前記ディーゼルパティキュレートフィルタの上流側と下流側との差圧に基づいてディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質の量を推定し、該堆積した粒子状物質の推定量に基づいてディーゼルパティキュレートフィルタを再生する制御手段とを備えるディーゼルエンジンにおいて、
    酸化触媒が活性温度に達した後、前記制御手段を介して、排気ガスの温度を酸化触媒の活性温度よりも高温に設定した目標温度まで上昇させることによって、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する第一再生制御が行えるように構成し
    前記第一再生制御は、吸入空気の量を調整する吸気絞りの開度を段階的に制御して、排気ガスの温度を上昇させることにより行ない、
    前記吸気絞りは、酸化触媒が活性温度に達するまでの間、第一再生制御の目標温度まで上昇させるために必要な開度よりも開いた状態に制御され、酸化触媒が活性温度に達した後は、第一再生制御の目標温度まで上昇させるために必要な開度となるように制御される構成とし、
    前記第一再生制御では、燃料噴射弁のポスト噴射による粒子状物質の燃焼除去を実行しない構成とした
    ことを特徴とするディーゼルエンジン。
  2. 請求項1記載のディーゼルエンジンにおいて、
    再生開始スイッチがONであるか否かにかかわらず、前記第一再生制御が開始される構成とした
    ことを特徴とするディーゼルエンジン。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のディーゼルエンジンにおいて、
    前記制御手段は、前記第一再生制御の他に、第二再生制御と第三再生制御を実行可能とし、
    前記第一再生制御は、粒子状物質の堆積量が第一閾値を超えた場合に、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質を酸化触媒の活性温度領域で燃焼することで除去する制御とし、
    前記第二再生制御は、粒子状物質の堆積量が第一閾値を超えた状態で第一設定時間経過した場合、又は第二設定時間毎に実行し、燃料噴射弁のポスト噴射を使用して、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する制御とし、
    前記第三再生制御は、粒子状物質の堆積量が第一閾値よりも大きい第二閾値を超えた状態で、再生開始スイッチがONのとき、又は、前回実施した第二再生制御又は第三再生制御から、第二設定時間よりも短い第三設定時間以上経過した状態で、再生開始スイッチがONのとき、燃料噴射弁のポスト噴射を使用して、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質を前記第二再生制御の粒子状物質の燃焼温度よりも高い燃焼温度で燃焼することで除去する制御とした
    ことを特徴とするディーゼルエンジン。
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