JP5535733B2 - 実効原子番号及び電子密度を求める方法、その方法を実行させるためのプログラム、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及びct装置 - Google Patents

実効原子番号及び電子密度を求める方法、その方法を実行させるためのプログラム、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及びct装置 Download PDF

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Description

本発明は、被検体に放射線を照射して撮影したCT画像から被検体の実効原子番号及び電子密度を求める方法、その方法を実行させるためのプログラム、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及びCT装置に関する。
コンピュータ断層撮影(Computed Tomography;CT)装置は、放射線などを利用して物体を走査しコンピュータを用いて処理することで、物体の内部画像を構成するものであり、医療用途等において非常に有用な装置である。
このうちX線CT装置は、放射線としてX線を用い、X線源と検出器とを対向して被検体の周りを回転させながら、被検体にX線を照射し、被検体を透過したX線を検出器で検出し、それぞれの回転角度で検出したX線の強度のデータをデータ処理し、各画素における線吸収係数を求め、X線CT画像(以下、「X線CT画像」のことを単に「CT画像」という。)を作成する。
このようなCT装置においては、被検体に対する被爆量を抑え、時間経過に伴う被検体の移動の影響を少なくすることが望ましく、短時間で精度よく被検体のCT画像を撮像できることが望ましい。
一方、各画素における線吸収係数を表示するCT画像に基づいて、各画素における被検体の実効原子番号及び電子密度の分布を求めることができる。求められた実効原子番号及び電子密度の分布は、陽子線治療等の粒子線治療と組合せて用いる場合がある。粒子線治療において粒子線を照射する位置に誤差が生ずると、標的の細胞にではなく周辺の正常細胞に粒子線を照射することとなるため、予め精度よい治療計画をたてなければならない。精度よい治療計画を実現するためには、各画素での実効原子番号及び電子密度を精度よく求めることが望ましい。
ここで、CT画像で表示される各画素の線吸収係数に基づいて、各画素での被検体の実効原子番号及び電子密度の分布を求める場合、未知数が実効原子番号及び電子密度の2つであるため、少なくとも2つの異なるエネルギーにおけるCT画像を作成し、その2つのCT画像における同一画素での2つの線吸収係数を求めることが必要になる。このような2つの異なるエネルギーにおけるCT画像を作成し、実効原子番号と電子密度を計算する方法として、いくつかの方法が開示されている。
例えば、管電圧の異なる2種類のX線を用いて2種類のCT画像を作成し、その2種類のCT画像から物質の実効原子番号と電子密度を計算する方法がある(例えば特許文献1参照)。この場合、1つのX線源を用いて管電圧を変化させて2回測定を行うか、又は異なる管電圧を有する2つのX線源を用いて同時に測定を行う。
また、1つのX線源で1回の測定を行い、エネルギー弁別型検出器と連続光を用いて、異なる2つのエネルギーに対応する2種類のCT画像を作成し、その2種類のCT画像から実効原子番号と電子密度を計算する方法がある(例えば非特許文献1参照)。
特表2005−501684号公報
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 548 (2205) 72-77
ところが、上記の方法を用いて、被検体の実効原子番号と電子密度を求める場合、次のような問題がある。
特許文献1に記載された方法では、1つのX線源を用いて管電圧を変化させて2回測定する場合には、測定対象が生物の場合、測定中に測定対象が移動等することにより、2種類のCT画像の比較に補正が必要になる場合がある。一方、2つのX線源を用いて同時に測定する場合には、装置の構造が複雑になり、コストが増大する場合がある。
非特許文献1に記載された方法では、異なるエネルギーで弁別する際、それぞれのエネルギーにおいてエネルギーバンドのバンド幅が等しくなるように弁別している。ところが、連続光のエネルギーに対する強度分布は、一定でない。従って、強度の小さいエネルギーバンドにおけるSN比の低いCT画像を用いて解析を行う場合があり、精度が低下する場合がある。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、1つの放射線源を用いて1回のCT測定を行う場合において、精度よく物質の実効原子番号と電子密度とを求める方法を提供する。
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
本発明は、放射線照射手段と放射線検出手段とを対向して被検体の周りを回転させながら、前記被検体に放射線を照射して撮影したCT画像から、前記被検体における実効原子番号及び電子密度を求める方法において、それぞれの回転角度において、前記放射線検出手段に入射した前記放射線のエネルギースペクトルを取得するスペクトル取得ステップと、それぞれの前記エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドで積算して得られる第1の値に基づいて、第1のCT画像を再構成し、それぞれの前記エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドで積算して得られる第2の値に基づいて、第2のCT画像を再構成するCT画像再構成ステップと、前記第1のCT画像から求められた第1の線吸収係数と、前記第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数とに基づいて、前記実効原子番号と前記電子密度とを計算する計算ステップとを含み、前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅よりも大きく、前記被検体がない状態で、それぞれの回転角度において、前記放射線検出手段に入射した前記放射線の基準エネルギースペクトルを取得する基準スペクトル取得ステップを含み、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅及び前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記基準エネルギースペクトルを前記第1のエネルギーバンドで積算して得られる第3の値と、前記基準エネルギースペクトルを前記第2のエネルギーバンドで積算して得られる第4の値とが、互いに等しくなるように決定されることを特徴とする。
また、本発明は、放射線照射手段と放射線検出手段とを対向して被検体の周りを回転させながら、前記被検体に放射線を照射して撮影したCT画像から、前記被検体における実効原子番号及び電子密度を求める方法において、それぞれの回転角度において、前記放射線検出手段に入射した前記放射線のエネルギースペクトルを取得するスペクトル取得ステップと、それぞれの前記エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドで積算して得られる第1の値に基づいて、第1のCT画像を再構成し、それぞれの前記エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドで積算して得られる第2の値に基づいて、第2のCT画像を再構成するCT画像再構成ステップと、前記第1のCT画像から求められた第1の線吸収係数と、前記第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数とに基づいて、前記実効原子番号と前記電子密度とを計算する計算ステップとを含み、前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅よりも大きく、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅及び前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1の値と、前記第2の値とが、互いに等しくなるように決定されることを特徴とする。
また、本発明は、上述の実効原子番号及び電子密度を求める方法において、それぞれの前記第1の線吸収係数及び前記第2の線吸収係数に対応する散乱断面積の値を、予め用意した散乱断面積テーブルから取得する散乱断面積取得ステップを含み、前記計算ステップにおいて、前記散乱断面積の値に基づいて計算することを特徴とする。
また、本発明は、上述の実効原子番号及び電子密度を求める方法において、前記放射線検出手段は、複数の放射線検出素子が隣接配置され、前記スペクトル取得ステップ又は前記基準スペクトル取得ステップを行う際に、一の放射線検出素子から他の放射線検出素子への入射エネルギーの伝播と、前記一の放射線検出素子内におけるエネルギー方向への入射エネルギーの伝播と、を表す応答関数を読み出す応答関数読み出しステップと、前記読み出しステップで読み出される前記応答関数に基づいて、前記放射線検出素子のそれぞれで検出される前記エネルギースペクトル又は前記基準エネルギースペクトルの検出結果を補正する検出結果補正ステップとを行うことを特徴とする。
また、本発明は、コンピュータに上述の実効原子番号及び電子密度を求める方法を実行させるためのプログラムである。
また、本発明は、上述のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
また、本発明は、放射線照射部と、放射線検出部と、制御部とを備え、前記放射線照射部と前記放射線検出部とを対向して被検体の周りを回転させながら、前記被検体に放射線を照射してCT画像を撮影するCT装置において、前記放射線検出部は、それぞれの回転角度において、入射した前記放射線のエネルギースペクトルを取得するものであり、前記制御部は、それぞれの前記エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドで積算して得た第1の値に基づいて、第1のCT画像を再構成し、それぞれの前記エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドで積算して得た第2の値に基づいて、第2のCT画像を再構成し、前記第1のCT画像から求められた第1の線吸収係数と、前記第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数とに基づいて、前記被検体の実効原子番号と電子密度とを計算するものであり、前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅よりも大きく、前記放射線検出部は、被検体がない状態で、それぞれの回転角度において、入射した前記放射線の基準エネルギースペクトルを取得するものであり、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅及び前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記基準エネルギースペクトルを前記第1のエネルギーバンドで積算して得られる第3の値と、前記基準エネルギースペクトルを前記第2のエネルギーバンドで積算して得られる第4の値とが、互いに等しくなるように決定されることを特徴とする。
また、本発明は、放射線照射部と、放射線検出部と、制御部とを備え、前記放射線照射部と前記放射線検出部とを対向して被検体の周りを回転させながら、前記被検体に放射線を照射してCT画像を撮影するCT装置において、前記放射線検出部は、それぞれの回転角度において、入射した前記放射線のエネルギースペクトルを取得するものであり、前記制御部は、それぞれの前記エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドで積算して得た第1の値に基づいて、第1のCT画像を再構成し、それぞれの前記エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドで積算して得た第2の値に基づいて、第2のCT画像を再構成し、前記第1のCT画像から求められた第1の線吸収係数と、前記第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数とに基づいて、前記被検体の実効原子番号と電子密度とを計算するものであり、前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅よりも大きく、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅及び前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1の値と、前記第2の値とが、互いに等しくなるように決定されることを特徴とする。
また、本発明は、上述のCT装置において、それぞれの前記第1の線吸収係数及び前記第2の線吸収係数に対応する散乱断面積の値を取得するための散乱断面積テーブルを記憶する記憶部を有する。
また、本発明は、上述のCT装置において、前記放射線検出部は、複数の放射線検出素子が隣接配置され、一の放射線検出素子から他の放射線検出素子への入射エネルギーの伝播と、前記一の放射線検出素子内におけるエネルギー方向への入射エネルギーの伝播と、を表す応答関数を読み出す応答関数テーブルを記憶する記憶部を有し、前記制御部は、前記記憶部から読み出される前記応答関数に基づいて、前記放射線検出素子のそれぞれで検出される前記エネルギースペクトル又は前記基準エネルギースペクトルの検出結果を補正するものであることを特徴とする。
本発明によれば、1つの放射線源を用いて1回のCT測定を行う場合において、精度よく物質の実効原子番号と電子密度とを求めることができる。
実施の形態に係るCT装置の構成を概略的に示すブロック図である。 実施の形態に係るCT装置を上面から見た模式図である。 実施の形態に係る半導体検出器の構成を示す概略図である。 実施の形態に係る実効原子番号と電子密度とを求める方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。 実施の形態において、異なったバンド幅を有するエネルギーウィンドウで分光した場合において、異なったエネルギーでCT画像を再構成することを模式的に説明するための図である。 実施の形態において、異なったエネルギーで再構成したCT画像から求めた実効原子番号と電子密度との分布を示すCT画像である。 比較例として同じバンド幅を有するエネルギーウィンドウで分光した場合において、異なったエネルギーでCT画像を再構成することを模式的に説明するための図である。 実施の形態の変形例に係るCT装置の構成を概略的に示すブロック図である。 実施の形態の変形例に係る実効原子番号と電子密度とを求める方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(実施の形態)
図1から図6を参照し、本発明の実施の形態である実効原子番号及び電子密度を求める方法、及びその方法を行うために用いるCT装置について説明する。
最初に、図1から図3を参照し、本実施の形態に係るCT装置について説明する。
図1は、CT装置の構成を概略的に示すブロック図である。図2は、CT装置を上面から見た模式図である。
図1に示すように、本実施の形態に係るCT装置は、制御部1、半導体検出器2、記憶部3、表示部4、X線照射部5、及び信号処理部6を有する。また、図2に示すように、本実施の形態に係るCT装置は、X線照射部5と、半導体検出器2と、制御部1とを備え、X線照射部5と半導体検出器2とを対向して被検体7の周りを回転させながら、被検体7にX線50を照射する。なお、X線50は、本発明における放射線に相当する。また、X線照射部5は、本発明における放射線照射部又は放射線照射手段に相当する。また、半導体検出器2は、本発明における放射線検出部又は放射線検出手段に相当する。
図1に示すように、制御部1は、画像処理手段10、及び電子密度・実効原子番号計算手段11を有する。制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)、タイマ等を備えたコンピュータである。
画像処理手段10は、後述するように、半導体検出器2が出力するエネルギースペクトル又は基準エネルギースペクトル等の放射線検出情報の検出結果に基づいて、エネルギーバンド毎のCT画像を再構成する。例えば、半導体検出素子のそれぞれが検出するX線スペクトルにおける所定のエネルギーバンド(例えば1keVのバンド幅である。)毎のフォトン数に基づいて、その所定のエネルギーバンド毎のCT画像を再構成する。また、それら再構成した複数のCT画像を合成してエネルギー弁別画像を作成することもできる。画像処理手段10は、再構成したCT画像及びエネルギー弁別画像を、表示部4に表示させる。あるいは、エネルギー弁別画像に代え、再構成した複数のCT画像のそれぞれを色分けしながら合成して表示部4に表示させるようにしてもよい。
電子密度・実効原子番号計算手段11は、後述するように、実効原子番号及び電子密度を計算する。
半導体検出器2は、放射線50を検出するための装置であり、例えば、500V〜1kVの高圧直流電圧であるバイアス電圧を発生させる直流電圧源に接続され、入射X線のエネルギーに対応する電気信号を信号処理部6に対して出力する。
半導体検出器2は、好適には、テルル化カドミウム(CdTe)を用いて形成されるが、シリコン等の他の半導体材料で形成されてもよい。半導体検出器2は、隙間無く隣接配置された多数の半導体検出素子(2−1、2−2、2−3・・・)から構成され、半導体検出素子のそれぞれは、出力信号を取り出すための図示しない個別の信号線に接続されている。なお、半導体検出素子(2−1、2−2、2−3・・・)は、本発明における放射線検出素子に相当する。
図3は、半導体検出器の構成を示す概略図である。図3において、半導体検出素子のそれぞれは、単一の半導体材料(例えばテルル化カドミウム(CdTe))の表面にダイスカット等による複数の平行な溝を配置することによって形成されてもよい。また、それぞれの半導体検出素子の形状は、矩形で示されるが、三角形、正方形、六角形の他の形状を有していてもよい。
更に、図3において、半導体検出素子のそれぞれは、図の横方向に一列に配列されるが縦方向及び横方向の双方にマトリクス状に配列されてもよい。
記憶部3は、実効原子番号及び電子密度を計算するために必要な散乱断面積の値を取得するための散乱断面積テーブル30等の各種情報を記憶する。散乱断面積は、後述するように、線吸収係数を構成する光電吸収係数、非弾性散乱係数、弾性散乱係数などに依存する変数である。記憶部3は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、DVD(Digital Versatile Disk)、半導体メモリ等により構成されている。
表示部4は、制御部1による計算結果等の各種情報を出力する。表示部4は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)により構成されている。
X線照射部5は、X線源によりX線50を発生させる装置である。X線照射部5は、制御部1からの制御信号に応じてX線源から被検体7に向けてX線50を照射し、図2に示すようにその被検体7を挟んでX線照射部5の反対側の位置に配置される半導体検出器2でX線50を検出できるようにする。X線源として、例えば汎用医薬用X線源を用いることができる。
信号処理部6は、エネルギー弁別器60及び増幅器61を有する。信号処理部6は、半導体検出器2の出力信号をエネルギー弁別し、エネルギースペクトルを取得する。増幅器61は、例えばチャージセンシティブアンプ等により構成され、半導体検出器2で得られた信号を増幅する。エネルギー弁別器60は、例えばマルチチャンネルアナライザーより構成され、増幅器61で増幅された信号を異なるエネルギー閾値ごとに弁別する。また、エネルギー弁別器60及びエネルギー弁別器60に対応する増幅器61は、隙間無く隣接配置された複数の半導体検出素子に対応する複数のチャンネルを有する。
図2を用いて前述したように、半導体検出器2は、被検体7を挟んでX線照射部5の反対側の位置に配置される。半導体検出器2及びX線照射部5は、図示しない回転駆動部により被検体7の中心に近い中心軸を中心として、同期して回転する。あるいは、半導体検出器2及びX線照射部5が回転せず、被検体7が図示しない回転駆動部により回転してもよい。すなわち、CT装置は、X線照射部5と半導体検出器2とを対向して被検体7に対して相対回転させながら、被検体7に放射線を照射してCT画像を撮影するものであってもよい。
次に、図4を参照し、本実施の形態に係る実効原子番号と電子密度とを求める方法について説明する。図4は、実効原子番号と電子密度とを求める方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
図4に示すように、本実施の形態に係る実効原子番号と電子密度とを求める方法は、X線照射部5と半導体検出器2とを対向して被検体7の周りを回転させながら、被検体7に放射線50を照射して撮影したCT画像から、被検体7における実効原子番号及び電子密度を求める方法において、スペクトル取得ステップ(ステップS1)、再構成ステップ(ステップS2)、散乱断面積取得ステップ(ステップS3)、及び計算ステップ(ステップS4)を有する。
なお、再構成ステップは、本発明におけるCT画像再構成ステップに相当する。
最初に、スペクトル取得ステップ(ステップS1)を行い、半導体検出器2に入射した放射線のエネルギースペクトルを取得する。スペクトル取得ステップ(ステップS1)では、それぞれ回転角度において、被検体7に入射したX線50を半導体検出器2で検出し、検出したX線50のエネルギースペクトルを取得する。
スペクトル取得ステップ(ステップS1)において、信号処理部6は、半導体検出素子2−1に入射したX線のエネルギースペクトル(例えば、縦軸にフォトン数を配し、横軸に1keV〜60keVの範囲で1keV刻みの60段階のエネルギーバンドに区分されたエネルギー軸を配したヒストグラムで表される。)を取得する。次に、信号処理部6は、半導体検出素子2−2に入射したX線のエネルギースペクトルを取得する。同様に、信号処理部6は、半導体検出素子2−3以降の全ての半導体検出素子について、入射したX線のエネルギースペクトルを取得する。
次に、再構成ステップ(ステップS2)を行う。再構成ステップ(ステップS2)では、それぞれのエネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドB1で積算して得られる第1の値A1に基づいて、第1のエネルギーバンドB1における線吸収係数の分布を表示する第1のCT画像を再構成する。また、それぞれのエネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドB1よりも高エネルギー側の第2のエネルギーバンドB2で積算して得られる第2の値A2に基づいて、第2のエネルギーバンドB2における線吸収係数の分布を表示する第2のCT画像を再構成する。
また、再構成ステップ(ステップS2)において、第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2が、第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1よりも大きくなるようにする。特に、第1のエネルギーバンドB1に含まれるフォトン数と、第2のエネルギーバンドB2に含まれるフォトン数を略等しくなるようにすることが好ましい。
実際には、フォトン数は通過した物質の内部の構成物に依存して変化するため、第1のエネルギーバンドB1に含まれるフォトン数と、第2のエネルギーバンドB2に含まれるフォトン数とは、それぞれの回転角度において、それぞれの半導体検出素子2(2−1、2−2、2−3・・・)が検出するエネルギースペクトルごとに異なる。そのため、被検体である物質を通過しなかった場合におけるエネルギースペクトル(以下、「基準エネルギースペクトル」という。)を基準として、第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1及び第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2を決定するようにする。
本実施の形態では、再構成ステップ(ステップS2)を行う前に、被検体がない状態で、それぞれの回転角度において、放射線検出手段に入射した放射線の基準エネルギースペクトルを取得する基準スペクトル取得ステップを行っておく。また、基準スペクトル取得ステップにおいて、取得した基準エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドB1で積算して得られる第3の値A3と、基準エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドB2で積算して得られる第4の値A4と、が互いに等しくなるように、第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1及び第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2を、決定しておく。
従って、再構成ステップ(ステップS2)では、それぞれの回転角度において、それぞれの半導体検出素子で検出されたエネルギースペクトルについて、上記のようにして決定されたバンド幅W1を有する第1のエネルギーバンドB1で積算して得られる第1の値A1と、バンド幅W2を有する第2のエネルギーバンドB2で積算して得られる第2の値A2とを得る。
それぞれの回転角度において上記のようにして得られた第1の値A1のデータ列をコンピュータ処理し、第1のエネルギーバンドB1における線吸収係数の分布を表示する第1のCT画像を再構成する。また、それぞれの回転角度において上記のようにして得られた第2の値A2のデータ列をコンピュータ処理し、第2のエネルギーバンドB2における線吸収係数の分布を表示する第2のCT画像を再構成する。
次に、散乱断面積取得ステップ(ステップS3)を行い、各エネルギーバンドに対応する散乱断面積を取得する。散乱断面積取得ステップ(ステップS3)では、第1のCT画像及び第2のCT画像の対応する画素の画素値であるそれぞれの第1の線吸収係数μ及び第2の線吸収係数μに対応する散乱断面積F(E,Z)及びG(E,Z)の値を、予め用意した散乱断面積テーブルから取得する。すなわち、第1の線吸収係数μは、第1のCT画像から求められるものであり、第2の線吸収係数μは、第2のCT画像から求められるものである。
ここで、線吸収係数は、光電効果による光電吸収係数、弾性散乱に起因する弾性散乱係数、及び非弾性散乱に起因する非弾性散乱係数の和で表される。また、散乱断面積は、弾性散乱係数及び非弾性散乱係数に依存する変数である。ただし、本実施の形態では、光電吸収係数に依存する変数も含めて散乱断面積という。
散乱断面積F(E,Z)及びG(E,Z)は、エネルギーEに対して従属変数である。従って、散乱断面積F(E,Z)及びG(E,Z)は、第1のエネルギーバンドB1及び第2のエネルギーバンドB2に対応して取得する。具体的には、計算ステップ(ステップS4)で繰り返し計算を行うために予め実効原子番号Zを仮に決定し、そのZの値に対応し、かつ、第1のエネルギーバンドB1のエネルギーの平均値E、及び第2のエネルギーバンドB2のエネルギーの平均値Eに対応する散乱断面積として、F(E,Z)、G(E,Z)、F(E,Z)、及びG(E,Z)を取得する。また、再構成ステップ(ステップS2)で再構成した第1のCT画像及び第2のCT画像のそれぞれから求めた第1の線吸収係数μ及び第2の線吸収係数μも、第1のエネルギーバンドB1のエネルギーの平均値E、及び第2のエネルギーバンドB2のエネルギーの平均値Eに対応する。従って、散乱断面積取得ステップ(ステップS3)では、第1の線吸収係数μに対応して散乱断面積F(E,Z)、G(E,Z)を取得し、第2の線吸収係数μに対応して散乱断面積F(E,Z)、及びG(E,Z)を取得することになる。
次に、計算ステップ(ステップS4)を行い、再構成ステップ(ステップS2)及び散乱断面積取得ステップ(ステップS3)の結果に基づいて、被検体7の実効原子番号と電子密度とを求める。計算ステップ(ステップS4)では、第1のCT画像及び第2のCT画像の対応する画素の画素値であるそれぞれの第1の線吸収係数μ及び第2の線吸収係数μに基づいて、その画素における被検体7の実効原子番号と電子密度とを計算する。
計算ステップ(ステップS4)において、第1のCT画像及び第2のCT画像の対応する画素の画素値であるそれぞれの第1の線吸収係数μ及び第2の線吸収係数μから実効原子番号と電子密度とを求める方法として、公知の方法、例えば文献(日本放射光学会誌、2004 July Vol.17 No.4 pp.185-193)に記載された以下の方法を用いることができる。
物質にX線が照射されたときの線吸収係数μは、前述したように、光電吸収係数、弾性散乱係数、及び非弾性散乱係数の和で表される。このうち、非弾性散乱係数は弾性散乱係数に比べ寄与が僅かであるため非弾性散乱係数は無視することができ、光電吸収係数と弾性散乱係数とを、実効原子番号Z、電子密度ρ、及び散乱断面積とで表すことができるものとすると、下記の式(1)のようになる。
μ=ρ[ZF(E,Z)+G(E,Z)] (1)
式(1)において、Zは実効原子番号、ρは電子密度、Eはフォトンのエネルギー、F(E,Z)は線吸収係数に対する光電効果による寄与(散乱断面積)、G(E,Z)は線吸収係数に対する散乱による寄与(散乱断面積)を表す。
式(1)より、線吸収係数μは近似的に物質の実効原子番号Zと電子密度ρとの2つを未知数とする関数であることが分かる。従って、第1のエネルギーバンドB1及び第2のエネルギーバンドB2における平均エネルギーE、Eに対する線吸収係数μ、μを求め、連立方程式を解くことによって、実効原子番号Zと電子密度ρとを求めることができる。
ここで、F(E,Z)及びG(E,Z)の各項は、未知数Zの関数である。F(E,Z)及びG(E,Z)がZにあまり依存しない場合には、F(E,Z)及びG(E,Z)がZに依存しないものと仮定することにより、下記の式(2)が導かれる。下記の式(2)を、散乱断面積取得ステップ(ステップS3)で散乱断面積テーブルから取得した散乱断面積であるF(E,Z)及びG(E,Z)において、実効原子番号Zを変更して繰り返し計算を行って解くことにより、計算の収束値として実効原子番号Zを求めることができる。
また、式(2)で求めたZの収束値を用いて、下記の式(3)により電子密度を求めることができる。
あるいは、F(E,Z)及びG(E,Z)がZに依存する場合には、計算ステップ(ステップS4)において、実効原子番号Zを求める繰り返し計算を行う度に、再度散乱断面積取得ステップ(ステップS3)に立ち戻り、実効原子番号Zの変更に対応して散乱断面積テーブルから取得するF(E,Z)及びG(E,Z)を変更してもよい。
また、計算ステップ(ステップS4)では、求めた実効原子番号及び電子密度のデータ列に基づいて、実効原子番号Z及び電子密度ρの2種類のCT画像を再構成してもよい。これにより、被検体7の実効原子番号Z及び電子密度ρの分布を求めることができる。
以上、ステップS1からステップS4を行って、被検体7の実効原子番号Z及び電子密度ρを求めることができ、被検体7の実効原子番号Z及び電子密度ρの分布を求めることができる。
次に、図5から図7を参照し、本実施の形態において、1つのX線源及び1回のX線CT測定により、精度よく物質の実効原子番号と電子密度とを求めることができることを説明する。
図5は、異なったバンド幅を有するエネルギーウィンドウで分光した場合において、異なったエネルギーでCT画像を再構成することを模式的に説明するための図である。図5(a)は、異なったバンド幅を有するエネルギーウィンドウで分光されるエネルギースペクトルを示し、図5(b)は、単純化した被検体(ファントム)のモデルを示し、図5(c)は、図5(b)で示したモデルについて図5(a)に示すように分光したときに再構成されるCT画像を示す。図6は、異なったエネルギーで再構成したCT画像から求めた実効原子番号と電子密度との分布を示すCT画像である。図5(d)は、図5(a)に示す異なったバンド幅を決定するための基準エネルギースペクトルを示す。
本実施の形態では、図5(a)に示すエネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドB1及び第2のエネルギーバンドB2で積算するときに、第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2が、第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1よりも大きくなるようにする。
図5(a)に示すように、X線源から照射される連続X線の強度が最大になるエネルギーよりも高エネルギー側では、検出されるX線の強度は、エネルギーの増大に伴って小さくなる。従って、第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2を第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1より大きくすることによって、エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドB2で積算して得られる第2の値A2を、エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドB1で積算して得られる第1の値A1と略等しくすることができる。
具体的には、第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2は、図5(d)に示す被検体がない状態で測定した基準エネルギースペクトルにおいて、第1のエネルギーバンドB1で積算した第3の値A3(フォトン数)と、第2のエネルギーバンドB2で積算した第4の値A4(フォトン数)とが互いに等しくなるように決定される。
第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2が、第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1よりも大きくなるようにすることにより、第2の値A2が十分大きいため、第2の値A2に対する測定誤差の寄与が小さくなり、第2の値A2のSN比が増大する。
ここでは、図5(b)に示すように、中心に円状に炭素が分布し、その外側に水が分布しているような被検体(ファントム)の2次元モデルを仮定し、このモデルについて、本実施の形態に係る実効原子番号及び電子密度を求める方法を行った。再構成ステップ(ステップS2)を行って、第1の値A1及び第2の値A2に基づいて、それぞれ第1のエネルギーバンドB1、第2のエネルギーバンドB2における線吸収係数の分布を表示する第1のCT画像及び第2のCT画像を再構成した。再構成した2種類のCT画像を図5(c)に示す。図5(c)において、紙面左側が第1のエネルギーバンドB1について再構成したCT画像であり、紙面右側が第2のエネルギーバンドB2について再構成したCT画像である。
図5(c)に示すように、第1のエネルギーバンドB1について再構成した第1のCT画像のみならず、高エネルギー側の第2のエネルギーバンドB2について再構成した第2のCT画像についても、中心の炭素が分布する領域と、外側の水の分布する領域との間で、高いコントラストを有するCT画像が得られた。これは、第2の値A2のSN比が高くなったためである。
図5(c)に示す2種類のCT画像を再構成した後、散乱断面積取得ステップ(ステップS3)及び計算ステップ(ステップS4)を行い、各画素(ピクセル)における実効原子番号Z及び電子密度ρを求めた。また、求めた各画素(ピクセル)における実効原子番号Z及び電子密度ρに基づいて、CT画像を再構成した。再構成した2種類のCT画像を図6に示す。図6において、紙面左側が実効原子番号Zについて再構成したCT画像であり、紙面右側が電子密度ρについて再構成したCT画像である。
図6に示すように、実効原子番号Zについて再構成したCT画像、及び電子密度ρについて再構成したCT画像は、ともに、中心の炭素が分布する領域と、外側の水の分布する領域との間で、高いコントラストを有するCT画像が得られた。
これは、第2の値A2に対する測定誤差の寄与が小さくなり、第1のCT画像から求められた第1の線吸収係数μの精度のみならず、第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数μの精度がよくなったためである。そして、式(2)を用いて繰り返し計算を行って実効原子番号Zを求める際の実効原子番号Zの精度がよくなり、その結果、式(3)を用いて求められる電子密度ρの精度がよくなったためである。
一方、図7を参照し、本実施の形態に係る実効原子番号及び電子密度を求める方法とは異なり、高エネルギー側の第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2を低エネルギー側の第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1と等しくする場合について説明する。図7は、比較例として同じバンド幅を有するエネルギーウィンドウで分光した場合において、異なったエネルギーでCT画像を再構成することを模式的に説明するための図である。図7(a)は、等しいバンド幅を有するエネルギーウィンドウで分光されるエネルギースペクトルを示し、図7(b)は、単純化した被検体(ファントム)のモデルを示し、図7(c)は、図7(b)で示したモデルについて図7(a)に示すように分光したときに再構成されるCT画像を示す。ただし、図7(b)に示すモデルは、図5(b)に示すモデルと同一である。
前述したように、X線源から照射される連続X線の強度が最大になるエネルギーよりも高エネルギー側では、検出されるX線の強度は、エネルギーの増大に伴って小さくなる。従って、図7(a)に示すように、第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2を第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1と同じにした場合には、第2の値A2は第1の値A1よりも小さくなる。
比較例でも、図7(b)に示すように、中心に円状に炭素が分布し、その外側に水が分布しているような被検体(ファントム)の2次元モデルを仮定し、このモデルについて、本実施の形態に係る実効原子番号及び電子密度を求める方法を行った。再構成ステップ(ステップS2)を行って、それぞれ第1のエネルギーバンドB1、第2のエネルギーバンドB2における線吸収係数の分布を表示する第1のCT画像及び第2のCT画像を再構成した場合における、2種類のCT画像を模式的に示したものを、図7(c)に示す。図7(c)において、紙面左側が第1のエネルギーバンドB1について再構成した第1のCT画像であり、紙面右側が第2のエネルギーバンドB2について再構成した第2のCT画像である。
図7(c)に示すように、高エネルギー側の第2のエネルギーバンドB2について再構成した第2のCT画像については、中心の炭素が分布する領域と、外側の水の分布する領域との間で、有効なコントラストが得られない。その結果、第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数μの精度が悪くなる。
このように、第2の線吸収係数μが精度よく得られない(SN比が低い)ため、式(2)を用いて繰り返し計算を行って実効原子番号Zを求める際の実効原子番号Zの精度が悪くなり、その結果、式(3)を用いて求められる電子密度ρの精度が悪くなる。
以上、本実施の形態によれば、1回のX線CT測定で得られるエネルギースペクトルを2つのエネルギーバンドで分光して2つの異なるエネルギーに対応する線吸収係数を取得するに際し、高エネルギー側において、低エネルギー側よりもエネルギーバンドのバンド幅を大きくすることにより、高エネルギー側の線吸収係数のSN比を増大させることができる。従って、1つのX線源及び1回のX線CT測定により、精度よく物質の実効原子番号と電子密度とを求めることができる。
また、本実施の形態では、第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1及び第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2は、被検体がない状態で取得した基準エネルギースペクトルにおいて、第1のエネルギーバンドB1を積算して得られる第3の値A3と第2のエネルギーバンドB2を積算して得られる第4の値A4とが等しくなるように決定される例を示した。しかし、第2のエネルギーバンドB2を積算して得られる第2の値A2が第1のエネルギーバンドB1を積算して得られる第1の値A1に比べて極端に小さくなることがなければよい。そのため、第3の値A3と第4の値A4とが等しくなるような場合に限定されず、少なくとも第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2が第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1よりも大きければよい。
また、本実施の形態では、第1のエネルギーバンドB1よりも高エネルギー側の第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2が第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1よりも大きい例を示した。しかし、第2のエネルギーバンドB2を第1のエネルギーバンドB1よりも低エネルギー側とし、第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2が第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1よりも大きくなるようにしてもよい。
(実施の形態の変形例)
次に、図8及び図9を参照し、本発明の実施の形態の変形例に係る実効原子番号及び電子密度を求める方法、及びその方法を行うために用いるCT装置について説明する。
本変形例に係る実効原子番号及び電子密度を求める方法、及びその方法を行うために用いるCT装置は、半導体検出器で検出したエネルギースペクトルの検出結果を、予め用意した応答関数に基づいて補正する点で、実施の形態と相違する。
初めに、図8を参照し、本変形例に係るCT装置について説明する。図8は、本変形例に係るCT装置の構成を概略的に示すブロック図である。また、以下の文中では、先に説明した部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
図8に示すように、本変形例に係るCT装置は、半導体検出器2、表示部4、X線照射部5、及び信号処理部6を有する点で、実施の形態と同様である。
一方、本変形例に係るCT装置において、記憶部3aは、散乱断面積テーブル30に加え、応答関数テーブル31を有する。応答関数テーブル31は、一の半導体検出素子から他の半導体検出素子への入射エネルギーの伝播と、一の半導体検出素子内におけるエネルギー方向への入射エネルギーの伝播と、を表す応答関数のテーブルである。
また、本変形例に係るCT装置において、制御部1aは、画像処理手段10、電子密度・実効原子番号計算手段11に加え、検出結果補正手段12を有する。検出結果補正手段12は、記憶部3aの応答関数テーブル31から読み出す応答関数に基づいて、半導体検出素子のそれぞれで検出されるエネルギースペクトル又は基準エネルギースペクトルの検出結果を補正する手段である。具体的には、検出結果補正手段12は、例えば、特定の半導体検出素子の検出結果から所定のエネルギーバンド(例えば、1keVのバンド幅である。)毎のフォトン数を取得し、それら複数のエネルギーバンドのそれぞれに対応する応答関数を記憶部3aに記憶された応答関数テーブル31から読み出す。その後、検出結果補正手段12は、特定のエネルギーバンドにおけるフォトン数とその特定のエネルギーバンドに対応する応答関数に基づいて、その特定の半導体検出素子に入射したその特定のエネルギーバンドに属するX線の伝播態様(空間方向への伝播態様(他の半導体検出素子への伝播態様)、及びエネルギー方向への伝播態様(その特定の半導体検出素子内の他のエネルギーバンドへの伝播態様)を含む。)から、他の半導体検出素子のそれぞれに移動したフォトンの数、他のエネルギーバンドのそれぞれに移動したフォトンの数、他のエネルギーバンドのそれぞれに移動したフォトンの数、及び本来ならばその特定のエネルギーバンドで検出されていたはずのフォトンの数(以下、これらのフォトン数をまとめて「検出結果補正情報」とする。)を算出する。
その後、検出結果補正手段12は、算出した検出結果補正情報に基づいて、特定のエネルギーバンドに関するX線の検出結果の補正を実行する。そして、上述の処理を全てのエネルギーバンド、及び全ての半導体検出素子に対して実行する。
ここで、応答関数とは、一の半導体検出素子に入射した放射線における所定のエネルギーバンド刻みの各入射エネルギーの伝播態様を示す関数である。具体的には、一の半導体検出素子に放射線が入射した際の、各エネルギーバンド、各検出素子へのエネルギー伝播を示す関数であり、横軸をエネルギー、縦軸を半導体検出素子のID番号としたときに二次元の強度分布で示されるような、二変数関数である。応答関数は、例えばモンテカルロシミュレーションを行って、既知のフォトン数のフォトンをある1つの半導体検出素子に入射した際に、何%のフォトンがエスケープピーク及び特性X線を発生させるかを計算し、関数化したものである。
このようにして得られた応答関数を応答関数テーブル31として記憶部3aに記憶し、各半導体検出素子がエネルギースペクトル又は基準エネルギースペクトルを取得する際に、制御部1aが記憶部3aの応答関数テーブル31から読み出して、各半導体検出素子(2−1、2−2、2−3、・・・)におけるエネルギースペクトル又は基準エネルギースペクトルの検出結果を補正する。
次に、図9を参照しながら、検出結果補正手段12が半導体検出素子(2−1、2−2、2−3、・・・)の検出結果を補正する処理(以下、「検出結果補正処理」とする。)について説明する。図9は、本変形例に係る実効原子番号と電子密度とを求める方法の各工程の手順を説明するためのフローチャートであり、制御部1aは、キーボードやマウス等の入力手段を介した操作者の操作入力に応じてこの検出結果補正処理を実行するようにしてもよく、所定のタイミングで自動的にこの検出結果補正処理を実行するようにしてもよい。
最初に、図4に示したスペクトル取得ステップ(ステップS1)又は基準エネルギーを取得するステップを行う際に、検出結果補正手段12は、半導体検出素子2−1に入射したX線のエネルギースペクトル(例えば、縦軸にフォトン数を配し、横軸に1keV〜60keVの範囲で1keV刻みの60段階のエネルギーバンドに区分されたエネルギー軸を配したヒストグラムで表される。)を取得する(ステップS11)。
その後、検出結果補正手段12は、60keV〜59keVの範囲のエネルギーバンドでフォトンを計数している場合には、60keV〜59keVの範囲のエネルギーバンドに対応する応答関数を記憶部3aの応答関数テーブル31から読み出し(ステップS12)、計数したフォトン数と読み出した応答関数に基づいて、半導体検出素子2−1に入射した60keV〜59keVの範囲のエネルギーバンドに属するX線に関する検出結果補正情報を算出し(ステップS13)、次に特定のエネルギーバンドに関するX線の検出結果の補正を実行する(ステップS14)。
その後、検出結果補正手段12は、半導体検出素子2−1の検出結果における60段階の全てのエネルギーバンドに対して検出結果補正情報を算出したか否かを判定し(ステップS15)、未だ全てのエネルギーバンドに対して検出結果補正情報を算出していない場合には(ステップS15のNO)、ステップS12からステップS14を繰り返すようにする。
この場合、検出結果補正手段12は、59keV〜58keVの範囲のエネルギーバンドでフォトンを計数している場合には、59keV〜58keVの範囲のエネルギーバンドに対応する応答関数を記憶部3aの応答関数テーブル31から読み出し(ステップS12)、計数したそのフォトン数と読み出したその応答関数とに基づいて、半導体検出素子2−1に入射した59keV〜58keVの範囲のエネルギーバンドに属するX線に関する検出結果補正情報を算出し(ステップS13)、次に特定のエネルギーバンドに関するX線の検出結果の補正を実行する(ステップS14)。
一方、60段階の全てのエネルギーバンドに関する検出結果補正を実行したと判定した場合(ステップS15のYES)、検出結果補正手段12は、全ての半導体検出素子に対して検出結果補正を実行した否かを判定し(ステップS16)、未だ全ての半導体検出素子に対して検出結果補正を実行していない場合には(ステップS16のNO)、未だ検出結果補正を実行していない半導体検出素子に対し、ステップS11〜ステップS15を実行する。このようにして、全ての半導体検出素子に対し、検出結果の補正を行う。
また、上記した検出結果の補正は、被検体があるときのエネルギースペクトル又は被検体がないときの基準エネルギースペクトルについて行うことができる。あるいは、被検体があるときのエネルギースペクトル及び被検体がないときの基準エネルギースペクトルの両方について行ってもよい。
また、上記以外、例えばエネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドB1及び第2のエネルギーバンドB2で積算する際に、第2のエネルギーバンドB2のバンド幅W2が第1のエネルギーバンドB1のバンド幅W1よりも大きい点については、実施の形態と同様である。
本変形例では、半導体検出素子で検出した検出結果を、空間方向及びエネルギー方向への放射線の入射エネルギーの伝播を表す応答関数により補正する。その結果、隣接配置された複数の半導体検出素子のそれぞれの検出結果をより高精度に補正することができるため、取得したエネルギースペクトル及び基準エネルギースペクトルを、精度よく、かつ、真の値に近づけることができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
なお、実施の形態及び実施の形態の変形例では、放射線としてX線を用いる例を説明したが、放射線としてX線に限られず、他の波長領域の放射線を用いてもよい。
また、実施の形態及び実施の形態の変形例では、実効原子番号及び電子密度を求める方法をCT装置に適用した例を説明したが、実効原子番号及び電子密度を正確に求めることができれば、例えばCT装置とPET(Positron Emission Tomography)装置を組合せて用いることにより、PET装置における吸収補正に役立てることができる。あるいは、CT装置と陽子線治療装置とを組合せて用いることにより、より正確に陽子線治療計画を行うことができる。
1、1a 制御部
2 半導体検出器
2−1、2−2、2−3、2―4、2−5 半導体検出素子
3、3a 記憶部
4 表示部
5 X線照射部
6 信号処理部
7 被検体
10 画像処理手段
11 電子密度・実効原子番号計算手段
12 検出結果補正手段
30 散乱断面積テーブル
31 応答関数テーブル
60 エネルギー弁別器
61 増幅器

Claims (10)

  1. 放射線照射手段と放射線検出手段とを対向して被検体の周りを回転させながら、前記被検体に放射線を照射して撮影したCT画像から、前記被検体における実効原子番号及び電子密度を求める方法において、
    それぞれの回転角度において、前記放射線検出手段に入射した前記放射線のエネルギースペクトルを取得するスペクトル取得ステップと、
    それぞれの前記エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドで積算して得られる第1の値に基づいて、第1のCT画像を再構成し、それぞれの前記エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドで積算して得られる第2の値に基づいて、第2のCT画像を再構成するCT画像再構成ステップと、
    前記第1のCT画像から求められた第1の線吸収係数と、前記第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数とに基づいて、前記実効原子番号と前記電子密度とを計算する計算ステップと
    を含み、
    前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅よりも大きく、
    前記被検体がない状態で、それぞれの回転角度において、前記放射線検出手段に入射した前記放射線の基準エネルギースペクトルを取得する基準スペクトル取得ステップを含み、
    前記第1のエネルギーバンドのバンド幅及び前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記基準エネルギースペクトルを前記第1のエネルギーバンドで積算して得られる第3の値と、前記基準エネルギースペクトルを前記第2のエネルギーバンドで積算して得られる第4の値とが、互いに等しくなるように決定されることを特徴とする実効原子番号及び電子密度を求める方法。
  2. 放射線照射手段と放射線検出手段とを対向して被検体の周りを回転させながら、前記被検体に放射線を照射して撮影したCT画像から、前記被検体における実効原子番号及び電子密度を求める方法において、
    それぞれの回転角度において、前記放射線検出手段に入射した前記放射線のエネルギースペクトルを取得するスペクトル取得ステップと、
    それぞれの前記エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドで積算して得られる第1の値に基づいて、第1のCT画像を再構成し、それぞれの前記エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドで積算して得られる第2の値に基づいて、第2のCT画像を再構成するCT画像再構成ステップと、
    前記第1のCT画像から求められた第1の線吸収係数と、前記第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数とに基づいて、前記実効原子番号と前記電子密度とを計算する計算ステップと
    を含み、
    前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅よりも大きく、
    前記第1のエネルギーバンドのバンド幅及び前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1の値と、前記第2の値とが、互いに等しくなるように決定されることを特徴とする実効原子番号及び電子密度を求める方法。
  3. それぞれの前記第1の線吸収係数及び前記第2の線吸収係数に対応する散乱断面積の値を、予め用意した散乱断面積テーブルから取得する散乱断面積取得ステップを含み、
    前記計算ステップにおいて、前記散乱断面積の値に基づいて計算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の実効原子番号及び電子密度を求める方法。
  4. 前記放射線検出手段は、複数の放射線検出素子が隣接配置され、
    前記スペクトル取得ステップ又は前記基準スペクトル取得ステップを行う際に、
    一の放射線検出素子から他の放射線検出素子への入射エネルギーの伝播と、前記一の放射線検出素子内におけるエネルギー方向への入射エネルギーの伝播と、を表す応答関数を読み出す応答関数読み出しステップと、
    前記読み出しステップで読み出される前記応答関数に基づいて、前記放射線検出素子のそれぞれで検出される前記エネルギースペクトル又は前記基準エネルギースペクトルの検出結果を補正する検出結果補正ステップと
    を行うことを特徴とする請求項に記載の実効原子番号及び電子密度を求める方法。
  5. コンピュータに請求項1から請求項4のいずれかに記載の実効原子番号及び電子密度を求める方法を実行させるためのプログラム。
  6. 請求項5に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  7. 放射線照射部と、放射線検出部と、制御部とを備え、前記放射線照射部と前記放射線検出部とを対向して被検体の周りを回転させながら、前記被検体に放射線を照射してCT画像を撮影するCT装置において、
    前記放射線検出部は、それぞれの回転角度において、入射した前記放射線のエネルギースペクトルを取得するものであり、
    前記制御部は、それぞれの前記エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドで積算して得た第1の値に基づいて、第1のCT画像を再構成し、それぞれの前記エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドで積算して得た第2の値に基づいて、第2のCT画像を再構成し、前記第1のCT画像から求められた第1の線吸収係数と、前記第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数とに基づいて、前記被検体の実効原子番号と電子密度とを計算するものであり、
    前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅よりも大きく、
    前記放射線検出部は、被検体がない状態で、それぞれの回転角度において、入射した前記放射線の基準エネルギースペクトルを取得するものであり、
    前記第1のエネルギーバンドのバンド幅及び前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記基準エネルギースペクトルを前記第1のエネルギーバンドで積算して得られる第3の値と、前記基準エネルギースペクトルを前記第2のエネルギーバンドで積算して得られる第4の値とが、互いに等しくなるように決定されることを特徴とするCT装置。
  8. 放射線照射部と、放射線検出部と、制御部とを備え、前記放射線照射部と前記放射線検出部とを対向して被検体の周りを回転させながら、前記被検体に放射線を照射してCT画像を撮影するCT装置において、
    前記放射線検出部は、それぞれの回転角度において、入射した前記放射線のエネルギースペクトルを取得するものであり、
    前記制御部は、それぞれの前記エネルギースペクトルを第1のエネルギーバンドで積算して得た第1の値に基づいて、第1のCT画像を再構成し、それぞれの前記エネルギースペクトルを第2のエネルギーバンドで積算して得た第2の値に基づいて、第2のCT画像を再構成し、前記第1のCT画像から求められた第1の線吸収係数と、前記第2のCT画像から求められた第2の線吸収係数とに基づいて、前記被検体の実効原子番号と電子密度とを計算するものであり、
    前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1のエネルギーバンドのバンド幅よりも大きく、
    前記第1のエネルギーバンドのバンド幅及び前記第2のエネルギーバンドのバンド幅は、前記第1の値と、前記第2の値とが、互いに等しくなるように決定されることを特徴とするCT装置。
  9. それぞれの前記第1の線吸収係数及び前記第2の線吸収係数に対応する散乱断面積の値を取得するための散乱断面積テーブルを記憶する記憶部を有する請求項7又は請求項8に記載のCT装置。
  10. 前記放射線検出部は、複数の放射線検出素子が隣接配置され、
    一の放射線検出素子から他の放射線検出素子への入射エネルギーの伝播と、前記一の放射線検出素子内におけるエネルギー方向への入射エネルギーの伝播と、を表す応答関数を読み出す応答関数テーブルを記憶する記憶部を有し、
    前記制御部は、前記記憶部から読み出される前記応答関数に基づいて、前記放射線検出素子のそれぞれで検出される前記エネルギースペクトル又は前記基準エネルギースペクトルの検出結果を補正するものであることを特徴とする請求項に記載のCT装置。
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