JP5535296B2 - 渦流探傷試験用の試験片とこれを用いた渦流探傷試験方法及びその製作方法 - Google Patents
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Description
従って、渦流探傷試験は、非破壊試験(Non−destructive Testing:NDT)の一種であり、材料試験技術の分野に属する。
なお、非破壊試験(NDT)は、非破壊検査(Non−destructive Inspection:NDI)又は非破壊評価(Non−destructive Evaluation:NDE)とも呼ばれる。
特許文献2の「応力腐食割れサンプルの作製方法および非破壊試験用試験片」は、低炭素ステンレス鋼やNi基合金の試験片に熱処理によりCrを含む析出物を析出させるようにした後、腐食液により腐食環境下で応力腐食割れを発生させるものである。
特許文献3の「渦流探傷方法及びそれに用いられる隙間形成部材」は、2つの鋼管の間に隙間形成部材を挟み、公称外径に対応した大きさの隙間を形成する。この隙間を探傷して生成された探傷信号に基づいて、渦流探傷装置の感度を設定するものである。
しかし金属疲労欠陥などの自然欠陥から得られる渦流信号強度は、EDM人工欠陥から得られるものと通常相違することが知られている。例えば、自然欠陥からの信号強度の方がEDM人工欠陥からよりも小さくなる場合が多い。
そのため、従来のEDM人工欠陥を形成した模擬欠陥試験片を用いて渦流探傷試験の試験条件を設定した場合、例えば自然欠陥のサイジングにおいて、自然欠陥を過小評価するおそれがあり、装置やプローブの能力を正しく評価できない問題点があった。
(B2)予備試験により、予備試験素材の表面に自然欠陥を付与し、
(C2)次いで予備試験素材を切断してその自然欠陥の大きさ及び形状を実測し、
(D2)試験片素材の表面に予備試験と同一条件で既知の大きさ及び形状の自然欠陥を形成し、
(E2)次いで前記試験片素材の表面の自然欠陥と異なる位置に、自然欠陥と同一の大きさ及び形状の人工欠陥を形成する、ことにより製作され、
材質、熱処理履歴、電磁気特性が被検対象物と同一であり、かつ被検対象物を模擬した形状及び大きさの素材からなり、その表面に自然欠陥と人工欠陥を有し、
該人工欠陥は、予備試験で予め実測された既知の大きさ及び形状の自然欠陥と同一の大きさ及び形状を有する、ことを特徴とする渦流探傷試験用の試験片が提供される。
該人工欠陥は、予備試験で予め実測された既知の大きさ及び形状の自然欠陥と同一の大きさ及び形状を有する渦流探傷試験用の試験片であって、自然欠陥及び人工欠陥の大きさが異なるものを複数準備し、
(B1)同一の渦流探傷試験装置を用いて前記複数の試験片の自然欠陥と人工欠陥を検出し、複数の自然欠陥と人工欠陥の大きさとそれぞれの信号強度の関係を求め、
(C1)次いで、前記渦流探傷試験装置を用いて被検対象物の実欠陥を検出し、実欠陥から得られた信号強度から、前記自然欠陥の大きさとその信号強度との前記関係に基づき実欠陥の大きさを求める、ことを特徴とする渦流探傷試験用の試験片を用いた渦流探傷試験方法が提供される。
該人工欠陥は、予備試験で予め実測された既知の大きさ及び形状の自然欠陥と同一の大きさ及び形状を有する渦流探傷試験用の試験片の製作方法であって、
(A2)材質、熱処理履歴、電磁気特性が被検対象物と同一である予備試験素材と試験片素材を準備し、
(B2)予備試験により、予備試験素材の表面に自然欠陥を付与し、
(C2)次いで予備試験素材を切断してその自然欠陥の大きさ及び形状を実測し、
(D2)試験片素材の表面に予備試験と同一条件で既知の大きさ及び形状の自然欠陥を形成し、
(E2)次いで前記試験片素材の表面の自然欠陥と異なる位置に、自然欠陥と同一の大きさ及び形状の人工欠陥を形成する、ことを特徴とする渦流探傷試験用の試験片の製作方法が提供される。
前記(D2)(E2)において、異なる繰り返し回数に対応する自然欠陥と人工欠陥を有する複数の試験片を製作する、ことが好ましい。
また、同一の渦流探傷試験装置によるそれぞれの信号強度が異なる場合でも、人工欠陥は予備試験で予め実測された既知の大きさ及び形状の自然欠陥と同一の大きさ及び形状を有するので、被検対象物の実欠陥(実際の自然欠陥)からの信号強度により実欠陥の大きさを高い精度で評価することができる。
この図において、本発明の渦流探傷試験用の試験片10は、材質、熱処理履歴、電磁気特性が被検対象物と同一であり、かつ被検対象物を模擬した形状及び大きさの素材12からなる。また、本発明の試験片10は、素材12の表面に自然欠陥14と人工欠陥16を有する。この人工欠陥16は、予備試験で予め実測された既知の大きさ及び形状の自然欠陥14と同一の大きさ及び形状を有する。
なお、素材12の形状は、被検対象物(例えば原子炉用配管)を模擬した形状及び大きさである限りで、矩形平板以外の棒材、円管の部分形状、その他であってもよい。
なお、素材12は材質、熱処理履歴、電磁気特性が被検対象物と同一である限りで、溶接部11又はその近傍に限定されない。
なお、自然欠陥14と人工欠陥16の位置は、渦流探傷試験における条件が同一とみなせる限りで、任意の位置に形成することができる。
なお、自然欠陥14は金属疲労以外の自然欠陥であってもよく、人工欠陥16は放電加工以外の加工手段(例えば機械加工)であってもよい。
また、同一の渦流探傷試験装置によるそれぞれの信号強度が異なる場合でも、人工欠陥16は予備試験で予め実測された既知の大きさ及び形状の自然欠陥14と同一の大きさ及び形状を有するので、被検対象物の実欠陥(実際の自然欠陥)からの信号強度により実欠陥の大きさを高い精度で評価することができる。
この図において、横軸は自然欠陥14と人工欠陥16の深さ、縦軸は信号強度である。この図については、後述する。
この図において、本発明の渦流探傷試験方法は、S1〜S6の各ステップ(工程)からなる。
S1では、上述した渦流探傷試験用の試験片10であって、自然欠陥14及び人工欠陥16の大きさが異なるものを複数準備する。この準備は、後述する試験片の製作方法によるのがよい。
S2では、同一の渦流探傷試験装置を用いて複数の試験片10の自然欠陥14と人工欠陥16を検出する。この渦流探傷試験装置は、以下のステップで共通して使用する限りで、プローブの相違、検出能力の低下、等で性能又は特性が異なってもよい。
S3では、複数の自然欠陥14と人工欠陥16の大きさとそれぞれの信号強度の関係を求める。上述した図2はこの関係を示す図である。自然欠陥14と人工欠陥16の大きさは、図2では欠陥深さであるが、その他の大きさ、例えば欠陥面積であってもよい。
S4では、前記同一の渦流探傷試験装置を用いて被検対象物の実欠陥を検出し、実欠陥から得られた信号強度から、前記関係に基づき実欠陥の大きさを求める。
この図において、本発明の製作方法は、T1〜T11の各ステップ(工程)からなる。
この例では、予備試験素材12Aと試験片素材12Bはまず、突合せ溶接(T1)を行った後に溶接欠陥が無いことを確認するために放射線透過試験(T2)を行った。その後、外形加工(T3)を行い、次いでエッチング(T4)を行って溶接熱溶接部の位置を確認した。
この例では、3点曲げ疲労試験(T6)で疲労クラックの起点となるノッチ加工(T5)をした後、3点曲げ疲労試験(T6)を実施した。
この図において、予備試験素材12Aの下面中央には、幅方向に延びる溶接部11が形成されており、溶接部11と母材(ニッケル基合金)との境界線に沿って素材12の下面幅方向にノッチを形成した。ノッチの大きさは、この例では長さ1.0mm、深さ0.50mm、幅0.05mmであった。
3点曲げ疲労試験では、予備試験素材12Aを長さ方向に80mm離れた2点A、Bで支持し、その中央にノッチを位置決めし、2点A、Bの中点上方Cから下向きに正弦波の負荷を繰り返し印加した。
この例では、疲労試験を5回に分けて実施し、それぞれの中間において、温度を順次下げて大気暴露を1時間ずつ実施した。
図7は、3点曲げ疲労試験(T6)の後、ノッチに発生した自然欠陥14の破面を示す図である。
この図において、中央の半楕円形nは、ノッチ加工(T5)によるノッチ形状であり、その外側の5本の半楕円形(内側からa1,a2,a3,a4,a5)は、大気暴露により変色した部分の境界線を示している。
この図に示すように、図7の疲労破面には色(図では省略)がついていた。これは3点曲げ試験を途中で止めて、大気酸化させた後、疲労試験を再開し、繰り返した結果であり、温度を変えて大気暴露した際に生じた酸化膜である。
なお、この図において、上部に示す複数の縦線は、その間隔が1mmであることを示している。
図8は、予備試験素材12Aの自然欠陥14の繰り返し数(横軸)と疲労クラック(自然欠陥14)の表面長さ(縦軸)との関係を示す図である。この図において各●は、図7における5本の半楕円形(内側からa1,a2,a3,a4,a5)に対応している。
また、図9は、予備試験素材12Aの自然欠陥14の表面長さ(横軸)と深さ(縦軸)の関係を示す図である。
これらの図から、予備試験素材12Aの自然欠陥14の形状は、一般に構造物で発生する疲労欠陥の断面形状と同様に楕円形状になっていることがわかった。
この例では、予備試験と同様に、3点曲げ疲労試験(T9)で疲労クラックの起点となるノッチ加工(T10)をした後、3点曲げ疲労試験(T9)を予め設定された繰り返し回数だけ実施し、ノッチ位置に、既知の大きさ及び形状の自然欠陥14を形成した。
なお、上述した例では、溶接部11の熱影響部に欠陥(自然欠陥14と人工欠陥16)を形成したが、溶接部11である必要は必ずしもない。また、3点曲げ試験(T6、T9)で疲労欠陥を発生させているが、3点曲げ試験である必要もない。
12 素材、12A 予備試験素材、12B 試験片素材、
14 自然欠陥、16 人工欠陥
Claims (5)
- (A2)材質、熱処理履歴、電磁気特性が被検対象物と同一である予備試験素材と試験片素材を準備し、
(B2)予備試験により、予備試験素材の表面に自然欠陥を付与し、
(C2)次いで予備試験素材を切断してその自然欠陥の大きさ及び形状を実測し、
(D2)試験片素材の表面に予備試験と同一条件で既知の大きさ及び形状の自然欠陥を形成し、
(E2)次いで前記試験片素材の表面の自然欠陥と異なる位置に、自然欠陥と同一の大きさ及び形状の人工欠陥を形成する、ことにより製作され、
材質、熱処理履歴、電磁気特性が被検対象物と同一であり、かつ被検対象物を模擬した形状及び大きさの素材からなり、その表面に自然欠陥と人工欠陥を有し、
該人工欠陥は、予備試験で予め実測された既知の大きさ及び形状の自然欠陥と同一の大きさ及び形状を有する、ことを特徴とする渦流探傷試験用の試験片。 - (A1)材質、熱処理履歴、電磁気特性が被検対象物と同一であり、かつ被検対象物を模擬した形状及び大きさの素材からなり、その表面に自然欠陥と人工欠陥を有し、
該人工欠陥は、予備試験で予め実測された既知の大きさ及び形状の自然欠陥と同一の大きさ及び形状を有する渦流探傷試験用の試験片であって、自然欠陥及び人工欠陥の大きさが異なるものを複数準備し、
(B1)同一の渦流探傷試験装置を用いて前記複数の試験片の自然欠陥と人工欠陥を検出し、複数の自然欠陥と人工欠陥の大きさとそれぞれの信号強度の関係を求め、
(C1)次いで、前記渦流探傷試験装置を用いて被検対象物の実欠陥を検出し、実欠陥から得られた信号強度から、前記自然欠陥の大きさとその信号強度との前記関係に基づき実欠陥の大きさを求める、ことを特徴とする渦流探傷試験用の試験片を用いた渦流探傷試験方法。 - 材質、熱処理履歴、電磁気特性が被検対象物と同一であり、かつ被検対象物を模擬した形状及び大きさの素材からなり、その表面に自然欠陥と人工欠陥を有し、
該人工欠陥は、予備試験で予め実測された既知の大きさ及び形状の自然欠陥と同一の大きさ及び形状を有する渦流探傷試験用の試験片の製作方法であって、
(A2)材質、熱処理履歴、電磁気特性が被検対象物と同一である予備試験素材と試験片素材を準備し、
(B2)予備試験により、予備試験素材の表面に自然欠陥を付与し、
(C2)次いで予備試験素材を切断してその自然欠陥の大きさ及び形状を実測し、
(D2)試験片素材の表面に予備試験と同一条件で既知の大きさ及び形状の自然欠陥を形成し、
(E2)次いで前記試験片素材の表面の自然欠陥と異なる位置に、自然欠陥と同一の大きさ及び形状の人工欠陥を形成する、ことを特徴とする渦流探傷試験用の試験片の製作方法。 - 前記(B2)(C2)において、予備試験素材の疲労試験により、繰り返し回数と自然欠陥の大きさ及び形状との関係を求め、
前記(D2)(E2)において、異なる繰り返し回数に対応する自然欠陥と人工欠陥を有する複数の試験片を製作する、ことを特徴とする請求項3に記載の渦流探傷試験用の試験片の製作方法。 - 前記(B2)において、疲労試験を複数回に分けて実施し、それぞれの中間において、温度を順次下げて大気暴露を実施する、ことを特徴とする請求項4に記載の渦流探傷試験用の試験片の製作方法。
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