JP5534917B2 - 内面溝付管並びにその製造方法及び製造装置 - Google Patents

内面溝付管並びにその製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

この発明は、冷凍機器、家庭用空調機(エアコン)、業務用空調機(パッケージエアコン)等の空調機器に備えられる熱交換器用の伝熱管として用いられる内面溝付管並びにその製造方法及び製造装置に関する。
熱交換器用の伝熱管として用いられる内面溝付管を製造するための内面溝付管の製造装置及び製造方法は、特許文献1に開示されている。
詳述すると特許文献1では、ダイスとフローティングプラグとの間で管を引き抜いて縮径する縮径部と、素管の外面を管周方向に沿って転動する転動体(4個のボール)で押圧しながら該素管の内面を、管内部に備えた溝付プラグに押し付けて該素管の内面に複数の溝を形成する溝加工部とを備えた構成の製造装置が開示されている。
さらに特許文献1では、素管がダイスとフローティングプラグにより縮径された後、転動体と溝付プラグとで内面の溝付け加工が行われる内面溝付管の製造方法が開示されている。
前記製造装置は、溝付プラグとフローティングプラグとが、プラグロッドで回転自在に連結され、これら溝付プラグ、フローティングプラグ、及び、プラグロッドが、芯金として一体に構成され、管内部に配置された構成である。
しかし、芯金を組み立てたときに、例えば、プラグロッドや溝付プラグのフローティングプラグに対する取り付け誤差などがある場合、プラグロッドと溝付プラグとの間に軸ずれが生じ、芯金が管内部で回転したときに軸振れが生じるという難点が生じる。
このような軸ずれ量の大きな芯金を使用した場合、溝加工部において軸振れが大きくなるため、転動体の押圧力が安定せず、管外面のうねりが大きくなりがちである。
また、このような軸ずれ量の大きな芯金を使用した場合、溝付プラグによる管内面への溝加工が安定せず、管軸方向において溝の深さなど溝形状が変動することになる。
さらにまた、軸振れが大きい状態で溝加工を行うと、転動体の回転数を上げることで、管に捩れが発生するため、これを回避するため回転数を下げる必要があるがそのために溝付け加工速度を下げる必要があり、製造効率が低下するという難点もあった。
また、管外面のうねりが大きいなどにより管軸方向において管断面が安定しなければ、内面溝付管を製品として出荷時に非破壊探傷試験を行う場合に、ノイズが大きくなり、キズ(欠陥)の検出精度に悪影響を及ぼし、製品歩留りが低いという難点があった。
また管外面のうねりが大きい内面溝付管を伝熱管として使用して熱交換器を製造する場合に、伝熱管を、所定のピッチを隔てて並べた複数枚の放熱フィンに予め形成された孔内に挿通し、拡管したとき、放熱フィンとの密着状態にばらつきが出て所望の性能が得られないという難点も生じる。
さらに、管内面の溝深さが管軸方向において安定しないと、所望の優れた伝熱性能を得ることができないという難点も生じる。
特開平5−50136号公報
そこで管の軸方向に対する直交断面を管軸方向において安定化することができる内面溝付管並びにその製造方法及び製造装置の提供を目的とする。
本発明は、縮径ダイスとフローティングプラグとの間で素管を引き抜いて縮径する縮径工程と、素管の外面を管軸回りに転動する転動体で押圧しながら該素管の内面を、管内部に備えた溝付プラグに押し付けて素管の内面に複数の溝を形成する溝付加工工程とを行う内面溝付管の製造方法であって、前記フローティングプラグと前記溝付プラグとを連結する連結棒を管内部に備え、前記連結棒の軸方向における前記縮径ダイスの側に、前記フローティングプラグの挿着を許容するフローティングプラグ挿着許容部を形成するとともに、前記連結棒の軸方向における前記転動体の側に、前記溝付プラグの挿着を許容する溝付プラグ挿着許容部を形成し、前記連結棒は、軸方向の一端側から他端側との間の外周面を平滑な平滑外周面で形成するとともに、管軸方向に沿って同一径に形成し、前記連結棒における、前記フローティングプラグと前記溝付プラグとの管軸方向の間に挿着され、該フローティングプラグと該溝付プラグとを管軸方向において所定間隔に規制する間隔規制管と、前記連結棒に挿着する留金と、前記留金と前記フローティングプラグとの間に介在させるとともに、管長さに応じて形成した管状のスペーサとを備え、前記連結棒の軸方向の前記一端側から前記他端側へ前記溝付プラグ、前記間隔規制管、前記フローティングプラグ、前記スペーサをこの順に挿着し、前記留金を、前記連結棒の前記他端側に挿着することで一体に構成し、前記フローティングプラグ挿着許容部挿着した前記フローティングプラグを用いて前記縮径工程を行い、前記溝付プラグ挿着許容部挿着した前記溝付プラグを用いて前記溝付加工工程を行うことを特徴とする。
この発明の態様として、前記連結棒を、軸方向の前記一端側に鍔状の頭部を形成するとともに、軸方向の前記他端部に螺子部を形成したボルト型のピンで構成し、前記留金を、前記連結棒の挿入を許容する挿入孔を有した筒状に形成するとともに、一端が閉塞した円弧状の先細り形状で形成したものを用いて行うことができる。
たこの発明は、縮径ダイスとフローティングプラグとの間で素管を引き抜いて管を縮径する縮径部と、前記素管の外面を管周方向に沿って転動する転動体で押圧しながら該素管の内面を、管内部に備えた溝付プラグに押し付けて複数の溝を形成する溝加工部とを備えた内面溝付管の製造装置であって、前記縮径部と前記溝加工部との間に配され、前記フローティングプラグと前記溝付プラグとを連結する連結棒を管内部に備え、前記連結棒の軸方向における前記縮径ダイスの側に、前記フローティングプラグの挿着を許容するフローティングプラグ挿着許容部を形成するとともに、前記連結棒の軸方向における前記転動体の側に、前記溝付プラグの挿着を許容する溝付プラグ挿着許容部を形成し、前記連結棒は、軸方向の一端側から他端側との間の外周面を平滑な平滑外周面で形成するとともに、管軸方向に沿って同一径で形成し、前記連結棒における、前記フローティングプラグと前記溝付プラグとの管軸方向の間に挿着され、該フローティングプラグと該溝付プラグとを管軸方向において所定間隔に規制する間隔規制管と、前記連結棒に挿着する留金と、前記留金と前記フローティングプラグとの間に介在させるとともに、管長さに応じて形成した管状のスペーサとを備え、前記連結棒の軸方向の前記一端側から前記他端側へ前記溝付プラグ、前記間隔規制管、前記フローティングプラグ、前記スペーサをこの順に挿着し、前記留金を、前記連結棒の他端側に挿着することで一体に構成したことを特徴とする。
この発明の態様として、前記連結棒を、軸方向の一端側に鍔状の頭部を形成するとともに、軸方向の他端部に螺子部を形成したボルト型のピンで構成し、前記留金を、前記連結棒の挿入を許容する挿入孔を有した筒状に形成するとともに、一端が閉塞した円弧状の先細り形状で形成することができる。
記フローティングプラグ挿着許容部は、凹状、或いは、凸状に形成するとともに、前記フローティングプラグ挿着部は、前記フローティングプラグ挿着許容部に挿着可能に凸状、或いは、凹状に形成することができる。
同様に、前記溝付プラグ挿着許容部は、凹状、或いは、凸状に形成するとともに、前記溝付プラグ挿着部は、前記溝付プラグ挿着許容部に挿着可能に凸状、或いは、凹状に形成することができる。
前記素管は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、或いは、アルミニウム合金など熱伝導性に優れた金属であれば特に限定しない。
前記転動体は、例えば、転造ボールに限らず、ローラ、さらに、転造ボールとローラとを併用して構成することもできる。
この発明によれば、管の軸方向に対する直交断面を管軸方向において安定化することができる内面溝付管並びにその製造方法及び製造装置を提供することができる。
このような内面溝付管により、製品として出荷時のキズ検出精度の確実性を高めて製品歩留まりの向上を図ることができるとともに、伝熱性能を安定化することができ、しかも、放熱フィンとの十分な密着性を得ることができる。
第1実施形態の内面溝付管の製造装置を示す断面図。 第1実施形態の内面溝付管の製造装置に備えた芯金の側面図。 図2中のA−A線断面図。 第1実施形態の内面溝付管の製造装置に備えた芯金を分解して一部断面で示した構成説明図。 第2実施形態の内面溝付管の製造装置を示す断面図。 実験1を行っている様子を示す説明図。 転造ボールの加工ピッチを説明する説明図。 単重変化率のばらつきを確認する方法を説明するための説明図。 本発明例の芯金を用いて加工した供試管の管軸方向における単重のばらつきを示すグラフ。 本発明例の芯金を用いて加工した供試管の管軸方向における単重変化率のばらつきを示すグラフ。 管軸方向に対する直交断面の一部を示す断面図。 本発明例の芯金を用いて加工した供試管の管軸方向における断面形状のばらつきを示すグラフ。 本発明例の芯金を用いて加工した供試管おける渦流探傷試験結果を示すグラフ。 本発明例の芯金を用いて加工した内面溝付管の外観を示す写真。 本発明例の芯金を用いて加工した内面溝付管おける渦流探傷試験結果を示すグラフ。 従来の内面溝付管の製造装置に備えた芯金の側面図。 図16中のA−A線断面図。 従来の内面溝付管の製造装置に備えた芯金を分解して一部断面で示した構成説明図。 従来の芯金を用いて加工した供試管の管軸方向における単重ばらつきを示すグラフ。 従来の芯金を用いて加工した供試管の管軸方向における単重変化率のばらつきを示すグラフ。 従来の芯金を用いて加工した供試管の管軸方向における断面形状のばらつきを示すグラフ。 従来の芯金を用いて加工した供試管おける渦流探傷試験結果を示すグラフ。 従来の芯金を用いて加工した内面溝付管を示す写真。 従来の芯金を用いて加工した内面溝付管おける渦流探傷試験結果を示すグラフ。
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態の内面溝付管の製造装置10は、図1に示すように構成している。
なお、図1は、本実施形態における内面溝付管の製造装置10の一部を示す断面図である。
前記製造装置10は、引抜き方向Xの上流側から下流側に沿って順に配置した縮径部21、溝加工部31、整形ダイス15を備えた構成であり、これら構成により素管1aを連続加工して内面溝付管1eを製造している。
前記縮径部21は、通過する素管1aを縮径するための円筒状の縮径ダイス22と、該縮径ダイス22で絞り込まれた素管1aの内周が押し付けられるように素管1aの内部に挿入したフローティングプラグ23とで構成している。
前記縮径ダイス22は、上流側部分が開口したダイス孔22aを有している。ダイス孔22aは、上流側へ向けて大径となるよう円錐台状に開口している。
さらに、フローティングプラグ23は、引抜き方向Xの下流側部分に下流側へ向けて小径となる円錐台状の外周面を有している。
これにより、縮径ダイス22とフローティングプラグ23とは、これらの間に素管1aを挟み込むようにして互いに係合している。
また、前記溝加工部31は、外周に複数の螺旋状溝32aが形成された溝付プラグ32と、複数の転造ボール33を備えている。
前記溝付プラグ32は、素管1bの内部に挿入され、前記フローティングプラグ23に対して連結棒34を介して相対回転自在に連結されている。前記複数の転造ボール33は、自転、及び、軸回りに公転しながら転動し、素管1bの管外側において該素管1bを前記溝付プラグ32側に押圧するようそれぞれ管周方向において等間隔に配置されている。
前記整形ダイス15は、内面溝付管1dが通過することにより、例えば、前記溝加工部31における転造ボール33の押圧により生じた管表面の歪み等を滑らかに整形する加工を行う。
また、前記縮径部21と前記溝加工部31との間の素管1bの内部には、1本の芯金60が管軸方向に沿って配置されている。
なお、管軸方向は、図1中において引抜き方向Xと一致している方向を示している。
芯金60は、溝付プラグ32、フローティングプラグ23、及び、連結棒34をその構成部品の一部として備えている。
芯金60の構成について図2、図3、及び、図4を用いて説明する。
なお、図2は、第1実施形態の芯金60の側面図、図3は、図2中のA−A線断面図であり、図4は、芯金60を部品ごとに分解した分解断面図である。
芯金60は、溝付プラグ32、フローティングプラグ23、及び、連結棒34に加え、間隔規制管61、留金62、スペーサ63で構成している。
溝付プラグ32は、円筒状部材で構成し、連結棒34の挿入を許容するよう中心軸に沿って貫通する溝付プラグ挿着貫通孔32Hを形成している(図4参照)。
フローティングプラグ23は、連結棒34の挿入を許容するよう中心軸に沿って貫通するフローティングプラグ挿着貫通孔23Hを形成している(図4参照)。
連結棒34は、縮径部21と溝加工部31との間に相当する長さを備えた細長い丸棒状に形成し、溝付プラグ挿着貫通孔32H、及び、フローティングプラグ挿着貫通孔23Hへの挿通を許容する外径で形成している。
さらに連結棒34は、管軸方向の全長に亘って接合部分を有さずに鋼材料からなる一本の剛体で形成されたピンである。連結棒34の方向の一端側(図4中の右側)には、鍔状の頭部34aを形成し、方向の他端部(図4中の左側)には、螺子部34bを形成したボルト型のピンで構成している。
さらにまた連結棒34は、頭部34aと螺子部34bとの間の外周面を、平滑な平滑外周面34Aとして形成している。平滑外周面34Aの頭部34a側の端部を、溝付プラグ32を挿着する溝付プラグ挿着部34gに設定するとともに、該平滑外周面34Aの螺子部34b側部分を、フローティングプラグ23を挿着するフローティングプラグ挿着部34fに設定している。
間隔規制管61は、縮径部21と溝加工部31との間に相当する長さを備え、連結棒34の挿着を許容するよう中心軸に沿って貫通する挿着貫通孔61Hが形成された円管状部材である(図4参照)。
留金62は、連結棒34の挿入を許容する挿入孔62Hを有し、一端が閉塞した円筒状部材であり、その内周面には、連結棒34の螺子部34bと螺合可能に雌螺子部62aが形成されている(図4参照)。なお、留金62の閉塞した一端側は、素管1aの外面に凹みがあった場合に引っ掛かり難くするために円弧状の先細り形状で形成している。
スペーサ63は、留金62とフローティングプラグ23との間に介在させる円管状部材であり、管長さに応じて構成したものを複数種類備えることができ、そのいずれかを取り付けるかによってフローティングプラグ23、溝付プラグ32、及び、間隔規制管61の連結棒34に対する挿着位置を一定に保つことができる。
上述した各部材による芯金60の組み立て方法について説明する。
連結棒34の軸方向の頭部34a側の端部から雄螺子部34b側の端部へ溝付プラグ32、間隔規制管61、フローティングプラグ23、スペーサ63の順に挿着し、留金62を、連結棒34に挿着するとともに、留金62の雌螺子部62aと連結棒34の雄螺子部34bとを螺合することで図2、及び、図3に示ように、芯金60を一体に構成することができる。
このとき溝付プラグ32は、連結棒34の頭部34aと間隔規制管61との間でこれら端部同士を当接させることで軸回りに回転自在であるとともに管軸方向に位置決めされ、フローティングプラグ23は、スペーサ63を介して留金62と間隔規制管61との間でこれら端部同士を当接させることで軸回りに回転自在であるとともに管軸方向に位置決めされる。
上述した芯金60を備えた製造装置10を用いた本実施形態における製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法は、縮径工程と溝加工工程とを備えた製造方法である。
詳しくは、縮径工程は、素管1aを縮径ダイス22で絞り込んでフローティングプラグ23に管内面を押し付けて素管1bを縮径する工程である。
溝加工工程は、溝付プラグ32、及び、複数個の転造ボール33により素管1bを縮径するとともに、複数個の転造ボール33が管周を転動しながら溝付プラグ32に管内面を押し付けて、該管内面に所定のリード角、及び、高さを有する螺旋状の複数の溝5(図1参照)を形成する工程である。
上述した製造装置10、製造方法により、以下のような様々な作用、効果を得ることができる。
上述した製造方法は、上述した芯金60を備えた前記製造装置10で内面溝付管1eを製造する方法である。詳しくは、前記フローティングプラグ挿着部34fに直接、取り付けた前記フローティングプラグ23を用いて前記縮径工程を行い、前記溝付プラグ挿着部34gに直接、取り付けた前記溝付プラグ32を用いて前記溝付加工を行う内面溝付管1eの製造方法である。
このため、芯金60は、前記フローティングプラグ23、及び、前記溝付プラグ32のそれぞれを、別の部材を介在させて連結棒34に対して取り付けた構成でないため(図3参照)、別の部材の加工誤差の影響を受けず、芯金60の軸ずれを防ぐことができる。
よって、加工中に芯金60、すなわち、フローティングプラグ23に対して溝付プラグ32が軸振れすることを防ぎ、管軸方向での断面形状寸法のばらつきが小さい内面溝付管1eを製造することができる。
詳しくは、内面溝付管の製造方法に用いられていた従来の芯金100は、図16、図17、図18に示すように、溝付プラグ32、フローティングプラグ23、連結棒101、溝付プラグ挿着用ボルト102、フローティングプラグ挿着用ボルト103、及び、2つのスペーサ104,104とで構成している。
連結棒101は、円柱状部材であり、方向の両端部の中心には管軸方向に沿って螺子孔101H,101Hを形成し、該螺子孔101H,101Hの内周面には、それぞれ雌螺子部101a,101aを形成している(図18参照)。
溝付プラグ挿着用ボルト102、及び、フローティングプラグ挿着用ボルト103は、いずれも方向の一端側に鍔状の頭部102a,103aを有し、他端側に雄螺子部102b,103bを形成した細長い円柱状の部材で形成したボルト型のピンで形成している。
なお、溝付プラグ32、フローティングプラグ23、及び、スペーサ104(63)については、本実施形態の構成と同じであるのでその説明を省略する。
このような部品で構成される従来の芯金100の組み立て方法について説明する。
まず、連結棒101の一端側に溝付プラグ32とスペーサ104とを管軸方向に並べ、溝付プラグ挿着用ボルト102に溝付プラグ32、スペーサ104を挿通し、この状態で溝付プラグ挿着用ボルト102を螺子孔101Hに差し込みながら雄螺子部102bと連結棒101の雌螺子部101aとを螺合することによりスペーサ104、溝付プラグ32、連結棒101をこの順で取り付ける。
同様に、連結棒101の他端側にフローティングプラグ23とスペーサ104とを管軸方向に並べ、フローティングプラグ挿着用ボルト103にスペーサ104、フローティングプラグ23を挿通し、この状態でフローティングプラグ挿着用ボルト103を螺子孔101Hに差し込みながら雄螺子部103bと連結棒101の雌螺子部101aとを螺合することによりスペーサ104、フローティングプラグ23、連結棒101をこの順で取り付けて芯金100を一体に組み立てることができる。
このように従来の芯金100における溝付プラグ32は、溝付プラグ挿着用ボルト102を介在させて連結棒101に対して取り付ける構成であるため(図17参照)、溝付プラグ挿着用ボルト102や雌螺子部101aの加工誤差が溝付プラグ32の連結棒101に対する取り付け精度にも影響を及ぼすことになる。
特に、溝付プラグ挿着用ボルト102の雄螺子部102bと連結棒101の雌螺子部101aとを螺子留めする構成であり、雄螺子部102bと雌螺子部101aとの加工の際に加工精度にばらつきが生じ易く、組み立てた芯金100での軸ずれが大きくなることがある。
フローティングプラグ23についても、連結棒101に対してフローティングプラグ挿着用ボルト103を介在させて取り付ける形態であるため、溝付プラグ32の場合と同様に、組み立てた芯金100での軸ずれが大きくなることがある。
このように軸ずれが大きくなる従来の芯金100を用いて溝付け加工を行った場合、加工中の芯金100の軸振れが大きくなるため、溝加工部31を通過後の内面溝付管の外面のうねりが大きくなり、また、溝5(図1参照)の深さなどの形状が安定しないと、管軸方向において断面が安定しない内面溝付管が製造されることになる。
また、軸ずれが大きくなる従来の芯金100を用いて溝付け加工を行った場合、加工速度を上げるために、転造ボール33の回転数を上げていき、転造ボール33が所定の回転数に達すると溝加工部31を通過した素管が捻られた形態となるいわゆる捻れ現象が発生する。
このように捻れ現象が発生した管の内面には溝5が適切に形成されないため、転造ボール33の回転数を捻れ現象が発生しない回転数まで下げなければならない。また、軸振れ量が大きい芯金100ほど転造ボール33の回転数が低くても捻れ現象が発生する傾向があるため、溝付け加工速度を上げることができないという課題を有していた。
また、製造された内面溝付管の断面が管軸方向において安定しなければ、製品として出荷時に非破壊探傷試験を行う場合に、ノイズが大きくなり、キズ(欠陥)の検出精度に悪影響を及ぼし、良品であっても不良品と誤検出し、製品歩留りが低くなるという課題が生じる。
さらに、内面溝付管1eを伝熱管として組み込んで熱交換器を製造する際に、伝熱管を、放熱フィンに予め形成された孔内に挿通し、拡管したとき、放熱フィンとの密着状態にばらつきが出て所望の性能が得られないという難点も生じることなる。
さらにまた、管内面の溝深さが管軸方向において安定しないと、所望の優れた伝熱性能を得ることができないという難点も生じる。
このような課題に対して、本実施形態の製造方法は、上述したように前記フローティングプラグ挿着部34fに直接、取り付けた前記フローティングプラグ23を用いて前記縮径工程を行い、前記溝付プラグ挿着部34gに直接、取り付けた前記溝付プラグ32を用いて前記溝加工工程を行う内面溝付管の製造方法であるため、芯金60に軸ずれが生じないため、加工中に芯金60が軸振れすることを防ぐことができる。
従って、管軸方向での例えば、管外面や溝形状などの管軸方向に対する直交断面形状寸法の管軸方向におけるばらつきが小さい内面溝付管1eを製造することができる。
さらに、前記連結棒34は、その管軸方向において前記フローティングプラグ挿着部34fと前記溝付プラグ挿着部34gとを含めた全長に亘って1つの鋼材料からなる剛体で形成しているため、前記連結棒34における前記フローティングプラグ挿着部34fと前記溝付プラグ挿着部34gとの方向の間には、例えば、ネジ留めなどによる連結部分が存在しないことになる。
従って、軸ずれが生じることがなく、加工中に、連結棒34が軸回りに回転するに伴って溝付プラグ32が軸振れする軸振れ量をより大幅に低減できる。
さらにまた、上述したように芯金60は、図2及び図3に示すように、間隔規制管61を、連結棒34における前記フローティングプラグ23と前記溝付プラグ32との間に挿着した構成であるため、連結棒34の軸方向において、スライド自在な前記フローティングプラグ23と前記溝付プラグ32とが所定の間隔を隔てて保たれるよう規制(位置決め)することができる。
しかも、前記フローティングプラグ23と前記溝付プラグ32との間に間隔規制管61を備えることにより、連結棒34を長尺状に形成した場合や小径に形成した場合などにより、該連結棒34が撓み易くなっても、加工中に連結棒34が撓むことを防止する補強部材としても機能し、軸振れ量を最小限に留めることができる。
上述した芯金60を用いた製造装置10により内面溝付管1eを製造することにより、管軸方向における管長さが1mの所定区間において、管長さが10mm刻みごとに測定した管重量を1mあたりに換算したそれぞれの管重量のばらつきが±1%以下であるという管軸方向において断面が安定した内面溝付管1eを製造することができる。
これにより、管軸方向における管外面形状を安定化させることができるため、内面溝付管1eを製品として出荷時に非破壊探傷試験を行う場合に、検出信号のノイズの発生を抑制できる。
従って、キズ(欠陥)を確実に検出することができ、製品歩留りの向上を図ることができる。
さらに、内面溝付管1eを伝熱管として組み込んで熱交換器を製造する際に、伝熱管を、放熱フィンに予め形成された孔内に挿通し、拡管したとき、放熱フィンとの十分な密着状態を得ることができ、所望の性能を得ることができる。
さらに、管内面における溝5の深さなどの形状が管軸方向において安定するため、所望の優れた伝熱性能を得ることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態の製造装置20は、図5に示すように、管軸方向の縮径部21と溝加工部31との間に前記中間引抜き機17を備えた構成であり、中間引抜き機17は、素管1aを引抜き方向Xへ引き抜くことで下流側に備えた引抜き装置(図示せず)による引抜きを補助している。すなわち、前記溝加工部31による溝加工は、素管1aを引抜く際の抵抗となり、この溝加工の際の引抜きの負荷が大きくなるが、中間引抜き機17により素管1aにかかる前記引抜き負荷を分散させることができる。
前記中間引抜き機17は、素管1aの管軸方向に対する直交断面に対して上下各側、或いは、左右各側に配置された一対のベルト42a,42bを備えている。各ベルト42a,42bは、ループ状(無端状)に形成され、モータの回転駆動により回転可能にプーリー43に張架されている。ベルト42a,42bは、外周面に、その方向に沿って複数のパッド44を連設したキャタピラ式に構成している。
なお、前記中間引抜き機17の上流側には、素管1bの外表面に付着した油膜や異物を除去するためのワイパー51を設け、下流側には、中間整形ダイス52を設けている。
管軸方向の縮径部21と溝加工部31とは、この間に中間引抜き機17を配置する分、間隔を広げてそれぞれ配置されることになる。
連結棒34Lは、縮径部21と溝加工部31との間隔が広がった分、その長さを、第1実施形態の連結棒34の長さと比較して長く形成している。
第2実施形態の製造装置20は、中間引抜き機17を備えることで連結棒34Lが長くなっても加工中に芯金60の軸振れが生じないため、安定した引抜きが可能となり管内面に形成される溝5の深さなどの形状のばらつきを大幅に抑制することができる。
従来の製造方法の場合、中間引抜き機17を備えることで、管軸方向の縮径部21と溝加工部31との間隔が広がり、連結棒が長くなった芯金100を用いて加工が行われるため、加工時に芯金100の軸振れの影響が顕著にあらわれることになる。さらに、芯金100の軸振れが大きいと引抜き力が変動し、溝付け加工中に中間引抜き機17が引抜き力を積極的に制御しようとしてかえって荷重のばらつきが大きくなり、それに伴って管内面に形成される溝深さのばらつきも、より顕著になるという悪循環に陥るという課題があった。
これに対して、第2実施形態の製造装置20は、中間引抜き機17を備えることで連結棒34が長くなっても加工中に軸振れが生じないため、引抜き力が変動せず、中間引抜き機17による引抜き力も安定し、管内面に形成される溝深さのばらつきを大幅に抑制することができる。
以下において芯金60の効果を確認するために実施した効果確認実験について説明する。
(実験1)
実験1では、第1実施形態の芯金60と従来の芯金100とのそれぞれの軸振れ量を測定し、比較検証した。
さらに、実験1では、図2、図3に示すように、第1,2実施形態で説明した芯金60を、溝付プラグ32を除いた状態で組み立てた本発明品No.1から5までの芯金を用いて行った。
詳しくは、図6(a)に示すように、本発明品No.1から5までの芯金60を順にVブロックに乗せ、軸方向の一端側の溝付プラグ挿着部34gの表面にダイヤルゲージの測定子をあてた状態で芯金60の軸方向の他端側を軸回りに回転させて溝付プラグ挿着部34gにおける芯金60の軸振れ量を順に測定した。
同様に、図16、図17に示すような従来の芯金100を、溝付プラグ32を除いた状態で組み立てた従来品No.1から5までの芯金を用いて行った。
詳しくは、図6(b)に示すように、従来品No.1から5までの芯金100を順にVブロックに乗せ、軸方向の一端側の溝付プラグ挿着用ボルト102の表面にダイヤルゲージの測定子をあてた状態で芯金100の軸方向の他端側を軸回りに回転させて溝付プラグ挿着用ボルト102における芯金100の軸振れ量を順に測定した。
以下の表1中における[実験1]に測定結果を示す。
この表1に示すように、従来品No.1から5の芯金100の軸振れ量は、いずれも0.100mm以上と大きく、ロット毎のばらつきも大きかった。
これに対して本発明品No.1から5の芯金60は、いずれも軸振れ量が0.010mm以下と小さくなっており、ロット毎のばらつきも小さくなることが実証できた。
(実験2)
実験2では、実験1で使用した本発明品No.1から5までの芯金60、及び、従来品No.1から5までの芯金100のそれぞれに溝付プラグ32を取り付け、これら芯金60,100を用いて実際に縮径加工、及び、溝付け加工を行い、その過程で発生した素管の捻れ現象の発生状況を検証した。
ここで実験2での縮径加工、及び、溝付け加工での加工条件は、表2に示すとおりである。
詳しくは、実験2では、溝加工部31での転造ボール33を低い回転数から溝付け加工を開始し、加工速度を上げるために溝加工部31での転造ボール33の回転数を上げていき、その過程で発生した素管の捻れ現象の発生状況を検証した。
さらに、実験2で使用した溝加工部31の転造ボール33の性能上の限界となる最大回転数は30,000rpmのため、溝加工部31での転造ボール33が、捻れ現象が発生せずに溝付け加工を行うことができる目標とする最大回転数を30,000rpmに設定した。
その結果、前記表1中における[実験2]に示す測定結果となった。
従来品No.1から5は、いずれも転造ボール33の回転数が30,000rpmに達する前に捻れ現象が発生した。
詳しくは、表1中に示した回転数に達したときに捻れ現象が発生した。この結果からも明らかなとおり、従来品No.1から5の芯金100の中でも、実験1で軸振れ量が大きい結果であったものほど、捻れ現象が発生する回転数が低くなっており、最も転造ボール33の回転数が上がったものでも25,000rpmであった。
これに対して本発明品No.1から5の芯金60では、いずれも転造ボール33の回転数を30,000rpmまで上げても捻れ現象が発生していなかった。
なお、一般に、内面溝付管1eの加工時の溝付加工速度(引抜き速度)をV(m/min)、転造ボール33の公転回転数をR(rpm)、転造ボール33の加工ピッチをP(mm)、転造ボール33の配置数をN(個)とした場合、溝付加工速度V(m/min)は、
V=(R×P×N)/1000…式(1)
であらわすことができる。
ここで加工ピッチP(mm)とは、図7に示すように素管1bの外周を、該外周に配置した転造ボール33の個数で等分配した角度分だけ転造ボール33が素管1b回りを公転する間に素管1bが引抜き方向Xへ進む距離を示す。
なお、図7は、溝加工部31付近を一部省略して模式的に示した加工ピッチPを説明する説明図である。また、図7中の仮想線で示したLは、それぞれ素管1b外周に配置された複数の転造ボール33のそれぞれが素管1bの外面を押圧した軌跡を示す。
この式(1)より、溝付加工速度を上げるためには、転造ボール33の回転数を上げる必要があることがわかる。よって、捻れ現象が発生しないで転造ボール33の回転数を上げることができれば、その分、溝付け加工速度を速くすることができる。
従って、転造ボール33の回転数を上げることができる本発明品No.1から5の芯金60を用いて内面溝付管1eを製造すれば、内面溝付管1eの生産性を大幅に向上することができることを実証することができた。
(実験3)
実験3では、本発明品No.1から5の芯金60、及び、従来品No.1から5の芯金100を用いて溝付け加工を行い、実験2で作製した供試管(内面溝付管)のそれぞれについて単重、及び、単重変化率のばらつきの検証を行った。
単重、及び、単重変化率の算出手順について説明する。まず、図8に示すように、供試管から測定サンプルとして1m(1000mm)分それぞれ取り出し、該測定サンプルを10mm刻みで切断し、切断したサンプル片ごとの正確な長さ(mm)と重量(g)を測定する。
そして、サンプル片ごとの重量を1mあたりの重量に換算することで単重(g/m)を算出することができる。
さらに、単重変化率は、算出した単重を基に、以下の(2)式を用いて算出することができる。
ΔW=(Wn−Wa)/Wa×100…式(2)
但し、ΔW:単重変化率(%)、Wn:サンプル片ごとの単重(g/m)、Wa:サンプルの測定箇所が100箇所分のサンプル片の平均単重(g/m)であらわすことができる。
本発明品No.1から5の芯金60、及び、従来品No.1から5の芯金100のそれぞれを用いて作製した供試管の単重変化率の測定結果を表1中における[実験3]に示す。
単重変化率が±1.0%以内に収まっているかを目安にして確認したところ、実験結果のとおり、従来品No.1から5の芯金100を用いて作製した供試管の単重変化率は、いずれも±1.7%以上となり±1.0%より大きくなり、ばらつきの度合いが大きかった。
これに対して、本発明品No.1から5の芯金60を用いた作製した供試管の単重変化率は、いずれも±0.5%以下であり、±1.0%以内に十分収まっていた。
具体的には、従来品No.3の芯金100を用いた場合の実験結果として単重の測定結果を図19に示すとともに、単重変化率の測定結果を図20に示す。
図19及び、図20に示すように、従来品No.3の芯金100を用いた場合単重、及び、単重変化率のいずれの場合もばらつきの度合いが大きかった。例えば、図20に示すように、従来品No.3の芯金100を用いて作製した供試管は、単重変化率が±1.0%以内に収まっているかを目安にして確認したが、±1.0%以内に収まらなかった。
これに対して、発明品No.4の芯金60を用いた場合の実験結果として単重の測定結果を図9に示すとともに、単重変化率の測定結果を図10に示す。
図9、図10に示すように、発明品No.4の芯金60を用いた場合、従来品No.3の芯金100を用いた場合と比較して単重、及び、単重変化率のいずれにおいてもばらつきを大幅に低減できた。例えば、図10に示すように、発明品No.4の芯金60を用いて作製した供試管は、単重変化率を、±0.5%以内に収めることができ、従来品No.3の芯金100を用いた場合と比較して大幅にばらつきを低減できた。
さらに実験3では、上述した単重変化率のばらつきの検証とともに、本発明品No.4の芯金60、及び、従来品No.3の芯金100を用いて実験2で溝付け加工を行い作製した供試管のそれぞれについて断面形状の厚み寸法の検証も行った。
断面形状の厚み寸法の検証でも、単重、及び、単重変化率の検証と同様に図8に示すように、供試管から測定サンプルを1000mm分それぞれ取り出し、該測定サンプルを10mm刻みで切断した。さらに、断面形状の厚み寸法の検証では、切断したサンプル片ごとの断面形状として、図11に示すように管直交断面の総肉厚(T)、底肉厚(t)、溝深さ(H)の寸法を測定しグラフ化して検証を行った。
従来品No.3の芯金100を用いた場合の管直交断面の総肉厚(T)、底肉厚(t)、溝深さ(H)の測定結果を図21に示し、発明品No.4の芯金60を用いた場合の管直交断面の総肉厚(T)、底肉厚(t)、溝深さ(H)の測定結果を図12に示す。
図12、図21に示すとおり、上述した単重、及び、単重変化率での実験結果の場合と同様に本発明品No.4の芯金60は、従来品No.3の芯金100を用いた場合と比較して、管軸方向における断面形状のばらつきの度合いを大幅に低減することが実証できた。
また、上述した単重、単重変化率、及び、断面形状についての測定結果から単重と断面形状寸法は密接に関係していることが明らかとなり、単重変化率(単重)のばらつきで供試管の良否を判断しても実験精度上問題がないことがわかった。さらに、断面形状寸法の測定には時間がかかるので単重変化率をもとに供試管の良否を判断することが好ましいといえる。
(実験4)
実験4では、実験1から3で用いた本発明品No.1から5とは異なる本発明品No.6から11の芯金60を用いて溝付け加工を行い、それぞれ供試管を作製するとともに、従来品No.1から5とは異なる従来品No.6から8の芯金100を用いて溝付け加工を行い、それぞれ供試管を作製し、渦流探傷試験での管外面のキズ検出精度について検証した。
なお、渦流探傷試験は、最初に試験材の外表面にドリルなどで人工的に穴を開けた人工欠陥に対して渦流探傷装置に備えた検出コイルで検出した信号値を基準となる信号値として設定し、その後に試験材における検出コイルを通過させた箇所から検出される信号値が基準の信号値より高い場合に、その箇所に使用上問題となるような大きなキズが有るものと判断する公知の探傷試験である。
また、実験4で検証する渦流探傷試験でのキズ探査性能は、該キズ探査性能に密接に関係するといわれている渦流探傷試験で検出される信号のS/N比(S:人工欠陥の基準信号値、N:試験材のベースの信号値。)の比較により行った。
なお、試験材のベースの信号値(N)は、試験材においてキズの無い箇所でノイズとして検出される信号値を示す。
同時に、キズ探査性能には、後述するとおり、前記S/N比の他にも単重の変化率も密接に関連し、単重変化率(単重)のばらつきを小さくすることで、前記S/N比を高くすることができ、結果的に渦流探傷試験での管外面の探傷精度を向上させることができる。
よって、本実験4では、本発明品No.6から11の芯金60、及び、従来品No.6から8の芯金100を用いてそれぞれ作製した供試管について単重変化率と渦流探傷試験での検出信号のS/N比を測定し、検証した。その結果は、表3に示すとおりである。
表3に示すとおり、従来品No.6から8の芯金100を用いた場合の単重変
化率は、いずれも±1.0より大きく、前記S/N比は、2.0より小さかった。
これに対して本発明品No.6から11の芯金60を用いた場合の単重変化率は、いずれも±1.0以下であり、前記S/N比は、2.0以上となった。
また、一般に内面溝付管の外面のキズの数を渦流探傷試験で検査した場合、前記S/N比が2.0以上のときにキズを確実に検出できることが経験的に明らかになっている。
以上より本発明品No.6から11の芯金60を用いた場合、キズを確実に検出できることが明らかとなった。
併せて、キズ(欠陥)を確実に検出するためには、単重変化率を±1%以内に抑える必要があることも判った。
なお、内面に形成する溝の形状、加工するサイズが違っても同様の結果であった。
以下では、上述した渦流探傷試験でのキズ探査性能、単重変化率(単重)、及び、前記S/N比の関係について本発明品No.9の芯金60を用いて作製した供試管、及び、従来品No.6の芯金100を用いて作製した供試管に着目して説明する。同時に、本発明品No.9の芯金60を用いて作製した供試管、及び、従来品No.6の芯金100を用いて作製した供試管について行った渦流探傷試験でのキズ探査性能についてのより詳細な測定結果について説明する。
従来品No.6の芯金100を用いて作製した供試管の渦流探傷試験結果は、図22に示すグラフのとおりであり、本発明品No.9の芯金60を用いて作製した供試管の渦流探傷試験結果は、図13に示すとおりであった。
図22、図13中に示すように、本発明品No.9の芯金60での供試管は、S/N比が2.50であり、従来品No.6の芯金100での供試管のS/N比(1.30)よりも高いことから、従来品No.6の芯金100での供試管よりも渦流探傷試験でキズを確実に探査することができることが明らかとなった。
さらにまた、図22、図13中に示すように、本発明品No.9の芯金60での供試管は、従来品No.6の芯金100での供試管と同様に、人工欠陥の基準信号値(S値)がいずれも1.50Vであった。さらに、本発明品No.9の芯金60での供試管は、ベースの信号値(N値)が0.60Vであり、従来品No.6の芯金100での供試管のベースの信号値(1.15V)よりも低かった。
このことから前記S/N比を高くするためには、ベースの信号値を低く抑えることが有効であることがわかる。
さらに、ベース信号値を低く抑えるためには、断面形状寸法の長手方向のばらつきを小さくする、すなわち単重変化率を小さくする必要がある。
詳しくは、従来品No.6の芯金100を用いて製造した内面溝付管1eのように、渦流探傷試験時のベースの信号値が特に高かった材料を調べたところ、管外面に形成される凹凸のピッチは均一であったが、溝付け加工直後の管(最終外径に縮径する前の管)で、目視でもはっきりと確認できるうねり(図23参照)が発生していた。
さらに、このように渦流探傷試験時のベースの信号値が特に高かった材料について単重を検証したところ、上述した実験3の結果のとおり、単重のばらつきが大きく(図19参照)、管軸方向の断面形状(総肉厚)のばらつきも大きかった(図21参照)。
これに対して本発明品No.9の芯金60を用いて製造した内面溝付管1eのように、渦流探傷試験時のベースの信号値が低い材料については、うねりは確認できなかった(図11参照)。さらに、渦流探傷試験時のベースの信号値が低い材料について単重を検証したところ、上述した実験3の結果のとおり、単重のばらつきが小さく(図9参照)、管軸方向の断面形状(総肉厚)のばらつきも小さかった(図12参照)。
このことから、断面形状寸法の変化が渦流探傷試験時のベースの信号値が高くなった主たる要因であることが明らであり、ベース信号値を低く抑えるためには、単重変化率を小さくすることが有効であるといえる。
以上より、単重変化率(単重)のばらつきを小さくすることでベース信号値を低く抑えることができ、結果的に、前記S/N比を高くすることができるため、渦流探傷試験での管外面の探傷精度を向上させることができる。
また、上述した実験4で述べたとおり、本発明品No.6から11の芯金60を用いた場合、キズを確実に検出できることが明らかとなったが、このように、キズを正確に検出することで、良品か不良品かの誤検出を防止し、製造歩留りの向上することができる。
詳しくは、通常、内面溝付管1eは、コイル状或いは直線状の形態でユーザーに納入され、納入前に、内面溝付管1eの全長に亘って管外面のキズの有無について非破壊検査として渦流探傷試験を実施する工程が行われる。
例えば、内面溝付管1eがコイル状の形態の場合、コイル部分全長でのキズ(欠陥)の数の上限が決めらており、その上限数を超えた場合は製品として出荷できずに不良品として扱われる。
欠陥が多く出たコイル部分を所定の巻き数分取出し、その中からキズ有りと判断された箇所を中心に再度、渦流探傷試験を行ったところ、図24に示すように、コイル部分のベースの信号値が、高い値を示す場合、キズありと判断された箇所で検出した信号値と、ベースの信号値との間で値に差異を見出し難いため、キズありと判断されるものが多くなっていた。すなわち、実際には問題となるような大きながキズが無いのにキズありと誤って判断されている場合が多かった。
これに対して図15に示すように、コイル部分のベースの信号値(試験材のキズがない箇所が示す信号値)が全般的に低い値を示す場合、このようなコイル部分は、キズありと判断された箇所で検出される信号値がベースの信号値に対して顕著な値となるため、確実に大きなキズを発見できる。
本発明の芯金60を使用して製造した供試管は、渦流探傷試験でのベースの信号値が低く抑えることができ、すなわち、前記S/N比の値を高くすることができるため、キズを正確に検出でき、製造歩留りの向上することができる。
この発明の構成と、上述した実施形態との対応において、
溝付プラグ、フローティングプラグ及び連結棒、又は、溝付プラグ、フローティングプラグ、連結棒及び間隔規制管は、芯金100に対応し、
フローティングプラグ挿着部は、フローティングプラグ挿着貫通孔23Hに対応し、
溝付プラグ挿着部は、溝付プラグ挿着貫通孔32Hに対応し、
転動体は、転造ボール33に対応するものとする。
10…製造装置
17…中間引抜き機
21…縮径部
22…縮径ダイス
23…フローティングプラグ
23H…フローティングプラグ挿着貫通孔
31…溝加工部
32…溝付プラグ
32H…溝付プラグ挿着貫通孔
33…転造ボール
34,34L…連結棒
34g…溝付プラグ挿着部
34f…フローティングプラグ挿着部
61…間隔規制管
1a〜1c…素管
1e…内面溝付管

Claims (4)

  1. 縮径ダイスとフローティングプラグとの間で素管を引き抜いて縮径する縮径工程と、素管の外面を管軸回りに転動する転動体で押圧しながら該素管の内面を、管内部に備えた溝付プラグに押し付けて素管の内面に複数の溝を形成する溝付加工工程とを行う内面溝付管の製造方法であって、
    前記フローティングプラグと前記溝付プラグとを連結する連結棒を管内部に備え、
    前記連結棒の軸方向における前記縮径ダイスの側に、前記フローティングプラグの挿着を許容するフローティングプラグ挿着許容部を形成するとともに、前記連結棒の軸方向における前記転動体の側に、前記溝付プラグの挿着を許容する溝付プラグ挿着許容部を形成し、
    前記連結棒は、軸方向の一端側から他端側との間の外周面を平滑な平滑外周面で形成するとともに、管軸方向に沿って同一径に形成し、
    前記連結棒における、前記フローティングプラグと前記溝付プラグとの管軸方向の間に挿着され、該フローティングプラグと該溝付プラグとを管軸方向において所定間隔に規制する間隔規制管と、
    前記連結棒に挿着する留金と、
    前記留金と前記フローティングプラグとの間に介在させるとともに、管長さに応じて形成した管状のスペーサとを備え、
    前記連結棒の軸方向の前記一端側から前記他端側へ前記溝付プラグ、前記間隔規制管、前記フローティングプラグ、前記スペーサをこの順に挿着し、前記留金を、前記連結棒の前記他端側に挿着することで一体に構成し、
    前記フローティングプラグ挿着許容部挿着した前記フローティングプラグを用いて前記縮径工程を行い、
    前記溝付プラグ挿着許容部挿着した前記溝付プラグを用いて前記溝付加工工程を行う
    内面溝付管の製造方法。
  2. 前記連結棒を、軸方向の前記一端側に鍔状の頭部を形成するとともに、軸方向の前記他端部に螺子部を形成したボルト型のピンで構成し、
    前記留金を、
    前記連結棒の挿入を許容する挿入孔を有した筒状に形成するとともに、一端が閉塞した円弧状の先細り形状で形成した
    請求項1に記載の内面溝付管の製造方法。
  3. 縮径ダイスとフローティングプラグとの間で素管を引き抜いて管を縮径する縮径部と、前記素管の外面を管周方向に沿って転動する転動体で押圧しながら該素管の内面を、管内部に備えた溝付プラグに押し付けて複数の溝を形成する溝加工部とを備えた内面溝付管の製造装置であって、
    前記縮径部と前記溝加工部との間に配され、前記フローティングプラグと前記溝付プラグとを連結する連結棒を管内部に備え、
    前記連結棒の軸方向における前記縮径ダイスの側に、前記フローティングプラグの挿着を許容するフローティングプラグ挿着許容部を形成するとともに、前記連結棒の軸方向における前記転動体の側に、前記溝付プラグの挿着を許容する溝付プラグ挿着許容部を形成し、
    前記連結棒は、軸方向の一端側から他端側との間の外周面を平滑な平滑外周面で形成するとともに、管軸方向に沿って同一径で形成し、
    前記連結棒における、前記フローティングプラグと前記溝付プラグとの管軸方向の間に挿着され、該フローティングプラグと該溝付プラグとを管軸方向において所定間隔に規制する間隔規制管と、
    前記連結棒に挿着する留金と、
    前記留金と前記フローティングプラグとの間に介在させるとともに、管長さに応じて形成した管状のスペーサとを備え、
    前記連結棒の軸方向の前記一端側から前記他端側へ前記溝付プラグ、前記間隔規制管、前記フローティングプラグ、前記スペーサをこの順に挿着し、前記留金を、前記連結棒の他端側に挿着することで一体に構成した
    内面溝付管の製造装置。
  4. 前記連結棒を、軸方向の一端側に鍔状の頭部を形成するとともに、軸方向の他端部に螺子部を形成したボルト型のピンで構成し、
    前記留金を、
    前記連結棒の挿入を許容する挿入孔を有した筒状に形成するとともに、一端が閉塞した円弧状の先細り形状で形成した
    請求項3に記載の内面溝付管の製造装置。
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