JP5534553B2 - 色素増感型太陽電池用ガラス組成物および色素増感型太陽電池用材料 - Google Patents

色素増感型太陽電池用ガラス組成物および色素増感型太陽電池用材料 Download PDF

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Description

本発明は、色素増感型太陽電池用ガラス組成物および色素増感型太陽電池用材料に関し、具体的には色素増感型太陽電池の透明電極基板と対極基板の封着、セル間を仕切るための隔壁の形成および集電電極の被覆に好適な色素増感型太陽電池用ガラス組成物および色素増感型太陽電池用材料に関する。
グレッチェルらが開発した色素増感型太陽電池は、シリコン半導体を使用した太陽電池と比べ、低コストであり、且つ製造に必要な原料が豊富にあるため、次世代の太陽電池として期待されている。
色素増感型太陽電池は、透明導電膜が形成された透明電極基板と、透明電極基板に形成された多孔質酸化物半導体層(主にTiO層)からなる多孔質酸化物半導体電極と、その多孔質酸化物半導体電極に吸着されたRu色素等の色素と、ヨウ素を含むヨウ素電解液と、触媒膜と透明導電膜が形成された対極基板等で構成される。
透明電極基板と対極基板には、ガラス基板やプラスチック基板等が使用される。透明電極基板にプラスチック基板を使用すると、透明電極膜の抵抗値が大きくなり、色素増感型太陽電池の光電変換効率が低下する。一方、透明電極基板にガラス基板を使用すると、透明電極膜の抵抗値が上昇し難く、色素増感型太陽電池の光電変換効率を維持することができる。このような事情から、近年では、透明電極基板として、ガラス基板が使用されている。
色素増感型太陽電池は、透明電極基板と対極基板の間にヨウ素電解液が充填される。色素増感型太陽電池からヨウ素電解液の漏れを防止するために、透明電極基板と対極基板の外周縁を封止する必要がある。また、発生した電子を効率よく取り出すために、集電電極(例えば、Ag等が用いられる)を透明電極基板上に形成することがある。このとき、集電電極を被覆し、ヨウ素電解液により、集電電極が侵食される事態を防止する必要がある。さらに、一枚のガラス基板上に電池回路を形成する場合、透明電極基板と対極基板の間に隔壁を形成することがある。
特開平1−220380号公報 特開2002−75472号公報 特開2004−292247号公報
色素増感型太陽電池は、長期耐久性の向上が実用化への課題である。長期耐久性を損なう原因の一つは、太陽電池部材(集電電極、封止材料等)とヨウ素電解液が反応し、太陽電池部材やヨウ素電解液が劣化することが挙げられる。特に、封止材料に樹脂を用い、ヨウ素電解液にアセトニトリル等の有機溶媒を用いたときに、その傾向が顕著である。この場合、樹脂がヨウ素電解液により侵食されるため、太陽電池からヨウ素電解液が漏洩し、電池特性が著しく低下する。同様にして、隔壁の形成や集電電極の被覆に樹脂を使用した場合も、樹脂がヨウ素電解液により侵食されるため、隔壁の破れや集電電極の劣化等が生じる。
このような事情に鑑み、封止材料に樹脂を使用しない方法が提案されている。例えば、特許文献1には、透明電極基板と対極基板の外周縁をガラスで封着することが記載されている。また、特許文献2、3には、透明電極基板と対極基板の外周縁を鉛ガラスで封着することが記載されている。
しかし、鉛ガラスは、ヨウ素電解液に侵食されやすいため、封着材料に鉛ガラスを使用した場合でも、長期間の使用により、鉛ガラスの成分がヨウ素電解液中に溶出し、その結果、ヨウ素電解液が劣化し、電池特性が低下してしまう。また、隔壁の形成や集電電極の被覆に鉛ガラスを用いた場合でも、長期間の使用により、隔壁の破れや集電電極の劣化が生じる。これらの現象も、鉛ガラスがヨウ素電解液により侵食されることが原因である。
また、封着材料の軟化点が、ガラス基板の歪点より高いと、封着工程で、ガラス基板が変形しやすくなる。よって、封着材料(封着材料に使用されるガラス)には、低融点特性、例えば軟化点575℃以下、好ましくは550℃以下が要求される。
そこで、本発明は、ヨウ素電解液に侵食され難く、低融点特性を有するガラス組成物およびこれを用いた材料を創案することにより、長期信頼性の高い色素増感型太陽電池を得ることを技術的課題とする。
本発明者等は、種々の検討を行った結果、ビスマス系ガラス(Bi−B系ガラス)のガラス組成中にSiO+Al+ZrO(SiO、Al、ZrOの合量)を必須成分として2.6質量%以上添加することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、ガラス組成として、質量%で、 Bi 65〜85%、B 5〜15%、ZnO 0〜15%、SiO+Al+ZrO 2.6〜20%含有すると共に、ZrO を0.1質量%以上含有することを特徴とする。なお、ビスマス系ガラスのガラス組成中にSiO+Al+ZrOを2.6%以上添加すると、ガラスがヨウ素電解液に侵食され難くなるメカニズムは、現時点で不明であり、現在、鋭意調査中である。
Biの含有量を65〜85%に規制すれば、ガラスの熱的安定性が低下する事態を防止しつつ、ガラスを低融点化することができる。また、Bの含有量を5〜15%に規制すれば、ガラスの低融点特性を維持しつつ、ガラスの熱的安定性を高めることができる。さらに、ZnOの含有量を0〜15%に規制すれば、ガラスの熱的安定性を高めることができる。
SiO+Al+ZrOの含有量を2.6%以上に規制すれば、ガラスがヨウ素電解液に侵食され難くなる。また、SiO+Al+ZrOの含有量を20%以下に規制すれば、ガラスの低融点特性を維持することができる。
発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、熱膨張係数が91×10−7/℃未満であることが好ましい。このようにすれば、色素増感型太陽電池用ガラス組成物の熱膨張係数をガラス基板の熱膨張係数に整合させやすくなる。ここで、「熱膨張係数」とは、押棒式熱膨張係数測定(TMA)装置により、30〜300℃の温度範囲で測定した値を指す。
発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、ガラス組成として、ZrOを0.1質量%以上含有するこのようにすれば、ヨウ素電解液によるガラスの侵食を顕著に抑制することができる。
発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、ガラス組成として、Alを0.1質量%以上含有することが好ましい。このようにすれば、ヨウ素電解液によるガラスの侵食を顕著に抑制することができる。
発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、実質的にZnOを含有しないことが好ましい。このようにすれば、ヨウ素電解液によるガラスの侵食を顕著に抑制することができき、結果として、色素増感型太陽電池の特性を維持しやすくなる。ここで、「実質的にZnOを含有しない」とは、ガラス組成中のZnOの含有量が1000ppm以下の場合を指す。
発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、25℃のヨウ素電解液に2週間浸漬したときの質量減が、0.1mg/cm以下であることが好ましい。ここで、質量減の算出に用いるヨウ素電解液には、アセトニトリル中に、ヨウ化リチウム0.1M、ヨウ素0.05M、tert−ブチルピリジン0.5M、および1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド0.6Mを溶解させたものを使用する。また、「質量減」は、上記ガラス組成物からなるガラス粉末を緻密に焼き付けたガラス基板(焼成膜付きガラス基板)を、密閉容器中にてヨウ素電解液に浸漬し、浸漬前の質量から2週間経過後の質量を減じた値を、ヨウ素電解液に接する焼成膜の面積で除することで算出する。なお、ガラス基板は、ヨウ素電解液によって侵食されないものを用いる。
一般的に、ヨウ素電解液は、ヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物、イミダゾリウムヨウ化物、四級アンモニウム塩等のヨウ素化合物を有機溶媒に溶解させたものを指すが、ヨウ素化合物以外にもtert−ブチルピリジン、1メトキシベンゾイミダゾール等を溶解させたものもある。溶媒として、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のカーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒等が用いられる。これら化合物や溶媒で構成されるヨウ素電解液であっても、ガラスがヨウ素電解液に侵食される上記問題は生じ得る。したがって、本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、これらのヨウ素電解液に25℃で2週間浸漬したときの質量減も、0.1mg/cm以下であることが好ましい。
発明の色素増感型太陽電池用材料は、上記の色素増感型太陽電池用ガラス組成物からなるガラス粉末 50〜100体積%、耐火性フィラー粉末 0〜50体積%含有することを特徴とする。ここで、本発明の色素増感型太陽電池用材料は、上記のガラス組成物からなるガラス粉末のみで構成される態様を含む。なお、本発明の色素増感型太陽電池用材料において、耐火性フィラー粉末の含有量は、流動性の観点から10体積%以下、5体積%以下、特に1体積%以下が好ましく、実質的に耐火性フィラー粉末を含有しないこと(具体的には耐火性フィラー粉末の含有量が0.5体積%以下)がより好ましい。特に、封着に用いる場合、耐火性フィラー粉末の含有量を低減すると、透明電極基板と対極基板のギャップを狭小化しやすくなり、また均一化しやすくなる。
発明の色素増感型太陽電池用材料は、軟化点が575℃以下であることが好ましい。ここで、「軟化点」とは、マクロ型示差熱分析(DTA)装置で測定した値を指し、DTAは室温から測定を開始し、昇温速度は10℃/分とする。なお、マクロ型DTA装置で測定した軟化点は、図1に示す第四屈曲点の温度(Ts)を指す。
発明の色素増感型太陽電池用材料は、封着に用いることが好ましい。ここで、封着には、透明電極基板と対極基板の封着に加えて、ガラス管の封着等が含まれる。なお、透明電極基板と対極基板等に複数の開口部を設けて、各開口部にガラス管を封着した後、ガラス管を介して、色素増感型太陽電池内に色素を含有させた液体等を循環させて、多孔質酸化物半導体に色素を吸着させる場合がある。このような場合、本発明の色素増感型太陽電池用材料でガラス管を封着すると、液体等の漏れ等が発生し難くなる。
発明の色素増感型太陽電池用材料は、集電電極の被覆に用いることが好ましい
本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、ビスマス系ガラスのガラス組成中にSiO+Al+ZrOを必須成分として2.6質量%以上添加することにより、ヨウ素電解液によるガラスの侵食が顕著に生じ難くなる。また、本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、25℃のヨウ素電解液に2週間浸漬したときの質量減を0.1mg/cm以下にすることができる。その結果、封着部位、隔壁および被覆部位がヨウ素電解液に侵食され難くなり、長期間に亘り、ヨウ素電解液や電池特性の劣化を防止することができる。
マクロ型DTA装置で測定した時の色素増感型太陽電池用材料(ガラス粉末)の軟化点を示す模式図である。
本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物において、ガラス組成範囲を上記のように限定した理由を以下に述べる。なお、以下の%表示は、特に断りがある場合を除き、質量%を指す。
Biは、ガラスの軟化点を下げるための主要成分であり、その含有量は65〜85%、好ましくは70〜83%、より好ましくは72〜82.7%、更に好ましくは76.2〜81%である。Biの含有量が少ないと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、低温で封着し難くなる。一方、Biの含有量が多いと、ガラスが熱的に不安定になり、溶融時または焼成時にガラスが失透しやすくなる。
は、ビスマス系ガラスのガラスネットワークを形成する成分であり、その含有量は5〜15%、好ましくは7〜13%、より好ましくは9〜11%である。Bの含有量が少ないと、ガラスが熱的に不安定になり、溶融時または焼成時にガラスが失透しやすくなる。一方、Bの含有量が多いと、ガラスの粘性が高くなり過ぎ、低温で封着することが困難になる。
ZnOは、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制する成分であるが、ヨウ素電解液によるガラスの侵食を助長する成分でもあり、その含有量は0〜15%である。耐失透性の向上を目的とする場合、ZnOの好ましい含有量は1〜10%、特に2〜5%である。しかし、ZnOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスを欠き、逆にガラスの熱的安定性が損なわれて、ガラスが失透しやすくなる。一方、ヨウ素電解液によるガラスの侵食を可及的に防止することを目的とする場合、ZnOの含有量は0〜3%、特に0〜1%未満が好ましく、理想的には実質的にZnOを含有しないことが望ましい。
SiO+Al+ZrOは、ヨウ素電解液によるガラスの侵食を生じ難くする成分であり、その含有量は2.6〜20%、好ましくは3〜18%、より好ましくは5〜18%、更に好ましくは7〜13%である。SiO+Al+ZrOの含有量が少ないと、ガラスがヨウ素電解液に侵食されやすくなり、長期間に亘り、ヨウ素電解液や電池特性の劣化を防止することができる。SiO+Al+ZrOの含有量が多いと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、低温で封着することが困難となる。なお、SiO、Al、ZrOの中では、SiOは、ガラスを高融点化させる効果が小さいため、優先的に添加することが好ましい。特に、SiO+Al+ZrOの含有量を多くする必要性(例えば、耐候性を向上させる必要性)がある場合、SiOの含有量を25モル%超にすることが好ましい。
SiOは、ヨウ素電解液によるガラスの侵食を生じ難くする成分であり、その含有量は0〜15%、好ましくは0.1〜12%、より好ましくは0.5〜10%、更に好ましくは1超〜9%、特に好ましくは5〜8%である。SiOの含有量が多過ぎると、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、低温で封着することが困難となる。
Alは、ヨウ素電解液によるガラスの侵食を生じ難くする成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜8%、より好ましくは0.5〜6%、更に好ましくは1〜5%である。Alの含有量が多いと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、低温で封着することが困難となる。
ZrOは、ヨウ素電解液によるガラスの侵食を生じ難くする成分であり、その含有量は0.1%以上であり、好ましくは0.1〜8%、より好ましくは0.1〜6%、より好ましくは0.3〜5%、更に好ましくは1〜3%である。ZrOの含有量が多いと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、低温で封着することが困難となる。
上記ガラス組成範囲において、上記成分以外にも、例えば、下記の成分をガラス組成中に20%(好ましくは15%、より好ましくは10%、更に好ましくは5%)まで含有させることができる。
CuOは、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制する成分であり、その含有量は0〜5%、好ましくは0〜2%である。CuOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスを欠き、逆にガラスの熱的安定性が損なわれ、その結果、ガラスが失透しやすくなり、ガラスの流動性が損なわれやすくなる。また、CuOの含有量を0.1〜2%に規制すれば、ガラスの熱的安定性を顕著に向上させることができる。
Feは、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制する成分であり、その含有量は0〜5%、好ましくは0〜2%である。Feの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスを欠き、逆にガラスの熱的安定性が損なわれ、その結果、ガラスが失透しやすくなる。また、Feの含有量を0.1〜2%に規制すれば、ガラスの熱的安定性を顕著に向上させることができる。
BaO、SrO、MgO、CaOは、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制する成分であり、これらの成分は合量で10%までガラス組成中に含有させることができる。これらの成分の合量が多いと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、低温で封着し難くなる。
BaOの含有量は0〜10%が好ましく、0〜7%がより好ましい。BaOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスを欠き、逆にガラスの熱的安定性が損なわれ、その結果、ガラスが失透しやすくなる。また、ガラスの熱的安定性を向上させる観点から、BaOの含有量を1%以上とするのが好ましい。
SrO、MgO、CaOのそれぞれの含有量は0〜5%が好ましく、0〜2%がより好ましい。各成分の含有量が5%より多いと、ガラスが失透、或いは分相しやすくなる。
CeOは、溶融時または焼成時にガラスの失透を抑制する成分であり、その含有量は0〜5%、好ましくは0〜2%、より好ましくは0〜1%である。CeOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスを欠き、逆にガラスの熱的安定性が損なわれ、その結果、ガラスが失透しやすくなり、ガラスの流動性が損なわれやすくなる。また、ガラスの熱的安定性を向上させる観点から、CeOを微量添加するのが好ましく、具体的には、CeOの含有量を0.01%以上とするのが好ましい。
Sbは、ガラスの失透を抑制するための成分であり、その含有量は0〜5%、好ましくは0〜2%、より好ましくは0〜1%である。Sbは、ビスマス系ガラスのネットワーク構造を安定化させる効果があり、ビスマス系ガラスにおいて、Sbを適宜添加すれば、Biの含有量が多い場合、例えばBiの含有量が76%以上であっても、ガラスの熱的安定性が低下し難くなる。ただし、Sbの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスを欠き、逆にガラスの熱的安定性が損なわれ、その結果、ガラスが失透しやすくなる。また、ガラスの熱的安定性を向上させる観点から、Sbを微量添加するのが好ましく、具体的には、Sbの含有量を0.05%以上とするのが好ましい。
WOは、ガラスの失透を抑制するための成分であり、その含有量は0〜10%が好ましく、0〜2%がより好ましい。ただし、WOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスを欠き、逆にガラスの熱的安定性が損なわれ、その結果、ガラスが失透しやすくなる。
In、Gaは必須成分ではないが、ガラスの失透を抑制するための成分であり、その含有量は合量で0〜5%が好ましく、0〜3%がより好ましい。ただし、In、Gaの合量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスを欠き、逆にガラスの熱的安定性が損なわれ、その結果、ガラスが失透しやすくなる。なお、Inの含有量は0〜1%がより好ましく、Gaの含有量は0〜0.5%がより好ましい。
Li、Na、KおよびCsの酸化物は、ガラスの軟化点を低下させる成分であるが、溶融時にガラスの失透を促進する作用を有するため、その含有量は合量で2%以下とするのが好ましい。
は、溶融時にガラスの失透を抑制する成分であるが、その添加量が1%より多いと、溶融時にガラスが分相しやすくなるため、好ましくない。
MoO、La、YおよびGdは、溶融時にガラスの分相を抑制する成分であるが、これらの合量が3%より多いと、ガラスの軟化点が高くなり過ぎ、低温で封着し難くなる。
また、その他の成分であっても、ガラスの特性を損なわない範囲で10%(好ましくは5%)までガラス組成中に添加することができる。なお、本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物は、環境的観点およびヨウ素電解液によるガラスの侵食を防止する観点から、実質的にPbOを含有しないことが好ましい。ここで、「実質的にPbOを含有しない」とは、ガラス組成中のPbOの含有量が1000ppm以下の場合を指す。
本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物において、25℃のヨウ素電解液に2週間浸漬したときの質量減は0.1mg/cm以下、好ましくは0.05mg/cm以下であり、実質的に質量減がないことが望ましい。質量減が0.1mg/cm以下であれば、長期間に亘り、ヨウ素電解液や電池特性の劣化を防止することができる。ここで、「実質的に質量減がない」とは、質量減が0.01mg/cm以下の場合を指す。
本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物において、熱膨張係数は91×10−7/℃未満、88×10−7/℃未満、86×10−7/℃未満、特に84×10−7/℃未満が好ましい。本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物と、透明電極基板等に用いられるガラス基板(例えば、ソーダガラス基板)の熱膨張係数の差が大き過ぎると、耐火性フィラー粉末を添加しない限り、焼成後にガラス基板や封着部位等に不当な応力が残留し、ガラス基板や封着部位等にクラックが発生しやすくなり、或いは封着部位に剥れが生じやすくなる。
本発明の色素増感型太陽電池用材料は、実質的に耐火性フィラー粉末を含有しないことが好ましい。このようにすれば、太陽電池のセルギャップを小さく、且つ均一化しやすくなるとともに、耐火性フィラー粉末等の混合工程等が不要になるため、色素増感型太陽電池用材料の製造コストを低廉化することができる。
本発明の色素増感型太陽電池用材料は、機械的強度を向上、或いは熱膨張係数を低下させるために、耐火性フィラー粉末を含有してもよい。一方、耐火性フィラー粉末の添加量を低減すれば、色素増感型太陽電池用材料の流動性、特に封着性を高めることができる。したがって、その混合割合はガラス粉末50〜100体積%、耐火性フィラー粉末0〜50体積%、好ましくはガラス粉末70〜100体積%、耐火性フィラー粉末0〜30体積%、より好ましくはガラス粉末95〜100体積%、耐火性フィラー粉末0〜5体積%であり、既述の理由により、実質的に耐火性フィラー粉末を含有しないことが望ましい。耐火性フィラー粉末の含有量が50体積%より多いと、相対的にガラス粉末の割合が低くなり過ぎて、所望の流動性を得難くなる。
色素増感型太陽電池のセルギャップは、一般的に、50μm以下と非常に小さいため、耐火性フィラー粉末の粒子経が大き過ぎると、封着部位に局所的に突起物が発生するため、セルギャップを均一化し難くなる。このような事態を防止するため、耐火性フィラー粉末の最大粒子径は25μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。ここで、「最大粒子径」とは、レーザー回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して99%である粒子径を表す。
耐火性フィラー粉末は、特に材質が限定されないが、本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物からなるガラス粉末およびヨウ素電解液と反応し難いものが好ましい。具体的には、耐火性フィラー粉末として、ジルコン、ジルコニア、酸化錫、チタン酸アルミニウム、石英、β−スポジュメン、ムライト、チタニア、石英ガラス、β−ユークリプタイト、β−石英、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、ウイレマイト、[AB(MO]等のNZP型の基本構造をもつ化合物、
A:Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cu、Ni、Mn等
B:Zr、Ti、Sn、Nb、Al、Sc、Y等
M:P、Si、W、Mo等
若しくはこれらの固溶体が使用可能である。
本発明の色素増感型太陽電池用材料において、軟化点は575℃以下が好ましく、550℃以下がより好ましく、535℃以下が更に好ましい。軟化点が575℃より高いと、ガラスの粘性が高くなり過ぎ、封着温度が不当に上昇し、ガラス基板が変形しやすくなる。また、色素増感型太陽電池用材料と多孔質酸化物半導体層を同時焼成する場合、封着温度が高過ぎると、酸化物半導体粒子の融着が進行し過ぎるおそれがあり、このような場合、多孔質酸化物半導体層の表面積が減少し、色素を吸着させ難くなる。
本発明の色素増感型太陽電池用材料において、25℃のヨウ素電解液に2週間浸漬したときの質量減は0.1mg/cm以下、好ましくは0.05mg/cm以下、更に好ましくは実質的に質量減がない。質量減が0.1mg/cm以下であれば、長期間に亘り、ヨウ素電解液や電池特性の劣化を防止することができる。
本発明の色素増感型太陽電池用材料は、粉末のまま使用に供してもよいが、ビークルと均一に混練し、ペーストに加工すると取り扱いやすい。ビークルは、主に溶媒と樹脂とからなり、樹脂はペーストの粘性を調整する目的で添加される。また、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤等を添加することもできる。作製されたペーストは、ディスペンサーやスクリーン印刷機等の塗布機を用いて塗布される。
樹脂としては、アクリル酸エステル(アクリル樹脂)、エチルセルロース、ポリエチレングリコール誘導体、ニトロセルロース、ポリメチルスチレン、ポリエチレンカーボネート、メタクリル酸エステル等が使用可能である。特に、アクリル酸エステル、ニトロセルロースは、熱分解性が良好であるため、好ましい。
溶媒としては、N、N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、α−ターピネオール、高級アルコール、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、テトラリン、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、トルエン、3−メトキシ−3−メチルブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン等が使用可能である。特に、α−ターピネオールは、高粘性であり、樹脂等の溶解性も良好であるため、好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池用材料は、封着に用いることが好ましく、特に透明電極基板と対極基板の封着に用いることが好ましい。本発明の色素増感型太陽電池用材料は、低融点特性を有し、ヨウ素電解液に侵食され難いため、長期間の使用により、ヨウ素電解液が漏洩し難く、太陽電池の長寿命化を図ることができる。また、透明電極基板と対極基板の封着に用いる場合、太陽電池のセルギャップを均一化するために、本発明の色素増感型太陽電池用材料にガラスビーズ等のスペーサーを添加してもよい。
本発明の色素増感型太陽電池用材料は、ガラス組成中にCuO+Fe(CuOとFeの合量)を添加すれば、レーザー光による封着処理に供することができる。レーザー光を用いると、色素増感型太陽電池用材料を局所加熱することができ、ヨウ素電解液等の構成部材の熱劣化を防止した上で、透明電極基板と対極基板を封着することができる。本発明の色素増感型太陽電池用材料は、レーザー光を用いて透明電極基板と対極基板を封着する場合、ガラス組成として、CuO+Feを0.1〜15%、0.5〜10%、1.5〜8%、2〜7%、3〜6%、特に3.5超〜5%含有することが好ましい。CuO+Feの含有量を0.1%以上、特に0.5%以上に規制すれば、レーザー光の光エネルギーを熱エネルギーに効率良く変換することができるため、換言すればガラスに的確にレーザー光を吸収させることができるため、封着すべき部位のみを局所加熱することができる。一方、CuO+Feの含有量を15%以下、特に10%以下に規制すれば、レーザー光の照射の際に、ガラスが失透する事態を防止することができる。ここで、レーザー光として、種々のレーザー光を使用することができるが、特に、半導体レーザー、YAGレーザー、COレーザー、エキシマレーザー、赤外レーザー等は、取り扱いが容易な点で好適である。また、ガラスに的確にレーザー光を吸収させるために、レーザー光は、500〜1600nm、好ましくは750〜1300nmの発光中心波長を有することが好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池用材料は、集電電極の被覆に用いることが好ましい。一般的に、集電電極にはAgが使用されるが、Agはヨウ素電解液に侵食されやすい。したがって、集電電極にAgを使用する場合、集電電極を保護する必要がある。本発明の色素増感型太陽電池用材料は、低融点特性を有するため、緻密な被覆層を低温で形成できるとともに、ヨウ素電解液に侵食され難いため、長期間に亘って、集電電極を保護することができる。
本発明の色素増感型太陽電池用材料は、隔壁の形成に用いることができる。一般的に、色素増感型太陽電池内に隔壁を形成する場合、セル内は、ヨウ素電解液で満たされる。本発明の色素増感型太陽電池用材料は、低融点特性を有するため、緻密な隔壁を低温で形成できるとともに、ヨウ素電解液に侵食され難いため、長期間に亘って、隔壁の破れを防止することができる。
実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。表1、2は、試料No.1〜14を示している。
表中に記載の各試料は、次のようにして調製した。まず、表中のガラス組成になるように、各種酸化物、炭酸塩等の原料を調合したガラスバッチを準備し、これを白金坩堝に入れて1000〜1200℃で1〜2時間溶融した。次に、溶融ガラスの一部を熱膨張係数測定用サンプルとしてステンレス製の金型に流し出し、その他の溶融ガラスは、水冷ローラーにより薄片状に成形した。熱膨張係数測定用サンプルは、成形後に所定の徐冷(アニール)処理を行った。最後に、薄片状のガラスをボールミルにて粉砕後、目開き75μmの篩いを通過させて、平均粒子径が約10μmの各ガラス粉末を得た。なお、試料No.14は、表中の耐火性フィラー粉末(チタン酸鉛、平均粒子径10μm)を表中の割合で添加、混合したものである。
次いで、各ガラス粉末(試料No.14は混合粉末)と、ビークル(エチルセルロースをα−ターピネオールに溶解させたもの)を混錬し、ペースト状とした。これをソーダガラス基板(熱膨張係数:100×10−7/℃)に、直径40mmで40〜80μm厚となるようにスクリーン印刷し、電気炉で120℃10分間乾燥した後、500〜550℃10分間焼成し、質量減の評価用試料を得た。
以上の試料を用いて、熱膨張係数、軟化点およびヨウ素電解液に対する質量減を評価した。その結果を表1に示す。
熱膨張係数は、TMA測定装置により測定した。熱膨張係数は、30〜300℃の温度範囲で測定した。なお、試料No.14については、混合粉末を緻密に焼結させ、所定形状に加工したものを測定試料とした。
軟化点は、DTA装置により求めた。測定は、空気中で行い、昇温速度は10℃/分とした。
質量減は、以下のようにして算出した。まず上記の質量減の評価用試料の質量およびヨウ素電解液に接する焼成膜の表面積を測定し、次にガラス製密閉容器中のヨウ素電解液にこの試料を浸漬し、25℃の恒温槽にガラス製密閉容器を静置し、浸漬前の試料の質量から2週間経過した後の試料の質量を減じた値を、焼成膜の表面積で除することで算出した。質量減の評価に使用したヨウ素電解液は、アセトニトリルに対し、ヨウ化リチウム0.1M、ヨウ素0.05M、tert−ブチルピリジン0.5M、および1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド0.6Mを加えたものを使用した。
表1から明らかなように、試料No.1〜11は、熱膨張係数が79〜90×10−7/℃、軟化点が486〜524℃であった。また、いずれの質量減の測定用試料においても、焼成膜が剥れることなく、ガラス基板に良好に密着していた。さらに、試料No.1〜11は、質量減が0.10mg/cm以下であり、ヨウ素電解液に侵食され難かった。一方、試料No.12は、ガラス組成中にSiO+Al+ZrOを含有していないため、質量減が0.18mg/cmであり、ヨウ素電解液に侵食されていた。試料No.13は、ガラス組成中にSiO+Al+ZrOを含有していないため、質量減が0.29mg/cmであり、ヨウ素電解液に侵食されていた。試料No.14は、鉛ガラスを使用したため、質量減が0.32mg/cmであり、ヨウ素電解液に侵食されていた。
本発明の色素増感型太陽電池用ガラス組成物および色素増感型太陽電池用材料は、色素増感型太陽電池の透明電極基板と対極基板の封着、セル間を仕切るための隔壁の形成、集電電極の被覆等に好適である。

Claims (12)

  1. ガラス組成として、質量%で、 Bi 65〜85%、B 5〜15%、ZnO 0〜15%、SiO+Al+ZrO 2.6〜20%含有すると共に、ZrO を0.1質量%以上含有することを特徴とする色素増感型太陽電池用ガラス組成物。
  2. 熱膨張係数が91×10−7/℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用ガラス組成物。
  3. ガラス組成として、SiO を5質量%以上含有することを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池用ガラス組成物。
  4. ガラス組成として、Alを0.1質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用ガラス組成物。
  5. ガラス組成として、CuO+Fe を0.1〜15質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用ガラス組成物。
  6. 実質的にZnOを含有しないことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の色素増感太陽電池用ガラス組成物。
  7. 25℃のヨウ素電解液に2週間浸漬したときの質量減が、0.1mg/cm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用ガラス組成物。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用ガラス組成物からなるガラス粉末 50〜100体積%、耐火性フィラー粉末 0〜50体積%含有することを特徴とする色素増感型太陽電池用材料。
  9. 軟化点が575℃以下であることを特徴とする請求項に記載の色素増感型太陽電池用材料。
  10. 封着に用いることを特徴とする請求項またはに記載の色素増感型太陽電池用材料。
  11. 集電電極の被覆に用いることを特徴とする請求項またはに記載の色素増感型太陽電池用材料。
  12. レーザー光による封着処理に用いることを特徴とする請求項10に記載の色素増感型太陽電池用材料。
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