以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
本実施形態に係るテープカセット1について、図1〜図11を参照して以下に後述する。本実施形態の説明では、図1および図2の上側、下側、左側、右側を、それぞれテープカセット1の前側、後側、左側、右側とする。また、図3の上側および下側を、テープカセット1の上側および下側とする。以下では、各種のテープ種類に実装可能な汎用カセットを、ラミネートタイプに実装したテープカセット1を例示する。
なお、図1〜図8、図10は、インクリボン60の巻取径が所定値未満である状態を示している。図9および図11は、インクリボン60の巻取径が所定値以上である状態を示している。インクリボン60の巻取径は、リボン巻取スプール44に巻き取られたインクリボン60の直径である。図8、図10および図11は、それぞれインクリボン60の巻取径が異なる状態で、図3に示すリボン巻取スプール44周辺を部分拡大した縦断面図である。
図1〜図3を参照して、テープカセット1の全体構造について説明する。図1〜図3に示すように、テープカセット1は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状(箱型)の筐体であるカセットケース31を有している。カセットケース31は、下ケース31Bと、下ケース31Bに対して上下方向に組付けられる上ケース31Aとを含む。上ケース31Aのうち、カセットケース31の上面を形成する壁部を、上壁301という。下ケース31Bのうち、カセットケース31の底面を形成する壁部を、底壁302という。
カセットケース31内には、両面粘着テープ58、透明なフィルムテープ59、およびインクリボン60が収納されている。両面粘着テープ58は、一面に剥離紙が貼着された両面テープであり、印字済みのフィルムテープ59の印字面側に貼り合わされる。両面粘着テープ58は、剥離紙を外側に向けて、第1テープスプール40に巻回されている。フィルムテープ59は、第2テープスプール41に巻回されている。インクリボン60は、リボンスプール42に巻回されている。両面粘着テープ58、フィルムテープ59、およびインクリボン60は、それぞれの幅方向がカセットケース31の上下方向と平行となるように、それぞれの搬送経路上を搬送される。
両面粘着テープ58は、カセットケース31内の左側後部(図1および図2では左上部)に設けられた第1テープ収納部101に収納される。第1テープ収納部101では、両面粘着テープ58が巻回された第1テープスプール40が、支持部65によって回転自在に支持される。支持部65は、底壁302から上方向に突出する筒状体65B(図4参照)と、上壁301に設けられて筒状体65Bの先端が連結される筒受部65A(図5参照)とを含む。筒受部65Aに連結されている筒状体65Bが第1テープスプール40の軸孔に挿入された状態で、第1テープスプール40が回転支持される。
フィルムテープ59は、カセットケース31内の右側後部(図1および図2では右上部)に設けられた第2テープ収納部102に収納される。第2テープ収納部102では、フィルムテープ59が巻回された第2テープスプール41が、支持部66によって回転自在に支持される。支持部66は、底壁302から上方向に突出する軸部66B(図4参照)と、上壁301に設けられて軸部66Bの先端が連結される軸受部66A(図5参照)とを含む。軸受部66Aに連結されている軸部66Bが第2テープスプール41の軸孔に挿入された状態で、第2テープスプール41が回転支持される。
インクリボン60は、カセットケース31内の右側前部(図1および図2では右下部)に設けられたインクリボン収納部103に収納される。インクリボン収納部103では、インクリボン60が巻回されたリボンスプール42が、支持部68によって回転自在に支持される。支持部68は、底壁302から上方向に突出する軸部68B(図4参照)と、上壁301に設けられて軸部68Bの先端が連結される軸受部68A(図5参照)とを含む。軸受部68Aに連結されている軸部68Bがリボンスプール42の軸孔に挿入された状態で、リボンスプール42が回転支持される。
カセットケース31の左前隅部(図1および図2では左下隅部)には、支持部64が設けられている。支持部64は、上壁301および底壁302を上下方向に貫通する一対の開口部64A、64B(図4および図5参照)を含む。テープ駆動ローラ46の上端および下端は、一対の開口部64A、64Bにそれぞれ挿入されて回転支持される。テープ駆動ローラ46は、フィルムテープ59および両面粘着テープ58の引き出しを行う。
カセットケース31内における第1テープスプール40とリボンスプール42との間には、リボン巻取スプール44が支持部67によって回転自在に支持される。支持部67は、上壁301および底壁302を上下方向に貫通し、リボン巻取スプール44の両端側を支持する一対の開口部67A、67B(図4および図5参照)を含む。リボン巻取スプール44は、リボンスプール42からインクリボン60を引き出し、且つ、文字等の印字にて使用されたインクリボン60を巻き取る。支持部67およびリボン巻取スプール44については、別途詳述する。
テープ印字装置(図示外)にテープカセット1が装着されて印字動作が実行されると、テープ印字装置のテープ駆動軸(図示外)を介して、テープ駆動ローラ46が回転駆動される。テープ駆動ローラ46は、テープ印字装置の可動搬送ローラ(図示外)との協働によって、第2テープスプール41からフィルムテープ59を引き出し、且つ、第1テープスプール40から両面粘着テープ58を引き出す。テープ印字装置のリボン巻取軸(図示外)を介して回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期してリボンスプール42からインクリボン60を引き出す。
第2テープスプール41は、フィルムテープ59の引き出しに伴って平面視で時計回り方向に回転する。第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59は、カセットケース31の右前隅部(図1および図2では右下隅部)に向けて搬送される。カセットケース31の右前隅部では、リボンスプール42に巻回されているインクリボン60の外周に沿って、且つ、インクリボン60に対して間隔を置いて、フィルムテープ59が搬送される。
カセットケース31の右前隅部には、屈曲部33が立設されている。屈曲部33は、フィルムテープ59の搬送方向を、インクリボン60が巻回されたリボンスプール42の外周に沿って鋭角状に屈曲させるピンである。屈曲部33において、フィルムテープ59の搬送経路がカセットケース31の左前隅部に向けて屈曲される。
リボンスプール42は、インクリボン60の引き出しに伴って平面視で反時計回り方向に回転する。リボンスプール42から引き出されたインクリボン60は、カセットケース31の左前隅部に向けて搬送される。同様に、第1テープスプール40は、両面粘着テープ58の引き出しに伴って平面視で反時計回り方向に回転する。第1テープスプール40から引き出された両面粘着テープ58は、カセットケース31の左前隅部に向けて搬送される。
テープカセット1の右前部から左方に延びるアーム部34の内部では、第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59と、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60とが共に案内される。アーム部34の先端側に形成された開口34Aでは、アーム部34内を経由するフィルムテープ59とインクリボン60とが重ね合わされる。フィルムテープ59およびインクリボン60は、開口34Aを介して、テープカセット1の前面側に設けられた開口部77に向けて排出される。
カセットケース31の前部、且つ、インクリボン収納部103よりも左側には、ヘッド挿入部39が設けられている。ヘッド挿入部39は、テープ印字装置のサーマルヘッド(図示外)が挿入される部位である。ヘッド挿入部39は、開口部77によってテープカセット1の前面側でも外部とつながっている。開口部77に排出されたフィルムテープ59には、フィルムテープ59と重ね合っているインクリボン60を使用して、サーマルヘッド(図示外)による印字が行われる。
サーマルヘッド(図示外)による印字が行われたフィルムテープ59は、テープ駆動ローラ46に向けて搬送される。第1テープスプール40から引き出された両面粘着テープ58が、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ(図示外)との間にガイドされて巻き込まれる。このとき、両面粘着テープ58が、印字済みのフィルムテープ59の印字面に重ねられて貼着される。両面粘着テープ58が貼着された印字済みのフィルムテープ59(つまり、印字済テープ50)は、さらにテープ排出口49に向かって搬送され、テープ印字装置のカット機構(図示外)によって切断される。
サーマルヘッド(図示外)による印字に使用されたインクリボン60は、テープ駆動ローラ46の右側に立設された案内壁47によって、フィルムテープ59から離間されたのち、リボン巻取スプール44に向けて案内される。リボン巻取スプール44の左前側には、屈曲部36が立設されている。屈曲部36は、インクリボン60の搬送方向を、後述の巻取位置に向けて屈曲させるピンである。屈曲部36を経由したインクリボン60は、リボン巻取スプール44に巻き取られる。
図2〜図5を参照して、カセットケース31(すなわち、上ケース31Aおよび下ケース31B)における、リボン巻取スプール44周辺の構造について説明する。なお、図4および図5では、理解を容易にするために、第1テープスプール40、リボン巻取スプール44、両面粘着テープ58、テープ駆動ローラ46等を取り除いて図示している。
図3に示すように、リボン巻取スプール44は、カセットケース31の高さとほぼ等しい高さを有する円筒体である。リボン巻取スプール44の上端縁および下端縁には、それぞれ径外方向の全周に亘って突出するフランジ状の支持部44Eが設けられている。上側の支持部44Eと下側の支持部44Eとの上下方向長さは、インクリボン60の幅よりも若干大きい。リボン巻取スプール44の外周面のうち、上側の支持部44Eと下側の支持部44Eとの間の周面が、使用済みのインクリボン60が巻回される巻取面44Fである。
カセットケース31の内部では、リボン巻取スプール44の上端部44Aが開口部67Aに嵌め込まれ、且つ、下端部44Bが開口部67Bに嵌め込まれている。リボン巻取スプール44の上端縁では、支持部44Eが上壁301の下面に当接しているので、リボン巻取スプール44の上方向への移動が規制される。リボン巻取スプール44の下端縁では、底壁302の上面に支持部44Eが当接しているので、リボン巻取スプール44の下方向への移動が規制される。これにより、リボン巻取スプール44は、上端部44Aおよび下端部44Bにて回転可能に支持される。
リボン巻取スプール44の内部には、上下方向に貫通する軸孔44Cが形成されている。リボン巻取スプール44の内周面(つまり、軸孔44Cを形成する内壁)には、下端部から上方に延びる複数のリブ44Dが設けられている。テープカセット1がテープ印字装置のカセット装着部(図示外)に装着されると、テープ印字装置のリボン巻取軸(図示外)が開口部67Bを介して軸孔44Cに挿入される。軸孔44C内では、リボン巻取軸に設けられた複数のカム部材(図示外)が、複数のリブ44Dに噛み合う。これにより、リボン巻取軸の回転がリボン巻取スプール44に伝達される。
図2〜図4に示すように、リボン巻取スプール44の下端部には、クラッチバネ72が装着されている。クラッチバネ72は、円環部72Aと係止部72Bとを含むコイルバネである。円環部72Aは、下側の支持部44Eの直下に巻回されるコイルである。係止部72Bは、円環部72Aの終端から径外側に延設された、コイルの先端部である。係止部72Bは、下ケース31Bのバネ装着溝67Cに嵌め込まれている。バネ装着溝67Cは、底壁302において開口部67Bから後方(図4では上方向)に延びる溝部である。
底壁302から上方に延びる壁部のうち、平面視で略円形をなす第2テープ収納部102を規定する周壁を、収納壁120という。つまり、収納壁120は、第2テープスプール41が収納される凹部を、底壁302と形成する壁部である。バネ装着溝67Cは、平面視で、収納壁120に達する位置まで後方に延びている。収納壁120には、バネ装着溝67Cから上方に延びる溝部120Aが形成されている。
収納壁120のやや前方には、バネ装着溝67Cをまたいで底壁302から上方に延びるバネ固定壁45が立設されている。つまり、収納壁120およびバネ固定壁45は、開口部67Bに嵌め込まれたリボン巻取スプール44の外周側で、底壁302から上方に向けて延びる壁部である。バネ固定壁45にも、バネ装着溝67Cから上方に延びる溝部45Aが形成されている。溝部45A,120Aが、係止部72Bを上側から挿脱可能なスリットであって、クラッチバネ72の係止部72Bを固定するためのバネ固定部80である。
リボン巻取スプール44の取り付け時には、係止部72Bはバネ固定部80を介して上方からバネ装着溝67Cに嵌め込まれる。係止部72Bの先端部は上方に向けて屈曲している。係止部72Bの屈曲した先端部が、バネ固定部80内で固定される。クラッチバネ72は、リボン巻取スプール44をインクリボン60の巻き取り方向とは反対方向(時計回り方向)に回転させる外力が加えられると、リボン巻取スプール44に大きな回転負荷を付与する。
底壁302から上方に延びる壁部のうち、平面視で開口部67Bの径外側で略円形をなすように形成されたレール状の突起を、支持リブ130という。支持リブ130は、平面視で円弧状をなす複数の円弧壁を有する。具体的には、支持リブ130は、開口部67Bの右前側から前側に亘って設けられた円弧壁130Aと、開口部67Bの右後側から右側に亘って設けられた円弧壁130Bと、開口部67Bの左側から後側に亘って設けられた円弧壁130Cとを有する。
支持リブ130は、リボン巻取スプール44の下端部44Bが開口部67Bに嵌め込まれた状態で、リボン巻取スプール44の外周の一部に沿うように設けられている。さらに、支持リブ130は、リボン巻取スプール44における下側の支持部44Eが嵌め込まれる凹部を、底壁302と形成する。よって、支持リブ130の形成位置や高さ(つまり、底壁302からの突出幅)などは、支持部44Eを基準に規定されている。すなわち、支持リブ130の内径は、支持部44Eの外径よりも若干大きい。また、支持リブ130の高さは、少なくとも支持部44Eの厚み(上下方向長さ)よりも大きい。
開口部67Bの左前側には、支持リブ130と同様のレール状の突起である下規制リブ131が設けられている。下規制リブ131は、第1下リブ131Aおよび第2下リブ131Bが連設されている。第1下リブ131Aは、支持リブ130と同様に、開口部67Bに沿った円弧状をなすリブであって、円弧壁130Aと円弧壁130Cとの間に設けられている。第2下リブ131Bは、第1下リブ131Aの前端側から前方に延びて、その延長上にある下ケース31Bの側壁(詳細には、ヘッド挿入部39を形成する周壁)に接続されている。
図5に示すように、上ケース31Aにも、下規制リブ131に対応するレール状の突起である上規制リブ132が設けられている。具体的には、上規制リブ132は、開口部67Aの左前側(図5では左上側)に設けられて、第1上リブ132Aおよび第2上リブ132Bが連設されている。第1上リブ132Aは、第1下リブ131Aと上下に対応するように設けられた、開口部67Aに沿った円弧状をなすリブである。第2上リブ132Bは、第2下リブ131Bと上下に対応するように設けられた、第1上リブ132Aと上ケース31Aの側壁(詳細には、ヘッド挿入部39を形成する周壁)とを接続するリブである。
図2、図6〜図11を参照して、リボン巻取スプール44の装着態様およびインクリボン60の搬送経路について説明する。なお、図6および図7は、理解を容易にするためにインクリボン60、リボン巻取スプール44およびリボンスプール42のみが装着された、カセットケース31の内部構造を図示している。ただし、図6は、上ケース31Aが取り除かれた状態におけるカセットケース31の内部(つまり、下ケース31Bの上面側)を示している。図7は、下ケース31Bが取り除かれた状態におけるカセットケース31の内部(つまり、上ケース31Aの下面側)を示している。
図2および図6に示すように、テープカセット1の製造時には、まず作業者はインクリボンユニットを下ケース31Bに組付ける。インクリボンユニットは、インクリボン60が巻回されたリボンスプール42と、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60の先端が接続されたリボン巻取スプール44とで構成される。なお、リボンスプール42の下端部44B(図4参照)には、あらかじめクラッチバネ72が取り付けられている。
詳細には、まず作業者はリボン巻取スプール44の下端部44Bを開口部67B(図3参照)に嵌め込む。このとき、リボン巻取スプール44に装着されているクラッチバネ72の係止部72Bを後方(図2、図6では上方向)に向けながら、係止部72Bを溝部45A,120A(つまり、バネ固定部80)に上方から挿入する。これにより、係止部72Bは、バネ装着溝67Cに嵌め込まれ、且つ下ケース31Bのバネ固定部80によって固定される。
次に、作業者はリボンスプール42の軸孔に軸部68B(図4参照)を挿入させる。このとき、リボンスプール42からリボン巻取スプール44まで延びるインクリボン60を下ケース31B内で引き回して、インクリボン60の搬送経路を設定する。つまり、リボンスプール42とリボン巻取スプール44との間で延びるインクリボン60を、アーム部34の内部、開口34A、案内壁47、屈曲部36を経由するように配置する。
本実施形態のバネ固定部80は、開口部67Bの後側に設けられている。一方、インクリボン60の搬送経路(つまり、リボンスプール42からリボン巻取スプール44に至るインクリボン60の配置位置)は、開口部67Bの前側に設けられている。したがって、バネ固定部80によって係止部72Bが固定された状態では、係止部72Bの円環部72Aからの延長線(図2、図6では、リボン巻取スプール44から後方に延びる線)は、インクリボン60の搬送経路から離間する。言い換えると、円環部72Aから延びる係止部72Bの延長上には、インクリボン60の搬送経路が存在しない。
かかる構成により、テープカセット1の組立て時に、作業者がリボン巻取スプール44の下端部44Bを開口部67Bに嵌め込むと、係止部72Bはバネ固定部80によってインクリボン60の搬送経路から離間するような平面位置で固定される。その結果、リボン巻取スプール44の組付け時に、係止部72Bがインクリボン60に接触して傷つけるおそれを低減できる。ひいては、係止部72Bがインクリボン60と絡まりにくくなり、テープカセット1の組立て不良を低減することができる。
また、係止部72Bをバネ固定部80に上側から挿入するという簡易な作業工程で、係止部72Bをインクリボン60の搬送経路から離間した位置で固定することができる。ひいては、テープカセット1の組立て時に、クラッチバネ72をバネ固定部80から抜け難くすることができ、作業効率を向上させることができる。さらに、収納壁120にバネ固定部80の一部(すなわち、溝部120A)を設けたので、テープカセット1の内部構造を複雑にすることなく、バネ固定部80を設けることができる。
リボン巻取スプール44の組付け時には、底壁302と支持リブ130とによって形成される凹部に、リボン巻取スプール44の支持部44Eが嵌め込まれる。つまり、リボン巻取スプール44が開口部67Bに嵌め込まれると、リボン巻取スプール44の立設状態が支持部44Eの外周側を取り囲む支持リブ130によって保持される。そのため、下ケース31Bに対して上ケース31Aを組付ける際に、リボン巻取スプール44が傾斜することを抑制でき、テープカセット1の組立て不良を低減することができる。
インクリボンユニットを下ケース31Bに組付けたのち、作業者はテープ駆動ローラ46、両面粘着テープユニットおよびフィルムテープユニットを下ケース31Bに組付ける。両面粘着テープユニットは、両面粘着テープ58が巻回された第1テープスプール40である。フィルムテープユニットは、フィルムテープ59が巻回された第2テープスプール41である。詳細には、作業者は、テープ駆動ローラ46の下端部を開口部64B(図4参照)に嵌め込み、第1テープスプール40の軸孔に筒状体65B(図4参照)を挿入させ、第2テープスプール41の軸孔に軸部66B(図4参照)を挿入させる。
そして、第1テープスプール40から引き出された両面粘着テープ58を下ケース31B内で引き回して、両面粘着テープ58の搬送経路を設定する。つまり、テープ駆動ローラ46、テープ排出口49を経由するように、両面粘着テープ58を配置する。また、第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59を下ケース31B内で引き回して、両面粘着テープ58の搬送経路を設定する。つまり、屈曲部33、アーム部34の内部、開口34A、テープ排出口49を経由するように、両面粘着テープ58を配置する。
最後に、下ケース31Bに上ケース31Aを組み付ける。このとき、テープ駆動ローラ46の上端部を開口部64A(図5参照)に嵌め込む。筒状体65Bの上端部を筒受部65A(図5参照)に連結させる。軸部66Bの上端部を軸受部66A(図5参照)に連結させる。リボン巻取スプール44の上端部を開口部67A(図5参照)に嵌め込む。軸部68Bの上端部を軸受部68A(図5参照)に連結させる。以上により、テープカセット1の製造が完了する。
図2、図6および図7に示すように、テープカセット1の組立てが完了した直後の状態では、リボンスプール42に巻回されているインクリボン60の直径(以下、インクリボン60の巻回径)が最大である一方、リボン巻取スプール44におけるインクリボン60の巻取径が最小である。インクリボン60の巻取径が少ないほど、リボン巻取スプール44においてインクリボン60の巻取りが開始される位置(以下、巻取位置という。)が、リボン巻取スプール44の径内側(図2では上側)に向けて移動する。
インクリボン60の巻取位置がリボン巻取スプール44の径内側に移動するのに伴って、屈曲部36によるインクリボン60の搬送経路の屈曲率が小さくなる。インクリボン60の巻取径が所定値未満である場合には、インクリボン60は屈曲部36から右方向に搬送され、平面視で第1下リブ131Aと円弧壁130Cとの間を経由してリボン巻取スプール44へ到達する。この状態では、第1下リブ131Aと円弧壁130Cとの間を経由する際に、インクリボン60の前面が第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aの後端部に沿っている。
図8に示すように、リボン巻取スプール44における上下一対の支持部44E、44E間の上下方向長さ(距離L1)は、インクリボン60の上下方向長さ(つまり、幅長)よりも大である。第1下リブ131Aと円弧壁130Cとの間における、上壁301と底壁302との上下方向長さ(距離L2)も、インクリボン60の幅長よりも大である。距離L1および距離L2は、それぞれの上下方向中心における高さ位置が略一致する。よって、インクリボン60の巻取径が所定値未満である場合は、インクリボン60は他部材によって幅方向に干渉されることなく、第1下リブ131Aと円弧壁130Cとの間を搬送される。そして、巻取位置まで到達したインクリボン60は、リボン巻取スプール44の巻取面44Fにそのまま巻き取られる。
図9に示すように、例えば印字動作が行われてインクリボン60の巻取径が多くなるほど、インクリボン60の巻取位置がリボン巻取スプール44の径外側(図9では下側)に向けて移動する。これに伴って、屈曲部36によるインクリボン60の搬送経路の屈曲率が大きくなる。インクリボン60の巻取径が所定値以上である場合には、インクリボン60は屈曲部36から右前方向に搬送され、平面視で第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aと重複する位置を経由してリボン巻取スプール44へ到達する。
このとき、インクリボン60は、上下方向に対向する第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aとの間を介して搬送される。第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aとの上下方向長さ(距離L3)は、距離L1よりも小さい(図8参照)。距離L1および距離L3は、それぞれの上下方向中心における高さ位置が略一致する。なお、本実施形態のインクリボン60の幅長は、距離L3とほぼ等しく設定されている。
インクリボン60の巻取径が所定値以上である場合は、インクリボン60の幅方向の両端部(つまり、上端部および下端部)が第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aに接触した状態で、インクリボン60が搬送される。この場合、インクリボン60が適正な高さ位置で搬送されていれば、インクリボン60が第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aによって幅方向に規制されつつ巻取位置まで搬送されて、リボン巻取スプール44の巻取面44Fにそのまま巻き取られる。なお、インクリボン60の適正な高さ位置で搬送されている状態とは、インクリボン60の幅方向の中心位置と、距離L2の上下方向中心における高さ位置とが略一致する状態をいう。
ところで、異常な動作状況(例えば、印字動作時の振動等)が生じると、インクリボン60が幅方向に蛇行することがあった。インクリボン60が幅方向に蛇行した場合、インクリボン60の巻取径に応じて、次のような態様でインクリボン60がリボン巻取スプール44に巻き取られる。
まず、インクリボン60の巻取径が所定値未満である場合(図2、図6〜図8参照)、上述の距離L1、L2の高さ関係によって、インクリボン60が距離L1の上端位置または下端位置を超えて幅方向に蛇行した状態で、巻取位置まで到達するおそれがある。図10に示す例では、インクリボン60が巻取位置の直前で、適正な高さ位置よりも若干上方に蛇行している。その結果、インクリボン60の上端位置が、距離L1の上端位置よりも高い位置まで達している。
しかしながら、インクリボン60の巻取径が小さい状態では、巻取面44Fに巻回されているインクリボン60の量が少ないため、リボン巻取スプール44が巻取可能なインクリボン60の許容量が大きい。そのため、幅方向に蛇行したインクリボン60は、支持部44E(詳細には、上側の支持部44Eの下面または下側の支持部44Eの上面)に接触する。この場合、インクリボン60は、その上端縁が円弧状に屈曲されつつ、または、その上端縁が巻取面44Fとは反対側に折り曲げられて断面略Uの字状に変形されつつ、巻取面44Fに巻き取られる。これにより、インクリボン60がリボン巻取スプール44の巻取り端部(つまり、一対の支持部44E、44E)に乗り上げることが防止される。
一方、インクリボン60の巻取径が大きい状態では(図9参照)、巻取面44Fに巻回されているインクリボン60の量が多いため、リボン巻取スプール44が巻取可能なインクリボン60の許容量が小さい。そのため、幅方向に蛇行したインクリボン60を十分に巻取面44Fに巻き取ることができない。その結果、幅方向に蛇行したインクリボン60が巻取面44Fに収まりきらずに、リボン巻取スプール44の巻取り端部に乗り上げるおそれがある。しかしながら、本実施形態のテープカセット1では、以下のように、蛇行したインクリボン60のリボン巻取スプール44の巻取り端部への乗り上げが抑制される。
図10に示す例において、さらにインクリボン60の巻取径が増加するのに伴って、インクリボン60の前面と第1上リブ132Aとが徐々に近接する。インクリボン60の巻取径が所定量以上になると、図11に示す例のように、インクリボン60の前面側の上端縁と第1上リブ132Aとが接触する。そのため、インクリボン60が第1上リブ132Aを経由する際に、インクリボン60の上端縁が後方に折り曲げられて断面略Uの字状に変形する。さらに、インクリボン60は、上端縁が折り曲げられた状態のまま、リボン巻取スプール44の巻取面44Fに巻き取られる。
つまり、インクリボン60がリボン巻取スプール44に巻き取られる前に、インクリボン60の上端位置が距離L2の上端位置によりも高くならないように、インクリボン60の上端縁が折り曲げられる。言い換えると、インクリボン60の上端位置が、距離L1の上下方向範囲を超えないように規制される。そのため、リボン巻取スプール44に巻き取られたインクリボン60が、上側の支持部44Eに乗り上げることが適切に抑制される。
なお、上方向に蛇行したインクリボン60が第1上リブ132Aと接触した場合、その上端縁が曲率の小さいUの字状となるようにスムーズかつ確実に二つ折りされる。一方、上方向に蛇行したインクリボン60が上側の支持部44Eに接触した場合、その上端縁が支持部44Eの下面に引きずられるように乗り上げるため、曲率の大きいUの字状に屈曲されるか、または、その乗り上げた状態のまま円弧状に屈曲される。つまり、上方向に蛇行したインクリボン60は、第1上リブ132Aと接触して屈曲した場合のほうが、上側の支持部44Eに接触して屈曲した場合よりも、上端縁の屈曲率が小さい(つまり、折り曲げられた上端縁の厚み方向の大きさが小さい)。
図11に示すように、インクリボン60が上側の支持部44Eに接触した状態では、その上端縁が曲率の大きいUの字状または円弧状であるため、インクリボン60の巻取り幅(言い換えると、巻取面44Fに巻回されたインクリボン60部分と、その下層側のインクリボン60部分との間隔幅)が相対的に大きくなる。この状態では、リボン巻取スプール44におけるインクリボン60の巻取径の増加率(言い換えると、インクリボン60が巻取面44Fを周回するごとの増加幅)が相対的に大きい。そのため、リボン巻取スプール44の巻取り動作時には、インクリボン60の巻取径の増加が速くなるため、インクリボン60の巻取り負荷が大きくなるおそれがある。
その点、本実施形態では、インクリボン60の巻取径が大きくなると、上方向に蛇行したインクリボン60が第1上リブ132Aに接触して、その上端縁が曲率の小さいUの字状に二つ折りされる。そのため、インクリボン60の巻取り幅が相対的に小さくなり、ひいてはインクリボン60の巻取径の増加率が相対的に小さくなる。よって、リボン巻取スプール44の巻取り動作時には、インクリボン60の巻取径の増加速度が抑制されるため、インクリボン60の巻取り負荷の増大を抑制できる。
一方、図示しないが、インクリボン60が下方向に蛇行した状態では、インクリボン60の巻取径が所定値以上になると、第1下リブ131Aがインクリボン60の下端縁に前面側から接触する。そのため、インクリボン60が第1下リブ131Aを経由する際に、インクリボン60の下端縁が後方に折り曲げられて断面略Uの字状に変形する。さらに、インクリボン60は、下端縁が折り曲げられた状態のまま、リボン巻取スプール44の巻取面44Fに巻き取られる。
つまり、インクリボン60がリボン巻取スプール44に巻き取られる前に、インクリボン60の下端位置が距離L2の下端位置よりも低くならないように、インクリボン60の下端縁が折り曲げられる。つまり、インクリボン60の下端位置が、距離L1の上下方向範囲を超えないように規制される。そのため、リボン巻取スプール44に巻き取られたインクリボン60が、下側の支持部44Eに乗り上げることが適切に抑制される。
なお、下方向に蛇行したインクリボン60は、上方向に蛇行した場合と同様に、第1下リブ131Aと接触して屈曲した場合のほうが、下側の支持部44Eに接触して屈曲した場合よりも、下端縁の屈曲率が小さい(つまり、折り曲げられた下端縁の厚み方向の大きさが小さい)。よって、リボン巻取スプール44の巻取り動作時には、インクリボン60の巻取径の増加速度が抑制されるため、インクリボン60の巻取り負荷の増大を抑制できる。
このように、インクリボン60が幅方向に蛇行した状態では、インクリボン60の巻取径が所定値以上になると、インクリボン60の幅方向の端部が第1下リブ131Aまたは第1上リブ132Aに接触して折り曲げられる。これにより、インクリボン60がリボン巻取スプール44の巻取り端部に乗り上げることが抑制され、且つインクリボン60の巻取径の増加速度が抑制されるため、インクリボン60の巻取り負荷が小さくなる。ひいては、使用済みのインクリボン60をリボン巻取スプール44に適正に巻き取ることができる。
また、第1下リブ131Aまたは第1上リブ132Aとの距離L3は、巻取面44Fの上下幅(つまり、一対の支持部44E、44E間の距離L1)よりも小さい。そのため、適正な高さ位置から幅方向にズレたインクリボン60の幅方向の端部は、インクリボン60が巻取面44Fの端部(つまり、一対の支持部44E、44E)に接触しないように、第1下リブ131Aまたは第1上リブ132Aに接触して折り曲げられる。したがって、インクリボン60は、適正な高さ位置から幅方向に大きくズレることが抑制され、インクリボン60の巻取径の増加速度が抑制され、且つリボン巻取スプール44の巻取り端部に乗り上げることも抑制される。
また、第1下リブ131Aは、第2下リブ131Bによって下ケース31Bの側壁に接続されている。第1上リブ132Aは、第2上リブ132Bによって上ケース31Aの側壁に接続されている。第2下リブ131Bがない場合、第1下リブ131Aと下ケース31Bの側壁との間に生じる溝にインクリボン60が誤って挿入され、例えばインクリボン60の走行不良等を生じるおそれがある。同様に、第2上リブ132Bがない場合も、第1上リブ132Aと上ケース31Aとの間に溝が生じ、インクリボン60が誤って挿入されるおそれがある。その点、第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aをそれぞれカセットケース31の側壁に接続させることで、このような状態の発生を抑制することができる。
また、第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aは、支持部67によって支持されたリボン巻取スプール44の外周の一部に沿った円弧状である。したがって、インクリボン60がリボン巻取スプール44に巻き取られる前に、適正な高さ位置から幅方向にズレたインクリボン60の幅方向の端部をスムーズ且つ確実に折り曲げることができる。
また、インクリボン60の搬送経路における第1下リブ131Aの上流側に設けられた屈曲部36は、インクリボン60に接触することによって、搬送経路上のインクリボン60にバックテンションを付与する。そのため、インクリボン60の搬送経路を安定させることができ、ひいてはインクリボン60を第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aに向けて正確に案内することができる。
さらに、異常な動作状況(例えば、印字動作時の振動等)が生じた場合、リボン巻取スプール44も幅方向(上下方向)に蛇行することが考えられる。この場合、インクリボン60の巻取径が所定値以上であれば、リボン巻取スプール44の上下方向位置に拘わらず、第1下リブ131Aまたは第1上リブ132Aが設けられた一定の高さ位置で、インクリボン60の端縁が曲率の小さいUの字状に屈曲される。これにより、リボン巻取スプール44上でのインクリボン60の折り曲げ位置を上下方向に分散させることができる。リボン巻取スプール44の巻取り動作時には、インクリボン60の巻取径の増加速度が抑制されるため、インクリボン60の巻取り負荷の増大を抑制できる。
上記実施形態において、テープカセット1が本発明の「リボンカセット」に相当する。開口部67Aが本発明の「上支持部」に相当し、開口部67Bが本発明の「下支持部」に相当する。第1下リブ131Aおよび第1上リブ132Aの少なくとも一方が、本発明の「規制リブ」に相当する。第2下リブ131Bおよび第2上リブ132Bの少なくとも一方が、本発明の「接続リブ」に相当する。屈曲部36が、本発明の「ガイドピン」に相当する。
なお、本発明のテープカセット1は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記実施形態では、ラミネートタイプに実装されたテープカセット1を例示したが、カセットケース内にインクリボンが収容されたリボンカセットであれば、本発明を適用できる。例えば、第2テープスプール41に印字テープが巻回され、リボンスプール42にインクリボン60が巻回された、いわゆるレセプタタイプに実装されたテープカセットに、本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、上ケース31Aおよび下ケース31Bの両方に規制リブ(つまり、第1下リブ131Aおよび第1上リブ132A)を設けているが、上ケース31Aおよび下ケース31Bの少なくとも一方に規制リブが設けられていてもよい。この場合、規制リブの高さ位置は、次のように定義することができる。
すなわち、下ケース31Bのみに規制リブを設ける場合(つまり、第1下リブ131Aのみを設ける場合)、適正な高さ位置で搬送されているインクリボン60の幅方向中心の高さ位置を基準として、第1下リブ131Aまでの距離は巻取面44Fの下端部(つまり、下側の支持部44E)までの距離よりも小さければよい。また、上ケース31Aのみに規制リブを設ける場合(つまり、第1上リブ132Aのみを設ける場合)、適正な高さ位置で搬送されているインクリボン60の幅方向中心の高さ位置を基準として、第1上リブ132Aまでの距離は巻取面44Fの上端部(つまり、上側の支持部44E)までの距離よりも小さければよい。
また、上記実施形態では、バネ固定部80を開口部67Bの後側に設けているが、クラッチバネ72の係止部72Bをインクリボン60から離間して保持可能な位置に、バネ固定部80が設けられればよい。例えば、インクリボン60の搬送経路が開口部67Bの前側に設けられているのに対応して、バネ固定部80を開口部67Bの右後側や左後側に設けてもよい。