本発明のプレート式反応器は、流体の反応原料を反応させるための反応容器と、伝熱管を有し、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートと、前記伝熱管に熱媒を供給する熱媒供給装置と、通気性を有し、各区画の端部に着脱自在に固定され、各区画に収容された触媒を保持するように各区画の端部を塞ぐ複数の通気栓と、を有する。本発明のプレート式反応器は、隣り合う伝熱プレート間の隙間を、反応容器内の通気方向に沿って、充填された触媒を収容する複数の区画に仕切る仕切りをさらに有してもよい。
本発明において、前記反応原料は流体である。また、反応原料の反応によって得られる反応生成物も流体である。反応原料及び反応生成物は、触媒を含む充填物が前記区画に充填されてなる触媒層を流通する流動性を有する。このような反応原料及び反応生成物の状態としては、液体、気体、及びこれらの両方を含む状態が挙げられる。
また本発明において、区画とは、前記各隙間において、充填される触媒が流動して行き渡る部分を言う。前記仕切りを有さないプレート式反応器では、区画は前記隙間を意味し、前記仕切りを有するプレート式反応器では、区画は仕切りと伝熱プレートとで区切られる部分を意味する。ただし、仕切りを有するプレート式反応器のうち、一部の隙間にのみ仕切りを有するプレート式反応器では、区画は、仕切りと伝熱プレートとで区切られる部分と、仕切りが設けられていない前記隙間との両方を意味することがある。
さらに、本発明において、通気とは、反応原料や反応生成物の状態の一つである気体が通ることを意味するが、反応原料や反応生成物の状態が気体以外の流体(例えば液体)である場合では、この流体が通ることをも意味する。
前記反応容器には、反応容器における通気方向に並列する複数の伝熱プレートと、隣り合う伝熱プレート間の隙間に触媒が充填されてなる、反応容器における通気方向に並列する複数の触媒層とが形成される。反応容器には、例えば、通気方向に対する横断面の形状が矩形であるケーシングや、前記横断面の形状が円形であるシェルが用いられる。
前記反応容器は、供給された流体が隣り合う伝熱プレート間の隙間を通って排出される容器であり、通常、一対の通気口を有する。前記一対の通気口は、一方が反応容器に供給される反応原料の供給口となり、他方が反応容器で生成した反応生成物の排出口となる。通気口の形態は、反応容器への流体の供給と反応容器からの流体の排出とが行われる形状であれば特に限定されない。一対の通気口は、対向して設けられていることが好ましい。このような通気口としては、例えば、ケーシングやシェルの両端に設けられる一対の通気口や、シェルの中心軸を含む中心部とシェルの内周部とにそれぞれ円筒状に形成され、シェルの横断面において放射状に流体を通気させる一対の通気口が挙げられる。
前記伝熱プレートは、断面形状における周縁又は端縁で一方向に連結している複数の伝熱管を含む板状に形成される。
このような伝熱プレートは、特許文献1に開示されているように、円弧、楕円弧、多角形等のパターンが連続して形成された二枚の波板を、両波板のパターンの端に形成される凸縁で互いに接合することによって形成することができる。又は伝熱プレートは、複数の前記伝熱管を周縁又は端縁で連結して形成することができる、又は伝熱プレートは、複数の前記伝熱管を反応容器において周縁又は端縁で接するように積み重ねて形成することができる。
伝熱プレートの形状は、反応容器の形状や大きさに応じて決められるが、一般に矩形である。また伝熱プレートの大きさは、反応容器の形状や大きさに応じて決められるが、例えば矩形の伝熱プレートである場合には、縦(すなわち伝熱管の連結高さ)が0.5〜3mであり、横(すなわち伝熱管の長さ)が0.5〜10mである。
反応容器において隣り合う伝熱プレートは、伝熱プレートの表面の凸縁が互いに対向するように並べられてもよいし、一方の伝熱プレートの表面の凸縁が他方の伝熱プレートの表面の凹縁に対向するように並べられてもよい。隣り合う伝熱プレート間の距離は、伝熱管の横断方向において伝熱プレート間に3〜40mmの幅の隙間が形成されるように、各伝熱プレートにおける伝熱管の長軸間の距離の平均値で、10〜50mm(隣り合う伝熱プレートにおける伝熱管の幅の半値の和の1.1〜2倍)の範囲で設定することができる。
伝熱プレートにおける伝熱管は、反応容器内の通気方向に対して直交する方向に延出するように形成されていること、すなわち伝熱管を流れる熱媒の方向が反応容器内の通気方向に対して直交する方向であること、が、伝熱管中の熱媒の温度の調整によって反応原料の反応を制御する観点から好ましい。
前記伝熱管は、伝熱管内の熱媒と伝熱管に外接する触媒層との間で熱が交換される伝熱性を有する材料で形成される。このような材料としては、例えばステンレス及び銅が挙げられる。伝熱管の断面形状は、円形でもよいし、楕円形やラグビーボール型等の略円形でもよいし、矩形等の多角形でもよい。伝熱管の断面形状における周縁とは、円形における
周縁を意味し、伝熱管の断面形状における端縁とは、略円形における長軸端の縁や、多角形における一角の縁を意味する。
一枚の伝熱プレート中の複数の伝熱管のそれぞれにおける断面の形状及び大きさは、一定であってもよいし異なっていてもよい。伝熱管の断面形状の大きさは、例えば伝熱管の幅が5〜50mmであり、伝熱管の高さが10〜100mmである。
前記熱媒供給装置は、前記伝熱管に熱媒を供給する装置であればよい。このような熱媒供給装置としては、例えば、複数の伝熱管の全てに一方向に熱媒を供給する装置や、複数の伝熱管の一部に一方向に熱媒を供給し、複数の伝熱管の他の一部には逆方向に熱媒を供給する装置が挙げられる。熱媒供給装置は、前記伝熱管を介して反応管内外で熱媒を循環させる装置であることが好ましい。前記熱媒供給装置は、熱媒の温度を調整する装置を有することが、反応容器における反応を制御する観点から好ましい。
前記仕切りは、隣り合う伝熱プレート間の隙間に、反応容器内の通気方向に沿って設けられ、前記隙間に複数の区画を形成する。前記仕切りは、各区画に触媒が充填されたときに、各区画に触媒を保持することができる部材であればよい。前記仕切りは、伝熱プレートと同じ材料で形成されることが好ましく、伝熱性を有することが好ましく、反応容器における反応原料及び反応生成物に対する反応性を有さないことが好ましく、反応容器における反応が発熱反応である場合には耐熱性を有することが好ましい。また前記仕切りは、各区画内に充填された触媒を保持する観点から、剛性を有することが好ましい。このような仕切りとしては、例えば、ステンレス製の板、角棒、丸棒、網、グラスウール、及びセラミック板が挙げられる。
さらに前記仕切りは、それぞれの伝熱管の外壁の表面に接する形状であることが、各区画内に充填された触媒を保持する観点から好ましく、伝熱管の外壁の表面に密着する形状であることがより好ましい。また前記仕切りは、正面図が隣り合う伝熱プレート間の最短距離の幅を有する四角形となる形状であることが、仕切りを容易に設置する観点から好ましい。
前記仕切りは、仕切りによって形成される区画の容積が、一区画への触媒の充填を正確かつ容易に行うことができる観点から、1〜100Lとなる間隔で設けられることが好ましい。仕切りによって形成される区画のそれぞれの容積は、同一であってもよいし異なっていてもよいが、全区画への触媒の正確かつ容易な充填の観点から同一であることが好ましい。前記一区画の容積は、1.5〜30Lであることがより好ましく、2〜25Lであることがさらに好ましく、2〜15Lであることがさらに一層好ましい。また、仕切り間の距離は、同様の観点から0.1〜2mであることが好ましい。
前記仕切りは、仕切りの性状に応じて適宜に伝熱プレート間の隙間に設けることができる。例えば可撓性を有する仕切りや、伝熱プレート間の最短距離の幅を有する形状の仕切りは、予め反応容器に設置されている複数の伝熱プレートにおける隣り合う伝熱プレート間の隙間に挿入することによって伝熱プレート間の隙間に設けることができる。また、伝熱プレートの表面に密着する形状の仕切りは、反応容器に伝熱プレートを設置する際に、伝熱プレートと仕切りとを交互に設置することによって伝熱プレート間の隙間に設けることができる。
前記通気栓は、各区画の通気性と触媒の保持とを両立する部材であって、各区画の通気方向における端部に着脱自在に固定される部材である。通気栓は、各区画からの触媒の漏れを防止することが可能であれば、各区画における通気方向の上流側の端部に設けてもよいし、下流側の端部に設けてもよいし、両端部に設けてもよい。また通気栓は、全体が通
気性を有していてもよいし、各区画の通気方向に対してのみ通気性を有していてもよい。
前記通気栓は、各区画における通気性を確保する観点から、各区画の通気方向に対する開口率が10%以上であることが好ましい。前記開口率は、さらに、通気栓を区画の端部に固定したときの圧力損失の発生を防止する観点から、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
また前記通気栓は、各区画に触媒を保持する観点から、各区画の通気方向に対する孔径が5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
前記通気栓は、通気性を有する一以上の部材によって構成することができる。前記通気栓としては、例えば、板状の網や多孔板等の通気板;この通気板を筒状に成形した形状の通気筒;前記通気板と、その周縁の一部又は全部に通気板に対して垂直に設けられるスカート部とを有する部材;及び、断面形状が円形又は矩形の第一の通気筒と、第一の通気筒の内側に収容され、かつ摺動自在な第二の通気筒とを有する通気性二重管;が挙げられる。前記通気筒、スカート部を有する部材、及び通気性二重管は、触媒を保持するための十分な強度を得る観点から好ましい。前記スカート部を有する部材は、各区画の端部における着脱を容易に行う観点からさらに好ましい。
前記スカート部を有する部材において、前記通気板は、各区画からの触媒の漏れを防止する観点から、各区画の断面形状と同じ形状であることが好ましい。前記スカート部は、通気板の周縁の一部に、例えば各区画において対向する仕切り又は伝熱プレートに接する一対のスカート部として設けられることが、通気栓の着脱自在な固定を容易に行う観点から好ましく、通気板の周縁の全部に設けられることが、通気栓の強度を高める観点から好ましい。また、スカート部は、通気板の両面側に突出するように設けられてもよいし、通気板の片面側のみに突出するように設けられてもよい。
前記通気栓は、各区画の端部において着脱自在に固定される。着脱自在に固定するための構成は、通気栓の固定及び取り外しを容易に行う観点、及び触媒を保持するのに十分な強度で通気栓を固定する観点から、区画側、すなわち伝熱プレート及び仕切りの一方又は両方に設けられる第一の係止部と、この第一の係止部と着脱自在に係止する、通気栓に設けられる第二の係止部とであることが好ましい。第一及び第二の係止部としては、例えば孔とこの孔に進出する方向に付勢されている爪、及び、孔とボルト及びナット、等が挙げられる。第一及び第二の係止部は、反応容器の温度が比較的高い場合での焼き付きを防止する観点から、前記の孔と爪のような簡易な構成であることが好ましい。
前記通気栓は、触媒の保持に十分な剛性を有する材料で形成される。このような材料としては、例えばステンレス等の金属及びセラミックが挙げられる。通気栓は、耐熱性や耐反応性の観点から、伝熱プレートと同じ材料で形成されることが好ましい。
前記区画へ充填される触媒には、気相反応で管又は伝熱プレート間の隙間に充填される通常の粒状の触媒を用いることができる。触媒は一種でも二種以上でもよい。このような触媒としては、例えば粒径(最長径)が1〜20mmであり、比重が0.7〜1.5である触媒が挙げられる。また触媒の形状としては、例えば球状、円柱状、ラシヒリング状が挙げられる。触媒の形状は、前記仕切りが伝熱プレートの表面に密着しない形状に形成されている場合では、仕切りと伝熱プレートとの隙間の最大値の1.2〜2倍の最小径を有する形状であることが、前記区画からの触媒の漏れを防止する観点から好ましい。
各区画には、一区画の容量と同量の触媒を一区画に連続して又は断続的に充填すること
によって、触媒を充填することができる。触媒の適切な充填状態は、例えば区画間における充填された触媒(触媒層)の天面の位置の対比や、各区画における前記天面の実測値のバラつきや分布状態を分析し異常区画を摘出したり、各区画の前記天面の計算値との比較によって判断することができる。
また各区画に充填された触媒は、通気栓を取り外して区画の端部から触媒を取り出すことによって、区画単位で抜き出すことができる。
本発明のプレート式反応器は、前述した構成要素以外の他の構成要素をさらに有していてもよい。このような他の構成要素としては、例えば、前記仕切りを固定するための仕切り用係止部が挙げられる。
以下、本発明のプレート式反応器を、図面を用いてより具体的に説明する。
本発明のプレート式反応器は、例えば図1〜3に示すように、矩形のケーシング1と、伝熱管2を有し、ケーシング1内に対向して並んで設けられる複数の伝熱プレート3と、伝熱管2に供給される熱媒を収容する熱媒収容部4と、隣り合う伝熱プレート3間の隙間をケーシング1内の通気方向に沿って、触媒が充填され保持される複数の区画に仕切る複数の仕切り5と、通気性を有し各区画の下端部を塞ぐ複数の通気栓6と、伝熱プレート3の上部に設けられる穴あき板7と、熱媒収容部4の熱媒を循環させるためのポンプ8と、循環する熱媒の温度を調整するための温度調整装置9とを有する。
ケーシング1は、断面形状が矩形の通気路を形成しており、前記反応容器に相当する。ケーシング1は、ケーシング1の上端及び下端に、対向する一対の通気口10、10'を有しており、通気口10を含むケーシング端部11と、通気口10'を含むケーシング端部11'と、伝熱プレート3が収容されるケーシング本体とから構成されている。ケーシング端部11、11'は、ケーシング本体に対して着脱自在にそれぞれ接続されている。伝熱管2は、例えば長径が10〜100mmであり短径が5〜50mmの断面形状が楕円形の管である。
伝熱プレート3は、複数の伝熱管2が断面形状の端縁で連結した形状を有している。伝熱プレート3は、楕円弧が連続して形成された二枚の波板を両波板の弧の端に形成される凸縁で互いに接合することによって形成されている。隣り合う伝熱プレート3は、表面の凸縁同士が対向するように並列していてもよいが、図1のプレート式反応器では、一方の伝熱プレート3の表面の凸縁と、他方の伝熱プレート3の表面の凹縁とが対向するように並列している。
伝熱プレート3は、例えば図4に示すように、断面の大きさが異なる三種の伝熱管2a〜2cを上部、中部、及び下部のそれぞれにおいて含んでいる。伝熱プレート3は、伝熱管2a〜2cの長軸が一直線上に配置されるように形成されている。また例えば、伝熱管2aは、伝熱プレート3の高さの30%分の伝熱プレート3を形成し、伝熱管2bは伝熱プレート3の高さの20%分の伝熱プレート3を形成し、伝熱管2cは伝熱プレート3の高さの40%分の伝熱プレート3を形成している。伝熱プレート3の高さの10%分は、伝熱プレート3の上端部及び下端部の接合板部で形成されている。
伝熱プレート3の上部に形成されている伝熱管2aの断面形状は、長径が50mmであり、短径が20mmの楕円形であり、伝熱プレート3の中部に形成されている伝熱管2bの断面形状は、長径が40mmであり、短径が16mmの楕円形であり、伝熱プレート3の下部に形成されている伝熱管2cの断面形状は、長径が30mmであり、短径が10mmの楕円形である。
なお、伝熱プレート3は、反応容器全体において異なる間隔で並列していてもよいが、図1のプレート式反応器では、同じ間隔(例えば伝熱管2aの外壁間の最短距離が14mm(各伝熱プレート3の伝熱管の長軸間の距離が30mm))で並列している。
熱媒収容部4は、ケーシング1の対向する一対の壁に設けられる容器であり、各伝熱管2に熱媒を供給するための供給口が前記壁に形成されており、例えば反応容器全体において、熱媒が伝熱管2を介して熱媒収容部4間を蛇行するように、所定の高さにおいて複数に区切られている。
仕切り5は、隣り合う伝熱プレート3の間を、ケーシング1内の通気方向に沿って設けられている。仕切り5は、反応容器全体において異なる間隔で設けられていてもよいが、図1のプレート式反応器では、同じ間隔(例えば1,000mm)で並列し、22Lの容積の区画を形成している。例えば仕切り5は、図5に示すような、伝熱プレート3の表面の凹凸に密着する側縁を有する形状のステンレス製の板であり、下端部に窓12を有している。
通気栓6は、図6に示すように、各区画の下端部に設けられる。通気栓6は、例えば図7に示すように、各区画の断面形状の同じ矩形の通気板13と、通気板13の短辺から下方に垂設される第一のスカート部14と、通気板13の長辺から下方に垂設される第二のスカート部15とを有している。第一のスカート部14には、図7に示すように、矩形の係止窓16と、その隣に併設される係止爪17とが形成されている。
通気栓6は、図8に示すように、通気板13と各スカート部14及び15とを展開した形状であって、スカート部14には係止窓16と係止爪17となる切り込みとが形成されているステンレス製の板を、通気板13と各スカート部14、15との境界で折り曲げ、各スカート部の縁を溶接することによって形成されている。通気板13は例えば2mmの円形の孔が開口率30%で形成された板である。
第一のスカート部14において、係止爪17は、第一のスカート部14の下端縁からの平行な二本の切り込みを外側に凸に折り曲げて形成されている。それぞれの第一のスカート部14において、係止窓16及び係止爪17は、通気板13に対する位置関係がそれぞれにおいて同じに設けられている。したがって、対向する一対の第一のスカート部14において、一方の係止窓16と他方の係止爪17とが対向し、一方の係止爪17と他方の係止窓16とが対向している。なお、係止窓16は、係止爪17を収容する幅と高さを有する大きさで形成されており、仕切り5の窓12は、係止窓16と係止爪17とが同時に含まれる幅及び高さを有する大きさで形成されている。
通気栓6は、各区画の下端から通気板13を上に各区画に挿入される。このとき係止爪17は、外側への付勢に抗して仕切り5に押さえられるが、窓12に到達したときに、図9に示すように、仕切り5の押さえつけから開放されて窓12に向けて進出し、窓12に係止する。窓12は第一係止部に相当し、係止爪17は第二の係止部に相当している。
穴あき板7は、充填される触媒の最長径に対して0.2〜0.8倍の径を有する孔が20〜99%の開口率で設けられている板である。図1のプレート式反応器では、穴あき板7は、最も外側に配置される伝熱プレート3とケーシング1の壁との間の隙間への通気を防止するために、図3に示すように、最も外側に配置されている伝熱プレート3の端縁からケーシング1の壁までの隙間を塞ぐように形成されている。
ポンプ8には、所望の温度の熱媒を移送することができる装置が用いられる。また、温度調整装置9には、熱媒の温度を所望の温度に制御することができる熱交換器等の装置が
用いられる。熱媒収容部4、ポンプ8、及び温度調整装置9は熱媒供給装置を構成している。
伝熱プレート3間への触媒の充填は、各区画へ触媒の充填することによって行われる。伝熱プレート3と仕切り5とによって形成されている区画は全て同じ容積を有していることから、一区画の容量と同等の容量(例えば一区画の容量に対して97〜103%の体積)の触媒が各区画に充填される。
一区画に充填される容積の触媒は、予め測定し小分けして、ビニールなどの袋詰めにしておくと都合がよい。触媒などの粉粒体の容量は正確な測定が困難なことが多いので、予め充填されたときの嵩密度を決定し、触媒の重量を測定して小分けすることもできる。この際には、袋一つ当たりの触媒の重量が小分け袋の取り扱い易さを左右することが多く、一袋当たりの触媒の重量は、例えば100kg以下であることが好ましく、10〜50kgであることより好ましい。
触媒の良好な充填状態は、触媒の充填高さの理論値と実測値との比較(例えば理論値に対する実測値の誤差が10%以内)や、各区画間での触媒の充填高さの比較(例えば各区画間の充填高さの差が充填高さの5%以内)によって判断することができる。
一区画における触媒の充填状態が不良であった場合には、その区画の通気栓6が外され、その区画の下端からその区画に充填された触媒のみが抜き出される。仕切り5の窓12は、通気栓6が固定されるときに係止窓16と係止爪17とを含む大きさに形成されていることから、窓12は、仕切り5を介して隣り合う二つの通気栓6の係止窓16及び係止爪17に対して開口している。さらに、係止窓16は係止爪17を含む大きさに形成されていることから、仕切り5を介して隣り合う二つの通気栓6における一方の係止窓16は他方の係止爪17に対して開口し、他方の係止窓16は一方の係止爪17に対して開口している。このように、係止している係止爪17は、通気板13の下側の空間に対して、隣の通気栓6によって遮られないことから、通気板13の下側の空間において、係止爪17を直接押すことができる。したがって通気栓6は、例えば図10に示すような、係止窓16に挿入可能な鉤を先端に有する工具を用い、仕切り5を介して隣り合う通気栓6の係止窓16及び仕切り5の窓12を通して、前記の鉤で係止爪17を押し、係止爪17と窓12との係止を解除することによって外すことができる。
触媒を抜き出したら再び通気栓6をその区画の下端から挿入して固定し、その区画に触媒を充填することにより、各区画における触媒の充填をやり直すことができる。
前記プレート式反応器は、仕切り5を有することから、区画単位で触媒を一定の状態で充填することによって、触媒を反応器全体で均一に充填することができる。したがって、このような区画が形成されない伝熱プレート3間への触媒の充填に比べて、触媒の正確な充填をより容易に行うことができる。
また前記プレート式反応器は、伝熱プレート3と仕切り5とによって形成される全区画が同じ容量を有することから、一回の触媒の充填作業に用いられる触媒が一定である。したがって、このような区画が形成されない伝熱プレート3間への触媒の充填に比べて、触媒の充填作業をより迅速に行うことができる。
さらに前記プレート式反応器は、仕切り5を有することから、触媒の充填状態を区画単位で判断することができる。したがって、触媒の充填状態が不良である場合には、不良と判断された区画の触媒のみを充填し直すことによって、触媒の充填状態を修正することができる。したがって、このような区画が形成されない伝熱プレート3間への触媒の充填に
比べて、触媒の充填作業の調整をより容易に行うことができる。
また前記プレート式反応器は、通気栓6を有することから、区画単位で触媒を容易に抜き出すことができる。したがって、触媒の充填状態が不良である場合には、不良と判断された区画の通気栓を取り外して触媒を区画から抜き出し、その区画へ触媒を充填し直すことによって、特定の区画の触媒の充填状態を容易に修正することができる。したがって、このような区画が形成されない伝熱プレート3間への触媒の充填に比べて、触媒の充填作業の調整をより一層容易に行うことができる。
また通気栓6は、矩形の通気板13と第一及び第二のスカート部14、15とを有することから、各区画の触媒層を支える十分な強度を得る観点で優れている。また、通気栓6は、鋼板の打ち抜き、折り曲げ、及び溶接によって得られることから、このような優れた通気栓6を容易に得ることができる。
また通気栓6は、対向する一対の第一のスカート部14のそれぞれに係止窓16と係止爪17とを有し、対向する一対の第一のスカート部14において、一方の係止窓16と他方の係止爪17とが対向し、一方の係止爪17と他方の係止窓16とが対向することから、仕切り5を介して隣り合う通気栓6において、それぞれの通気栓6から突出する係止爪17が重なり又は当接することがなく、通気栓6を十分な強度で固定し、また通気栓6の取り外しを容易に行う観点において優れている。
さらに仕切り5の窓12が、通気栓6が固定されるときに係止窓16と係止爪17とを含む大きさに形成されていることから、仕切り5に接する二つの通気栓6のいずれの係止爪17とも着脱自在に係止する。このように前記プレート式反応器は、単一の規格の窓12を有する仕切り5が設けられることから、通気栓6の着脱自在な構成を安価に構成する観点において優れている。
また前記プレート式反応器は、通気板13の下方で係止爪17と窓12との係止という接触面積の小さな接触によって通気栓6が固定されることから、酸化反応のような比較的高温の条件の反応に用いられたときの係止爪17と窓12との焼き付きを防止する観点から優れている。
なお、前記プレート式反応器では、第二の係止部としての窓12を仕切り5に設けているが、このような第二の係止部を伝熱プレート5の下端部に設けても、図1のプレート式反応器と同様に通気栓6を設けることができる。さらには第二の係止部を仕切り5の下端部と伝熱プレート5の下端部の両方に設けてもよく、この場合では通気栓の固定強度を高める観点から効果的である。
また仕切りには、例えば、第二の係止部の種類や設置場所、仕切りと伝熱プレートとの間に生じる隙間の大きさ、伝熱プレート間の距離に応じて種々の仕切りを用いることができる。このような仕切りとしては、例えば図11及び12に示すように、伝熱プレート3の表面の凹凸に密着する側縁を有する形状の網、隣り合う伝熱プレート3間の最短距離の直径又は幅を有する板や図13及び14に示すような丸棒や角棒、図15に示すように、仕切り5の側縁が、伝熱プレート3の凹縁に向けて突出し、伝熱プレート3の凸縁から離間するジグザグ型の板や網、及び、グラスウール等の保形性を有さない材料による部材が挙げられる。
図11及び12に示すような仕切りは、この仕切りに用いられている網が、触媒が漏れ出ない程度の大きさの目(例えば触媒の最長径の0.5倍以下)を有する場合に好適に用いることができる。仕切りに用いる網の目の大きさは、触媒の最小径の0.8倍以下の目
開きであることが好ましい。
また、図13及び14に示すような仕切りは、伝熱プレートと仕切りとの間に、触媒が漏れ出るほどの幅の隙間が形成されない場合に、好適に用いることができる。また、図15に示すような仕切りは、一方の凸縁に他方の凹縁が対向するように並列する二枚の伝熱プレート3の距離(各伝熱プレート3における伝熱管2の長軸間の距離の平均値)が、各伝熱プレート3における伝熱管の最大の短径の半値の和の0.9〜1.5倍であるときに、好適に用いることができる。
仕切りには、例えば第二の係止部を仕切りに設けない場合では、前述のいずれの仕切りをも用いることができる。また例えば第二の係止部が窓である場合には、通気栓を支えることが可能な窓を設けることができる板状の部材を用いることができる。また例えば第二の係止部が窓である場合には、仕切りには、前記窓として用いられる十分な大きさの目を有する網状の部材を用いることができる。
図5、11、12、及び15に示すような、伝熱プレートの表面の凹凸に接する側縁を有する形状の仕切りは、伝熱プレートをケーシングに設置する際に、伝熱プレートとそれに当接する仕切りとを交互に設置することによって二枚の伝熱プレート間に設けられる。図13及び14に示すような、隣り合う伝熱プレート間の最短距離の直径又は幅を有する仕切りは、伝熱プレートとそれに当接する仕切りとを交互に設置することによって二枚の伝熱プレート間に設けてもよいし、既に併設されている伝熱プレートの隣り合う伝熱プレートの間に挿入することによって設けてもよい。網や布、又は薄い鋼板のように可撓性を有する仕切りは、既に併設されている伝熱プレートの隣り合う伝熱プレートの間に挿入することによって設けることも可能である。
なお、仕切りは、通気栓6の孔又は伝熱プレート3の端部に設けられた孔や輪のようなさらなる係止部に掛かるフックを有し、このフックを係止部に係止することによって仕切りを張設することによって、隣り合う伝熱プレート3間の隙間に設けることも可能である。このような構成は、グラスウール等の保形性を有さない材料を仕切りに用いる観点から好ましい。
また、前記プレート式反応器における通気栓6には、図16に示すように、係止爪17に代えて、先端が窓12の下端面に接する係止爪18を有する通気栓を用いることもできる。このような通気栓は、通気栓を各区画に強く固定する観点においてより一層優れている。また係止爪18を有する通気栓は、プレート式反応器の長期の使用の際にも通気栓が落下して触媒が伝熱プレート間の隙間から脱落するのを防ぐ観点からも有効である。
また通気栓には、窓12と係止爪17のような適切な着脱自在構造を有すれば、様々な形態の通気栓を用いることができる。このような通気栓としては、例えば図17に示すような網又は通気板で形成される円筒、図18に示すような通気孔を有する板、図19及び20に示すような通気板又は網を一対のスカート部で支持する形状の部材、図21及び図22に示すような表面が網で構成される箱状の部材が挙げられる。
さらにこのような形態に基づく他の形態の通気栓には、図23に示すような、各区画の通気方向に対して通気性を有する第一の通気管19と、各区画の通気方向に対して通気性を有し、第一の通気管19の内部を摺動自在な第二の通気管20とを有する二重管構造の通気栓が挙げられる。このような通気栓を用いる場合には、例えば仕切り5には、仕切り5の下端部の表面から突出するフランジ部21を設け、両端の仕切り5に接するまで通気栓を伸ばしてフランジ部21に載せ、通気栓の摺動方向への伸縮を固定ピン22によって固定することによって、前記通気栓が各区画の下部に設置される。
固定ピン22は、例えば、固定軸と、その一端に設けられる輪と、その他端に、固定軸の延出方向に対して直交する方向に設けられる可撓性を有する金属薄板とから構成される。固定ピン22を通気栓の下面の通気孔から挿入すると、通気孔の通過時には金属薄板が撓み、通気孔を通過した後には金属薄板の撓みが解除されて、固定ピン22が通気栓から吊り下がっている状態が形成される。また、固定ピン22の輪を引くことにより、金属薄板が撓みながら通気孔を通過することで固定ピン22が引き抜かれ、さらに第二の通気管20を摺動させることによって、伝熱プレートの下方から前記通気栓を取り外すことができる。
又は、前記他の形態の通気栓には、図24に示すような、第一の通気管19、第二の通気管20、及び第二の通気管20を第一の通気管19から突出する方向に付勢するコイルばねのような付勢部材23とを有する通気栓が挙げられる。この通気栓も、フランジ部21を有する仕切り5によって各区画の下部に設置される。この通気栓は、付勢部材23の付勢に抗して通気栓を縮めてフランジ部21の上に載せることによって、各区画の下部に設置される。また、付勢部材23の付勢に抗して通気栓を縮めることによって、伝熱プレートの下方から前記通気栓を取り外すことができる。固定ピン22及び第二の通気管20の摺動は、固定ピン22の輪又は第二の通気管20の下部の通気孔に、図10に示す工具の鉤を掛けて行うことができる。
又は、通気栓には、図25に示すような、通気板24と、対向する伝熱プレート3の間に張設されて通気板24を下方から支持する係止バネ25とを有する通気栓が挙げられる。伝熱プレート3の下端部には、通気板24が設けられるべき位置に応じて複数対の係止穴26が設けられている。通気板24は、例えば図18に示される、通気孔を有する板状の通気部材である。
係止バネ25は、対向する伝熱プレートの下端部に挿入されたときに対向する伝熱プレート3の表面を押す方向に付勢するバネ本体27と、バネ本体27の付勢方向においてバネ本体27から突出し、係止穴26に挿入する突起28とを有している。係止穴26は用いられる係止バネ25に応じて設けられる。係止バネ25は、通気部材一体当たり2〜10個設けられることが好ましい。
この通気栓は、例えば、ペンチのような汎用の工具を用いてバネ本体27の付勢に抗して係止バネ25を縮めて突起28を係止穴26に挿入して複数の係止バネ25を前記区画の下端部に配置し、配置された係止バネ25の上に通気板24を載せることによって形成することができる。また、この通気栓は、例えば、バネ本体27の付勢に抗して係止バネ26を縮めることによって、前記区画から外すことができる。
この形態は、仕切りの間隔にとらわれずに係止穴26と係止バネ25の位置を調整し、通気栓の材質や形状に関わらず、通気栓の係止位置の点数を増加することが可能であり、更には、仕切りがない場合にも通気栓を設置することが可能である。仕切りがない場合としては、例えば、伝熱プレートの伝熱管方向の長さが2m以下であり、仕切りを設置する必要がない場合、及び、仕切りや通気栓の材質や形状が、高温の反応条件下での長期の使用によって変形して通気栓や仕切りの下部が変形する懸念がある場合、が挙げられる。
この形態において、充填層を支持するための通気部材には、通気板24の他に、図17〜22に示すような各種の通気部材やその変形例を用いることができる。例えば前記通気部材には、図26に示すように、通気板の長手方向の縁に切り欠き部を有する通気板29が挙げられる。伝熱プレートの端部の係止穴に係止バネの突起を挿入して通気部材を支持するとき、突起は第一の隙間から係止穴を通して、隣接する第二の隙間にまで進出するこ
とがある。通気板29は、第一の隙間から進出する突起に対応する位置に切り欠き部を有することから、第二の隙間の通気部材として用いることによって、第一の隙間から進出する突起が第二の隙間に設置されるべき通気部材の設置の邪魔になることを防止することができる。
また、前記通気部材には、例えば図27に示すように、通気板の長手方向の断面において一表面側に突出する折り目を有する通気板30が挙げられる。通気板30では、通気板30の上部に充填された触媒の重量により、前記折り目が伸びて通気板30が伝熱プレートに沿って伸張する。このため、通気板30の長手方向の両端と伝熱管の軸方向における前記区画を両端との間に隙間が形成される場合においても、この隙間を塞ぐことができる。通気栓の装着において仕切りの端部に係止しないときに、伝熱プレートの伝熱管方向の端部や仕切り端部との間に隙間ができ、該間隙から触媒が落下することを防止することができる。さらに通気板30は、折り目を有することから、熱による伸縮が可能であり、特に高温の反応条件下において、反応時における充填物の漏れを防止し、反応停止時には冷えて独立して縮み、伝熱プレート下端部における歪みの発生を抑制することができる。
前記折り目は、前述したような若干の伸縮を生じさせればよいことから、通気板一枚当たりの折り目による突出高さの総和が1〜6cm程度であることが好ましく、折り目一つ当たりの突出高さが0.5〜2cm程度であることが好ましい。
係止バネ25には、種々の形態を用いることができる。このような形態としては、例えば図28〜図32に示す形態が挙げられる。バネ本体27は、前記隙間に充填物が充填されたときに、通気栓が前記区画から脱落するのを、前記区画に設けられる全ての係止バネ25によって防止することができる程度の反発力を有していれば、その形態は特に限定されない。また、突起28は、前記の脱落が防止されるように係止穴26に挿入される形態であれば特に限定されず、バネ本体27に取り付けられる部材や、バネ本体27の先端によって構成することができる。
なお、係止バネ25は、前述したように通気部材の支持に用いられるが、仕切りや伝熱プレートへの係止構造を有する通気栓を補助的に支持するために、伝熱プレートの下端部に係止穴26を設け、通気部材の支持に用いられるように前記係止構造を有する通気栓を支持するように設けることもできる。
本発明のプレート式反応器は、固定床接触反応に適用され、このような反応の中でも特に、高い反応熱のために触媒が劣化したり、反応成績が低下することがある反応に適用される。特に本発明のプレート式反応器は、反応原料がガスでも液でも適用可能であるが、液状態ある場合に比べて除熱のしにくいガスである場合に好適に用いることができる。
例えば、本発明のプレート式反応器が有効に適用される反応には、前記原料が、エチレン;炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種;炭素数4以上の炭化水素(例えばn−ブタンやベンゼン);キシレン及びナフタレンの一方又は両方;オレフィン;カルボニル化合物;クメンハイドロパーオキサイド;ブテン;又はエチルベンゼン;であり、得られる前記反応生成物が、酸化エチレン;炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方;マレイン酸;フタル酸;パラフィン;アルコール;アセトン及びフェノール;ブタジエン;又はスチレン;である反応が挙げられる。
特に好ましくは、ホットスポットが発生しやすいことが知られている、気相接触酸化反応に適用される。このような反応としては、例えば、反応原料が、炭素数3及び4の炭化
水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料の少なくとも1種、又は、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料の少なくとも1種、である反応が挙げられる。
具体的には、上記炭素数3の炭化水素としては、プロピレン、プロパンが挙げられる。上記炭素数4の炭化水素としては、イソブチレン、ブテン類、ブタン類が挙げられる。また、上記炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレインが挙げられ、炭素数3及び4の不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
前記の反応生成物の製造において、充填物の種類、充填層の温度、及び原料の供給量等の諸条件は、例えば、多管式反応器やプレート式反応器を用いる前記反応生成物の公知の製造方法における条件の採用、コンピュータによるシミュレーション等による計算、又は、公知の条件や計算値に基づく実験による条件の検討、によって決めることができる。
次に実施例を用いて、具体的に説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
プレート式反応器として、充填テスト用に図4に示す構成を有するプレート式反応器を製作した。伝熱プレートにおける伝熱管の軸方向の長さ(伝熱プレートの幅)が5mである6枚の伝熱プレートを並列し、伝熱プレートの下部には図19に示す通気栓を設置した。この通気栓からの伝熱プレートの軸方向の高さは、1.88mで、伝熱プレートの上端部における伝熱管の無い直線部の高さは150mmであった。並列して配置したときの伝熱プレートの直線部間の距離は24mmであった。
伝熱プレートは、下記の表1に示す仕様の伝熱管が形成されるように、断面に連続する波型が形成されるように二枚の鋼板を成形し、成形された鋼板の凸縁同士を接合して形成した。前記鋼板には、板厚が1mmのステンレス(SUS304L)製鋼板を用いた。
仕切りは、50cm間隔で前記隙間に設けた。仕切りには、図5に示す形状の仕切りを用い、仕切りの板厚は5mmであった。
使用した触媒は、Mo(12)Bi(5)Co(3)Ni(2)Fe(0.4)Na(0.4)B(0.2)K(0.08)Si(24)O(x)の組成の複合金属酸化物粉末を調製し、これを成型して外径4mmφ、高さ3mmの円柱状に成形し、焼成したものである。ここで、Mo、Bi、Co、Ni、Fe、Na、B、K、Si、Oは原子記号であ
り、O(x)の(x)は各金属酸化物の酸化状態によって定まる値である。
触媒の充填方法は、仕切り板間隔50cmと同じ幅を有する振動フィーダを用いて行った。触媒を11.6リットル計量し、それぞれビニール袋に小分けしたもの55袋を準備し、フィーダで各区画に充填した。充填速度1L(リットル)毎分以下(約0.8〜0.9L/分)の目安で、触媒を供給した。充填高さの理論値は182.5cmである。
その後、充填高さを測定するため、形成された触媒層の上面を均した。均した触媒層の上面と伝熱プレートの上端との距離を測定し、伝熱プレートの高さと、前記の測定された距離との差から充填高さを決定した。
振動フィーダによる触媒供給速度のバラつきがあり、一時的に供給速度が大きくなるときもあった。極端に供給速度が振れたときは、触媒層高さが大きくなり、時にはブリッジングが発生し、区画から溢れることもあったが、その時は、その区画の下部に取り付けられた係止部材を外し通気板を取り外して、その区画から触媒を抜き出し、再度充填を行った。再充填は、全部で150回の充填において、合計で3回実施すれば良かった。
充填高さの測定結果から、触媒層の層高のバラつきは、±5cm以内であった。これは、触媒の充填高さの全体に対して±2.7%のバラつきであった。一方、各区画の体積を、区画に挿入した幅55cm、長さ2mのポリエチレン製の袋内に水を導入することによって測定した結果、各区画の容積の設計値に対する実測値の誤差は±1.5%であった。これらの測定結果から、仕切りによって形成された区画への触媒の充填によって、プレート式反応器の各隙間に触媒を非常に均一に充填することができたことがわかった。