JP5532401B2 - ヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子に結合するモノクローナル抗体 - Google Patents

ヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子に結合するモノクローナル抗体 Download PDF

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Description

本発明は、細胞膜に結合しているヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(heparin binding epidermal growth factor−like growth factor、以下HB−EGFと記す。)、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに結合するモノクローナル抗体およびその抗体断片に関する。
HB−EGFは、1992年に東山らによって、マクロファージに分化したヒトマクロファージ様細胞株U−937の培養上清より、精製、単離された(非特許文献1)。HB−EGFは、上皮細胞成長因子(epidermal growth factor、EGF)ファミリーに保存されている6つのシステインを共有しており、EGFファミリーに属し、またEGFファミリーに属する他のタンパク質と同様に、I型膜タンパク質として合成される(非特許文献1および2)。膜型HB−EGFは、熱や浸透圧によるストレス、増殖因子、サイトカイン、およびGタンパク質共役受容体(GPCR)アゴニストであるリゾホスファチジン酸(LPA)などの、様々な生理的刺激によって活性化されたメタロプロテアーゼにより、14〜22キロダルトン(以下、kDaと記す)の分泌型HB−EGFに変換される(非特許文献1〜3)。分泌型HB−EGFは、EGF受容体(EGFR/ErbB1)(非特許文献1)、ErbB4(非特許文献4)およびN−アルギニン二塩基転換酵素(非特許文献5)に結合し、線維芽細胞や平滑筋細胞 (非特許文献1)、ケラチノサイト(非特許文献6)、ヘパトサイト(非特許文献7)、メサンギウム細胞(非特許文献8)に対して増殖促進活性を有する。また、心臓弁等の器官形成(非特許文献28、29および31)や創傷治癒(非特許文献9および10)、アテローム性動脈硬化症で生じる平滑筋細胞の過形成(非特許文献11)、再狭窄(非特許文献12および13)、肺性高血圧(非特許文献14)、肝再生(非特許文献15)、脳障害(非特許文献16)や癌(非特許文献28〜35)に、HB−EGFが関与すること等も知られている。
一方、細胞表面には相当量の膜型HB−EGFが、分泌型へ切断されないまま発現していることが報告されている(非特許文献17)。膜型HB−EGFは、細胞表面でCD9などのテトラスパニンや、インテグリンα3β1と複合体を形成していることが知られており、ジャクスタクライン増殖因子として近接する細胞と相互作用するとの報告もある(非特許文献17〜22)。また、Naglichらは、膜型HB−EGFがジフテリアトキシンのレセプターとして機能し、ジフテリアトキシンの細胞内への進入に関与していることを報告している(非特許文献23)。
目加田らはHB−EGFノックアウト(KO)マウスを作製して、HB−EGFの生理的機能を解析した結果、HB−EGF KOマウスは心室の拡張、心機能の低下、および心臓弁肥大の症状を示し、半数以上が生後数日で死亡した。このことは、HB−EGFが心臓の発達と機能維持に必須なタンパク質であることを示している(非特許文献24)。
次に目加田らは、プロテアーゼによる切断部位に変異を入れることにより、分泌型に変換されなくなったHB−EGF(以下、HBucと称す。)、および膜貫通領域が欠損したプロテアーゼ非依存的に分泌されるHB−EGF(以下、HB△tmと称す。)の、2種類の遺伝子を作製した。それぞれのHB−EGF変異体を発現する遺伝子組換えマウスを作製し、膜型および分泌型HB−EGFの生理的機能を解析した(非特許文献25)。その結果、HBuc発現マウスはHB−EGF KOマウスに類似した症状を示したことから、分泌型HB−EGFが活性型タンパク質として機能していると考えられた。HB△tm発現マウスは新生児期以前または新生児期に大半が死亡した。さらに、対立遺伝子の片方のみに変異を導入したHB△tm/+マウスでは、ケラチノサイトの過形成、および新生児期から心室肥大が認められた。これらの症状は、HB−EGF KOマウスやHBuc発現マウスとは正反対の表現型であった。ジフテリアトキシンの変異体として知られているCRM197(非特許文献26)は、HB−EGFの細胞増殖促進活性を特異的に阻害し、かつ細胞膜を透過しない。このCRM197が、HB△tm発現マウスの表現型である過形成や心室肥大を抑制したことから、HB△tm発現マウスで生成したHB△tmは、分泌前に細胞内の受容体に結合して作用するのではなく、細胞外に分泌された後に細胞表面の受容体に結合して作用することが推定されている。したがって、生体内の膜型HB−EGFと分泌型HB−EGFとの量的バランスが、正常な生理機能の維持に必須であり、また生体内ではHB−EGFの膜型から分泌型への変換プロセスが、制御されていると考えられる。
東山らは、胸部大動脈を狭窄して心肥大を誘発させたマウスで、心臓内の分泌型HB−EGFタンパク質が増加することを見出している。このマウスに、膜型HB−EGFを分泌型に変換するプロテアーゼを阻害する低分子化合物を投与すると、心臓における膜型HB−EGFの分泌型への変換が抑制された結果、心肥大が抑制されることを報告している(非特許文献27)。
これまでに、乳癌、肝癌、膵癌、膀胱癌等、種々の癌で、HB−EGFが正常組織と比較して高発現していることが報告されている(非特許文献28〜31)。また、最近、HB−EGFが癌の増殖に重要な因子であることが明らかにされた(非特許文献32および33)。目加田らは、ヌードマウスにヒト卵巣癌細胞株を移植するモデル系において、HB−EGFのsmall interference RNA(siRNA)を癌細胞株へ導入すること、あるいは癌細胞株を移植したマウスにCRM197を投与することにより、顕著な腫瘍増殖阻害効果が認められることを明らかにした。また、東山らは、膀胱癌の細胞株にHB−EGF遺伝子を導入した株で、in vitroにおいて細胞増殖、コロニー形成能、血管内皮増殖因子(VEGF)発現およびサイクリンD1などの発現が増加することを明らかにした。また、in vivoにおいても、ヌードマウスにおける造腫瘍性の亢進や腫瘍血管新生の亢進が認められることを報告した。このような増殖促進作用は、膜型HB−EGFまたは分泌型HB−EGF遺伝子を発現させた場合にのみ認められ、プロテアーゼ抵抗性膜型HB−EGF遺伝子を強制発現させた場合には、認められなかった。したがって、分泌型HB−EGFは、卵巣癌や膀胱癌の腫瘍増殖に関わる重要な因子である可能性が示唆された。臨床患者のHB−EGF発現に関しては、目加田らが、卵巣癌患者の腫瘍組織中のHB−EGF mRNA発現量および腹水中の分泌型HB−EGFタンパク質濃度を解析した結果、EGFファミリーの中でHB−EGFのみが発現亢進していることを報告している(非特許文献32)。更に宮本らは、腫瘍のHB−EGFmRNAが高発現している卵巣癌患者では、低発現の患者に比べて予後が不良であることを報告した(非特許文献34)。以上の結果は、少なくとも卵巣癌において、癌の産生する分泌型HB−EGFがオートクラインもしくはパラクラインの機序で、癌の増殖に関与していることを示している(非特許文献35)。分泌型HB−EGFに結合して活性を阻害する抗体としてはいくつかのポリクローナル抗体と、1種のモノクローナル抗体(ともにR&D社製)が知られている。抗HB−EGFヤギポリクローナル抗体(R&D社製)は、COS−7細胞に発現させた細胞表面の膜型HB−EGFに結合することが、報告されている(非特許文献3)。膜型タンパク質が癌などの細胞表面に存在する場合、そのタンパク質に結合するモノクローナル抗体が該細胞の増殖を阻害する治療薬となり得ることが広く知られている(非特許文献36)。
一般にヒト以外の動物の抗体、例えばマウス抗体などをヒトに投与すると、異物として認識されることにより、ヒト体内にマウス抗体に対するヒト抗体(Human Anti Mouse Antibody:HAMA)が誘導されることが知られている。HAMAは投与されたマウス抗体と反応し、副作用を引き起こしたり(非特許文献37〜40)、マウス抗体の体内からの消失を速め(非特許文献38、41、42)、マウス抗体の治療効果を減じてしまうことが知られている(非特許文献43、44)。
これらの問題点を解決するため、遺伝子組換え技術を利用してヒト以外の動物の抗体からヒト型キメラ抗体やヒト化抗体などの遺伝子組換え抗体の作製が試みられている。
ヒト型キメラ抗体やヒト化抗体は、マウス抗体などのヒト以外の動物の抗体と比較してヒトへの臨床応用上、様々な利点を有している。例えば、サルを用いた実験でマウス抗体に比べ免疫原性が低下し、血中半減期が延長したことが報告されている(非特許文献45、46)。すなわち、ヒト型キメラ抗体やヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体に比べ、ヒトにおいて副作用が少なく、その治療効果が長期間持続することが期待される。
また、ヒト型キメラ抗体やヒト化抗体は、遺伝子組換え技術を利用して作製するため、様々な形態の分子として作製することができる。例えば、ヒト抗体の重鎖(以下、H鎖と表記する)定常領域(以下、C領域と表記する)(H鎖C領域を、CHと表記する)としてγ1サブクラスを使用すれば、抗体依存性細胞傷害(以下、ADCCと表記する)活性などのエフェクター機能の高いヒト型キメラ抗体やヒト化抗体を作製することができ(非特許文献14)、かつ、マウス抗体に比べ血中半減期の延長が期待される(非特許文献46)。特に膜型HB−EGFを発現した細胞や、分泌型HB−EGFが細胞膜に結合している細胞を減少させる治療においては、抗体のFc領域(抗体H鎖のヒンジ領域以降の領域)を介した補体依存性細胞傷害活性(以下、CDC活性と表記する)やADCC活性等の細胞傷害活性の高さがその治療効果に重要であるために、ヒト型キメラ抗体やヒト化抗体はマウス抗体などのヒト以外の動物の抗体と比較して望ましい(非特許文献47、48)。
さらに、ヒト型キメラ抗体やヒト化抗体は、最近の蛋白質工学、遺伝子工学の進歩により、Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体(以下、scFvと表記する)(非特許文献49)、2量体化V領域断片(以下、Diabodyと表記する)(非特許文献50)、ジスルフィド安定化V領域断片(以下、dsFvと表記する)(非特許文献51)、CDRを含むペプチド(非特許文献52)などの、分子量の小さい抗体断片としても作製でき、これらの抗体断片は、完全な抗体分子に比べ、標的組織への移行性に優れている(非特許文献53)。
以上の事実は、ヒトへの臨床応用に用いる抗体としては、マウス抗体などのヒト以外の動物の抗体よりもヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体または該抗体断片の方が望ましいことを示している。
Science,Vol.251,936,1991 J. Biol. Chem. 267(1992)6205−6212 Nature,Vol.402,884,1999 EMBO J. 16(1997)1268−1278 EMBO J. 20(2001)3342−3350 J.Biol.Chem.269(1994)20060−20066 Biochem Biophys. Res. Commun. 198(1994)25−31 J. Pathol. 189(1999)431−438 Proc.Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90(1993)3889−3893 J. Cell Biol. 151(2000)209−219 J. Clin. Invest.,95,404,1995 Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 16 (1996)1524−1531 J. Biol. Chem. 277 (2002)37487−37491 Am.J.Pathol.143(1993)784−793 Hepatology 22 (1995) 1584−1590 Brain Res. 827(1999)130−138 Biochem.Biophys.Acta.,Vol.1333,F179,1997 J.Cell Biol.128 (1995)929−938 J. Cell Biol. 129(1995)1691−1705 Cytokine Growth Factor Rev.,Vol.11,335,2000 Int.J.Cancer,Vol.98,505,2002 J.Histochem.Cytochem.,Vol.49,439,2001 Cell,Vol.69,1051,1992 PNAS,Vol.100,3221,2003 J. of Cell Biology,Vol.163,469,2003 J. Biol.Chem.,Vol.270,1015,1995 Nat.Med.,Vol.8,35,2002 Breast Cancer Res. Treat.,Vol.67,81,2001 Oncol. Rep.,Vol.8,903,2001 Biochem. Biophys. Res. Commun.,Vol.202,1705,1994 Cancer Res.,Vol.61,6227,2001 Cancer Res.,Vol.64,5720,2004 Cancer Res.,Vol.64,5283,2004 Clin.Cancer Res.,Vol.11,4783, 2005 Clin.Cancer Res.,Vol.11,4639, 2005 Nat.Rev.Drug.Discov.,Vol.2,52−62,2003 J.Clin.Oncol.,2,881(1984) Blood,65,1349(1985) J.Natl.Cancer Inst.,80,932(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,1242(1985) J.Nucl.Med.,26,1011(1985) J.Natl.Cancer Inst.,80,937(1988) J.Immunol.,135,1530(1985) Cancer Res.,46,6489(1986) Cancer Res.,56,1118(1996) Immunol.,85,668(1995) J.Immunol.,144,1382(1990) Nature,322,323(1988) Science,242,423(1988) Nature Biotechnol.,15,629(1997) Molecular Immunol.,32,249(1995) J.Biol.Chem.,271,2966(1996) Cancer Res.,52,3402(1992)
HB−EGFが関与する疾患を治療するための医薬が求められている。
本発明は以下の(1)〜(28)に関する。
(1)細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに結合するモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(2)細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFの上皮増殖因子様ドメイン(EGF様ドメイン)に結合する(1)記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(3)分泌型HB−EGFとHB−EGF受容体との結合を阻害する、(1)または(2)に記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(4)分泌型HB−EGFに対して中和活性を有する(1)〜(3)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(5)分泌型HB−EGFと、HB−EGF受容体またはジフテリアトキシンとの結合領域に結合する(1)〜(4)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(6)配列番号2で表されるアミノ酸配列の133番目、135番目、および147番目のうち、少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープに結合する(1)〜(5)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(7)配列番号2で表されるアミノ酸配列の133番目、135番目および147番目のアミノ酸を含むエピトープに結合する(6)に記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(8)配列番号2で表されるアミノ酸配列の141番目のアミノ酸を含むエピトープに結合する(1)〜(5)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(9)ハイブリドーマKM3579(FERM BP−10491)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する(1)〜(3)、(5)および(8)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(10)ハイブリドーマKM3567(FERM BP−10573)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する(1)〜(7)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(11)ハイブリドーマKM3566(FERM BP−10490)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する(1)〜(7)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗体断片。
(12)モノクローナル抗体が、遺伝子組換え抗体である、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の抗体またはその抗体断片。
(13)遺伝子組換え抗体が、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体から選ばれる、(12)に記載の抗体またはその抗体断片。
(14)抗体の重鎖可変領域(以下、VHと記す)の相補鎖決定領域(complementarity determining region、以下CDRと記す)1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号12、13および14で表されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体の軽鎖可変領域(以下、VLと記す)のCDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号15、16および17で表されるアミノ酸配列を含む、(13)に記載の遺伝子組換え抗体またはその抗体断片。
(15)ヒト型キメラ抗体のVHが、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、かつ、VLが、配列番号11で表されるアミノ酸配列を含む、(13)に記載のヒト型キメラ抗体またはその抗体断片。
(16)ヒト化抗体のVHが、配列番号22で表されるアミノ酸配列または配列番号22で表されるアミノ酸配列の9番目のAlaをThrに、20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、38番目のArgをLysに、41番目のProをThrに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、95番目のTyrをPheに、および118番目のValをLeuに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつ、
ヒト化抗体のVLが、配列番号23で表されるアミノ酸配列または配列番号23で表されるアミノ酸配列の15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む、(13)に記載のヒト化抗体またはその抗体断片。
(17)ヒト化抗体のVHが、配列番号22で表されるアミノ酸配列の20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、95番目のTyrをPheに、および118番目のValをLeuに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含み、かつ、
ヒト化抗体のVLが、配列番号23で表されるアミノ酸配列または配列番号23で表されるアミノ酸配列の15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列を含む、(13)に記載のヒト化抗体またはその抗体断片。
(18)ヒト化抗体のVHが、配列番号22で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号43で表されるアミノ酸配列を含む、(13)に記載のヒト化抗体またはその抗体断片。
(19)ヒト化抗体のVHが、配列番号42で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号23で表されるアミノ酸配列を含む、(13)に記載のヒト化抗体またはその抗体断片。
(20)ヒト化抗体のVHが、配列番号42で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号43で表されるアミノ酸配列を含む、(13)に記載のヒト化抗体またはその抗体断片。
(21)抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(Diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)および6個のCDRを含むペプチドから選ばれる抗体断片である(1)〜(20)のいずれか1項に記載の抗体断片。
(22)(1)〜(21)のいずれか1項に記載の抗体またはその抗体断片をコードするDNA。
(23)(22)に記載のDNAを含有する組換え体ベクター。
(24)(23)に記載の組換え体ベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
(25)(24)に記載の形質転換体を培地で培養し、培養物中に(1)〜(21)のいずれか1項に記載の抗体またはその抗体断片を生成蓄積させ、培養物から該抗体または該抗体断片を採取することを特徴とする(1)〜(21)のいずれか1項に記載の抗体またはその抗体断片の製造方法。
(26)(1)〜(21)のいずれか1項に記載の抗体またはその抗体断片を有効成分として含有する医薬。
(27)(1)〜(21)のいずれか1項に記載の抗体またはその抗体断片を有効成分として含有する、HB−EGFが関与する疾患の治療剤。
(28)HB−EGFが関与する疾患が癌である、(27)に記載の治療剤。
本発明によれば、細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに結合するモノクローナル抗体を提供することができる。
バインディングELISAにおける各種抗HB−EGFモノクローナル抗体の反応性を示す。上段にヒトHB−EGFタンパク質に対するバインディングELISAの結果、下段に陰性対象としたウシ血清アルブミン(BSA)に対するバインディングELSAの結果を示す。横軸に各抗体の濃度を、縦軸に各抗体の結合活性を示す。◇はモノクローナル抗体KM511、■はモノクローナル抗体KM3566、△はモノクローナル抗体KM3567、▲はモノクローナル抗体KM3579、○はモノクローナル抗体MAB259をそれぞれ表す。 抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579およびMAB259のHB−EGF−EGFR結合阻害活性を示す。横軸に各抗体の濃度を、縦軸にビオチン標識HB−EGFの結合を蛍光強度で示す。横ばいの実線はビオチン標識HB−EGF添加、抗体非添加時の蛍光強度、横ばいの点線はビオチン標識HB−EGF非添加、抗体非添加時の蛍光強度を示す。△はモノクローナル抗体KM3566、×はモノクローナル抗体KM3567、●はモノクローナル抗体KM3579、■はモノクローナル抗体MAB259をそれぞれ表す。 各種抗HB−EGFモノクローナル抗体のHB−EGF中和活性を示す。横軸に各抗体の濃度を、縦軸に増殖阻害率(%)を示す。◇はモノクローナル抗体KM511、■はモノクローナル抗体KM3566、▲はモノクローナル抗体KM3579、○はモノクローナル抗体MAB259をそれぞれ表す。 各種抗HB−EGFモノクローナル抗体のHB−EGF中和活性を示す。横軸に各抗体の濃度を、縦軸に細胞増殖を示す。HB−EGF(+)は、HB−EGF添加、抗体非添加時の細胞増殖、HB−EGF(−)は、HB−EGF非添加、抗体非添加時の細胞増殖を示す。□はモノクローナル抗体MAB259、■はモノクローナル抗体KM3567、▲はモノクローナル抗体KM3566をそれぞれ表す。 FCM解析における各種抗HB−EGFモノクローナル抗体の反応性を示す。横軸に各抗体の濃度を、縦軸に平均蛍光強度MFI値を示す。×はモノクローナル抗体KM511、△はモノクローナル抗体KM3566、□はモノクローナル抗体KM3579、○はモノクローナル抗体MAB259をそれぞれ表す。破線は抗体非添加陰性対照(抗HB−EGFモノクローナル抗体非添加、FITC標識ヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)ポリクローナル抗体添加時)の平均蛍光強度MFI値を表す。 FCM解析における、MDA−MB−231細胞に対する各種抗HB−EGFモノクローナル抗体の反応性を示す。各ヒストグラムの左のピークは陰性対照抗体KM511、右のピークは各抗HB−EGF抗体を示す。(a)MAB529、(b)KM3566、(c)KM3567、(d)KM3579を示す。 抗HB−EGFキメラ抗体発現ベクターpKANTEX3566の造成工程を示す。 精製した抗HB−EGFキメラ抗体KM3966のSDS−PAGE(5−20%グラジュエントゲル使用)の泳動パターンを示す。レーン1が分子量マーカー、レーン2が還元条件下、レーン3が非還元条件下における、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966を示す。 フローサイトメトリーでの、ヒト固形癌細胞株に対する抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の反応性を示す。図の縦軸は細胞数を、横軸は蛍光強度を示す。 フローサイトメトリーでの、リコンビナントHB−EGFを処理したヒト固形癌細胞株に対する、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の反応性を示す。図の縦軸は細胞数を、横軸は蛍光強度を示す。 抗HB−EGFキメラ抗体KM3966のヒトHB−EGFに対する中和活性を示す。図の縦軸は生細胞数を表す。OD450nmの吸光度値を、横軸は抗体濃度を示す。■は陰性対照抗体human IgG、□はKM3966を示す。HB−EGF(−)はHB−EGF非添加、HB−EGF(+)はHB−EGF添加を示す。 抗HB−EGFキメラ抗体KM3966のヒト固形癌細胞株に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)を示す。図の縦軸は細胞傷害活性率(%)を、横軸は抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の抗体濃度を示す。横ばいの直線は抗体非添加時の細胞傷害活性を示す。 抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の初期癌モデルにおける抗腫瘍活性を示す。図の縦軸は腫瘍体積を、横軸は癌細胞移植後の日数を表す。●はPBS投与群、○はKM3966 10mg/kg投与群を示す。バーは標準偏差を示す。 抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の進行癌モデルにおける抗腫瘍活性を示す。図の縦軸は腫瘍体積を、横軸は癌細胞移植後の日数を表す。●はPBS投与群、○はKM3966 10mg/kg投与群を示す。バーは標準偏差を示す。 フローサイトメトリーでの抗HB−EGFマウス抗体KM3566のヒト血液癌細胞株に対する反応性を示す。図の縦軸は細胞数を、横軸は蛍光強度を示す。Aは急性骨髄性白血病細胞株、BはT細胞性白血病細胞株を示す。 抗HB−EGFキメラ抗体KM3966のヒト血液癌細胞株に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)を示す。図の縦軸は細胞傷害活性率(%)を、横軸は抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の抗体濃度を示す。横ばいの直線は抗体非添加時の細胞傷害活性を示す。 抗HB−EGFヒト化抗体のヒト卵巣癌細胞株MCASに対する反応性を示す。図の縦軸は細胞数を、横軸は蛍光強度を示す。 抗HB−EGFヒト化抗体のヒト胃癌細胞株MKN−28に対する中和活性を示す。縦軸には、リコンビナントヒトHB−EGF添加時の細胞増殖を1とした時の細胞増殖を示し、横軸には添加したリコンビナントヒトHB−EGFおよび抗HB−EGFヒト化抗体のタンパク質濃度を示す。 抗HB−EGFヒト化抗体のヒト血液癌細胞株に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)を示す。図の縦軸は細胞傷害活性率(%)を、横軸は抗HB−EGFヒト化抗体の抗体濃度を示す。横ばいの直線は抗体非添加時の細胞傷害活性を示す。 抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3579、およびキメラ抗体KM3966の変異HB−EGF発現細胞に対する反応性を示す。図の縦軸は各抗体の反応性(%)を、横軸は変異HB−EGFの種類を示す。
本発明において、膜型HB−EGFとは、細胞膜貫通ドメインを有して細胞膜に結合し、かつシグナル配列、プロ領域、ヘパリン結合ドメイン、EGF様ドメイン、ジャクスタメンブレンドメイン、細胞質ドメインから構成されるHB−EGFをいう。具体的には配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドがあげられる。また、本発明において、分泌型HB−EGFとは、膜型HB−EGFの膜結合部位がプロテアーゼ等で切断された、EGF様ドメインを含む細胞外ドメインをいう。具体的には配列番号3で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドがあげられる。細胞膜に結合しているHB−EGFとは、分泌型HB−EGFが、そのヘパリン結合活性および静電気的結合活性などにより、細胞膜表面に結合しているHB−EGFをいう。
細胞膜において、分泌型HB−EGFが結合する物質としては、細胞膜上に存在し、分泌型HB−EGFが結合する物質であれば、いかなるものでも良いが、具体的には多糖類、より好ましくはグリコサミノグリカンがあげられ、特に好ましくはヘパラン硫酸などがあげられる。
HB−EGFはジフテリアトキシン、EGF受容体ErbB1またはErbB4と結合する活性を有する。
膜型HB−EGFとしては、下記(a)、(b)、(c)のタンパク質などがあげられる。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ジフテリアトキシンが結合する活性を有するタンパク質;
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、ジフテリアトキシンが結合するタンパク質;
また、分泌型HB−EGFとしては、下記(a)、(b)、(c)のタンパク質などがあげられる。
(a)配列番号3、4または5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号3、4または5で表されるアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、EGF受容体ErbB1、またはErbB4が結合する活性を有するタンパク質;
(c)配列番号3、4または5で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、EGF受容体ErbB1、またはErbB4が結合するタンパク質;
配列番号2、3、4または5で表されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ジフテリアトキシンまたはEGF受容体ErbB1、またはErbB4が結合するタンパク質とは、Molecular Cloning 2nd Edition、Current protpcols in Molecular Biology、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proceedings National Academic Science.USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、などに記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号2、3、4または5で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAに、部位特異的変異を導入することにより取得できるタンパク質を意味する。欠失、置換、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、上記部位特異的変異導入法などの周知の技術により、欠失、置換、もしくは付加できる程度の数であり、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
また、配列番号2、3、4または5で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ、ジフテリアトキシン、EGF受容体ErbB1またはErbB4が結合するタンパク質とは、配列番号2、3、4または5に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有し、かつ、ジフテリアトキシン、EGF受容体ErbB1またはErbB4が結合する活性を有するタンパク質である。
相同性の数値は、特に明示した場合を除き、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であって、塩基配列はBLAST[(J. Mol. Biol.),215,403(1990)]に従って、デフォルトパラメーターを用いて算出される数値などがあげられる。アミノ酸配列については、BLAST2[Nucleic Acid Res., 25,3389(1997)];ゲノム・リサーチ(Genome Res.),7,649(1997);http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Education/BLASTinfo/infomation3.htmlにおいてデフォルトパラメーターを用いて算出される数値などがあげられる。デフォルトパラメーターとしては、G(Cost to open gap)が塩基配列の場合は5、アミノ酸配列の場合は11、−E(Cost to extend gap)が塩基配列の場合は2、アミノ酸配列の場合は1、−q(penalty for nucleotide mismatch)が−3、−r(reward for nucleotide match)が1、−e(expect value)が10、−W(wordsize)が塩基配列の場合は11残基、アミノ酸残基の場合は3残基、−y(Dropoff(X) for blast extemsions in bits)がblastnの場合は20、blastn以外のプログラムでは25である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blastcgihelp.html)。また、アミノ酸配列の解析ソフトとしてはFASTA[Methods in Enzymology,183,63(1990)]などもあげられる。
本発明の抗体は、細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに結合するモノクローナル抗体であって、細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFの上皮増殖因子様ドメイン(EGF様ドメイン)に結合するモノクローナル抗体を包含する。
EGF様ドメインとは、具体的には配列番号4または5で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどがあげられる。
当該EGF様ドメインに結合する抗体とは、分泌型HB−EGFとHB−EGF受容体との結合を阻害するモノクローナル抗体を包含する。
分泌型HB−EGFとHB−EGF受容体の結合を阻害する抗体としては、分泌型HB−EGFと、HB−EGF受容体またはジフテリアトキシンとの結合領域に結合するモノクローナル抗体などがあげられる。
本発明の抗体は、分泌型HB−EGFに対して中和活性を有する抗体を包含する。本発明において中和活性としては、分泌型HB−EGFの生物活性を抑制する活性をいい、例えば、HB−EGF受容体が発現している細胞の細胞増殖を抑制する活性などがあげられる。
本発明の抗体の具体例としては、配列番号2で表されるアミノ酸を有するポリペプチドの115番目から147番目のアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体、好ましくは133番目から147番目のうち、少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体、より好ましくは115番目、122番目、124番目、125番目、127番目、129番目、133番目、135番目、141番目、および147番目のアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体、更に好ましくは133番目、135番目、および147番目のアミノ酸のうち、少なくとも133番目および135番目のアミノ酸を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体、最も好ましくは133番目、135番目および147番目のアミノ酸を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体などがあげられる。
更に具体的には、ハイブリドーマKM3566(FERM BP−10490)、ハイブリドーマKM3567(FERM BP−10573)が生産するモノクローナル抗体、またはハイブリドーマKM3579(FERM BP−10491)が生産するモノクローナル抗体と競合反応するモノクローナル抗体、およびこれらモノクローナル抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合するモノクローナル抗体が、本発明の抗体として例示される。
中和活性を有する抗体の具体例としては、配列番号2で表されるアミノ酸を有するポリペプチドの133番目、135番目および147番目のアミノ酸を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体があげられる。
モノクローナル抗体とは、単一クローンの抗体産生細胞が分泌する抗体であり、ただ一つのエピトープ(抗原決定基とも言う)を認識し、アミノ酸配列(1次構造)が均一である。本発明のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマが産生する抗体、遺伝子組換え抗体などがあげられる。
エピトープとは、モノクローナル抗体が認識し、結合する単一のアミノ酸配列、アミノ酸配列からなる立体構造、糖鎖が結合したアミノ酸配列および糖鎖が結合したアミノ酸配列からなる立体構造などがあげられる。本発明のエピトープとしては具体的には、配列番号2で表されるアミノ酸を有するポリペプチドの115番目から147番目のアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープ、より好ましくは115番目、122番目、124番目、125番目、127番目、129番目、133番目、135番目、141番目、および147番目のアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープ、更に好ましくは133番目、135番目、および147番目のアミノ酸のうち、少なくとも133番目および135番目のアミノ酸を含むエピトープ、最も好ましくは133番目、135番目および147番目のアミノ酸を含むエピトープなどがあげられる。
ハイブリドーマとは、ヒト以外の哺乳動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と、ミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる所望の抗原特異性を有するモノクローナル抗体を生産する細胞をいう。
遺伝子組換え抗体としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはそれらの抗体断片など、遺伝子組換えにより製造される抗体を包含する。遺伝子組換え抗体において、モノクローナル抗体の特徴を有し、抗原性が低く、血中半減期が延長されたものは、治療薬として好ましい。
本発明の遺伝子組換え抗体の具体例としては、抗体のVHのCDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号12、13および14でそれぞれ表されるアミノ酸配列、および抗体のVLのCDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号15、16および17で表されるアミノ酸配列を含む遺伝子組換え抗体があげられる。
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLとヒト抗体の重鎖定常領域(以下、CHと表記する)および軽鎖定常領域(以下、CLと表記する)とからなる抗体をいう。
本発明のヒト型キメラ抗体は、以下のようにして作製することができる。まず、細胞膜に結合しているHB−EGF、分泌型HB−EGFおよび膜型HB−EGFに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得する。取得したcDNAを、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入を行い、発現させることにより、ヒト型キメラ抗体を製造することができる。
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト型キメラ抗体としては、具体的には、抗体のVHが配列番号9で表されるアミノ酸配列および抗体のVLが配列番号11で表されるアミノ酸配列を含むヒト型キメラ抗体などがあげられ、ヒト型キメラ抗体KM3966などがあげられる。
ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体をいい、CDR移植抗体、再構成抗体(reshaped−antibody)などともいう。
本発明のヒト化抗体は、以下のように作製することができる。まず、ハイブリドーマが産生する、細胞膜に結合しているHB−EGF、分泌型HB−EGFおよび膜型HB−EGFに結合する、ヒト以外の動物のモノクローナル抗体の、VHおよびVLのCDRを、任意のヒト抗体のVHおよびVLのフレームワーク(以下、FRと記す)に移植した可変領域をコードするcDNAを作製する。作製したcDNAを、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト化抗体発現ベクターを構築する。次に、作製したヒト化抗体発現ベクターを、動物細胞へ導入してヒト化抗体を発現させることにより、ヒト化抗体を製造することができる。
ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列は、ヒト抗体由来のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列であれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、またはSequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)などに記載の、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列などが用いられる。
ヒト化抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト化抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト化抗体としては、具体的には、抗体のVHが配列番号22で表されるアミノ酸配列、または配列番号22で表されるアミノ酸配列中の9番目のAla、20番目のVal、30番目のThr、38番目のArg、41番目のPro、48番目のMet、67番目のArg、68番目のVal、70番目のIle、95番目のTyrおよび118番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列および/または抗体のVLが、配列番号23で表されるアミノ酸配列、または配列番号23で表されるアミノ酸配列中の15番目のLeu、19番目のAla、21番目のIle、49番目のProおよび84番目のLeuから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列をそれぞれ含むヒト化抗体などがあげられるが、導入される改変の数に特に制限はない。
例えば、以下に示すヒト化抗体があげられる。
抗体のVHのアミノ酸配列については、抗体のVHが配列番号22で表されるアミノ酸配列中の20番目のVal、30番目のThr、38番目のArg、48番目のMet、67番目のArg、68番目のVal、70番目のIle、95番目のTyr、および118番目のValが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を有するヒト化抗体。
好ましくは抗体のVHが配列番号22で表されるアミノ酸配列中の20番目のVal、30番目のThr、48番目のMet、68番目のVal、70番目のIle、95番目のTyr、および118番目のValが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を有するヒト化抗体。
好ましくは30番目のThr、48番目のMet、68番目のVal、70番目のIle、95番目のTyrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を有するヒト化抗体。
好ましくは30番目のThr、48番目のMet、68番目のVal、70番目のIleが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を有するヒト化抗体。
好ましくは30番目のThr、68番目のVal、70番目のIle、95番目のTyrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を有するヒト化抗体。
好ましくは30番目のThr、68番目のVal、70番目のIleが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を有するヒト化抗体。
好ましくは30番目のThr、70番目のIleが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト化抗体などがあげられる。
上記のアミノ酸改変の結果得られる抗体VHのアミノ酸配列としては、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の9番目のAlaをThrに、20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、38番目のArgをLysに、41番目のProをThrに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、95番目のTyrをPheに、および118番目のValをLeuに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列があげられる。
11個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の9番目のAlaをThrに、20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、38番目のArgをLysに、41番目のProをThrに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、95番目のTyrをPheに、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列があげられる。
10個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の9番目のAlaをThrに、20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、38番目のArgをLysに、41番目のProをThrに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列などがあげられる。
9個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の
9番目のAlaをThrに、20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、41番目のProをThrに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、
および
20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、95番目のTyrをPheに、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、などがあげられる。
8個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の
9番目のAlaをThrに、20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、41番目のProをThrに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、
20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、95番目のTyrをPheに、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、および
20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、95番目のTyrをPheに、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、などがあげられる。
7個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の
9番目のAlaをThrに、30番目のThrをArgに、41番目のProをThrに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、および
20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、95番目のTyrをPheに、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、
などがあげられる。
6個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の
9番目のAlaをThrに、30番目のThrをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、および
20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、などがあげられる。
5個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の
9番目のAlaをThrに、30番目のThrをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、および
30番目のThrをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、などがあげられる。
4個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の
9番目のAlaをThrに、30番目のThrをArgに、68番目のValをAlaに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、68番目のValをAlaに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、38番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、41番目のProをThrに、68番目のValをAlaに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、および
30番目のThrをArgに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、
などがあげられる。
3個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の
30番目のThrをArgに、68番目のValをAlaに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
9番目のAlaをThrに、30番目のThrをArgに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、38番目のArgをLysに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、41番目のProをThrに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、48番目のMetをIleに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、67番目のArgをLysに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、および
30番目のThrをArgに、70番目のIleをLeuに、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、
などがあげられる。
2個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の
30番目のThrをArgに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
9番目のAlaをThrに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
20番目のValをLeuに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
38番目のArgをLysに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
41番目のProをThrに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
48番目のMetをIleに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
67番目のArgをLysに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
68番目のValをAlaに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、
70番目のIleをLeuに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、
70番目のIleをLeuに、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、
9番目のAlaをThrに、および30番目のThrをArgに置換したアミノ酸配列、
20番目のValをLeuに、および30番目のThrをArgに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、および38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、および41番目のProをThrに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、および48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、および67番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、および68番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列、
30番目のThrをArgに、および95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、および
30番目のThrをArgに、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、
などがあげられる。
1個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列中の
9番目のAlaをThrに置換したアミノ酸配列、20番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、30番目のThrをArgに置換したアミノ酸配列、38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列、41番目のProをThrに置換したアミノ酸配列、48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列、67番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列、68番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列、70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列、95番目のTyrをPheに置換したアミノ酸配列、および118番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列、があげられる。
抗体のVLについては、例えば配列番号23で表されるアミノ酸配列中の15番目のLeu、19番目のAla、21番目のIle、および84番目のLeuが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列があげられる。
好ましくは、配列番号23で表されるアミノ酸配列中の19番目のAla、21番目のIle、および84番目のLeuが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列があげられる。
上記のアミノ酸改変の結果得られるVLのアミノ酸配列としては、配列番号23で表されるアミノ酸配列中の15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列があげられる。
5個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号23で表されるアミノ酸配列中の15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列などがあげられる。
4個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号23で表されるアミノ酸配列中の
15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、および49番目のProをSerに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、21番目のIleをMetに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、および
19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
などがあげられる。
3個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号23で表されるアミノ酸配列中の
15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、および21番目のIleをMetに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、および49番目のProをSerに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、21番目のIleをMetに、および49番目のProをSerに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、21番目のIleをMetに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、および49番目のProをSerに置換したアミノ酸配列、
19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
19番目のAlaをValに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、および
21番目のIleをMetに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
などがあげられる。
2個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号23で表されるアミノ酸配列中の
15番目のLeuをValに、および19番目のAlaをValに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、および21番目のIleをMetに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、および49番目のProをSerに置換したアミノ酸配列、
15番目のLeuをValに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
19番目のAlaをValに、および21番目のIleをMetに置換したアミノ酸配列、
19番目のAlaをValに、および49番目のProをSerに置換したアミノ酸配列、
19番目のAlaをValに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
21番目のIleをMetに、および49番目のProをSerに置換したアミノ酸配列、
21番目のIleをMetに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
および49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、
などがあげられる。
1個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、配列番号23で表されるアミノ酸配列中の15番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、19番目のAlaをValに置換したアミノ酸配列、21番目のIleをMetに置換したアミノ酸配列、49番目のProをSerに置換したアミノ酸配列、および84番目のLeuをValに置換したアミノ酸配列、などがあげられる。
本発明のヒト化抗体の具体例としては、可変領域のH鎖が配列番号22、および/または可変領域のL鎖が配列番号23で表されるアミノ酸配列を有するヒト化抗体、可変領域のH鎖が配列番号22および/または可変領域のL鎖が配列番号43で表されるアミノ酸配列を有するヒト化抗体、可変領域のH鎖が配列番号42および/または可変領域のL鎖が配列番号23で表されるアミノ酸配列を有するヒト化抗体、可変領域のH鎖が配列番号42および/または可変領域のL鎖が配列番号43で表されるアミノ酸配列を有するヒト化抗体などがあげられる。
ヒト抗体とは、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども含まれる。ヒト体内に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルスなどを感染させ不死化し、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を単離し培養することができ、培養上清中より該抗体を精製することができる。ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFvなどの抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を表面に発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、さらに、遺伝子工学的手法により2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が宿主動物のゲノム遺伝子に組込まれた動物を意味する。具体的には、例えば、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニックマウスを作製することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体の作製方法は、通常のヒト以外の動物で行われているハイブリドーマ作製方法によりヒト抗体産生ハイブリドーマを取得し、培養することで、培養上清中にヒト抗体を生成蓄積させることができる。
上述の抗体または抗体断片を構成するアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が欠失、付加、置換または挿入され、かつ上述の抗体またはその抗体断片と同様な活性を有する抗体またはその抗体断片も、本発明の抗体またはその抗体断片に包含される。
欠失、置換、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、Molecular Cloning 2nd Edition、Current protpcols in Molecular Biology、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc. Natl. Acad. Sci USA,82,488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法等の周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数である。、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
上記の抗体のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入または付加されたとは、次のことを示す。同一配列中の任意、かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入または付加があることを意味する。また、欠失、置換、挿入または付加が同時に生じる場合もあり、置換、挿入または付加されるアミノ酸残基は天然型と非天然型いずれの場合もある。天然型アミノ酸残基としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリンおよびL−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
本発明の抗体断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、diabody、dsFv、6個のCDRを含むペプチドなどがあげられる。
Fabは、IgG型抗体分子をタンパク質分解酵素パパインで処理して得られる。この断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFabは、抗体をタンパク質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより、Fabを発現させ、製造することができる。
F(ab’)は、IgG型抗体分子をタンパク質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のF(ab’)は、抗体をタンパク質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
Fab’は、上記F(ab’)のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFab’は、F(ab’)を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することによりFab’を発現させ、製造することができる。
scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと表記する)を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明のscFvは、抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することによりscFvを発現させ、製造することができる。
Diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一とすることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。本発明のdiabodyは、抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することによりdiabodyを発現させ、製造することができる。
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法(Protein Engineering, 7, 697−704, 1994)に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。本発明のdsFvは、抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することによりdsFvを発現させ、製造することができる。
本発明のCDRを含むペプチドは、HB−EGFに特異的に反応する抗体のVHおよびVLのCDRをコードするcDNAを構築し、該cDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。
上述の抗体または該抗体断片に、放射性同位元素、タンパク質または薬剤を結合させた抗体の誘導体も、本発明で用いることができる。
本発明で用いられる抗体の誘導体は、細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに特異的に結合する抗体または該抗体断片の、H鎖或いはL鎖のN末端側或いはC末端側、抗体中の適当な置換基あるいは側鎖、さらには抗体中の糖鎖に薬剤を化学的手法(抗体工学入門、金光修著、(株)地人書館、1994)により結合させることにより製造することができる。
または、細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに特異的に結合する抗体または該抗体断片をコードするDNAと、結合させたいタンパク質などの薬剤をコードするDNAを連結させて発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入するという遺伝子工学的手法によっても製造することができる。
薬剤としては、化学療法剤、抗体医薬、免疫賦活剤、高分子の薬剤などがあげられる。
タンパク質としては、サイトカイン、増殖因子、毒素タンパク質などがあげられる。
さらに、抗体または該抗体断片に結合させる薬剤は、プロドラッグの形態でもよい。本発明におけるプロドラッグとは、腫瘍環境に存在する酵素などによって化学的な修飾を受け、癌細胞を傷害する作用を有する物質に変換される薬剤をいう。
化学療法剤としては、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン療法剤、ホルモン拮抗剤、アロマターゼ阻害剤、P糖蛋白阻害剤、白金錯体誘導体、M期阻害剤、キナーゼ阻害剤などのいかなる化学療法剤も包含される。化学療法剤としては、アミフォスチン(エチオール)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロフォスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ(ドキシル)、エピルビシン、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ(ダウノゾーム)、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ダウノマイシン、ペプロマイシン、エストラムスチン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテア)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチル−カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、イリノテカン、ノギテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、ヒドロキシカルバミド、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、ゴセレリン、リュープロレニン、フルタミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ビンデシン、ニムスチン、セムスチン、カペシタビン、トムデックス、アザシチジン、UFT、オキザロプラチン、ゲフィチニブ(イレッサ)、イマチニブ(STI571)、エルロチニブ、Flt3阻害剤、vascular endothelial growth facotr receptor(VEGFR)阻害剤、fibroblast growth factor receptor(FGFR)阻害剤、epidermal growth factor receptor(EGFR)阻害剤(イレッサ、タルセバなど)ラディシコール、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン、ラパマイシン、アムサクリン、オール−トランスレチノイン酸、サリドマイド、アナストロゾール、ファドロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、金チオマレート、D−ペニシラミン、ブシラミン、アザチオプリン、ミゾリビン、シクロスポリン、ラパマイシン、ヒドロコルチゾン、ベキサロテン(ターグレチン)、タモキシフェン、デキサメタゾン、プロゲスチン類、エストロゲン類、アナストロゾール(アリミデックス)、ロイプリン、アスピリン、インドメタシン、セレコキシブ、アザチオプリン、ペニシラミン、金チオマレート、マレイン酸クロルフェニラミン、クロロフェニラミン、クレマシチン、トレチノイン、ベキサロテン、砒素、ボルテゾミブ、アロプリノール、ゲムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、131トシツテマブ、タルグレチン、オゾガミン、クラリスロマシン、ロイコボリン、イファスファミド、ケトコナゾール、アミノグルテチミド、スラミン、メトトレキセート、Maytansinoidおよびその誘導体、などがあげられる。
化学療法剤と抗体とを結合させる方法としては、グルタールアルデヒドを介して化学療法剤と抗体のアミノ基間を結合させる方法、水溶性カルボジイミドを介して化学療法剤のアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法等があげられる。
抗体医薬としては、抗体の結合によりアポトーシスが誘導される抗原、腫瘍の病態形成に関わる抗原または免疫機能を調節する抗原、病変部位の血管新生に関与する抗原に対する抗体があげられる。
抗体の結合によりアポトーシスが誘導される抗原としては、Cluster of differentiation(以下、CDと記載する)19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80 (B7.1)、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86 (B7.2)、human leukocyte antigen(HLA)−Class II、EGFRなどがあげられる。
腫瘍の病態形成に関わる抗原または免疫機能を調節する抗体の抗原としては、CD4、CD40、CD40リガンド、B7ファミリー分子(CD80、CD86、CD274、B7−DC、B7−H2、B7−H3、B7−H4)、B7ファミリー分子のリガンド(CD28、CTLA−4、ICOS、PD−1、BTLA)、OX−40、OX−40リガンド、CD137、tumor necrosis factor(TNF)受容体ファミリー分子(DR4、DR5、TNFR1、TNFR2)、TNF−related apoptosis−inducing ligand receptor (TRAIL)ファミリー分子、TRAILファミリー分子の受容体ファミリー(TRAIL−R1、TRAIL−R2、TRAIL−R3、TRAIL−R4)、receptor activator of nuclear factor kappa B ligand(RANK)、RANKリガンド、CD25、葉酸受容体4、サイトカイン[interleukin−1α(以下、interleukinをILと記す)、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−13、transforming growth factor(TGF)β、TNFα等]、これらのサイトカインの受容体、ケモカイン(SLC、ELC、I−309、TARC、MDC、CTACK等)、これらのケモカインの受容体があげられる。
病変部位の血管新生を阻害する抗体の抗原としては、vascular endothelial growth factor(VEGF)、Angiopoietin、fibroblast growth factor(FGF)、EGF、platelet−derived growth factor (PDGF)、insulin−like growth factor(IGF)、erythropoietin(EPO)、TGFβ、IL−8、Ephilin、SDF−1など、およびこれらの受容体があげられる。
免疫賦活剤としては、イムノアジュバントとして知られている天然物でもよく、具体例としては、免疫を亢進する薬剤が、β(1→3)グルカン(レンチナン、シゾフィラン)、αガラクトシルセラミド(KRN7000)、菌体粉末(ピシバニール、BCG)、菌体抽出物(クレスチン)があげられる。
高分子の薬剤としては、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する)、アルブミン、デキストラン、ポリオキシエチレン、スチレンマレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどがあげられる。これらの高分子薬剤を抗体または抗体断片に結合させることにより、(1)化学的、物理的あるいは生物的な種々の因子に対する安定性の向上、(2)血中半減期の顕著な延長、(3)免疫原性の消失、抗体産生の抑制、などの効果が期待される[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。例えば、PEGと抗体を結合させる方法としては、PEG化修飾試薬と反応させる方法などがあげられる[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。PEG化修飾試薬としては、リジンのε−アミノ基の修飾剤(特開昭61−178926)、アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシル基の修飾剤(特開昭56−23587)、アルギニンのグアニジノ基の修飾剤(特開平2−117920)などがあげられる。
サイトカインまたは増殖因子としては、NK細胞、マクロファージ、好中球などの細胞を亢進するサイトカインまたは増殖因子であればいかなるものでもよいが、例えば、インターフェロン(以下、INFと記す)−α、INF−β、INF−γ、IL−2、IL−12、IL−15、IL−18、IL−21、IL−23、顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球・マクロファージ刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ刺激因子(M−CSF)などがあげられる。
毒素タンパク質としては、リシン、ジフテリアトキシン、ONTAKなどがあげられ、毒性を調節するためにタンパク質に変異を導入したタンパク毒素も含まれる。
放射性同位元素としては、131I、125I、90Y、64Cu、99Tc、77Lu、211At等があげられる。放射性同位元素は、クロラミンT法等によって抗体に直接結合させることができる。また、放射性同位元素をキレートする物質を抗体に結合させてもよい。キレート剤としては、methylbenzyldiethylene−triaminepentaacetic acid (MX−DTPA)などがあげられる。
本発明においては、本発明で用いられる抗体と、1つ以上の他の薬剤と組み合わせて投与することや、または放射線照射とを組み合わせることもできる。他の薬剤としては、上述の化学療法剤、抗体医薬、免疫賦活剤、サイトカインまたは増殖因子などがあげられる。
放射線照射としては、X線、γ線などの光子(電磁波)照射、電子線、陽子線、重粒子線などの粒子線照射などが含まれる。
組み合わせて投与する方法としては、本発明で用いられる抗体との同時投与でもよいし、また、本発明で用いられる抗体の投与と前後して投与しても構わない。
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.遺伝子組換え抗体の製造方法
(1)抗原の調製
分泌型HB−EGFまたは分泌型HB−EGFの部分長(以下、これらを単に分泌型HB−EGFと称することもある)をコードするcDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等に導入し、発現させることにより、分泌型HB−EGFまたは分泌型HB−EGFの部分断片を得ることができる。また、HB−EGFを発現している細胞から、プロテアーゼ処理することにより細胞外領域のHB−EGFを精製することができる。分泌型HB−EGFを多量に発現している各種ヒト腫瘍培養細胞、ヒト組織などから分泌型HB−EGFを精製することもできる。さらに、分泌型HB−EGFの部分配列を有する合成ペプチドを調製し、抗原に用いることもできる。
具体的には、本発明で用いられる分泌型HB−EGFとしては、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)やCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により、これをコードするDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。
まず、全長cDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。この際もし必要であれば、全長cDNAをもとにしてHB−EGFをコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製し、上記全長cDNAの代わりに該DNA断片を使用してもよい。次いで、該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、HB−EGFを生産する形質転換体を得ることができる。
宿主細胞としては、大腸菌、動物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれをも用いることができる。
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞において自律複製可能又は染色体中への組込が可能で、分泌型HB−EGFをコードするDNAを転写できる位置に適当なプロモーターを含有しているものが用いられる。
大腸菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合には、本発明において用いられるHB−EGFをコードするDNAを含有してなる組換えベクターは、原核生物中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明において用いられるDNA及び転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。該組換えベクターは、さらに、プロモーターを制御する遺伝子を含んでいてもよい。
発現ベクターとしては、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもRoche Diagnostics社製)、pKK233−2(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX−1(Promega社製)、pQE−8(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200[Agricultural Biological Chemistry,48,669(1984)]、pLSA1[Agric. Biol. Chem.,53,277(1989)]、pGEL1[Proc. Natl. Acad. Sci. USA,82,4306(1985)]、pBluescript II SK(−)(Stratagene社製)、pTrs30[大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、pTrs32[大腸菌JM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製]、pGHA2[大腸菌IGHA2(FERM BP−400)より調製、特開昭60−221091]、pGKA2[大腸菌IGKA2(FERM BP−6798)より調製、特開昭60−221091]、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400[J. Bacteriol.,172,2392(1990)]、pGEX(Pharmacia社製)、pETシステム(Novagen社製)、pME18SFL3等を挙げることができる。
プロモーターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、T7プロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーターを挙げることができる。また、Ptrpを2つ直列させたタンデムプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーター等のように、人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
また、上記組換えベクターとしては、リボソーム結合配列であるシャイン・ダルガルノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。本発明において用いられる分泌型HB−EGFをコードするDNAの塩基配列においては、宿主内での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することができ、これにより、目的とする分泌型HB−EGFの生産率を向上させることができる。さらに、上記組換えベクターにおける遺伝子の発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
宿主細胞としては、エシェリヒア属等に属する微生物、例えば、大腸菌XL1−Blue、大腸菌XL2−Blue、大腸菌DH1、大腸菌DH5α、大腸菌BL21(DE3)、大腸菌MC1000、大腸菌KY3276、大腸菌W1485、大腸菌JM109、大腸菌HB101、大腸菌No.49、大腸菌W3110、大腸菌NY49等を挙げることができる。
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110(1972)]、Gene,17,107(1982)やMolecular & General Genetics,168,111(1979)に記載の方法等を挙げることができる。
動物細胞を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107[特開平3−22979;Cytotechnology,3,133,(1990)]、pAS3−3(特開平2−227075)、pCDM8[Nature,329,840,(1987)]、pcDNAI/Amp(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogen社製)、pAGE103[J. Biochemistry,101,1307(1987)]、pAGE210、pME18SFL3等を挙げることができる。
プロモーターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等を挙げることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63−299)等を挙げることができる。
組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology,3,133(1990)]、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad.Sci. USA,84,7413(1987)]等を挙げることができる。
遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。真核生物由来の細胞で発現させた場合には、糖あるいは糖鎖が付加された分泌型HB−EGFを得ることができる。
以上のようにして得られる形質転換体を培地に培養し、培養物中に該HB−EGFを生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、分泌型HB−EGFを製造することができる。該形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med.,73,1(1950)]又はこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO存在下等の条件下で1〜7日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
上記のとおり、本発明において用いられる分泌型HB−EGFをコードするDNAを組み込んだ組換えベクターを保有する微生物、動物細胞等由来の形質転換体を、通常の培養方法に従って培養して該HB−EGFを生成蓄積させ、該培養物より採取することにより、本発明において用いられる分泌型HB−EGFを製造することができる。
遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
分泌型HB−EGFの生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、及び宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞や、生産させる分泌型HB−EGFの構造を変えることにより、適切な方法を選択することができる。
分泌型HB−EGFが宿主細胞内又は宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J. Biol. Chem., 264, 17619(1989)]、ロウらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci., USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]、又は特開平05−336963、WO94/23021等に記載の方法を準用することにより、該遺伝子産物を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
また、特開平2−227075に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。分泌型HB−EGFは、例えば、以下のようにして単離・精製することができる。分泌型HB−EGFが細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後に細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化学社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独又は組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
また、分泌型HB−EGFが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として該HB−EGFの不溶体を回収する。回収した該タンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈又は透析することにより、該タンパク質を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法により分泌型HB−EGFの精製標品を得ることができる。
分泌型HB−EGF又はその糖修飾体等の誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清において該HB−EGF又はその糖修飾体等の誘導体を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
また、本発明において用いられる分泌型HB−EGFは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、Advanced ChemTech社、パーキン・エルマー社、Pharmacia社、Protein Technology Instrument社、Synthecell−Vega社、PerSeptive社、島津製作所等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
3〜20週令のマウス、ラットまたはハムスターに上記のように調製した抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。また、免疫原性が低く上記の動物で充分な抗体価の上昇が認められない場合には、HB−EGFノックアウトマウスを被免疫動物として用いる方法もある。
免疫は、動物の皮下あるいは静脈内あるいは腹腔内に、適当なアジュバント〔例えば、フロインドの完全アジュバント(Complete Freund’s Adjuvant)や水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなど〕とともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)やKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)などのキャリアタンパク質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに5〜10回行う。各投与後3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が抗原と反応することを酵素免疫測定法〔Antibodies − A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,1988〕などで調べる。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示したマウス、ラットまたはハムスターを脾細胞の供給源として提供する。
脾細胞を骨髄腫細胞の融合に供するにあたって、抗原物質の最終投与後3〜7日目に、免疫したマウス、ラットまたはハムスターより脾臓を摘出し、脾細胞を採取する。脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去し、MEM培地で3回洗浄して融合用脾細胞として提供する。
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を使用する。たとえば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)(Current Topics in Microbiology and Immunology、18:1−7,1978)、P3−NS1/1−Ag41(NS−1)(European J.Immunology,6:511−519,1976)、SP2/O−Ag14(SP−2)(Nature,276:269−270,1978)、P3−X63−Ag8653(653)(J.Immunology,123:1548−1550,1979)、P3−X63−Ag8(X63)(Nature,256:495−497,1975)などが用いられる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地〔RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mmol/L)、2−メルカプトエタノール(5×10−5mol/L)、ジェンタマイシン(10μg/mL)および牛胎児血清(FCS)を加えた培地(以下、正常培地という。)に、さらに8−アザグアニン(15μg/mL)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×10個以上の細胞数を確保する。
(4)細胞融合
前述した抗体産生細胞と骨髄腫細胞をMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1L、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離(1,200rpm、5分間)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングリコール−1,000(PEG−1,000)2g、MEM2mLおよびジメチルスルホキシド0.7mLの混液を抗体産生細胞数10当たり0.2〜1mLの容量で加え、1〜2分間毎にMEM培地1〜2mlを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにする。遠心分離(900rpm、5分間)後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかに細胞をHAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10−4mol/L)、チミジン(1.5×10−5mol/L)およびアミノプテリン(4×10−7mol/L)を加えた培地〕100mL中に懸濁する。この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μL/ウェルずつ分注し、5%COインキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
培養後、培養上清の一部をとり、後述するバインディングアッセイなどにより、細胞膜に結合しているHB−EGF、分泌型HB−EGFおよび膜型HB−EGFのいずれにも反応性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマもしくは精製抗体を選択する。
また、ついで、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し〔1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する〕、安定して強い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
(5)モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理〔2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育する〕した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(4)で得られた抗HB−EGFモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞2×10〜5×10細胞/匹を腹腔内注射する。10〜21日でハイブリドーマは腹水癌化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離(3,000rpm、5分間)して固形分を除去後、40〜50%硫酸アンモニウムで塩析した後、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムあるいはゲル濾過カラムによる精製を行い、IgGあるいはIgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。蛋白量の定量は、ローリー法および280nmでの吸光度より算出する。
(6)バインディングアッセイ
抗原としては、(1)に記載の方法により、本発明において用いられるHB−EGFをコードするcDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等に導入して得た遺伝子導入細胞やリコンビナントタンパク質、あるいはヒト組織から得た精製HB−EGFや部分ペプチドを用いる。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)やKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)などのキャリアタンパク質とコンジュゲートを作製して、これを用いる。
これらの抗原のうち、分泌型HB−EGFおよびHB−EGFが細胞に結合している細胞株を96ウェルプレートに分注し固層化した後、第一抗体として、被免疫動物血清、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養上清もしくは精製抗体を分注して反応させる。PBSまたはPBS−0.05%Tweenでよく洗浄した後、第二抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物等で標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。PBS−Tweenでよく洗浄した後、第二抗体の標識物質に応じた反応を行う。
前述したような方法で、細胞膜に結合しているHB−EGF、分泌型HB−EGFおよび膜型HB−EGFのいずれにも反応性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマもしくは精製抗体を選択することができる。
得られたモノクローナル抗体のうち、分泌型HB−EGFのHB−EGF受容体への結合阻害活性を有する抗体としては、ハイブリドーマ細胞株KM3566が生産するモノクローナル抗体KM3566、ハイブリドーマ細胞株KM3567が産生するモノクローナル抗体KM3567、およびハイブリドーマ細胞株KM3579が生産するモノクローナル抗体をあげることができる。ハイブリドーマ細胞株KM3579は、平成18年1月24日付でブダペスト条約に基づき独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にFERM BP−10491として寄託されている。
また、本発明の抗HB−EGFモノクローナル抗体と競合してHB−EGFに結合するモノクローナル抗体は、上述のバインティングアッセイ系に、被検抗体を添加して反応させることで取得できる。すなわち、被検抗体を加えた時にモノクローナル抗体の結合が阻害される抗体をスクリーニングすることにより、HB−EGFへの結合について、取得したモノクローナル抗体と競合するモノクローナル抗体を取得することができる。
更に、本発明の抗HB−EGFモノクローナル抗体が認識するエピトープと同じエピトープに結合する抗体は、上述のバインティングアッセイ系で取得された抗体のエピトープを同定し、同定したエピトープの、部分的な合成ペプチド、またはエピトープの立体構造に擬態させた合成ペプチド等を作製し、免疫することで、取得することができる。
(7)中和活性
更に、得られたモノクローナル抗体が分泌型HB−EGFに対して中和活性を有しているか否かは、HB−EGF依存性細胞を用いた細胞増殖阻害アッセイを行うことにより確認することができる。
細胞増殖阻害アッセイに用いる細胞としては、分泌型HB−EGFが結合することができる受容体を有する細胞であればいかなる細胞でもよいが、具体的にはEGF受容体遺伝子をマウス骨髄性由来細胞株32D clone3(ATCC No. CRL−11346)に導入して得られた細胞株などがあげられる。
得られたモノクローナル抗体と分泌型HB−EGFとをプレート上で反応させた後に上述の細胞株を加えて培養を行う。対照として、分泌型HB−EGFを添加しモノクローナル抗体を添加しないプレート、およびモノクローナル抗体と分泌型HB−EGFのいずれも添加しないプレートに、同様に上述の細胞株を加えて培養を行う。各プレートでの細胞数を計測することにより、細胞増殖阻害率を求めることができる。細胞増殖阻害率が高いモノクローナル抗体は、中和活性を有するモノクローナル抗体として選択することができる。
中和活性を有するモノクローナル抗体の具体例としては、ハイブリドーマ細胞株KM3566が生産するモノクローナル抗体KM3566、およびハイブリドーマ細胞株KM3567が産生するモノクローナル抗体KM3567をあげることができる。ハイブリドーマ細胞株KM3566およびKM3567は、ブダペスト条約に基づき独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にそれぞれ平成18年1月24日付でFERM BP−10490、および平成18年3月23日付でFERM BP−10573として寄託されている。
2.遺伝子組換え抗体の作製
(1)ヒト化抗体発現用ベクターの構築
遺伝子組換え抗体発現用ベクターとしては、ヒト抗体のCHおよび/またはCLをコードする遺伝子が組み込まれた動物細胞用発現ベクターであればいかなるものでもよい。ヒト化抗体発現用ベクターは、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子をそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
ヒト抗体のC領域は任意のヒト抗体のCHおよびCLであることができ、例えば、ヒト抗体のH鎖のIgG1サブクラスのC領域(以下、hCγ1と表記する)およびヒト抗体のL鎖のκクラスのC領域(以下、hCκと表記する)などがあげられる。ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子としてはエキソンとイントロンからなる染色体DNAを用いることができ、また、cDNAを用いることもできる。
動物細胞用発現ベクターとしては、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107(Cytotechnology,3,133−140,1990)、pAGE103(Journal of Biochemistry,101,1307−1310,1987)、pHSG274(Gene,27,223−232,1984)、pKCR(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,78,1527−1531,1981)、pSG1βd2−4(Cytotechnology,4,173−180,1990)などがあげられる。動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー(Journal of Biochemistry,101,1307−1310,1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターとエンハンサー(Biochemical &Biophysical Research Communications,149,960−968,1987)、イムノグロブリンH鎖のプロモーター(Cell,41,479−487,1985)とエンハンサー(Cell,33,717−728,1983)などがあげられる。
遺伝子組換え抗体発現用ベクターは、抗体H鎖およびL鎖が別々のベクター上に存在するタイプ、あるいは同一のベクター上に存在するタイプ(以下、タンデム型と表記する)のどちらでも用いることができるが、遺伝子組換え発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点から、タンデム型の遺伝子組換え抗体発現用ベクターの方が好ましい(Journal of Immunological Methods,167,271−278,1994)。タンデム型の遺伝子組換え抗体発現用ベクターとしては、pKANTEX93(WO97/10354)、pEE18(Hybridoma,17,559−567,1998)などがあげられる。
(2)ヒト以外の動物の抗体のV領域をコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析
ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは以下のようにして取得することができる。
ハイブリドーマよりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージあるいはプラスミドなどのベクターにクローニングしてcDNAライブラリーを作製する。該ライブラリーより、マウス抗体のC領域部分あるいはV領域部分をプローブとして用いて、VHをコードするcDNAを有する組換えファージあるいは組換えプラスミドおよびVLをコードするcDNAを有する組換えファージあるいは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージあるいは組換えプラスミド上の目的とするマウス抗体のVHおよびVLの全塩基配列を決定し、塩基配列よりVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定する。
ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビットなど、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
ハイブリドーマから全RNAを調製する方法としては、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法(Methods in Enzymology,154,3−28,1987)、また全RNAからmRNAを調製する方法としては、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法(Molecular Cloning:ALaboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab. Press New York,1989)などがあげられる。また、ハイブリドーマからmRNAを調製するキットとしては、Fast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社製)、Quick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia社製)などがあげられる。
cDNAの合成およびcDNAライブラリー作製法としては、常法(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab. Press New York,1989; Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1−34)、あるいは市販のキット、例えば、Super ScriptTM Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(GIBCO BRL社製)やZAP−cDNA Synthesis Kit(Stratagene社製)を用いる方法などがあげられる。
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマから抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターは、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP Express(Strategies,5,58−61,1992)、pBluescript II SK(+)(Nucleic Acids Research,17,9494,1989)、λZAP II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11(DNA Cloning: A Practical Approach,I,49,1985)、Lambda BlueMid(Clontech社製)、λExCell、pT7T3 18U(Pharmacia社製)、pcD2(Molecular &Cellular Biology,3,280−289,1983)およびpUC18(Gene,33,103−119,1985)などのファージあるいはプラスミドベクターが用いられる。
ファージあるいはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌としては該cDNAライブラリーを導入、発現および維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL1−Blue MRF’(Journal of Biotechnology,23,271−289,1992)、C600(Genetics,59,177−190,1968)、Y1088、Y1090(Science,222,778−782,1983)、NM522(Journal of Molecular Biology,166,1−19,1983)、K802(Journal of Molecular Biology,16,118−133,1966)およびJM105(Gene,38,275−276,1985)などが用いられる。
cDNAライブラリーからのヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAクローンの選択法としては、放射性同位元素あるいは蛍光標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法あるいはプラーク・ハイブリダイゼーション法(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab. Press New York,1989)により選択することができる。また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーを鋳型として、Polymerase Chain Reaction(以下、PCR法と表記する;Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab. Press New York,1989; Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1−34)によりVHおよびVLをコードするcDNAを調製することもできる。
上記方法により選択されたcDNAを、適当な制限酵素等で切断後、pBluescript SK(−)(Stratagene社製)などのプラスミドベクターにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、ジデオキシ法(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,74,5463−5467,1977)などの反応を行い、塩基配列自動分析装置ABI PRISM 377(ABI社製)などを用いて解析することで該cDNAの塩基配列を決定することができる。
決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services,1991)と比較することにより、取得したcDNAが分泌のためのシグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかを確認することができる。シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services,1991)と比較することにより、シグナル配列の長さおよびN末端アミノ酸配列を推定でき、さらにはそれらが属するサブグループを知ることができる。また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services,1991)と比較することによって見出すことができる。
さらに、VHおよびVLの完全なアミノ酸配列を用いて任意のデータベース、例えば、SWISS−PROTやPIR−Proteinなどに対してBLAST法(Journal of Molecular Biology,215,403−410,1990)などの配列の相同性検索を行い、配列の新規性を検討することができる。
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
上記2(1)に記載の遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAをクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLの3’末端側の塩基配列とヒト抗体のCHおよびCLの5’末端側の塩基配列とから成り、かつ適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAとそれぞれ連結し、それぞれを上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。また、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを含むプラスミドを鋳型として、5’末端に適当な制限酵素の認識配列を有するプライマーを用いてPCR法によりVHおよびVLをコードするcDNAを増幅し、それぞれを上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
(4)ヒト化抗体(CDR移植抗体)のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト化抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。まず、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を移植するヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列を選択する。ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のものであれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services,1991)などがあげられるが、その中でも、十分な活性を有するヒト化抗体を作製するためには、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)を有するアミノ酸配列を選択することが望ましい。次に、選択したヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列に、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を移植し、ヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度(Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services,1991)を考慮して塩基配列に変換し、ヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードする塩基配列を設計する。設計した塩基配列に基づき、150塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行う。この場合、PCRでの反応効率および合成可能なDNAの長さから、VH、VLとも4本の合成DNAを設計することが好ましい。
また、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、上記2(1)で構築したヒト化抗体発現用ベクターに容易にクローニングすることができる。PCR反応後、増幅産物をpBluescript SK(−)(Stratagene社製)などのプラスミドにクローニングし、上記2(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するプラスミドを取得する。
(5)ヒト化抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト化抗体は、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元のヒト以外の動物の抗体に比べて低下してしまうことが知られている(BIO/TECHNOLOGY,9,266−271,1991)。この原因としては、元のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLでは、CDRのみならず、FRのいくつかのアミノ酸残基が直接的あるいは間接的に抗原結合活性に関与しており、それらアミノ酸残基がCDRの移植に伴い、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの異なるアミノ酸残基へと変化してしまうことが考えられている。この問題を解決するため、ヒト化抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基やCDRのアミノ酸残基と相互作用したり、抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらを元のヒト以外の動物の抗体に見出されるアミノ酸残基に改変し、低下した抗原結合活性を上昇させることが行われている(BIO/TECHNOLOGY,9,266−271,1991)。ヒト化抗体の作製においては、それら抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を如何に効率よく同定するかが、最も重要な点であり、そのためにX線結晶解析(Journal of Molecular Biology,112,535−542,1977)あるいはコンピューターモデリング(Protein Engineering,7,1501−1507,1994)などによる抗体の立体構造の構築および解析が行われている。これら抗体の立体構造の情報は、ヒト化抗体の作製に多くの有益な情報をもたらして来たが、その一方、あらゆる抗体に適応可能なヒト型CDR移植抗体の作製法は未だ確立されておらず、現状ではそれぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討するなどの種々の試行錯誤が必要である。
ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸残基の改変は、改変用合成DNAを用いて上記2(4)に記載のPCR法を行うことにより、達成できる。PCR後の増幅産物について上記2(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
(6)ヒト化抗体発現ベクターの構築
上記2(1)に記載の遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、上記2(4)および(5)で構築したヒト化抗体のVHおよびVLをコードするcDNAをクローニングし、ヒト化抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、上記2(4)および(5)でヒト化抗体のVHおよびVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、上記2(1)に記載の遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングすることができる。
(7)遺伝子組換え抗体の一過性発現
作製した多種類の遺伝子組換え抗体の抗原結合活性を効率的に評価するために、上記2(3)および(6)に記載の遺伝子組換え抗体発現ベクター、あるいはそれらを改変した発現ベクターを用いて遺伝子組換え抗体の一過性発現を行うことができる。発現ベクターを導入する宿主細胞としては、遺伝子組換え抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができるが、その発現量の高さから、COS−7細胞(ATCC CRL1651)が一般に用いられる(Methods in Nucleic Acids Research, CRC press,283,1991)。COS−7細胞への発現ベクターの導入法としては、DEAE−デキストラン法(Methods in Nucleic Acids Research, CRC press,283,1991)、リポフェクション法(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,84,7413−7417,1987)などがあげられる。
発現ベクターの導入後、培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量及び抗原結合活性はELISA(Antibodies: ALaboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 14,1988; Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press Limited,1996)などにより測定できる。
(8)遺伝子組換え抗体の安定発現
上記2(3)および(6)に記載の遺伝子組換え抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換細胞を得ることができる。宿主細胞への発現ベクターの導入法としては、エレクトロポレーション法(Cytotechnology,3,133−140,1990)などがあげられる。遺伝子組換え抗体発現ベクターを導入する宿主細胞としては、遺伝子組換え抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、マウスSP2/0−Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと表記する)が欠損したCHO細胞(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,77,4216−4220,1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下、YB2/0細胞と表記する)などがあげられる。
発現ベクターの導入後、遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換体は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、G418 sulfate(以下、G418と表記する)などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択できる。動物細胞培養用培地としては、RPMI1640培地(日水製薬社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX−CELL302培地(JRH社製)、IMDM(GIBCO BRL社製)、Hybridoma−SFM(GIBCO BRL社製)、またはこれら培地にFBSなどの各種添加物を添加した培地などを用いることができる。得られた形質転換細胞を培地中で培養することで培養上清中に遺伝子組換え抗体を発現蓄積させることができる。培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性は、ELISAにより測定できる。また、形質転換細胞は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、DHFR増幅系などを利用して遺伝子組換え抗体の発現量を上昇させることができる。
遺伝子組換え抗体は、形質転換細胞の培養上清よりプロテインAカラムを用いて精製することができる(Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 8,1988; Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press Limited,1996)。また、その他に通常、タンパク質の精製で用いられる精製方法を使用することができる。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過等を組み合わせて行い、精製することができる。精製した遺伝子組換え抗体のH鎖、L鎖あるいは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、PAGEと表記する:Nature,227,680−685,1970)やウェスタンブロッティング法(Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 12,1988; Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press Limited,1996)などで測定することができる。
(9)遺伝子組換え抗体と抗原との結合活性評価
遺伝子組換え抗体と抗原との結合活性評価は、上記に記載のELISA法や、フローサイトメーターを用いたバインディングアッセイを用いて行うことができる。また、モノクローナル抗体と競合する抗体およびモノクローナル抗体が認識するエピトープに反応する遺伝子組換え抗体は、バインディングアッセイにおいて、対象の遺伝子組換え抗体を共存させて反応させ、モノクローナル抗体の結合を阻害できるか否かを確かめることにより選択できる。
3.抗体断片の作製
抗体断片は、上記1および2に記載の抗体をもとに遺伝子工学的手法あるいはタンパク質化学的手法により、作製することができる。
遺伝子工学的手法としては、目的の抗体断片をコードする遺伝子を構築し、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、大腸菌などの適当な宿主を用いて発現、精製を行うなどの方法があげられる。
タンパク質化学的手法としては、ペプシン、パパインなどのタンパク質分解酵素を用いた部位特異的切断、精製などの方法があげられる。
抗体断片として、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv、diabody、dsFv、6個のCDRを含むペプチドの製造法について以下に具体的に説明する。
(1)Fabの作製
Fabは、タンパク質化学的にはIgGをタンパク質分解酵素パパインで処理することにより、作製することができる。パパインの処理後は、元の抗体がプロテインA結合性を有するIgGサブクラスであれば、プロテインAカラムに通すことで、IgG分子やFc断片と分離し、均一なFabとして回収することができる(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, third edition,1995)。プロテインA結合性を持たないIgGサブクラスの抗体の場合は、イオン交換クロマトグラフィーにより、Fabは低塩濃度で溶出される画分中に回収することができる(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, third edition,1995)。また、Fabは遺伝子工学的には、多くは大腸菌を用いて、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、Fab発現用ベクターにクローニングし、Fab発現ベクターを作製することができる。Fab発現用ベクターとしては、Fab用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pIT106(Science,240,1041−1043,1988)などがあげられる。Fab発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにFabを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常タンパク質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるFabとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、培養上清中に活性を持ったFabが漏出する。リフォールディング後あるいは培養上清からは、抗原を結合させたカラムを用いることにより、均一なFabを精製することができる(Antibody Engineering, A Practical Guide,W. H. Freeman and Company,1992)。
(2)F(ab’)の作製
F(ab’)は、タンパク質化学的にはIgGをタンパク質分解酵素ペプシンで処理することにより、作製することができる。ペプシンの処理後は、Fabと同様の精製操作により、均一なF(ab’)として回収することができる(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, third edition, Academic Press,1995)。また、下記3(3)に記載のFab’をo−PDMやビスマレイミドヘキサンなどのようなマレイミドで処理し、チオエーテル結合させる方法や、DTNB[5,5’−dithiobis(2−nitrobenzoic acid)]で処理し、S−S結合させる方法によっても作製することができる(Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS,1996)。
(3)Fab’の作製
Fab’は、上記3(2)に記載のF(ab’)をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して得ることができる。また、Fab’は遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、Fab’発現用ベクターにクローニングし、Fab’発現ベクターを作製することができる。Fab’発現用ベクターとしては、Fab’用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pAK19(BIO/TECHNOLOGY,10,163−167,1992)などがあげられる。Fab’発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにFab’を生成蓄積させることができる。封入体からは、通常タンパク質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるFab’とすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収させることができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、プロテインGカラムなどを用いることにより、均一なFab’を精製することができる(Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS,1996)。
(4)scFvの作製
scFvは遺伝子工学的には、ファージまたは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、scFv発現用ベクターにクローニングし、scFv発現ベクターを作製することができる。scFv発現用ベクターとしては、scFvのDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(Pharmacia社製)、pHFA(Human Antibodies &Hybridomas,5,48−56,1994)などがあげられる。scFv発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、ヘルパーファージを感染させることで、ファージ表面にscFvがファージ表面タンパク質と融合した形で発現するファージを得ることができる。また、scFv発現ベクターを導入した大腸菌の封入体あるいはペリプラズムにscFvを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常タンパク質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるscFvとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なscFvを精製することができる(Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS,1996)。
(5)Diabodyの作製
Diabodyは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のVHとVLをリンカーがコードするアミノ酸残基が8残基以下となるように連結したDNAを作製し、diabody発現用ベクターにクローニングし、diabody発現ベクターを作製することができる。diabody発現用ベクターとしては、diabodyのDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(Pharmacia社製)、pHFA(Human Antibodies Hybridomas,5,48,1994)などがあげられる。diabody発現ベクターを導入した大腸菌の封入体あるいはペリプラズムにdiabodyを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常タンパク質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdiabodyとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なdiabodyを精製することができる(Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS,1996)。
(6)dsFvの作製
dsFvは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。まず、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のVHおよびVLをコードするDNAの適当な位置に変異を導入し、コードするアミノ酸残基がシステインに置換されたDNAを作製する。作製した各DNAをdsFv発現用ベクターにクローニングし、VHおよびVLの発現ベクターを作製することができる。dsFv発現用ベクターとしては、dsFv用のDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pULI9(Protein Engineering,7,697−704,1994)などがあげられる。VHおよびVLの発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにdsFvを生成蓄積させることができる。封入体あるいはペリプラズムからVHおよびVLを取得し、混合した後に、通常タンパク質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdsFvとすることができる。リフォールディング後は、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過などにより、さらに精製することができる(Protein Engineering,7,697−704,1994)。
(7)6個のCDRを含むペプチドの作製
6個のCDRを含むペプチドは、Fmoc法あるいはtBoc法等の化学合成法によって作製することができる。また、CDRを含むペプチドをコードするDNAを作製し、作製したDNAを適当な発現用ベクターにクローニングし、CDRペプチド発現ベクターを作製することができる。発現用ベクターとしては、CDRペプチドをコードするDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pLEX(Invitrogen社)、pAX4a+(Invitrogen社)などがあげられる。発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズマ層にを生成蓄積させることができる。封入体あるいはペリプラズマ層からCDRペプチドを得、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過等により、精製することができる(Protein Engineering,7,697,1994)。
4.本発明の医薬および治療剤
本発明のヒト化抗体を有効成分として含有する医薬は、HB−EGFが関与する各種疾患を治療することができる。
HB−EGFが関与する疾患としては、癌、心疾患、動脈硬化などがあげられる。
癌としては、乳癌、肝癌、膵癌、膀胱癌、卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍などの固形癌があげられる。また、いずれかの固形癌に伴う連続性転移、血行性転移またはリンパ性転移、腹膜播種などによる転移癌などもあげられる。また白血病(急性骨髄性白血病、T細胞性白血病など)、リンパ腫、ミエローマなどの造血細胞由来の癌(血液癌、hematological cancer、blood cancer)などの癌種があげられる。
本発明の抗体またはその抗体断片を有効成分とする医薬は、通常は薬理学的に許容される1つ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、又は口腔内、鼻腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内、腹腔内及び静脈内等の非経口投与をあげることができ、抗体又はペプチド製剤の場合、望ましくは静脈内投与をあげることができる。投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等があげられる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等があげられる。乳剤及びシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造できる。カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製される。座剤はカカオ脂、水素化脂肪又はカルボン酸等の担体を用いて調製される。また、噴霧剤は該抗体又はペプチドそのもの、ないしは受容者の口腔及び気道粘膜を刺激せず、かつ該化合物を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製される。担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例表される。該抗体及び用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
投与量又は投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜30mg/kgである。
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の例示であり、本発明の範囲を限定するものでない。
実施例1
抗HB−EGFモノクローナル抗体の作製
(1)免疫原の調製
R&Dシステム社製リコンビナント分泌型ヒトHB−EGF(カタログ番号 259−HE/CF)凍結乾燥品をダルベッコリン酸バッファー(Phosphate buffered saline:PBS)にて溶解し、免疫原として用いた。
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
実施例1(1)で調製したリコンビナント分泌型ヒトHB−EGF 25μgを水酸化アルミニウムアジュバント〔Antibodies−A Laboratory ManuaL, CoLd Spring Harbor Laboratory,p99、1988〕2 mgおよび百日咳ワクチン(千葉県血清研究所製)1×10細胞とともにHB−EGF欠損マウス(大阪大学微生物病研究所 細胞機能分野研究室より供与、PNAS、VOL.100、NO.100、3221−3226、2003)に投与した。投与2週間後より、該HB−EGF 25μgのみを1週間に1回、計4回投与した。該マウスの眼底静脈より部分採血し、その血清抗体価を以下に示す酵素免疫測定法で調べ、十分な抗体価を示したマウスから最終免疫3日後に脾臓を摘出した。脾臓をMEM(Minimum Essential Medium)培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(1200rpm、5分間)した。得られた沈殿画分にトリス−塩化アンモニウム緩衝液(PH7.6)を添加し、1〜2分間処理することにより赤血球を除去した。得られた沈殿画分(細胞画分)をMEM培地で3回洗浄し、細胞融合に用いた。
(3)酵素免疫測定法(バインディングELISA)
アッセイには実施例1(1)のリコンビナントヒトHB−EGFを96ウェルのELISA用プレート(グライナー社)に0.5μg/mL、50μL/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させたものを用いた。該プレートを洗浄後、1%牛血清アルブミン(BSA)−PBSを50μL/ウェル加え、室温で1時間放置し、残っている活性基をブロックした。放置後、1%BSA−PBSを捨て、該プレートに一次抗体として被免疫マウス抗血清、ハイブリドーマ培養上清を50μL/ウェル分注し、2時間放置した。該プレートを0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート[(ICI社商標Tween 20相当品:和光純薬社製)]/PBS(以下Tween−PBSと表記)で洗浄後、2次抗体としてペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウスIgGガンマ鎖(キルケガード アンド ペリー ラボラトリーズ社)を50μL/ウェル加えて室温、1時間放置した。該プレートをTween−PBSで洗浄後、ABTS〔2.2−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾール−6−スルホン酸)アンモニウム〕基質液〔1mmoL/L ABTS/0.1moL/L クエン酸バッファー(PH4.2)、0.1%H〕を添加し、発色させOD415nmの吸光度をプレートリーダー(Emax;Molecular Devices社)を用いて測定した。
(4)マウス骨髄腫細胞の調製
8−アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞株P3X63Ag8U.1(P3−U1:ATCCより購入)を10%ウシ胎児血清添加RPMI1640(インビトロジェン社)で培養し、細胞融合時に2×10個以上の細胞を確保し、細胞融合に親株として供した。
(5)ハイブリドーマの作製
実施例1(2)で得られたマウス脾細胞と実施例1(4)で得られた骨髄腫細胞とを10:1になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5分間)した。得られた沈澱画分の細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングリコール−1000(PEG−1000)1g、MEM培地1mL、およびジメチルスルホキシド0.35mLの混液を10個のマウス脾細胞あたり0.5mL加え、該懸濁液に1〜2分間毎にMEM培地1mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにした。該懸濁液を遠心分離(900rpm、5分間)し、得られた沈澱画分の細胞をゆるやかにほぐした後、該細胞を、メスピペットによる吸込み吸出しでゆるやかにHAT培地〔10%ウシ胎児血清添加RPMI1640培地にHAT Media Supplement(インビトロジェン社製)を加えた培地〕100mL中に懸濁した。該懸濁液を96ウェル培養用プレートに200μL/ウェルずつ分注し、5%COインキュベーター中、37℃で10〜14日間培養した。培養後、培養上清を実施例1(3)に記載した酵素免疫測定法で調べ、リコンビナントヒトHB−EGFに反応するウェルを選び、そこに含まれる細胞から限界希釈法によるクローニングを2回繰り返し、抗HB−EGFモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株KM3566、KM3567およびKM3579を確立した。
(6)モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理した8週令ヌード雌マウス(BALB/c)に実施例1(5)で得られたハイブリドーマ株を5〜20×10細胞/匹それぞれ腹腔内注射した。10〜21日後、ハイブリドーマが腹水癌化することにより腹水のたまったマウスから、腹水を採取(1〜8mL/匹)した。該腹水を遠心分離(3000rpm、5分間)し固形分を除去した。精製IgGモノクローナル抗体は、カプリル酸沈殿法〔Antibodies−A Laboratory ManuaL, Cold Spring Harbor Laboratory,1988〕により精製することにより取得した。モノクローナル抗体のサブクラスはサブクラスタイピングキットを用いたELISA法により決定した。モノクローナル抗体KM3566のサブクラスはIgG1、KM3567のサブクラスはIgG1、モノクローナル抗体KM3579はIgG2bであった。
実施例2
HB−EGFに対する抗HB−EGFモノクローナル抗体の反応性
(1)バインディングELISAにおけるHB−EGFとの反応性
実施例1(3)に示した方法に従って行なった。1次抗体には抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579、市販抗HB−EGFモノクローナル抗体MAB259(R&D社製)、および陰性対照抗体KM511(抗GCSF誘導体モノクローナル抗体)の各精製抗体を、10μg/mLから5倍希釈で段階的に希釈したものを用いた。結果を図1Aに示した。
抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579、およびMAB259は、いずれもリコンビナントヒトHB−EGFに反応し、BSAには全く反応しなかった。
(2)ウエスタンブロットにおけるHB−EGFとの反応性
1レーンあたり、20ngのリコンビナントヒトHB−EGF(R&D社製)をSDS−ポリアクリルアミド電気泳動にて分画し、泳動後のゲルをPVDF膜に転写した。該膜を10%BSA−PBSでブロッキング後、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579、MAB259および陰性対照抗体KM511の精製抗体を、それぞれ10%BSA−PBSを用いて1μg/mLに希釈し、室温で2時間反応させた。該膜をTween−PBSでよく洗浄した後、希釈したペルオキシターゼ標識マウスイムノグロブリン(ザイメット社)を、室温で1時間反応させた。該膜をTween−PBSでよく洗浄し、ECLTM western blotting detection reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いてバンドを検出した。
抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579およびMAB259はいずれも、リコンビナント分泌型ヒトHB−EGFの分子量に該当する15〜30kDa付近のバンドを検出した。
(3) 抗HB−EGFモノクローナル抗体のHB−EGF−EGFR結合阻害活性の評価
抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579およびMAB259のHB−EGF−EGFR結合阻害活性を32D/EGFR細胞(EGFR遺伝子をマウス骨髄由来細胞株32D clone3(ATCC CRL−11346)に導入して造成した細胞株。以下、32D/EGFRと記す。)とビオチン標識HB−EGFを用いて検討した。
リコンビナント分泌型HB−EGFはEZ−Link Sulfo−NHS−Biotin(ピアス社製)を用いて常法によりビオチン標識を行った。
KM3566、KM3567、KM3579およびMAB259を10μg/mLより5倍希釈で段階的に希釈し、50μL/ウェルで96ウェルプレートに分注した。その後、32D/EGFR細胞を1×10個/50μL/ウェルで分注した。更に、至適濃度に希釈したビオチン標識HB−EGFとアレクサ647標識ストレプトアビジンをそれぞれ10μL/ウェル、50μL/ウェルで分注し、混合後、室温遮光下で3時間反応させた。レーザー光633nm He/Neで励起される650nm〜685nmの波長を8200 Cellular Detection System(アプライドバイオシステム社製)で測定した。
その結果、図1Bに示すように、KM3566、KM3567、KM3579およびMAB259は、いずれも抗体濃度依存的に、ビオチン化HB−EGFのEGFRへの結合を阻害した。従って、全ての抗HB−EGFモノクローナル抗体は、HB−EGFとEGFRとの結合を阻害することが明らかになった。
実施例3
HB−EGFに対する抗HB−EGFモノクローナル抗体の中和活性の検討
抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579およびMAB259のHB−EGF中和活性を、HB−EGF依存性細胞を用いた細胞増殖阻害アッセイで調べた。HB−EGF依存性細胞としては、32D/EGFRを用いた。抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3567、MAB259 、および陰性対照抗体KM511の精製抗体を、それぞれ20μg/mLより3〜4倍希釈で段階的に希釈し、50μL/ウェルで96ウェルプレートに分注した。次に、0.1μg/mLのリコンビナントヒトHB−EGF(R&D社)を、10μL/ウェルで分注し、混合した後氷上で2時間反応させた。その後、32D/EGFR細胞を、1×10個/40μL/ウェルで播種し、36時間培養した。生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク社)を10μL/ウェルで添加し、2時間後にOD450nmの吸光度をプレートリーダー(Emax;Molecular Devices社)を用いて測定した。
HB−EGF添加、抗体非添加のウェルの吸光度を阻害率0%とし、HB−EGF非添加、抗体非添加のウェルの吸光度を阻害率100%として、各ウェルの細胞増殖阻害率を算出した結果を図2Aに示した。その結果、KM3566は、細胞株32D/EGFRに対してMAB259と同程度のHB−EGF依存性増殖の阻害活性を示した。従って、2つの抗体は同程度のHB−EGF中和活性を有していることが明らかになった。一方、KM3579は細胞株32D/EGFRの増殖を全く阻害しなかったことから、HB−EGF中和活性を有さないことが明らかになった。
更に、同様にしてKM3567の中和活性を検討した結果を図2Bに示した。その結果、KM3567は、KM3566と比べて活性は弱いものの、HB−EGF依存性細胞増殖の阻害活性を有していた。
実施例4
膜型HB−EGFに対する抗HB−EGFモノクローナル抗体の反応性の検討
1〜5×10細胞のヒト胃癌細胞株MKN−28(HSRRB JCRB0253)、ヒト卵巣癌ES−2(ATCC CRL−1978)およびヒト乳癌細胞株MDA−MB−231(ATCC HTB−26)に、0.1%BSA−PBSで各濃度に希釈した抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566、KM3567、KM3579、MAB259、および陰性対照抗体KM511を加え、混合して全量を50μLとした。これらの細胞懸濁液を、氷上で40分間反応後、0.1%BSA−PBSで3回洗浄を行った。該細胞に、0.1%BSA−PBSで希釈調製したFITC標識ヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)ポリクローナル抗体(Kirkegaard & Perry Laboratories社)を50μL添加し、氷冷下40分間反応させた。0.1%BSA−PBSで洗浄を行った後、0.1%BSA−PBSに懸濁してフローサイトメーター(コールター社製)用いて、蛍光強度を測定した。
図3に、MKN−28およびES−2に、上記モノクローナル抗体を20μg/mLから2倍希釈で反応させた場合の平均蛍光強度(MFI値)を示す。図4に、ヒト乳癌細胞株MDA−MB−231に、上記モノクローナル抗体を20μg/mLで反応させた場合のヒストグラムを示す。その結果、MKN−28についてはKM3566、KM3579の結合活性が認められ、またES−2では、KM3566>KM3579の順で結合活性が認められた。更に、MDA−MB−231ではKM3566>KM3567≒KM3579の順で結合活性が認められた。また、いずれの細胞についてもMAB259のMFI値は陰性対照抗体KM511および抗体非添加陰性対照と同程度であり、細胞への結合がほとんど認められなかった。以上より、モノクローナル抗体KM3566、KM3567およびKM3579は、癌細胞株の膜型および細胞膜に結合したHB−EGFに結合することが明らかとなった。
実施例5
抗HB−EGFモノクローナル抗体の可変領域をコードするcDNAの単離、解析
(1)抗HB−EGFモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞からのmRNAの調製
実施例1に記載のハイブリドーマKM3566より、RNAeasy Maxi kit(QIAGEN社製)およびOligotexTM−dT30<Super>mRNA Purification Kit(Takara社製)を用いて、添付の使用説明書に従い、ハイブリドーマ細胞5×10細胞より約4.8μgのmRNAを調製した。
(2)抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566のH鎖およびL鎖可変領域の遺伝子クローニング
実施例5(1)で取得した抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566のmRNAの1μgから、BD SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit(BD Biosciences社製)を用いて、添付の使用説明書に従い、5’側にキット添付のBD SMART IITM A Oligonucleotide配列を有するcDNAを取得した。そのcDNAを鋳型として、キット添付のユニバーサルプライマーAmixと、配列番号6で表される塩基配列を有するマウスIg(γ)特異的プライマーとを用いてPCR反応を行い、VHのcDNA断片を増幅した。またIg(γ)特異的プライマーの代わりに配列番号7で表される塩基配列を有するマウスIg(κ)特異的プライマーを用いてPCRを行い、VLのcDNA断片を増幅した。PCRは、94℃で5分間加熱後、94℃で30秒間、72℃で3分間からなる反応サイクルを5回、94℃で30秒間、70℃で30秒間、72℃で3分間からなる反応サイクルを5回、94℃で30秒間、68℃で30秒間、72℃で3分間からなる反応サイクルを30回それぞれ行った後、72℃で10分間反応させた。PCRはPTC−200 DNA Engine(BioRad社製)を用いて行った。
得られたPCR産物をクローニングし、塩基配列を決定するため、アガロースゲル電気泳動で分離し、H鎖、L鎖各々約600bpのPCR産物をGel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて抽出した。得られた抽出断片を、SmaIで消化したpBluescriptII SK(−)ベクターに、Ligation High(東洋紡績社製)を用いて連結した後、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69, 2110(1972)]により大腸菌DH5α株を形質転換した。得られた形質転換体より自動プラスミド抽出機(クラボウ社製)を用いてプラスミドを抽出し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(PEバイオシステムズ社製)を用い添付の説明書に従って反応後、同社のシーケンサーABI PRISM3700によりクローニングしたPCR産物の塩基配列を解析した。その結果、cDNAの5’末端に開始コドンと推定されるATG配列が存在する、完全長のH鎖cDNAを含むプラスミドKM3566VH10G2およびL鎖cDNAを含むプラスミドKM3566VL10K2が取得された。
(3)抗HB−EGFモノクローナル抗体V領域のアミノ酸配列の解析
プラスミドKM3566VH10G2に含まれていたVHの全塩基配列を配列番号8に、該配列から推定された、シグナル配列を含んだVHの全アミノ酸配列を配列番号9に、プラスミドKM3566VL10K2に含まれていたVLの全塩基配列を配列番号10におよび該配列から推定された、シグナル配列を含んだVLの全アミノ酸配列を配列番号11にそれぞれ示した。既知のマウス抗体の配列データ[SEQUENCES of Proteins of Immunological Interest、US Dept.Health and Human Services(1991)]との比較、並びに精製した抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566のH鎖及びL鎖のN末端アミノ酸配列をプロテインシーケンサー(島津製作所社製:PPSQ−10)を用いて解析した結果との比較から、単離した各々のcDNAは分泌シグナル配列を含む抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566をコードする完全長cDNAであり、H鎖については配列番号9に記載のアミノ酸配列の1から19番目が、L鎖については配列番号11に記載のアミノ酸配列の1から20番目が分泌シグナル配列であることが明らかとなった。
次に、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566のVHおよびVLのアミノ酸配列の新規性について検討した。配列解析システムとしてGCG Package(version 9.1、Genetics Computer Group社製)を用い、既存のタンパク質のアミノ酸配列データベースをBLASTP法[Nucleic Acids Res.,25,3389(1997)]により検索した。その結果、VH、VLともに完全に一致するアミノ酸配列は認められず、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566のVHおよびVLは新規なアミノ酸配列を有していることが確認された。
また、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566のVHおよびVLのCDRを、既知の抗体のアミノ酸配列と比較することにより同定した。抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566のVHのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を配列番号12、13および14に、VLのCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を配列番号15、16および17にそれぞれ示した。
実施例6
抗HB−EGFキメラ抗体の作製
(1)抗HB−EGFキメラ抗体発現ベクターpKANTEX3566の構築
WO97/10354に記載のヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93と、実施例5(2)で得られたプラスミドKM3566VH10G2およびKM3566VL10K2を用いて、抗HB−EGFキメラ抗体発現ベクターpKANTEX3566を以下のようにして構築した。
プラスミドKM3566VH10G2を鋳型として100ng使用し、10×KOD緩衝液10μL、2mmol/L dNTP 10μL、25mmol/Lの塩化マグネシウムを2μL、10μmol/Lの配列番号18および19記載の塩基配列を有するプライマーをそれぞれ1μL、KOD polymerase(東洋紡績社製)1μL、を含む総量100μLからなる溶液を、96℃で3分間加熱後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1分間の反応を25サイクル、72℃で8分間反応させた。この反応によって、pKANTEX93に挿入するための制限酵素認識配列が付加されたKM3566のVHをコードする遺伝子配列を合成した。同様に、プラスミドKM3566VL10K2を鋳型として100ng、10×KOD緩衝液10μL、2mmol/LのdNTPを10μL、25mmol/Lの塩化マグネシウムを2μL、10μmol/Lの配列番号20および21記載の塩基配列を有するプライマーをそれぞれ1μL、KOD polymerase(東洋紡績社製)1μL、を含む総量100μLからなる溶液を、96℃で3分間加熱後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1分間の反応を25サイクル、72℃で8分間反応させた。この反応によって、pKANTEX93に挿入するための制限酵素認識配列が付加されたKM3566のVLをコードする遺伝子配列を合成した。それぞれのPCR反応産物をエタノール沈殿することにより精製、濃縮し、SmaIで消化したpBluescriptII SK(−)ベクターにクローニングすることで、KM3566のVHをコードする遺伝子配列を含むプラスミドpKM3566VHと、VLをコードする遺伝子配列を含むプラスミドpKM3566VLとを取得した。
次に、ベクターpKANTEX93と、上記で得られたpKM3566VLに、それぞれ制限酵素BsiWI(New England Biolabs社製)を加えて55℃で1時間反応後、引き続き制限酵素EcoRI(TaKaRa社製)を加えて、37℃で1時間反応させた。その反応液をアガロースゲル電気泳動した後、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約12.8kbのpKANTEX93のEcoRI−BsiWI断片および約0.43kbのVLの、EcoRI−BsiWI断片をそれぞれ回収した。得られた2種類の断片をLigation high(東洋紡績社製)を用いて添付の説明書に従って連結し、得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製して制限酵素処理により確認し、目的の約0.43kbのEcoRI−BsiWI断片が挿入されたプラスミドpKANTEX3566VLを取得した。
次に、上記で得られたpKANTEX3566VLとpKM3566VHに、それぞれ制限酵素ApaI(TaKaRa社製)を加えて37℃で1時間反応させた後、さらに制限酵素NotI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で1時間反応させた。その反応液をアガロースゲル電気泳動にて分画し、約13.2kbのpKANTEX3566VLおよび約0.47kbのVHの、ApaI−NotI断片をそれぞれ回収した。得られた2種類の断片をLigation High(東洋紡績社製)を用いて添付の説明書に従って連結し、得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製して制限酵素処理により確認し、目的の約0.47kbのApaI−NotI断片が挿入されたプラスミドpKANTEX3566を取得した。該プラスミドに関して、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(PEバイオシステムズ社製)を用いて、添付の説明書に従って反応後、同社のシーケンサーABI PRISM3700により塩基配列を解析した。その結果、目的のKM3566のVHをコードするcDNA、およびVLをコードするcDNAがそれぞれクローニングされた、抗HB−EGFキメラ抗体発現ベクターpKANTEX3566を取得した。ベクター構築の概略図を図5に示した。
(2)抗HB−EGFキメラ抗体の動物細胞での発現
上記(1)で得られた抗HB−EGFキメラ抗体発現ベクターpKANTEX3566を用いて抗HB−EGFキメラ抗体の動物細胞での発現を、常法[Antibody Engineering, A Practical Guide,W.H.Freeman and Company(1992)]により行い、抗HB−EGFキメラ抗体を産生する形質転換株KM3966を取得した。
(3)精製キメラ抗体の取得
上記(2)で得られた形質転換株KM3966を、通常の培養法で培養した後、細胞懸濁液を回収し、3000rpm、4℃の条件で10分間の遠心分離を行って培養上清を回収した後、0.22μm孔径MillexGVフィルター(Millipore社製)を通して濾過滅菌した。得られた培養上清よりProtein A High−capacityレジン(Millipore社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966を精製した。得られた抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の精製標品の精製度および発現分子サイズを、グラジュエントゲル(ATTO社製、E−T520L)を用いて、添付の説明書に従い、SDS−PAGEにより確認した。
結果を図6に示した。精製した抗HB−EGFキメラ抗体KM3966は、非還元条件下では分子量が150〜200kDa付近に1本のバンドが、還元条件下では約50kDaと約25kDaの2本のバンドが認められた。これらの分子量は、IgGクラスの抗体が、非還元条件下では分子量は約150kDaであり、還元条件下では、分子内のS−S結合が切断され、約50kDaの分子量のH鎖と、約25kDaの分子量のL鎖に分解されるという報告[Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Chapter 14(1988)、Monoclonal Antibodies−Principles and Practice、Academic Press Limited(1996)]と一致している。よって、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966が正しい構造の抗体分子として発現されていることが確認された。
実施例7
抗HB−EGFキメラ抗体の活性評価
(1)ヒト固形癌細胞株に対する結合活性
実施例6で得られた抗HB−EGFキメラ抗体KM3966のヒト固形癌細胞株に対する結合性を評価するため、蛍光抗体法により以下のように検討した。
ヒト卵巣癌細胞株のMCAS(JCRB0240)、RMG−I(JCRB IF050315)、ES−2(CRL1978)、ヒト乳癌細胞株のMDA−MB−231(ATCC HTB−26)、T47D(HTB−133)、SK−BR−3(ATCC HTB−30)、ZR−75−1(ATCC CRL−1500)、ヒト胃癌細胞株のMKN−28(HSRRB JCRB0253)の各種細胞株を、0.02%−EDTA Solution(ナカライテスク社製)で剥離しPBSで洗浄後、96ウェルU底プレート(FALCON社製)に、1〜2×10個/50μL/ウェルずつ分注した。1%BSA−PBSで20μg/mLに調製した抗HB−EGFキメラ抗体KM3966溶液を、50μL/ウェルずつ分注してプレートミキサーで攪拌し、氷上に30分間静置した。PBSにより2回洗浄後、100倍希釈した2次抗体FITC−conjugated AffiniPure F(ab’) Fragment Rabbit Anti−Human IgG(H+L)(Jackson Laboratories社製)を、50μL/ウェルずつ添加し、プレートミキサーで攪拌し、遮光して氷上に30分間静置した。PBSで2回洗浄後、フローサイトメーターEPICS XL System II v3.0(BECKMAN COULTER社製)を用いて蛍光強度を測定した。陰性対照抗体としては抗FGF8キメラ抗体KM3034(US2004−0253234)を用いた。
結果を図7に示した。いずれのヒト固形癌細胞株の膜型および細胞膜に結合したHB−EGFに対しても、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966は結合した。
(2)抗HB−EGFキメラ抗体KM3966のヒトHB−EGFに対する結合活性測定 マウス抗体KM3566とキメラ抗体KM3966のヒトHB−EGFに対する結合活性を反応速度論的に解析するため、ビアコアを用いて結合活性測定を行った。以下の操作は全てBiacoreT−100(Biacore社製)を用いて行った。HBS−EP Buffer(Biacore社製)を用いて5μg/mLに調製したヒトHB−EGF(R&D社製)を、アミンカップリング法によりCM5センサーチップ(Biacore社製)に80RU(resonance unit)になるように固層化した。その後9nmol/Lから5段階に希釈した各種抗体を10μL/minの速度でチップ上に流し、各濃度におけるセンサーグラムを解析し、各抗体のヒトHB−EGFに対する結合速度定数及び解離速度定数を算出した。
その結果、両抗体とも本抗体濃度域では、ヒトHB−EGFと結合後、ほとんど解離反応が認められないことが明らかとなり、解離速度定数については算出できなかった。一方で結合速度定数については、算出が可能であり、その結果を表1に示した。本結果より、両抗体は、ヒトHB−EGFに対してほぼ同等の結合活性を有することが確認された。
Figure 0005532401
(3)細胞膜に結合しているHB−EGFに対する抗HB−EGFモノクローナル抗体の反応性
細胞株を0.02%−EDTA Solution(ナカライテスク社製)で剥離しPBSで洗浄後、RPMI1640培地(GIBCO−BRL社製)を加え、300G、5分間遠心して上清を除去した。細胞に、0.1%BSA−PBSで希釈したリコンビナントヒトHB−EGF(R&D社製)を1μg/mLで添加し、37℃で10分間反応させた。リコンビナントヒトHB−EGFを添加しない場合は、0.1%BSA−PBSのみを添加し、同様に37℃で10分間反応させた。1%BSA−PBSにより2回洗浄後、1%BSA−PBSで10μg/mLに調製した抗HB−EGFキメラ抗体KM3966溶液を、50μL/ウェルで分注してプレートミキサーで攪拌し、氷上に30分間静置した。PBSにより2回洗浄後、100倍希釈した2次抗体FITC−conjugated AffiniPure F(ab’) Fragment Rabbit Anti−Human IgG(H+L)(Jackson Laboratories社製)を50μL/ウェルずつ添加し、プレートミキサーで攪拌して遮光し、氷上に30分間静置した。PBSにより2回洗浄後、フローサイトメーターEPICS XL System II v3.0(BECKMAN COULTER社製)にて蛍光強度を測定した。陰性対照抗体としては抗FGF8キメラ抗体KM3034(US2004−0253234)を用いた。
その結果、全ての細胞株において、リコンビナントHB−EGFを処理した細胞は、処理していない細胞に比べて、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の反応性が増加した(図8)。従って、本発明の抗HB−EGFキメラ抗体KM3966は、膜型および細胞膜に結合したHB−EGFの両方に結合することが明らかになった。
(4)ヒト固形癌細胞株に対する中和活性
実施例6で得られた、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966のHB−EGFに対する中和活性を評価するため、HB−EGF依存性増殖阻害活性を測定した。HB−EGF依存性細胞としては、HB−EGF陽性ヒト卵巣癌細胞株RMG−I(JCRB IF050315)およびヒト胃癌細胞株MKN−28(HSRRB JCRB)を用いた。
細胞株を0.02%−EDTA Solution(ナカライテスク社製)で剥離しPBSで洗浄後、RPMI1640培地(GIBCO−BRL社製)(無血清)を加え、300G、5分間遠心分離して上清を除去した。同培地で細胞を懸濁後、RMG−Iは2.5×10個/50μL/ウェル、MKN−28は1×10個/50μL/ウェルで96ウェルプレートに播種した。0.1%BSA−PBSで希釈したリコンビナントヒトHB−EGF(R&D社製)を、RMG−Iの場合は3ng/mLの濃度のものを50μL/ウェル、MKN−28の場合は30ng/mLの濃度のものを50μL/ウェルで添加した後、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966を30μg/mLから10倍で4段階に希釈し、50μL/ウェルで添加して混合した。陰性対照抗体としてhuman IgG(三菱ウェルファーマ社製)を用いた。37℃で72時間培養した後、生細胞数測定試薬WST−1(ナカライテスク社製)15μL/ウェルを添加し、2時間後にOD450nmの吸光度をプレートリーダー(Emax;Molecular Devices社製)を用いて測定した。
結果を図9に示した。RMG−I、MKN−28ともに、HB−EGF添加による細胞増殖が認められ、HB−EGF依存性増殖を示した。抗HB−EGFキメラ抗体KM3966はHB−EGF依存性細胞増殖を抗体濃度依存的に抑制し、中和活性を示した。
(5)抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)
実施例6で得られた抗HB−EGFキメラ抗体KM3966のADCC活性を、以下に示す方法に従って測定した。
(5)−1 標的細胞溶液の調製
ヒト卵巣癌細胞株のMCAS、RMG−I、ES−2、ヒト乳癌細胞株のMDA−MB−231、T47D、SK−BR−3、ZR−75−1、ヒト胃癌細胞株のMKN−28の各種細胞株を0.02%−EDTA Solution(ナカライテスク社製)で剥離し、1%FCS(JRH社製)を含むフェノールレッド不含RPMI1640培地(Invitrogen社製)(以下、ADCC用培地と記す)で洗浄後、同培地で至適濃度に調製して標的細胞溶液とした。
(5)−2 エフェクター細胞溶液の調製
末梢血単核球(Peripheral blood mononuclear cell:PBMC)は、健常人末梢血から以下に示した方法により分離した。ヘパリンナトリウム注N「シミズ」(清水製薬社製)を少量含ませたシリンジで健常人末梢血50mLを採血した。採取した末梢血に同量の生理食塩水(大塚製薬製)を加えて希釈し、良く攪拌した。15mLチューブ(Greiner社製)に約6.5mLずつ分注したPolymorphprep(NYCOMED社製)の上に、同量の希釈末梢血を静かに重層し、室温で800G、30分間遠心分離して単核球層を分離した。ADCC用培地を用いて2回洗浄した後、同培地により至適濃度に調製し、エフェクター細胞溶液とした。
(5)−3 ADCC活性の測定
96ウェルU底プレート(FALCON社製)の各ウェルに、抗体希釈溶液を50μL分注しておき、(5)−1で調製した標的細胞溶液を50μL、(5)−2で調製したエフェクター細胞溶液を50μL添加して(エフェクター細胞(E)と標的細胞(T)の比は25とした)、全量を150μLとし、37℃で4時間反応させた。標的細胞自然遊離の値は、標的細胞溶液50μL、培地100μLを加えることにより、また、標的細胞およびエフェクター細胞自然遊離の値は、標的細胞溶液50μL、エフェクター細胞50μL、培地50μLを加えることにより取得した。標的細胞全遊離の値は、標的細胞溶液50μL、培地80μLを加え、反応終了45分前に9%Triton X−100溶液を20μL添加することにより取得した。反応後、プレートを遠心分離し、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を、LDH−Cytotoxic Test(Wako社製)を用いて、添付説明書に従って吸光度を測定することで検出した。ADCC活性は次式により求めた。
(式)
ADCC活性(%)=([検体の吸光度]−[標的細胞およびエフェクター細胞自然遊離の吸光度])/([標的細胞全遊離の吸光度]−[標的細胞自然遊離の吸光度])×100
結果を図10に示した。抗HB−EGFキメラ抗体KM3966はHB−EGF陽性ヒト固形癌細胞株に対して、抗体濃度依存的に細胞傷害活性を示した。
(6)マウスゼノグラフトを用いた抗腫瘍活性評価
実施例6で得られた抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の抗腫瘍活性を評価するため、ヒト卵巣癌、ヒト乳癌のマウスゼノグラフト初期癌および進行癌モデルを用いて評価を行なった。
(6)−1 初期癌モデルでの評価
ヒト卵巣癌細胞株のMCASおよびES−2を0.02%−EDTA Solution(ナカライテスク社製)で剥離しPBSで洗浄後、RPMI1640培地(GIBCO−BRL社製)を加え、300G、5分間遠心分離して上清を除去した。同培地を加えて遠心分離操作により洗浄後、至適濃度に調製した細胞懸濁液をSCIDマウス雌6−8週齢(日本クレア社製)の右脇下にそれぞれ100μLで皮下移植した。同日から、抗体投与群はPBSで希釈した抗体溶液を、コントロール群はPBSのみを100μLずつ尾静脈投与した(1群5−7匹)。投与は1週間に2回、計8回行い、腫瘍が観察された時点からノギスで腫瘍径を測定した。腫瘍体積は以下の式により算出した。
(式) 腫瘍体積(mm)=長径×短径×0.5
結果を図11に示した。抗HB−EGFキメラ抗体KM3966は、卵巣癌細胞株MCASおよびES−2の腫瘍増殖を有意に阻害した。従って、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966は、移初期癌モデルにおいて、抗腫瘍効果を有することが明らかになった。。
(6)−2 進行癌モデルでの評価
ヒト卵巣癌細胞株のMCASおよびES−2、ヒト乳癌細胞株MDA−MB−231を0.02%−EDTA Solution(ナカライテスク社製)で剥離しPBSで洗浄後、RPMI1640培地(GIBCO−BRL社製)を加え、300 G、5分間遠心して上清を除去した。同培地を加えて遠心分離操作により洗浄後、至適濃度に調製した細胞懸濁液をSCIDマウス雌6−8週齢(日本クレア社製)の右脇下にそれぞれ100μLで皮下移植した。経過を観察して、腫瘍体積が100mm前後になった段階でマウスを選抜し、各群の平均腫瘍体積が同等になるように群分けを行った。同日から、抗体投与群はPBSで希釈した抗体溶液を、コントロール群はPBSのみを100μLずつ尾静脈投与した(1群6−7匹)。投与は1週間に2回、計8回行い、抗体投与時点からノギスで腫瘍径を測定した。腫瘍体積は以下の式により算出した。
(式) 腫瘍体積(mm)=長径×短径×0.5
結果を図12に示した。その結果、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966は、卵巣癌細胞株MCAS、ES−2および乳癌細胞株MDA−MB−231の腫瘍増殖を有意に阻害した。従って、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966は、進行癌モデルでおいて、抗腫瘍活性を有することが明らかになった。
実施例8
抗HB−EGF抗体のヒト血液癌細胞株に対する反応性および抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)の評価
(1)ヒト血液癌細胞株におけるHB−EGF発現解析
ヒト血液癌細胞株におけるHB−EGF発現を評価するため、蛍光抗体法により検討した。ヒト急性骨髄性白血病細胞株のML−1(DSMZ ACC464)、MOLM−13(DSMZ ACC554)、MV−4−11(ATCC CRL9591)、HL−60(ATCC CCL−240)、NB−4(DSMZ ACC207)、KG−1a(ATCC CCL−246.1)およびヒトT細胞性白血病細胞株のKarpas299(DSMZ ACC31)、Jurkat(RCB RCB0806)をPBSで洗浄後、至適濃度に調製し、96ウェルU底プレート(FALCON社製)に50μL/ウェル(約2×10cells)で分注した。1%BSA−PBSにて20μg/mLに調製した抗HB−EGFマウス抗体KM3566溶液を50μL/ウェルを分注してプレートミキサーで攪拌し、氷上に30分間静置した。PBSにより2回洗浄後、50倍希釈した2次抗体Anti−mouse Igs/FITC Goat F(ab’)(DAKO社製)を50μL/ウェルで添加し、プレートミキサーで攪拌して遮光して氷上に30分間静置した。PBSで2回洗浄後、フローサイトメーターEPICS XL System II v3.0(BECKMAN COULTER社製)を用いて、蛍光強度を測定した。陰性対照抗体としてはmouse IgG1(DAKO社製)を用いた。
結果を図13に示した。KM3566は、T細胞性白血病および急性骨髄性白血病細胞株に特異的に結合した。従って、ヒト血液癌細胞株おいて、HB−EGFが発現していることが確認された。
(2)ヒト血液癌細胞株に対する抗HB−EGFキメラ抗体の抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)
HB−EGF発現が確認された急性骨髄性白血病細胞株に対する、HB−EGFキメラ抗体KM3966のADCC活性を、以下に示す方法に従って測定した。
(2)−1 標的細胞溶液の調製
ヒト急性骨髄性白血病細胞株のML−1、MOLM−13、MV−4−11、HL−60、NB−4およびKG−1aをPBSで洗浄後、ADCC用培地で洗浄後、同培地で至適濃度に調製して標的細胞溶液とした。
(2)−2 エフェクター細胞溶液の調製
末梢血単核球(Peripheral blood mononuclear cell:PBMC)は、健常人末梢血から以下に示した方法により分離した。ヘパリンナトリウム注N「シミズ」(清水製薬社製)を少量含ませたシリンジで健常人末梢血50mLを採血した。採取した末梢血に同量の生理食塩水(大塚製薬製)を加えて希釈し、良く攪拌した。15mLチューブ(Greiner社製)に約6.5mLずつ分注したPolymorphprep(NYCOMED社製)の上に、同量の希釈末梢血を静かに重層し、室温で800G、30分間遠心分離して単核球層を分離した。ADCC用培地を用いて2回洗浄した後、同培地により至適濃度に調製し、エフェクター細胞溶液とした。
(2)−3 ADCC活性の測定
96ウェルU底プレート(FALCON社製)の各ウェルに、抗体希釈溶液を50μL分注しておき、(2)−1で調製した標的細胞溶液を50μL、(2)−2で調製したエフェクター細胞溶液を50μL添加して(エフェクター細胞(E)と標的細胞(T)の比は25とした)、全量を150μLとし、37℃で4時間反応させた。標的細胞自然遊離の値は、標的細胞溶液50μL、培地100μLを加えることにより、また、標的細胞およびエフェクター細胞自然遊離の値は、標的細胞溶液50μL、エフェクター細胞50μL、培地50μLを加えることにより取得した。標的細胞全遊離の値は、標的細胞溶液50μL、培地80μLを加え、反応終了45分前に9%Triton X−100溶液を20μL添加することにより取得した。反応後、プレートを遠心分離し、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を、LDH−Cytotoxic Test(Wako社製)を用いて、添付説明書に従って吸光度を測定することで検出した。ADCC活性は次式により求めた。
(式)
ADCC活性(%)=([検体の吸光度]−[標的細胞およびエフェクター細胞自然遊離の吸光度])/([標的細胞全遊離の吸光度]−[標的細胞自然遊離の吸光度])×100
結果を図14に示した。抗HB−EGFキメラ抗体KM3966はHB−EGF陽性ヒト血液癌細胞株に対して、抗体濃度依存的に細胞傷害活性を示した。従って、本発明の抗EB−EGFモノクローナル抗体および遺伝子組換え抗体が、HB−EGFを発現している卵巣癌などの固形癌のみならず、急性骨髄性白血病、およびT細胞性白血病などの血液癌に対しても有効な可能性が示唆された。
実施例9
抗HB−EGFヒト化抗体の作製
(1)抗HB−EGFヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列の設計
まず、抗HB−EGFヒト化抗体のVHのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。
配列番号12〜14でそれぞれ表される抗体VHのCDR1〜3のアミノ酸配列を移植するためのヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列を選択した。カバットらは、既知の様々なヒト抗体のVHをそのアミノ酸配列の相同性から3種類のサブグループ(HSG I〜III)に分類し、更に、それらのサブグループ毎に共通配列を報告している[SEQUENCES of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services(1991)]。それら共通配列は、ヒトにおいてより免疫原性が低下する可能性が考えられることから、それら共通配列を基に抗HB−EGFヒト化抗体のVHのアミノ酸配列を設計した。より結合活性の高い抗HB−EGFヒト化抗体を作製するために、設計にあたってはヒト抗体のVHの3種類のサブグループの共通配列のFRのアミノ酸配列のうち、抗HB−EGFマウス抗体KM3566のVHのFRのアミノ酸配列と最も高い相同性を有するFRのアミノ酸配列を選択した。
相同性を検索した結果、HSGI、HSGIIおよびHSGIIIの相同性はそれぞれ73.6%、50.6%および56.3%であった。従って、KM3566のVH領域のFRのアミノ酸配列はサブグループIと最も高い相同性を有していた。
以上の結果から、ヒト抗体のVHのサブグループIの共通配列のFRのアミノ酸配列の適切な位置に抗HB−EGFマウス抗体KM3566のVHのCDRのアミノ酸配列を移植した。しかし、配列番号9に記載のKM3566のVHのアミノ酸配列中の74番目のLysは、カバットらがあげるヒト抗体FRのアミノ酸配列の相当する部位において、最も使用される頻度が高いアミノ酸残基ではないが、比較的高い頻度で使用されるアミノ酸残基であるため、上記のKM3566のアミノ酸配列で認められるアミノ酸残基を用いることとした。このようにして、配列番号22で表される抗HB−EGFヒト化抗体のVHのアミノ酸配列HV0を設計した。
次に、抗HB−EGFヒト化抗体のVLのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。
配列番号15〜17でそれぞれ表される抗体VLのCDR1〜3のアミノ酸配列を移植するためのヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列を選択した。カバットらは、既知の様々なヒト抗体のVLをそのアミノ酸配列の相同性から4種類のサブグループ(HSG I〜IV)に分類し、更に、それらのサブグループ毎に共通配列を報告している[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services(1991)]。そこでVHの場合と同様にして、ヒト抗体のVLの4種類のサブグループの共通配列のFRのアミノ酸配列のうち、抗HB−EGFマウス抗体KM3566のVLのFRのアミノ酸配列と最も高い相同性を有するFRのアミノ酸配列を選択した。
相同性を検索した結果、HSGI、HSGII、HSGIIIおよびHSGIVの相同性はそれぞれ75.0%、75.0%、71.3%および81.3%であった。従って、KM3566のVLのFRのアミノ酸配列はサブグループIVと最も高い相同性を有していた。
以上の結果から、ヒト抗体のVLのサブグループIVの共通配列のFRのアミノ酸配列の適切な位置に抗HB−EGFマウス抗体KM3566のVLのCDRのアミノ酸配列を移植した。しかし、配列番号11に記載のKM3566のVLのアミノ酸配列中の110番目のLeuは、カバットらがあげるヒト抗体FRのアミノ酸配列の相当する部位において、最も使用される頻度が高いアミノ酸残基ではないが、比較的高い頻度で使用されるアミノ酸残基であるため、上記のKM3566のアミノ酸配列で認められるアミノ酸残基を用いることとした。このようにして、配列番号23で表される抗HB−EGFヒト化抗体のVLのアミノ酸配列LV0を設計した。
上記で設計した抗HB−EGFヒト化抗体のVHのアミノ酸配列HV0およびVLのアミノ酸配列LV0は、選択したヒト抗体のFRのアミノ酸配列に抗HB−EGFマウス抗体KM3566のCDRのアミノ酸配列のみを移植した配列である。しかし、一般に、ヒト化抗体を作製する場合には、単なるヒト抗体のFRへのマウス抗体のCDRのアミノ酸配列の移植のみでは結合活性が低下してしまうことが多い。このため、結合活性の低下を回避するため、CDRのアミノ酸配列の移植とともに、ヒト抗体とマウス抗体で異なっているFRのアミノ酸残基のうち、結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基を改変することが行われている。そこで、本実施例でも、結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基を以下のようにして同定した。
まず、上記で設計した抗HB−EGFヒト化抗体のVHのアミノ酸配列HV0およびVLのアミノ酸配列LV0よりなる抗体V領域(HV0LV0)の三次元構造をコンピューターモデリングの手法を用いて構築した。三次元構造座標作製に関してはソフトウェアAbM(Oxford Molecular社製)を、三次元構造の表示についてはソフトウェアPro−Explore(Oxford Molecular社製)、あるいはViewerLite(Accelrys社製)を用いてそれぞれ添付の使用説明書に従い、行った。また、抗HB−EGFマウスモノクローナル抗体KM3566のV領域の三次元構造のコンピューターモデルも同様にして構築した。更に、HV0LV0のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、抗HB−EGFマウス抗体KM3566と異なっているアミノ酸残基を選択し、抗HB−EGFマウス抗体KM3566のアミノ酸残基へ改変したアミノ酸配列を作製し、同様に三次元構造モデルを構築した。これら作製した抗HB−EGFマウス抗体KM3566、HV0LV0および改変体のV領域の三次元構造を比較し、抗体の結合活性に影響を与えると予測されるアミノ酸残基を同定した。
その結果、HV0LV0のFRのアミノ酸残基の中で抗原結合部位の三次元構造を変化させ、抗体の結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基として、HV0では9番目のAla、20番目のVal、30番目のThr、38番目のArg、41番目のPro、48番目のMet、67番目のArg、68番目のVal、70番目のIle、95番目のTyr、および118番目のValを、LV0では15番目のLeu、19番目のAla、21番目のIle、49番目のPro、および84番目のLeuをそれぞれ選択した。これらの選択したアミノ酸残基のうち、少なくとも1つ以上のアミノ酸配列をマウス抗体KM3566の同じ部位に存在するアミノ酸残基へ改変し、様々な改変を有するヒト化抗体のVHおよびVLを設計した。具体的には、抗体VHについては、配列番号22で表されるアミノ酸配列の9番目のAlaをThrに、20番目のValをLeuに、30番目のThrをArgに、38番目のArgをLysに、41番目のProをThrに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、95番目のTyrをPheに、および118番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。また、VLについては、配列番号23で表されるアミノ酸配列の15番目のLeuをValに、19番目のAlaをValに、21番目のIleをMetに、49番目のProをSerに、および84番目のLeuをValに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。
(2) 抗HB−EGFヒト化抗体のVHをコードするcDNAの構築
本実施例(1)で設計した抗HB−EGFヒト化抗体のVHのアミノ酸配列HV0をコードするcDNAを、PCRを用いて以下のようにして構築した。
まず、設計したアミノ酸配列と、配列番号9の1〜19番目に表される抗HB−EGFマウス抗体KM3566のH鎖の分泌シグナル配列とを繋げて完全な抗体アミノ酸配列とした。次に、該アミノ酸配列を遺伝子コドンに変換した。1つのアミノ酸残基に対して複数の遺伝子コドンが存在する場合は、抗体の遺伝子の塩基配列に見られる使用頻度[SEQUENCES of Proteins of Immunological Interest, US Dept.Health and Human Services(1991)]を考慮し、対応する遺伝子コドンを決定した。決定した遺伝子コドンを繋げて、完全な抗体V領域のアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を設計し、更に5’末端と3’末端にPCR反応時の増幅用プライマーの結合塩基配列(ヒト化抗体発現用ベクターへクローニングするための制限酵素認識配列も含む)を付加した。設計した塩基配列を5’末端側から約100塩基ずつ計4本の塩基配列に分け(隣り合う塩基配列は、その末端に約20塩基の重複配列を有するようにする)、それらをセンス鎖、アンチセンス鎖の交互の順で、合成DNA(配列番号24〜27)を合成した。
各合成DNA(配列番号24〜27)を最終濃度が0.1μmol/Lとなるように50μLの反応液に加えて、0.5μmol/L T3プライマー(Takara Shuzo社製)、0.5μmol/L T7プライマー(Takara Shuzo社製)および1単位のKOD polymerase(東洋紡績社製)を用いて、KOD polymeraseに添付の使用説明書に従い、PCRを行った。この際の反応条件は使用説明書に記された条件(94℃30秒間、50℃30秒間、74℃60秒間のサイクルを30サイクル)に従った。該反応液をエタノール沈殿した後、滅菌水に溶解し、適当な制限酵素処理を行った後に、プラスミドpBluescript II SK(−)(Stratagene社製)に連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、形質転換株の株よりプラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit (Applied Biosystems社製)を用いて塩基配列を解析した結果、目的の塩基配列を有するプラスミドを取得した。
次に、実施例9(1)で設計したFRのアミノ酸残基の改変は、変異を有する合成DNAを作製し、上記のPCRを行うか、上記で作製したHV0をコードするcDNAを含むプラスミドDNAを鋳型として変異を有する合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、増幅遺伝子断片を単離することにより行った。改変後のアミノ酸残基の遺伝子コドンについては、抗HB−EGFマウス抗体KM3566に見られる遺伝子コドンとなるように行った。また、以下、特に記載の無い場合、94℃30秒間、55℃30秒間、72℃60秒間のサイクルを、35サイクルのPCR反応で反応させた。PCR反応はKOD−plus polymerase(TOYOBO社製)を使用して行った。また、使用した合成DNAはファスマック社製のものである。
次に、上記HV0の Val20Thr30Met48Val68ILe70Tyr95Val118をLeu20Arg30Ile48Ala68Leu70Phe95Leu118に改変したVH(以下、HV7)を以下のように作製した。
0.1μmol/Lのアミノ酸変異を有する合成DNA(配列番号32〜35)と、その両端に位置するプライマーM13RVプライマー(Takara Shuzo社製)および、M13M4プライマー(Takara Shuzo社製)を0.4μmol/L加え、PCR反応を行った。PCR反応液を、Gel extraction kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、0.8〜1.5%のアガロース電気泳動を行い、目的の0.45kbp付近の遺伝子断片をGel extraction kit(QIAGEN社製)を用いて抽出した。特異的な制限酵素SmaIで処理したpBlusecript II SK(−)(以下、pBS)にサブクローニングを行い、抗HB−EGFヒト化抗体のVHのアミノ酸配列HV7をコードする遺伝子(配列番号36)を含むベクターpBS/HV7を取得した。
(3)抗HB−EGFヒト化抗体のVLをコードするcDNAの構築
本実施例(1)で設計した抗HB−EGFヒト化抗体のVLのアミノ酸配列をコードするcDNAを、PCRを用いて以下のようにして構築した。
まず、設計したアミノ酸配列と、配列番号11の1〜20番目に表される抗HB−EGFマウス抗体KM3566のL鎖の分泌シグナル配列とを繋げて完全な抗体アミノ酸配列とした。次に、該アミノ酸配列を遺伝子コドンに変換した。1つのアミノ酸残基に対して複数の遺伝子コドンが存在する場合は、抗体の遺伝子の塩基配列に見られる使用頻度[SEQUENCES of Proteins of Immunological Interest、US Dept.Health and Human Services(1991)]を考慮し、対応する遺伝子コドンを決定した。決定した遺伝子コドンを繋げて、完全な抗体V領域のアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を設計し、更に5’末端と3’末端にPCR反応時の増幅用プライマーの結合塩基配列(ヒト化抗体発現用ベクターへクローニングするための制限酵素認識配列も含む)を付加した。設計した塩基配列を、5’末端側から約100塩基ずつ計4本の塩基配列に分け(隣り合う塩基配列は、その末端に約20塩基の重複配列を有するようにする)、それらをセンス鎖、アンチセンス鎖の交互の順で、合成DNA(配列番号28〜31)を合成した。
各合成DNA(配列番号28〜31)を最終濃度が0.1μmol/Lとなるように50μLの反応液に加えて、0.5μmol/L T3プライマー(Takara Shuzo社製)、0.5μmol/L T7プライマー(Takara Shuzo社製)および1単位のKOD polymerase(東洋紡績社製)を用いて、KOD polymeraseに添付の使用説明書に従い、上記(2)と同様にPCRを行った。反応液をエタノール沈殿した後、滅菌水に溶解し、適当な制限酵素処理を行った後に、プラスミドpBluescript II SK(−)(Stratagene社製)に連結した。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、形質転換株よりプラスミドDNAを調製し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit (Applied Biosystems社製)を用いて塩基配列を解析した結果、目的の塩基配列を有するプラスミドpBS/LV0を取得した。
次に、本実施例(1)で設計したFRのアミノ酸残基の改変は、変異を有する合成DNAを作製し、上記のPCRを行うか、上記で作製したLV0をコードするcDNAを含むプラスミドDNAを鋳型として変異を有する合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、増幅遺伝子断片を単離することにより行った。改変後のアミノ酸残基の遺伝子コドンについては、抗HB−EGFマウス抗体KM3566で見られる遺伝子コドンとなるように行った。
PCR反応は94℃30秒間、55℃30秒間、72℃60秒間のサイクルを、35サイクルで、KOD−plus polymerase(TOYOBO社製)を使用して行った。また、使用した合成DNAはファスマック社製のものを使用した。
次に、LV0のLeu15Ala19Ile21Pro49Leu84をVal15Val19Met21Ser49Val84に改変したVL(以下、LV5)を以下のように作製した。
0.1μmol/Lのアミノ酸変異を有する合成DNA(配列番号37〜40)と、その両端に位置するプライマーM13RVプライマー(Takara Shuzo社製)および、M13M4プライマー(Takara Shuzo社製)を0.4μmol/L加え、PCR反応を行った。PCR反応液を、Gel extraction kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、0.8−1.5%のアガロース電気泳動を行い、目的の0.45kbp付近の遺伝子断片をGel extraction kit(QIAGEN社製)を用いて抽出した。特異的な制限酵素SmaIで処理したpBSにサブクローニングを行い、抗HB−EGFヒト化抗体のVLのアミノ酸配列LV5をコードする遺伝子(配列番号41)を含むベクターpBS/LV5を取得した。
(4)抗HB−EGFヒト化抗体発現ベクターの構築
WO97/10354に記載のヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93の適当な位置に本実施例(2)および(3)で得られたHV0およびLV0をコードするそれぞれのcDNA、あるいはそれらの改変体をコードするcDNAを挿入し、各種抗HB−EGFヒト化抗体発現ベクターを構築した。
(5)抗HB−EGFヒト化抗体の動物細胞を用いた安定発現および精製抗体の取得
抗HB−EGFヒト化抗体の動物細胞を用いた安定発現および培養上清からの抗体の精製は、実施例6(2)および(3)に記載の方法と同様にして行った。その結果、抗体のVHがHV0、VLがLV0からなる抗HB−EGFヒト化抗体HV0LV0、抗体のVHがHV7、VLがLV0からなるHV7LV0、および抗体のVHがHV7、VLがLV5からなるHV7LV5の3種類を作製した。
実施例10
(1)抗HB−EGFヒト化抗体のヒトHB−EGFに対する結合活性測定
抗HB−EGFヒト化抗体のヒトHB−EGFに対する結合活性を反応速度論的に解析するため、BIACORE T100(BIACORE社製)を用いて実施例7(2)と同様にして測定した。
その結果、実施例9で作製した抗HB−EGFヒト化抗体は、実施例2(2)における抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の結果と同様に、ヒトHB−EGFと結合後、ほとんど解離反応が認められず、解離速度定数については算出できなかった。
一方で結合速度定数については算出が可能であり、その結果を表2に示した。その結果、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966のCDRを単にヒトフレームワークに移植した抗HB−EGFヒト化抗体HV0LV0は、ヒトHB−EGFに対する結合活性が抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の約1/2近くまで減少したが、H鎖のみアミノ酸改変を加えた抗HB−EGFヒト化抗体HV7LV0、H鎖およびL鎖にアミノ酸改変を加えた抗HB−EGFヒト化抗体HV7LV5は、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966とほぼ同等まで結合活性が増加した。
Figure 0005532401
(2)抗HB−EGFヒト化抗体のHB−EGF発現細胞に対する反応性
抗HB−EGFヒト化抗体のHB−EGF発現癌細胞に対する反応性について実施例2(1)と同様にして測定した。細胞株はヒト卵巣癌細胞株のMCAS(JCRB0240)を使用した。結果を図15に示した。全てのヒト化抗体は抗HB−EGFキメラ抗体KM3966と同様にMCASに対して反応した。
(3)抗HB−EGFヒト化抗体の中和活性
抗HB−EGFヒト化抗体の中和活性を、実施例2(4)と同様にして測定した。
結果を図16に示した。HB−EGF非添加時の細胞増殖を1とした時、MKN−28は外因性HB−EGFにより細胞増殖が認められ、HB−EGF依存性増殖を示した。結合活性が抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の約1/2であった抗HB−EGFヒト化抗体HV0LV0は抗HB−EGFキメラ抗体KM3966に比べてわずかに中和活性が低い傾向にあったが、ヒトHB−EGFに対する結合活性が抗HB−EGFキメラ抗体KM3966とほぼ同等であった抗HB−EGFヒト化抗体HV7LV0およびHV7LV5は、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966と同等の中和活性を示した。
(4)抗HB−EGFヒト化抗体のADCC活性
抗HB−EGFヒト化抗体のADCC活性を、実施例2(5)と同様にして測定した。
結果を図17に示した。結合活性が抗HB−EGFキメラ抗体KM3966の約1/2であった抗HB−EGFヒト化抗体HV0LV0は抗HB−EGFキメラ抗体KM3966に比べてADCC活性が約1/10まで減少したが、ヒトHB−EGFに対する結合活性が抗HB−EGFキメラ抗体KM3966とほぼ同等であった抗HB−EGFヒト化抗体HV7LV0およびHV7LV5は、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966と同等のADCC活性を示した。
実施例11
抗HB−EGF抗体の結合エピトープに関する解析
ヒトHB−EGFに対する抗HB−EGF抗体KM3566、KM3579、及びKM3966の結合エピトープについて、下記の解析を行った。
1)変異型ヒトHB−EGF全長遺伝子導入細胞の造成
抗HB−EGF抗体 KM3566、KM3579、及びKM3966はいずれもヒトHB−EGFに反応し、マウスHB−EGFには交差反応性を示さない。そこで、ヒトHB−EGFのEGF様ドメインのアミノ酸配列中で、マウスHB−EGFと異なる10個のアミノ酸を、各々1個ずつマウス由来のアミノ酸に置換した10種類の変異型ヒトHB−EGF全長タンパク質(以下、変異HB−EGFと記す。)を発現する遺伝子導入細胞を造成し、これらに対する抗HB−EGF抗体の結合活性を測定することにより、結合エピトープの解析を行った。作製した10種類の変異HB−EGFを以下に示す。
(1)N末端より115番目のフェニルアラニンをチロシンに置換した変異HB−EGF(以下、F115Yと表記)、
(2)N末端より122番目のリジンをアルギニンに置換した変異HB−EGF(以下、K122Rと表記)、
(3)N末端より124番目のバリンをロイシンに置換した変異HB−EGF(以下、V124Lと表記)、
(4)N末端より125番目のリジンをグルタミンに置換した変異HB−EGF(以下、K125Qと表記)、
(5)N末端より127番目のロイシンをフェニルアラニンに置換した変異HB−EGF(以下、L127Fと表記)、
(6)N末端より129番目のアラニンをスレオニンに置換した変異HB−EGF(以下、A129Tと表記)、
(7)N末端より133番目のイソロイシンをリジンに置換した変異HB−EGF(以下、I133Kと表記)、
(8)N末端より135番目のヒスチジンをロイシンに置換した変異HB−EGF(以下、H135Lと表記)、
(9)N末端より141番目のグルタミン酸をヒスチジンに置換した変異HB−EGF(以下、E141Hと表記)、
(10)N末端より147番目のセリンをスレオニンに置換した変異HB−EGF(以下、S147Tと表記)。
さらに陽性対照として以下のヒト/マウスキメラ型HB−EGF全長遺伝子導入細胞を造成した。
(11)N末端より1番目から49番目までの配列がマウスHB−EGF由来配列、N末端より50番目から208番目までの配列がヒトHB−EGF由来配列から成る、ヒト/マウスキメラ型HB−EGF(以下、pRTHGC−6と記す。)を作製した。EGF様ドメインは、全てヒトHB−EGF由来配列である為、陽性対照として用いた。
上記の変異HB−EGFおよびヒト/マウスキメラ型HB−EGFの一過性発現用プラスミドは、目加田らの方法(J.Bio.Chem., Vol.272, 27084−27090, 1997)を用いて作製した。マウスLMTK−細胞(ATCC CCL−1.3)は、100 unit/mL penicillin G、100μg/mL streptomycin、10 %ウシ胎児血清を添加したDulbecco’s modified Eagle’s mediumにて培養した。上記の各発現プラスミドをリン酸カルシウム法によりマウスLMTK−細胞に導入後、48時間培養したものを以降の実験に用いた。
陰性対照には、ベクターのみをマウスLMTK−細胞に導入した細胞(以下、mockと表記)を用いた。
2)変異HB−EGF遺伝子導入細胞を用いた抗HB−EGF抗体の結合活性解析
まず、1×10個の変異HB−EGF遺伝子導入細胞、ヒト/マウスキメラ型HB−EGF遺伝子導入細胞、およびmockに、結合バッファー(Ham’s F12に非必須アミノ酸、20mM Hepes−NaOH(pH7.2)、10%ウシ胎児血清を添加したもの)で2 μg/mLに希釈したビオチン標識抗HB−EGF抗体(KM3566、KM3579、KM3966)を4℃、2時間反応させた。反応後、氷冷した洗浄バッファー(PBSに0.5mM CaCl、0.5mM MgCl、0.1%ウシ胎児血清を添加したもの)で2回洗浄し、続いて1回PBS(+)(PBSに0.5mM CaCl、0.5mM MgClを添加したもの)で洗浄した。洗浄した細胞に、PBS(+)で1.8%に希釈したホルムアルデヒド溶液を加え、4℃、20分間、細胞を固定した。次に、PBS(+)で1回洗浄した後、グリシン溶液(0.2M−glycine、100mM−Tris、pH8.1)で4℃、20分間処理し、続いて洗浄バッファーで4℃、20分間インキュベートした。次に、結合バッファーで0.1μg/mLに希釈したHRP結合ストレプトアビジンを、4℃、1時間反応させ、洗浄バッファーで2回洗浄、PBS(+)で2回洗浄した。ペルオキシダーゼ検出用キット(ナカライテスク社製、ELISA POD基質OPDキット)を用いて発色を行い、492nmにおける吸光度を測定し、細胞に結合したHRP活性を測定した。
抗HB−EGF抗体の各種変異HB−EGF遺伝子導入細胞、およびヒト/マウスキメラ型HB−EGF遺伝子導入細胞に対する吸光度より、mockに対する吸光度を差し引いた値をA値とした。
次に、マウスLMTK−細胞の細胞膜上に発現した変異HB−EGF蛋白の発現量を解析するため、全ての変異HB−EGFに等しく結合する抗HB−EGFウサギポリクローナル抗体(抗体名称;H−6、ヒトHB−EGFのN末端から54番目〜73番目までの合成ペプチドをセファロースCL−6Bに架橋したものをウサギに免疫感作することにより作製された抗体、EMBO J.,13,2322−2330,(1994)の変異HB−EGF遺伝子導入細胞、ヒト/マウスキメラ型HB−EGF遺伝子導入細胞、およびmockに対する吸光度を、上記と同様の方法により測定した。ただしビオチン標識H−6抗体は、抗体濃度10μg/mLで使用した。H−6抗体の各変異HB−EGF遺伝子導入細胞およびヒト/マウスキメラ型HB−EGF遺伝子導入細胞に対する吸光度より、mockに対する吸光度を差し引いた値をB値とした。
遺伝子導入細胞の発現量の差を補正する為、A値をB値で除することによりA/B値を求めた。抗HB−EGF抗体の陽性対照pRTHGC−6に対するA/B値を100%とした時の、各種変異型HB−EGFに対するA/B値の割合を算出し、これを各種変異HB−EGFに対する相対的結合活性とした。
結果を図18に示した。抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566は、pRTHGC−6と比べて、I133K、H135LおよびS147Tに殆んど結合しなかった。従って、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566は133番目のI(Ile)、135番目のH(His)および147番目のS(Ser)のアミノ酸を含むエピトープを認識していることが明らかになった。また、同一の抗体可変領域を有する抗HB−EGFキメラ抗体KM3966も、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566と同様に、pRTHGC−6と比べて、I133KおよびH135Lには、殆んど結合せず、S147Tでは約1/3に結合活性が低下した。従って、抗HB−EGFキメラ抗体KM3966は、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566と同様に、133番目のI(Ile)、135番目のH(His)および147番目のS(Ser)のアミノ酸を含むエピトープを認識していることが明らかになった。
抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3579は、pRTHGC−6と比べて、E141Hのみに結合せず、他の変異HB−EGFには全て、pRTHGC−6と同等の結合活性を示した。従って、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3579は、141番目のE(Glu)のアミノ酸を含むエピトープを認識していることが、明らかになった。
以上の結果から、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3566および抗HB−EGFキメラ抗体KM3966と、抗HB−EGFモノクローナル抗体KM3579は、HB−EGFの異なるエピトープを認識していることが明らかになった。
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2007年12月5日付けで出願された日本特許出願(特願2007−315068)に基づいており、その全体が引用により援用される。
また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
本発明により、細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに結合するモノクローナル抗体およびその抗体断片が提供される。
配列番号18−人工配列の説明:KM3966H増幅プライマー
配列番号19−人工配列の説明:KM3966H増幅プライマー
配列番号20−人工配列の説明:KM3966L増幅プライマー
配列番号21−人工配列の説明:KM3966L増幅プライマー
配列番号22−人工配列の説明:抗HB−EGFヒト化抗体HV0のアミノ酸配列
配列番号23−人工配列の説明:抗HB−EGFヒト化抗体LV0のアミノ酸配列
配列番号24−人工配列の説明:HV0増幅プライマー
配列番号25−人工配列の説明:HV0増幅プライマー
配列番号26−人工配列の説明:HV0増幅プライマー
配列番号27−人工配列の説明:HV0増幅プライマー
配列番号28−人工配列の説明:LV0増幅プライマー
配列番号29−人工配列の説明:LV0増幅プライマー
配列番号30−人工配列の説明:LV0増幅プライマー
配列番号31−人工配列の説明:LV0増幅プライマー
配列番号32−人工配列の説明:HV7増幅プライマー
配列番号33−人工配列の説明:HV7増幅プライマー
配列番号34−人工配列の説明:HV7増幅プライマー
配列番号35−人工配列の説明:HV7増幅プライマー
配列番号36−人工配列の説明:HV7のDNA配列
配列番号37−人工配列の説明:LV5増幅プライマー
配列番号38−人工配列の説明:LV5増幅プライマー
配列番号39−人工配列の説明:LV5増幅プライマー
配列番号40−人工配列の説明:LV5増幅プライマー
配列番号41−人工配列の説明:LV5のDNA配列
配列番号42−人工配列の説明:抗HB−EGFヒト化抗体HV7のアミノ酸配列
配列番号43−人工配列の説明:抗HB−EGFヒト化抗体LV5のアミノ酸配列

Claims (18)

  1. 細胞膜に結合しているヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(heparin binding epidermal growth factor−like growth factor 以下、HB−EGFと称す。)、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに結合する遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体であって、
    抗体の重鎖可変領域(以下、VHと記す)が、配列番号22で表されるアミノ酸配列を含み、かつ抗体の軽鎖可変領域(以下、VLと記す)が、配列番号43で表されるアミノ酸配列を含む抗体または抗原結合活性を有するその抗体断片
  2. 細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに結合する遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体であって、
    VHが、配列番号42で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号23で表されるアミノ酸配列を含む抗体または抗原結合活性を有するその抗体断片。
  3. 細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFに結合する遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体であって、
    VHが、配列番号42で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号43で表されるアミノ酸配列を含む抗体または抗原結合活性を有するその抗体断片。
  4. 細胞膜に結合しているHB−EGF、膜型HB−EGFおよび分泌型HB−EGFの上皮増殖因子様ドメイン(EGF様ドメイン)に結合する請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片。
  5. 分泌型HB−EGFとHB−EGF受容体との結合を阻害する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片。
  6. 分泌型HB−EGFに対して中和活性を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片。
  7. 分泌型HB−EGFと、HB−EGF受容体またはジフテリアトキシンとの結合領域に結合する請求項1〜のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片。
  8. 配列番号2で表されるアミノ酸配列の133番目、135番目、および147番目のうち、少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープに結合する請求項1〜のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片。
  9. 配列番号2で表されるアミノ酸配列の133番目、135番目および147番目のアミノ酸を含むエピトープに結合する請求項に記載の抗体または抗体断片。
  10. ハイブリドーマKM3566(FERM BP−10490)が生産するモノクローナル抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する請求項1〜のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片。
  11. 抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(Diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)および6個のCDRを含むペプチドから選ばれる抗体断片である請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体断片。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片をコードするDNA。
  13. 請求項12に記載のDNAを含有する組換え体ベクター。
  14. 請求項13に記載の組換え体ベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換体。
  15. 請求項14に記載の形質転換体を培地で培養し、培養物中に請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を生成蓄積させ、培養物から該抗体または該抗体断片を採取することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片の製造方法。
  16. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を有効成分として含有する医薬。
  17. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を有効成分として含有する、HB−EGFが関与する疾患の治療剤。
  18. HB−EGFが関与する疾患が癌である、請求項17に記載の治療剤。
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