JP5838427B2 - ヘパリン結合上皮増殖因子様増殖因子に対する機能性モノクローナル抗体 - Google Patents

ヘパリン結合上皮増殖因子様増殖因子に対する機能性モノクローナル抗体 Download PDF

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本発明は、ヒトHB−EGFタンパク質に対する抗体、該抗体をコードするDNA、前記抗体又は該DNAを含むハイブリドーマ、前記抗体を有効成分とする癌を治療又は予防するための組成物に関する。
ヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子(Heparin−binding epidermal growth factor−like growth factor/HB−EGF)は上皮細胞成長因子(epidermal growth factor/EGF)ファミリーに属するタンパク質であり、EGF受容体(EGFR/ErbB1又はErbB4)に結合し、細胞の増殖、分化及び化学遊走等を促進することが明らかになっている(非特許文献1〜3)。
また、HB−EGFは、生体内において、筋形成、心臓の形成、創傷治癒に寄与していることが明らかになっているため、HB−EGFは器官形成において重要な因子であると考えられている(非特許文献4〜6)。
さらに、膵臓癌の増殖(非特許文献7)、胃癌の増殖(非特許文献8)、皮膚癌(非特許文献9)との関連、頭頸部癌の薬剤耐性との関連(非特許文献10)、癌組織への血管新生(非特許文献11)等、様々な点において、HB−EGFは癌の増殖、進行に関与していることが報告されており、HB−EGFは様々な癌においても重要な因子であることが明らかになっている。
また、HB−EGFについては、先ずI型膜タンパク質(膜型HB−EGF)として合成され、その後、細胞膜貫通部の直上の細胞外領域がプロテアーゼにより切断された後、14〜22キロダルトンの分泌型HB−EGFとして遊離することが明らかになっている(非特許文献12及び13)。そして、この切断によって生じた分泌型HB−EGFが、HB−EGF発現細胞自身のEGFR/ErbB1を活性化するオートクライン様式や他の細胞のEGFR/ErbB1を活性化するパラクライン様式により、増殖因子として機能することも知られている。
一方、膜型HB−EGF自体も隣接する他の細胞のEGFR/ErbB1を活性化するジャックスタクライン様式により、増殖因子として機能することが知られている(非特許文献14)。しかし、膜型HB−EGFは分泌型HB−EGFに比べ、細胞増殖活性が弱いことが示されている(非特許文献11)。これらの結果から、プロテアーゼの切断によって分泌型HB−EGFを生じる過程が、HB−EGFが増殖因子として機能を発揮する上で重要であると考えられている。
また、HB−EGFの切断部位にアミノ酸変異を導入することにより、膜型HB−EGFは発現するが分泌型HB−EGFは発現しないように調製された、変異型マウスが作製されている。そして、この変異型マウスの解析において、HB−EGFが全く発現していないノックアウトマウスと同様の心臓の器官形成における異常が観察されている(非特許文献5及び15)。さらに、プロテアーゼ阻害剤によりHB−EGFの切断を抑制することで、分泌型HB−EGFに起因する心肥大は抑制されることも示されており(非特許文献16)、HB−EGFの器官形成における前述の重要な生理機能は、分泌型HB−EGFが担っていると考えられている。
また、癌においては、切断されたHB−EGFの細胞内領域(HB−EGF−CTF)が核に移行し細胞分裂を促進する機能も知られている(非特許文献17)。さらに、プロテアーゼ阻害剤によるHB−EGF切断の抑制により、胃癌の増殖や浸潤を阻害しうることが示されている(非特許文献18)。故に、癌細胞の増殖等においても、HB−EGFの切断過程が重要な要素であることが明らかになっている。
以上の知見に基づき、HB−EGFが関与すると想定されている様々な疾患(心不全、神経疾患、肺疾患等)、特に癌の治療方法の研究、開発が進められている。例えば、卵巣癌細胞を移植したゼノグラフトマウスモデルにおいて、抗HB−EGF抗体等の抗腫瘍効果が確認されている(非特許文献19及び20)。さらに、抗体によって、HB−EGFの切断を阻害し、分泌型HB−EGFの発生を抑制することで、癌細胞の増殖を阻害しうることも示されている(非特許文献21)。このように、HB−EGFに結合し、抗腫瘍活性や切断阻害活性等の活性を発揮する抗体が開発されている。
前述の通り、HB−EGFに対する抗体が、癌等の治療において十分な活性を有するため、すなわち細胞の増殖等におけるHB−EGFが関与するシグナル伝達を完全に阻害するためには、(1)増殖因子等として機能する分泌型HB−EGF及びHB−EGF−CTFを生じさせる切断を、強く阻害すること(切断阻害活性)、(2)分泌型HB−EGF及び膜型HB−EGFとEGF受容体(EGFR/ErbB1又はErbB4)との結合を阻害し、ひいては該EGF受容体の活性化等を強く阻害すること(中和活性)、この2つの活性を兼ね備えることが必要であると想定される。
しかしながら、例えば、非特許文献21に記載の抗体は、前述の通り、切断阻害活性を有するものの、同文献には該抗体が中和活性を有していないことも明らかにされており、このように、HB−EGFが関与する疾患の治療、特に癌の治療において十分な活性を有する、HB−EGFに対する抗体は開発されていないのが現状である。
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本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ヒトHB−EGFに結合することにより、該ヒトHB−EGFにおける切断を阻害し、かつ該ヒトHB−EGFとEGF受容体との結合を阻害する抗体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく、HB−EGFタンパク質の細胞外領域からなる部分ペプチドをマウスに免疫し、ヒトHB−EGFタンパク質に対するモノクローナル抗体を取得した。そして、取得した抗ヒトHB−EGFモノクローナル抗体の中から、細胞表面に発現しているHB−EGFに対して強い反応性を示す3抗体(35−1抗体、292抗体及び1−1抗体)を選抜した。
さらに、これら抗体のエピトープを解析した結果、35−1抗体及び292抗体は、ヒトHB−EGFタンパク質において、115番目のフェニルアラニン、117番目のイソロイシン、140番目のグリシン、141番目のグルタミン酸及び142番目のアルギニンを認識していることが明らかになった。一方、1−1抗体は、115番目のフェニルアラニン、140番目のグリシン、141番目のグルタミン酸及び142番目のアルギニンを認識するが、前記2抗体とは異なり117番目のイソロイシンを認識しないことが明らかになった。
また、かかる抗体について鋭意研究を重ねた結果、35−1抗体及び292抗体はいずれもヒトHB−EGFにおける切断を阻害できることを見出した。さらに、ヒトHB−EGFとEGF受容体(EGFR)とが結合することによって生じる該EGFRのリン酸化をいずれの抗体も抑制できること、すなわち中和活性を有していることも見出した。一方、1−1抗体は、切断阻害活性を有しているものの、中和活性を有していなかった。そのため、35−1抗体及び292抗体は、ヒトHB−EGFタンパク質の117番目のイソロイシンを含めて認識することにより、切断阻害活性及び中和活性を有し、1−1抗体は、117番目のイソロイシンを認識しないことにより中和活性を有していないことが明らかになり、抗HB−EGF抗体が強い中和活性を発揮するためには、ヒトHB−EGFタンパク質の117番目のイソロイシンに結合することが必要であることが明らかとなった。
また、本発明者らは、かかる切断阻害活性及び中和活性を有する35−1抗体及び292抗体について、重鎖及び軽鎖の可変領域及びCDRの配列を決定した。さらに、決定した配列に基づき、35−1抗体については、定常領域をヒトIgGに由来するものに置換したキメラ抗体、及び、可変領域のフレームワーク領域をヒト抗体のそれらに置換したヒト型化抗体を作製した。そして、得られたキメラ抗体を、癌細胞を移植したマウスに投与することによって、当該癌細胞のマウス体内における増殖が抑制されることも明らかにした。さらに、当該抗体は癌細胞に対して抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下<1>〜<8>を提供するものである。
<1> ヒトHB−EGFに結合する抗体であって、下記(a)又は(b)に記載の特徴を有し、かつ中和活性及び切断阻害活性を有する抗体
(a) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列をCDR1として含み、配列番号:3に記載のアミノ酸配列をCDR2として含み、かつ配列番号:4に記載のアミノ酸配列をCDRとして含む軽鎖可変領域と、配列番号:6に記載のアミノ酸配列をCDR1として含み、配列番号:7に記載のアミノ酸配列をCDR2として含み、かつ配列番号:8に記載のアミノ酸配列をCDRとして含む重鎖可変領域とを保持する
(b) 配列番号:10に記載のアミノ酸配列をCDR1として含み、配列番号:11に記載のアミノ酸配列をCDR2として含み、かつ配列番号:12に記載のアミノ酸配列をCDRとして含む軽鎖可変領域と、配列番号:14に記載のアミノ酸配列をCDR1として含み、配列番号:15に記載のアミノ酸配列をCDR2として含み、かつ配列番号:16に記載のアミノ酸配列をCDRとして含む重鎖可変領域とを保持する。
<2> ヒトHB−EGFに結合する抗体であって、下記(a)又は(b)に記載の特徴を有する抗体
(a) 配列番号:5に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:9に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
(b) 配列番号:13に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:17に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する。
<3> ヒトHB−EGFに結合する抗体であって、
配列番号:18に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:19に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する、抗体。
<4> <1>〜<3>のうちのいずれか一に記載の抗体をコードするDNA。
<5> <4>に記載のDNAを含む、宿主細胞
<6> <1>〜<3>のうちのいずれか一に記載の抗体を有効成分とする、癌を治療又は予防するための組成物。
<7> <6>に記載の組成物を医薬として使用する方法。
<8> <6>に記載の組成物を癌患者に投与して治療する方法。
なお、配列番号:2〜4に記載のアミノ酸配列は、各々35−1抗体の軽鎖可変領域のCDR1〜3のアミノ酸配列であり、配列番号:5に記載のアミノ酸配列は、35−1抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列であり、配列番号:6〜8に記載のアミノ酸配列は、各々35−1抗体の重鎖可変領域のCDR1〜3のアミノ酸配列であり、配列番号:9に記載のアミノ酸配列は、35−1抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号:18に記載のアミノ酸配列は、35−1ヒト型化抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列であり、配列番号:19に記載のアミノ酸配列は、35−1ヒト型化抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号:10〜12に記載のアミノ酸配列は、各々292抗体の軽鎖可変領域のCDR1〜3のアミノ酸配列であり、配列番号:13に記載のアミノ酸配列は、292抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列であり、配列番号:14〜16に記載のアミノ酸配列は、各々292抗体の重鎖可変領域のCDR1〜3のアミノ酸配列であり、配列番号:17に記載のアミノ酸配列は、292抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
本発明によれば、ヒトHB−EGFに結合することにより、該ヒトHB−EGFにおける切断を阻害し、かつ該ヒトHB−EGFとEGF受容体との結合を阻害する抗体を提供することが可能となる。
取得したヒトHB−EGFタンパク質に対する抗体(35−1抗体及び292抗体)と、ヒトHB−EGFタンパク質を細胞表面に発現する細胞株(HB−EGF/st293T)又は該タンパク質を細胞表面に発現していない細胞株(293T)との反応性をフローサイトメトリーによって解析した結果を示す、ヒストグラムである。図中、白いヒストグラムは各抗体と293Tとの反応性(陰性対照)を示し、黒いヒストグラムは各抗体とHB−EGF/st293Tとの反応性を示す。縦軸は細胞数を示し、横軸は、抗体と細胞株との反応性(平均蛍光強度)を示す。 ヒトHB−EGFタンパク質に対する抗体(35−1抗体、292抗体及び1−1抗体)と、各ヒトHB−EGFタンパク質のアミノ酸変異体との反応性をフローサイトメトリーによって解析した結果を示すグラフである。縦軸は各アミノ酸変異体に対する各抗体の結合強度(相対値)を示す。 PMAによって生じるヒトHB−EGFタンパク質の切断に対する抑制活性を、本発明の抗体(35−1抗体及び292抗体)について、フローサイトメトリーにより解析した結果を示すグラフである。縦軸は、PMA添加後の細胞(HA−HB−EGF/stCHO−K1)表面に残存しているヒトHB−EGFタンパク質量(平均蛍光強度)を示す。横軸は、細胞に添加した各抗体の濃度を示す。 PMAによって生じるヒトHB−EGFタンパク質の切断に対する抑制活性を、本発明の抗体(35−1抗体)について、ウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。なお、図中の「HB−EGF−CTF」は、ヒトHB−EGFタンパク質(全長HB−EGF)が切断された後生じる、細胞膜側に残存している部分タンパク質(HB−EGF C末断片)を示す(図5においても同じ)。 PMAによって生じるヒトHB−EGFタンパク質の切断に対する抑制活性を、本発明の抗体(35−1抗体及び292抗体)について、ウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。 ヒトHB−EGFタンパク質によって誘起されるEGFRのリン酸化に対する抑制活性を、本発明の抗体(35−1抗体)についてウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。図中、「EGFR」は各細胞におけるEGFRタンパク質の量を示し、「p−EGFR」は各細胞におけるリン酸化されたEGFRタンパク質の量を示す(図中の表記に関し、図7及び8において同様である)。 ヒトHB−EGFタンパク質によって誘起されるEGFRのリン酸化に対する抑制活性を、本発明の抗体(35−1抗体及び292抗体)についてウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。 ヒトHB−EGFタンパク質によって誘起されるEGFRのリン酸化に対する抑制活性を、ヒトHB−EGFタンパク質に対する抗体(1−1抗体)についてウェスタンブロットにより解析した結果を示す写真である。 キメラ化した35−1抗体を投与したゼノグラフトマウスにおける、腫瘍体積の経時的変化を示すグラフである。図中、「35−1(高濃度)」は750ug/mlにPBSで希釈した抗体溶液を投与した結果を示し、「35−1(低濃度)」は150ug/mlにPBSで希釈した抗体溶液を投与した結果を示し、「PBS」はPBSのみを投与した結果(陰性対照)を示す。 キメラ化した35−1抗体の抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)を分析した結果を示すグラフである。 キメラ化した35−1抗体(35−1キメラ化抗体)及びヒト型化した35−1抗体(35−1ヒト型化抗体)と、ヒトHB−EGFタンパク質との反応性をELISAによって解析した結果を示す、グラフである。図中、縦軸は、抗体とヒトHB−EGFタンパク質との反応性(平均蛍光強度)を示す。
後述の実施例において示す通り、本発明者らは、ヒトHB−EGFタンパク質における115番目のフェニルアラニン、117番目のイソロイシン、140番目のグリシン、141番目のグルタミン酸及び142番目のアルギニンに結合する2種の抗体(35−1抗体及び292抗体)を取得した。さらに、これら抗体は、ヒトHB−EGFタンパク質の切断に対する強い抑制活性(切断阻害活性)と、ヒトHB−EGFとEGFRとが結合することによって生じる該EGFRのリン酸化に対する強い抑制活性(中和活性)とを有していることも見出した。一方、ヒトHB−EGFタンパク質の117番目のイソロイシンに結合しないヒトHB−EGFタンパク質に対する抗体(後述の1−1抗体等)は中和活性を有していないことも見出した。従って、本発明は、ヒトHB−EGFタンパク質における117番目のイソロイシンに結合する抗体を提供する。
かかる抗体は、前記117番目のイソロイシン以外に、ヒトHB−EGFタンパク質における他のアミノ酸にも結合する抗体であってもよく、好ましくは、ヒトHB−EGFタンパク質における115番目のフェニルアラニン、117番目のイソロイシン、140番目のグリシン、141番目のグルタミン酸及び142番目のアルギニンに結合する抗体である。
本発明における「抗体」は、免疫グロブリンのすべてのクラス及びサブクラスを含む。「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体が含まれ、また抗体の機能的断片の形態も含む意である。「ポリクローナル抗体」は、異なるエピトープに対する異なる抗体を含む抗体調製物である。「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(抗体断片を含む)を意味し、抗原上の単一の決定基を認識するものである。本発明の抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。また、本発明の抗体は、自然環境の成分から分離され、及び/又は回収された(即ち、単離された)抗体である。
本発明において「HB−EGF」は、ヘパリン結合上皮細胞増殖因子様増殖因子、DTR(ジフテリア毒素受容体)、DTS、DTSF、HEGFL等とも称されるタンパク質である。ヒトHB−EGFタンパク質は、典型的には、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(RefSeq ID:NP_001936で特定されるタンパク質、RefSeq ID:NM_001945で特定される塩基配列がコードするタンパク質)である。
また、ヒトHB−EGFタンパク質は、このような典型的なアミノ酸配列を有するもの以外に、天然においてアミノ酸が変異したものも存在しうる。従って、本発明にかかるヒトHB−EGFタンパク質には、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものも含まれる。アミノ酸配列の置換、欠失、挿入若しくは付加は、一般的には、10アミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内、3アミノ酸以内、1アミノ酸)である。
なお、抗体が、ヒトHB−EGFタンパク質において、117番目のイソロイシン等に結合する抗体であるかどうか(ヒトHB−EGFタンパク質において、117番目のイソロイシン等を認識する抗体であるかどうか)は、当業者であれば、後述の実施例3に示すような、免疫学的解析手法(フローサイトメトリー、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降等)を利用して評価することができる。
また、本発明の抗体が結合するアミノ酸を含む部位、すなわち「エピトープ」は、ヒトHB−EGFタンパク質中に存在する抗原決定基(抗体中の抗原結合ドメインが結合する抗原上の部位)を意味する。従って、本発明におけるエピトープは、アミノ酸の一次配列中において連続する複数のアミノ酸からなるポリペプチド(線状エピトープ)であってもよく、アミノ酸の一次配列中において隣接していないアミノ酸が、ペプチド又はタンパク質の折り畳み等の三次元構造によって近傍にくることにより形成されるポリペプチド(不連続エピトープ、構造的エピトープ)であってもよい。また、かかるエピトープとしては、典型的には、少なくとも1つ、及び最も普通には少なくとも5つ(例えば8〜10個、6〜20個)のアミノ酸からなる。
本発明の抗体によって抑制される「ヒトHB−EGFタンパク質の切断」は、PMA等によって活性化されたADAM12等のプロテアーゼによる、ヒトHB−EGFタンパク質のジャクスタメンブレンドメイン内における切断を意味する。ジャックスタメンブレンドメインは、典型的にはRefSeq ID:NP_001936に記載のN末端から145〜161番目のアミノ酸からなる領域である。また、かかる切断を抑制する活性は、例えば、後述の実施例4に示す方法にて評価することができる。
本発明の抗体によって抑制される「ヒトHB−EGFとEGF受容体との結合」において、「ヒトHB−EGF」とは前記ヒトHB−EGFタンパク質の全長(膜型HB−EGF)のみならず、前記切断によって細胞外に放出される部分タンパク質(分泌型HB−EGF)を含む意味である。例えば、分泌型HB−EGFとしては、配列番号:1に記載のN末端から1番目から149番目のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられ、HB−EGF−CTFとしては、配列番号:1に記載のN末端から150番目から208番目のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。また、本発明にかかる「EGF受容体」は、EGFR(ErbB1)又はErbB4である。
さらに、本発明の抗体によって抑制される「ヒトHB−EGFとEGF受容体との結合」には、前記ヒトHB−EGFと前記EGF受容体との結合のみならず、該結合に伴うEGFR又はErbB4の構造の変化、該構造の変化によって誘導されるEGFR又はErbB4のホモあるいはヘテロ二量体化、該二量体化に伴うEGFR又はErbB4のリン酸化、該リン酸化によって惹起されるMAPK経路の活性化、前記リン酸化によって惹起されるPI3K−Akt経路の活性化を含む意味である。本発明の抗体による抑制の対象として、好ましくはEGFRのリン酸化であり、より好ましくは癌細胞におけるEGFRのリン酸化である。また、かかるリン酸化を抑制する活性は、例えば、後述の実施例5に示す方法にて評価することができる。
また、本発明の抗体は、前述のヒトHB−EGFタンパク質の切断を抑制する活性(切断阻害活性)及びヒトHB−EGFとEGF受容体との結合を抑制する活性(中和活性)に加え、細胞の増殖を抑制する活性(細胞増殖抑制活性)又は抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)を有していることが好ましく、切断阻害活性、中和活性、細胞増殖抑制活性及びADCC活性を有していることがより好ましい。
本発明における「細胞の増殖の抑制」は、細胞の増殖自体(細胞の分裂)の抑制のみならず、細胞の死(アポトーシス等)の誘導による細胞の増殖抑制を含む意味である。本発明の抗体による抑制の対象として、好ましくは癌細胞の増殖であり、より好ましくはin vivoにおける癌細胞の増殖(腫瘍の増大)である。かかるin vivoにおける腫瘍の増殖を抑制する活性は、例えば、後述の実施例6に示す方法にて評価することができる。本発明の抗体の好ましい態様は、当該方法において、抗体投与開始時における腫瘍体積を100%とした際に、抗体の投与を開始してから30日経過後の腫瘍体積を230%以下(例えば、220%以下、210%以下、200%以下、190%以下、180%以下、170%以下)に抑えることのできる抗体である。
また、本発明の抗体による細胞障害の標的として、好ましくは癌細胞である。かかる癌細胞に対するADCC活性は、例えば、後述の実施例7に示す方法にて評価することができる。本発明の抗体の好ましい態様は、当該方法において、標的細胞に添加した濃度が1μg/mlである場合に、ADCC活性が10%以上(例えば、20%以上、30%以上)である抗体である。
本発明の抗体による増殖抑制の対象及び/又は細胞障害の標的となる癌の種類としては、HB−EGFと多種の癌との関連は、例えば非特許文献7〜11及び17〜21に示す通り明らかになっているので、特に制限はない。
本発明の抗体の他の好ましい態様としては、ヒトHB−EGFに結合する抗体であって、下記(a)又は(b)に記載の特徴を有する抗体が挙げられる。
(a) 配列番号:2〜4に記載のアミノ酸配列(後述の35−1抗体の軽鎖可変領域におけるCDR1〜3のアミノ酸配列)又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:6〜8に記載のアミノ酸配列(後述の35−1抗体の重鎖可変領域におけるCDR1〜3のアミノ酸配列)又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
(b) 配列番号:10〜12に記載のアミノ酸配列(後述の292抗体の軽鎖可変領域におけるCDR1〜3のアミノ酸配列)又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:14〜16に記載のアミノ酸配列(後述の292抗体の重鎖可変領域におけるCDR1〜3のアミノ酸配列)又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する。
また、本発明の抗体のより好ましい態様としては、ヒトHB−EGFに結合する抗体であって、下記(a)又は(b)に記載の特徴を有する抗体が挙げられる。
(a) 配列番号:5に記載のアミノ酸配列(後述の35−1抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列)又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:9に記載のアミノ酸配列(後述の35−1抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列)または該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
(b) 配列番号:13に記載のアミノ酸配列(後述の292抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列)又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:17に記載のアミノ酸配列(後述の292抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列)又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列とを含む重鎖可変領域とを保持する。
本発明の抗体には、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト型化抗体(ヒト化抗体)、ヒト抗体、及び、これら抗体の機能的断片が含まれる。本発明の抗体を医薬としてヒトに投与する場合は、副作用低減の観点から、キメラ抗体、ヒト型化抗体、あるいはヒト抗体が望ましく、本発明のヒト型化抗体の好ましい態様としては、ヒトHB−EGFに結合する抗体であって、配列番号:18に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:19に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する、抗体が挙げられる。
本発明において「キメラ抗体」とは、ある種の抗体の可変領域とそれとは異種の抗体の定常領域とを連結した抗体である。キメラ抗体は、例えば、抗原をマウスに免疫し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変部(可変領域)を切り出して、ヒト骨髄由来の抗体定常部(定常領域)遺伝子と結合し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入して産生させることにより取得することができる(例えば、特開平8−280387号公報、米国特許第4816397号公報、米国特許第4816567号公報、米国特許第5807715号公報)。また、本発明において「ヒト型化抗体」とは、非ヒト由来の抗体の抗原結合部位(CDR)の遺伝子配列をヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)した抗体であり、その作製方法は、公知である(例えば、EP239400、EP125023、WO90/07861、WO96/02576参照)。本発明において、「ヒト抗体」とは、すべての領域がヒト由来の抗体である。ヒト抗体の作製においては、ヒトB細胞より活性のある抗体の産生をスクリーニングする方法、ファージディスプレイ法、免疫することで、ヒト抗体のレパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を利用すること等が可能である。ヒト抗体の作製手法は、公知である(例えば、Nature,362:255−258(1993)、Intern.Rev.Immunol,13:65−93(1995)、J.Mol.Biol,222:581−597(1991)、Nature Genetics,15:146−156(1997)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:722−727(2000)、特開平10−146194号公報、特開平10−155492号公報、特許2938569号公報、特開平11−206387号公報、特表平8−509612号公報、特表平11−505107号公報)。
本発明において抗体の「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗原に結合するものを意味する。本発明にかかる抗体の「機能的断片」の態様としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、及びこれらの重合体が挙げられる。
ここで「Fab」とは、1つの軽鎖及び重鎖の一部からなる免疫グロブリンの一価の抗原結合断片を意味する。抗体のパパイン消化によって、また、組換え方法によって得ることができる。「Fab’」は、抗体のヒンジ領域の1つ又はそれより多いシステインを含めて、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端でのわずかの残基の付加によって、Fabとは異なる。「F(ab’)2」とは、両方の軽鎖と両方の重鎖の部分からなる免疫グロブリンの二価の抗原結合断片を意味する。
「可変領域断片(Fv)」は、完全な抗原認識及び結合部位を有する最少の抗体断片である。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が非共有結合により強く連結されたダイマーである。「一本鎖Fv(scFv)」は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、これらの領域は、単一のポリペプチド鎖に存在する。「sc(Fv)2」は、2つの重鎖可変領域及び2つの軽鎖可変領域をリンカー等で結合して一本鎖にしたものである。「ダイアボディー」とは、二つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であり、この断片は、同一ポリペプチド鎖の中に軽鎖可変領域に結合した重鎖可変領域を含み、各領域は別の鎖の相補的領域とペアを形成している。「多特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。例えば、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現により調製することができる。
本発明の抗体には、望ましい活性(抗原への結合活性、前記切断阻害活性、前記中和活性、他の生物学的特性)を減少させることなく、そのアミノ酸配列が修飾された抗体が含まれる。本発明の抗体のアミノ酸配列変異体は、本発明の抗体鎖をコードするDNAへの変異導入によって、またはペプチド合成によって作製することができる。そのような修飾には、例えば、本発明の抗体のアミノ酸配列内の残基の置換、欠失、付加及び/又は挿入を含む。抗体のアミノ酸配列が改変される部位は、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、抗体の重鎖または軽鎖の定常領域であってもよく、また、可変領域(フレームワーク領域及びCDR)であってもよい。CDR以外のアミノ酸の改変は、抗原との結合親和性への影響が相対的に少ないと考えられるが、現在では、CDRのアミノ酸を改変して、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をスクリーニングする手法が公知である(PNAS,102:8466−8471(2005)、Protein Engineering,Design&Selection,21:485−493(2008)、国際公開第2002/051870号、J.Biol.Chem.,280:24880−24887(2005)、Protein Engineering,Design&Selection,21:345−351(2008))。
改変されるアミノ酸数は、好ましくは、10アミノ酸以内、より好ましくは5アミノ酸以内、最も好ましくは3アミノ酸以内(例えば、2アミノ酸以内、1アミノ酸)である。アミノ酸の改変は、好ましくは、保存的な置換である。本発明において「保存的な置換」とは、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本発明の属する技術分野でよく知られている。例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン・アルギニン・ヒスチジン)、中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・プロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・トレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン・メチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン・グルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン)で分類することができる。
また「同等の活性を有する」とは、抗原への結合活性、前記切断活性又は前記中和活性が対象抗体(代表的には、後述の実施例において示す、35−1抗体又は292抗体)と同等(例えば、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上)であることを意味する。抗原への結合活性は、例えば、後述の実施例において示す通り、抗原との反応性をELISAにより解析することや、抗原を発現する細胞を作製し、抗体サンプルとの反応性をフローサイトメーターで解析することにより評価することができる。前記切断活性は、例えば、後述の実施例に示す方法にて、PMA刺激を与えた細胞表面における膜型HB−EGFの残存率を指標として、またはPMA刺激を与えた細胞表面におけるHB−EGF−CTFの発生率を指標として評価することができる。また、前記中和活性は、HB−EGFタンパク質による刺激を与えた癌細胞におけるEGFRタンパク質のリン酸化の程度を指標として評価することができる。
また、本発明の抗体の改変は、例えば、グリコシル化部位の数又は位置を変化させる等の抗体の翻訳後プロセスの改変であってもよい。これにより、例えば、抗体のADCC活性を向上させることができる。抗体のグリコシル化とは、典型的には、N−結合又はO−結合である。抗体のグリコシル化は、抗体を発現するために用いる宿主細胞に大きく依存する。グリコシル化パターンの改変は、糖生産に関わる特定の酵素の導入又は欠失等の公知の方法で行うことができる(特開2008−113663号公報、米国特許第5047335号、米国特許第5510261号、米国特許第5278299号、国際公開第99/54342号)。さらに、本発明においては、抗体の安定性を増加させる等の目的で脱アミド化されるアミノ酸若しくは脱アミド化されるアミノ酸に隣接するアミノ酸を他のアミノ酸に置換することにより脱アミド化を抑制してもよい。また、グルタミン酸を他のアミノ酸へ置換して、抗体の安定性を増加させることもできる。本発明は、こうして安定化された抗体をも提供するものである。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であれば、抗原(ヒトHB−EGFタンパク質、その部分ペプチド(例えば、ヒトHB−EGFタンパク質のEGFドメイン)、又はこれらを発現する細胞等)で動物を免疫し、その抗血清から、従来の手段(例えば、塩析、遠心分離、透析、カラムクロマトグラフィー等)によって、精製して取得することができる。
また、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法や組換えDNA法によって作製することができる。
ハイブリドーマ法としては、代表的には、コーラー及びミルスタインの方法(Kohler&Milstein,Nature,256:495(1975))が挙げられる。この方法における細胞融合工程に使用される抗体産生細胞は、前記抗原で免疫された動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ、ニワトリ、ラクダ)の脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血白血球などである。免疫されていない動物から予め単離された上記の細胞又はリンパ球等に対して、抗原を培地中で作用させることによって得られた抗体産生細胞も使用することが可能である。ミエローマ細胞としては公知の種々の細胞株を使用することが可能である。抗体産生細胞及びミエローマ細胞は、それらが融合可能であれば、異なる動物種起源のものでもよいが、好ましくは、同一の動物種起源のものである。ハイブリドーマは、例えば、抗原で免疫されたマウスから得られた脾臓細胞と、マウスミエローマ細胞との間の細胞融合により産生され、その後のスクリーニングにより、ヒトHB−EGFタンパク質における117番目のイソロイシン等に結合する抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。ヒトHB−EGFタンパク質における117番目のイソロイシン等に結合するモノクローナル抗体は、ハイブリドーマを培養することにより、また、ハイブリドーマを投与した哺乳動物の腹水から、取得することができる。
組換えDNA法は、本発明の抗体をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞等からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞(例えば哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等)に導入し、本発明の抗体を組換え抗体として産生させる手法である(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques,1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean Monoclonal Antibodies,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS、Vandamme A.M.et al.,Eur.J.Biochem.192:767−775(1990))。本発明の抗体をコードするDNAの発現においては、重鎖又は軽鎖をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよく、重鎖及び軽鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよい(国際公開第94/11523号公報 参照)。本発明の抗体は、上記宿主細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液から分離・精製し、実質的に純粋で均一な形態で取得することができる。抗体の分離・精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている方法を使用することができる。トランスジェニック動物作製技術を用いて、抗体遺伝子が組み込まれたトランスジェニック動物(ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等)を作製すれば、そのトランスジェニック動物のミルクから、抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である。
従って、本発明は、本発明の抗体をコードするDNA、本発明の抗体を産生する又は本発明の抗体をコードするDNAを含むハイブリドーマをも提供することができる。
また、本発明の抗体においては、薬剤若しくはプロドラッグ等の化合物又は分子が結合していてもよい。かかる抗体を投与することにより、ヒトHB−EGFタンパク質が発現している部位(例えば、癌細胞)に、該化合物又は分子を送達することができる。そのような薬物又はプロドラッグとしては特に制限はないが、本発明の抗体による抗腫瘍効果を相加的又は相乗的に増強するという観点から、抗腫瘍性を有する物質が好ましい。かかる抗腫瘍性を有する物質としては特に制限されるものではなく、例えば、抗癌剤(イリノテカン(CPT−11)、イリノテカンの代謝産物SN−38(10−ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン)、アドリアマイシン、タキソール、5−フルオロウラシル、ニムスチン、ラミニスチン等のアルキル化剤、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド等の代謝拮抗剤、エトポシド、ビンクリスチン等の植物アルカロイド、マイトマイシン、ブレオマイシン等の抗癌性抗生物質、シスプラチン等の白金製剤、ソラフェニブ、エルロチニブ等の分子標的剤、メトトレキセート、シトシンアラビノシド、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン、シクロフォスファミド、イフォスファミド、ブスルファン等が挙げられる。また、放射性同位体も本発明の抗体に結合する抗腫瘍性を有する物質として好適に利用できる。
また、抗体と前記化合物又は分子との結合も、当該技術分野で公知の方法により行うことができ、直接的結合及び間接的結合のいずれでもよい。例えば、直接的な結合として、共有結合を利用することができる。間接的な結合としては、リンカーを介した結合を利用することができる。かかるリンカーを介した結合については、当業者であれば、例えばHermanson,G.T.Bioconjugate Techniques,Academic Press,1996;Harris,J.M. and Zalipsky,S.編,Poly(ethylene glycol),Chemistry and Biological Applications,ACS Symposium Series,1997;Veronese,F. and Harris,J.M.編,Peptide and protein PEGylation.Advanced Drug Delivery Review 54(4),2002の記載を参照しながら行うことができる。本発明の抗体1分子に結合する前記化合物又は分子の数は、理論的には特に限定されないが、抗体と化合物等とからなる複合体の安定性や製造容易性等の観点から、通常1〜10個、好ましくは1〜8個である。
また、後述の実施例において示す通り、癌細胞の増殖等において重要な要素である、HB−EGFタンパク質の切断と、EGFRのリン酸化とを、本発明の抗体により抑制できることから、癌の治療又は予防に利用することができる。従って、本発明は、本発明の抗体を有効成分とする癌を治療又は予防するための組成物、並びに本発明の抗体の治療上又は予防上の有効量を、ヒトに投与する工程を含んでなる、癌を治療又は予防するための方法(前記組成物を癌患者に投与して治療する方法等)をも提供するものである。また、本発明は、前記組成物を医薬として使用する方法を提供するものである。なお、本発明の抗体が標的とする癌としては、前述の通り特に制限はなく、多種の癌が標的となり得る。
本発明の抗体を有効成分とする癌を治療又は予防するための組成物は、本発明の抗体と任意の成分、例えば生理食塩水、葡萄糖水溶液又はリン酸塩緩衝液等を含有する形態で使用することができる。本発明の癌を治療又は予防するための組成物は、必要に応じて液体又は凍結乾燥した形態で製形化しても良く、任意に薬学的に許容される担体若しくは媒体、例えば、安定化剤、防腐剤、等張化剤等を含有させることもできる。
薬学的に許容される担体としては、凍結乾燥した製剤の場合、マンニトール、ラクトース、サッカロース、ヒトアルブミン等を例として挙げることができ、液状製剤の場合には、生理食塩水、注射用水、リン酸塩緩衝液、水酸化アルミニウム等を例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の癌を治療又は予防するための組成物の投与方法は、投与対象の年齢、体重、性別、健康状態等により異なるが、経口投与、非経口投与(例えば、静脈投与、動脈投与、局所投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。当該組成物の投与量は、患者の年齢、体重、性別、健康状態、癌の進行の程度及び投与する組成物の成分により変動しうるが、一般的に静脈内投与の場合、成人には体重1kg当たり1日0.01〜1000mg、好ましくは1〜100mgである。
本発明の癌を治療又は予防するための方法においては、本発明の抗体を投与する方法としては前述の通り特に制限はなく、経口投与、非経口投与のいずれかの投与経路で投与することができる。当業者であれば前記薬学的に許容される担体若しくは媒体等を選択し、適した組成物の形態をとることにより達成できる。ヒトに投与される本発明の抗体の治療上又は予防上の「有効量」は、前述の通り、当業者であれば、患者の年齢、体重、性別、健康状態、癌の進行の程度、投与経路等を考慮して決定することができる。また、本発明の抗体の投与対象となる「ヒト」としては特に制限はなく、例えば、癌を罹患しているヒト(癌患者)が挙げられる。また、予防、癌の再発を抑えるという観点から、癌を化学療法、放射線療法、外科療法等によって除去した後のヒトであってもよい。
さら、本発明の癌を治療又は予防するための方法においては、本発明の抗体を投与する工程の他、本発明の抗体の有効性を評価する工程を含んでいてもよい。すなわち、
本発明の抗体の治療上又は予防上の有効量をヒトに投与する工程と、
該投与後のヒトにおいて、本発明の抗体の有効性を評価する工程とを含む、
癌を治療又は予防するための方法を、本発明は提供する。
本発明の抗体の「有効性の評価」については特に制限はなく、例えば、投与後の腫瘍のサイズ、癌の転移能又は各種癌マーカーの発現が投与前と比べ低減していれば、癌の治療等において本発明の抗体は有効であると判定することができる。また、癌に伴う異常、例えば、体重減少、腹痛、背痛、食欲低下、嘔気、嘔吐及び全身性倦怠感、虚弱、並びに黄疸等を指標としても、本発明の抗体の有効性を評価することができる。さらに、本発明の抗体による治療後、腫瘍組織を切除した場合、該腫瘍組織におけるHB−EGFが関与するシグナル伝達の程度を調べることによっても、癌の治療等において本発明の抗体は有効であると判定することができる。例えば、腫瘍組織において通常亢進されるEGFRのリン酸化が、本発明の抗体の投与によって阻害されていることが検出されれば、癌の治療等において本発明の抗体は有効であると判定することができる。
本発明の抗体は、前述の通り、多種の癌においてHB−EGFタンパク質の発現亢進等が認められているため、癌の治療や予防のみならず、癌の検査への応用も考えられる。特に、本発明の抗体のエピトープが存在するEGFドメインは、HB−EGFタンパク質の細胞外領域であるため、細胞免疫染色やフローサイトメトリー等において、簡便かつ効率良く、HB−EGFタンパク質を発現している癌細胞を検出することができる。また、本発明は、上記本発明の抗体を有効成分とする癌の検査薬及びキットを提供する。
本発明の抗体を癌の検査に用いる場合あるいは癌の治療における腫瘍部位の検出に用いる場合、本発明の抗体は、標識したものであってもよい。標識としては、例えば、放射性物質、蛍光色素、化学発光物質、酵素、補酵素を用いることが可能である。本発明の抗体を検査薬として調剤するには、合目的な任意の手段を採用して任意の剤型でこれを得ることができる。例えば、精製した抗体についてその抗体価を測定し、適当にPBS等で希釈した後、0.1%アジ化ナトリウム等を防腐剤として加えることができる。また、例えば、ラテックス等に本発明の抗体を吸着させたものについて抗体価を求め、適当に希釈し、防腐剤を添加して用いることもできる。
また、本発明の検査薬を構成成分として含む、癌を検出するためのキットもまた、本発明に含まれる。かかるキットには、本発明の検査薬の他に、例えば、抗原抗体反応(ELISA法、免疫組織化学染色法、フローサイトメトリー等)を実施するための種々の試薬(二次抗体、発色試薬、染色試薬、緩衝液、対照標品等)、反応容器、操作器具、及び/又は説明書を含めることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、本実施例において、特段の断りがない限り、「HB−EGF」は、配列番号:1(NCBIリファレンスシークエンス:NP_001936)に記載のアミノ酸配列(1〜208番目のアミノ酸)からなる、ヒト由来の膜型HB−EGFタンパク質を示す。また、HB−EGFがプロテアーゼによって切断(シェディング)され細胞外に放出される部分タンパク質を「分泌型HB−EGF」と称し、当該切断後、細胞膜側に残存している部分タンパク質を「HB−EGF−CTF(HB−EGF C末断片)」と称する。なお、HB−EGFにおいて、EGFドメインは、N末端から107〜144番目のアミノ酸からなる領域であり、ジャックスタメンブレンドメイン(シェディング領域)は、N末端から145〜161番目のアミノ酸からなる領域であり、細胞外領域は、N末端から1〜161番目のアミノ酸からなる領域であり、トランスメンブレン(膜貫通ドメイン)は、N末端から162〜183番目のアミノ酸からなる領域である。
(実施例1)
ヒトHB−EGFタンパク質に対する抗体を以下に示す方法にて作製した。
<HB−EGFのcDNA取得>
ヒト膵臓癌細胞AsPC−1(ATCC、カタログ番号:CRL−1682)から作製したcDNAライブラリーから、ヒトHB−EGFタンパク質(配列番号:1に記載の1〜208番目のアミノ酸配列からなるタンパク質)をコードするDNAをPCR法によって増幅した。得られたPCR産物をT7Blue T−ベクター(Novagen社製、カタログ番号:69820)にクローニングし、塩基配列を確認した。また、このようにして得られたベクターをhHB−EGF−pT7と名づけた。
<膜型HB−EGFを発現する細胞の作製>
ヒトHB−EGFタンパク質の全長を安定発現する動物細胞を、以下のように作製した。すなわち先ず、hHB−EGF−pT7を鋳型として、PCR法にて増幅させたDNAの末端をNotIとBamHIとで切断し、動物細胞用発現ベクターのNotI−BamHIサイトに挿入した。動物細胞用の発現ベクターには、CMVプロモーターで制御され、IRES配列により目的遺伝子とPuromycin−EGFP融合タンパク質とが同時に発現されるpQCxmhIPGを用いた。pQCxmhIPGは、本発明者らが「BD Retro−X Qベクターズ」(Clontech社製、カタログ番号:631516)のpQCXIPレトロウィルスベクターを改変したベクターである。作製したベクターは、HB−EGF−pQCxmhIPGと名付けた。
また、リコンビナントHB−EGF分子の細胞膜上の発現を確認するために、オーバーラップ・エクステンションPCR法にてN末端から24番目と25番目のアミノ酸の間にHAタグを付加したHA−HB−EGFを調製した。そして、HA−HB−EGFも前記同様に、pQCxmhIPGに挿入した。作製したベクターは、HA−HB−EGF−pQCxmhIPGと名付けた。
次に、作製したベクターを、パントロピック レトロウィルス発現システム(Clontech社製、カタログ番号:K1063−1)を用いて以下のように293T細胞又はCHO−K1細胞に導入した。
先ず、コラーゲンにてコートした100mmディッシュに、80〜90%コンフルエント状態のGP2−293(Clontech社製、カタログ番号:K1063−1)を準備し、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製、カタログ番号:11668−019)を用いて、上記の通り構築した発現ベクター(HB−EGF−pQCxmhIPG又はHA−HB−EGF−pQCxmhIPG)とpVSV−G(Clontech社製、カタログ番号:K1063−1)とを11.2ugずつ共導入した。48時間後、ウイルス粒子を含む上清を回収し、超遠心(18,000rpm、1.5時間、4℃)によってウイルス粒子を沈殿させ、その沈殿物を30uLのTNE(50mM Tris−HCl[pH=7.8]、130mM NaCl、1mM EDTA)で懸濁し、レトロウイルスベクター濃縮液を調製した。次いで、このレトロウイルスベクター濃縮液5uLを、8ug/mLの臭化ヘキサジメトリン(SIGMA社製、カタログ番号:H−9268)を含んだ150uLのDMEM(SIGMA社製、カタログ番号;D5796)−10%FBSで希釈し、ウイルス粒子含有培地を調製した。
次に、96穴のマイクロプレートに約40%コンフルエントの状態になるように細胞を準備し、これら細胞の培地を、前記ウイルス粒子含有培地に交換した。そして、これら細胞を、Puromycin(SIGMA社製、カタログ番号:P−8833)を含む選択培地にて培養することによって、目的遺伝子が発現している細胞(HB−EGF/st293T、HA−HB−EGF/st293T、HB−EGF/stCHO−K1、HA−HB−EGF/stCHO−K1)を得た。なお、293T細胞の培養には5ug/mLのPuromycinを含む培地を、CHO−K1細胞の培養には10ug/mLのPuromycinを含む選択培地を用いた。
<HB−EGFの部分長を分泌発現する細胞の作製>
分泌型HB−EGF(配列番号:1に記載のN末端から1番目から149番目のアミノ酸配列からなるタンパク質)又はHB−EGF細胞外領域(配列番号:1に記載のN末端から1番目から161番目のアミノ酸配列からなるタンパク質)を発現する動物細胞を、以下のようにして作製した。
hHB−EGF−pT7を鋳型として、PCR法にて増幅させたHB−EGF部分長DNAの末端をNotIとBamHIとで切断し、動物細胞分泌発現用ベクターpQCxmhIPGのNotI−BamHIサイトに挿入した。分泌型HB−EGF(HB−EGFv5)をコードするDNAを挿入したベクターをHB−EGFv5−pQCxmhIPGと名付け、HB−EGF細胞外領域(HB−EGFv4)をコードするDNAを挿入したベクターをHB−EGFv4−pQCxmhIPGと名付けた。
そして、作製したベクターを上記と同様に、パントロピック レトロウィルス発現システムを用いて293T細胞に導入し、5ug/mLのPuromycinを含む選択培地で培養することによって、目的遺伝子を安定的に発現する細胞株(HB−EGFv5/st293T及びHB−EGFv4/st293T)を樹立した。
<HB−EGF部分長精製タンパク質(動物細胞由来リコンビナントタンパク質)の調製>
前記にて樹立した発現細胞株(HB−EGFv5/st293T及びHB−EGFv4/st293T)を、293用培地(製品名:CD293、Invitrogen社製)1Lにて各々培養した。培養上清を回収し、そこからTALON精製キット(Clontech社製、カタログ番号:K1253−1)を用いてリコンビナントタンパク質を精製した。精製したタンパク質(HB−EGFv5及びHB−EGFv4)は、SDS−PAGE及びウエスタンブロットにて確認した。さらにプロテインアッセイキットII(BioRad社製、カタログ番号:500−0002JA)を用いてタンパク質濃度を決定した。
<抗原免疫>
HB−EGFv4はPBSにて希釈し、同量のコンプリートアジュバント(SIGMA社製、カタログ番号:F5881)と混合してエマルジョンにし、4〜5週齢のC3Hマウス(日本エスエルシー社製)等に1匹当たり5〜20ug、3〜7日おきに6回免疫した。最終免疫の3日後にマウスからリンパ球細胞を摘出し、マウス骨髄腫細胞P3U1(P3−X63Ag8U1)と、次に示す方法にて融合させた。
<細胞融合>
細胞融合は以下の一般的な方法を基本として行った。全ての培地中のFBSは、56℃で30分間保温する処理によって非働化したものを使用した。P3U1は、RPMI1640−10%FBS(Penicillin−Streptomycin含有)で培養して準備した。摘出したマウスリンパ球細胞とP3U1を10:1〜2:1の割合で混合し、遠心した。沈殿した細胞に50%ポリエチレングリコール4000(Merck社製、カタログ番号:1.09727.0100)を徐々に加えながら穏やかに混合後、遠心した。沈殿した融合細胞を、15%FBSを含むHAT培地(RPMI1640、HAT−supplement(Invitrogen社製、カタログ番号:11067−030)、Penicillin−Streptomycin)で適宜希釈し、96穴のマイクロプレートに200uL/ウェルで播種した。融合細胞をCOインキュベータ(5%CO、37℃)中で培養し、コロニーが形成されたところで培養上清をサンプリングし、次に示す通りスクリーニングを行った。
<抗HB−EGFモノクローナル抗体産生細胞の選択>
抗HB−EGF抗体を産生するハイブリドーマは、酵素免疫測定法(ELISA)によって選定した。アッセイにはそれぞれ免疫原として使用したリコンビナントヒトHB−EGFタンパク質を96ウェルのELISAプレート(nunc社製)に0.5ug/mL、50uL/ウェルで分注し、室温2時間又は4℃一晩静置して吸着させたものを用いた。溶液を除去後、1% BSA(ナカライ社製、カタログ番号:01863−35)−5%スクロース(WAKO社製)−PBSを150uL/ウェル加え、室温で2時間静置し、残存する活性基をブロックした。静置後、溶液を除去し、一次抗体としてハイブリドーマ培養上清を50uL/ウェル分注し、1時間静置した。該プレートを0.05% Tween20−PBSで洗浄後、二次抗体として1/10000倍希釈したHRP標識ヤギ抗マウスIgG(MBL社製、カタログ番号:330)を50uL/ウェル加えて室温で1時間静置した。該プレートを0.05% Tween20−PBSで洗浄後、発色液(5mMクエン酸ナトリウム、0.8mM 3.3’.5.5’テトラメチルベンチジン−2HCl、10%N,N−ジメチルホルムアミド、0.625%ポリエチレングリコール4000、5mMクエン酸一水和物、5mM H)を50uL/ウェル添加し室温20分静置して発色させ、1Mリン酸を50uL/ウェル添加して発色を停止させた後、主波長450nm及び副波長620nmにおける吸光度をプレートリーダー(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて測定した。
ここで選択したハイブリドーマの培養上清は、さらに、免疫原として使用したリコンビナントタンパク質と同一のタグ配列を持つ他の精製リコンビナントタンパク質に反応しないことを同様のELISAによって確認した。これにより、産生される抗体はタグ部分やリンカー部分ではなくHB−EGFを認識するものであることを確認した。
そして、産生する抗体がHB−EGFを特異的に認識することが確認されたハイブリドーマは、15%FBSを含むHT培地(RPMI1640、HT−サプリメント(Invitrogen社製、カタログ番号:21060−017)、Penicillin−Streptomycin)で拡大培養した後、限界希釈法によって単クローン化した。
<抗HB−EGFモノクローナル抗体の取得>
前記にて単クローン化した各ハイブリドーマを無血清培地(GIBCO社製、カタログ番号:12300−067)で培養し、その培養上清から、プロテインA−セファロースを用いた一般的なアフィニティー精製法により抗体を精製した。これら抗体のヒトHB−EGFに対する反応性は、前記同様に、免疫原として使用した精製タンパク質を用いた酵素免疫測定法(ELISA)によって確認し、抗HB−EGF抗体を産生するハイブリドーマを取得した。
(実施例2)
<取得抗体の細胞表面HB−EGFに対する反応性>
実施例1にて取得した抗HB−EGF抗体のうち、細胞表面HB−EGFに強く反応するものを、フローサイトメトリーを用いた一般的な方法によって選定した。同数のHB−EGF/st293T(5×10^4個)又は293T(5×10^4個)に対し、同濃度の各取得抗体(5ug/mL)と同濃度の二次抗体(ベックマンコールター社製、カタログ番号:IM0855の抗体を1/200に希釈して使用)とを反応させ、フローサイトメトリーにおける平均蛍光強度を解析した。なお、このフローサイトメトリーにおいて、陰性対照としてマウスIgG1(アイソタイプコントロール、MBL社製、カタログ番号:M075−3)をコントロール抗体として用い、HB−EGF/st293T又は293Tと反応しないことを確認した。得られた結果を図1に示す。
図1に示す通り、取得した抗体のうち、35−1抗体及び292抗体等は細胞表面上のHB−EGFに強く反応する抗体であることが明らかになった。
(実施例3)
<取得抗体のエピトープ解析>
以下に示す方法にて、アミノ酸点変異型HB−EGFに対する抗HB−EGF抗体の反応性をフローサイトメトリーにて解析し、取得抗体が結合するエピトープの同定を試みた。
先ず、フローサイトメトリーに供するアミノ酸点変異型HB−EGFを発現する細胞を調製した。すなわち、HB−EGF−pQCxmhIPGを鋳型とし、部位特異的変異導入法により、表1に示す変異型HB−EGFをコードする遺伝子を作製した。得られた変異型HB−EGF遺伝子を、動物細胞用発現ベクターpQCxmhIPGに挿入し、各変異型HB−EGFをコードするベクターを調製した。そして、これらベクターを各々293T細胞に遺伝子導入し、一過性に発現をさせることにより、アミノ酸点変異型HB−EGFを発現する細胞を調製した。
また、フローサイトメトリーに陽性対照として供するため、HB−EGF−pQCxmhIPGを293T細胞に遺伝子導入し、一過性に発現をさせることにより、野生型HB−EGFを発現する細胞を調製した。
次に、野生型HB−EGF又は各変異型HB−EGFを発現した細胞に対し、抗HB−EGF抗体(5ug/mL)と二次抗体(ベックマンコールター社製、カタログ番号:IM0855の抗体を1/200に希釈して使用))とを反応させ、フローサイトメトリーの平均蛍光強度を解析した。また、各変異体の発現量の違いを補正するため、アミノ酸点変異により結合能が変化しないヤギ由来の抗ヒトHB−EGFポリクローナル抗体(R&D社製、カタログ番号:BAF259の抗体を1ug/mlにて使用)、SA−PE(Invitrogen社製、カタログ番号:S866の抗体を1/200に希釈して使用)を反応させ、前記抗HB−EGF抗体同様に、フローサイトメトリーの平均蛍光強度を解析した。そして、得られた平均蛍光強度(抗体の反応性)に基づき、各変異型HB−EGFに対する各抗HB−EGF抗体の結合強度(相対値)を以下の式(式*)にて算出した。得られた結果を図2に示す。
式*:(変異型HB−EGFに対する抗HB−EGF抗体の反応性/変異型HB−EGFに対するヤギポリクローナル抗体の反応性)/(野生型HB−EGFに対する抗HB−EGF抗体の反応性/野生型HB−EGFに対するヤギポリクローナル抗体反応性)。
また、前述の変異型HB−EGFに対する抗HB−EGF抗体の結合強度(相対値)が0.4以下である場合に、当該抗HB−EGF抗体は、当該変異体において置換される前のアミノ酸に結合する抗体であると判定した。
図2に示した結果から明らかなように、35−1抗体及び292抗体は、G140A、E141H、R142Aには殆ど反応せず、加えてF115A、I117Aへの反応性は著しく低いものであった。また、今回取得した抗体の一つ、1−1抗体は、F115A、R142Aには殆ど反応せず、加えてG140A、E141Hへの反応性は著しく低いものであった。
従って、取得した抗HB−EGF抗体のうち、35−1抗体及び292抗体は、ヒトHB−EGFタンパク質の115番目のフェニルアラニン、117番目のイソロイシン、140番目のグリシン、141番目のグルタミン酸及び142番目のアルギニンを認識していることが明らかとなった。また、1−1抗体は、115番目のフェニルアラニン、140番目のグリシン、141番目のグルタミン酸及び142番目のアルギニンを認識するが、前記2抗体とは異なり117番目のイソロイシンを認識しないことが明らかになった。
(実施例4)
<取得抗体のHB−EGF切断阻害活性>
取得した抗HB−EGF抗体によって、膜型HB−EGFの切断を阻害できるかどうかを、以下に示すフローサイトメトリーにて評価した。
先ず、HA−HB−EGF/stCHO−K1を、48穴のマイクロプレートに1ウェルあたり100000細胞播種し、37℃で6時間培養した。細胞がプレート底面に接着したことを確認したのち、血清を含まないF12 Ham’s培地に交換して、さらに15時間培養した。
次に、35−1抗体又はコントロール抗体(MBL社製、カタログ番号:M075−3)を添加した培地に交換し、37℃で30分間インキュベートした。この際の抗体濃度は25、5、1、0.2、0.04ug/mLの5段階とし、1ウェルあたりの培地量は200uLとした。続いて、5000nMに調整したPMA添加培地を1ウェルあたり2uL添加し混合することによって、最終濃度500nMとなるようにPMAを添加した。37℃で60分間培養した後、PBS−0.05% EDTAで剥離し、細胞を回収した。なお、培地に添加したPMA(ホルボール−12−ミリステート−13−アセテート)は、プロテインキナーゼC(PKC)を活性化することにより、HB−EGFにシェディングを誘導することが明らかになっている。
一連の処理を行ったのちに、これら細胞の表面に残存しているHB−EGFを、HB−EGFのN末端に付加されているHAタグを認識する抗体を用いたフローサイトメトリーで検出することによって解析した。一次抗体として2ug/mLに希釈したビオチン化抗HAタグ抗体(MBL社製、カタログ番号:M132−3)、二次抗体として1/100希釈したPE標識ストレプトアビジン(インビトロジェン社製、カタログ番号:S866)を使用し、常法に従って行った。得られた結果を図3に示す。なお、図3において、縦軸はフローサイトメトリーでの平均蛍光強度を示す。
図3に示した結果から明らかなように、35−1抗体及び292抗体のいずれにおいても、細胞表面に残存しているHB−EGFの量は、抗体の添加濃度依存的に増大していった。
次に、取得した抗HB−EGF抗体によって、膜型HB−EGFの切断を阻害できるかどうかを、以下に示すウェスタンブロットにて評価した。
先ず、HA−HB−EGF/stCHO−K1を、48穴のマイクロプレートに1ウェルあたり100000細胞播種し、37℃で6時間培養した。細胞がプレート底面に接着したことを確認したのち、血清を含まないF12 Ham’s培地に交換して、さらに15時間培養した。
次に、35−1抗体又はコントロール抗体(MBL社製、カタログ番号:M075−3)を添加した培地に交換し、37℃で30分間インキュベートした。この際の抗体濃度は100、10、1ug/mLの段階とし、1ウェルあたりの培地量は200uLとした。
続いて、5000nMに調整したPMA添加培地を1ウェルあたり2uL添加し、混合することによって、最終濃度500nMとなるようにPMAを添加した。また、PMAによる切断が誘導されていない条件下のHB−EGF−CTFの量を測定するため、培地のみ添加した細胞を用意した。さらに、非阻害時のHB−EGF−CTFの生成量を測定するため、抗体を添加せずPMAのみを添加した細胞を用意した。そして、これら細胞を37℃で60分間培養した後、1ウェルあたり100uLのSDSサンプルバッファー(62.5mM Tris−HCL(pH=6.8)、5% グリセロール、2% SDS、0.003% BPB、5% 2−メルカプトエタノール)で細胞を回収した。
一連の処理を行った後に、これら細胞内のHB−EGF−CTFを、HB−EGFのC末端に付加されているmycタグを認識する抗体を用いたウェスタンブロットで検出することによって解析した。回収した細胞サンプルを加熱処理した後10uLずつをSDS−PAGEに供し、一次抗体として5000倍希釈した抗mycタグ抗体(MBL社製、カタログ番号:M047−3)、二次抗体として5000倍希釈したHRP標識抗マウスIgG抗体(MBL社製、カタログ番号:330)を使用し、常法に従って行った。得られた結果を図4に示す。
また、インキュベーションの条件を、HA−HB−EGF/stCHO−K1と、培地における添加濃度が25、5、1、0.2又は0.04ug/mLである35−1抗体、292抗体又は前記コントロール抗体とのインキュベーションに替え、前記同様に、これら抗体によって、膜型HB−EGFの切断を阻害できるかどうかをウェスタンブロットにて評価した。得られた結果を図5に示す。
図4及び5に示した結果から明らかなように、35−1抗体及び292抗体のいずれにおいても、抗体の添加により、切断後細胞膜側に残存するHB−EGF−CTFの生成量は低減された。また、図には示さないが、1−1抗体においても、前記2抗体同様に、切断後細胞膜側に残存するHB−EGF−CTFの生成量は低減された。
以上の結果より、35−1抗体、292抗体及び1−1抗体は、膜型HB−EGFに対する切断阻害活性を示すことが明らかになった。
(実施例5)
<取得抗体のHB−EGF中和活性>
ヒト肺がんの株化培養細胞であるA431(ATCC、カタログ番号:CRL−1555)を用いて、HB−EGFで刺激した際に誘起されるEGFRのリン酸化を、取得した抗HB−EGF抗体が阻害できるか、すなわち抗HB−EGF抗体にHB−EGFを中和する活性の有無を、以下に示すウエスタンブロット法によって解析した。
先ず、DMEM−10%FBS(Penicillin−Streptomycin含有)にて培養したA431を、12穴プレートに1ウェルあたり50000細胞播種し、37℃で6時間培養した。細胞がプレート底面に接着したことを確認したのち、血清を含まないDMEM培地に交換して、さらに48時間培養した。
次に、分泌型HB−EGFのリコンビナントタンパク質(HB−EGFv5)と、取得した抗HB−EGF抗体(35−1抗体、292抗体又は1−1抗体)とを、血清を含まないDMEM培地200uL中で混和し、37℃で30分間インキュベートした後、前記細胞に添加した。この際、リコンビナントタンパク質の濃度は50ng/mLであり、抗体濃度は125、25、5、1、0.2及び0ug/mLの抗体濃度は6段階とした。また、35−1抗体については低濃度(10、1、0.1、0.01、0.001及び0ug/mLの6段階)でも試行した。また陽性対照として、HB−EGFのリコンビナントタンパク質(HB−EGFv5)のみを、陰性対照としてHB−EGFを含まないDMEM培地のみを添加した。これを37℃で15分間培養した後、1ウェルあたり150uLのSDSサンプルバッファー(62.5mM Tris−HCL(pH=6.8)、5%グリセロール、2% SDS、0.003% BPB、5% 2−メルカプトエタノール)で細胞を回収した。
そして、回収した細胞サンプルを加熱処理した後、15uLずつをSDS−PAGEに供し、1/1000希釈した抗リン酸化EGFRウサギ抗体(CellSignaling社製、カタログ番号:#3777)又はEGFRウサギ抗体(CellSignaling社製、カタログ番号:#4267)と1/5000希釈したHRP標識抗ウサギ抗体(MBL社製、カタログ番号:458)を用いてウェスタンブロットを施行した。得られた結果を図6〜8に示す。
図6及び7に示した結果から明らかな通り、35−1抗体及び292抗体はいずれもHB−EGFによるEGFRのリン酸化を濃度依存的に阻害し、35−1抗体及び292抗体はいずれもHB−EGF中和活性を有することが明らかになった。一方、図8に示した結果から明らかな通り、1−1抗体はHB−EGFによるEGFRのリン酸化の阻害は認められず、HB−EGF中和活性を有していないことが明らかになった。
前述の通り、35−1抗体及び292抗体と、1−1抗体とは、ヒトHB−EGFタンパク質の117番目のイソロイシンがエピトープに含まれるか否かにおいて相違する。また、非特許文献21には、ヒトHB−EGFタンパク質において、133番目のイソロイシン及び135番目のヒスチジンをエピトープとする抗体(7E10、3D9)並びに141番目のグルタミン酸をエピトープとする抗体(3H4等)のいずれも切断阻害活性を有するものの、中和活性を有していないことが示されている。
従って、抗HB−EGF抗体が中和活性を発揮するためには、ヒトHB−EGFタンパク質の117番目のイソロイシンに結合することが必要であることが明らかになった。
(実施例6)
<進行癌モデルでの抗腫瘍活性評価>
取得した抗HB−EGF抗体の抗腫瘍活性を判定するため、ゼノグラフトマウスを用いて評価を行った。すなわち先ず、ヒト乳癌細胞株MDA−MB−231(ATCC、カタログ番号:HTB−26)をDMEM−10%FBS(Penicillin−Streptomycin含有)で培養し、PBS−0.05% EDTAで剥離した。PBSにて洗浄後、RPMI1640培地で5×10細胞/mLとなるように縣濁した。Matrigel(BD社製、カタログ番号:354230)を等量加えて縣濁したのち、6週齢メスのヌードマウス(日本クレア社製、BALB/cAJcl−nu/nu)の右腹側部に200uLずつ皮下移植した。腫瘍体積が200mm前後になった時点で、各群の平均腫瘍体積が同等となるようにマウスを選抜した。同日から、750ug/ml(高濃度)又は150ug/ml(低濃度)にPBSで希釈した抗体溶液を、コントロール群はPBSを、200uLずつ腹空投与した(各群4匹)。なお、ゼノグラフトマウスに投与した抗体は、後述のキメラ化した35−1抗体である。また、投与は一週間に2回、計6回行った。抗体投与時点からノギスで腫瘍径を測定し、腫瘍体積を以下の式により算出した。
式:腫瘍体積(mm)=長径×短径×0.5
得られた結果を図9に示す。
図9に示した結果から明らかなように、35−1抗体はヒト乳癌細胞株MDA−MB−231の増殖を阻害した。すなわち、35−1抗体は進行癌モデルにおいて抗腫瘍活性を有することが明らかとなった。
(実施例7)
<抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)の評価>
取得した抗HB−EGF抗体のADCC活性を評価した。すなわち先ず、標的細胞としてヒト乳癌細胞株MDA−MB−231を選択した。そして、該細胞をDMEM−10%FBS(Penicillin−Streptomycin含有)で培養し、PBS−0.05% EDTAで剥離したのち、PBSで洗浄後、DMEM−10%FBS(Penicillin−Streptomycin含有)にて至適濃度に調製した。エフェクター細胞の末梢血単核球(Peripheral blood mononuclear cell:PBMC)は、健常人末梢血から以下の方法で調製した。ベノジェクトII真空採血管(TERUMO社)を用いて健常人末梢血を採血し、同量の生理食塩水を加えて希釈した。希釈した末梢血をHistopaque−1077(sigma社製、カタログ番号:10771−500ML)に重層し、800g、20分間遠心分離し末梢血単核球を回収した後、PBSにて洗浄後、DMEM−10%FBS(Penicillin−Streptomycin含有)にて至適濃度に調製した。
ADCC活性の評価は、96穴U底プレート(住友ベークライト社製、カタログ番号:MS−309UR)に、エフェクター細胞25uLと標的細胞50uLとを、標的細胞1に対してエフェクター細胞20になるよう分注した後、DMEM−10%FBS(Penicillin−Streptomycin含有)で各濃度に希釈した抗体25uLを添加し、5%CO、37℃にて20時間インキュベートした。なお、細胞に添加した抗体は、後述のキメラ化した35−1抗体である。
抗体とのインキュベーション後、200gにて1分間遠心分離し、上清50uLを96穴プレートに回収した。そして、CytoTox96非放射性細胞毒性アッセイ(Promega社製、コード番号:G1780)にて、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を測定した。また、エフェクター細胞、標的細胞、抗体を添加した実験区におけるLDH値の他に、エフェクター細胞のLDH値、標的細胞のLDH値、さらに、標的細胞を、CytoTox96非放射性細胞毒性アッセイ付属のLysis solution(9% TritonX−100)にて可溶化した際の、最大細胞障害時のLDH値も同様に測定した。ADCC活性は次式により求めた。
式:細胞障害活性%=(実験区におけるLDH値−エフェクター細胞のLDH値−標的細胞のLDH値)/(最大細胞障害時のLDH値−標的細胞のLDH値)×100%
得られた結果を図10に示す。
図10に示した結果から明らかなように、35−1抗体は抗体濃度依存的に細胞障害活性を示した。従って、35−1抗体は、HB−EGFを発現している癌に対し、中和活性のみではなくADCCによる抗腫瘍効果を示すことが明らかになった。
(実施例8)
<35−1抗体及び292抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の単離、並びにCDRの同定>
各ハイブリドーマを培養し、一般的な方法によりtotal RNAを抽出した。次に、GeneRacerキット(Invitrogen社製、カタログ番号:L1502−01)を用いた5’−RACE法により、cDNAを取得した。このcDNAを鋳型とし、GeneRacer 5’プライマー(5’−CGACTGGAGCACGAGGACACTGA−3’、配列番号:20)、CH1(マウスIgG1定常領域1)、3’プライマー(5’−AATTTTCTTGTCCACCTGG−3’、配列番号:21)を用いて、プラチナ Taq DNA ポリメラーゼ ハイフィデリティ(Invitrogen社製、カタログ番号:11304−029)でPCR([94℃ 30秒、57℃ 30秒、72℃ 50秒]を35サイクル)を実施し、抗体重鎖可変領域の遺伝子(cDNA)を増幅した。一方、抗体軽鎖についても同様にGeneRacer 5’プライマーとCk(κ定常領域)3’プライマー(5’−CTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCT−3’、配列番号:22)を用いてPCRを実施して、遺伝子(cDNA)を増幅した。増幅した遺伝子断片をそれぞれpT7Blue T−ベクター(Novagen社製、カタログ番号:69820)にクローニングし、オートシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて配列を解析した。そして、得られた塩基配列に基づき、重鎖及び軽鎖の可変領域のアミノ酸配列、並びに各可変領域におけるCDRの配列を決定した。その結果は以下の通りである。
<35−1抗体の重鎖可変領域>
配列番号:9
EVQLQQSGPELVKPRASVKISCKASGYSFSGYYMHWVKQSPEKSLEWIGEINPSTGGITYNQKFKAKATLTVDRSSSTAYMQLKSLTSEDSAVYYCTRITWAFAYWGQGTLVTVSA
<35−1抗体の重鎖可変領域のCDR1>
配列番号:6
GYYMH
<35−1抗体の重鎖可変領域のCDR2>
配列番号:7
EINPSTGGITYNQKFKA
配列番号:8
<35−1抗体の重鎖可変領域のCDR3>
ITWAFAY
<35−1抗体の軽鎖可変領域>
配列番号:5
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVTYMYWYQQKPGSSPRLLIYDTSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQWSSYPPTFGGGTKLEIK
<35−1抗体の軽鎖可変領域のCDR1>
配列番号:2
SASSSVTYMY
<35−1抗体の軽鎖可変領域のCDR2>
配列番号:3
DTSNLAS
<35−1抗体の軽鎖可変領域のCDR3>
配列番号:4
QQWSSYPPT
<292抗体の重鎖可変領域>
配列番号:17
EVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYSFTGYYMHWVKQSPEKSLEWIGEINPSTGGTTYNQKFKAKATLTLDKSSSTAYMQLKSLTSEDSAVYYCAKSPYWDGAYWGQGTLVTVSA
<292抗体の重鎖可変領域のCDR1>
配列番号:14
GYYMH
<292抗体の重鎖可変領域のCDR2>
配列番号:15
EINPSTGGTTYNQKFKA
<292抗体の重鎖可変領域のCDR3>
配列番号:16
SPYWDGAY
<292抗体の軽鎖可変領域>
配列番号:13
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSISYMYWYQQRPGSSPRLLIYDTSNLASGVPVRFSGSGSGTSHSLTISRMEAEDAATYYCQQWSSYPSTFGGGTKLEIK
<292抗体の軽鎖可変領域のCDR1>
配列番号:10
SASSSISYMY
<292抗体の軽鎖可変領域のCDR2>
配列番号:11
DTSNLAS
<292抗体の軽鎖可変領域のCDR3>
配列番号:12
QQWSSYPST
(実施例9)
<35−1キメラ化抗体の作製>
決定した遺伝子配列をもとに以下のPCR増幅用プライマーを設計し、PCRによって抗体可変領域を増幅した。この際、分泌シグナル配列はロンザ社推奨の配列に変換し、また増幅断片の末端に制限酵素認識配列を付加した(重鎖可変領域にはHindIII認識配列及びXhoI認識配列を付加、軽鎖可変領域にはHindIII及びBsiWI認識配列を付加)。
得られたPCR産物を上記の制限酵素で切断し、常法によって、ヒトIgG1の定常領域を組み込んだロンザ社のヒトIgG1抗体産生用ベクターに挿入した。これらのベクターを使用して、ロンザ社推奨プロトコルに基づいてキメラ抗体産生細胞株を樹立し、それらの培養上清からProteinAを用いてキメラ化抗体(35−1キメラ化抗体)を精製した。
(実施例10)
<35−1ヒト型化抗体の作製>
CDR−grafting法により、ヒト型化抗体を作製した。具体的には重鎖可変領域のCDR配列を除いたフレームワーク領域と、軽鎖可変領域のCDR配列を除いたフレームワーク領域に対しそれぞれホモロジー検索を行い、35−1抗体と73.5%相同性を持つ重鎖可変領域ヒト抗体配列と86.3%相同性を持つ軽鎖可変領域ヒト抗体配列を選出した。このヒト抗体配列を鋳型配列とし、CDR−grafting法に従い35−1のCDR配列に変換した可変領域の配列を決定した。常法によって、合成した可変領域配列をヒトIgG1の定常領域を組み込んだロンザ社のヒトIgG1抗体産生用ベクターに挿入し、以下に示す配列からなる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する35−1ヒト型化抗体を作製した。
<35−1ヒト型化抗体重鎖可変領域>
配列番号:19
QVQLVQSGAEVVKPGSSVKVSCKASGYSFSGYYMHWVKQAPGQGLEWIGEINPSTGGITYNQKFKAKATLTVDRSTSTAYMELKSLTSEDTAVYYCTRITWAFAYWGQGTTVTVSS
<35−1ヒト型化抗体軽鎖可変領域>
配列番号:18
QIVLTQSPTTMAASPGEKITITCSASSSVTYMYWYQQRPGFSPKLLIYDTSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTIGTMEAEDVATYYCQQWSSYPPTFGGGTKLEIK
(実施例11)
<35−1キメラ化抗体又は35−1ヒト型化抗体の抗原に対する反応性>
35−1キメラ化抗体又は35−1ヒト型化抗体のHB−EGFに対する反応性を、フローサイトメトリーによって評価した。
フローサイトメトリーは、1次抗体として35−1キメラ化抗体又は35−1ヒト型化抗体を発現するヒトIgG1抗体産生用ベクターを導入した293T細胞の培養上清を用いて、前述と同様の方法で行った。培養上清中の抗体濃度は、サンドイッチELISA法にて算出した。サンドイッチELISA法は、ヤギ抗マウスIgG(MBL社製、コード番号:303G)を5ug/mL、50uL/ウェルで固相した96ウェルのELISAプレートに、293T細胞の培養上清を50uL/ウェルで1時間反応させ、該プレートを0.05% Tween20−PBSで洗浄後、検出抗体として1/10000倍希釈したHRP標識ヤギ抗マウスIgG(MBL社製、コード番号:330)を50uL/ウェル加えて室温で1時間静置した。該プレートを0.05% Tween20−PBSで洗浄後、発色液を50uL/ウェル添加し室温20分静置して発色させ、1Mリン酸を50uL/ウェル添加して発色を停止させたのち、450nmの吸光度をプレートリーダーにて測定した。培養上清中の抗体濃度は、濃度既知の抗体溶液を段階希釈して測定した値から標準曲線を作成し、培養上清の測定値から抗体濃度を算出した。得られた結果を図11に示す。図11に示す通り、35−1キメラ化抗体及び35−1ヒト型化抗体はHB−EGFに濃度依存的に結合し、各々抗原に対する反応性が維持されていることが明らかになった。
以上説明したように、本発明によれば、ヒトHB−EGFに結合することにより、該ヒトHB−EGFにおける切断を阻害し、かつ該ヒトHB−EGFとEGF受容体との結合を阻害する抗体を提供することが可能となる。また、本発明の抗体は、腫瘍の増殖を抑制する活性においても優れるため、癌を治療又は予防する点においても有用である。
配列番号:2
<223> 35−1抗体の軽鎖可変領域のCDR1
配列番号:3
<223> 35−1抗体の軽鎖可変領域のCDR2
配列番号:4
<223> 35−1抗体の軽鎖可変領域のCDR3
配列番号:5
<223> 35−1抗体の軽鎖可変領域
配列番号:6
<223> 35−1抗体の重鎖可変領域のCDR1
配列番号:7
<223> 35−1抗体の重鎖可変領域のCDR2
配列番号:8
<223> 35−1抗体の重鎖可変領域のCDR3
配列番号:9
<223> 35−1抗体の重鎖可変領域
配列番号:10
<223> 292抗体の軽鎖可変領域のCDR1
配列番号:11
<223> 292抗体の軽鎖可変領域のCDR2
配列番号:12
<223> 292抗体の軽鎖可変領域のCDR3
配列番号:13
<223> 292抗体の軽鎖可変領域
配列番号:14
<223> 292抗体の重鎖可変領域のCDR1
配列番号:15
<223> 292抗体の重鎖可変領域のCDR2
配列番号:16
<223> 292抗体の重鎖可変領域のCDR3
配列番号:17
<223> 292抗体の重鎖可変領域
配列番号:18
<223> 35−1ヒト型化抗体の軽鎖可変領域
配列番号:19
<223> 35−1ヒト型化抗体の重鎖可変領域
配列番号:20〜22
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列

Claims (6)

  1. ヒトHB−EGFに結合する抗体であって、下記(a)又は(b)に記載の特徴を有し、かつ中和活性及び切断阻害活性を有する抗体
    (a) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列をCDR1として含み、配列番号:3に記載のアミノ酸配列をCDR2として含み、かつ配列番号:4に記載のアミノ酸配列をCDRとして含む軽鎖可変領域と、配列番号:6に記載のアミノ酸配列をCDR1として含み、配列番号:7に記載のアミノ酸配列をCDR2として含み、かつ配列番号:8に記載のアミノ酸配列をCDRとして含む重鎖可変領域とを保持する
    (b) 配列番号:10に記載のアミノ酸配列をCDR1として含み、配列番号:11に記載のアミノ酸配列をCDR2として含み、かつ配列番号:12に記載のアミノ酸配列をCDRとして含む軽鎖可変領域と、配列番号:14に記載のアミノ酸配列をCDR1として含み、配列番号:15に記載のアミノ酸配列をCDR2として含み、かつ配列番号:16に記載のアミノ酸配列をCDRとして含む重鎖可変領域とを保持する。
  2. ヒトHB−EGFに結合する抗体であって、下記(a)又は(b)に記載の特徴を有する抗体
    (a) 配列番号:5に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:9に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する
    (b) 配列番号:13に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:17に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する。
  3. ヒトHB−EGFに結合する抗体であって、
    配列番号:18に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:19に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持する、抗体。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の抗体をコードするDNA。
  5. 請求項4に記載のDNAを含む、宿主細胞
  6. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の抗体を有効成分とする、癌を治療又は予防するための組成物。
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