以下に、本発明にかかる車両制御システムの一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
(第1実施形態)
図1から図8を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、作動流体の圧力が供給されることで係合可能であり、かつ係合することでエンジンと駆動輪との動力の伝達を可能とするクラッチと、伝達経路におけるクラッチよりも駆動輪側に連結された電動機とを備える車両制御システムに関する。図1は、本発明の実施形態にかかる車両制御システムの動作を示すフローチャート、図2は、本実施形態にかかる車両の要部を示す概略構成図である。
本実施形態の車両制御システム1−1は、エンジンと、モータジェネレータ(電動機、以下「MG」とも記載する。)と、エンジンとMGとの間のクラッチとを備え、MGのみを動力源とする電気自動車モード(EHVモード)からエンジンを動力源に含むHVモードへと遷移する場合に、MGをエンジンのスタータモータとし、クラッチを締結してエンジン始動を行うHVシステムにおいて、エンジン始動を事前に予測してクラッチに油圧を充填する。これにより、エンジン始動の応答性を高め、エンジン始動の応答遅れを抑制することが可能となる。しかしながら、クラッチへの油圧の充填が完了する前にエンジン始動をしなければならなくなる場合がある。油圧の充填が完了していない場合に、完了した場合と同様のクラッチの油圧制御がなされると、エンジン始動の応答遅れが生じる可能性がある。
本実施形態の車両制御システム1−1は、充填完了前にエンジンの始動要求がなされた場合のエンジン始動時には、充填完了後にエンジンの始動要求がなされた場合のクラッチの油圧制御である基本油圧制御に対し補正を加えることでエンジン始動の応答性の低下を抑制する。また、補正をする際には、基本油圧制御がなされる場合とは油圧の応答特性が変化するため、学習制御の実施が禁止される。これにより、学習制御の精度の低下が抑制される。
本実施形態は、以下のハード要件を備えることを前提としている。
(1)エンジンとMG(電動機)を切り離すクラッチが存在すること。
(2)MGの後、かつトランスミッションの前にトルクコンバータが存在すること。
また、本実施形態は、以下のソフト要件を備えることを前提としている。
(1)EV走行中か否かを判断できること。
(2)EV走行→EHV走行に切替わる明確な条件が存在し、ユーザー操作、車両状態により、リアルタイムに判断ができること。
(3)EV走行→EHV走行に切替わる条件から、切替えを事前に予測できること。
(4)充填制御の完了/未完了を判断できること。
(5)充填完了判定を油温などのパラメータで可変にすることができること。
(6)充填制御の完了/未完了によって、エンジン始動制御を切替えられること。
(7)エンジン始動制御を切替えた際、エンジン始動に関る学習を禁止できること。
図2において、符号1は、ハイブリッド車両を示す。ハイブリッド車両1は、原動機としてのエンジン(内燃機関)20と、MG30と、自動変速機40とを有する。エンジン20は、出力軸(クランクシャフト)21から機械的な動力を出力する公知の内燃機関である。エンジン20の出力軸21とMG30の回転軸31との間には、クラッチ22が設けられている。クラッチ22は、エンジン20と図示しない駆動輪との動力の伝達経路に配置され、伝達経路を接続または切断するものであり、例えば摩擦係合式のクラッチである。本実施形態では、クラッチ22が摩擦係合式のクラッチ装置である場合を例に説明する。クラッチ22は、出力軸21と連結されたエンジン側係合部材22aおよび回転軸31と連結されたMG側係合部材22bを有する。一対の係合部材であるエンジン側係合部材22aと、MG側係合部材22bとは、後述する油圧制御装置80からATF等の作動流体の圧力(油圧)が供給されることで係合可能であり、かつ、係合することでエンジン20と図示しない駆動輪との動力の伝達を可能とする。なお、作動流体によって互いに係合する係合部材の数は、2には限定されない。
クラッチ22には、クラッチ22の係合または解放状態を切り替えるアクチュエータ23が設けられている。本実施形態のアクチュエータ23は、油圧ピストン式のアクチュエータであり、油圧制御装置80から圧力室23bに供給される油圧によりエンジン側係合部材22aとMG側係合部材22bとを互いに近づける方向に駆動する。アクチュエータ23は、例えばエンジン側係合部材22aにおけるMG側係合部材22b側と反対側に設けられ、圧力室23bに油圧が供給されるとピストン23aがエンジン側係合部材22aをMG側係合部材22bに向けて押圧する。エンジン側係合部材22aとMG側係合部材22bとの間には、リターンスプリング22cが配置されている。アクチュエータ23は、油圧によりエンジン側係合部材22aを押圧し、リターンスプリング22cの付勢力に抗してクラッチ22を係合させることができる。
MG30は、回転軸31と連結され、回転軸31と一体に回転するロータ32と、ロータ32の径方向外側に配置され、車体側に固定されたステータ33とを有する。つまり、MG30は、エンジン20と駆動輪との動力の伝達経路におけるクラッチ22よりも駆動輪側に連結されており、伝達経路としての回転軸31を介してクラッチ22および駆動輪に動力を伝達する(クラッチ22および駆動輪と相互に動力を伝達する)ことが可能である。
MG30は、供給された電力を機械的な動力(モータ出力トルク)に変換して回転軸31から出力するモータとしての機能と、回転軸31に入力された機械的な動力を電力に変換して回収するジェネレータ(発電機)としての機能とを有する。MG30は、図示しないバッテリ(蓄電装置)と接続されており、バッテリとの間で電力を授受することができる。MG30がモータとして機能する場合、ステータ33は、電力の供給を受けて回転磁界を発生させ、その回転磁界に引き付けられてロータ32が回転して回転軸31からモータ出力トルクを出力する。一方、MG30がジェネレータとして機能する場合、回転軸31に入力されるトルクによりロータ32が回転し、その回転がステータ33で交流電力に変換される。MG30には、回転軸31の回転数を検出する図示しないレゾルバが設けられており、レゾルバの検出結果を示す信号がECU100に出力される。
自動変速機40は、トルクコンバータ50と、ギヤトレーン(変速機構)60と、電動式のオイルポンプ70と、油圧制御装置80とを有する。トルクコンバータ50は、入力軸51、出力軸54、流体伝達機構52およびロックアップクラッチ53を有する。入力軸51は、MG30の回転軸31と接続されており、回転軸31と一体に回転する。流体伝達機構52は、入力軸51と出力軸54との間で作動流体によりトルクを伝達できる流体継手である。ロックアップクラッチ53は、入力軸51と出力軸54とを接続または切断するクラッチである。ロックアップクラッチ53が係合すると、トルクコンバータ50は、流体伝達機構52を介さずに入力軸51から出力軸54に直接トルクを伝達することができる。
トルクコンバータ50の出力軸54は、ギヤトレーン60の入力軸61に接続されており、トルクコンバータ50を介して伝達されるエンジン20やMG30の出力トルクは、入力軸61に入力される。ギヤトレーン60は、トルクコンバータ50から入力される回転を変速して、出力軸62から図示しない駆動輪に出力する変速機構である。ギヤトレーン60は有段式であっても無段式であってもよい。
オイルポンプ70は、ギヤトレーン60等を動作させるための油圧を発生させる。油圧制御装置80は、オイルポンプ70が発生させる油圧をギヤトレーン60に配分してギヤトレーン60の変速比(変速段)を目標の変速比(変速段)とすることができる。また、油圧制御装置80は、クラッチ22のアクチュエータに油圧を供給することができる。油圧制御装置80は、クラッチ22に供給する油圧を制御するソレノイドバルブを有する。クラッチ22に油圧を供給する場合、油圧制御装置80は、ソレノイドバルブを作動させ、オイルポンプ70からの作動油(作動流体)の油圧をクラッチ22に供給する。
ハイブリッド車両1には、車両の各部を制御するECU(車両制御装置)100が設けられている。ECU100には、エンジン回転数、車速、バッテリの充電状態SOC、アクセル開度、MG30の回転数、作動油温等を示す信号が入力される。ECU100は、これらの信号に基づいて、エンジン20、MG30、油圧制御装置80をそれぞれ制御する。ECU100は、エンジン20の燃料噴射量や燃料噴射時期、点火時期等を制御することで、エンジン20から出力される動力(エンジン出力トルク)の大きさを調整する。また、ECU100は、MG30とバッテリとの間に設けられた図示しないインバータの動作を制御することで、MG30とバッテリとの間の電力の授受を制御する。また、ECU100は、MG30の出力トルクあるいはMG30の発電量を制御する。また、ECU100は、油圧制御装置80を制御して自動変速機40の変速制御やクラッチ22の係合状態(係合/非係合)の制御を行う。本実施形態の車両制御システム1−1は、クラッチ22、MG30、油圧制御装置80およびECU100を備える。
ハイブリッド車両1は、クラッチ22を解放し、かつエンジン20を停止してMG30の出力するモータ出力トルク(動力)で走行するEV(電気自動車)走行、および、クラッチ22を係合状態とし、かつエンジン20を運転させてエンジン20の出力するエンジン出力トルク(動力)を利用して走行するEHV(ハイブリッド電気自動車)走行が可能である。本実施形態のEV走行は、電動機走行に対応する。また、EHV走行において、少なくともエンジン20の出力するエンジン出力トルク(動力)を利用して走行する走行状態がエンジン走行に対応している。ECU100は、例えば、低車速かつ低負荷の走行状態においてハイブリッド車両1をEV走行モードで走行させ、中高車速や中高負荷の走行状態ではEHV走行モードでハイブリッド車両1を走行させる。なお、EHV走行モードが選択されている時に常にエンジンの出力する動力を利用して走行するハイブリッド車両1においては、EHV走行がエンジン走行に対応する。
EHV走行では、走行状態や、図示しないバッテリの充電状態SOC(State of Charge)等に基づいて、MG30をモータとして機能させるか、発電機として機能させるかが決定される。
EV走行中に、エンジン20の始動が必要となると、ECU100は、ハイブリッド車両1においてEV走行からエンジン走行に移行させる。EV走行からエンジン走行に移行する場合、ECU100は、クラッチ22を係合させてMG30の出力するトルクによりエンジン20を始動させる。より具体的には、ECU100は、油圧制御装置80によりクラッチ22のアクチュエータ23に油圧を供給させてクラッチ22を係合し、モータ出力トルクによりエンジン20を回転させてクランキングを行い、エンジン20を始動させる。エンジン20の始動時には、ロックアップクラッチ53は解放状態とされる。
このときに、ECU100は、駆動輪に伝達されるトルクの変動(トルクの低下)が生じないように、クランキング中にMG30の出力するトルクを増加させる。エンジン20の始動が完了すると、ECU100は、ハイブリッド車両1の走行モードをEHV走行モードに切替えて走行制御を行う。
本実施形態の車両制御システム1−1は、エンジン走行に移行するときのエンジン20の始動の応答性を高める必要がある場合、エンジン走行に移行するためのエンジン20の始動要求がなされる前に予めクラッチ22に油圧を供給してクラッチ22に作動流体を充填する事前充填を実施する。なお、「クラッチ22に作動流体を充填する」とは、アクチュエータ23の圧力室23bに作動流体を流入させることであり、圧力室23bに作動流体が予め存在することで、圧力室23bに作動流体がない場合よりもエンジン始動の応答性を高められればよい。つまり、事前充填が完了した状態とは、圧力室23bが作動流体によって完全に満たされた状態でなくともよい。
油圧制御装置80とクラッチ22とを接続する油路に油が充満していないときには、クラッチ22の応答性が低い。一方、油路やクラッチ22の圧力室23bに油が充満しているときには、クラッチ22の応答性は高く、エンジン始動の応答性を高めることが可能である。このため、エンジン20の始動の応答遅れが生じることを抑制するために、クラッチ22に常時油圧を供給しておくことが考えられる。しかしながら、常時クラッチ22に油を充填させると、引き摺りによる伝達効率の低下や、ソレノイドの電流消費量増大など、燃費低下につながることとなる。本実施形態では、ECU100は、クラッチ22に常時油圧を供給するのではなく、燃費の向上よりも高応答のエンジン始動が優先されると判断した場合に、クラッチ22の事前充填を実行する。
ECU100は、例えば、高応答のエンジン始動がなされないとエンジン始動の応答遅れによるドライバビリティの低下を招くと予測される運転状態である場合に、高応答のエンジン始動を燃費の向上よりも優先させ、EV走行中であってもクラッチ22に事前に油圧を供給しておく。一例としては、エンジン20の始動が完了してハイブリッド車両1に要求される駆動力が実現されるタイミングに遅れが生じると予測される場合、あるいは、ハイブリッド車両1に要求される駆動力と実際の駆動力との乖離が大きくなると予測される場合の少なくともいずれか一方において、事前充填が実行される。事前充填により、エンジン始動の応答遅れが生じることを抑制可能となり、かつ、高応答のエンジン始動が必要でないときには、事前充填がなされないため、伝達効率の低下や燃費の低下が抑制される。
ECU100は、例えば、以下に図3から図6を参照して説明するように高応答性始動の優先度を判定する。
図3は、油圧制御装置80からクラッチ22に送られる作動油の油温と、エンジン始動の応答性との関係を示す図である。油温が高い領域T1と油温が低い領域T3では、エンジン始動の応答性が悪い(低い)。油温が低い場合、作動油の粘性が大きく、油圧制御の応答性が低くなる。一方、油温が高い場合、アクチュエータ23等における作動油の漏れが生じやすいため、油圧制御の応答性が低くなる。このため、油温が高い領域T1や油温が低い領域T3では、適温の領域T2よりも高応答性始動が必要となりそうである(高応答性始動の優先度が高い)とされる。なお、高応答性始動の優先度は、油温に限らず作動油の粘性を検出または推定可能な他のパラメータや検出または推定された粘性に基づいて推定されてもよい。
図4は、充電状態SOCと走行モードとの関係を示す図である。充電状態SOCが高い領域S1は、EV走行モードが選択可能な領域である。充電状態SOCが低い領域S3は、EHV走行モードが選択される領域である。充電状態SOCが低い領域S3では、ECU100は、EHV走行を行って、エンジン20の出力トルクによりMG30に発電を行わせてバッテリを充電する。また、領域S1と領域S3の間の充電状態SOCの領域S2は、ヒス領域である。EV走行中に充電状態SOCが低下してヒス領域S2に入った場合、ヒス領域S2では、EV走行を継続して行うことができる。充電状態SOCが低い領域S3まで低下すると、EV走行が終了され、EHV走行モードに移行する。一方、EHV走行モードでバッテリを充電中に充電状態SOCが上昇してヒス領域S2に入ると、ヒス領域S2ではMG30による発電によるバッテリの充電が継続して行われる。さらに充電状態SOCが上昇して充電状態SOCが高い領域S1に入ると、バッテリの充電が終了される。
ECU100は、EV走行中に充電状態SOCが低下している場合に、充電状態SOCが十分に高い場合よりも高応答性始動の優先度が高いと判定することができる。例えば、充電状態SOCがヒス領域S2にある場合に、充電状態SOCが高い領域S1にある場合よりも高応答性始動の優先度が高いと判定することができる。また、ECU100は、充電状態SOCと他のパラメータの組み合わせに基づいて高応答性始動の優先度を判定する場合に、EV走行モードからEHV走行モードへの切替えタイミングを予測し、この切替えタイミングに基づいて事前充填の開始時期を決定するようにしてもよい。例えば、予測される走行モードの切替えタイミングまでの時間が閾値以下でないかぎり、事前充填が許可されないようにしてもよい。
図5は、走行パワーと高応答性始動の優先度との関係を示す図である。ハイブリッド車両1では、車速および走行パワーに基づいて、EV走行モードあるいはEHV走行モードのいずれの走行モードを選択するかが決定される。図5において、横軸は車速、縦軸は走行パワーをそれぞれ示す。走行パワーは、例えば、アクセル開度および車速に基づいて決定されるものであり、パワートレーンが出力すべきパワーの目標値である。走行パワーが小さく、かつ低車速の領域(符号P1参照)は、EV走行モードが選択されるEVモード領域である。EVモード領域P1よりも高車速・高走行パワー側には、ヒス領域P2を挟んでEHVモード領域P3が設定されている。EHVモード領域P3では、EHV走行モードが選択される。EV走行中にEVモード領域P1からヒス領域P2に入った場合には、EV走行モードが継続して選択されることができ、EHV走行中にEHVモード領域P3からヒス領域P2に入った場合には、EHV走行モードが継続して選択される。
EVモード領域P1およびヒス領域P2における高走行パワー側には、高応答性始動の優先度が高いと判定される領域(以下、「高パワーEV走行領域」と記載する。)P4が設けられている。高パワーEV走行領域P4にてEV走行中に、EHV走行への切替え判定がなされた場合に、エンジン始動の応答性が低いままであると、エンジン始動の応答遅れにより、要求される走行パワーに対して、実際の走行パワーが不足したり、要求される走行パワーを実現できるタイミングに遅れが生じたりする虞がある。すなわち、要求走行パワーに対する実走行パワーの応答性が低下し、ドライバビリティの低下を招く可能性がある。ECU100は、高パワーEV走行領域P4にてEV走行している場合、高応答性始動の優先度が高いと判定する。なお、走行パワーに代えて、要求トルクや要求駆動力等の加速度に関する運転者の要求値に基づいて高応答性始動の優先度が判定されてもよい。
図6は、アクセル開度変化量と高応答性始動の優先度との関係を示す図である。アクセル開度変化量は例えば単位時間あたりのアクセル開度(アクセル操作量)の変化量とすることができる。アクセル開度変化量が大きい場合、運転者は素早い加速を望んでいると考えられる。この場合に、エンジン始動の応答性が低いと、走行パワーの応答性が低下し、ドライバビリティの低下を招く可能性がある。図6に示すように、低車速かつアクセル開度変化量が小さい領域は、EV走行モードが選択されるEVモード領域A1とされている。また、EVモード領域A1よりも高車速およびアクセル開度変化量が大きい領域は、EHV走行モードが選択されるEHVモード領域A2とされている。EVモード領域A1において、アクセル開度変化量が大きい領域は、高応答性始動の優先度が高い領域(以下、「高変化量EV走行領域」と記載する。)A3として設定されている。
ECU100は、これらの判定要素(油温、充電状態SOC、走行パワー、アクセル開度変化量および車速)に基づいて、高応答性始動の優先度を判定する。なお、優先度の判定では、一つの判定要素のみに基づいて優先度が判定されても、複数の判定要素の組み合わせに基づいて優先度が判定されてもよい。例えば、油温と充電状態SOCの組み合わせに基づいて優先度が判定されてもよい。優先度の判定では、例えば、判定要素の状態に基づき、エンジン20の始動が完了して要求される駆動力が実現されると予測されるタイミングが遅いほど高い優先度が付けられるようにすることが好ましい。また、判定要素の状態に基づき、要求される駆動力と実際の駆動力との乖離が大きくなると予測されるほど高い優先度が付けられるようにすることが好ましい。
ECU100は、各判定要素に基づいて判定された高応答性始動の優先度が、高応答性始動の実行基準を満たしているか否かを判定する。例えば、高パワーEV走行領域P4にて走行している場合、あるいは高変化量EV走行領域A3にて走行している場合、他の判定要素にかかわらず高応答性始動の実行基準を満たす優先度が付けられるようにすることができる。また、油温が低温であることが高応答性始動の実行基準における必須の要件とされてもよい。それぞれの判定要素の状態と、その状態における高応答性始動の優先度との対応関係は、例えば、実験等の結果として得られるエンジン始動の応答性や走行パワー(駆動力)の応答性に基づいて決定される。
高応答エンジン始動判定の例を挙げる。例えば、AT油温(作動油温)が20℃でかつ充電状態SOCが低下しており、アクセル開度が一定(アクセル開度変化量がゼロ)である場合、高応答のエンジン始動が必要と判断されてもよい。これは、油温が低いために応答性が低く、エンジン始動中にアクセル踏み増しがなされた場合などに、エンジン始動の応答性が確保できないことが考えられるためである。一方、AT油温が80℃で充電状態SOCが低下しており、アクセル開度が一定である場合、高応答のエンジン始動は不必要と判断されてもよい。油温が高く応答性が確保できるためである。
なお、高応答エンジン始動判定の内容は、これには限定されない。例えば、充電状態SOCが低下している場合に、油温が低い領域T3にあるだけでは、高応答性始動の優先度は高くないと判定するようにしてもよい。充電状態SOCの低下に伴う走行モードの切替えでは、多少のエンジン始動の応答性の低下は許容される場合もあるためである。充電状態SOCの低下および低油温状態に加えて、走行パワーが高い、あるいはアクセル開度変化量が大きい場合には、高応答性始動の優先度が高いと判定することができる。運転者が高パワーや速やかな加速を望んでいる場合には、エンジン始動の応答遅れはドライバビリティの低下につながるため許容されにくいからである。
ここで、図1、図7および図8を参照して本実施形態の動作について説明する。図7は、本実施形態のエンジン20の始動制御がなされる場合のタイムチャートの一例を示す図、図8は、事前充填の完了の判定方法について説明するための図である。図7において、符号111はMG30の回転数(以下、「MG回転数」と記載する。)、符号112はエンジン回転数、符号113は、MG30の出力トルク(以下、「MGトルク」と記載する。)、符号114および115はエンジン走行へ移行するためのエンジン20の始動時にクラッチ22に供給する油圧の指令値であるクラッチ指令圧を示す。符号114は、事前充填が完了してからエンジン始動判定がなされてエンジン始動制御がなされる場合のクラッチ指令圧(以下、単に「充填完了時の指令圧」と記載する。)を示し、符号115は、事前充填が完了する前にエンジン始動判定がなされてエンジン始動制御がなされる場合のクラッチ指令圧(以下、単に「充填未完了時の指令圧」と記載する。)を示す。図1に示す制御フローは、例えば、EV走行時に所定の間隔で繰り返し実行される。
まず、ステップS10では、ECU100によりクラッチ22の事前充填なしの状態とされる。ECU100は、油圧制御装置80に対してクラッチ22への油圧の供給を行わない状態とする信号を出力する。これにより、油圧制御装置80からクラッチ22に油圧が供給されない状態となり、アクチュエータ23の圧力室23b内の作動油は排出されてクラッチ22のアクチュエータ23に作動油が充填されていない状態となる。
次に、ステップS20では、ECU100により、高応答エンジン始動判定がなされる。ECU100は、図3から図6を参照して説明したように、各判定要素の状態に基づいて、高応答性始動の優先度が、燃費の向上よりも優先されるか否かを判定する。その判定の結果、高応答性始動を実行すると判定された場合(ステップS20−Y)にはステップS30に進み、そうでない場合(ステップS20−N)にはステップS40に進む。
ステップS30では、ECU100により、クラッチ22の事前充填がなされる。ECU100は、油圧制御装置80に対してクラッチ22への油圧の供給を指示する。このときの油圧の指令値(以下、「事前充填圧力」と記載する。)は、EV走行からエンジン走行に移行するためのエンジン20の始動の開始時にクラッチ22に供給される圧力(以下、「始動開始時圧力」と記載する。)よりも低い。この事前充填圧力により、クラッチ22のアクチュエータ23の圧力室23bに作動油が充填される。図7において、符号114a、115aが事前充填圧力を示している。
事前充填圧力は、例えば、エンジン20のクランキングが開始する圧力よりも低い圧力であることが好ましい。クランキングが開始する圧力よりも低い圧力では、例えば、エンジン側係合部材22aとMG側係合部材22bとが係合し、かつエンジン20のクランキングが開始しない状態や、エンジン側係合部材22aとMG側係合部材22bとが係合しない状態となる。よって、引き摺りによる動力の伝達効率の低下を抑制しつつクラッチ22の圧力室23bに作動油を充填することが可能となる。特に、事前充填圧力をエンジン側係合部材22aとMG側係合部材22bとが係合しない圧力とすれば、動力の伝達効率の低下が生じにくい。
また、事前充填圧力が、クラッチ22のエンジン側係合部材22aとMG側係合部材22bとが互いに接触する圧力とされた場合には、エンジン20の始動要求がなされるときに既にクラッチ22が係合した状態としておくことができるため、エンジン始動の応答遅れが効果的に抑制される。なお、事前充填圧力は、エンジン20の多少の回転を許容するものであってもよい。すなわち、事前充填圧力がクラッチ22に供給されたときに、クランキングが開始しない範囲でエンジン20が多少回転することが許容されてもよい。
事前充填がなされることで、油圧制御装置80とクラッチ22のアクチュエータ23とを接続する油路およびアクチュエータ23の圧力室23bに油圧が充填された状態となる。よって、エンジン始動指令がなされた場合には即座にクラッチ22の係合圧を高めてエンジン20のクランキングを開始させることができ、エンジン始動の応答性を向上させることができる。ステップS30で、ECU100によりクラッチ22の事前充填のための油圧制御指令が出力されると、ステップS40に進む。
ステップS40では、ECU100により、エンジン始動制御開始の判定がなされる。ECU100は、EV走行モードが選択された状態から、EHV走行モードが選択された状態に移行すると、エンジン始動制御開始と判定する。例えば、アクセルが踏み増しされた場合など、走行パワーが増加してEHVモード領域P3(図5参照)に入った場合には、ECU100によりエンジン始動制御開始の判定がなされる。ECU100によりエンジン始動制御開始が判定されると、ステップS50に進む。
ステップS50では、ECU100により、クラッチ22の充填が完了しているか否かが判定される。ECU100は、図8を参照して説明するように、事前充填が開始されてからの経過時間に基づいて、ステップS50の判定を行う。図8において、横軸は事前充填が開始されてからの経過時間、縦軸はクラッチ指令圧の積分値である。クラッチ指令圧は、ステップS30において油圧制御装置80に対して出力された油圧の指令値である。油圧の指令がなされてから、クラッチ22に供給される油圧が増加し、圧力室23bの実際の油圧が指令値(事前充填圧力)に達するまでには時間を要する。事前充填による引き摺りが大きくならないように低い油圧で充填制御をせざるを得ないため充填完了までには時間がかかってしまう。
図8では、油圧制御装置80に対して事前充填圧力を指令値として出力してからの経過時間がTfとなったときに、クラッチ指令圧の時間積分値が所定値Pfとなり、事前充填が完了したと判定される。つまり、時間Tfが、事前充填が完了したか否かを判定するための事前充填の開始からの経過時間の閾値である。なお、経過時間の閾値Tfは、作動油の油温などの油圧の応答性が変化する要因に応じて可変とされることが望ましい。この経過時間の閾値Tfは、例えば、実験結果等に基づいて予め定められており、油温と事前充填圧力と経過時間の閾値Tfとの関係を示すマップとしてECU100に記憶しておくことができる。
ECU100は、事前充填の開始からの経過時間が、経過時間の閾値Tf以上である場合、事前充填が完了したと判定する。図7を参照して説明すると、例えば経過時間の閾値Tfが符号Tf1で示す値であって、充填完了と判定される時刻t1が、エンジン20の始動判定がなされる時刻t2よりも前である場合には、ステップS50で肯定判定がなされる。この場合、符号114で示すクラッチ指令圧によるエンジン始動時のクラッチ22の油圧制御(基本油圧制御)が実行される。一方、経過時間の閾値Tfが符号Tf2で示す値であり、エンジン20の始動判定がなされる時刻t2において未だ充填完了と判定されていない場合、ステップS50で否定判定がなされる。この場合、符号115で示すクラッチ指令圧によるエンジン始動時のクラッチ22の油圧制御(基本油圧制御に対し補正を加えた油圧制御)がなされる。
このように事前充填の完了がエンジン始動判定に間に合わなくなる理由としては、上記のように油圧の充填に時間を要することと、エンジン始動の事前予測(ドライバー要求予測)が困難なこと等による。EV走行からエンジン走行への移行タイミングは、運転者の操作により早まることがあるが、これを予測することは困難であり、エンジン始動の判断と事前充填とが重なってしまうことがある。一方で、いつエンジン始動判定がなされてもよいように事前充填を常時行うと、引き摺りの増加による伝達効率の低下等を招くこととなる。
ステップS50の判定の結果、クラッチ22の事前充填が完了したと判定された場合(ステップS50−Y)にはステップS60に進み、そうでない場合(ステップS50−N)にはステップS70に進む。
ステップS60では、ECU100により、高応答エンジン始動時のクラッチ制御が開始される。ECU100は、事前充填が完了した状態でエンジン始動判定がなされた場合の高応答のエンジン始動制御について、予め定められたクラッチ指令圧114を記憶しており、このクラッチ指令圧114に基づいてクラッチ22に対する供給油圧の制御を行う。図7に符号114bで示すように、ECU100は、エンジン20を始動する場合、エンジン始動の開始時にはクラッチ指令圧114を大きな値に増加させる。この始動開始時にクラッチ22に供給される油圧の指令値114bが、始動開始時圧力である。始動開始時圧力114bがクラッチ22に供給されてクラッチ22の係合圧が高まることにより、エンジン20が回転を開始してエンジン回転数112が上昇を始める。
エンジン20が回転を開始すると、ECU100は、符号114cに示すようにクラッチ指令圧114を低下させ、かつ、MGトルク113を増加させてクランキングを開始する(時刻t3)。このときのクラッチ指令圧114cは、事前充填圧力114aよりも高い圧力である。ECU100は、クランキングにおいてMGトルク113を増加させてエンジン回転数112を上昇させていく。クランキングの後半におけるクラッチ指令圧114dは、クランキング開始時のクラッチ指令圧114cよりも高い圧力とされる。
クランキングによりエンジン回転数112が十分に上昇すると、ECU100は、エンジン20に対する燃料の供給および点火を行うファイアリングを開始する(時刻t4)。ファイアリング中のMGトルク113は、ファイアリング開始直前のMGトルク113bよりも小さく、かつクランキング開始前のMGトルク113aよりも大きなトルクである。また、ファイアリング中のクラッチ指令圧114eは、ファイアリング開始直前のクラッチ指令圧114dよりも小さく、かつクランキング開始時のクラッチ指令圧114cよりも大きな圧力である。ECU100は、エンジン始動が完了すると、時刻t5においてファイアリングを終了し、MGトルク113を低下させ、クラッチ指令圧114を増加させる。エンジン始動の完了後におけるクラッチ指令圧114fは、例えば、始動開始時圧力114bよりもわずかに大きな圧力である。
事前充填が完了した状態から高応答のエンジン始動を行う場合のクラッチ22の油圧制御である基本油圧制御では、ECU100は、学習制御を実施する。この学習制御では、ECU100は、油圧制御装置80に出力したクラッチ指令圧と、エンジン回転数112の推移との関係に基づいて、クラッチ指令圧の学習を行う。例えば、検出されたエンジン回転数112の推移に基づいて、エンジン回転数112の上昇の開始の遅れや、エンジン回転数112の上昇速度の不足が検出された場合には、クラッチ指令圧を学習前の値よりも大きな値に更新する。このような学習制御により、クランキング時間を一定としてドライバビリティの向上を図ることができる。ステップS60において高応答性始動のクラッチ制御が実行されると、本制御フローは終了する。
ステップS70では、ECU100により、高応答エンジン始動時のクラッチ制御およびクラッチ指令圧の補正制御が開始される。事前充填が完了していない状態でエンジン始動判定がなされているため、充填完了時と同じクラッチ22の油圧制御では、エンジン始動の応答性にばらつきが生じてしまう。このため、ECU100は、事前充填が完了していない分のクラッチ指令圧の補正を行う。具体的には、ECU100は、図7に示すように、充填完了時の指令圧114に対して充填未完了時の指令圧115を大きな圧力とするように、クラッチ指令圧の補正を行う。つまり、エンジン走行に移行するためのエンジン20の始動において、事前充填が完了する前にエンジンの始動要求がなされた場合のクラッチ22に供給される作動流体の圧力(充填未完了時の指令圧115)の少なくともその一部(115b,115c,115d)は、事前充填が完了してからエンジン20の始動要求がなされた場合のクラッチ22に供給する作動流体の圧力(充填完了時の指令圧114)における対応する圧力(114b,114c,114d)よりも高い。
これにより、エンジン始動の開始時に速やかに圧力室23bへの作動油の充填を完了させ、エンジン20のクランキングを開始することができる。充填未完了時の指令圧115は、始動開始時圧力115bおよびクランキング中(115c,115d)のそれぞれにおいて、充填完了時の指令圧114よりも大きな圧力とされている。また、充填未完了時の指令圧115において、ファイアリング中の圧力115eおよびエンジン始動後の圧力115fは、それぞれ充填完了時の指令圧114におけるファイアリング中の圧力114eおよびエンジン始動の完了後の圧力114fと等しい。
充填完了時の指令圧114に対する充填未完了時の指令圧115の増加量(補正量)は、充填時間(充填未完了時における充填開始からエンジン始動判定までの経過時間)に基づいて決定される。ここで、充填時間は、事前充填の進捗の度合いを示すものである。充填時間が短い場合には、充填時間が長い場合よりも、補正量は大きな値とされる。つまり、事前充填の進捗の度合いが低い(圧力室23bにおける作動油の充填量が少ない)場合には、事前充填の進捗の度合いが高い(圧力室23bにおける作動油の充填量が多い)場合よりも補正量が大きな値とされる。つまり、ECU100は、事前充填の進捗の度合いが低い場合には、進捗の度合いが高い場合よりも充填未完了時の指令圧115を高くする。
これにより、エンジン始動を開始してから圧力室23bへの油圧の充填が完了するまでに要する時間が、エンジン始動判定がなされたときの事前充填の進捗の度合いによって異なってしまうことが抑制される。よって、クラッチ指令圧の補正がなされることにより、事前充填が完了していたか否かによってエンジン20が回転を開始するタイミングにずれが生じてしまうことや、エンジン始動判定がなされたときの事前充填の進捗の度合いによってエンジン20が回転を開始するタイミングにずれが生じてしまうことが抑制される。
さらに、クランキング中において、充填完了時の指令圧114(114c,114d)よりも充填未完了時の指令圧115(115c,115d)が大きな圧力とされることで、充填完了時に対する充填未完了時のエンジン回転数112の上昇遅れが抑制される。充填未完了時にエンジン回転数112の上昇開始に遅れがあったとしても、その後のクランキングにおいて速やかにエンジン回転数112を上昇させて、充填完了時と充填未完了時とでクランキング時間が異なることを抑制することが可能となる。また、エンジン始動開始時における事前充填の進捗の度合いが低い場合にはその分だけ充填未完了時の指令圧115が大きな圧力に補正されるため、事前充填の進捗の度合いが低かった場合であっても充填完了時と変わらないクランキング時間とすることができる。
なお、クラッチ指令圧の補正量は、例えば、予め実験結果に基づいて決定されたものとすることができる。この場合、ECU100は、事前充填の進捗の度合いとクラッチ指令圧の補正量との関係を例えばマップとして予め記憶しており、このマップを参照して充填未完了時の指令圧115を決定する。クラッチ指令圧の補正量は、更に、油圧の応答性に影響を与えるパラメータ、例えば作動流体の油温に基づいて決定されてもよい。ステップS70で高応答エンジン始動時のクラッチ制御および補正制御が開始されると、ステップS80に進む。
ステップS80では、ECU100により、エンジン始動時に行う学習制御が禁止される。ECU100は、クラッチ指令圧の学習制御を禁止し、エンジン始動時におけるクラッチ指令圧(充填完了時の指令圧114)が更新されないようにする。このように、充填未完了時のエンジン始動制御に基づく学習が禁止されることで、充填完了時とは油圧の応答特性が異なるときの挙動がクラッチ指令圧に反映されてしまうことが防がれる。よって、学習制御の精度の低下が抑制される。その結果、エンジン始動時のクランキング時間が一定に保たれ、ドライバビリティが安定する。ステップS80が実行されると、本制御フローは終了する。
このように、本実施形態の高応答エンジン始動制御では、エンジン20のクランキング時間を一定に保ち、エンジン始動の応答遅れを抑制することが可能となる。よって、本実施形態の車両制御システム1−1によれば、エンジン始動の応答遅れを抑制でき、ドライバビリティの向上が可能となる。また、高応答のエンジン始動の優先度が高くない場合には、クラッチ22への油圧の事前充填が行われないことで、燃費の低下が抑制される。
本実施形態では、事前充填の進捗の度合いや完了/未完了が、充填時間によって判定されたが、これには限定されない。圧力室23bにおける作動流体の充填の進捗の度合いに関連する他の物理量に基づいて、事前充填の進捗の度合いや、事前充填の完了が判定されてもよい。
本実施形態では、エンジン始動開始時およびクランキング中のそれぞれにおいて、充填未完了時の指令圧115が充填完了時の指令圧114に対して補正されたが、これには限定されない。例えば、エンジン始動開始時あるいはクランキング中の一方のみにおいて充填未完了時の指令圧115が補正されてもよく、また、エンジン始動開始から完了までの他の時期の充填未完了時の指令圧115が補正されてもよい。
なお、本実施形態では、クラッチ22への作動流体の供給状態の制御として、油圧制御が行われたが、これには限定されない。例えば、クラッチ22に供給される作動流体の流量制御が行われてもよい。この場合、充填未完了時には、充填完了時よりも、エンジン始動制御においてクラッチ22に供給される流量を増加させる補正がなされればよい。