JP5531245B2 - ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法 - Google Patents

ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法 Download PDF

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本発明は、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法に関する。
環状オレフィン類をモノマーとして用いて製造される環状オレフィン系重合体は、主鎖骨格に脂環構造を有することから非晶性となりやすく、優れた透明性、耐熱性を示し、光弾性係数が小さく、かつ、低吸水性、耐酸性、耐アルカリ性、高い電気絶縁性等の性状を有する。そのため、環状オレフィン系重合体を、ディスプレイ用途(位相差フィルム、拡散フィルム、液晶基板、タッチパネル用フィルム、導光板、偏光板保護フィルム等)、光学レンズ用途、光ディスク用途(CD、MD、CD−R、DVD等)、光ファイバー用途、光学フィルム/シート用途、光半導体封止用途等に利用することが検討されてきた。このような環状オレフィン系重合体の中でもノルボルネン誘導体を用いて得られる環状オレフィン系重合体は、ポリカーボネートとともに液晶ディスプレイ(LCD)等の位相差フィルム等に好適に利用されている。このような状況の下、様々な種類のノルボルネン誘導体の利用が検討され、近年では、その一つとしてベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体が注目されており、その様々な製造方法が研究されてきた。
例えば、2007年に発行されたORGANIC LETTERS(Vol.9,No.9)の1761〜1764頁に記載の“Palladium-Catalyzed Annulation of Aryl Heterocycles with Strained Alkenes”(非特許文献1)においては、酢酸パラジウム[Pd(OAc)]とトリフェニルホスフィン(PPh)と炭酸セシウム(CsCO)とトルエンとの存在下において、2−ブロモビフェニルとノルボルナジエンとを反応させることにより、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を得る方法が開示されている。しかしながら、このような製造方法においては、前記2−ブロモビフェニルの臭素(Br)原子の位置に他のハロゲン原子(特に塩素原子)が導入されている化合物を原料化合物の一つとして用いた場合には、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を製造することができなかった。
なお、パラジウム触媒を用いるノルボルネン誘導体の製造方法としては、特開2009−51819号公報(特許文献1)に記載のような「ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の溶媒を用い、塩化パラジウムや酢酸パラジウム等のパラジウム塩と(t−Bu)P等のリン系化合物との存在下において、ノルボルナジエン系化合物と、式:Br−W−Y(式中、Wはフェニル基等を示し、Yは水素やt−Bu等を示す。)で表されるブロム化合物とを反応させてノルボルネン誘導体を製造する方法」も知られているが、このような特許文献1に記載のような製造方法を利用したとしても、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体は製造することができなかった。
特開2009−51819号公報
David G. Hulcoop et al.,「Palladium-Catalyzed Annulation of Aryl Heterocycles with Strained Alkenes」,ORGANIC LETTERS, 2007年,Vol.9,No.9,p.1761〜1764
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、原料化合物として臭素原子を含有するハロゲン化合物を用いた場合ばかりか塩素原子を含有するハロゲン化合物を用いた場合においても、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を十分に高い収率で製造することが可能なベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(2)で表されるノルボルナジエン誘導体と、下記一般式(3)で表されるハロゲン化合物とを反応せしめる際に、下記一般式(1)で表されるホスフィン系配位子が2価のパラジウムに配位したパラジウム触媒と、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒とを組み合わせて用いることにより、驚くべきことに、下記一般式(3)中のハロゲン原子が塩素原子である場合のように比較的反応性の低いハロゲン化合物を原料化合物の一つとして用いた場合においても、下記一般式(4)で表されるようなベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を十分に高い収率で製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法は、下記一般式(1):
(式(1)中、Rは、それぞれ独立に環状の脂肪族炭化水素基を示す。)
で表されるホスフィン系配位子が2価のパラジウムに配位したパラジウム触媒と、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒との存在下において、
下記一般式(2):
[式(2)中、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の脂肪族炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。]
で表されるノルボルナジエン誘導体と、下記一般式(3):
[式(3)中、Zは、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、Xはヨウ素原子、臭素原子及び塩素原子からなる群から選択されるいずれか1種のハロゲン原子を示し、Rは、水素原子、ニトロ基、炭素原子数1〜10の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、及び、フッ素原子からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
で表されるハロゲン化合物とを反応せしめ、下記一般式(4):
[式(4)中、R、R、R10、R11、R12、l、m、nは、それぞれ上記一般式(2)中のR、R、R、R、R、l、m、nと同義であり、R13は上記一般式(3)中のRと同義であり、Yは下記一般式(5)〜(13):
(式(5)〜(13)中、*はR13と結合する結合手を示す。)
で表される芳香族基のうちのいずれか1種を示す。]
で表されるベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を得ることを特徴とする方法である。
上記本発明のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記パラジウム触媒が、下記一般式(14)
[PdQ] (14)
(式(14)中、Pdはパラジウムを示し、Qはハロゲン原子を示し、Lは上記一般式(1)で表されるホスフィン系配位子を示す。)
で表される触媒であることが好ましい。
また、上記本発明のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記一般式(1)中のRは、炭素原子数5〜10の環状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数5〜7の環状の脂肪族飽和炭化水素基であることがより好ましい。
また、上記本発明のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記一般式(3)中のXが塩素原子であることが好ましい。
さらに、上記本発明のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記一般式(2)及び(4)中のmが0であり且つnが0であることが好ましい。
また、上記本発明のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記一般式(3)中のZがフェニレン基であり且つ前記一般式(4)中のYが前記一般式(5)で表される芳香族基であることが好ましい。
本発明によれば、原料化合物として臭素原子を含有するハロゲン化合物を用いた場合ばかりか塩素原子を含有するハロゲン化合物を用いた場合においても、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を十分に高い収率で製造することが可能なベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法を提供することが可能となる。
実施例1で得られた化合物(6−tert−ブチル−1,4,4a,8b−テトラヒドロ−1,4−メタノビフェニレン)のH−NMRスペクトルを示すグラフである。 図1に示すH−NMRスペクトルのうち、化合物のオレフィン部分と芳香族部分のH−NMRスペクトルを拡大して示すグラフである。 図1に示すH−NMRスペクトルのうち、化合物の脂肪族部分のH−NMRスペクトルを拡大して示すグラフである。 実施例1で得られた化合物(6−tert−ブチル−1,4,4a,8b−テトラヒドロ−1,4−メタノビフェニレン)の13C−NMRスペクトルを示すグラフである。 図4に示す13C−NMRスペクトルのうち、化合物のオレフィン部分と芳香族部分の13C−NMRスペクトルを拡大して示すグラフである。 図4に示す13C−NMRスペクトルのうち、化合物の脂肪族部分の13C−NMRスペクトルを拡大して示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のノルボルネン誘導体の製造方法は、前記一般式(1)で表されるホスフィン系配位子が2価のパラジウムに配位したパラジウム触媒と、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒との存在下において、前記一般式(2)で表されるノルボルナジエン誘導体と、前記一般式(3)で表されるハロゲン化合物とを反応せしめ、前記一般式(4)で表されるベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を得ることを特徴とする方法である。
先ず、本発明において用いられる各化合物について説明する。
本発明において用いられるパラジウム触媒は、下記一般式(1):
[式(1)中、Rは、それぞれ独立に環状の脂肪族炭化水素基を示す。]
で表されるホスフィン系配位子が2価のパラジウムに配位した錯体からなる触媒である。このような触媒中のパラジウムの価数は2価である。かかるパラジウムの価数が2価以外(例えば0価)の場合には、前記一般式(3)で表されるハロゲン化合物中のハロゲン原子(X)が塩素原子である場合のように、ハロゲン化合物の反応性が比較的低い場合に、十分に反応を進行させることが困難となり、ハロゲン原子の種類によってはベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を十分に収率よく製造することが困難となる。
また、このような一般式(1)中のRは、それぞれ独立に環状の脂肪族炭化水素基である。このような環状の脂肪族炭化水素基としては、脂肪族系で且つ環状のものであれば飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。また、このような環状の脂肪族炭化水素基としては単環構造のものであっても縮合環構造のものであってもよく、更には架橋構造を有するものであってもよい。また、触媒の製造容易性等の観点から、各Rは同じ基であることがより好ましい。
さらに、このような環状の脂肪族炭化水素基としては、特に制限されず、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボニル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、デカヒドロナフチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、1,5−シクロオクタジエニル基、テトラヒドロインデニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
また、このような環状の脂肪族炭化水素基は特に制限されないが、炭素原子数が5〜10(より好ましくは5〜7)であることが好ましい。このような炭素原子数が前記下限未満ではベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の選択率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると反応性が低下し、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。更に、このような環状の脂肪族炭化水素基としては、より十分に高度な収率でベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を製造することが可能となるという観点から、炭素原子数5〜10(より好ましくは5〜7)の環状の脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましく、中でも、より高度な効果が得られることから、シクロヘキシル基が特に好ましい。
また、このようなパラジウム触媒は、一般式(1)で表されるホスフィン系配位子が2価のパラジウムに配位したものであればよく、特に制限されないが、式:PdQ(式中、Pdは2価のパラジウムを示し、Qはハロゲン原子を示し、Lは上記一般式(1)で表されるホスフィン系配位子を示し、oは0〜2の整数を示し、pは1〜2の整数を示す。)で表される触媒を好適に利用することができ、中でも、より高度な触媒効果が得られるという観点から、下記一般式(14):
[PdQ] (14)
(式(14)中、Pdは2価のパラジウムを示し、Qはハロゲン原子を示し、Lは上記一般式(1)で表されるホスフィン系配位子を示す。)
で表されるパラジウム触媒を用いることがより好ましい。
このような一般式(14)中のQはハロゲン原子であればよく特に制限されないが、より入手が容易であり且つ触媒がより安定した化合物となるという観点からは、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
このような一般式(14)で表されるパラジウム触媒としては、例えば、[PdCl(P(C]、[PdCl(P(C11]、[PdCl(P(C13]、[PdCl(P(C19]、[PdCl(P(C1021]、[PdBr(P(C]、[PdBr(P(C11]、[PdBr(P(C13]、[PdBr(P(C19]、[PdBr(P(C1021]等が挙げられる。また、このようなパラジウム触媒の中でも、入手が容易で且つより高い効果が得られるという観点並びに触媒の安定性の観点から、[PdCl(P(C]、[PdCl(P(C11]、[PdCl(P(C13]が更に好ましく、[PdCl(P(C11]が特に好ましい。
また、このようなパラジウム触媒の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、PdClをMeCNに溶解し、[PdCl(MeCN)2]に変性する工程と、得られた[PdCl(MeCN)]を室温でCHClに溶解した後に、1,5−シクロオクタジエン(1,5−C12)を加えて室温で攪拌し、[PdCl(1,5−C12)]に変性する工程と、得られた[PdCl(1,5−C12)]をCHClに溶解し、PCyを加えて室温で攪拌させることにより、[PdCl(P(C11]に変性する工程とを含む方法を利用することができる。なお、このようなパラジウム触媒としては市販のものを用いてもよい。
次に、本発明において用いられる溶媒について説明する。本発明においては、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)を用いる。このような溶媒としてのDMFやDMAは、1種を単独で用いてもよく、あるいは、これらを組み合わせて用いてもよい。なお、本発明においては、このようなDMF及び/又はDMAを、前述のパラジウム触媒と組み合わせて用いることにより、前記ノルボルナジエン誘導体と前記ハロゲン化合物とを反応させる際に、用いるハロゲン化合物中のハロゲン原子の種類によらず、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を十分に高い収率で製造することを可能とする。また、このような溶媒の中でも、より高度な効果が得られることから、DMFを用いることが特に好ましい。
次いで、本発明において用いられるノルボルナジエン誘導体について説明する。このようなノルボルナジエン誘導体は、下記一般式(2):
で表されるものである。
このような一般式(2)中のR、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の脂肪族炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種である。
このようなR、R、R、R、Rとして選択され得る炭素原子数1〜10の直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数が1〜6のものが好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。また、このような直鎖状の炭化水素基としては、直鎖状の脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましい。
また、R、R、R、R、Rとして選択され得る炭素原子数3〜10の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数が3〜6のものが好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。また、このような分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましい。
また、このようなR、R、R、R、Rとしては、目的とするベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の収率の観点から、水素原子、フッ素原子、塩素原子であることがより好ましく、水素原子であることがより好ましい。
また、上記一般式(2)中において、lは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。このようなm、nの値が前記上限を超えると、ノルボルネン誘導体を製造する際に高純度化が難しくなり、収率が低下して製造が困難となる場合や、得られるノルボルネン誘導体のガラス転移温度(Tg)が高くなり過ぎて延伸加工等の熱加工性が低下する場合が生じる。また、目的とするベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体をより高収率で得ることが可能となるという観点から、mの値が0で且つnの値が0であることが好ましい。また、lの値としては、これにより目的物を比較的容易に合成できるという観点から、0であることが好ましい。
次に、本発明において用いられるハロゲン化合物について説明する。このようなハロゲン化合物は、下記一般式(3):
で表されるものである。
上記一般式(3)中のZは、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基からなる群から選択されるいずれか1種を示す。このようなZとして選択され得る「ナフチレン基」とは、ナフタレンを形成する全炭素原子中の2個の炭素原子にそれぞれ結合している水素原子(計2個)をナフタレンから除いた残基(2価の基)をいい、「ビフェニレン基」とは、ビフェニルを形成する全炭素原子中の2個の炭素原子にそれぞれ結合している水素原子(計2個)をビフェニルから除いた残基(2価の基)をいう。また、このようなZとしては、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の収率の観点からフェニレン基が特に好ましい。
また、上記一般式(3)中のXはヨウ素原子、臭素原子及び塩素原子からなる郡から選択されるいずれか1種のハロゲン原子である。このようなハロゲン原子としては、上記一般式(3)で表される化合物の入手の容易性やコスト等の観点からは、塩素原子が特に好ましい。
また、上記一般式(3)中のRは、水素原子、ニトロ基、炭素原子数1〜10の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、及びフッ素原子からなる群から選択されるいずれか1種である。
このようなRとして選択され得る炭素原子数1〜10の直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数が1〜6のものが好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。また、このような直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状の脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましい。
また、Rとして選択され得る炭素原子数3〜10の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数が3〜7のものが好ましく、3〜6のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。また、このような分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状の飽和炭化水素基であることが好ましい。
さらに、Rとして選択され得る炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、炭素原子数が1〜8のものが好ましく、1〜6のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。
また、このようなRとしては、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の収率の観点から、ニトロ基、炭素原子数3〜5の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基がより好ましい。
次に、上記ノルボルナジエン誘導体と上記ハロゲン化合物とを反応せしめる工程について説明する。このような工程は、前記パラジウム触媒と、DMF及びDMAのうちの少なくとも1種の溶媒との存在下、上記ノルボルナジエン誘導体と上記ハロゲン化合物とを反応せしめる工程である。このような反応工程に2価のパラジウムと前記ホスフィン系配位子とを含む特定のパラジウム触媒、並びに、DMF及びDMAのうちの少なくとも1種の溶媒を組み合わせて用いているため、本発明においては、目的とするベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体が十分に高度な収率で製造される。
このような反応工程において、反応系中に含有される上記一般式(2)で表されるノルボルナジエン誘導体の含有量としては、反応系中の全化合物に対して0.1〜50モル%とすることが好ましく、1〜20モル%とすることがより好ましい。このようなノルボルナジエン誘導体の含有量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応が増加する傾向にある。
また、反応系中に含有される上記一般式(3)で表されるハロゲン化合物の含有量としては、反応系中の全化合物に対して、0.1〜25モル%とすることが好ましく、0.5〜10モル%とすることがより好ましい。このようなハロゲン化合物の含有量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応が増加する傾向にある。
さらに、上記一般式(2)で表されるノルボルナジエン誘導体及び上記一般式(3)で表されるハロゲン化合物の含有比率としては、上記一般式(2)で表されるノルボルナジエン誘導体と上記一般式(3)で表されるハロゲン化合物とのモル比([前記ノルボルナジエン誘導体]:[前記ハロゲン化合物])が1:1〜10:1となる範囲とすることが好ましく、1:1〜5:1となる範囲とすることがより好ましい。このようなノルボルナジエン誘導体の含有比率が前記下限未満では、副反応が増加する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応速度が低下する傾向にある。
また、反応系中に含有されるパラジウム触媒の含有量としては、反応系中の全化合物に対して、0.001〜0.1モル%とすることが好ましく、0.002〜0.06モル%とすることがより好ましい。このようなパラジウム触媒の含有量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応が増加する傾向にある。
また、反応系中に含有されるパラジウム触媒の金属換算によるモル量と、上記一般式(2)で表されるノルボルナジエン誘導体のモル量との比([パラジウム]:[ノルボルナジエン誘導体])としては、1:10〜1:20000の範囲であることが好ましく、1:60〜1:10000の範囲であることがより好ましい。このようなパラジウムの使用量が前記下限未満では反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応が増加する傾向にある。
さらに、反応系中に含有されるパラジウム触媒の金属換算によるモル量と、上記一般式(3)で表されるハロゲン化合物のモル量との比([パラジウム]:[ハロゲン化合物])としては、1:5〜1:2000の範囲であることが好ましく、1:30〜1:1000の範囲であることがより好ましい。このようなパラジウムの使用量が前記下限未満では反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応が増加する傾向にある。
このような反応系中に含有される溶媒の量としては、反応系中の全化合物の濃度が1〜10mol/Lとなる量であることが好ましく、1〜6mol/Lとなる量であることがより好ましい。このような溶媒の使用量に関して、前記全化合物の濃度が前記下限未満では反応速度が低下し、転化率が低下する傾向にあり、他方、前記全化合物の濃度が前記上限を超えると、ノルボルナジエン誘導体どうしの反応が起きて副生成物が生成される傾向にある。
さらに、このような反応工程においては、上記一般式(2)で表されるノルボルナジエン誘導体と、上記一般式(3)で表されるハロゲン化合物とを反応せしめることにより発生するハロゲン化水素を中和するために、中和剤として塩基を更に用いてもよい。このような塩基としては、有機塩基や無機塩基などを使用することが可能であり、特に制限されず、例えば、トリメチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリプロピルアミン、ジプロピルアミン、プロピルアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン;ピリジン、ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の無機水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ炭酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等の金属アルコキシド;などが挙げられ、転化率の向上の観点からは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムが好ましい。
このような塩基の含有量としては、前記ハロゲン化合物の含有量に対するモル比([塩基]:[ハロゲン化合物])が、1:1〜10:1の範囲となる量であることが好ましく、1:1〜5:1の範囲となる量であることがより好ましい。このような塩基の含有量が前記下限未満では転化率が低下し、副生物が増える傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応速度が低下し、収率が低くなる傾向にある。
また、このような反応工程における温度条件としては、20〜180℃の範囲であることが好ましく、60〜150℃の範囲であることがより好ましく、80〜140℃の範囲であることが更に好ましく、通常80〜120℃の範囲であることが特に好ましい。このような反応温度が前記下限未満では、反応速度が低下し転化率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記ノルボルナジエン誘導体同士の反応が起きて副生成物が生成されてしまう傾向にある。
また、このような反応の反応時間としては0.1〜100時間であることが好ましく、1〜24時間の範囲であることがより好ましく、1〜10時間の範囲であることがより好ましい。このような反応時間が前記下限未満では、転化率が低下して収率良く生成物を得ることができなくなる傾向にあり、他方、反応時間が前記上限を超えると、パラジウム触媒中のパラジウムが凝集し失活することにより、転化率が頭打ちとなる現象が見られる傾向にある。
このようにして、前記パラジウム触媒と、前記溶媒との存在下、上記一般式(2)で表されるノルボルナジエン誘導体と、上記一般式(3)で表されるハロゲン化合物とを反応せしめることにより、下記一般式(4):
で表されるベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を選択的に製造することができる。
このような一般式(4)中のR、R、R10、R11、R12、l、m、nは、上記一般式(2)中のR、R、R、R、R、l、m、nと同様のものである。また、上記一般式(4)中のR13は、上記一般式(3)中のRと同様のものである。
また、上記一般式(4)中のYは、下記一般式(5)〜(13):
で表される芳香族基のうちのいずれか1種を示す。なお、このような式(5)〜(13)中の記号*は、これが付された結合手がR13と結合する結合手であることを示す。また、式(5)〜(13)中、残りの2本の結合手(*が付されていない2本の結合手)は、これらのうちの一方がRが結合している炭素原子に結合する結合手を示し、もう一方がRが結合する炭素に結合する結合手を示す。
また、上記一般式(4)で表されるベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体としては、比較的容易に合成でき、しかも、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を開環重合して得られる重合体のフィルムが十分な耐熱性を有するものとなるという観点から、上記一般式(4)中のmが0であり且つnが0であることがより好ましい。
さらに、上記一般式(4)で表されるベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体としては、比較的容易に合成でき、しかもベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を開環重合して得られる重合体のフィルムが十分な耐熱性を有するものとなるという観点から、Yが上記一般式(5)で表される芳香族基であることがより好ましい。
このような本発明のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法を採用して得られるノルボルネン誘導体は、開環重合、開環重合とそれに続く水素添加反応、付加重合、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等によって、所望の重合体とすることができる。また、このようなベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を、必要に応じて任意の共重合可能な化合物と共重合反応させて共重合体を得ることも可能である。そして、このようなベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体から合成した重合体は、優れた透明性、耐熱性、低吸水性を示し、かつ用途に応じて任意に複屈折値の大きさやその波長分散性を制御できることから、光ディスク、光磁気ディスク、光学レンズ(Fθレンズ、ピックアップレンズ、レーザープリンター用レンズ、カメラ用レンズ等)、眼鏡レンズ、光学フィルム/シート(ディスプレイ用フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム、偏光板保護フィルム、拡散フィルム、反射防止フィルム、液晶基板、EL基板、電子ペーパー用基板、タッチパネル基板、PDP前面板等)、透明導電性フィルム用基板、光ファイバー、導光板、光カード、光ミラー、IC,LSI,LED封止材などの成形材料として好適に応用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、各実施例及び各比較例で得られた生成物の分子構造の同定及び生成物の定量は、以下に示す方法(NMR測定、内部標準法によるガスクロマト分析)により行った。
〈NMR測定〉
各実施例及び各比較例で得られた生成物の分子構造の同定はNMR測定により行った。このようなNMR測定は、超伝導核磁気共鳴吸収装置(Oxford−Instruments社製のOxford 500MHz又は日本電子株式会社(JEOL)社製 JMT400MHz)を用いて、重水素化クロロホルム溶液中に各実施例及び各比較例で得られた生成物を希釈し、H−NMR、13C−NMRを測定することにより行った。
〈ガスクロマト分析〉
各実施例及び各比較例で得られた反応溶液中の目的生成物の定量は標準試料としてジエチレングリコールジエチルエーテルを用いたガスクロマト分析により行った。このようなガスクロマト分析は、ガスクロマトグラフの装置としてGL sciences社製のGC−4000を用い、カラムとしてAGILENT TECHNOLOGIES,INC製のHP−5(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)を用い、測定時のカラムの温度条件を50℃(10minホールド)から5℃/minで300℃へ昇温して10minホールドとし、カラム流量を0.5mL/min(He)とした。
(実施例1)
先ず、0.2Lの二口フラスコに、パラジウム触媒としてのビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(26.3mg)、炭酸セシウム(667.8mg)を入れた。次に、前記二口フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記二口フラスコ内に、ジメチルホルムアミド(DMF:5ml)と、tert−ブチルフェニルクロライド(168.7mg)と、2,5−ノルボルナジエン(368.6mg)と、ジエチレングリコールジエチルエーテル(170mg:かかる物質はGC分析の内部標準物質として予め含有させたものであって反応に寄与するものではない。)とを加え、120℃の温度条件で6時間加熱攪拌を行って反応を進行せしめて、目的生成物を含有する反応溶液を得た。なお、このような反応溶液中において、全化合物に対するパラジウム触媒の含有量は0.049モル%であり、tert−ブチルフェニルクロライドに対するパラジウム触媒のモル当量は0.036当量であり、tert−ブチルフェニルクロライドに対する2,5−ノルボルナジエンのモル当量は4.0当量であった。なお、このような反応溶液を調製する際の反応を下記反応式(I)に示す。
このようにして得られた反応溶液を室温(25℃)まで冷却した後、かかる反応溶液を用いて上述のようにしてガスクロマト分析を行ったところ、転化率は100%であり、6−tert−ブチル−1,4,4a,8b−テトラヒドロ−1,4−メタノビフェニレン(目的生成物)の収率が62%であることが確認された。また、このようなガスクロマト分析により、副生成物としてexo−5−(p−tert−ブチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンが生成されていることが確認され、その収率が16%であることも分かった。なお、転化率は、下記式:
[転化率]={[反応系中に添加したハロゲン化合物(実施例1ではtert−ブチルフェニルクロライド)の量]−[反応後に残存しているハロゲン化合物の量]}/[反応系中に添加したハロゲン化合物の量]
を計算することにより求められる値を採用した。
次いで、前記室温に冷却した反応溶液5.0mLを水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させて、ろ過、濃縮して粗生成物を得た。このようにして得られた粗生成物から前記目的生成物と副生成物とを、シリカゲルカラムクロマトグラフ(シリカゲルとして、関東化学社製のシリカゲル60N(球状、中性)、粒子径40〜50μmを使用)により分離し、目的生成物(単離した目的物)を得た。そして、このようにして分離された目的生成物に対して、上述のようにしてNMR測定により構造解析を行った。実施例1で得られた生成物のNMR測定の結果として、H−NMRのグラフを図1〜3に示し、13C−NMRのグラフを図4〜6に示す。なお、図2は、図1に示すH−NMRのグラフのオレフィン部分と芳香族部分のスペクトルを拡大したグラフであり、図3は、図1に示すH−NMRのグラフの脂肪族部分のスペクトルを拡大したグラフである。また、図5は、図4に示す13C−NMRのグラフのオレフィン部分と芳香族部分のスペクトルを拡大したグラフであり、図6は、図4に示す13C−NMRのグラフの脂肪族部分のスペクトルを拡大したグラフである。
図1〜6に示すNMRのデータからも明らかなように、このようにして得られた目的生成物は、6−tert−ブチル−1,4,4a,8b−テトラヒドロ−1,4−メタノビフェニレンであることが確認された。このような結果から、本発明のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法を利用した場合(実施例1)においては、原料化合物の一つであるハロゲン化合物(tert−ブチルフェニルクロライド)中のハロゲン原子の種類が塩素原子であっても、十分に選択率高く且つ十分に高度な収率でベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を製造することができることが分かった。
(比較例1)
先ず、0.1Lの二口フラスコに、酢酸パラジウム(1.1mg)を入れた。次に、前記二口フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記二口フラスコ内に、ジメチルホルムアミド(DMF:25ml)と、トリ−tert−ブチルホスフィン(5.0mg)と、tert−ブチルフェニルクロライド(1.0g)と、2,5−ノルボルナジエン(1.66g)と、ジエチレングリコールジエチルエーテル(1.0g:かかる物質はGC分析の内部標準物質として予め含有させたものであって反応に寄与するものではない。)とを加え、120℃の温度条件で6時間加熱攪拌を行い、反応溶液を得た。
このようにして得られた反応溶液を室温(25℃)まで冷却した後、かかる反応溶液を用いて上述のようにしてガスクロマト分析を行ったところ、転化率は0%であり、反応は全く進行しなかった。このような結果から、実施例1で利用したものと同じ原料化合物及び同じ溶媒を用いたとしても、触媒として酢酸パラジウムとトリ−tert−ブチルホスフィンとからなるパラジウム触媒を用いた場合においては、全く反応が進行しないことが分かった。
以上説明したように、本発明によれば、原料化合物として臭素原子を含有するハロゲン化合物を用いた場合ばかりか塩素原子を含有するハロゲン化合物を用いた場合においても、ベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を十分に高い収率で製造することが可能なベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法を提供することが可能となる。したがって、本発明のノルボルネン誘導体の製造方法は、光ディスク、光磁気ディスク、光学レンズ、眼鏡レンズ、光学フィルム等を製造するのに好適に利用可能なベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を製造する方法として特に有用である。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1):
    (式(1)中、Rは、それぞれ独立に環状の脂肪族炭化水素基を示す。)
    で表されるホスフィン系配位子が2価のパラジウムに配位したパラジウム触媒と、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒との存在下において、
    下記一般式(2):
    [式(2)中、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の脂肪族炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、lは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。]
    で表されるノルボルナジエン誘導体と、下記一般式(3):
    [式(3)中、Zは、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基からなる群から選択されるいずれか1種を示し、Xはヨウ素原子、臭素原子及び塩素原子からなる群から選択されるいずれか1種のハロゲン原子を示し、Rは、水素原子、ニトロ基、炭素原子数1〜10の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、及び、フッ素原子からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]
    で表されるハロゲン化合物とを反応せしめ、下記一般式(4):
    [式(4)中、R、R、R10、R11、R12、l、m、nは、それぞれ上記一般式(2)中のR、R、R、R、R、l、m、nと同義であり、R13は上記一般式(3)中のRと同義であり、Yは下記一般式(5)〜(13):
    (式(5)〜(13)中、*はR13と結合する結合手を示す。)
    で表される芳香族基のうちのいずれか1種を示す。]
    で表されるベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体を得ることを特徴とするベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法。
  2. 前記パラジウム触媒が、下記一般式(14)
    [PdQ] (14)
    (式(14)中、Pdはパラジウムを示し、Qはハロゲン原子を示し、Lは上記一般式(1)で表されるホスフィン系配位子を示す。)
    で表される触媒であることを特徴とする請求項1に記載のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法。
  3. 前記一般式(1)中のRが炭素原子数5〜10の環状の脂肪族炭化水素基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法。
  4. 前記一般式(1)中のRが炭素原子数5〜7の環状の脂肪族飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法。
  5. 前記一般式(3)中のXが塩素原子であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法。
  6. 前記一般式(2)及び(4)中のmが0であり且つnが0であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法。
  7. 前記一般式(3)中のZがフェニレン基であり且つ前記一般式(4)中のYが前記一般式(5)で表される芳香族基であることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のベンゾシクロブテン環を有するノルボルネン誘導体の製造方法。
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