JP5530692B2 - エレクトロクロミック組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、電気化学型可逆反応(電解酸化還元反応)によって消発色するエレクトロクロミック組成物に関する。
近年、情報の電子化や環境問題等から紙媒体を用いた文字、図形を電子ペーパーと呼ばれる表示装置で表示する試みがなされている。このような電子ペーパーに対しては、低消費電力であり、人間の目に違和感の少ない反射型表示システムであること、更に視認性に違和感が少なく、安価であり、そして軽量、柔軟性等の携帯性に優れることを期待されている。
しかしながら、かかる技術的要求を実現する有望な技術が確立されていないのが現状である。候補技術としては、電気化学型酸化還元反応により消発色を行う方式、電気泳動により着色粒子を電極間で移動させ消発色を行う方式、二色性の粒子を電場で回転させることで消発色を行う方式(ツイストボール方式)等の技術が知られている。
これらの中でも電気化学型酸化還元反応消発色を用いたエレクトロクロミック素子は、低消費電力、高速応答性に優れており、このようなエレクトロクロミック素子として、電極間に消発色する化合物を含有する電解液を封止したエレクトロクロミック素子が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの表示素子は、電気化学型酸化還元反応により消発色する化合物を消発色させ光学的反射特性を変化させることにより表示を行うというものである。
特許第3918961号公報 特開昭54−99787号公報 特開2005−338356号公報
このような従来の電気化学型酸化還元反応による消発色を用いたエレクトロクロミック素子は、良好な消発色性能を得る為には電解液が低粘度である必要があった。そのため、ハンドリング性が悪く、製造工程においては各セルに電解液を充填するディスペンサ等の工法を取らざるを得ず、生産性の向上が困難であった。また、作製されたエレクトロクロミック素子は、独立したセル内に電解液を充填した構造となっており、従来の低粘度の電解液では漏液の可能性があった。
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ハンドリング性が良好であり、様々な塗布法によるパターン形成が可能なエレクトロクロミック組成物及びこの組成物を用いた生産性に優れた漏液の少ないエレクトロクロミック素子を提供することにある。
本発明によれば、上述の目的を達成する為に、以下の形態が提供できる。
(1)電気化学反応型酸化還元反応に伴って消発色する化合物と、支持電解質と、有機系のチキソトロピック剤と、溶媒とを含むエレクトロクロミック組成物。
(2)コーンプレート型粘度計による5rpmにおけるずり応力の値を、50rpmにおけるずり応力の値で除した値が1.3〜6.0である上記(1)のエレクトロクロミック組成物。
(3)上記の電気化学型酸化還元反応に伴って消発色する化合物よりも酸化過電圧及び還元過電圧の絶対値が小さい化合物を含むエレクトロクロミック組成物。
(4)発明の他の態様によれば、上記の電気化学型酸化還元反応に伴って消発色する化合物がロイコ染料であるエレクトロクロミック組成物。
(5)電極間に消発色する化合物を含有する電解液を封止したエレクトロクロミック素子。
(6)(1)に記載のエレクトロクロミック組成物を有することを特徴とするエレクトロクロミック素子。
(7)(2)に記載のエレクトロクロミック組成物を有することを特徴とするエレクトロクロミック素子。
本発明にかかるエレクトロクロミック組成物は、様々な印刷方法で塗布することが可能となる為、生産性に優れたエレクトロクロミック素子が作製可能となる。また、本発明にかかるエレクトロクロミック組成物を用いることで、漏液の少ないエレクトロクロミック素子を提供することが出来る。
本発明の一形態におけるエレクトロクロミック素子を示す概略断面図である。
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために電気化学型酸化還元反応による消発色を示すエレクトロクロミック組成物について検討を行った結果、有機系のチキソトロピック剤を含有することにより、消発色性能に悪影響を及ぼすことなく粘度及びチキソトロピー性が向上し、様々な印刷方法での塗布が可能となる事を見出し、本発明を完成するに至った。
これにより、従来の低粘度のエレクトロクロミック組成物において適用されていたディスペンサ等の工程に比較して簡易的な工程による製造が可能となり、生産性が大きく改善される。また、高いチキソトロピック性を有しているため、液状でありながら流動性が抑えられ、本発明にかかるエレクトロクロミック組成物を用いて作製したエレクトロクロミック素子においては、セルに封入されているエレクトロクロミック組成物の漏液を防止できる。
本発明にかかるエレクトロクロミック組成物は、電気化学型酸化還元反応に伴って消発色を示す化合物(以下、消発色剤とする)と、支持電解質と、チキソトロピック剤と、溶媒とを含むものであり、また、消発色剤の電気分解を防止する為に、その他の成分として、消発色剤の酸化過電圧及び還元過電圧の絶対値よりも小さい酸化過電圧及び還元過電圧を有する化合物(以下、「化合物(1)」という)及びそのレドックスペアとなる化合物(以下、「化合物(2)」という)を添加することが好ましい。
なお、本明細書中の酸化過電圧及び還元過電圧とは、化合物の電気による酸化反応及び還元反応が実際に起こるのに必要となる電圧のことを言う。
以下、本発明にかかるエレクトロクロミック組成物の各成分について詳細に説明する。
本実施形態における消発色剤は、電気化学型酸化還元反応により可逆的に消色又は発色する化合物であれば特に限定されるものではなく、酸化状態で発色する酸化発色型、還元状態で発色する還元発色型のいずれも用いることができる。
このような消発色剤としては、例えば、酸化タングステン、プルシアンブルー、水酸化酸化ニッケルなどの多核金属錯体、金属フタロシアニン配位高分子、2−アミノ−6−ジエチルアミノ−3−メチルフルオラン、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−[9H]キサンテン]、2−アミノ−6−ジブチルアミノ−3−メチルフルオラン、6−ジメチルアミノ−3−メチル−2−(3−トルイジノ)−フルオラン、6−ジエチルアミノ−3−メチル−2−(2,4−キシリジノ)−フルオラン、6−ジエチルアミノ−3−メチル−2−(2,6−キシリジノ)−フルオラン等の黒色ロイコ染料、3,3−ビス(4−ジメチル−アミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−インドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−インドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−メチルインドール−3−イル)フタリド等の青色ロイコ染料、9−ジエチルアミノベンゾ〔α〕フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチル−インドール−3−イル)フタリド、等の赤色ロイコ染料、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3,6,6−トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3−フタリド〕、3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−フタリド等の緑色ロイコ染料等が挙げられる。
支持電解質は、組成物中を電流が流れ易くするために用いられるもので、極性溶媒に可溶であり、溶媒中に溶解した態様において導電性を示す物であれば特に限定されない。
このような支持電解質としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属のハロゲン化物、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ルビジウム、過塩素酸セシウム等のアルカリ金属の過塩素酸塩、硝酸リチウム等のアルカリ金属の硝酸塩、硫酸リチウム等のアルカリ金属の硫酸塩、ホウフッ化リチウム等のアルカリ金属のテトラフルオロ硼酸塩、及びテトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム・テトラフルオロボレート等のスピロ型のカチオンを有する第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
チキソトロピック剤は、組成物中に分散し、組成物に構造粘性を付与するもので、組成物の消発色性能を低下させること無く組成物を高粘度化・高TI化する事が可能となり、組成物を高粘度化する事で様々な塗布法が選択できるようになる。また、組成物を高TI化する事で液状の組成物であるにも関わらず、静止した状態ではあたかも固体であるかのように流動性を失う為、塗布によって形成したパターン形状の維持が可能になる。さらに、この組成物を用いてエレクトロクロミック素子を作製した場合、組成物の漏液を防止することができる。
このようなチキソトロピック剤としては、チキソトロピー性を付与する物であれば特に限定されない。例えば、有機系のチキソトロピック剤としては、ひまし油、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス等の動植物系チキソトロピック剤、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等のアミド系チキソトロピック剤、変性ウレア、ウレア変性ウレタン等のウレア系チキソトロピック剤などが挙げられる。無機系チキソトロピック剤としては、微粉シリカ等が挙げられ、これらのチキソトロピック剤は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも有機系のチキソトロピック剤が溶媒への溶解性と透明性があるため好ましい。さらに、その中でも透明性により優れているウレア骨格を有するチキソトロピック剤がより好ましい。
チキソトロピック剤が分散したエレクトロクロミック組成物のTI値は、印刷・塗布時のハンドリング性を考慮すると、1.3〜6.0が好ましい。なお、TI値は後述するコーンプレート粘度より計算にて算出した値である。
本明細書中におけるコーンプレート粘度とは、コーンプレート型粘度計(東機産業社製 コーン1.34°R24)で円錐状のコーンと平版状のヒーター付プレートの間に試料を挟んでコーンを回転させ、発生する応力より求める粘度である。TI値は、このコーンプレート型粘度計を用いて5rpmおよび50rpmでのずり応力を測定し、5rpmにおけるずり応力の値を50rpmにおけるずり応力の値によって除算した値とする。
このようなチキソトロピック剤の配合量は、全組成物中の0.5〜50%が好ましく、有機系のチキソトロピック剤を用いる場合では全組成物中の0.5〜20%である事が好ましい。より好ましくは全組成物中の1〜5%である。チキソトロピック剤の配合量が上述の下限値を下回っているとエレクトロクロミック組成物にチキソトロピック性が付与されず、組成物の流動性が抑えられずに塗布性の低下および漏液の恐れがある。一方、チキソトロピック剤の配合量が上述の上限値を上回っているとエレクトロクロミック組成物にチキソトロピック性が過剰に付与され、組成物の流動性が失われ、各種塗布法による素子構造の形成が困難となる。
一方、チキソトロピック剤を添加しない場合、粘度だけを高くしても組成物の流動性が全く失われず、形成したパターンの形状維持が困難となる。また、その組成物を用いて作製した表示素子は漏液を生じる恐れがある。また、消発色速度や発色濃度などの消発色性能が低下する。
溶媒は、極性を有する溶媒であれば特に限定されるものではなく、プロトン性極性溶媒、非プロトン性極性溶媒、及びこれらの混合物を用いることができる。
プロトン性極性溶媒としては、例えば、アルコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。アルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、特に炭素数が1〜4の脂肪族アルコールが好ましい。グリコールエーテル類としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができ、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
非プロトン性極性溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート等のカーボネート類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アセトニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類、ジメトキシエタン等のエーテル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、 ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、 ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類などが挙げられる。
また、消発色剤の電気化学型酸化還元反応による劣化を防ぐ為、酸化過電圧及び還元過電圧の絶対値が消発色剤の酸化過電圧及び還元過電圧の絶対値よりも小さく、電気化学型酸化還元反応に伴いプロトンの授受を行う化合物(以下、「化合物(1)」という)を含有させることができる。これにより、消発色剤の酸化過電圧及び還元過電圧の絶対値よりも低い電圧において酸化還元反応を行い、その際のプロトンの授受に伴って消発色剤の消発色が間接的に行われる為、消発色剤が電気分解する恐れがなく、消発色剤を直接酸化還元するよりも低い電圧での消発色が可能となる。
このような化合物(1)としては、上述したとおり消発色剤の酸化過電圧及び還元過電圧の絶対値より低い酸化過電圧及び還元過電圧を有し、プロトンの授受を行うものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ハイドロキノン、クロロハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t−ブチル−ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチル−ハイドロキノン、1−ナフトール、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール系化合物や、ジエチルアミン、t−ブチルアミンなどのアミン系化合物等が挙げられる。
このような化合物(1)の酸化過電圧及び還元過電圧の絶対値は、消発色剤の酸化過電圧及び還元過電圧の絶対値より、0.1V以上小さいことが好ましい。より好ましくは、0.3V以上である。
さらに、化合物(1)に対するレドックスペアとして作用する化合物(以下、「化合物(2)」という)を含有させることで、化合物(1)の酸化還元反応を促進し、安定的なプロトンの授受ができる。化合物(2)としては、特に限定するものではないが、例えば、化合物(1)が陽極で酸化反応するものであるとき、化合物(2)は、陰極で還元反応を行う化合物であることが好ましい。
このような化合物(2)としては、例えば、1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン、p−トルキノン、メチルベンゾキノン、t−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチル−1,4−ベンゾキノン等のキノン系化合物が挙げられる。
また、本実施形態のエレクトロクロミック組成物には、粘度を調整するために高分子化合物を添加することが出来る。高分子化合物を添加する事で印刷方法に対して最適な粘度に調整する事が可能である。
このような高分子化合物としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、アミロース及びアミロペクチンを含むデンプン等を挙げることができる。これらの高分子化合物は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
消発色剤の消色時に透明ではなく着色層とする場合には、必要に応じて着色剤を添加することができる。
このような着色剤としては、電解層を着色するものであれば特に限定するものではないが、例えば有機顔料、無機顔料、染料、金属粉、着色ガラス等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、ポリ縮合アゾ系顔料、メタルコンプレックスアゾ系顔料、フラバンスロン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラピリジン系顔料、ピランスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、チオインジゴ系顔料、インダンスレン系顔料等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、アンチモン白、カーボンブラック、鉄黒、炭化チタン、ベンガラ、マピコエロー、鉛丹、カドミウムエロー、硫化亜鉛、リトポン、硫化バリウム、セレン化カドミウム、硫酸バリウム、クロム酸鉛硫酸鉛、炭酸バリウム炭酸カルシウム、鉛白、アルミナホワイト等が挙げられる。これらの中でも視認性の観点から白地に黒表示が好ましく白色顔料としては、酸化チタンが好ましい。
染料としては、例えば、ニグロシン系染料、フタロシアニン系染料、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、メチン系染料等が挙げられる。
さらに必要に応じて、公知の増粘剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、難燃助剤等が使用できる。
このような本実施形態のエレクトロクロミック組成物は、前述したような成分を配合して製作する。
本発明にかかるエレクトロクロミック素子の一実施形態における基本構成を、図1を用いて具体的に説明する。
図1に示すように、本実施形態のエレクトロクロミック素子は、本発明にかかるエレクトロクロミック組成物5を、電極基材1、4上にそれぞれ電極2、3を有する2枚の基板7、8間に配置し、スペーサーとなる絶縁物質6を介して2枚の基板を接着、封止することにより得られる。ここで、電極基材1、4の何れか一方は透明である必要があり、透明である電極基材に対応する電極もまた透明である必要がある。例えば、電極基材1が透明である場合、電極2には透明電極を用いる。また、電極基材1、4及び電極2、3全てが透明であってもよく、この場合は透過型表示素子となる。
また、必要に応じて、消発色剤が無色透明表示時に表示装置を着色表示させるために、電極下部、または電極間に着色表示させるための手段を講じることで、着色剤色地に消色剤による色表示が可能な反射表示型表示素子となる。例えば、白色着色剤を用いた場合、黒発色の消発色剤含有のエレクトロクロミック素子では、白地に黒表示が可能な表示素子となる。
電極基材1、4は、電極2、3を設置できるものであればよく、特に限定されない。一般にガラスもしくはポリマーフィルムなどであり、いずれの利用も可能であるが、表示素子に柔軟性を付与できることを考慮するとポリマーフィルムや薄層ガラスであることがより望ましい。
電極2、3は、上述したとおり通常の表示記録用途では、表示は一方側からだけ観察できれば良い為、電極2及び3の内の一方が透明であれば良く、例えば、電極2が透明であれば、電極3は不透明でも構わない。
透明電極としては、例えば、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等の公知の透明電極を用いることができる。
透明電極の透明度は、表示を観察する際、透明電極を介して分散系を見ることから、より高い方が望ましく、透過率75%以上であることが好ましい。より好ましくは80%以上である。また、電極の抵抗値は、より小さい方が望ましく、100Ω/□以下が好ましい。より好ましくは50Ω/□以下である。
透明電極に対向する電極が透明である必要がない場合の電極としては、電気化学的に安定な金属類、例えば、金、銀、白金、コバルト、パラジウム等を用いることができる。
また、電極2、3は、一方或いは両方が帯状又は点状などのマトリックス状、或いはセグメント状に分割エッチングされていてもよい。これらの帯状又は点状電極を組み合わせて文字、数字、画像など所定の形状を構成し、それら電極に同時に電圧を印加するか、走査によって分割に電圧を印加する事で、静止画像、或いは動画像を表示することができる。
スペーサー6は、電極間に配置する為、その材質は絶縁物質であれば特に限定されない。また、その厚さは、エレクトロクロミック組成物を配置する厚みを与えるものであることから色表示した時の白隠蔽性にて決定される。しかし、スペーサーの厚みが厚いと消費電力が大きくなるため、より薄いことが望まれ、例えば500μm以下が好ましい。より好ましくは100μm 以下である。スペーサーを接着剤等で電極と張り合わせることや、シール材中にスペーサーを添加して基板を接着することにより、本発明にかかる表示素子を得ることができる。
[エレクトロクロミック組成物の調製]
<組成物例1>
S−205(山田化学工業社製ロイコ染料:2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−[9H]キサンテン])5部、テトラブチルアンモニウムブロマイド1部、ハイドロキノン3部、1,4−ベンゾキノン3部、KS−66(信越シリコーン社製消泡・レベリング剤)1部をジプロピレングリコ−ルモノメチルエーテル87部に良く攪拌し溶解させた。さらにBYK−410(ビックケミージャパン社製チキソトロピック剤)10部を攪拌しながら添加し、その後、24時間静置することでエレクトロクロミック組成物1を得た。
<組成物例2>
S−205(山田化学工業社製ロイコ染料:2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−[9H]キサンテン];化合物)5部、テトラブチルアンモニウムブロマイド1部、ヒドロキノン3部、1,4−ベンゾキノン3部、KS−66(信越シリコーン社製消泡・レベリング剤)1部をジブロピレングリコールモノメチルエーテル87部に良く攪拌し溶解させた.さらにBYK−430(ビックケミージャパン社製チキソトロピック剤)15部を攪枠しながら添加し、その後24時間静置することでエレクトロクロミック組成物2を得た。
<組成物例3>
S−205(山田化学工業株社製ロイコ染料:2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−[9H]キサンテン])5部、テトラブチルアンモニウムブロマイド1部、ヒドロキノン3部、1,4−ベンゾキノン3部、KS−66(信越シリコーン社製消泡・レベリング剤)1部をジプロピレングリコールモノメチルエーテル87部に良く攪拌し溶解させた。さらにターレンED−2020(共栄社化学社製チキソトロピック剤)25部を攪拌しながら添加し、その後24時間静置することでエレクトロクロミック組成物3を得た。
<組成物例4>
S−205(山田化学工業社製ロイコ染料:2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−[9H]キサンテン])5部、テトラブチルアンモニウムブロマイド1部、ヒドロキノン3部、1,4−ベンゾキノン3部、KS−66(信越シリコーン社製消泡・レベリング剤)1部をジプロピレングリコールモノメチルエーテル87部に良く攪拌し溶解させた。さらにターレンBA−600(共栄社化学社製チキソトロピック剤)15部を攪拌しながら添加し、その後24時間静置することでエレクトロクロミック組成物4を得た。
<組成物例5>
S−205(山田化学工業社製ロイコ染料:2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−[9H]キサンテン])5部、テトラブチルアンモニウムブロマイド1部、ヒドロキノン3部、1,4−ベンゾキノン3部、KS−66(信越シリゴーン社製消泡・レベリング剤)1部をジブロピレングリコールモノメチルエーテル87部に良<攪拌し溶解させた.さらにDISPALON6900−20X(楠本化成社製チキソトロピック剤)25部を攪拌しながら添加し、その後24時間静置することでエレクトロクロミック組成物5を得た。
<組成物例6>
S−205(山田化学工業社製ロイコ染料:2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−[9H]キサンテン])5部、テトラブチルアンモニウムブロマイド)1部、ヒドロキノン3部、1,4−ベンゾキノン3部、KS−66(信越シリコーン社製消泡・レベリング剤)1部をジプロピレングリコールモノメチルエーテル87部に良く攪拌し溶解させた。さらにオルベン−M(白石工業社製チキソトロピック剤)15部を攪拌しながら添加し、その後24時間静置することでエレクトロクロミック組成物6を得た。
<組成物例7>
S−205(山田化学工業社製ロイコ染料:2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−[9H]キサンテン])5部、テトラブチルアンモニウムブロマイド1部、CAP504(イーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネート)30部、ハイドロキノン3部、1,4−ベンゾキノン3部、KS−66(信越シリコーン社製消泡・レベリング剤)1部をジプロピレングリコ−ルモノメチルエーテル100部に良く攪拌し溶解させた。さらにBYK−410(ビックケミージャパン社製チキソトロピック剤)10部を攪拌しながら添加し、その後、24時間静置することでエレクトロクロミック組成物7を得た。
<組成物例8>
S−205(山田化学工業社製ロイコ染料:2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−[9H]キサンテン])5部、テトラブチルアンモニウムブロマイド)1部、ヒドロキノン3部、1,4−ベンゾキノン3部、KS−66(信越シリコーン社製消泡・レベリング剤)1部をジプロピレングリコールモノメチルエーテル87部に良く攪拌し溶解させた。その後24時間静置することでエレクトロクロミック組成物8を得た。
上記の組成物例1〜8のエレクトロクロミック組成物について、組成物例1〜7を実施例1〜7、組成物例8を比較例1として、以下に示す評価を行った。評価結果を表1に示す。
<粘度およびTI値>
上記の実施例1〜7及び比較例1のエレクトロクロミック組成物を、コーンプレート型粘度計(東機産業社製 コーン1.34°R24)を用いて5rpmおよび50rpmにおけるずり応力を測定した。さらに測定した5rpmにおけるずり応力を50rpmにおけるずり応力にて除算した値をTI値とした。
<印刷性>
上記の実施例1〜7及び比較例1のエレクトロクロミック組成物を、ソーダライムガラス基板上にスクリーン印刷法でパターン塗布し、パターン印刷が可能かどうかを評価した。
○ ; パターン印刷可能。
△ ; 擦れもしくは、にじみを生じる。
× ; インキ転写せず。
<ダレ性>
上記の実施例1〜7及び比較例1のエレクトロクロミック組成物を、ソーダライムガラス基板上にスクリーン印刷法でパターン塗布し、塗布したソーダライムガラス基板をラックに垂直に立てかけて5分間静置した後、塗膜のダレの様子を評価した。
○ ; ダレなし。
△ ; ややダレている。
× ; ダレてしまい、にじんでいる。
[エレクトロクロミック素子の作成]
上記の実施例1〜7及び比較例1のエレクトロクロミック組成物を、それぞれスペーサーを用いて50μmに調整されたITO電極付きガラス間に配置し、エレクトロクロミック素子を得た。
得られたエレクトロクロミック素子について、以下に示す評価を行った。評価結果を表1に示す。
<発色性能>
上記エレクトロクロミック素子について、1.1Vの直流電流を印加し発色させ、発色に要した時間を評価した。
O ; 30秒未満で発色。
△ ; 30秒以上60秒未満で発色。
× ; 発色に60秒以上要した。
<消色性能>
上記エレクトロクロミック素子について、直流電圧を印加し発色させた。発色された表示素子に対し電流の印加を停止し、消色に要した時間を測定し評価した。
O ; 30秒未満で消色。
△ ; 30秒以上60秒未満で消色。
× ; 消色に60秒以上要した。
Figure 0005530692
※:測定下限値以下
*1 :S-205(山田化学工業社製:ロイコ染料)
*2 :テトラブチルアンモニウムブロマイド
*3 :ハイドロキノン(化合物(1))
*4 :1,4-ベンゾキノン(レドックスペア:化合物(2))
*5 :ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
*6 :KS-66(信越シリコーン社製)
*7 :BYK(登録商標)-410(ビックケミージャパン社製)
*8 :BYK(登録商標)-430(ビックケミージャパン社製)
*9 :ターレンED-2020(共栄社化学社製)
*10:ターレンBA-600(共栄社化学社製)
*11:DISPALON(登録商標)6900-20X(楠本化成社製)
*12:オルベン-M(白石工業社製)
*13:CAP504(イーストマンケミカル社製:セルロース樹脂)
実施例1〜7は、本発明にかかるエレクトクロミック組成物を用いた場合であり、いずれの場合も、スクリーン印刷での塗布性に優れ、塗布により形成されたパターンの液ダレによる形状変化も無かった。また、これらの組成物を用いて作製したエレクトロクロミック素子は良好な消発色性能を示した。一方、比較例1は、チキソトロピック剤を添加しない場合であり、スクリーン印刷において印刷後のパターンの再現ができず、さらに印刷後の塗膜にダレが確認された。
このように、本発明にかかるエレクトロクロミック組成物は、ハンドリング性及び塗布性に優れ、良好な消発色性能を有していることがわかる。また、この組成物を用いることで漏液の少ないエレクトロクロミック素子を得ることができる。
1、4…電極基材
2、3…電極
5 …エレクトロクロミック組成物
6 …スペーサー
7、8…基板

Claims (3)

  1. 電気化学型酸化還元反応に伴って消発色する化合物と、支持電界質と、有機系のチキソトロピック剤と、溶媒とを含むことを特徴とするエレクトロクロミック組成物。
  2. コーンプレート型粘度計による5rpmにおけるずり応力の値を50rpmにおけるずり応力の値で除した値が1.3〜6.0であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載のエレクトロクロミック組成物を有することを特徴とするエレクトロクロミック素子。
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